説明

離型フィルムの製造方法

【課題】インラインコートにより離型層が形成された離型ポリエステルフィルムの離型層表面の任意の領域を重剥離化させ、粘着剤との粘着性、セラミックスラリーとの密着性をコントロールし、スリット加工適性の高い離型ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】インラインコーティングで設けられた離型層を少なくとも片面に有する二軸ポリエステルフィルムの離型層表面の任意の領域を、大気圧下でプラズマ処理することを特徴とする離型フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インラインコーティングで設けられた離型層を有する二軸ポリエステルフィルムの任意の離型層表面領域を重剥離化した離型ポリエステルフィルムを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムを基材とする離型ポリエステルフィルムとは、基材であるポリエステルフィルムの少なくとも片面に、基材のポリエステル材料よりも表面張力の低い樹脂を離型層として設けられたフィルムである。離型層の樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、低分子ポリオレフィン(ワックス)樹脂、長鎖アルキル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。このような表面張力の低いプラスチック材料が離型層の一部もしくは全部として含まれている場合、良好な離型特性を発現できることから、広く世の中で使用されている。
【0003】
離型ポリエステルフィルムは、基材であるポリエステルよりも低い表面張力を有する樹脂を離型層として設けることで製造されるのが通常である。一般的に、離型層は、樹脂を溶剤もしくは水に溶解もしくは分散させて、フィルム上に塗布/乾燥/硬化させて設ける方法、または、樹脂をフィルム化させ、基材のポリエステルフィルムとラミネートする方法などで、基材のポリエステルフィルムに形成させる。二軸ポリエステルフィルム製膜過程において、離型層を横延伸前にインラインコーティングで設ける方法は、高い温度で乾燥硬化できる点、加工工程の簡略化の点から非常に優れた方法であり、広く用いられている。
【0004】
離型ポリエステルフィルムは、様々な用途で使用されており、特に、粘着製品へ広く利用されている。粘着製品として、基材上に粘着剤層が形成され、その粘着剤保護のために、離型ポリエステルフィルムを積層したものが汎用されている。これら粘着製品には、粘着力の調整、粘着製品をロールスリットする場合のエッジ部分のブロッキングの防止、保護フィルム用途への使用等の目的で、粘着剤層が全面ではなく部分的に形成されたものがあり、種々の用途に用いられている。しかし、粘着剤層を部分的に形成した粘着製品は、製品内に粘着層の有無による厚みの差ができるため、ロール状にした場合、巻き取りシワが発生したり、ロール外観が悪化したりするという問題点がある。また、薄い基材を用いた場合、特に、粘着剤のない部分にしわやたるみが生じることがあり、粘着剤層を設計どおりの部分のみに形成するため、粘着剤の塗布に特殊なコンマコーターやグラビアコーター等の装置を必要とする、粘度の低い粘着剤が使用できない、全面に粘着剤層を形成する場合に比べて、厚みを有する粘着剤層の形成が困難であるなどの問題点を有している。
【0005】
このため、部分的に粘着性能に差異を有するような粘着製品として、粘着剤層の部分的な形成という手段を用いることなく、所望の部分に粘着性を有しないか、粘着性を非常に低い領域を形成することができ、前記粘着製品をロールスリットする場合のエッジ部分のブロッキングの防止、保護フィルム用途などの目的とする機能を有し、かつ、外観も良好な粘着製品を得る方法として、剥離フィルムの少なくとも一面に、被膜形成樹脂層を設け、当該被膜形成樹脂層上にシリコーン系剥離剤層を部分的に形成する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、この手法は、ポリエステルフィルム製膜過程におけるインラインコートでは達成し得ない。部分的にコート可能なグラビアロールなどを使用して塗布した場合、塗布液が塗布された領域、されていない領域で温度ムラが発生し、横延伸時にフィルムが均一に延伸できないためである。よって、インラインコートにより離型層が設けられた離型ポリエステルフィルムにおいても、部分的に剥離力の異なった領域を有する離型ポリエステルフィルムを製造する方法が望まれている。
【0007】
また、セラミックスラリー成形用キャリアーフィルムにおいても、部分的に剥離力の異なる領域を有する離型フィルムは有効である。薄膜スラリーの形状を保つために、フィルムと密着性が高い領域があることで歩留まり向上が可能である。
【0008】
【特許文献1】特開平9−328661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、インラインコートにより離型層が形成された離型ポリエステルフィルムの離型層表面の任意の領域を重剥離化させ、粘着剤との粘着性、セラミックスラリーとの密着性をコントロールし、スリット加工適性の高い離型ポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の離型ポリエステルフィルムの製造方法を用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、インラインコーティングで設けられた離型層を少なくとも片面に有する二軸ポリエステルフィルムの離型層表面の任意の領域を、大気圧下でプラズマ処理することを特徴とする離型フィルムの製造方法に存する。
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0013】
一方、共重合ポリエステルの場合は30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
【0015】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0016】
さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0017】
使用する粒子の平均粒径は0.1〜5μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を設ける場合等に不具合を生じることがある。
【0018】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、0.01〜5重量%を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分になる場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルム表面の平滑性が不十分になる場合がある。
【0019】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に粒子の添加を行い、重縮合反応を進める方法を採用する。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0020】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、通常、9〜188μm、好ましくは9〜100μmの範囲がよい。
【0021】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、押出し機を用いて、ダイより押し出された溶融シートを用いて冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法がよい。
【0022】
この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。
【0023】
その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。
【0024】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行うが、延伸温度は通常130〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。
【0025】
そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
【0026】
その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。同時二軸延伸法としては前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で縦方向(あるいは機械方向)および横方向(あるいは幅方向)に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0027】
上述の延伸方式を使用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動式等、従来から公知の延伸方式を採用することが出来る。「スクリュー方式」はスクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていく方式である。「パンタグラフ方式」はパンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていく方式である。「リニアモーター方式」はリニアモーター原理を応用し、クリップを個々に制御可能な方式でクリップ間隔を任意に調整することができる利点を有する。
【0028】
さらに同時二軸延伸に関しては二段階以上に分割して行ってもよく、その場合、延伸場所は一つのテンター内で行ってもよいし、複数のテンターを併用してもよい。同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0029】
本発明は、インラインコーティングで離型層が設けられた二軸ポリエステルフィルムの任意の離型層表面領域を重剥離化した離型ポリエステルフィルムを製造する方法であり、プラズマ処理する前に、離型層をポリエステルフィルムに形成する必要がある。ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを本発明では採用する。インラインコーティングにより離型層を形成する場合は、フィルムの製造と共に離型層を形成することができるため、工程の減少による安価化が可能となる。
【0030】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。その場合、離型層の厚みを延伸倍率により変化させることができ、離型性能を調節できるという利点がある。また離型層を200℃以上で処理することが可能となり、耐熱性に優れた積層ポリエステルフィルムを作ることが可能である。一方、オフラインコーティングの場合、インラインコーティング同様に200℃以上の熱処理を行うと、しわ等の不具合が発生し、使用できないものになってしまうことがある。離型層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては、「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0031】
本発明のフィルムの離型層には、離型剤として、シリコーン化合物、長鎖アルキル化合物およびワックスの中から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数使用してもよい。
【0032】
本発明で用いることのできるシリコーン化合物とは、シロキサン結合を分子骨格内に有する樹脂であり、他の樹脂との共重合体も含まれる。
【0033】
本発明で言う長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。転写時による耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。
【0034】
本発明において用いることのできるワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度数平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
【0035】
本発明の離型層に用いられる熱硬化性を有する化合物としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。耐熱性に優れて離型性が低下しないという点において、メラミン化合物がより好ましい。
【0036】
本発明で使用できるメラミン化合物としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。
【0037】
本発明で使用できるエポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。代表的な例は、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合物である。特に、低分子ポリオールのエピクロロヒドリンとの反応物は、水溶性に優れたエポキシ樹脂を与える。
【0038】
本発明で使用できるオキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン環を持つ化合物であり、オキサゾリン環を有するモノマーや、オキサゾリン化合物を原料モノマーの1つとして合成されるポリマーも含まれる。
【0039】
本発明で使用できるイソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を持つ化合物を指し、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートや、これらの重合体、誘導体等が挙げられる。
【0040】
これらの熱硬化性を有する化合物は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また熱硬化を促進させるために触媒と共に用いることも可能である。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0041】
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルフィルムと離型層との密着性をより向上させたり、離型層の面状を良化させたりするためにバインダーポリマーを使用することも可能である。
【0042】
本発明において使用する「バインダーポリマー」とは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0043】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、セルロース類、でんぷん類等が挙げられる。
【0044】
また、離型層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0045】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0046】
本発明において、離型層中の離型剤の総含有量に関しては、離型層全体の重量比で通常5〜95%の範囲、より好ましくは10〜70%の範囲である。5%未満の場合、離型性が低下して剥離がうまくいかなかったり、被剥離層にクラックが入ったりする場合がある。一方、離型層中の熱硬化性を有する化合物の含有量に関しては、離型層全体の重量比で通常5〜95%の範囲、より好ましくは10〜70%の範囲である。5%未満の場合、耐熱性が低下して転写の際の加熱により離型層が変化し、離型層と反射防止層の離型性が低下し、剥離がうまくいかなかったり、被剥離層にクラックが入ったりする場合がある。
【0047】
上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度を0.1〜50重量%とした塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0048】
本発明において、ポリエステルフィルム上に設けられる離型層の塗布量(乾燥後)に制限はないが、通常0.001〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗布量が0.001g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、他方、1g/mを超えて塗布する場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0049】
本発明における離型層に関しては、ポリエステルフィルムの片面のみに積層してもよいし、両面に積層してもよい。
【0050】
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではないが、転写の際の加熱に耐えられる離型層にするためには、通常、200℃以上で3秒間以上を目安として熱処理を行うのが良い。
【0051】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。ポリエステルフィルムの熱収縮率を小さくするために熱処理温度を高くすることが有効である。さらに、本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムには、あらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0052】
本発明者は、離型ポリエステルフィルムの任意の表面領域を重剥離化させる方法として、以下の方法が極めて高度に効果を有することを見いだした。すなわち、プラズマ処理装置を用いて、大気圧下で、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気のいずれかのガス、もしくはその混合ガス存在下でプラズマ放電させ、その放電空間で形成した活性種を含有するガスを任意の表面領域に照射することで達成される。プラズマ処理装置に関しては、ダイレクト方式、リモート方式ダイレクト方式、リモート方式等、従来公知の処理方式を採用することが出来る。好ましくは、任意の表面への照射の容易性からリモート方式のプラズマ処理装置を用いて処理することが良い。装置の具体例として、松下電工製「AiPlasma AS」、「AiPlasma AL」、「AiPlasmaNL」、Enercon製「Plasma3」、積水化学社製「AP−T02−L」、「AP−T03−L」、「RD550」、パール工業社製「AP−1000−103」、日本プラズマトリート社製「1PFW10−FG3001」等があげられる。コロナ処理も同様の処理効果が期待されるが、処理が面内で均一に行われないため、均一な剥離特性を発現できず、該処理表面に有機溶剤で希釈した樹脂の塗工を行うと塗布ムラが発生する場合がある。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、離型層表面の任意の領域を重剥離化させ、粘着剤との粘着性、セラミックスラリーとの密着性をコントロールし、スリット加工適性の高い離型ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0055】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定し、Huggins定数を0.33として固有粘度を求めた。
【0056】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0057】
(3)離型ポリエステルフィルムのプラズマ処理部/未処理部の剥離力測定
測定試料のプラズマ処理部および未処理部の離型層に、日東電工(製)No.31B粘着テープを2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0058】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
〈ポリエステルの製造〉
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.03部、平均粒径2.5μmのシリカ粒子を0.06部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0059】
離型層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
A1:長鎖アルキル化合物
(製法)4つ口フラスコにキシレン200部、オタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
A2:アクリルグラフトシリコーン(竹本油脂株式会社製パイオニン)
A3:ワックス
(製法)攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.5Lの乳化設備に融点105℃、酸価16mgKOH/g、密度0.93g/mL、平均分子量5000の酸化ポリエチレンワックス300g、イオン交換水650gとデカグリセリンモノオレエート界面活性剤を50g、48%水酸化カリウム水溶液10gを加え窒素で置換後、密封し150℃で1時間高速攪拌した後130℃に冷却し、高圧ホモジナイザーを400気圧下で通過させ40℃に冷却しワックスエマルションを得た。
B:熱硬化性を有する化合物:
アルキロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(大日本インキ化学工業製ベッカミン)
C1バインダーポリマー:
アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを共重合し、乳化剤で分散させたアクリル樹脂(日本カーバイド工業製ニカゾール)
【0060】
実施例1:
製造したポリエチレンテレフタレートを180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度90℃で縦方向に3.6倍延伸した後、この縦延伸フィルムに下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に4.3倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗工量(乾燥後)が0.03g/mの離型層が形成された厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。その後、松下電工社製「AiPlasma AS(5mmφノズル)」を150Wにて使用して、30m/minの速度、フィルム/ノズル間距離5mmとして、5mmの間隔を開け、平行に2直線の処理を行った。
【0061】
実施例2〜3:
実施例1において、塗布剤組成を下記表1、2に示す塗布量および塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムの特性は表2に示すとおりであった。
【0062】
比較例1:
実施例1において、プラズマ処理を行わず、直径30mm/幅10mmの円形ロールを200℃に加熱し、フィルム表面に当該ロールを回転させながら30m/分で接触させた以外は実施例1と同様にして製造し、離型ポリエステルフィルムを得た。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法により得られるフィルムは、粘着製品として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インラインコーティングで設けられた離型層を少なくとも片面に有する二軸ポリエステルフィルムの離型層表面の任意の領域を、大気圧下でプラズマ処理することを特徴とする離型フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−90218(P2010−90218A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259706(P2008−259706)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】