説明

離型方法とその装置

【課題】 簡易な構成で凹部を有する成形品を円滑に離型させることができる離型装置を提供する。
【解決手段】 内側にテールライト取付用ボス2を有する成形品1を離型させる装置であって、直押しコア7内に配設されテールライト取付用ボス2を成形する押出ピン12と、下型4内に配設され押出ピン12を突出方向に押し出す押出ブロック14からなり、直押しコア7が上昇すると押出ピン12が押出ブロック14に押されて突出方向に前進し、更に直押しコア7が上昇すると押出ピン12が押出ブロック14から外れて後退してテールライト取付用ボス2から抜ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部を有し離型抵抗が大きい成形品を離型させる離型方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
離型抵抗が大きい成形品を離型させる方法としては、例えば特許文献1に記載のように、移動金型に向かって進退自在な突き出し部(押し出しピン)を固定金型内に設け、型開きの際に押し出しピンの先端を固定金型の外側へ突出させて固定金型側を離型させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−262879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明においては、凹部を有する成形品を円滑に離型させるのは困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で凹部を有する成形品を円滑に離型させることができる離型方法とその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、内側に凹部を有する成形品を離型させる方法であって、前記凹部を成形した押出ピンを押し出す押出工程と、この押出工程で押し出した押出ピンを前記凹部から引き抜く引抜工程とを備えるものである。
【0007】
また、前記成形品の三面がアンダーカット形状の場合には、少なくとも二面のアンダーカット部分を離型した後に、残り一面のアンダーカット部分を前記押出工程と前記引抜工程により離型するとよい。
【0008】
請求項3に係る発明は、内側に凹部を有する成形品を離型させる装置であって、入子内に配設され前記凹部を成形する押出ピンと、金型本体内に配設され前記押出ピンを突出方向に押し出す押出ブロックからなり、前記入子が移動すると前記押出ピンが前記押出ブロックに押されて突出方向に前進し、更に前記入子が移動すると前記押出ピンが前記押出ブロックから外れて後退して前記凹部から抜けるものである。
【0009】
また、前記押出ピンを突出方向と反対方向に付勢する弾性部材と、前記押出ピンが前記押出ブロックから外れると当接するストッパを備えることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、成形品の内側にある筒形状の凹部を成形することができると共に、その成形品を円滑に離型させることができる。
【0011】
また、成形品の三面がアンダーカット形状の場合でも、少なくとも二面のアンダーカット部分が離型した後に、残り一面のアンダーカット部分を押出工程と引抜工程により離型すれば、成形品を円滑に離型させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、押出ピンと押出ブロックの動作により成形品を円滑に離型させることができる。
【0013】
また、弾性部材とストッパにより押出ピンの突出量を調整し、円滑に成形品を離型させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】成形品の説明図で、(a)は平面図、(b)は背面図
【図2】本発明に係る離型装置を備えた成形装置の説明図で、(a)は断面図、(b)は側面図
【図3】本発明に係る離型装置の断面図
【図4】本発明に係る離型装置の作用説明図で、(a)は成形装置の側面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図、(c)は離型装置の断面図
【図5】本発明に係る離型装置の作用説明図で、(a)は成形装置の側面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図、(c)は離型装置の断面図
【図6】本発明に係る離型装置の作用説明図で、(a)は成形装置の側面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図、(c)は離型装置の断面図
【図7】本発明に係る離型装置の作用説明図で、(a)は成形装置の側面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、本発明に係る離型装置により離型させる成形品1は、例えば自動二輪車のリアカウルで、左右のアンダーカット部分1a,1bと、テール部のアンダーカット部分1cを有している。そして、テール部のアンダーカット部分1cには、凹部からなるテールライト取付用ボス2が成形され、テールライトの取付ステーに差し込む形で使用される。
【0016】
このような成形品1を成形する成形装置は、図2に示すように、上型3と、下型4と、左右にスライドする左右の外スライドコア5a,5bと、左右のアンダーカット部分1a,1bを成形する夫々2分割された左右の傾斜コア6a,6b,6c,6dと、テール部のアンダーカット部分1cを成形する直押しコア7などからなる。図2(b)では、上型3を省略している。
【0017】
傾斜コア6a,6b,6c,6dは、下型4の下方に配置された押し板8に連結したロッド9a,9b,9c,9d,9e,9fにより昇降動する。左の傾斜コア6a,6bと右の傾斜コア6c,6dは、駆動手段(不図示)により、左右方向に互いに離れたり接近したりする。また、押し板8には、直押しコア7を昇降するテール部直押しロッド11が連結されている。押し板8は、油圧シリンダ(不図示)により昇降する。
【0018】
直押しコア7には、図3に示すように、成形品1を離型すると共に、テールライト取付用ボス2を成形する役割も果たす押出ピン12が配設されている。押出ピン12の基端部13は、外縁部の底部13aと傾斜部13bと中心部の頂部13cから形成されている。
【0019】
また、直押しコア7に隣接する下型4には、押出ピン12の基端部13を押して押出ピン12を突出方向(離型方向)に押し出す押出ブロック14が配設されている。押出ブロック14が押出ピン12の基端部13と対向する面の一部には、突部14aが形成されている。
【0020】
更に、直押しコア7には、押出ピン12を突出方向と反対方向に付勢する弾性部材15と、押出ピン12の基端部13が押出ブロック14から外れると押出ピン12の鍔部12aが弾性部材15の押圧力により移動して当接するストッパ16が設けられている。
【0021】
成形後、直押しコア7が上昇すると、テールライト取付用ボス2を成形する押出ピン12は押出ブロック14に押されて突出方向に前進する。更に、直押しコア7が上昇すると、押出ピン12の基端部13が押出ブロック14から外れ、押出ピン12は弾性部材15の押圧力により後退して鍔部12aがストッパ16に当接し、テールライト取付用ボス2から所定量だけ抜かれる。
【0022】
このように、押出ピン12をテールライト取付用ボス2から所定量抜くことにより、テールライト取付用ボス2を離型する際の離型抵抗が低減され、テールライト取付用ボス2を押出ピン12から円滑に離型することができる。
【0023】
以上のように構成された本発明に係る離型装置の動作及び離型方法について説明する。先ず、図4(a),(b)に示すように、成形後に上型3が上昇し、左右の外スライドコア5a,5bが後退して型開きが完了する。この時、図4(c)に示すように、押出ピン12の基端部13の頂部13bは、下型4と接触しており、押出ピン12の基端部13の底部13aは、押出ブロック14の突部14aに当接している。この状態がテールライト取付用ボス2を成形することができる押出ピン12の原位置である。
【0024】
次いで、図5(a),(b)に示すように、直押しコア7と左右の傾斜コア6a,6b,6c,6dが油圧シリンダの駆動により上昇する(例えば、押し板8が約5mm上昇)。すると、図5(c)に示すように、押出ピン12の基端部13は押出ブロック14の突部14aに乗り上げ、基端部13の底部13aから傾斜部13bを経て頂部13cが押出ブロック14の突部14aに当接する。
【0025】
そして、押出ピン12が成形品1を離型する突出方向に押し出される(例えば、押し板8が約5mm上昇すると、約0.5mm押し出される)。押出ブロック14の突部14aに押出ピン12の基端部13が乗り上げ、基端部13の底部13aから傾斜面13bを経て頂部13cに至る過程で、図5(a)に示すように、先ず左右のアンダーカット部分1a,1bが離型し、次に押出ピン12が押し出されてテールライト取付用ボス2が成形されるテール部のアンダーカット部分1cを離型する。
【0026】
このような左右のアンダーカット部分1a,1bを離型するタイミングと、押出ピン12を押し出してテールライト取付用ボス2を成形するテール部のアンダーカット部分1cを離型するタイミングは、押出ブロック14の取付位置や押出ピン12の基端部13の形状などによって調整することが可能である。
【0027】
次いで、図6(a),(b)に示すように、油圧シリンダの駆動により押し板8が上昇して更に直押しコア7と左右の傾斜コア6a,6b,6c,6dが上昇する。すると、図6(c)に示すように、押出ピン12の基端部13が押出ブロック14の突部14aから外れ、押出ピン12は弾性部材15の押圧力により後退して鍔部12aがストッパ16に当接し、テールライト取付用ボス2から所定量だけ抜ける(例えば、約1mm戻る)。
【0028】
次いで、図7(a),(b)に示すように、油圧シリンダの駆動により押し板8が上昇して直押しコア7と左右の傾斜コア6a,6b,6c,6dが所定位置(ストロークエンド)まで上昇する。すると、取り出し機(不図示)が下降して、取り出し機に配設された吸着盤で成形品1のテール部と左右を吸着する。この時、押出ピン12がテールライト取付用ボス2から所定量だけ抜けているため、離型抵抗が低減されており、取り出し機は円滑に成形品1を成形装置から取り出すことができる。
【0029】
次いで、取り出し機が成形品1を成形装置から取り出した後、押出ピン12がテールライト取付用ボス2を成形することができる原位置に戻るなど、成形装置は成形前の状態に戻る。
【0030】
本発明の実施の形態では、離型方向が垂直方向になるように金型3…を設置した場合について説明したが、金型3…を90度回転させて離型方向が水平方向になるように金型3…を設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、成形品の内側にある筒形状の凹部を成形することができると共に、その成形品を円滑に離型させることができる離型方法とその装置を提供することができる。特に、アンダーカット部分に筒形状の凹部を有する成形品を円滑に離型させる有効な手段となる。
【符号の説明】
【0032】
1…成形品、1a,1b,1c…アンダーカット部分、2…テールライト取付用ボス、3…上型、4…下型、5a,5b…外スライドコア、6a,6b,6c,6d…傾斜コア、7…直押しコア、8…押し板、9a,9b,9c,9d,9e,9f…ロッド、11…テール部直押しロッド、12…押出ピン、12a…鍔部、13…基端部、13a…底部、13b…傾斜部、13c…頂部、14…押出ブロック、14a…突部、15…弾性部材、16…ストッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に凹部を有する成形品を離型させる方法であって、前記凹部を成形した押出ピンを押し出す押出工程と、この押出工程で押し出した押出ピンを前記凹部から引き抜く引抜工程とを備えたことを特徴とする離型方法。
【請求項2】
請求項1に記載の離型方法において、前記成形品は三面がアンダーカット形状であり、少なくとも二面のアンダーカット部分を離型した後に、残り一面のアンダーカット部分を前記押出工程と前記引抜工程により離型することを特徴とする離型方法。
【請求項3】
内側に凹部を有する成形品を離型させる装置であって、入子内に配設され前記凹部を成形する押出ピンと、金型本体内に配設され前記押出ピンを突出方向に押し出す押出ブロックからなり、前記入子が移動すると前記押出ピンが前記押出ブロックに押されて突出方向に前進し、更に前記入子が移動すると前記押出ピンが前記押出ブロックから外れて後退して前記凹部から抜けることを特徴とする離型装置。
【請求項4】
請求項3に記載の離型装置において、前記押出ピンを突出方向と反対方向に付勢する弾性部材と、前記押出ピンが前記押出ブロックから外れると当接するストッパを備えることを特徴とする離型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148095(P2011−148095A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8707(P2010−8707)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】