説明

離型紙の製造方法および離型紙の製造装置

【課題】優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、原反20に凹凸模様12を形成して離型紙10を製造する製造方法である。製造方法は、原反の面20aに樹脂15をスプレーコーティングすることにより、原反の面を粗化する工程と、エンボス加工により、粗化された原反の面に凹凸模様を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造方法に係り、とりわけ、優れたコントラストを有する模様を転写することができる離型紙を製造する製造方法に関する。また、本発明は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造装置に係り、とりわけ、優れたコントラストを有する模様を転写することができる離型紙を製造する製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合皮製品、化粧シート、内装材等に用いられるシート状材料は、離型紙を型紙として、離型紙に形成された凹凸模様を転写されることによって製造され得る。離型紙は、一般的に、原反にエンボス加工を施すことによって作製され得る(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−205311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、エンボス加工によって離型紙を作製する場合、エンボス加工中に大きな圧力が加わりやすいことから、離型紙の凹部を精度良く形成することができる。その一方で、加工圧力が比較的小さくなりやすいことから、離型紙の凸部を精度良く形成することは難しい。したがって、離型紙上の凹部と凸部とのギャップを大きくすることには限界がある。この結果、離型紙を用いて作製されたシート状材料のコントラスト(明暗の差)が十分ではない、つまり、シート状材料の模様が平坦化して視認される、という不具合が生じてしまう。
【0004】
また、加工圧力を増大することにより、離型紙上の凹部と凸部とのギャップをいくらか大きくすることができる。しかしながら、加工圧力を増大させると、生産効率を悪化させることになり、また、加工装置や原反への負荷も増大することとなる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造方法であって、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、原反に凹凸模様を転写する離型紙の製造装置であって、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる離型紙の製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
ところで、昨今においては、特殊な用途に応じた離型紙(典型的には、過酷な使用条件に耐え得る離型紙)を製造するため、基材と、基材上に接合された樹脂層と、を有する原反が用いられることもある。このような原反は、通常、基材上に樹脂をコーティングすることにより製造され、樹脂層は光沢を有するようになる。そして、このような原反を用いて得られた離型紙によりシート状材料を作製した場合、シート状材料のコントラストが不十分であるという上述の不具合が顕著に現れやすくなる。本発明による離型紙の製造方法および離型紙の製造装置によって、このような原反から、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を製造することができるようになれば都合が良い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による離型紙の製造方法は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する方法であって、前記原反に樹脂をスプレーコーティングすることにより、前記原反の表面を粗化する工程と、粗化された前記原反の前記表面に、エンボス加工により前記凹凸模様を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明による離型紙の製造方法において、前記粗化する工程は、前記原反に樹脂を吹き付ける工程と、前記原反に吹き付けられた前記樹脂を乾燥させる工程と、を有するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明による離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記スプレーコーティングされる樹脂は、20cm以上の吹き付け距離で前記原反に吹き付けられるようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明による離型紙の製造方法において、前記原反は、基材と、前記基材に積層された合成樹脂層と、を有し、前記合成樹脂層の側の表面が粗化されるようにしてもよい。
【0011】
さらに、本発明による離型紙の製造方法が、前記原反を作製する工程をさらに備え、前記原反を作製する工程は、前記合成樹脂層をなすようになる樹脂を前記基材の一方の表面上にコーティングする工程と、前記基材上にコーティングされた樹脂を乾燥させて前記基材上に前記合成樹脂層を形成する工程と、を有するようにしてもよい。
【0012】
さらに、本発明による離型紙の製造方法において、前記原反にスプレーコーティングされる樹脂は、前記合成樹脂層をなす樹脂と同一であるようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明による離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の粗化された前記表面での光沢度の値が、エンボス加工において用いられるエンボス型の表面での光沢度の値よりも小さくなるように、前記樹脂をスプレーコーティングしてもよい。
【0014】
さらに、本発明による離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の粗化された前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングしてもよい。このような本発明による離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の粗化された表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の粗化された表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングするようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明による離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の前記表面のうちの前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化するようにしてもよい。
【0016】
さらに、本発明による離型紙の製造方法の前記凹凸模様を形成する工程において、前記凹凸模様の凸部に位置するようになる前記原反の表面を粗化された状態に保ちながら、前記凹凸模様の凹部に位置するようになる前記原反の粗化された表面をならすようにしてもよい。
【0017】
本発明による離型紙の製造装置は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造装置であって、前記原反に樹脂をスプレーコーティングし、前記原反の表面を粗化するスプレーコーティング装置と、前記スプレーコーティング装置の下流側に配置され、前記原反に前記凹凸模様を形成するエンボス装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明による離型紙の製造装置において、前記スプレーコーティング装置は、前記原反に前記樹脂を吹き付ける吹き付け装置と、前記原反に吹き付けられた前記樹脂を乾燥させる乾燥装置と、を有するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明による離型紙の製造装置において、前記スプレーコーティング装置は、前記原反に対面するように配置され前記原反に前記樹脂を吹き付ける吹き付け装置を有し、前記吹き付け装置は、前記吹き付け装置の前記樹脂を吹き出す吹き出し口が前記原反から20cm以上離間するようにして、配置されていてもよい。
【0020】
さらに、本発明による離型紙の製造装置が、前記スプレーコーティング装置の上流側に配置され、基材と、前記基材に積層された合成樹脂層と、を有する原反を作製する原反作製装置をさらに備え、前記原反作製装置は、前記合成樹脂層をなすようになる樹脂を前記基材の一方の表面上にコーティングするコーティング装置と、前記基材上にコーティングされた樹脂を乾燥させて前記基材上に前記合成樹脂層を形成する乾燥装置と、を有するようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記原反は、基材と、前記基材上に積層された合成樹脂層と、を有し、前記スプレーコーティング装置は、前記原反の前記合成樹脂層に対面するように配置され前記合成樹脂層に前記樹脂を吹き付ける吹き付け装置を有し、前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記合成樹脂層に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有してもよい。
【0022】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記原反は、基材と、前記基材上に積層された合成樹脂層と、を有し、前記吹き付け装置は、前記合成樹脂層をなす樹脂と同一の樹脂を前記原反の表面に吹き付けるようにしてもよい。
【0023】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記原反に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有し、前記スプレーコーティング装置は、前記原反の前記表面での光沢度の値が、前記エンボス型の前記凹凸部での光沢度の値よりも小さくなるように、前記原反の前記表面を粗化してもよい。
【0024】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記スプレーコーティング装置は、前記原反の粗化された前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングしてもよい。このような本発明による離型紙の製造装置において、前記スプレーコーティング装置は、前記原反の粗化された表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の粗化された表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングしてもよい。
【0025】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記スプレーコーティング装置は、前記原反の前記表面のうちの前記エンボス装置によって前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化するようにしてもよい。
【0026】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部を有するエンボス型と、前記エンボス型に対向して配置され、前記エンボス型との間で前記原反を圧するようになるバックアップ体と、を有し、前記エンボス型の前記凹凸部の凸部は、前記バックアップ体との間で原反を圧して前記原反の粗化された前記表面をなだらかにするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0029】
図1乃至図7は本発明による離型紙の製造方法および離型紙の製造装置の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1および図2は離型紙の製造装置および離型紙の製造方法を示す斜視図であり、図3は離型紙の製造方法を説明するための図であり、図4は表面を粗化された原反を示す断面図であり、図5は離型紙の製造方法を説明するための図であり、図6は離型紙を示す断面図であり、図7は図6に示す離型紙を型紙として用いて作製されたシート状部材の作用を説明するための図である。
【0030】
まず、主に図6を参照しながら、本実施の形態において製造され得る離型紙について説明する。図6に示すように、離型紙10は、凹部12bと凸部12aとを有する凹凸模様12が少なくとも一方の表面20aに形成された原反20を備えている。
【0031】
また、凹凸模様12の凸部12a上には、凹凸模様12よりも微小な凹凸(微小凹凸形状とも呼ぶ)16が形成されている。一方、凹凸模様12の凹部12bの底面は、平坦面として形成されている。
【0032】
このような離型紙10は、ビニールレザーや壁紙等のシート状部材30を作製するための型紙として用いられる。具体的には、離型紙10の凹凸面側を熱硬化性樹脂等からなる塗料でコーティングし、さらに基布38をラミネートする。その後、塗料を硬化させて塗料からなる塗料層37を形成し、次に、塗料層37から離型紙10を剥離させることにより、基布38と塗料層37とを有したシート状部材30を得ることができる。得られたシート状部材30の塗料層37には、離型紙10の凹凸模様12および微小凹凸形状16が転写されており、転写された凹凸模様32により、シート状部材30の意匠性を向上させている。なお、離型紙10は繰り返し用いられ、複数枚のシート状部材30を作製することができる。
【0033】
本実施の形態において、離型紙10は、合成皮革として用いられるシート状部材30を作製するための型紙として機能するようになっている。この場合、シート状部材30の塗料層37は、例えば、ポリウレタン樹脂に着色剤を配合してなる塗料によって形成され得る。また、本実施の形態において、離型紙10は、紙等からなる基材24と、基材24上に積層され合成樹脂からなる合成樹脂層22と、を有している。図6に示すように、凹凸模様12および微小凹凸形状16は、離型紙10の合成樹脂層22側の表面から形成されている。
【0034】
次に、このような構成からなる離型紙10の作用について説明する。
【0035】
上述したように、このような離型紙10においては、凹凸模様12の凸部12a上に微小凹凸形状16が形成されている。したがって、この離型紙10を型紙として用いた場合、図7に示すように、離型紙10の凹凸模様12の凸部12aが転写されてなるシート状部材30の模様32の凹部32b内に、離型紙10の微小凹凸形状16が転写されてなる微小な凹凸36が形成される。このため、図7に示すように、シート状部材30の凹部32b内に入射する光L76は乱反射して散乱するようになり、凹部32bからの反射光L77は非常に少ない光量でのみ視認されるようになる。
【0036】
一方、上述したように、凹凸模様12の凹部12b内は、平坦面として形成されている。したがって、この離型紙10を型紙として用いた場合、図7に示すように、離型紙10の凹凸模様12の凹部12bが転写されてなるシート状部材30の模様32の凸部32aの上面は、平坦面として形成されるようになる。このため、図7に示すように、シート状部材30の凸部32a上に入射する光L71は正反射され、凸部32aからの反射光L72は明瞭に視認されるようになる。
【0037】
これらの結果、転写されたシート状部材30の模様32は、凸部32aと凹部32bとの間で極めて高いコントラストを有するようになり、また、凸部上32aに光沢を有するようになる。すなわち、本実施の形態による離型紙10によれば、優れた光沢とコントラストとを有する模様を転写することができる。
【0038】
次に、主に図1乃至図5を参照して、上述した離型紙を作製し得る、本発明による離型紙の製造方法および離型紙の製造装置の一実施の形態について説明する。
【0039】
図1乃至図5に示すように、製造装置40は、原反20の一方の表面20aに樹脂をスプレーコーティングすることにより、原反20の表面20aを粗化するスプレーコーティング装置60と、スプレーコーティング装置60の下流側に配置され、原反20に凹凸模様12を形成するエンボス装置50と、を備えている。また、図1に示すように、製造装置40は、スプレーコーティング装置60の上流側に配置され、基材24と、基材24に積層された合成樹脂層22と、を有する原反20を作製する原反作製装置70をさらに備えている。さらに、製造装置40は、原反作製装置70に帯状に延びる基材24を連続的に供給する基材供給装置(図示せず)と、原反20に凹凸模様12を形成してなる離型紙10を巻き取って回収する離型紙回収装置(図示せず)と、をさらに備えている。
【0040】
このうち、まず、原反作製装置70について説明する。図1に示すように、原反作製装置70は、合成樹脂層22をなすようになる樹脂(第1樹脂)22aを基材24の一方の表面上にコーティングするコーティング装置71を有している。本実施の形態において、コーティング装置71は、樹脂22aを基材24に印刷する印刷ユニット、さらに詳細にはグラビア印刷ユニットとして構成されている。図1に示すように、印刷ユニット71は、基材24の一方の表面の略全面に樹脂22aを転写するためのグラビア版胴72と、グラビア版胴72に対向して配置された圧胴74と、を有している。グラビア版胴72は、樹脂(インキ)22aを貯留したインキパン76に浸かっている。図示しない基材供給装置から供給される基材24は、グラビア版胴72と圧胴74との間を通過する。この際、インキパン76からグラビア版胴72の表面(グラビア版)に転載された樹脂(インキ)22aが、基材24のグラビア版胴72に対面する側の表面に転写される。
【0041】
印刷ユニット71は、グラビア版胴72および圧胴74に連結された駆動機構(図示せず)をさらに有している。この駆動機構によってグラビア版胴72および圧胴74は回転駆動され、基材24の表面に樹脂(樹脂溶液)22aが転写されていく。
【0042】
インキパン76に貯留された樹脂22aは溶剤を含んでおり、これにより、ある程度の流動性を付与されている。図1に示すように、原反作製装置70は、基材24上に塗工された樹脂22aを乾燥させる乾燥装置(第1乾燥装置)78をさらに有している。乾燥装置78によって、乾燥された基材24上の樹脂22aからなる膜は、基材24上に定着して合成樹脂層22を構成するようになる。
【0043】
なお、このような原反作製装置70としては、以上の構成に限られることなく、基材24と基材24上に積層された合成樹脂層22とを有する原反20を作製し得る種々の装置を採用することができる。
【0044】
次に、スプレーコーティング装置60について説明する。図1に示すように、スプレーコーティング装置60は、原反20に樹脂(第2樹脂)15を吹き付ける吹き付け装置62と、原反20に吹き付けられた樹脂15を乾燥させる乾燥装置(第2乾燥装置)66と、を有している。また、図3に示すように、スプレーコーティング装置60は、吹き付け装置62からスプレーされた樹脂15の飛行方向を規制し樹脂15の飛散を防止するカバー64を、さらに有している。このようなスプレーコーティング装置60によれば、吹き付け装置62によって粒状の樹脂15をスプレーし、原反20の表面20a上に当該樹脂15を付着させることができる。また、乾燥装置66によって原反20の表面上に付着した樹脂15をその位置に定着させ、原反20の表面20aを粗化させることができる。
【0045】
図1および図3に示すように、吹き付け装置62は、原反20の合成樹脂層22に対面するように配置されている。吹き付け装置62から噴射される樹脂(樹脂溶液)15は、溶剤を含んでいる。これにより、樹脂15にはある程度の流動性が付与され、樹脂15のスプレーが可能となっている。また、本実施の形態において、吹き付け装置62から噴射される樹脂15は、原反20の合成樹脂層22をなす樹脂22aと同一となっている。
【0046】
また、図3に示すように、樹脂15をコーティングされる原反20を挟んで吹き付け装置62と対向する位置には、バックアップ体(第1バックアップ体)68が配置されている。すなわち、原反20は、第1バックアップ体68によって下方から支持された状態で、樹脂15をスプレーされるようになる。図3に示す例において、バックアップ体68は、回転可能なバックアップロール(第1バックアップロール)として構成されている。スプレーコーティング装置60は、第1バックアップ体68に連結され、第1バックアップ体68を回転駆動する駆動機構(図示せず)をさらに有している。この駆動機構によって、第1バックアップ体68は、原反20の搬送速度に同期した周速度で回転可能となっている。
【0047】
図3に示すように、吹き付け装置62は、樹脂15を吹き出す吹き出し口62aが原反20の表面20aからある程度離間するようにして配置される。具体的には、吹き付け装置62の吹き出し口62aから原反20の表面20aまでのシート状の原反20の法線に沿った距離(吹き付け距離)dは、20cm以上100cm以下に保たれていることが好ましい。後に詳述するように、樹脂15をスプレーコーティングすることにより、原反20の表面を所望の程度に精度良く粗化することができるようになるからである。
【0048】
次に、エンボス装置50について説明する。図2によく示されているように、エンボス装置50は、原反20に形成されるべき凹凸模様12に対応した凹凸部54を有するエンボス型52と、エンボス型52に対向して配置され、エンボス型52との間で原反20を圧するようになるバックアップ体(第2バックアップ体)56と、を有している。このエンボス型52は、凹凸部54が原反20の粗化された表面20aの側(合成樹脂層22の側)に対面するようにして、配置されている。
【0049】
本実施の形態において、エンボス型52は、ロール状のエンボスロールとして構成されている。図5によく示されているように、エンボスロール52は回転駆動されるロール本体53を有し、ロール本体53の外周面には凹凸部54が形成されている。本実施の形態においては、合成皮革用の離型紙10を作製することができるよう、凹凸部54は、原反20の表面20aに皮模様を付与し得るように構成されている。
【0050】
また、図5に示すように、本実施の形態において、第2バックアップ体56は、エンボスロール52に対向して配置され、原反20の移動速度に同期した周速度で回転可能なバックアップロール(第2バックアップロール)56として構成されている。第2バックアップロール56は、エンボスロール52との間で原反20を挟圧する。
【0051】
エンボス装置50は、エンボスロール52のロール本体53に連結され、ロール本体53を回転駆動する駆動機構(図示せず)をさらに有している。この駆動機構によって、エンボスロール52は、原反20の搬送速度に同期した周速度で回転し、凹凸部54の凹凸模様を原反20に転写していく。
【0052】
次に、このような構成からなる製造装置40を用い、離型紙10を製造する方法について説明する。
【0053】
まず、図1に示すように、帯状に延びる基材24が、図示しない基材供給装置から、原反作製装置70の印刷ユニット71へと供給される。図1に示すように、基材24は、印刷ユニット71のグラビア版胴72と圧胴74との間に供給される。この際、グラビア版胴72および圧胴74は、原反20の搬送速度と同期するようにして回転駆動されている。したがって、グラビア版胴72はインキパン76に貯留された樹脂(インキ)22a内をくぐり、基材24の一方の表面と接触するようになるグラビア版胴72の表面(グラビア版)には樹脂22aが転載されている。この結果、グラビア版胴72と圧胴74との間を通過する基材24の一方の面には、樹脂22aが面状にコーティングされていく。
【0054】
次に、樹脂22aをコーティングされた基材24は乾燥装置78へと供給され、乾燥装置78によって樹脂22aが乾燥される。この結果、樹脂22aに配合されていた溶剤が蒸発し、樹脂22aが基材24上で硬化する。硬化した樹脂22aの膜は、基材24上に定着し、合成樹脂層22を形成するようになる。
【0055】
なお、上述したように、樹脂22aはある程度の流動性を有している。このため、面状にコーティングされた樹脂22aは、乾燥されて硬化する前に、基材24上を平たく延び広がっている(レベリングされている)。したがって、このような方法で作製された原反20において、合成樹脂層20は平坦化され優れた光沢を有するようになり、通常、合成樹脂層22の光沢度は10以上となる。
【0056】
このようにして、基材24と、基材24上に積層された合成樹脂層22と、からなる原反20が作製される。この合成樹脂層22をなす樹脂22aは、例えばポリプロピレン等、製造されるべき離型紙10に対する要求に応じて種々選択される。一方、基材24は、紙等から構成される。この基材24は、後に詳述するエンボス加工において、合成樹脂層22の変形を拘束することによって、合成樹脂層22の塑性変形、すなわち凹凸模様の転写を促進するようになる。また、基材24は、エンボス加工によって合成樹脂層22に形成される凹凸12,微小凹凸形状16がその後の取扱中に損なわれることを防止することにも役立つようになる。
【0057】
次に、作製された原反20は、スプレーコーティング装置60に供給される。スプレーコーティング装置60により、原反20の表面20aに樹脂15がスプレーコーティングされ、原反20の表面20aが粗化される。この粗化工程は、吹き付け装置62によって、原反20の表面20aに樹脂22aを吹き付ける工程と、乾燥装置66によって、原反20の表面20a上に吹き付けられた樹脂22aを乾燥させる工程と、を有している。
【0058】
吹き付け装置62による吹き付け工程では、第1バックアップ体68に支持された原反20に向け、吹き付け装置62から粒状の樹脂15がスプレーされる。図3に示すように、スプレーされた樹脂15は、カバー64によって誘導され、原反20の合成樹脂層22上に吹き付けられる。この結果、樹脂15が合成樹脂層22上に付着し、合成樹脂層22が樹脂15によってコーティングされる。
【0059】
その後、樹脂15をスプレーされた原反20は、乾燥装置66へと搬送される。乾燥装置66によって、原反20の表面20a上に吹き付けられた樹脂15が乾燥される。この結果、樹脂15に配合されていた溶剤が蒸発し、樹脂15が原反20の合成樹脂層22上で硬化する。硬化した樹脂15は、基材24上に定着し、原反20の表面層を形成するようになる。
【0060】
上述したように、合成樹脂層10は平坦で優れた光沢を有しているが、樹脂15は合成樹脂層10上に粒状に付着するようになる。そして、樹脂15は、合成樹脂層10上でレベリングされる前に、すなわち、合成樹脂層10上で平たく延び広がる前に、乾燥装置66によって乾燥される。この結果、図4に示すように、原反20の表面20aは、樹脂15によって形成された微小凹凸16を有するようになる。このようにして、原反20の合成樹脂層22側の表面20aが粗化される。図4に示すように、粗化された原反20の表面20aは、光L41を散乱反射し、ごく一部の光L42のみが正反射(鏡面反射)するようになる。
【0061】
ところで、エンボス加工前に、原反20の一方の表面20aにおける光沢度が4以上8以下となるよう、スプレーコーティング装置41によって原反20が粗化されていることが有効である。本件発明者が種々の実験を行ったところ、粗化された原反20の表面20aがこの範囲内の光沢度を有する場合、最終的に得られるシート状部材30が上述した作用効果を効果的に奏することができる、との知見が得られた。なお、本件における「光沢度」とは、JISS6007に準拠して測定される光沢度のことである。
【0062】
また、本件発明者が調査したところ、スプレーコーティングによって粗化される原反20の表面20aの平均長さSmおよび十点平均粗さRzを管理することによって、原反20がおおよそ4以上8以下の範囲の光沢度を有するようにすることができる、ことが知見された。具体的には、原反20の一方の表面20aにおいて4以上8以下の光沢度を得るためには、スプレーコーティングによって粗化された原反20の表面20aの平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、スプレーコーティングによって粗化された原反20の表面20aの十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、ブラスト加工することが有効である、との知見が得られた。なお、ここでいう「平均長さSm」および「十点平均粗さRz」とは、JISB0401に準拠して測定される値のことである。
【0063】
原反20の表面20aでの平均長さSmおよび十点平均粗さRzは、吹き付け装置62による樹脂15のスプレー方法や乾燥装置66による樹脂15の乾燥方法等を適宜設定することにより、調節することが可能である。
【0064】
とりわけ、本実施の形態においては、上述したように、シート状の原反20の法線方向に沿った吹き付け装置62の吹き出し口62aから原反20の表面20aまでの距離dが、20cm以上となっている。つまり、樹脂15の原反20までの飛行距離がある程度確保されている。この結果、吹き付け装置62から吹き出される樹脂15は、原反20に到達するまでにある程度乾燥され、流動性を低下させた状態で原反20の合成樹脂層22上に付着する。すなわち、原反20に付着した樹脂15が合成樹脂層22上を延び広がることを効果的に防止することができ、これにより、所望の範囲の平均長さSmや十点平均粗さRz等を有するように精度良く原反20を粗化しやすくなっている。
【0065】
なお、上述したように、シート状の原反20の法線に沿った吹き付け装置62の吹き出し口62aから原反20の表面20aまでの距離dは、100cm以下となっている。したがって、吹き付け装置62から吹き出される樹脂15が、原反20へ到達するまでに乾燥され過ぎ、合成樹脂層22上に安定して付着しなくなることを効果的に防止することができる。
【0066】
このようにして、原反20の一方の側の全表面20aがスプレーコーティングにより粗化され、当該原反20の全表面20aに微小凹凸形状16が形成される(マット化される)。とりわけ、図4に示す例においては、原反20の一方の表面20aが、粒状の樹脂15によって略全体的にコーティングされ、原反20の表面20aは、合成樹脂層20上にコーティングされた樹脂15によって構成されるようになっている。
【0067】
次に、粗化された原反20は、エンボス装置50に供給される。そして、エンボス装置50を用いたエンボス加工により、粗化された表面20a側から原反20に凹凸模様12が形成される。
【0068】
図5に示すように、原反20は、エンボス装置50のエンボスロール52と第2バックアップ体56との間に送り込まれ、エンボスロール52と第2バックアップ体56との間で挟圧される。なお、図5に示すように、原反20の合成樹脂層22がエンボス装置50のエンボスロール52に対面し、原反20の基材24が第2バックアップ体56に対面するようになる。これにより、エンボスロール52の凹凸部54の形状に対応した凹凸模様(皮模様)12が原反20の合成樹脂層22の表面に形成される。
【0069】
ところで、凹凸模様12を形成する際、凹凸模様12の凹部12bが形成される領域に、大きな加工圧力が付加される。すなわち、エンボスロール52の凹凸部54の凸部54aは大きな圧力で原反20を押圧する。そして、一般的に、エンボス型(エンボス版)52の凹凸部54は平滑に形成されており、凹凸部54(例えば凸部54a)でのJISS6007に準拠した光沢度は、通常、少なくとも8より大きく、多くの場合は15以上となっている。したがって、図5に示すように、凹凸模様12の凹部12bが形成されるようになる原反20の表面上にそれまで形成されていた微小な凹凸形状16は、押圧されてなだらかになる。すなわち、凹凸模様12の凹部12bが形成されるようになる原反20の表面での光沢度は上昇する。本実施の形態においては、さらに、原反20上の凹凸模様12の凹部12bの底面が平坦化されるようになる。
【0070】
とりわけ、上述したように、スプレーコーティングによって粗化された原反20の表面20aの平均長さSmが30μm以上であるとともに表面20aの十点平均粗さRzが20μm以下であり、スプレーコーティングによって粗化された原反20の表面20aの光沢度が4以上となっている場合、原反20上の凹凸模様12の凹部12b内を十分になだらかにすることができ、これにより、この原反20(離型紙10)を用いて製造されるシート状部材30の凸部32aの上面が十分な光沢を有するようにすることができる。
【0071】
一方、凹凸模様12を形成する際、凹凸模様12の凸部12aが形成される領域には、比較的小さな加工圧力しか付加されない。したがって、凹凸模様12の凸部12a上に位置するようになる微小な凹凸16を、そのままの状態で(図5参照)、あるいは若干なだらかにした状態で残留させることができる。とりわけ、エンボスロール52の凹凸部54の凹部54bの深さ(ギャップ)を、深くしておく、具体的には、図5に示すように、形成されるべき凹凸模様12の凸部12aの高さの値よりも深くしておくことにより、凹凸模様12の凸部12a上に位置するようになる微小な凹凸16を潰してしまうことなくそのままの状態で残留させることができる。
【0072】
とりわけ、上述したように、スプレーコーティングによって粗化された原反20の表面20aの平均長さSmが80μm以下であるとともに表面20aの十点平均粗さRzが5μm以上であり、スプレーコーティングによって粗化された原反20の表面20aの光沢度が8以下となっている場合、原反20上の凹凸模様12の凸部12a上に有効な微小凹凸形状16を残すことができ、これにより、この原反20(離型紙10)を用いて製造されるシート状部材30の凹部32bへ入射する光を十分に散乱させることができる。
【0073】
このようにして、凹部12bと凸部12aとを有する粗大な凹凸模様12が表面に形成された原反20を備えた離型紙10であって、凸部12a上に微小な凹凸形状16が形成され、凹部12b内が平滑化された離型紙10を製造することができる。製造された離型紙10は、図示しない回収装置に巻き取られていく。
【0074】
以上のように本実施の形態によれば、まず、スプレーコーティング装置60により原反20に樹脂15をスプレーコーティングすることによって、当該表面20aに微小な凹凸16を形成する。これによって、原反20の凹凸模様12を形成されるべき表面20aの光沢度が、たとえ当初は大きな値を有していたとしても、所定の値以下まで、例えばエンボス型(エンボス版)52の凹凸部(凹凸面、転写面)54の光沢度より小さい値まで、低下させることができる。そしてその後に、エンボス装置50のエンボスロール52により、原反20の一方の表面20a上に微小な凹凸16よりも粗大な凹凸模様12を形成する。そして、凹凸模様12を形成する際、凹凸模様12の凹部12bが形成される領域に大きな加工圧力が付加され、その一方で、凹凸模様12の凸部12aが形成される領域には比較的小さな加工圧力しか付加されない。したがって、凹凸模様12の凸部12a上に位置するようになる微小な凹凸16をそのまま又は若干なだらかにして残留させることができる。同時に、凹凸模様12の凹部12b上に位置するようになる微小な凹凸16をなだらかにすることもできる。この結果、この離型紙10を型紙として用いてシート状部材30を作製した場合、シート状部材30に転写された模様32の凸部32aの表面はなだらかとなり優れた光沢を有するようになる。その一方で、シート状部材30に転写された模様32の凹部32bの底面には微小な凹凸36が形成される。これにより、シート状部材30に転写された模様32は、模様32の凸部32aと凹部32bとの間で高いコントラストを有し、また、凸部32a上に優れた光沢を有するようになる。すなわち、本実施の形態によれば、優れた光沢とコントラストとを有する模様32をシート状部材30に転写することができる。また、本実施の形態によれば、離型紙10の凹凸模様12の凹部12bと凸部12aとのギャップではなく、凹凸模様12の凸部12a上に残存する微小な凹凸16によって、シート状部材30に転写される模様32のコントラストを高めるようになっている。したがって、離型紙10の製造中に、原反20に高い加工圧力を付加する必要がない。これにより、離型紙10を高い生産効率で製造することができるとともに、原反20、とりわけ基材24へのダメージを低減することができる。また、製造装置40の製造コストおよび維持コストを低減することができる。さらに、本実施の形態によれば、原反20が当初有している光沢度の程度によらず、優れた光沢とコントラストとを有する模様32をシート状部材30に転写することができる離型紙を、安定して製造することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、スプレーコーティングされる樹脂15は、原反20の表面をなしている樹脂と同一となっている。したがって、材料的な界面を発生させることなく、原反20の表面20aを粗化させることができる。すなわち、本実施の形態は、特殊な用途に応じた離型紙(典型的には、過酷な使用条件に耐え得る離型紙)を製造するために用いられる、基材24と基材24上に接合された樹脂層22とを有する原反20に対して好適に適用され得る。
【0076】
さらに、本実施の形態によれば、スプレーコーティングされる樹脂15は、20cm以上の吹き付け距離dで原反20に吹き付けられる。したがって、原反20に付着するまでに樹脂15は乾燥され、原反20に付着した樹脂15は流動性を有している。このため、樹脂15が原反20上でなだらかに広がることを防止し、原反20表面20aを所望の程度に精度良く粗化することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態によれば、スプレーコーティング装置60を用いたスプレーコーティングにより、原反20の表面20aを粗化している。したがって、容易かつ迅速に原反20の表面20aに微小な凹凸16を形成することができる。
【0078】
さらに、本実施の形態によれば、凹凸模様12の凹部12bの底面を平坦化するようになっている。このような離型紙によれば、極めて優れた光沢を有する模様をシート状部材30に転写することができるようになる。
【0079】
さらに、本実施の形態によれば、凹凸模様12を形成する工程において、原反20の凹凸模様12が形成されるようになる全領域に、微小な凹凸16が形成されるようになっている。このような本実施の形態によれば、原反20上における微小な凹凸16の配置位置と、原反20上における凹凸模様12と、を厳密に位置合わせする必要がない。また、原反20上に形成された不用な微小な凹凸16は、凹凸模様12の形成中になだらかにされるようになっている。したがって、所望の位置にのみに微小な凹凸16が存在する離型紙10を高い生産効率で製造することができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、上述した実施の形態において、合成皮革用の離型紙10を製造する例を示したが、これに限られず、その他の用途に用いられる離型紙(一例として、壁紙用の離型紙)を製造するようにしてもよい。
【0082】
また、上述した実施の形態において、原反20の合成樹脂層22側の全表面20aをスプレーコーティングにて粗化する例を示したが、これに限られず、例えば、原反20上の凹凸模様12が形成される領域のみを、あるいは、原反20上の凹凸模様12の凸部12aが形成される領域のみを、スプレーコーティングにて粗化するようにしてもよい。
【0083】
さらに、上述した実施の形態において、スプレーコーティング装置60の吹き付け装置62に対面する第1バックアップ体68が第1バックアップロールとして構成された例を示したが、これに限られず、例えば吹き付け装置62から樹脂15を吹き付けられる原反20を安定して支持することができる種々の装置類、例えば受け台を第1バックアップ体68として採用することができる。
【0084】
さらに、上述した実施の形態において、エンボス装置50がエンボス型52としてエンボスロールを有する例を示したが、これに限られず、種々の既知なエンボス装置を採用することができる。例えば、ベルト式や平板式のエンボス型を被加工体に押圧するプレス装置を、エンボス装置として採用することができる。
【0085】
さらに、上述した実施の形態において、エンボス装置50の第2バックアップ体56の第2バックアップロールの外周面が凹凸の無い平坦な曲面状に形成される例を示したが、これに限られず、エンボスロール52の凹凸部54に対応した凹凸を有するようにしてもよい。
【0086】
さらに、上述した実施の形態において、エンボス装置50のエンボス型52に対面する第2バックアップ体56が第2バックアップロールとして構成された例を示したが、これに限られず、例えばエンボス型52との間で原反20を安定して支持することができる種々の装置類、例えば受け台を第2バックアップ体56として採用することができる。
【0087】
さらに、上述した実施の形態において、コーティング装置71として印刷ユニットを用いて合成樹脂層22をなすようになる樹脂22aを基材24上にコーティングする例を示したが、これに限られず、他のコーティング装置を用いて合成樹脂層22をなすようになる樹脂22aを基材24上にコーティングしてもよい。
【0088】
さらに、上述した実施の形態において、離型紙の製造装置40が、原反作製装置70を含んでいる例を示したが、これに限られない。製造装置40から原反作製装置70を省き、作製済みの原反20を製造装置40に供給するようにしてもよい。
【0089】
さらに、上述した実施の形態に限られず、合成樹脂層22をなす樹脂22aおよびスプレーコーティングされる樹脂15の少なくともいずれか一つとして、紫外線硬化樹脂(UV樹脂)等の放射線硬化型樹脂(放射線硬化型樹脂溶液)が供給されるようにしてもよい。紫外線硬化性樹脂(UV樹脂)等の放射線硬化性樹脂が供給される場合、製造装置40が、放射線硬化性樹脂を硬化させるための手段(硬化手段)をさらに有するようにしてもよい。一例として、供給される樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、紫外線を照射する紫外線照射手段が製造装置40に設けられるようにしてもよい。紫外線照射手段等の硬化手段は、放射線硬化性樹脂が供給された後の経路、具体的には、原反作製装置70の乾燥装置78の下流側やスプレーコーティング装置60の乾燥装置66の下流側等に配置され得る。また、硬化手段を、エンボス装置50の下流側に配置することもできる。
【0090】
硬化手段がエンボス装置50の下流側に配置された製造装置によれば、一例として以下のようにして、離型紙10を製造することができる。まず、原反形成装置70によって、紫外線硬化性樹脂溶液(UV樹脂溶液)が第1樹脂22aとして基材22上に塗工される。次に、乾燥装置78によって、塗工された紫外線硬化性樹脂溶液中の溶剤が飛ばされ、基材22上に紫外線硬化性樹脂からなる合成樹脂層22が定着するようになる。その後、合成樹脂層22上に紫外線硬化性樹脂溶液(UV樹脂溶液)が第2樹脂15としてスプレーされ、さらに、スプレーされた紫外線硬化性樹脂溶液が乾燥装置66によって乾燥される。これにより、微小凹凸形状16を表面に有した合成樹脂層22と、基材24と、からなる原反20が得られる。次に、エンボス装置50によって、この原反20に凹凸模様12が形成され、その後、硬化手段によって、紫外線硬化性樹脂からなる合成樹脂層22が硬化される。このようにして離型紙10を製造した場合、放射線硬化型樹脂が未だ硬化されていないことから、エンボス装置50により凹凸模様12を精度良く原反20に形成することができる。さらに、放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、精度良く形成された凹凸模様12をそのままの状態に維持することも可能となる。
【0091】
なお、供給される紫外線硬化性樹脂溶液の例としては、紫外線硬化性樹脂(UV樹脂)と、MEK(メチル・エチル・ケトン)溶剤と、PGM(プロピレン・グリコール・モノエチルエーテル)と、を10:4:1で配合した紫外線硬化性樹脂溶液を用いることができる。このような紫外線硬化性樹脂溶液は、スプレーコーティング装置60の吹き付け装置62によって好適にスプレーすることができるとともに、原反作製装置70の印刷ユニット72によって好適に基材24上に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明による離型紙の製造装置および製造方法の一実施の形態を示す斜視図であって、原反を作製する装置および方法ならびに原反を粗化する装置および方法を示す図である。
【図2】図2は、本発明による離型紙の製造装置および製造方法の一実施の形態を示す斜視図であって、原反に凹凸模様を形成する装置および方法を示す図である。
【図3】図3は、原反に樹脂を吹き付ける装置および方法を示す断面図である。
【図4】図4は、粗化された原反を示す断面図である。
【図5】図5は、原反に凹凸模様を形成する装置および方法を示す断面図である。
【図6】図6は、図1および図2に示された離型紙の製造装置および製造方法により製造される離型紙の一例を示す断面図である。
【図7】図7は、図6に示された離型紙を型紙として用いて作製されたシート状部材の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0093】
10 離型紙
12 凹凸模様
12a 凹凸模様の凸部
12b 凹凸模様の凹部
15 樹脂
16 微小な凹凸(微小凹凸形状)
20 原反
20a 面
22 合成樹脂層
22a 樹脂
24 基材
40 製造装置
50 エンボス装置
52 エンボス型(エンボスロール、エンボス版)
54 凹凸部
54a 凹凸部の凸部
54b 凹凸部の凹部
56 バックアップ体(第2バックアップ体)
60 スプレーコーティング装置
62 吹き付け装置
62a 吹き出し口
64 カバー
66 乾燥装置(第2乾燥装置)
70 原反作製装置
71 印刷ユニット
78 乾燥装置(第1乾燥装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する方法であって、
前記原反に樹脂をスプレーコーティングすることにより、前記原反の表面を粗化する工程と、
粗化された前記原反の前記表面に、エンボス加工により前記凹凸模様を形成する工程と、を備える
ことを特徴とする離型紙の製造方法。
【請求項2】
前記粗化する工程は、前記原反に樹脂を吹き付ける工程と、前記原反に吹き付けられた前記樹脂を乾燥させる工程と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の離型紙の製造方法。
【請求項3】
前記粗化する工程において、前記スプレーコーティングされる樹脂は、20cm以上の吹き付け距離で前記原反に吹き付けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の離型紙の製造方法。
【請求項4】
前記原反は、基材と、前記基材に積層された合成樹脂層と、を有し、
前記合成樹脂層の側の表面が粗化される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項5】
前記原反を作製する工程を、さらに備え、
前記原反を作製する工程は、前記合成樹脂層をなすようになる樹脂を前記基材の一方の表面上にコーティングする工程と、前記基材上にコーティングされた樹脂を乾燥させて前記基材上に前記合成樹脂層を形成する工程と、を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の離型紙の製造方法。
【請求項6】
前記原反にスプレーコーティングされる樹脂は、前記合成樹脂層をなす樹脂と同一である
ことを特徴とする請求項4または5に記載の離型紙の製造方法。
【請求項7】
前記粗化する工程において、前記原反の粗化された前記表面での光沢度の値が、エンボス加工において用いられるエンボス型の表面での光沢度の値よりも小さくなるように、前記樹脂をスプレーコーティングする
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項8】
前記粗化する工程において、前記原反の粗化された前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングする
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項9】
前記粗化する工程において、前記原反の粗化された表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の粗化された表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングする
ことを特徴とする請求項8に記載の離型紙の製造方法。
【請求項10】
前記粗化する工程において、前記原反の前記表面のうちの前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項11】
前記凹凸模様を形成する工程において、前記凹凸模様の凸部に位置するようになる前記原反の表面を粗化された状態に保ちながら、前記凹凸模様の凹部に位置するようになる前記原反の粗化された表面をならす
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項12】
原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造装置であって、
前記原反に樹脂をスプレーコーティングし、前記原反の表面を粗化するスプレーコーティング装置と、
前記スプレーコーティング装置の下流側に配置され、前記原反に前記凹凸模様を形成するエンボス装置と、を備える
ことを特徴とする離型紙の製造装置。
【請求項13】
前記スプレーコーティング装置は、前記原反に前記樹脂を吹き付ける吹き付け装置と、前記原反に吹き付けられた前記樹脂を乾燥させる乾燥装置と、を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の離型紙の製造装置。
【請求項14】
前記スプレーコーティング装置は、前記原反に対面するように配置され前記原反に前記樹脂を吹き付ける吹き付け装置を有し、
前記吹き付け装置は、前記吹き付け装置の前記樹脂を吹き出す吹き出し口が前記原反から20cm以上離間するようにして、配置されている
ことを特徴とする請求項12または13に記載の離型紙の製造装置。
【請求項15】
前記スプレーコーティング装置の上流側に配置され、基材と、前記基材に積層された合成樹脂層と、を有する原反を作製する原反作製装置をさらに備え、
前記原反作製装置は、前記合成樹脂層をなすようになる樹脂を前記基材の一方の表面上にコーティングするコーティング装置と、前記基材上にコーティングされた樹脂を乾燥させて前記基材上に前記合成樹脂層を形成する乾燥装置と、を有する
ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項16】
前記原反は、基材と、前記基材上に積層された合成樹脂層と、を有し、
前記スプレーコーティング装置は、前記原反の前記合成樹脂層に対面するように配置され前記合成樹脂層に前記樹脂を吹き付ける吹き付け装置を有し、
前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記合成樹脂層に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有する
ことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項17】
前記原反は、基材と、前記基材上に積層された合成樹脂層と、を有し、
前記吹き付け装置は、前記合成樹脂層をなす樹脂と同一の樹脂を前記原反の表面に吹き付ける
ことを特徴とする請求項12乃至16のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項18】
前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記原反に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有し、
前記スプレーコーティング装置は、前記原反の前記表面での光沢度の値が、前記エンボス型の前記凹凸部での光沢度の値よりも小さくなるように、前記原反の前記表面を粗化する
ことを特徴とする請求項12乃至17のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項19】
前記スプレーコーティング装置は、前記原反の粗化された前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングする
ことを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項20】
前記スプレーコーティング装置は、前記原反の粗化された表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の粗化された表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、前記樹脂をスプレーコーティングする
ことを特徴とする請求項19に記載の離型紙の製造装置。
【請求項21】
前記スプレーコーティング装置は、前記原反の前記表面のうちの前記エンボス装置によって前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化する
ことを特徴とする請求項12乃至20のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項22】
前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部を有するエンボス型と、前記エンボス型に対向して配置され、前記エンボス型との間で前記原反を圧するようになるバックアップ体と、を有し、
前記エンボス型の前記凹凸部の凸部は、前記バックアップ体との間で原反を圧して前記原反の粗化された前記表面をなだらかにする
ことを特徴とする請求項12乃至21のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−233957(P2009−233957A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81305(P2008−81305)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】