説明

難燃剤、樹脂組成物、及び樹脂成形体

【課題】スルホン酸基を有するが本構成を有さない場合に比べ、樹脂に含有させた際の難燃性に優れた難燃剤を提供すること。
【解決手段】アミド硫酸と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物、並びに2価以上の陽イオンから選択される少なくとも1種と、を含む難燃剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス樹脂(以下、単に「樹脂」ということがある)に混合して難燃化する目的に使用される難燃剤としては、従来からハロゲン系化合物、三酸化アンチモン、リン系化合物、水和金属化合物などが使用されている。一方で、近年、難燃性を有する非ハロゲン系難燃剤の開発が求められている。
【0003】
非ハロゲン系の難燃剤として、例えば、特許文献1では、スルファミン酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、及び硫酸から選ばれる1種以上の無機酸のグアニジン塩、アンモニウム塩、及びI〜III族の金属塩から選ばれる少なくとも1種類の塩と、ポリスチレンスルホン酸系水溶性高分子、及びポリカルボン酸系水溶性高分子などから選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、を必須成分として含有する組成物が提案されている。
また、特許文献2では、アミノ基含有トリアジン化合物と、硫酸及びスルホン酸から選択された少なくとも1種と、の塩で構成された難燃剤を含む樹脂組成物が提案されている。また、特許文献3では、リン系酸残基が導入されたアクリルアミド系難燃剤が提案されている。
また、特許文献4では、含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸誘導体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−60447号公報
【特許文献2】特開2007−119645号公報
【特許文献3】特開2007−106803号公報
【特許文献4】特開2006−001839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、スルホン酸基を有するが本構成を有さない場合に比べ、樹脂に含有させた際の難燃性に優れた難燃剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
アミド硫酸と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物、並びに2価以上の陽イオンから選択される少なくとも1種と、を含む難燃剤。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物が、芳香環を含む化合物である請求項1に記載の難燃剤。
【0008】
請求項3に係る発明は、
さらに、カチオン成分及びアニオン成分の少なくとも一方を含む高分子化合物をさらに含む難燃剤。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃剤と、樹脂と、を含む樹脂組成物。
【0010】
請求項5に係る発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃剤と、樹脂と、を含む樹脂成形体。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、スルホン酸基を有するが本構成を有さない場合に比べ、樹脂に含有させた際の難燃性に優れた難燃剤が提供される。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、さらに成分の染み出し(ブリード)を抑制した難燃剤が提供される。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、さらに成分の染み出し(ブリード)を抑制した難燃剤が提供される。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、難燃性に優れた樹脂成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る樹脂成形体を用いて構成された筐体及び事務機器部品を備えた画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<難燃剤>
本実施形態に係る難燃剤は、アミド硫酸(スルファミン酸)と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物、並びに2価以上の陽イオンから選択される少なくとも1種と、を含んで構成される。本実施形態に係る難燃剤は、上記構成とすることで、各成分間にイオン結合を生じ、イオンコンプレックスが形成されると考えられ、スルホン酸基を有するが本構成を有さない場合に比べ、樹脂に含有させた際の難燃性に優れた難燃剤となる。そして、これを含む樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を成形した樹脂成形体も、難燃性に優れたものとなる。
また、本実施形態に係る難燃剤は、必要に応じて、さらに硫酸を含んで構成されていてもよい。
【0015】
ここで、「難燃剤」とは、単独では難燃性を示さない、すなわち、UL−94で規定される難燃性がHB未満の樹脂に添加して得られる樹脂組成物の、UL−94で規定される難燃性がHB以上となるものをいう。
なお、難燃度(UL規格)は、米国のUNDERWRITERS LABORATORIES INC.社が制定、認可している電気機器に関する安全性の規格であり、UL燃焼試験法による垂直燃焼試験により規定された規格である。難燃性の程度によりV−0、V−1、V−2がありV−0に近づくほど高難燃性材料であることを示している。燃焼時間が10秒以下から30秒以下で燃焼しながら落ちる溶融物がない場合でV−0乃至V−1レベル、及び燃焼しながら落下する溶融物のある場合はV−2である。
【0016】
以下、各成分について説明する。
【0017】
まず、アミド硫酸(スルファミン酸)について説明する。
アミド硫酸は、本実施形態に係る難燃剤において必須の成分である。難燃剤成分中でアミド硫酸はカチオン成分とイオン結合しており、主鎖、あるいは側鎖の端部に結合している。イオン結合しているカチオン成分は望ましくは2価以上の陽イオンであることがよい。
【0018】
次に、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物について説明する。
アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物は、例えば、芳香族化合物にアミノ基及びスルホン酸基が置換した低分子化合物(NH−A−SOH:A=芳香族化合物(価数は特に問われない))、脂肪族化合物にアミノ基及びスルホン酸基が置換した化合物(NH−B−SOH:B=脂肪族化合物(価数は特に問われない))、アミノ基を有するモノマーとスルホン酸基を有するモノマーを含む共重合体等が挙げられる。特に、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物としては、成分の染み出し(ブリード)を抑制する点から、芳香環を含む化合物が好適であることから、芳香族化合物にアミノ基及びスルホン酸基が置換した低分子化合物がよい。
【0019】
アミノ基及びスルホン酸基が置換する芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン環、多核芳香環、又は芳香族縮合環が挙げられる。
【0020】
ここで、多核芳香環とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素―炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。その具体例としては、例えばビフェニル、又はターフェニル等が挙げられる。
【0021】
また、芳香族縮合環とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。その具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、フルオレン等が挙げられる。
【0022】
これら、アミノ基及びスルホン酸基が置換する芳香族化合物の中も、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンが好適である。
【0023】
アミノ基及びスルホン酸基が置換する脂肪族化合物としては、例えば、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、アミノベンゼンスルホン酸、トルイジンスルホン酸、ジメチルアニリンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸、アミノナフトールスルホン酸等が好適に挙げられる。
【0025】
次に、2価以上の陽イオンについて説明する。
2価以上の陽イオンとしては、2価の陽イオン、3価の陽イオンが好適に挙げられる。陽イオンとしては、錯イオン、単原子イオンのいずれでもよい。
【0026】
2価の単原子イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カドミウム、ニッケル(II)、亜鉛、銅(II)、水銀(II)、鉄(II)、コバルト(II)、スズ(II)、鉛(II)、マンガン(II)等が挙げられる。
2価の錯イオンとしては、テトラアンミン亜鉛(II)、テトラアンミン銅(II)、テトラアクア銅(II)、チオシアノ鉄(III)、ヘキサアンミンニッケル(II)、プルプレオ等が挙げられる。
3価の単原子イオンとしてはアルミニウム、鉄(III)、クロム(III)等が挙げられる。
3価の錯イオンとしてはヘキサアンミンコバルト(III)、ヘキサアクアコバルト(III)、ヘキサアンミンクロム(III)、ローゼオ等が挙げられる。
【0027】
これらの2価以上の陽イオンの中も、バリウム、カルシウム、亜鉛、鉄、アルミニウムが好適である。
【0028】
次に、硫酸について説明する。
硫酸は、本実施形態に係る難燃剤において必要に応じて添加される成分である。硫酸は難燃剤成分中で有機化合物系カチオン成分とイオン結合していることが望ましい。
【0029】
本実施形態に係る難燃剤は、アミド硫酸(スルファミン酸)に加え、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物並びに2価以上の陽イオンから選択される少なくとも1種を含んで構成されるが、好適な組み合わせは、以下の通りである。
【0030】
・アミド硫酸(スルファミン酸)と、2価以上の陽イオンと、の組み合わせ
・アミド硫酸(スルファミン酸)と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物と、の組み合わせ
・アミド硫酸(スルファミン酸)と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物と、2価以上の陽イオンと、の組み合わせ
・アミド硫酸(スルファミン酸)と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物と、2価以上の陽イオンと、硫酸と、の組み合わせ
【0031】
本実施形態に係る難燃剤は、カチオン成分及びアニオン成分の少なくとも一方を含む高分子化合物をさらに含むことが、成分の染み出し(ブリード)を抑制する点で好適である。
【0032】
カチオン成分を有する高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミンやその共重合体等が挙げられる。これらの中でも、主骨格に窒素を含む高分子化合物であるポリエチレンイミンが特に望ましい。
【0033】
アニオン成分を有する高分子化合物としては、
スルホン酸基を有する高分子化合物(例えばアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の重合及び共重合体、スチレンスルホン酸の重合及び共重合体等)、カルボン酸基を有する高分子化合物(例えばアクリル酸、メタクリル酸の重合及び共重合体等)が挙げられる。
【0034】
カチオン成分及びアニオン成分の双方を有する高分子化合物としては、例えば、アミノ基を有するアリルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のモノマーとスルホン酸基を有するアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のモノマーあるいはカルボン酸基を有するアクリル酸、メタクリル酸等のモノマーを含む共重合体が挙げられる。
【0035】
本高分子化合物の重量平均分子量は、例えば、1000以上100万以下、望ましくは5000以上50万以下、より望ましくは1万以上10万以下であることがよい。
【0036】
本実施形態に係る難燃剤は、水不溶性を示すことが好適である。 本実施形態に係る難燃剤が水不溶性であることで、高温高湿状態での難燃剤のブリード(染みだし)がより抑制されると考えられる。なお、本実施形態において「水不溶性」とは、1wt%水分散液(20℃)を作製し、1時間攪拌した後に、白濁した状態、二層に分離した状態、沈殿物が分散している状態のいずれかを示しており、目視で判断される。
【0037】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物には、上記難燃剤と、樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する)が含有されている。
【0038】
その他の樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メチルペンテン、熱可塑性加硫エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、シリコーン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリメチルペンテン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリロニトリル、ポリメトキシアセタール、ポリイソブチレン、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリ−n−ブチルメタクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリブタジエンアクリルニトリル、ポリブテン−1、ポリアリルスルホン、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリエステルアルキド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリアミド、天然ゴム、ニトリルゴム、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体、イソプレンゴム、アイオノマー、ブチルゴム、フラン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、プロピオン酸セルロース、ヒドリンゴム、カルボキシメチルセルロース、クレゾール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、ビスマレイミドトリアジン、シス1・4ポリブタジエン合成ゴム、アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、アクリル酸エステルゴム、ポリ乳酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物において、上記難燃剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。樹脂組成物に含まれる難燃剤の含有量が上記範囲内であると、難燃性が十分で且つ樹脂組成物の成形体の良好な機械的強度も得られる。
【0040】
また、樹脂組成物において、上記その他の樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以上99質量部以下であることが好ましく、50質量部以上95質量部以下であることが更に好ましい。樹脂組成物に含まれるその他の樹脂の含有量が上記範囲内であると、難燃性が十分で且つ樹脂組成物の成形体の良好な機械的強度も得られる。
【0041】
なお、樹脂組成物には、上記難燃剤の他に、上記難燃剤以外の難燃剤(以下、「その他の難燃剤」と称する。)を含んでもよい。その他の難燃剤は、上記本実施形態に係る難燃剤よりも少ない含有量で上記その他の樹脂に含有される。従って、その他の難燃剤のみ含有する樹脂組成物は、当然本実施形態の範囲外である。
この「その他の難燃剤」としては、例えば、リン系難燃剤、臭素系難燃剤が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、強化剤、相溶化剤、耐候剤、強化剤、加水分解防止剤等の添加剤、触媒などをさらに含有してもよい。これらの添加剤及び触媒の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、それぞれ5質量%以下であることが好ましい。
【0043】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を成形してなるものである。
この樹脂成形体は、例えば、上述した樹脂組成物を、射出成形、射出圧縮成形、プレス成形、押出成形、ブロー成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形等の公知の方法により成形することで得られる。
【0044】
本実施形態に係る樹脂成形品体を得るための成形機としては、プレス成形機、インジェクション成形機、モールド成形機、ブロー成形機、押出成形機、及び紡糸成形機のうちから選択される1以上の成形機が用いられる。したがって、これらの1つにより成形を行ってもよいし、1つの成形機により成形を行った後、他の成形機により続けて成形を行ってもよい。
【0045】
成形された樹脂成形体の形状は、シート状、棒状、糸状など特に限定されるものではない。また、その大きさも制限されるものではない。
【0046】
本実施形態に係る樹脂成形体は、例えば、家電製品や事務機器などの筐体又はそれらの各種部品、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品皿、飲料ボトル、薬品ラップ材等に適用される。
【0047】
この樹脂成形体は、UL−94試験による難燃性がHB以上であることが好ましい。この特性を有する樹脂成形体は、上記説明した樹脂組成物を成形することで得られる。
【0048】
ここで、図1は、本実施形態に係る樹脂成形体を用いて構成された筐体及び事務機器部品を備える画像形成装置の一例を示す図であり、画像形成装置を前側から見た外観斜視図である。図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者により装置内を操作されるよう開閉される構成となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0049】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、及び、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置及び制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱されるプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0050】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーを補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0051】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙受け136が備えられており、必要に応じてここからも用紙が供給される。
【0052】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙受け136が設けられている側と反対側に排出受け138が複数備えられており、この排出受け138に画像形成後の用紙が排出される。
【0053】
画像形成装置100において、フロントカバー120a,120bは、開閉時の応力及び衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、プロセスカートリッジ142は、着脱の衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、筐体150及び筐体152は、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。そのため、本実施形態に係る樹脂成形体は、画像形成装置100のフロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、及び筐体152として用いられるのが好適である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
アミド硫酸30.8gと水酸化バリウム8水和物50gを水中で混合したものを蒸発乾燥させて目的物(難燃剤)を得た。乾燥した化合物は25℃の水には不溶であった。
【0056】
(実施例2)
60℃に加温した蒸留水にアミノベンゼンスルホン酸55gを溶解した後、水酸化バリウム8水和物50gを混合し、次にアミド硫酸30.8gを加え蒸発乾燥させて目的物(難燃剤)を得た。
【0057】
(実施例3)
水酸化バリウム8水和物75.7gとアミド硫酸24gを水中で混合して、アミノベンゼンスルホン酸42gを添加し溶解させた後、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸50gを添加し蒸発乾燥させて目的物(難燃剤)を得た。
【0058】
(実施例4)
硫酸と水酸化バリウム8水和物とアミド硫酸を水中で混合し調整液Aを作製した。純正化学製のポリエチレンイミンP−1000の水溶液にアミノベンゼンスルホン酸を添加し調製液Bを作製した。次に、調製液Bに調製液Aを混合し蒸発乾燥させて目的物(難燃剤)を得た。
【0059】
(実施例5)
ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸に代えて、ポリアクリル酸を用いた以外は、実施例3と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0060】
(比較例1〜3)
硫酸バリウム、硫酸カリシウム、アミノベンゼンスルホン酸バリウムを、それぞれ目的物(難燃剤)として準備した。
【0061】
(実施例6)
硫酸と水酸化バリウム8水和物とアミド硫酸を水中で混合し調整液Aを作製した。純正化学製のポリエチレンイミンP−1000の水溶液にアミノメタンスルホン酸を添加し調製液Bを作製した。次に調製液Bに調製液Aを混合し蒸発乾燥させて目的物(難燃剤)を得た。
【0062】
(実施例7)
アミノベンゼンスルホン酸に変えて、6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0063】
(実施例8)
アミノベンゼンスルホン酸に変えて、6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0064】
(実施例9)
アミノベンゼンスルホン酸に変えて、m−トルイジン−4−スルホン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0065】
(実施例10)
アミノベンゼンスルホン酸に変えて、2,4−ジメチルアニリン−6−スルホン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0066】
(実施例11)
水酸化バリウム8水和物に変えて、水酸化カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0067】
(実施例12)
水酸化バリウム8水和物に変えて、水酸化カルシウムを用いた以外は、実施例2と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0068】
(実施例13)
水酸化バリウム8水和物に変えて、水酸化亜鉛を用いた以外は、実施例1と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0069】
(実施例14)
水酸化バリウム8水和物に変えて、水酸化亜鉛を用いた以外は、実施例2と同様にして目的物(難燃剤)を得た。
【0070】
(評価)
上記実施例及び比較例で作製した目的物(難燃剤)25質量部を、それぞれ100質量部のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、二軸押出し機を用いて180℃で溶融混合して樹脂組成物を作製した後、この樹脂組成物を200℃でプレスにより溶融成形し、樹脂成形体(UL−94燃焼試験用試験片:幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0071】
作製した樹脂組成物及び燃焼試験用試験片について、下記評価を行った。評価結果は、表1乃至表4に示した。
【0072】
−分解開始温度、及び残存率の測定−
作製した樹脂組成物の熱重量分析(TGA)を下記のように行った。すなわち、セイコー社製TGA−DTA2000S(商品名)を用いて、窒素気流下、20℃/minの昇温速度で室温(25℃)から600℃まで昇温し、分解開始温度、600℃における残存率を測定した。
【0073】
−分散性評価−
作製した樹脂組成物中における難燃剤の分散性を評価した。
分散性の評価方法としては、作製した樹脂組成物を200℃でプレスして厚み500μmのフィルムを作製し、顕微鏡による観察を行った。
分散性の評価基準は以下の通りである。
・G1:分散性評価結果が均一に分散しており、分散性良好。
・G2:分散性評価結果が凝集は確認されないが難燃剤が粒子状に確認でき不均一に分散している。
・G3:分散性評価結果が凝集部分多数確認され不均一に分散しており、分散性不良。
【0074】
−ブリード評価−
作製した燃焼試験用試験片を温度60℃、相対湿度85%で400時間放置し、以下の基準によりブリード評価を行った。
・G1:樹脂表面上に、特に変質、変色等は認められない。
・G2:樹脂表面上に、特に変質、変色等が目視で観察された。
・G3:樹脂表面がベトツキ内部から難燃剤が染みだした(ブリードした)状態が目視で観察された。
【0075】
−湿熱時の変色性(耐熱変色性)評価−
作製した樹脂組成物を250℃のホットプレート上で1時間保持し変色の確認を行い、以下の基準により湿熱時の変色性(耐熱変色性)評価を行った。
・G1:樹脂の変色は認められない。
・G2:樹脂が僅かに黄変した。
・G3:樹脂が褐色になった。
【0076】
−難燃性の評価−
燃焼試験用試験片を用いて、UL−94の垂直燃焼試験を行い、UL−94規格の判定基準に従って、HB、V−0、V−1、V−2及び燃焼の5つのランクで判定した。なお、測定した結果、延焼してしまった場合には、「NG」と判定した。
【0077】
−金型汚染評価−
樹脂組成物温度を250℃、金型温度を30℃として、射出機からダンベル金型内へ射出成形し、樹脂が充填されなかった残りの空間に付着した樹脂組成物を肉眼で観察した。なお、上記射出成形の条件はショートショットとなる条件であり、ショートショットとは、射出成形において一部が欠けて不完全な形状の成形品を生ずる現象を意味する。
金型汚染評価基準は以下の通りである。
・G1:500回成形後金型に変化なしである場合。
・G2:500回成形後金型表面に変色部位が観察された場合。
・G3:100回成形後金型に付着物が観察された場合。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、難燃性について良好な結果得られると共に、分解開始温度、600℃残渣量、分散性、ブリード、耐熱変色性につても良好な結果が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0083】
120a、120b フロントカバー
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド硫酸と、アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物、並びに2価以上の陽イオンから選択される少なくとも1種と、を含む難燃剤。
【請求項2】
前記アミノ基及びスルホン酸基を有する化合物が、芳香環を含む化合物である請求項1に記載の難燃剤。
【請求項3】
さらに、カチオン成分及びアニオン成分の少なくとも一方を含む高分子化合物をさらに含む難燃剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃剤と、樹脂と、を含む樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃剤と、樹脂と、を含む樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−215790(P2010−215790A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64523(P2009−64523)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】