説明

難燃性ポリカーボネート組成物

本発明は、本明細書において定義された少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート樹脂と、少なくとも1種の防滴下剤と、少なくとも1種の塩とを含む新規難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。本発明は、前記難燃性組成物を含む物品を調製する方法および前記難燃性組成物から製造された物品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、優れた機械的強度、特に衝撃強度、電気特性および光学的透明性を有し、特に、オフィスオートメーション機械類、電気・電子機械類、自動車および建築の様々な分野において広く用いられている。オフィスオートメーション機械類および電気・電子機械類などの分野で用いられるポリマーは高い難燃性を有する必要がある。典型的には、ポリカーボネート樹脂は、難燃剤と、燃焼しているポリカーボネート樹脂からの溶融樹脂のドリッピングを防ぐ溶融滴下防止剤(anti-drip agent)の両方の混入により難燃性にされる。
【0003】
特許文献1には、パーフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ塩またはテトラアルキルアンモニウム塩を含む難燃性ポリカーボネート組成物が開示されている。特許文献2には、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む難燃性ポリカーボネート組成物が開示されている。
【0004】
それにもかかわらず、ポリカーボネート樹脂を難燃性にするためにポリカーボネート樹脂に低レベルで添加され得る化合物が必要とされ続けている。本発明は、ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する非過フッ素化スルホン化塩を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,775,367号明細書
【特許文献2】米国特許第5,449,710号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、
(A)少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート樹脂と、
(B)少なくとも1種の防滴下剤と、
(C)式M(MおよびQは以下で定義される通りである)を有する少なくとも1種の塩と
を含む難燃性ポリカーボネート組成物に関する。特定の一実施形態において、難燃性ポリカーボネート組成物は、成分(A)を約100部、成分(B)を約0.01〜約5.0部および成分(C)を約0.001〜約2.0部含む。更に、難燃性ポリカーボネート組成物は、任意に、1種以上の添加剤、充填剤またはそれらの組み合わせも含んでよい。
【0007】
本発明の別の実施形態において、防滴下剤はポリテトラフルオロエチレンであってもよい。更なる実施形態において、防滴下剤は成分(C)を含む混合物またはキットとして供給される。
【0008】
本発明のなお別の実施形態は、難燃性ポリカーボネート物品を調製する方法および前記難燃性ポリカーボネートから製造された物品を提供する。本方法は、
(a)ポリカーボネート樹脂組成物の成分(A)、(B)および(C)ならびに任意の添加剤、充填剤およびそれらの組み合わせを混合して、混合組成物を形成する工程と、
(b)前記混合組成物を粒子に成形する工程と、
(c)工程(b)の前記粒子を難燃性ポリカーボネート物品に溶融成形する工程と
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、
(A)少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート樹脂と、
(B)少なくとも1種の防滴下剤と、
(C)式M
(式中、Mは、(1)リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムからなる群から選択されるカチオンまたは(2)以下の11個のカチオン
【化1】

【化2】

からなる群から選択されるカチオンである)を有する少なくとも1種の塩と
を含む難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して、
(a)H、
(b)ハロゲン、
(c)−CH、−CあるいはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C25、好ましくはC〜C20の直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(d)−CH、−CあるいはO、N、SiおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、Cl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C25、好ましくはC〜C20の直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(e)C〜C25非置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール、
(f)C〜C25置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって、前記置換アリールまたは置換ヘテロアリールが、
(1)−CH、−CあるいはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C25、好ましくはC〜C20の直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(2)OH、
(3)NHおよび
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有するC〜C25置換アリールまたはC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、
、R、RおよびR10は独立して、
(g)−CH、−CあるいはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているの直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(h)−CH、−CあるいはO、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、Cl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C25、好ましくはC〜C20の直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(i)C〜C25非置換アリールまたはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール、
(j)C〜C25置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって、前記置換アリールまたは置換ヘテロアリールが、
(1)−CH、−CあるいはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C25、好ましくはC〜C20の直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(2)OH、
(3)NHおよび
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有するC〜C25置換アリールまたはC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、
任意にR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10の少なくとも2つは合一して環式または二環式のアルカニル基またはアルケニル基を形成することが可能であり、
は、式Iおよび式IIからなる群から選択されるアニオンである。
【化3】

式中、R11は、
(1)ハロゲン、
(2)−CH、−CあるいはCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、
(3)−OCH、−OCあるいはCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のアルコキシ、
(4)Cl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のフルオロアルキル、
(5)Cl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のフルオロアルコキシ、
(6)C〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のパーフルオロアルキルおよび
(7)C〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のパーフルオロアルコキシからなる群から選択され、
【化4】

式中、R13は、
(1)ハロゲン、
(2)−CH、−CあるいはCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のアルカンまたはアルケン、
(3)−OCH、−OCあるいはCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のアルコキシ、
(4)Cl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のフルオロアルキル、
(5)Cl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換されているC〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のフルオロアルコキシ、
(6)C〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のパーフルオロアルキルおよび
(7)C〜C15、好ましくはC〜Cの直鎖または分岐のパーフルオロアルコキシからなる群から選択される。
【0011】
本発明によると、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、組成物のコンパウンディング後に難燃要件を満たすポリカーボネート樹脂組成物である。米国においては、コンパウンディングされた組成物の難燃性は、Underwriter’s Laboratories,Inc.(Northbrook,IL)の試験方法UL−94に記載された通り、コンパウンディングされた組成物から調製された試験片を用いて決定してもよい。コンパウンディングされた組成物がUL−94に準拠してV−0分類を有することが好ましい。
【0012】
ポリカーボネート樹脂組成物中の(A)、(B)および(C)の重量比率は、成分(A)約100部、成分(B)約0.01〜約5.0部および成分(C)約0.001〜約2.0部である。より特定の実施形態において、成分(B)は約0.1〜約3.0部で添加され、なおより特定の実施形態において、成分(B)は約0.25〜約1.0部で添加される。別の実施形態において、成分(C)は約0.01〜約1.0部で添加され、なおより特定の実施形態において、成分(C)は約0.1〜約0.5部で添加される。2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂、防滴下剤または塩を用いる場合、重量比率値は、個々の芳香族ポリカーボネート樹脂、塩または防滴下剤の総合重量を示す。以下で記載される充填剤または顔料などの追加の成分を樹脂組成物に添加してもよい。成分(A)に添加される防滴下剤、塩または任意の他の添加成分の量は、添加成分のコスト、ポリカーボネート樹脂組成物から製造される生成物の難燃性および衝撃強度などのポリカーボネート樹脂組成物から製造される生成物の機械的特性および物理的特性などの多くの要素に応じて異なる。
【0013】
本発明のために有用な芳香族ポリカーボネート樹脂は、カーボネート連結を通して結合された二価フェノールの二価残基を含み、式
【化5】

によって表される。式中、Arは二価芳香族基である。Arは、好ましくは、式−Ar−Y−Ar−(式中、ArおよびArの各々は独立して炭素原子数5〜30の二価炭素環式芳香族基または二価ヘテロ環式芳香族基を表し、Yは炭素原子数1〜30の二価アルカン基を表す)によって表される二価芳香族基である。
【0014】
本明細書において用いられる「炭素環式」という用語は、炭素原子からなる環を有するか、炭素原子からなる環に関連付けられるか、または炭素原子からなる環によって特徴付けられることを意味する。本明細書において用いられる「ヘテロ環式」という用語は、2種類以上の原子の環(特に炭素でない少なくとも1つの原子を含有する炭素原子の環)を有するか、2種類以上の原子の環に関連付けられるか、または2種類以上の原子の環によって特徴付けられることを意味する。「ヘテロ環式芳香族基」は、1つ以上の環窒素原子、環酸素原子または環硫黄原子を有する芳香族基である。
【0015】
二価芳香族基ArおよびArの各々は、置換されていないか、または重合反応に影響を及ぼさない少なくとも1個の置換基で置換されているのいずれかである。適する置換基の例には、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基およびニトロ基が挙げられる。
【0016】
Lexan(登録商標)HF1110などの本発明のために適する芳香族ポリカーボネート樹脂は、General Electric(Waterford,MA)などの供給業者から市販されているか、または当業者に知られているいずれかの方法によって合成することが可能である。ポリカーボネートの調製、加工および特性の一般的説明は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,(Fifth Edition(2006),John Wiley & Sons,Inc.Hoboken,NJ,Volume19,page797−828)におけるBrunelle,D.J.,「Polycarbonates」において見ることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂を調製するための2つの方法が本明細書に記載されている。これらの方法は芳香族ポリカーボネート樹脂を調製する方法の例示であることを意図し、すべての変形または修正を含んでいるとはかぎらない。
【0017】
1つの方法によると、芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、米国特許第5,717,057号明細書、欄1行4〜欄45行10、米国特許第5,606,007号明細書、欄2行63〜欄25行23および米国特許第5,319,066号明細書、欄2行5〜欄7行22に記載された通り、溶融縮合反応によって調製することが可能である。本発明のために有用な適するポリカーボネートは、ジアリールカーボネートと二価フェノールの塩基触媒反応によって製造することが可能である。異なる特性のポリカーボネートを作るために様々なジアリールカーボネートおよび二価フェノールが用いられる。ジアリールカーボネートの非限定的な例は、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネート、ビス(メトリイルサリチル)カーボネートである。二価フェノールの非限定的な例は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後、「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ビフェノール;、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンである。工業的なポリカーボネート製造において用いられる一般的な組み合わせはDPCおよびBPAである。
【0018】
本発明のために適する本発明ポリカーボネート樹脂は相界面法によっても調製してよい。ポリカーボネート合成のための相界面法は周知されており、例えば、H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,vol.9,Interscience Publishers,New York 1964,p.33以下参照;Polymer Reviews,vol.10,「Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods」,Paul W.Morgan,Interscience Publishers,New York 1965,chap.VIII,p.325;Dres.U,Grigo,K.Kircher and P.R.Muller「Polycarbonate」in Becker/Braun,Kunststoff−Handbuch,vol.3/1,Polycarbonate,Polyacetale、Polyester,Celluloseester,Carl Hanser Verlag Munich,Vienna 1992,p.118−145;および米国特許第5,235,026号明細書,欄2行65−欄8行8に記載されている。
【0019】
この方法によると、アルカリ水溶液(または懸濁液)に初期に導入されたビスフェノール(または種々のビフェノールの混合物)の二ナトリウム塩のホスゲン化は、不活性有機溶媒または第2の相を形成する溶媒混合物の存在下で行われる。有機相中に主として存在するオリゴカーボネートが生成し、トリエチルアミンなどの第三アミンおよび第四アミンならびにテトラメチルアンモニウムクロリドに限定されないが、それらなどの適する触媒の助けによりオリゴカーボネートを更なる縮合に供して、有機相に溶解された高分子量ポリカーボネートを生じさせる。最後に、有機相を分離し、ポリカーボネートをMorgan(前掲)において記載された方法によって有機相から単離する。
【0020】
本発明のために適するポリカーボネートは、ポリジメチルシロキサン−co−BPAポリカーボネートも含む。これらのポリカーボネートの合成は、米国特許第3,189,662号明細書、欄1行9〜欄6行7および米国特許第3,419,634号明細書、欄1行24〜欄15行22に記載されている。ポリジメチルシロキサンは、ジメチルシロキサン+BPAの総合重量を基準にして少なくとも約1.0重量%でポリジメチルシロキサン−co−BPAポリカーボネート中に存在する。これらのポリマーは、非常に低いガラス転移温度を有し、けれども優れた熱安定性を保持し、良好な耐候性を有する点で上述したポリマーとは異なる。追加の調製方法はBrunelle,D.J.(前掲)に記載されている。
【0021】
本発明のために適するポリカーボネートは、ポリカーボネートと1種以上のポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリケトン、ポリエステル、ポリフェニルエーテル、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリ(メチルメタクリレート)とのブレンドも含む。
【0022】
適するいかなる防滴下剤成分(B)も本発明のポリカーボネート樹脂組成物中で用いることが可能である。防滴下剤は、例えば、微粉砕粉末として供給することが可能である。典型的な防滴下剤は、微粉末ポリテトラフルオロエチレン(p−TFE)(E.I.duPont de Nemours and Company(Wilmington DE)から市販されている)である。一実施形態において、少なくとも1種の防滴下剤は、少なくとも1種の塩(成分(C))と共に少なくとも1種の防滴下剤を含む混合物またはキットの一部として供給することが可能である。防滴下剤は、粉末または分散液として混合物またはキットの中で供給することが可能である。例えば、p−TFEは、成分(C)と共に微粉末または分散液として混合物またはキットの中で供給することが可能である。ここで、成分Cは、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートまたは1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはセシウム塩である。より詳しくは、成分Cは、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウムまたは1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウムであることが可能である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、成分(C)は、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネート、2−(1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヨードエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネート、N,N−ビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニル)イミドおよびN,N−ビス(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホニル)イミドからなる群から選択されるアニオン(Q)を含む。
【0024】
従って一実施形態において、成分(C)として有用な少なくとも1種の塩は、上の実施形態のすべてにおいて定義されたようにリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、ホスホニウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオンを含み、アニオンは、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、2−(1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヨードエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネート、N,N−ビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニル)イミドおよびN,N−ビス(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホニル)イミドからなる群から選択される。
【0025】
別の実施形態において、成分(C)として有用な少なくとも1種の塩は、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ブチル−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、N−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)プロピルイミダゾール1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、N−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エチルパーフルオロヘキシルイミダゾール1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)スルホネート、(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−トリオクチルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、テトラ−n−ブチルホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウム、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウムおよび1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホン酸カリウムからなる群から選択される。
【0026】
成分(C)のために有用なカチオン(M)源は商業的に入手できるか、または当業者に知られている方法によって合成してもよい。式Iのフルオロアルキルスルホネートアニオンは、米国特許出願公開第2006/0276670号明細書、パラグラフ14〜パラグラフ65および米国特許出願公開第2006/0276671号明細書、パラグラフ12〜パラグラフ88に記載された方法により一般に過フッ素化末端オレフィンまたは過フッ素化ビニルエーテルから合成してもよい。一実施形態において、亜硫酸カリウムおよび亜硫酸水素カリウムが緩衝剤として用いられ、別の実施形態において、反応はラジカル開始剤の存在しない状態で行われる。好ましい分離法は、水性反応混合物から粗1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート生成物および粗1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート生成物を分離するために凍結乾燥するか、または噴霧乾燥すること、粗1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート塩および粗1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート塩を抽出するためにアセトンを用いること、および冷却によって反応混合物から1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネートおよび1,1,2−トリフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネートを結晶化させることを含む。式IIのビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドは、(RSON(−)M(+)などのビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミド塩化合物の合成のために記載された通り合成することが可能である(米国特許第5,847,616号明細書;DesMarteau,D andHu,L.Q.(Inorg.Chem.(1993),32,5007−5010);米国特許第6,252,111号明細書;Caporiccio,Gら(J.Fluo.Chem.(2004),125,243−252):および米国特許第6,399,821号明細書を参照すること)。例えば、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸は、米国特許第2,403,207号明細書および欧州特許出願EP第47946号明細書に記載されたようにPClまたはカテコール−PClなどの適する塩素化試薬との反応によって対応する塩化スルホニルに最初に転化される。アセトニトリルなどの有機溶媒中でフッ化カリウムを用いて塩素をフッ素に替えて、フッ化スルホニルを製造することが可能である。
【0027】
【化6】

【0028】
フッ化スルホニルを回収し、フッ化スルホニルの2分子をLyapkalo,I.M.(Tetorahedron(2006)62,3137〜3145)に記載されたように結合して、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドを製造することが可能である。この手順によると、フッ化スルホニルをビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム(NHEt)塩に転化するために、塩化アンモニウムおよびトリエチルアミン(EtN)がアセトニトリルなどの有機溶媒中で用いられる。その後、水性メタノール中で水酸化カリウムにより更に処理することによりカリウム塩が得られる。
【0029】
【化7】

【0030】
成分(A)、(B)および(C)に加えて、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、任意に、1種以上の添加剤、充填剤またはそれらの組み合わせも含んでよい。但し、これらの追加の成分が、難燃要件をもう満たさないレベルまたは望ましくないレベルにポリカーボネートの難燃性を低下させるレベルに、または望ましくないレベルに熱安定性または光化学安定性を低下させない限りにおいてである。添加剤の例には、ヒンダードフェノール、亜リン酸のエステル、リン酸のエステルおよびアミンなどの酸化防止剤、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、ヒンダードアミンなどの光安定剤、脂肪族カルボン酸エステル、パラフィン、シリコーン油およびポリエチレンワックスなどの内部潤滑剤、難燃剤または難燃助剤、ペンタエリトリトールまたはグリセロールなどの離型剤、帯電防止剤、着色剤およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、当該技術分野で知られているように少なくとも1種の充填剤と共にコンパウンディングすることが可能である。充填剤の例には、チタン酸カリウムウィスカー、ロックウールなどの鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ステンレススチール繊維などの金属繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ホウ素繊維、テトラポッド状の酸化亜鉛ウィスカー、タルク、クレー、マイカ、真珠マイカ、アルミニウム箔、アルミナ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、シリカ、アスベスト、石英粉末およびそれらの組み合わせが挙げられる。充填剤は、界面結合を改善するとともに機械的特性を強化するために物理的方法または化学的方法によって表面処理されていてもよい。界面結合は、互いに接触している2つの物体の表面を分子間力によって互いに保持する結合を意味する。充填剤は、例えば、シラン系カップリング剤、より高級な脂肪酸、脂肪酸の金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールまたはタイプMeSi−O−[SiOme]m−[SiOMeH]−SiMe(式中、Meはメチルであり、mは0〜100の範囲であることが可能であり、nは1〜50の範囲であることが可能である)のポリメチルヒドロゲンシロキサン流体により処理することが可能である。最も好ましくは、mは0であり、nは約50である。
【0032】
少なくとも1種の充填剤は、(少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート樹脂100部を基準にして)約1〜約70重量部で一般に用いられる。2種以上の充填剤を用いるとき、重量比率値は個々の充填剤の総合重量を示す。より特定の実施形態において、少なくとも1種の充填剤は、(少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート樹脂100部を基準にして)約2〜約40重量部で一般に用いられる。
【0033】
本発明は難燃性ポリカーボネート物品を調製する方法にも関連する。本方法によると、難燃性ポリカーボネート物品は、
(a)上で定義されたポリカーボネート樹脂組成物の成分(A)、(B)および(C)ならびに任意の添加剤、充填剤およびそれらの組み合わせを混合する工程と、
(b)混合組成物を粒子に成形する工程と、
(c)工程(b)の粒子を難燃性ポリカーボネート物品に溶融成形する工程と
を含むプロセスによって調製することが可能である。
【0034】
より詳しくは、ポリカーボネート樹脂組成物の成分は、当業者に知られているいずれかの加工操作を用いて組成物の成分をコンパウンディングまたは混練することにより混合することが可能である。ポリカーボネートの加工の説明に関しては、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,(Fifth Edition(2006),John Wiley & Sons,Inc.Hoboken,NJ,Volume19,page797−828)におけるBrunelle,D.J.,「Polycarbonates」を参照すること。コンパウンディングまたは混練は、例えば、バンバリーミキサー、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機または多軸スクリュー押出機などを用いて行うことが可能である。コンパウンディングは、典型的には約240℃〜約300℃の温度で行われる。成分(B)、(C)および任意の添加剤または充填剤は少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート樹脂と共に添加することが可能である。あるいは、これらの成分は、例えば、押出機内の1つ以上の下流点で添加することが可能である。下流での成分の添加は、充填剤などの固体の摩滅を減らし、および/または分散を改善し、および/または比較的熱不安定成分の熱履歴を減らし、および/または揮発性成分の蒸発による損失を減らすことが可能である。成分を混合した後、溶融成形機にフィードするために適するペレットまたは他の粒子に成分を成形するか、または切断してもよい。溶融成形は、所望の物品を形成するために、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形および回転成形などの熱可塑性樹脂のための普通の方法によって行うことが可能である。
【0035】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を含む成形された物品がポリカーボネートを現在使用している多くの用途において有用性を見出すことが予想される。例には、グレージングおよびシート、自動車部品、家庭用品および電動工具などの電気器具、再充填可能な水ボトル、再充填可能なミルクボトルなどの包装、電気部品、電子部品、工業部品、メディカルケアおよびヘルスケア関連物品およびレジャーおよび安全物品が挙げられるが、それらに限定されない。グレージングおよびシートの用途の例には、航空機、列車、学校のための窓および高速航空機のキャノピーが挙げられるが、それらに限定されない。こうした製品は、例えば、軟質中間層と貼り合わせてもよい。自動車部品の例には、ヘッドランプアセンブリ、内装インストルメントパネル、バンパーおよび自動車窓グレージングが挙げられるが、それらに限定されない。電気部品、電子部品および工業部品の例には、電気コネクター、電話ネットワークデバイス、アウトレットボックス、コンピュータハウジング、事務機ハウジング、インストルメントパネル、メンブレンスイッチおよび絶縁体が挙げられるが、それらに限定されない。レジャーおよび安全物品の例には、保護ヘッドギヤ−(例えば、スポーツヘルメット、オートバイヘルメット、および消防士または建設労働者用の安全ヘルメット)および保護アイウェア(例えば、ゴーグル、安全眼鏡、安全サイドシールド、眼鏡およびマスク)が挙げられるが、それらに限定されない。樹脂組成物は、オフィスオートメーション機械類および電気・電子機械類などの難燃材料を要求する用途のために特に有用である。
【0036】
ポリカーボネート樹脂組成物の燃焼性は適切な方法を用いて決定することが可能である。例えば、ポリカーボネートを用いる国のために適切である方法を用いてもよい。米国においては、本発明の難燃性ポリカーボネートは、Underwriter’s Laboratory規格、特にUL−94(Underwriters Laboratories,Inc.,(Northbrook,IL))を満たすように要求される場合がある。UL−94試験材料は、炎の繰り返し適用で燃焼に耐える材料の能力、および生じた滴下からの可燃源(コットン)の後続の着火に伴うドリッピングに対する材料の抵抗に基づいている。試験片をチャンバーに取り付け、10秒間にわたり着火させる。試験片の炎が消える場合、残炎時間を記録し、試験片を10秒間にわたり再着火させる。その後、材料を残炎時間と火炎滴下によって引き起こされるコットンの着火に基づいて分類する。最も広く許容された等級はV−0、V−1およびV−2である。クラスV−1がV−0より長い残炎時間を見込んでいるのに対して、V−2はV−1と同じ残炎時間を有するが、コットンの着火を見込んでいる。本発明に関して、10秒未満の残炎時間をV−0のために用い、30秒未満をV−1およびV−2のために用いた。
【0037】
以下の実施例において、本発明を比較例および実施例に関連してより詳しく説明している。しかしながら、比較例および実施例は本発明を限定するように解釈されてはならない。
【0038】
一般的な材料および方法
以下の略号を用いた。ディグリー・センチグレードは、「C」または「℃」であり、グラムは「g」であり、「h」は時間であり、相対湿度は「RH」であり、ミリメートルは「mm」であり、核磁気共鳴は「NMR」であり、示差走査熱分析は「DSC」である。
【0039】
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウム(HFPS−K)および1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウム(TFES−K)の合成は、米国特許出願公開第2006/027661号明細書、実施例2、4および5に記載されている。
【0040】
テトラ−n−ブチルホスホニウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート(TBP−HFPS)の合成
脱イオン水(2800mL)および1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウム(HFPS−K、551.2g)を4Lの三角フラスコに添加した。HFPS−Kが溶解して無色透明溶液を生成するまでフラスコの内容物を室温で磁気的に攪拌した。テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド(Cyphos(登録商標)443W、Cytec Canada Inc.,923.0g)の75重量%水溶液をこの溶液に添加した。大量の薄片状白色沈殿物を生じた。この混合物を放置して室温で8時間にわたり攪拌した。白色沈殿生成物を吸引濾過によって単離した。その後、粗生成物を1000mLの飽和炭酸ナトリウムと共に30分にわたり磁気的に攪拌して、一切の酸性不純物を除去した。生成物を吸引濾過によって再び単離した。生成物を脱イオン水の3×1000mL部分で更に洗浄して、一切の残留カーボネートを除去した。この材料を吸引濾過によって単離し、その後、真空(70℃、100トル、18時間)で融点より上で乾燥させて水を除去した。生成物を放置して、窒素ガスのパージ下で炉内で冷却し凝固させた。固体生成物ケーキを炉から取り出し、#14メッシュ(1.4mm)スクリーンに通して、易流動性固体(893g、収率89%)を生じさせた。
【0041】
19F NMR(CDCl)δ−74.9(m,3F);−115.3、−122.8(ABq、J=264Hz,2F)、−210.1(dm,1F)。H NMR(CDCl)δ1.0(t,J=7.3Hz,12H);1.5(m、16H);2.2(m,8H);5.4(dm、JFH=54Hz、1H)。
【0042】
カールフィッシャー滴定による%水:671ppm。
【0043】
融点(DSC):74℃。
【0044】
1937PSに関する元素分析:計算:%C、46.5:H、7.6:N、0.0。
【0045】
実験結果:%C、46.9:H、8.0:N<0.1。
【0046】
1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホン酸カリウム(TPES−K)の合成
TFES−Kの合成は米国特許出願公開第2006/0276671号明細書に記載されている。1ガロンのHastelloy(登録商標)C276反応容器に亜硫酸カリウム水和物(88g、0.56モル)、異性亜硫酸水素カリウム(340g、1.53モル)および脱イオン水(2000ml)の溶液を投入した。容器を7℃に冷却し、0.05MPaに排気し、窒素でパージした。排気/パージサイクルをもう2回繰り返した。その後、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE、600g、2.78モル)を容器に添加し、それを125℃に加熱し、その時点で内圧は2.31MPaであった。反応温度を125℃で10時間にわたり維持した。圧力は0.26MPaに低下し、その時点で容器をベントし、25℃に冷却した。粗反応生成物は無色水層(pH=7)を上に有する白色結晶沈殿物であった。
【0047】
白色固体の19F NMRスペクトルは、水層のスペクトルが少量であるが検出可能な量のフッ素化不純物を示しつつ、純粋な所望の生成物を示した。所望の異性体は水により不溶性であり、従って、所望の異性体は異性体純粋形態で沈殿した。
【0048】
フリットガラス漏斗を通して生成物スラリーを吸引濾過し、ウェットケーキを真空炉(60℃、0.01MPa)内で48時間にわたり乾燥させた。生成物を曇った白色の結晶(904g、収率97%)として得た。
【0049】
19F NMR(DO)δ−86.5(s,3F),−89.2,−91.3(サブスプリットABq、JFF=147Hz,2F),−119.3,−121.2(サブスプリットABq、JFF=258Hz,2F),−144.3(dm,JFH=53Hz,1H)。
【0050】
H NMR(DO)δ6.7(dm,JFH=53Hz,1H)。
【0051】
Mp(DSC)263℃。
【0052】
HOSKに関する分析計算:C14.3、H0.3。実験結果:C14.1、H0.3。
【0053】
TGA(空気):359℃で10重量%損失、367℃で50重量%損失。
【0054】
TGA(N):362℃で10重量%損失、374℃で50重量%損失。
【0055】
カリウムに関して上述したモル量と同等のモル量を用いて、類似の方法をTFES−Naの合成のために用いることが可能である。
【0056】
(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート(Bmim−TFES)(カチオン、イミダゾリウム:アニオン、式1)の合成)
1リットルのフラスコ内で1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(60.0g)と高純度の乾燥アセトン(>99.5%、300ml)を組み合わせ、固体が完全に溶解するまで磁気攪拌しつつ暖めて還流させた。室温で別個の1リットルのフラスコ内で、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウム(TFES−K、75.6g)を高純度の乾燥アセトン(500ml)に溶解させた。これらの2つの溶液を室温で組み合わせ、放置して正窒素圧下で2時間にわたり磁気で攪拌した。攪拌を止め、KCl沈殿物を放置して沈殿させ、その後、セライトパッドを有するフリットガラス漏斗を通して吸引濾過によって除去した。アセトンを真空で除去して黄色油を生じさせた。高純度のアセトン(100ml)で希釈し、脱色炭(5g)と合わせて攪拌することにより油を更に精製した。混合物を再び吸引濾過し、アセトンを真空で除去して無色油を生じさせた。これを4Paおよび25℃で6時間にわたり更に乾燥させて、83.6gの生成物を提供した。
【0057】
19F NMR(DMSO−d)δ−124.7(dt,J=6Hz,J=8Hz,2F),−136.8(dt,J=53Hz,2F)。
【0058】
H NMR(DMSO−d)δ0.9(t,J=7.4Hz,3H)、1.3(m,2H)、1.8(m,2H)、3.9(s,3H)、4.2(t,J=7Hz,2H)、6.3(dt,J=53Hz,J=6Hz,1H),7.4(s,1H)、7.5(s,1H)、8.7(s,1H)。
【0059】
カールフィッシャー滴定による%水:0.14%。
【0060】
12Sに関する分析計算:C37.6、H4.7、N8.8
実験結果:C37.6、H4.6、N8.7。
【0061】
TGA(空気):380℃で10重量%損失、420℃で50重量%損失。
【0062】
TGA(N):375℃で10重量%損失、422℃で50重量%損失。
【0063】
フッ素化アルキルスルホネートのリチウム塩およびセシウム塩の合成
フッ素化アルキルスルホネートのカリウム塩およびナトリウム塩を、精製乾燥反応混合物または粗乾燥反応混合物のいずれであれ、米国特許出願公開第2006/0276671号明細書で教示された通り無水酸に転化させることが可能である。その後、これらの酸を放置してメタノールなどの有機溶媒中で炭酸リチウムまたは炭酸セシウムと反応させて、対応するリチウムフッ素化アルキルスルホンネート塩またはセシウムフッ素化アルキルスルホネート塩を高収率で生じさせることが可能である。最初に濾過によって過剰の一切の不溶性カーボネート塩を除去し、その後、真空蒸留によって有機溶媒を除去することによってリチウム塩生成物またはセシウム塩生成物を単離することが可能である。リチウム塩は典型的には極度に吸湿性であるので、系を無水に保つようにリチウム塩に関して注意を払うべきである。
【0064】
1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(TFESA)からの1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸リチウム(TFES−Li)の合成
1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(10.05g、0.055モル)および乾燥メタノール(10mL;EMD Chemicals Inc.(Gibstown,NJ))を20mLのバイアルに添加した。窒素雰囲気下で氷浴内で磁気攪拌しつつ溶液を0℃に冷却した。別のフラスコ内で、炭酸リチウム(0.95g、0.026モル;Aldrich(St.Louis,MO))を乾燥メタノール(10mL)と混合し、炭酸リチウムも0℃になるまで窒素雰囲気下で氷浴内で磁気的に攪拌した。その後、TFESA溶液をカーボネート混合物にゆっくり添加し、大量の気体COが発生した。一旦添加を完了し、ガスの発生が止まると、メタノールをロータリーエバポレータで真空で除去した。その後、フラスコを真空で3時間にわたり80℃に加熱して、反応中に生成した水を追い出した。白色粉末状生成物(TFES−Li、8.7g、収率84%)を単離し、特性分析した。
【0065】
カールフィッシャー滴定による%水:0.27重量%。CLiOSに関する元素分析:計算:%C、12.78:H、0.54実験結果:%C、12.53:H、0.74。
【0066】
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムノナフルオロブタンスルホネート(BMIM−NONA)の合成
BMIM−NONAは、S.K.Quekら(Tetrahedron(2006)62:3137−3145)に記載された通り合成することが可能である。
【0067】
テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート([4.4.4.14]P−TFES)の合成
1000mLのフラスコ内で、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウム(TFESK、85.2g、0.39モル)および脱イオン水(150mL)を固体が溶解するまで25℃で磁気的に攪拌した。別の500mLのフラスコ内で、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウムクロリド(168g、0.39モル、Cyphos(登録商標)IL167;Cytec(West Paterson,NJ))を50℃に加熱することにより最初に溶融させ、その後、TFESK溶液に添加して油状沈殿物を生成した。フラスコを別の19時間にわたり25℃で攪拌して生成物の完全な沈殿を可能にした。
【0068】
クロロホルム(500mL;Aldrich)を混合物に添加し、混合物を別の30分にわたり攪拌した。生成物を含有していたクロロホルム層を分離し、取っておいた。水層をクロロホルム(5×20mL洗浄液)で抽出し、これらのアリコートを元のクロロホルム層と組み合わせた。組み合わせたクロロホルム溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液(5×20mL洗浄液;Aldrich)で洗浄し、その後、最終洗浄水がpH=8を有するまで脱イオン水(5×20mL)で洗浄した。
【0069】
溶液を無水硫酸マグネシウム(Aldrich)上で乾燥させ、その時点で、10gの脱色炭を添加して着色不純物を除去した。この溶液を別の30分にわたり攪拌した後、6インチカラム充填セライト/塩基性アルミナカラムを通して濾過して炭素を除去した。溶液を無水硫酸マグネシウム(Aldrich)上で再び乾燥させ、ロトバップで濃縮し、その後、更に乾燥(60ミリトル、25℃、8時間)させて、[4.4.4.14]P−TFES生成物を透明淡黄色油(173g、収率77%)として生じさせた。
【0070】
19F NMR(CDCl)δ−124.3(dt,FH=6Hz、FF=8Hz、2F);−136.0(dt,FH=53Hz、2F)。
【0071】
H NMR(CDCl)δ0.8(t,J=7.0Hz,3H);1.0(t、J=7.0Hz、9H)、1.3(brs、20H);1.5(m,16H);2.2(m,8H);6.2(tt,FH=53Hz、FH=6Hz、1H)。
【0072】
カールフィッシャー滴定による%水:594ppm。
【実施例】
【0073】
実施例1;ポリカーボネート樹脂の難燃性(比較例)
ポリカーボネート樹脂(1484.5g;Lexan(登録商標)HF−1110という商品名で販売されている(General Electric Co.(Pittsfield,MA)))を増速棒が装備されたV−Coneブレンダー(Patterson Kelly(East Stroudsburg,PA))に入れた。樹脂を4gのポリジメチルシロキサンDC−200−60M(Dow Corning(Midland,MI))で被覆した。被膜を放置して5分にわたり樹脂に接着させた後、被覆されたポリカーボネートペレットを275℃で30mm二軸スクリュー押出機(Werner−Pfleiderer(Coperion,Ramsey,NJ))にフィードした。コンパウンディングされたポリカーボネートを1/16インチ(約1.59mm)ASTM(ASTM International(West Conshohocken,PA))単一ゲートフレックスバーモールドが装着された1.5オンスArburg射出成形機(Newington,CT))で射出成形した。難燃性を試験する前に、サンプルを22℃および50%相対湿度で最低で1日にわたり部屋に貯蔵した。
【0074】
標準難燃性試験手順UL−94(Underwriters Laboratories,Inc.(Northbrook,IL))に準拠してすべてのサンプルを試験した。試験片を垂直位置で試験した。調節された炎を試験片上に10秒にわたり置き、炎が自己消火するまで測定された時間をt1として記録した。炎を再びバー試験片上に10秒にわたり置き、そして取り除いた。第2の燃焼時間をt2として記録した。燃焼滴下の存在も付記した。炎を取り除いたとき、あらゆる試験サンプルに関して残炎を付記しなかった。V−0、V−1またはV−2としてサンプルを分類するために用いた基準を表1に示している。表1において、t1およびt2を秒で報告している。結果を表2に示している。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例2;ポリカーボネート樹脂+防滴下剤の難燃性(比較例)
実施例1の手順を繰り返した。しかし、ポリテトラフルオロエチレン(p−TFE)防滴下剤(7g;MP1400,E.I.DuPont(Wilmington DE))を添加した。結果を表2に示している。
【0077】
実施例3〜6;ポリカーボネート樹脂+塩の難燃性
p−TFEに加えて、4.5gの塩を示した通り添加したことを除き、実施例2の手順を繰り返した。結果を表2に示している。
【0078】
【表2】

【0079】
実施例7〜14.ポリカーボネート樹脂+塩の難燃性
以下の表3に示した3000ppmの塩および5000ppmのp−TFE微粉末を用いてポリカーボネートサンプル(試験片)を実施例1に記載された通りコンパウンディングした。コンパウンディングしたポリカーボネートを実施例1に記載した通りバーに更に成形した。前述した通りUL−94に準拠して試験サンプルを試験した。結果を表3に示している。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例15〜20.ポリカーボネートサンプルの難燃性に及ぼす塩濃度の効果
難燃性に及ぼす塩濃度の効果を決定した。以下の表4に示した濃度で塩としてBMIM−TFESまたはTFES−Kを用いて、実施例7〜14に記載された通り、5000ppmのp−TFE微粉末と共にポリカーボネートサンプル(試験片)をコンパウンディングした。コンパウンディングしたポリカーボネートを実施例1に記載された通りバーに更に成形した。前述した通りUL−94に準拠して試験サンプルを試験した。結果を表4に示している。
【0082】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つの芳香族ポリカーボネート樹脂と、
(B)少なくとも1つの溶融滴下防止剤と、
(C)少なくとも1つの式M
[式中、Mは、(1)リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムからなる群から選択されるカチオンまたは(2)以下の11個のカチオン
【化1】

【化2】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは独立して、
(a)H、
(b)ハロゲン、
(c)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25の直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(d)−CH、−C、またはO、N、SiおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25の直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(e)C〜C25非置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール、
(f)C〜C25置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって、該置換アリールまたは置換ヘテロアリールが、
(1)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25の直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有するC〜C25置換アリールまたはC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、
、R、RおよびR10は独立して、
(g)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25の好ましくは直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(h)−CH、−C、またはO、N、SiおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25の直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(i)C〜C25非置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール、
(j)C〜C25置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって、該置換アリールまたは置換ヘテロアリールが、
(1)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25の直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有するC〜C25置換アリールまたはC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、
場合により、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10の少なくとも2つが一緒になって、環式または二環式のアルカニル基またはアルケニル基を形成していてよい)
からなる群から選択されるカチオンであり、
は、式I
【化3】

(式中、R11は、
(1)ハロゲン、
(2)−CH、−C、または場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖もしくは分岐のアルカンもしくはアルケン、
(3)−OCH、−OC、または場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖もしくは分岐のアルコキシ、
(4)場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖または分岐のフルオロアルキル、
(5)場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖または分岐のフルオロアルコキシ、
(6)C〜C15の好ましくは直鎖または分岐のパーフルオロアルキル、および
(7)C〜C15の直鎖または分岐のパーフルオロアルコキシ
からなる群から選択される)
および式II
【化4】

(式中、R12は、
(1)ハロゲン、
(2)−CH、−C、または場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖もしくは分岐のアルカンもしくはアルケン、
(3)−OCH、−OC、または場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖もしくは分岐のアルコキシ、
(4)場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖または分岐のフルオロアルキル、
(5)場合によりCl、Br、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C15の直鎖または分岐のフルオロアルコキシ、
(6)C〜C15の直鎖または分岐のパーフルオロアルキル、および
(7)C〜C15の直鎖または分岐のパーフルオロアルコキシ
からなる群から選択される)
からなる群から選択されるアニオンである]
を有する塩と
を含む難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
成分(A)を約100部、成分(B)を約0.01〜約5.0部および成分(C)を約0.001〜約2.0部有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(A)を約100部および成分(B)を約0.1〜約3.0部有する請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(A)を約100部および成分(C)を約0.01〜約1.0部有する請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの芳香族ポリカーボネート樹脂がジフェニルカーボネートと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの反応から製造される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
溶融滴下防止剤がポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
が、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエタンスルホネート、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(ペルフルオロエトキシ)エタンスルホネート、2−(1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヨードエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネート、N,N−ビス(1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニル)イミドおよびN,N−ビス(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホニル)イミドからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
成分(C)が、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ブチル−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、N−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)プロピルイミダゾール1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、N−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エチルペルフルオロヘキシルイミダゾール1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2−トリフルオロ−2−(ペルフルオロエトキシ)エタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(ペルフルオロエトキシ)エタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)スルホネート、(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−トリオクチルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、テトラ−n−ブチルホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(ペルフルオロエトキシ)エタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウム、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウムおよび1,1,2−トリフルオロ−2−(ペルフルオロエトキシ)エタンスルホン酸カリウムからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの溶融滴下防止剤と請求項1記載の少なくとも1つの塩とを含む組成物。
【請求項10】
ポリテトラフルオロエチレン微粉末を含む請求項1または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリテトラフルオロエチレン分散液を含む請求項1または請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートまたは1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはセシウム塩を含む請求項1、請求項9、請求項10または請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸カリウムまたは1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウムを含む請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
(1)酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、内部潤滑剤および難燃剤または難燃助剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤、(2)少なくとも1つの充填剤(3)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
酸化防止剤がヒンダードフェノール、亜リン酸のエステル、リン酸のエステルまたはアミンであり、紫外線吸収剤がベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンを含み、光安定剤がヒンダードアミンを含み、内部潤滑剤が脂肪族カルボン酸エステル、パラフィン、シリコーン油またはポリエチレンワックスを含み、離型剤がペンタエリトリトールまたはグリセリンを含み、充填剤が、チタン酸カリウムウィスカー、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ホウ素繊維、テトラポッド状の酸化亜鉛ウィスカー、タルク、クレー、マイカ、真珠マイカ、アルミニウム箔、アルミナ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、シリカ、アスベストおよび石英粉末からなる群から選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
充填剤が約1質量部〜約70質量部で存在する請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
成分(B)がポリテトラフルオロエチレンを含み、成分(C)が1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートまたは1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートのナトリウム塩またはカリウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
成分(A)がジフェニルカーボネートと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの反応から製造され、成分(B)がポリテトラフルオロエチレンを含み、成分(C)が1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートまたは1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートのナトリウム塩またはカリウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
難燃性ポリカーボネート物品を調製する方法であって、
(a)請求項1、請求項13または請求項14で定義されるようなポリカーボネート樹脂組成物の成分を混合して、混合組成物を形成する工程と、
(b)混合組成物を粒子に成形する工程と、
(c)工程(b)の粒子を難燃性ポリカーボネート物品に溶融成形する工程と
を含む方法。
【請求項20】
バンバリーミキサー、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、または多軸スクリュー押出機を用いて混合を行う請求項19に記載の方法。
【請求項21】
溶融成形が、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形または回転成形を用いて行われる請求項19に記載の方法。
【請求項22】
グレージングまたはシート、自動車部品、家庭用電気製品、包装、電気部品、電子部品、工業部品、医療またはヘルスケア関連物品、およびレジャーまたは安全用品、からなる群から選択される、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を含む難燃性ポリカーボネート物品。
【請求項23】
航空機、列車、学校、高速航空機のキャノピー用の窓、自動車ヘッドランプアセンブリ、自動車インテリアインストルメントパネル、自動車バンパー、自動車窓グレージング、家庭用品、家庭用電動工具、詰め替え可能な水ボトル、詰め替え可能なミルクボトル、電気コネクター、電話ネットワークデバイス、アウトレットボックス、コンピュータハウジング、事務機ハウジング、インストルメントパネル、メンブレンスイッチ、絶縁体、保護ゴーグル、安全眼鏡、安全サイドシールド、眼鏡、マスク、スポーツヘルメット、オートバイヘルメット、および消防士または建設労働者用の安全ヘルメットの部品からなる群から選択される請求項22に記載の難燃性ポリカーボネート物品。

【公表番号】特表2010−520361(P2010−520361A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552700(P2009−552700)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/002704
【国際公開番号】WO2008/108983
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】