説明

難燃性樹脂組成物の製造方法

【課題】有機ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を実質的に含有しなくとも良好な難燃性を有し、更には剛性、耐熱性、耐衝撃性、熱安定性、外観に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)99〜50重量%、無機粉末(B成分)1〜50重量%との合計100重量部当たり、芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)0.01〜10重量部を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、あらかじめB成分とC成分を予備混合して得た予備混合品を用いることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。更に詳しくは有機ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を実質的に含有しなくとも良好な難燃性を有し、更には剛性、耐熱性、耐衝撃性、熱安定性、外観に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、優れた機械的特性、寸法精度、電気特性などを有し、エンジニアリングプラスチックとして電気・電子機器分野、自動車分野、OA機器分野などさまざまな分野において幅広く使用されている。そしてこれらの用途の中でもOA機器分野、電子・電気機器分野については、概して樹脂材料に難燃性が求められる。
【0003】
難燃性の要望に応えるために、有機ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤を配合した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂が広く使用されている(非特許文献1参照)。しかしながら、有機ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤のいずれにおいても、かかる難燃剤を配合した樹脂組成物は、万一燃焼したりもしくは焼却処理(サーマルリサイクル)された場合、または埋め立て廃棄された場合の環境への影響が問題視される場合がある。これらの難燃剤はかかる環境面での懸念を除けば、それぞれ他に替え難い特性を有していることから、容易に置き換え可能なものではない。しかしながら、他の特性は製品設計などによって補完しても、これらの難燃剤を実質的に使用することない難燃性樹脂材料を使用する動きも広がりつつある。
【0004】
これに対して、環境負荷の小さい難燃剤としてシリコーン化合物や金属塩化合物を使用した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。更に近年、OA分野、電子電気分野では製品の薄肉軽量化が進んでおり、難燃性ポリカーボネート樹脂材料についても高剛性化、および高強度化が求められ、すなわち無機充填材による強化が望まれている。しかしながら、シリコーン化合物を配合した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、更に無機充填材を組み合わせると難燃性が大きく低下する問題がある。
【0005】
シリコーン化合物を使用した例としては、芳香環を含有する非シリコーン樹脂とメチル基とフェニル基よりなるシリコーン樹脂からなる樹脂組成物は公知である(特許文献1参照)。また、分子中に芳香環を含む合成樹脂とフェニル基及びアルコキシ基含有オルガノシロキサンからなる樹脂組成物は公知である(特許文献2参照)。
【0006】
シリコーン化合物と金属塩化合物を併用した例としては、ポリカーボネート樹脂とシリコーン化合物、芳香族硫黄化合物の金属塩からなる樹脂組成物は公知である(特許文献3参照)。また、芳香族ポリカーボネート樹脂と有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンからなる樹脂組成物は公知である(特許文献4参照)。また、芳香族ポリカーボネートとパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンからなる樹脂組成物は公知である(特許文献5参照)。
【0007】
しかしながら、シリコーン化合物の中には、常温で1週間以上放置すると固化し取り扱いに問題を生じる場合がある。この問題を解決する方策は、これらの文献において具体的な方法が記載されていない。
これに対して、シリコーン樹脂の取り扱い、分散性の改良として、熱可塑性有機樹脂とフェニル基含有シリコーン樹脂を混合した後、押出機によりペレット化し、それを配合した難燃性樹脂組成物は公知である(特許文献6参照)。
【0008】
しかしながら、熱可塑性有機樹脂とフェニル基含有シリコーン樹脂を押出機によりマスターバッチとする方法はマスターバッチの生産性が悪く、また余分な熱履歴が加えられ、それを配合した難燃性樹脂組成物は難燃性、耐衝撃性、熱安定性の低下が問題となることがある。
よって、シリコーン化合物の取り扱いを改善し、難燃性、耐衝撃性、熱安定性のいずれも十分に満足するためには、更なる改良が必要であった。
【0009】
【非特許文献1】「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(141頁6行〜143頁5行)(本間精一編、日刊工業新聞社発行、1992年)
【特許文献1】特許第3240972号公報
【特許文献2】特開平11−222559号公報
【特許文献3】特開平11−217494号公報
【特許文献4】特開平8−176425号公報
【特許文献5】特許第2719486号公報
【特許文献6】特開2001−31771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、有機ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤を実質的に含有しなくとも、良好な難燃性を有し、更には剛性、耐熱性、耐衝撃性、熱安定性、外観に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物の、有機シロキサンの取扱上の問題点を回避できる製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明者はかかる目的を達成すべく、鋭意検討したところ、上記特許文献1〜5の発明において十分に検討されていないシリコーン化合物の取り扱いにおいて、芳香族基を有する有機シロキサンと無機粉末好ましくは鱗片状無機粉末とを特定割合で予備混合して得た予備混合品を熱可塑性樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂に特定範囲で配合することにより、有機シロキサンの生産性、保存性が改良され、剛性、耐熱性、耐衝撃性、熱安定性、外観に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、更に検討を進め本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(1)熱可塑性樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)99〜50重量%、及び無機粉末好ましくは鱗片状無機粉末(B成分)1〜50重量%、の合計100重量部当たり、芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)0.01〜10重量部を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、あらかじめB成分とC成分を予備混合して得た予備混合品を用いることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に係るものである。
【0013】
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記B成分がタルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種の燐片状無機粉末である上記構成(1)の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の好適な態様の1つは、(3)予備混合品が(B)無機粉末(B成分)および(C)芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)を10:80〜99:1の割合で混合した予備混合品である上記構成(1)または(2)のいずれかの難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0015】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記C成分の凝集性が60以上である上記構成(1)〜(3)の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0016】
好適な態様の1つは、(5)A成分とB成分との合計100重量部当たり、スルホン酸アルカリ(土類)金属塩(D成分)0.001〜0.1重量部含有してなる上記構成(1)〜(4)の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0017】
好適な態様の1つは、(6)A成分とB成分との合計100重量部当たり、含フッ素滴下防止剤(E成分)0.01〜1重量部含有してなる上記構成(1)〜(5)の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造法である。かかる構成(5)〜(6)によれば、更に剛性、難燃性に優れた上記難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0018】
さらに好適な態様の1つは、(7)上記構成(1)〜(6)の製造法により製造される難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
【0019】
さらに好適な態様の1つは、(8)(B)無機粉末好ましくは鱗片状無機粉末(B成分)および(C)芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)を予備混合して得た予備混合品である。
【0020】
以下、更に本発明の詳細について説明する。
(A成分:熱可塑性樹脂)
本発明で使用するA成分の熱可塑性樹脂は、基本的に限定されるものではなく、特に電子機器の筺体に用いられる熱可塑性樹脂が好ましく使用される。かかる熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。特に好ましいものとしては、例えばAS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびこれらの二種以上の混合物が挙げられる。特に、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0021】
本発明でA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0022】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
【0023】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トをA成分として使用することが可能である。
【0024】
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0025】
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0026】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0027】
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
【0028】
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
【0029】
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0030】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0031】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0032】
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の有するドリップ防止能をさらに相乗的に改善可能であるため、その使用は好ましい。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0033】
分岐ポリカーボネート樹脂中の多官能性化合物の割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、より好ましくは0.01〜0.8モル%、特に好ましくは0.05〜0.4モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート樹脂全量中、前記した範囲であることが好適である。なお、かかる分岐構造量についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0034】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0035】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
前記以外の反応形式の詳細についても、成書および特許公報などで良く知られている。
【0036】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは1×10〜5×10であり、より好ましくは1.4×10〜3×10であり、さらに好ましくは1.4×10〜2.4×10である。
【0037】
粘度平均分子量が1×10未満の芳香族ポリカーボネート樹脂では、実用上期待される耐衝撃性などが得られない場合があり、また十分なドリップ防止能が得られないことから難燃性においても劣りやすい。一方、粘度平均分子量が5×10を超える芳香族ポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。
【0038】
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0039】
また前記の粘度平均分子量の算出法は、本発明の樹脂組成物や該樹脂組成物から成形された成形品の粘度平均分子量測定にも適用される。すなわち、本発明においてこれらの粘度平均分子量は、塩化メチレン100mlに成形品0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を前記式に挿入して求めたものである。
【0040】
(B成分:無機粉末)
B成分として使用される無機粉末とは、通常、成形樹脂の剛性向上、反りの低減、及び/又は表面外観の向上を目的に使用されるものであり、一般的には、天然に産出される無機鉱物である。その中でもタルク、白雲母、金雲母等のマイカ、ガラスフレーク、カオリナイト、セリサイト等の鱗片状もしくは板状の粉砕された粉末が好ましい。これらの中でもタルク、マイカが特に好ましい。
【0041】
(i)タルク
本発明におけるタルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO・3MgO・2HOで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiOを56〜65重量%、MgOを28〜35重量%、HO約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFeが0.03〜1.2重量%、Alが0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、KOが0.2重量%以下、NaOが0.2重量%以下などを含有している。より好適なタルクの組成としては、SiO:62〜63.5重量%、MgO:31〜32.5重量%、Fe:0.03〜0.15重量%、Al:0.05〜0.25重量%、およびCaO:0.05〜0.25重量%が好ましい。更に強熱減量が2〜5.5重量%であることが好ましい。かかる好適な組成においては、良好な熱安定性および色相を有する樹脂組成物が得られ、更なる成形加工温度の上昇によっても良好な成形品が製造される。これにより本発明の組成物は更に高流動化が可能となり、より大型または複雑形状の薄肉成形品に対応可能となる。
【0042】
タルクの粒子径は、平均粒径が0.1〜50μm(より好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.2〜5μm、特に好ましくは0.2〜3.5μm)の範囲であることが好ましい。したがって、本発明のより好適なタルクは、上記の好ましい組成を有し、かつ平均粒径が0.2〜5μmのタルクである。更にかさ密度を0.5(g/cm)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。かかる条件を満足するタルクとして、林化成工業(株)製「Upn HS−T0.8」が例示される。なお、タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0043】
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
【0044】
さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
【0045】
(ii)マイカ
マイカは、その平均粒径が5〜250μmのものを使用できる。好ましくは5〜50μmのマイカである。マイカの平均粒径が5μm未満では剛性向上の効果が得られにくくなる。一方250μmを超える平均粒径のマイカを含有する樹脂組成物は、機械的物性が飽和傾向にある一方で外観や難燃性が劣るようになる。尚、マイカの平均粒径は、レーザー回折・散乱法または振動式篩分け法により測定される。レーザー回折・散乱法は、振動式篩分け法により325メッシュ(目開き45μm)パスが、95重量%以上のマイカに対して行うのが好適である。それ以上の粒径のマイカに対しては、振動式篩分け法を使用するのが一般的である。本発明の振動式篩分け法は、まず振動篩器を用い使用するマイカ粉体100gを目開きの順番に重ねたJIS規格の標準篩により10分間篩分けを行う。各篩の上に残った粉体の重量を測定して粒度分布を求める方法である。
【0046】
マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmのものを使用できる。好ましくは厚みが0.03〜0.3μmである。アスペクト比としては5〜200、好ましくは10〜100のものを使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。したがって、本発明のより好適なマイカは、平均粒径が5〜250μm、より好ましくは5〜50μmであるマスコバイトである。かかる好適なマイカとしては例えば(株)山口雲母工業所製「A−41」が例示される。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効である(樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる)。本発明では、湿式粉砕法のマイカがより好適である。
【0047】
(C成分:有機シロキサン)
本発明に使用する芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)は、芳香族基としてフェニル基、ビフェニル基、ナフタレン基、またはこれらの誘導体などを有する有機シロキサンであり、中でもフェニル基を有する有機シロキサンが好ましい。かかる芳香族基の含有量としては、有機シロキサン中に含有されるシリコン原子に結合した有機基のうち20モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは40モル%以上、80モル%以下である。また芳香族基以外の有機基としてはメチル基、アルコキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基などであり、中でもメチル基が好ましい。有機シロキサンの芳香族基が20モル%未満であると、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が低下し難燃性が低下する。一方、フェニル基が80モル%を超えると、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が高くなりすぎて、燃焼時における有機シロキサンの表面移行性が低下し難燃性が低下する。
【0048】
一般的に有機シロキサンの構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。すなわち、
M単位:RSiO1/2の1官能性シロキサン単位、
D単位:RSiOの2官能性シロキサン単位、
T単位:RSiO3/2の3官能性シロキサン単位、
Q単位:SiOで示される4官能性シロキサン単位である。
【0049】
ここで、R、R、R、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜7のアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロペニル基、フェニル基などが挙げられる。特にフェニル基とメチル基が好ましい。
【0050】
本発明のC成分としては、T単位のモル比が全シロキサン単位の20モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは40モル%以上、95モル%以下である。T単位が20モル%未満であると、シリコーンの粘度低下による成形性の悪化や、耐熱性低下による難燃性の悪化などの影響が生じる場合がある。しかしながら95モル%を超えると、粘度増加による成形性や難燃性が低下する場合がある。
【0051】
更に本発明のC成分としては、以下に示すGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定された重量平均分子量が5,000〜200,000のものが好ましく、より好ましくは重量平均分子量が8,000〜150,000、更に好ましくは10,000〜100,000である。尚、本発明のC成分の測定に使用されるGPC法は、装置:ガリバーシリーズ(日本分光製)、カラム:MIXED−C(PL社製)、移動相:クロロホルム、標準物質:イージーキャル(PS−2)、検出器:示差屈折計を用い、流量1ml/minにて濃度0.1mg/mlの試料を100μl注入しカラム温度35℃にて測定したものである。かかる分子量はC成分のポリカーボネート樹脂中における分散の均一性に大きな影響を与える。不均一な分散は樹脂の局所的な難燃性能の欠陥を生じ、全体として良好な難燃性能を発揮できない場合がある。
【0052】
これらは単独での使用および2種以上を併用することができる。また各化合物を個別に合成した後目的に応じて混合する場合だけでなく、合成時の原料によって各種化合物が混合して生成するものであってもよい。
【0053】
また、C成分である有機シロキサンは、凝集性が60以上である有機シロキサンである場合に効果が顕著である。本発明において「凝集性」とは、有機シロキサン中の16メッシュの篩を通過する粉体(a)を、0℃×30%RHの雰囲気下24時間放置した後、窒素雰囲気下で、3kgの荷重下40℃×90%RHで72時間放置した後、16メッシュの篩にて分別した際の篩上に残る固形分(b)の全体に対する重量%(b/a×100)で表される数値である。本発明は凝集性が70以上、好ましくは80以上の有機シロキサンである場合に効果がさらに顕著になる。
【0054】
(D成分:スルホン酸アルカリ(土類)金属塩)
本発明におけるスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、パーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との金属塩、または芳香族スルホン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩との金属塩が例示される。
【0055】
本発明の金属塩を構成するアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。かかるアルカリ金属の中でも、透明性の要求がより高い場合にはイオン半径のより大きいルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、コストや難燃性の点で有利であるがリチウムおよびナトリウムなどのより小さいイオン半径の金属は逆に透明性の点で不利な場合がある。これらを勘案してスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたスルホン酸カリウム塩が最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
【0056】
パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は、アルキル基の炭素数が1〜18の範囲が好ましく、1〜10の範囲がより好ましく、更に好ましくは1〜8の範囲である。その具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
【0057】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の炭素数は7〜50、好ましくは7〜40であり、具体例としては、例えばジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムな、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、およびアントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。これら芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩では、特にカリウム塩が好適である。これらの芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の中でも、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、およびジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムが好適であり、特にこれらの混合物(前者と後者の重量比が15/85〜30/70)が好適である。
【0058】
(E成分:含フッ素滴下防止剤)
E成分としての含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0059】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0060】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPA FA500およびF−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1およびD−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
【0061】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0062】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。なお、上記F成分の割合は正味の含フッ素滴下防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
【0063】
(各成分の組成割合について)
本発明は、熱可塑性樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)99〜50重量%、および無機粉末(B成分)1〜50重量%との合計100重量部あたり、芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)0.01〜10重量部を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、あらかじめB成分とC成分を予備混合して得た予備混合品を用いることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。更には、A成分とB成分との合計100重量部あたり、スルホン酸アルカリ(土類)金属塩(D成分)0.001〜0.1重量部、含フッ素滴下防止剤(E成分)0.01〜1重量部含有してなる難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0064】
B成分の含有率は1〜50重量%であり、5〜30重量%が好ましく、8〜25重量%がより好ましい。B成分が1重量%未満では、剛性向上などの効果が十分に発揮されず、50重量%を超えると高温成形時の熱安定性が低下する傾向を示す。B成分の好適な範囲においては良好な剛性と高温成形時の熱安定性との両立が高いレベルで可能である。
【0065】
C成分の含有量はA成分とB成分との合計100重量部当たり0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。0.01重量部未満では良好な難燃性が得られず、10重量部を超えると成形品の外観が劣る傾向を示す。
【0066】
D成分の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部当たり、0.001〜0.1重量部が好適であり、0.005〜0.05重量部がより好適であり、0.01〜0.1重量部が更に好適である。0.001重量部未満では良好な難燃性が得られず、0.1重量部を超えると耐湿熱性が劣る傾向を示す。
【0067】
E成分の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部当たり、0.01〜1重量部が好適であり、0.05〜0.8重量部がより好適であり、0.1〜0.6重量部が更に好適である。0.01重量部未満では良好な溶融滴下防止効果が得られず難燃性が劣り、1重量部を超えると成形品の外観が劣る傾向を示す。
【0068】
(その他の添加剤)
(リン系安定剤)
本発明においては、更に良好な色相かつ安定した流動性を有する難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得るためリン系安定剤を場合によっては含有しても良い。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。
【0069】
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0070】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0071】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0072】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0073】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリメチルホスフェートに代表されるホスフェート化合物が配合されることが好ましい。
【0074】
(ヒンダードフェノール系安定剤)
本発明の樹脂組成物は、更にヒンダードフェノール系安定剤を含有することにより、例えば成形加工時の色相悪化や長期間の使用における色相の悪化などの効果が更に発揮される。ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0075】
リン系安定剤およびヒンダードフェノール系安定剤の配合量は、熱可塑性樹脂(A成分)と無機粉末(B成分)との合計100重量部に対し、0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部、より好ましくは0.005〜0.3重量部である。安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下を起こす場合がある。
【0076】
(紫外線吸収剤)
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、その色相や外観に優れることから、塗装などを施すことなく使用される場合がある。かかる場合には良好な耐光性を要求される場合があり、かかる場合に紫外線吸収剤の配合が効果的である。
【0077】
紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0078】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0079】
紫外線吸収剤は、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0080】
紫外線吸収剤は、具体的に環状イミノエステル系では、例えば2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
【0081】
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0082】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0083】
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂(A成分)と無機粉末(B成分)との合計100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.03〜2重量部、より好ましくは0.02〜1重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0084】
(光安定剤)
本発明の樹脂組成物においては、上記紫外線吸収剤と更に光安定剤を併用することができる。かかる光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤が例示される。上記光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物を用いてもよい。光安定剤の配合量は熱可塑性樹脂(A成分)と無機粉末(B成分)との合計100重量部に対して0.0005〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましい。
【0085】
(蛍光増白剤)
本発明の樹脂組成物は、色相を調節する必要が生ずる場合がある。かかる場合に蛍光増白剤の配合は効果的である。蛍光増白剤としてはクマリン系、ナフタルイミド系、ベンゾオキサゾリル系蛍光増白剤等があげられ、中でもクマリン系蛍光増白剤が好ましく、かかる蛍光増白剤としては例えばハッコールケミカル(株)製ハッコールPSRが好適に例示される。蛍光増白剤の配合量は、熱可塑性樹脂(A成分)と無機粉末(B成分)との合計100重量部に対し0.0001〜3重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.5重量部、更に好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.001〜0.1重量部である。
【0086】
(他の難燃剤)
本発明の樹脂組成物は、有機ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤を実質的に含有しなくとも良好な難燃性を達成するものであるが、かかる難燃剤を配合しても何らその難燃効果を阻害するものではない。しかしながら本発明の特徴をより生かすためには、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、有機ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤を実質的に含有しないことが好ましい。一方、本発明の特徴を生かして更なる難燃性を向上させるために、例えば各種有機アルカリ(土類)金属塩を更に配合することも可能である。
【0087】
更に同様に各種有機アルカリ(土類)金属塩を本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に更に配合することができる。例えば硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩が挙げられ、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる具体例としては例えば、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどが例示される。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0088】
また他の有機アルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。これらの有機アルカリ(土類)金属塩の配合割合は、A成分とB成分との合計100重量部当たり好ましくは0.001〜1重量部であり、より好ましくは0.005〜0.5重量部である。
【0089】
(充填材)
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲において、強化フィラーとしてB成分以外の各種充填材を配合することができる。例えば、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、グラファイト、気相成長法極細炭素繊維(繊維径が0.1μm未満)、カーボンナノチューブ(繊維径が0.1μm未満であり、中空状)、フラーレン、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、金属酸化物粒子、金属酸化物繊維、金属酸化物バルーン、並びに各種ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、および塩基性硫酸マグネシウムなど)などが例示される。これらの強化フィラーは1種もしくは2種以上を併用して含むものであってもよい。
【0090】
(他の樹脂やエラストマー)
本発明の樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0091】
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
【0092】
その他、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。
【0093】
かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、着色剤(例えばカーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、光拡散剤(例えばアクリル架橋粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子)、蛍光染料、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
【0094】
(樹脂組成物の製造)
(i)予備混合品の作製
本願発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法においては、無機粉末(B成分)と芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)をあらかじめ予備混合して得た予備混合品を使用する。この予備混合品はB成分とC成分を20:80〜99:1、好ましくは30:70〜95:5、より好ましくは50:50〜90:10の割合で予備混合した予備混合品である。
【0095】
この予備混合品は下記の方法により作製することが出来る。
スーパーミキサーを周速200〜700rpmで回転させ、初めに無機粉末を投入し、次に有機シロキサンを投入し、1分間後、攪拌を停止し予備混合品を得る。ミキサーの周速は200〜700rpm、好ましくは300〜600rpm、より好ましくは400〜500rpmである。周速が200rpm未満だと無機粉末と有機シロキサンの混合状態が十分でなく、700rpmを超えると発熱が大きくなり、パウダーが凝集する。
また投入の順番は、初めに無機粉末、次に有機シロキサンが最適である。初めに有機シロキサンを投入すると、無機粉末を投入した後でも有機シロキサンの部分的な凝集が見られる。
【0096】
この予備混合品を用いることにより、長時間経過した場合に凝集する又は凝集部分を含有するため、有機シロキサンを熱可塑性樹脂組成物に添加する際に粉砕することが必要になる等の取り扱い上の問題点を回避することができる。また、熱可塑性有機樹脂と有機シロキサンとのマスターバッチに比べ、予備混合品は生産性がよく、作業性が向上する。
【0097】
(ii)樹脂組成物の製造
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば、上記予備混合品、A成分、B成分、任意にD成分、E成分、および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0098】
他に、上記予備混合品、他の各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、上記予備混合品以外に各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。上記予備混合品以外の各成分の一部を予備混合する方法としては例えば、A、C成分以外の成分を予め予備混合した後、A成分の熱可塑性樹脂に混合または押出機に直接供給する方法が挙げられる。
【0099】
上記予備混合品以外に予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドしてパウダーで希釈した添加剤のマスターバッチを製造し、かかるマスターバッチを利用する方法が挙げられる。更に一成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0100】
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
【0101】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0102】
(成形品)
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0103】
また本発明によれば、難燃性熱可塑性樹脂組成物を押出成形し、各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形とすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
【0104】
(表面処理)
さらに本発明の成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
【発明の効果】
【0105】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、無機粉末と芳香族基を有する有機シロキサンをあらかじめ予備混合して得た予備混合品を用いることにより、有機シロキサンの生産性および保存性、樹脂組成物の剛性、耐熱性を両立できる方法であり、更にはスルホン酸アルカリ(土類)金属塩や含フッ素滴下防止剤を組合せることによる難燃性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0106】
また、本発明の製造方法により製造された難燃性熱可塑性樹脂組成物は、OA機器分野、電気電子機器分野などの各種工業用途に極めて有用であり、特にOA機器に対応した良好な特性を満足するものである。特にパソコン、ノートパソコン、ゲーム機(家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、パチンコ、およびスロットマシーンなど)、ディスプレー装置(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、および有機ELなど)、並びにプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)などにおいて好適である。
【0107】
本発明の製造方法により製造された難燃性熱可塑性樹脂組成物は、その他幅広い用途に有用であり、例えば、携帯情報端末(いわゆるPDA)、携帯電話、携帯書籍(辞書類等)、携帯テレビ、記録媒体(CD、MD、DVD、次世代高密度ディスク、ハードディスクなど)のドライブ、記録媒体(ICカード、スマートメディア、メモリースティックなど)の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、およびタイプライターなどを挙げることができ、これらの部品に本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物から形成された樹脂製品を使用することができる。またその他の樹脂製品としては、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピューター部品などの車両用部品を挙げることができる。
このような樹脂組成物を効率的に作成することができる本願発明の製造方法の奏する工業的効果は極めて大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
(i)剛性(曲げ弾性率)
ISO178に準拠して曲げ弾性率(MPa)を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmであった。
(ii)難燃性
UL規格94の垂直燃焼試験を、長さ130mm×幅13mm×厚み1.5mmの試験片で行いその等級を評価した。
(iii)耐熱性(荷重たわみ温度)
ISO75に準拠して1.80MPa荷重にて荷重たわみ温度(℃)を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmであった。
(iv)耐衝撃性
ISO179に準拠してノッチ付きのシャルピー衝撃強度を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmであった。
(v)生産性(有機シロキサン予備混合品)
有機シロキサン予備混合品の作製において、ミキサー混合後、ミキサー底面にフィルム状の溶着物が見られたものを×、溶着物が見られなかったものを○とした。
(vi)保存性(有機シロキサンまたは有機シロキサン予備混合品)
有機シロキサンまたは有機シロキサン予備混合品1kgを袋につめ、3kgの荷重をかけて窒素雰囲気下40℃×90%RHで72時間放置した後、16メッシュの篩でふるい、凝集状態を確認した。なお、評価は以下の基準で実施した。
○:16メッシュの篩上に残る固形分が全体の60重量%未満
×:16メッシュの篩上に残る固形分が全体の60重量%以上
【0110】
原料としては、以下のものを用いた。
(A成分)
PC−1:ビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WX、粘度平均分子量19,700)
PC−2:ビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:CM−1000、粘度平均分子量16,000)
【0111】
(B成分)
タルク:(株)勝光山鉱業所製 XD−25
マイカ:(株)山口雲母工業所製 A−41
【0112】
(C成分)
Si−1:フェニル基の含有量が有機基全体の65モル%であり、本文中に規定されたGPC法で測定した重量平均分子量が61,200である有機シロキサン(ジーイー東芝シリコーン(株)製 XC99−B5664)
Si−2:フェニル基の含有量が有機基全体の75モル%であり、本文中に規定されたGPC法で測定した重量平均分子量が12,500である有機シロキサン(信越化学工業(株)製 X−40−9805)
【0113】
(D成分)
F114:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学(株)製 メガファックF−114P)
KSS:ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム塩とジフェニルスルホン−3−モノスルホン酸ジカリウム塩との2:8の混合物(ユーシービージャパン製 KSS)
【0114】
(E成分)
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製 ポリフロンMPA FA500)
B449:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン粒子とスチレン−アクリロニトリル共重合体粒子からなる混合物(ポリテトラフルオロエチレン含有量50重量%)(GEスペシャリティーケミカルズ社製 BLENDEX B449)
【0115】
(その他)
AY:イソブチルトリメトキシシラン(東レ・ダウ・コーニング(株)製:AY43−048)
DC:無水マレイン酸とα−オレフィンとの共重合体である酸変性オレフィンワックス(三菱化学(株)製:ダイヤカルナ30M)
Ti:二酸化チタン(レジノカラー工業(株)製:ホワイトDCF−T−17007)
【0116】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
<予備混合品の作製>
A成分、B成分とC成分を表1記載の混合比率で(株)カワタ製スーパーミキサー(容量300リットル)を使用し、攪拌翼回転数425rpm、1分間混合することにより混合品を得た。次に、表2に示す組成で芳香族ポリカーボネート樹脂、無機粉末、芳香族基を有する有機シロキサン、スルホン酸アルカリ金属塩、含フッ素滴下防止剤、表1記載の予備混合品、および他の成分をタンブラーを用いて均一に混合して混合物を作成した。かかる混合物を径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]のスクリュー根元に位置する第1供給口に供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/h、およびベント減圧度3kPaで溶融押出してペレット化した。
【0117】
得られたペレットを120℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製:SG−150U)によりシリンダー温度280℃、金型温度80℃で評価用の試験片を成形し、それぞれ評価を行った。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
上記表から明らかなように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、あらかじめ得た無機粉末と芳香族基を有する有機シロキサンの予備混合品を用いることにより、有機シロキサンの生産性、保存性を向上させ、樹脂組成物の製造を容易にしていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂(A成分)99〜50重量%、および(B)無機粉末(B成分)1〜50重量%の合計100重量部当たり、(C)芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)0.01〜10重量部を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、あらかじめB成分とC成分を予備混合して得た予備混合品を用いることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
A成分が芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
B成分が鱗片状無機粉末である請求項1または2記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
B成分がタルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種の燐片状無機粉末である請求項3記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
予備混合品が(B)無機粉末(B成分)および(C)芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)を20:80〜99:1の割合で混合した予備混合品である請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
C成分の凝集性が60以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
A成分とB成分との合計100重量部当たり、スルホン酸アルカリ(土類)金属塩(D成分)0.001〜0.1重量部含有してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
A成分とB成分との合計100重量部当たり、含フッ素滴下防止剤(E成分)0.01〜1重量部含有してなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造される難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
(B)無機粉末(B成分)および(C)芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)を混合して得た混合品。
【請求項11】
B成分が鱗片状無機粉末である請求項10記載の混合品。
【請求項12】
混合品が(B)無機粉末(B成分)および(C)芳香族基を有する有機シロキサン(C成分)を10:80〜99:1の割合で混合した混合品である請求項10または11に記載の混合品。
【請求項13】
C成分の凝集性が60以上である請求項10〜12のいずれか1項に記載の混合品。
【請求項14】
B成分がタルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種の燐片状無機粉末である請求項11〜13のいずれか1項に記載の混合品。

【公開番号】特開2008−94904(P2008−94904A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276271(P2006−276271)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】