説明

難燃性樹脂組成物及び樹脂被覆金属管

【課題】 本発明は、ガスなどの流体を運ぶための金属管の表面に保護用樹脂として被覆する、高温耐油性、難燃性などに優れた難燃性樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、熱可塑性架橋樹脂40〜60質量部とエチレン−エチルアクリレート共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1つの樹脂60〜40質量部とからなるベース樹脂100質量部に対して、難燃剤の水酸化マグネシウム20〜50質量部を添加した難燃性樹脂組成物にあり、これにより、良好な特性が得られる。特に、ガス管などの樹脂被覆材料として用いたとき、高い温耐油性、適度の可撓性(柔軟性)、優れた難燃性、高い耐外傷性、優れたシースカット性、シース引抜性などが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスなどの気体や液体などの流体を運ぶための金属管の表面に保護用樹脂として被覆する難燃性樹脂組成物、及び樹脂被覆金属管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス管などの金属管では、保護用の樹脂被覆として、塩化ビニル樹脂(PVC)やポリオレフィン樹脂が使用されている。
【0003】
ところが、PVCの場合には、樹脂中に含まれる塩素原子により、火災などの際に有毒ガスを排出するという問題があった。もちろん、設備の廃棄による金属管の焼却処理時においても、有毒ガスが排出するという問題があった。また、PVCでは安定剤として鉛系のものを使用することが多いため、設備の廃棄に際して、埋め立て処理しても、地中に鉛が溶出して土壌汚染を招くなどの危険もあった。
【0004】
この点、ポリオレフィン樹脂材料の場合、樹脂中に塩素原子がないことから、火災や焼却処理時において、有毒ガスが発生する恐れはないものの、高温油などに晒されると、損傷するという問題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、ポリオレフィン樹脂、特に柔軟性の高い、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)やエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に着目し、これらの樹脂材料をベース樹脂として、難燃剤の水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムを適量添加する一方、ガス管などの高温耐油性(155℃の食用油に10秒間浸漬してシースに割れや裂けなどの欠陥が生じないという耐油性能)に対応するため、ベース樹脂100質量部に対して、比較的少量のシラングラフトマー(ポリエチレンやポリプロピレンをシラノール基でグラフト結合させたもの、3〜10質量部)や熱可塑性架橋樹脂(アイオノマーやRC樹脂など、5〜20質量部)を添加したものを提案してある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−137462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、本発明者等のその後の研究によると、EEAやEVA(40〜80質量部)に対して、より多くの熱可塑性架橋樹脂(60〜20質量部)を添加しても、良好な高温耐油性が得られると共に、適度の可撓性(柔軟性)、優れた難燃性が得られ、さらに、耐外傷性や、被覆のシースを容易にかつ綺麗に切断できるシースカット性、切断したシースを簡単に引き抜きことができるシース引抜性においても、優れた結果が得られることを見い出した。特に、耐外傷性については、樹脂被覆金属管、例えば、樹脂被覆されたガス管の場合、屋内にガス管を引き込む際、施設のコンクリートや木材などの建築部材に擦れることが多いため、被覆部分が損傷し易く、より強い(高い)耐外傷性が望まれている。
【0007】
本発明は、この点に鑑みてなされたもので、基本的には、EEAやEVAと熱可塑性架橋樹脂を適量混合してベース樹脂とし、これらに難燃剤である、水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムを適量添加した、金属管の表面保護用の難燃性樹脂組成物、及びこれを被覆した樹脂被覆金属管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、熱可塑性架橋樹脂40〜60質量部とエチレン−エチルアクリレート共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1つの樹脂60〜40質量部とからなるベース樹脂100質量部に対して、難燃剤の水酸化マグネシウム20〜50質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物にある。
【0009】
請求項2記載の本発明は、熱可塑性架橋樹脂40〜60質量部とエチレン−エチルアクリレート共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1つの樹脂60〜40質量部とからなるベース樹脂100質量部に対して、難燃剤の炭酸カルシウム16〜48質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物にある。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物に表面滑性作用を有する滑剤0.5〜3質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物にある。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1、2又は3記載の難燃性樹脂組成物をガス管などの金属管外周に被覆したことを特徴とする樹脂被覆金属管にある。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記金属管が可撓性金属管であることを特徴とする請求項4記載の樹脂被覆金属管にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の難燃性樹脂組成物によると、柔軟性の高い樹脂であるEEAやEVA(60〜40質量部)に対して、相当量(40〜60質量部)の熱可塑性架橋樹脂を大きく偏ることなく、混合してベース樹脂材料(100質量部)としてあるため、適度の可撓性を有すると共に、熱可塑性架橋樹脂の添加により、ベース樹脂全体の軟化温度が高まるため、パランスのよい特性が得られる。つまり、良好な高温耐油性と共に、適度の可撓性が得られ、さらに、耐外傷性、被覆のシースを容易にかつ綺麗に切断できるシースカット性、切断したシースを簡単に引き抜きことができるシース引抜性においても、良好な結果が得られる。勿論、難燃剤である、水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムの適量添加により、所望の難燃性が得られる。
【0014】
本発明の樹脂被覆金属管によると、上記難燃性樹脂組成物による樹脂被覆層(シース)により、優れた高温耐油性、耐外傷性、所望の難燃性、適度の可撓性が得られ、かつ、優れたシースカット性、シース引抜性が得られる。特にガス管の場合、屋内にガス管を引き込む際、コンクリートや木材などの建築部材に擦れても、高い耐外傷性により損傷に耐え得る。また、配管の作業時、優れたシースカット性によりシースには容易にシースカッタで切れ込みを入れることができ、さらに、このカットした部分の被覆も、優れたシース引抜性により手で容易に取り去ることができる。つまり、端末の施工や中間の接続作業のし易いガス管が得られる。勿論、ノンハロゲンの難燃性により、燃焼時に腐食性ガスやダイオキシン類のガスが発生することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は通常のパイプ状の管からなる本発明に係る樹脂被覆金属管であり、図中、1はステンレス鋼などからなる金属管、2はこの金属管1の外周に被覆された本発明の難燃性樹脂組成物からなる樹脂被覆層(シース)である。また、図2〜図3はコルゲート状の管からなる可撓性を有する本発明に係る樹脂被覆金属管であり、図中、11はステンレス鋼などからなるコルゲート状の金属管、12はこの金属管11の外周に被覆された本発明の難燃性樹脂組成物からなる樹脂被覆層(シース)である。この可撓性の樹脂被覆金属管の場合には、図3に示すように、内面に金属管11の波形の方向とは直交する方向(周方向)に波形となっており、金属管11と樹脂被覆層12との間には、波形の隙間が形成されている。
【0016】
本発明で用いるEEAとしては、エチルアクリレート含有量が5〜30質量%で、メルトフローレイト(MFR、温度190℃、荷重2.2Kg、時間10分)が0.1〜5.0のものの使用が好ましい。また、EVAとしては、酢酸ビニル含有量が5〜40質量%で、メルトフローレイト(MFR、温度190℃、荷重2.2Kg、時間10分)が0.1〜5.0のものの使用が好ましい。
【0017】
これらのEEAとEVAは、それぞれ独立して用いてもよく、また、混合して用いてもよい。混合するときには、特にその混合比は限定されず、任意である。これらは、得られる難燃性樹脂組成物に柔軟性を付与するものである。
【0018】
これらのEEAやEVAに添加される熱可塑性架橋樹脂は、イオン結合などを利用して疑似的な架橋がなされ、しかも、熱可塑性であるポリマーである。この疑似的な架橋により、150℃程度の温度においても自己形状保持機能を有することができる。このような熱可塑性架橋樹脂としては、アイオノマーやRC樹脂(日本ポリエチレン・が提案しているもの)などが挙げられる。
【0019】
このRC樹脂とは、エチレンとラジカル重合性酸無水物を必須構成要素とするエチレン系共重合体(a)と、分子内に水酸基を2以上有する多価アルコール化合物(b)と、反応促進剤(c)を含み、エチレン系共重合体(a)中におけるラジカル重合性酸無水物に由来する単位の割合が0.1〜20質量%であり、エチレン系共重合体(a)中の酸無水基に対する多価アルコール化合物(b)由来の水酸基のモル比が0.1〜10の範囲であり、かつ、反応促進剤(c)がエチレン系共重合体(a)100質量部に対して0.001〜20質量部の範囲である樹脂組成物を指す。
【0020】
上記エチレン系共重合体(a)におけるラジカル重合性酸無水物としては、無水マレイン酸、無水タイコン酸、無水シトラコン酸などが1種以上用いられる。また、これ以外に第3モノマーとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、フマル酸メチル、フマル酸エチルなどのフマル酸エステルなどを共重合してもよい。
【0021】
上記多価アルコール化合物(b)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールエタンや分子内に2以上の水酸基を有するエチレン−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体などの1種以上が用いられる。
【0022】
上記反応促進剤(c)としては、カルボン酸の金属塩又はカルボキシル基を有する重合体の金属塩などが用いられる。カルボン酸の金属塩としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、コハク酸、安息香酸、テレフタル酸などのカルボン酸と、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩が挙げられる。
【0023】
また、カルボキシル基を有する重合体の金属塩としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の一部又は全部のカルボキシル基と、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、もしくはエチレンとエチレン−(メタ)アクリル酸金属塩との共重合体が挙げられる。これ以外の反応促進剤(c)としては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロポレートなどが挙げられる。
【0024】
この熱可塑性架橋樹脂の具体的なものとしては、例えば「レクスパールRC801」(商品名、日本ポリエチレン社製)や「TRCポリマ−GFA900」(商品名、三菱化学社製)などが挙げられる。この熱可塑性架橋樹脂は、得られる難燃性樹脂組成物に耐熱性などを付与するものである。
【0025】
この熱可塑性架橋樹脂と、EEA、EVAとの配合であるが、先ず、熱可塑性架橋樹脂に対して、EEAとEVAはそれぞれ単独配合でも併用でもよく、これら両者の総配合部数を100質量部とする。つまり、熱可塑性架橋樹脂40〜60質量部に対して、EEA、又はEVAから選ばれる少なくとも1つの樹脂を60〜40質量部とする。
【0026】
その理由は、以下の如くである。EEAやEVAは柔軟性に富む樹脂材料であるため、その割合が多いほど、大きな可撓性が得られる一方、その軟化温度が低いことから、ベース樹脂全体の軟化温度も低下し、耐熱性が低下する要因となる。これに対して、熱可塑性架橋樹脂は、その架橋構造により、その割合が多いほど、ベース樹脂全体の軟化温度が上がり、耐耐外傷性、耐熱性の向上が期待できる。
【0027】
この観点から、熱可塑性架橋樹脂が40質量部未満で、EEA又は/及びEVAが60質量部を超える場合には、ベース樹脂全体の柔軟性が大き過ぎると共に、軟化温度も低く過ぎて、所望の耐熱性、特に高温耐油性が得られなくなるからである。一方、熱可塑性架橋樹脂が60質量部を超え、EEA又は/及びEVAが40質量部未満の場合には、ベース樹脂全体の軟化温度が高くなるものの、加工性が低下するようにからである。
【0028】
つまり、上記配合範囲内にあると、特性のパランスがよく、耐熱性、特に良好な高温耐油性と共に適度の可撓性が得られる。さらに、後述するように、耐外傷性、被覆のシースを容易にかつ綺麗に切断できるシースカット性、通常の外気温(20℃程度)や低温(−5℃程度)にあっても、切断したシースを簡単に引き抜きことができるシース引抜性においても、良好な結果が得られる。
【0029】
このベース樹脂を難燃化するため、難燃効果が高く、ノンハロゲンの難燃剤である、水酸化マグネシウムや炭酸カルシウムを添加する。これらの難燃剤はそのまま添加してもよいが、好ましくは難燃性及びシースカット性、シース引抜性を良好にするため、表面処理を施したものを使用するとよい。この表面処理としては、例えばポリオルガノシロキサン、エポキシシラン、ビニルシラン、アミノシラン、メルカプトシランなどのシランカップリング剤や、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、さらには、イソプロピルイソステアロイルチタネートなどのチタンカップリング剤が挙げられる。その添加量としては、ベース樹脂100質量部に対して、3〜10質量%程度が望ましい。
【0030】
難燃剤である水酸化マグネシウムのベース樹脂100質量部に対する添加量は、20〜50質量部とする。その理由は、20質量部未満では、樹脂組成物の十分な難燃性が得られず、逆に50質量部を超えるようになると、樹脂組成物の機械的特性が低下するようになるからである。一方、難燃剤である炭酸カルシウムのベース樹脂100質量部に対する添加量は、16〜48質量部とする。その理由は、16質量部未満では、樹脂組成物の十分な難燃性が得られず、逆に48質量部を超えるようになると、樹脂組成物の機械的特性が低下するようになるからである。また、難燃剤の添加量がこれらの範囲とした場合、樹脂組成物の比重を1.02〜1.18の範囲とすることができる。この範囲の比重とすれば、塩化ビニル樹脂組成物やポリエチレン樹脂組成物との比重分別が可能となる。
【0031】
これらの難燃剤の他に難燃助剤を添加することもできる。難燃助剤の添加により、難燃剤の添加量を低減させて、樹脂組成物の比重を下げると共に、機械的特性の低下を抑えることもできる。このような難燃助剤としては、例えば、シリコーンパウダー、シリコーンゴムなどのシリコーン化合物、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系化合物、硼酸亜鉛、ヒドロキシ錫亜鉛、錫酸亜鉛などの亜鉛化合物、メラミンシアヌレート、メラミン、メラムなどの窒素含有有機化合物、赤リン、カーボンブラック、N,N’−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド化合物などを挙げることができる。そして、添加量は、ベース樹脂100質量部に対して、10質量部程度を上限として添加すればよい。
【0032】
このようにして得られる本発明の難燃性樹脂組成物には、必要により、表面滑性作用を有する滑剤を添加するとよい。この滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、EVAワックス、金属石鹸、パラフィン油などが挙げられる。そして、その添加量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.5〜3質量部程度とするとよい。
【0033】
さらに、本発明では、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤、帯電防止剤、防カビ剤、タルクなどの無機充填剤などの種々の添加剤を適宜必要に応じて添加することができる。
【0034】
このような配合からなる本発明の難燃性樹脂組成物は、例えば、上記図1〜図3の金属管1、11に樹脂被覆層2、12として、周知の押出被覆法により押出被覆される。
これにより、本発明の金属管が得られる。この樹脂被覆層2、12は、難燃性樹脂組成物からなるテープを作成し、これを金属管1、11に巻き付けて被覆してもよい。或いは、難燃性樹脂組成物からなるチューブを作成し、これを金属管1、11に被せ、加熱して被覆してもよい。このようにして得らる樹脂被覆層の表面硬度は、ショアD硬度(JIS−6760)で50以下、より好ましくは30〜50となるように調整するとよい。この範囲とすることで、耐外傷性と柔軟性との互いに相反する特性のパランスをとることができる。なの、金属管には、曲り管や接続継手も含まれるものとする。さらに、その形状も、上記図1〜図3の場合に限定されるものではない。
【0035】
〈実施例・比較例〉
表1〜表8に示した配合条件で、本発明の要件を満たす樹脂組成物による樹脂被覆金属管(実施例1〜18)と、本発明の要件を欠く樹脂組成物による樹脂被覆金属管(比較例1〜28)を、サンプルとして製造した。具体的には、図2に示すような、直径20mmのステンレス鋼(SUS304)フレキシブル管を試作し、これに、上記要件からなる樹脂組成物の樹脂被覆層を保護層(シース)として、厚さ0.7mm±0.1mmで被覆した。この被覆は上記樹脂組成物をペレット化し、これを押出機に供給して行った。
【0036】
ここで、用いたEEAはエチルアクリレート含有量が15質量%、メルトフローレイト(MFR)が0.5のものである。また、EVAは酢酸ビニル含有量が20質量%、MFRが2.5のものである。熱可塑性架橋樹脂はRC樹脂(クレスパールRC801、日本ポリエチレン社製)である。水酸化マグネシウムはX−22−1894(信越シリコーン社製)である。炭酸カルシウムはNS1000(日東粉化工業社製)である。滑剤はステアリン酸である。紫外線吸収剤はチヌビン111FDL(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)である。老化防止剤はイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)である。
【0037】
そして、これらの各金属管について、以下の方法により、高温耐油性、シースカット性、シース引抜性(20℃と−5℃)、難燃性、及び耐外傷性を調べ、その結果を、同表1〜表8に併記した。なお、各表中の配合材料の数値は質量部数を示す。
【0038】
〈高温耐油性〉
各金属管を、直径40mmの円筒に沿わせて180°曲げ、この状態で155℃の大豆油に10秒間浸漬した。これを10回試行し、その全長に渡って樹脂被覆層(シース)の裂け、亀裂などのないものを合格とし、一部でも裂け、亀裂などのあったものを不合格とした。
【0039】
〈シースカット性〉
市販のシートカッターを用い、管の端末から10cmのところを1回転してシースを円周方向にカットしたとき、シースがよじれることなく綺麗に二つに分かれているものを良好(合格)とし、シースの切れ込みが不十分で繋がっているものやシースのカット面がよじれているものは不良(不合格)とした。
【0040】
〈シース引抜性〉
上記のように、シートカッターで切断されたシースを、周囲温度20℃と−5℃において、手で引き抜き、容易に引き抜ける場合を合格とし、容易に引き抜けない場合を不合格とした。
【0041】
〈難燃性〉
各金属管を垂直に立て、これにバーナを45°の角度に傾けて、火炎を5秒間接炎した後、離して15秒以上燃え続けなければ合格とし、15秒を超えて燃え続けなける場合を不合格とした。
【0042】
〈耐外傷性〉
各金属管に対して、図4に示すような装置(狭所通管試験装置)を用いて引抜きを行った。この装置では、厚さ12mmで、内径36mmの穴を有するコンパネが3枚、450mmの間隔で設置され、これらの穴にサンプルの金属管を通して引き抜いた。このとき、2番目のコンパネの穴の高さは左右のコンパネの穴より上下方向に150mm高くしてある(偏心量150mm)。なお、金属管の長さは3m、引抜き速度は1m/secで、1サンプルに付き、3回の試験を行った。そして、この引抜きにより、シースに外傷、割れ、裂けがなければ合格とし、外傷、割れ、裂けがあれば不合格とした。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
上記表1〜表3から、本発明の条件を満たす樹脂組成物によるシースを設けた金属管(実施例1〜18)では、高温耐油性、シースカット性、シース引抜性、難燃性、耐外傷性のすべてにおいて、良好(合格)であることが分かる。
【0052】
これに対して、表4〜表7から、本発明の要件を欠く樹脂組成物によるシースを設けた金属管(比較例1〜28)では、いずれかの点で問題があることが分かる。
つまり、比較例1〜12はベース樹脂のEEAとEVEの添加量が多く(70質量部)、熱可塑性架橋樹脂の添加量が少ない場合(30質量部)、比較例13〜24はベース樹脂のEEAとEVEの添加量が少なく(30質量部)、熱可塑性架橋樹脂の添加量が多い場合(70質量部)、比較例25は難燃剤の水酸化マグネシウムが少ない場合(10質量部)、比較例26は難燃剤の水酸化マグネシウムが多い場合(60質量部)、比較例27は難燃剤の炭酸カルシウムが少ない場合(10質量部)、比較例28は難燃剤の炭酸カルシウムが多い場合(60質量部)である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る樹脂被覆金属管の一例を示した縦断面図である。
【図2】本発明に係る樹脂被覆金属管の他の例を示した縦断側面図である。
【図3】図2のI−I線縦断面図である。
【図4】耐外傷性を判定するための装置(狭所通管試験装置)の概略説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・金属管、2・・・樹脂被覆層、11・・・金属管、12・・・樹脂被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性架橋樹脂40〜60質量部とエチレン−エチルアクリレート共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1つの樹脂60〜40質量部とからなるベース樹脂100質量部に対して、難燃剤の水酸化マグネシウム20〜50質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性架橋樹脂40〜60質量部とエチレン−エチルアクリレート共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1つの樹脂60〜40質量部とからなるベース樹脂100質量部に対して、難燃剤の炭酸カルシウム16〜48質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物に表面滑性作用を有する滑剤0.5〜3質量部を添加したことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記請求項1、2又は3記載の難燃性樹脂組成物をガス管などの金属管外周に被覆したことを特徴とする樹脂被覆金属管
【請求項5】
前記金属管が可撓性金属管であることを特徴とする請求項4記載の樹脂被覆金属管。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−232954(P2006−232954A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48204(P2005−48204)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】