説明

難燃性積層シート

【課題】機能性シートの特性を低下させることなく、該シートに難燃性を付与した難燃性積層シートを提供する。
【解決手段】難燃性積層シートは、機能性シートの片面または両面に、難燃性シートを積層してなり、前記機能性シートがノイズ抑制シートまたは電磁波シールドシートなどの導電性シートであり、また難燃性シートが絶縁性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ノイズ抑制シート、電磁波シールドシートなどの機能性シートは、より薄型化される傾向にある。しかし、目的とする特性を発現させるために難燃性の低い材料を用いざるを得ないことがあり、この場合、前記シートが薄くなるほど、発火しやすくなるという問題が生じる。
この問題を解決するために、従来、機能性シート自体に難燃剤を含有させることが行われてきた。しかし、この方法では、難燃剤の含有量が多くなると、機能性シートの他の材料の含有量が制限されたり、目的とする特性が阻害されたりして、その機能が充分に発現されなくなったりする問題が生じるので、含有量に限界があり、したがって、難燃剤を含有させることのみによっては、機能性シートが目的とする機能を充分発現させつつ、難燃性を充分に付与するということができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、機能性シートの特性を低下させることなく、難燃性が付与された難燃性積層シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、ノイズ抑制シート、電磁波シールドシートなどの機能性シート自体に難燃剤を含有させることのみで難燃性を付与するのではなく、難燃性材料からなる難燃性シートを前記機能性シートの片面または両面に積層させることとすれば、機能性シート本来の特性を損なうことなく、難燃性を付与し得ることを見出した。
すなわち、本発明にかかる難燃性積層シートは、機能性シートの片面または両面に、難燃性シートを積層してなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、機能性シート本来の特性を損なうことなく、難燃性が付与された難燃性積層シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明にかかる難燃性積層シートについて詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔機能性シート〕
機能性シートとは、例えば、ノイズ抑制シートや電磁波シールドシートなどのシートであり、目的に応じた機能を発揮するシートである。
<ノイズ抑制シート>
ノイズ抑制シートは、近年、益々薄型化される傾向にあるため、難燃性を付与しがたく、電子機器、中でも能動素子から放射される電磁波ノイズを吸収して、熱に変換して放熱する機能を有していることから、難燃性を付与する意義が大きい。
【0007】
前記ノイズ抑制シートとして、導電性粉末をバインダーに混合させてなり、厚みが250μm以下、表面抵抗値が10〜500Ω/□であるものが好ましい。このノイズ抑制シートは、広帯域で、高いノイズ抑制能を発揮し、また、ノイズ抑制能が高いことにより、薄型化が可能で、小型化、軽量化も可能であるという利点がある。そして、このような薄型のシートでも、本発明によれば充分な難燃性を付与することができるのである。
(導電性粉末)
導電性を付与するためのフィラーであり、特に限定するわけではないが、例えば、金属、導電性金属酸化物、炭素材料、ウィスカーなどが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0008】
前記金属としては、特に限定するわけではないが、例えば、金、銀、銅、アルミなどが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、特に限定するわけではないが、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどが挙げられる。
前記炭素材料としては、特に限定するわけではないが、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイルなどが挙げられる。
前記ウィスカーとしては、特に限定するわけではないが、例えば、チタン酸カリウィスカーなどが挙げられる。
【0009】
前記導電性粉末の粒子径としては、特に限定するわけではないが、例えば1〜200μmであることが好ましい。より好ましくは、5〜100μmである。1μm未満では樹脂中への均一分散が困難になるおそれがあり、200μmを超えるとシート表面が粗くなったり、難燃性が低下したりするおそれがある。
(バインダー)
導電性粉末を結合させ、成形性を付与し、さらに、ノイズ抑制シートの導電性を調整する役割も有する。前記バインダーとしては、特に限定するわけではないが、例えば、樹脂、パルプ、セラミックスなどが挙げられ、その用途や目的に応じて、その1種または2種以上を適宜選択すれば良い。
【0010】
前記樹脂としては、限定するわけではないが、例えば、クロロプレンゴム、アクリルニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムなどの各種エラストマー、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、塩素化ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、塩素化ポリエチレンなどの難燃性の高い樹脂が好ましい。
前記パルプとしては、限定するわけではないが、例えば、木材パルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、ボロパルプ、リンターパルプなどが挙げられる。
【0011】
前記セラミックスとしては、限定するわけではないが、例えば、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ガラスおよびボロンナイトライド、セリサイト、酸化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
(導電性粉末とバインダーの配合割合)
上記導電性粉末とバインダーの配合割合は材料によって異なり一概には言えないが、例えば、導電性粉末が金属である場合には、その配合割合を、バインダー100重量部に対して2〜200重量部とすることが好ましい。より好ましくは5〜50重量部である。
導電性粉末が炭素材料である場合には、限定するわけではないが、例えば、その配合割合を、バインダー100重量部に対して5〜200重量部とすることが好ましい。より好ましくは10〜100重量部である。
【0012】
導電性粉末がウィスカーである場合には、限定するわけではないが、例えば、その配合割合を、バインダー100重量部に対して2〜200重量部とすることが好ましい。より好ましくは5〜50重量部である。
(他の材料)
前記ノイズ抑制シートには、本発明の効果を害しない範囲において、他の材料を用いても良い。具体的には、例えば、難燃剤や磁性粉末を用いることができる。
前記ノイズ抑制シートに難燃剤を添加することで、ノイズ抑制シート自体に難燃性を付与することができる。ただし、ノイズ抑制シートへの難燃剤の添加のみで、その機能を低下させることなく、充分な難燃性を付与することはできないので、後述のように、難燃性シートを積層することが必要である。
【0013】
前記難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモン、リン系難燃剤などが挙げられ、これらを1種または2種以上併用することができる。難燃剤の配合割合としては、例えば、バインダー100重量部に対して0〜100重量部とすることが好ましい。より好ましくは0〜50重量部である。100重量部を超えると、ノイズ抑制シートのノイズ抑制能の低下を招くおそれがある。
前記磁性粉末としては、特に限定するわけではないが、例えば、磁性合金金属(センダスト、パーマロイ)やフェライトを挙げることができる。フェライトは、MO・Feなる組成をもつ一群の鉄酸化物であり、Mは2価の金属イオンで、例えば、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などである。金属酸化物と酸化鉄との粉末を混合し、圧縮成形した後に焼成することにより得ることができる。Mは1種だけに限らず、2種以上を組み合わせて混合し、固溶体をつくることにより、種々の磁気特性を生じさせることもできる。例えば、平均粒径100μm以下の粉末として使用できる。磁性粉末の配合割合としては、例えば、バインダー100重量部に対して0〜400重量部とすることが好ましい。より好ましくは20〜200重量部である。前記磁性粉末の粒子径としては、特に限定するわけではないが、例えば、1〜300μmであることが好ましい。より好ましくは10〜200μmである。
【0014】
さらに、必要に応じて、溶剤、分散剤、可塑剤、架橋剤、老化防止剤、架橋促進剤、顔料などを1種または2種以上添加しても良い。
(ノイズ抑制シートの製造)
ノイズ抑制シートの製造方法は、特に限定されず、例えば、導電性粉末とバインダーを、ニーダー、ロールミル、インターミックス、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いて混練した後に、押出成型などによってシートを得る方法や、導電性粉末とバインダーを溶剤に分散させ、これを基板に塗付した後に乾燥した後、基板から引き剥がしてシートを得る方法などが挙げられる。なお、ここでいう「シート」には、厚みの薄いフィルムも含まれる。
【0015】
前記ノイズ抑制シートの厚みは、前記したように、250μm以下とすることが好ましい。
ノイズ抑制シートには、このシートを保護する目的で、クリア塗膜層や着色塗膜層を形成するようにしてもよい。
このようにして製造されるノイズ抑制シートは、ノイズ発生源または伝送線路を被覆することによって、ノイズを抑制するのに適している。具体的には、広帯域でノイズ抑制能が高いことにより、薄型化、小型化、軽量化が可能であり、ノイズ発生源または伝送線路を被覆することにより、すなわち、ノイズ抑制シートをノイズ発生源などに密着させることにより、ノイズの発生や伝播を効果的に抑制する使用方法に適している。被覆対象物としては、携帯電話や回路基板などがある。
【0016】
<電磁波シールドシート>
電磁波シールドシートは、電磁波を主として吸収することで抑制する前記ノイズ抑制シートと異なり、電磁波を反射することによりシールド(遮蔽)するものである。ノイズ抑制シートと同様に、近年、益々薄型化される傾向にあるため、難燃性を付与しがたく、難燃性を付与する意義が大きい。電磁波シールドシートとは、不要電磁波(ノイズ)を吸収減衰させることで透過と反射を抑制する前記ノイズ抑制シートとは異なり、電磁波を単純に反射させることにより透過を抑制するものであり、前記ノイズ抑制シートとは用途の異なるものであるが、その材料としては、上述のノイズ抑制シートと同様のものを用いることができる。ただし、電磁波シールドシートの厚みや表面抵抗値は、ノイズ抑制シートと異なり、厚みは、通常、1〜1000μm、表面抵抗値は、通常、1Ω/□以下である。
【0017】
(他の材料)
前記電磁波シールドシートに難燃剤を添加することで、電磁波シールドシート自体に難燃性を付与することができる。ただし、電磁波シールドシートへの難燃剤の添加のみで、その機能を低下させることなく、充分な難燃性を付与することはできないので、後述のように、難燃性シートを積層することが必要である。
前記難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモン、リン系難燃剤などが挙げられ、これらを1種または2種以上併用することができる。難燃剤の配合割合としては、例えば、バインダー100重量部に対して0〜100重量部とすることが好ましい。より好ましくは0〜50重量部である。100重量部を超えると、電磁波シールドシートの電磁波シールド能の低下を招くおそれがある。
【0018】
さらに、必要に応じて、溶剤、分散剤、可塑剤、架橋剤、老化防止剤、架橋促進剤、顔料などを1種または2種以上添加しても良い。
(電磁波シールドシートの製造)
電磁波シールドシートの製造方法は、特に限定されず、例えば、メッキや蒸着などの公知の技術を用いて導電性膜を形成させる方法や、上記ノイズ抑制シートと同様にして、導電性粉末とバインダーを、ニーダー、ロールミル、インターミックス、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いて混練した後に、押出成型などによってシートを得る方法や、導電性粉末とバインダーを溶剤に分散させ、これを基板に塗付した後に乾燥した後、基板から引き剥がしてシートを得る方法なども採用できる。なお、ここでいう「シート」には、厚みの薄いフィルムも含まれる。
【0019】
前記電磁波シールドシートの厚みは、前記したように、通常、1〜1000μmとする。
電磁波シールドシートには、このシートを保護する目的で、クリア塗膜層や着色塗膜層を形成するようにしてもよい。
このようにして製造される電磁波シールドシートは、非常にフレキシブルなため、FPC(フレキシブル・プリント配線基板)の電磁波対策に適している。被覆対象物としては、携帯電話・その他モバイルなどのFPCなどがある。
〔難燃性シート〕
難燃性シートは、機能性シートの片面または両面に積層して難燃性を付与するためのシートである。
【0020】
前記難燃性シートとしては、難燃性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、塩素化ポリエチレンなどの難燃性樹脂が挙げられる。
(他の材料)
前記難燃性シートに難燃剤を添加することで、その難燃性をさらに向上させることができる。
前記難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモン、リン系難燃剤などが挙げられ、これらを1種または2種以上併用することができる。
【0021】
さらに、必要に応じて、溶剤、分散剤、可塑剤、架橋剤、老化防止剤、架橋促進剤、顔料などを1種または2種以上添加しても良い。
(難燃性シートの製造)
難燃性シートの製造方法は、特に限定されず、例えば、難燃性樹脂やその他の材料を、ニーダー、ロールミル、インターミックス、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いて混練した後に、押出成型などによってシートを得る方法や、難燃性樹脂やその他の材料を溶剤に分散させ、これを基板に塗付した後に乾燥した後、基板から引き剥がしてシートを得る方法などが挙げられる。なお、ここでいう「シート」には、厚みの薄いフィルムも含まれる。
【0022】
前記難燃性シートの厚みは、機能性シートとの積層シートが、機能性シートの用途上要求されるシート厚みとなるように適宜決定すれば良く、例えば、5〜200μmとすることが好ましい。より好ましくは、10〜100μmである。
このようにして製造される難燃性シートは、機能性シートに積層することによって、難燃性を付与することができるだけでなく、機能性シートを補強することもでき、さらに、機能性シートが導電性である場合、難燃性シートとして絶縁性のもの、例えば、PTFEなどを用いることにより、機能性シートを絶縁保護することもできる。さらに、機能性シートにフィラーが含まれる場合に、このフィラーが脱落するのを防止することもできる。
【0023】
〔難燃性積層シート〕
前記機能性シートの片面または両面に、前記難燃性シートを積層してなる。
積層の方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用すれば良い。具体的には、例えば、上記の方法で得られた機能性シートと難燃性シートを重ね合わせ、ロールやプレスを用いて圧延する方法が挙げられる。その際、機能性シートと難燃性シートの密着性を高めるために、接着剤を用いても良い。前記接着剤としては、特に限定されず、例えば、ワニス、熱硬化系樹脂、エマルジョン系接着剤などが挙げられる。また、積層方法として、機能性シートの材料を溶剤に分散させてペースト状とし、これを難燃性シートに塗布し、乾燥硬化させる方法や、前記方法とは逆に、難燃性シートの材料を溶剤に分散させてペースト状とし、これを機能性シートに塗布し、乾燥硬化させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を「%」と記すことがある。
実施例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<難燃性の評価試験>
ASTM D4804に準拠し、UL94難燃規格の薄手材料垂直燃焼試験(VTM)に基づき評価した。具体的には、以下に説明するとおりである。
すなわち、(200±5)×(50±1)×(厚み)mmのフィルム試験片を円筒状に巻き、クランプに垂直に取り付け、20mm炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により、ASTM D4804に規定の基準(VTM−0、VTM−1、VTM−2、Not)に基づき、判定を行った。VTM−0が最も難燃性が高く、VTM−1、VTM−2の順に難燃性が低くなる。そして、Notは、前記いずれの分類にも属さず、最も難燃性が低い。
【0025】
<伝送減衰率Rtp、反射減衰率S11の評価>
IEC62333−1およびIEC62333−2に準拠して測定し評価した。ここで伝送減衰率Rtpとは下式(1)で表され、値が大きいほどノイズ抑制能が高いことを表している。式中、S11は反射減衰率、S21は透過減衰率である。
【0026】
【数1】

【0027】
〔ペーストの製造例1〕
バインダーとして塩素化ポリエチレンを100部、導電性粉末として平均繊維長8μmの炭素繊維粉末50部、溶剤としてトルエン1040部を用い、各材料を混練することにより、導電性ペーストを得た。
〔ペーストの製造例2〕
ペーストの製造例1で得られたペーストに、さらに、難燃剤として平均粒径0.2μmの三酸化アンチモン粉末50部を加え、混練することにより、難燃剤入り導電性ペーストを得た。
【0028】
〔ペーストの製造例3〕
バインダーとして塩素化ポリエチレンを100部、難燃剤として平均粒径0.2μmの三酸化アンチモン粉末50部、溶剤として、トルエン1040部を用い、各材料を混練することにより、難燃性付与ペーストを得た。
〔実施例1〕
厚みが50μmである市販のPTFEシート(YEU MING TAI CHEMICAL INDUSTRIAL社製)上に、前記ペーストの製造例1で得た導電性ペーストを、乾燥膜厚が23μmとなるように塗工し、乾燥した後、その上にさらに、ペーストの製造例3で得た難燃性付与ペーストを、乾燥膜厚が8μmとなるように塗工し、乾燥することにより、厚みが81μmである三層積層シートを得た。
【0029】
〔実施例2〕
アルミからなる基板に、ペーストの製造例3で得た難燃性付与ペーストを、乾燥膜厚が28μmとなるように塗工し、乾燥させ、その上にさらに、ペーストの製造例1で得た導電性ペーストを、乾燥膜厚が20μmとなるように塗工し、乾燥した。その後さらに、ペーストの製造例3で得た難燃性付与ペーストを、乾燥膜厚が12μmとなるように塗工し、乾燥したのち、基板から剥離することにより、厚みが60μmである三層積層シートを得た。
〔実施例3〕
アルミからなる基板に、ペーストの製造例3で得た難燃性付与ペーストを、乾燥膜厚が23μmとなるように塗工し、乾燥した後、その上にさらに、ペーストの製造例2で得た難燃剤入り導電性ペーストを、乾燥膜厚が39μmとなるように塗工し、乾燥することにより、厚みが62μmである二層積層シートを得た。
【0030】
〔比較例1〕
アルミからなる基板に、ペーストの製造例1で得た導電性ペーストを、乾燥膜厚が24μmとなるように塗工し、乾燥することにより、厚みが24μmである単層シートを得た。
〔評価〕
各実施例と比較例のシート構成、積層シートの厚み(比較例1は単層シートの厚み)、難燃特性を表1にまとめた。なお、表1中、「塩素化PE」は「塩素化ポリエチレン」を意味し、「Sb」は「三酸化アンチモン」を意味する。
【0031】
【表1】

【0032】
また、各実施例と比較例にかかるシートについて、そのノイズ抑制能を図1に示す。
(1)表1を見ると、実施例1〜3では、難燃性シートの積層により、充分な難燃性が付与されていることが分かる(いずれも難燃特性がVTM−0)。
(2)図1を見ると、実施例1〜3は、難燃性シートを積層したり、難燃剤を添加したりしても、ノイズ抑制能はそれほど低下することなく、充分量発揮できていることが分かる。特に、実施例1、2と比較例1を対比すると、いずれもノイズ抑制シートが、ペーストの製造例1で得た導電性ペーストを使用したものであり、乾燥膜厚もほぼ同等(実施例1は23μm、実施例2は20μm、比較例1は24μm)であるにもかかわらず、ノイズ抑制能に格別の差は見られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明にかかる難燃性積層シートは、ノイズ抑制シートや電磁波シールドシートの難燃性を高めるために好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1〜3にかかる積層シート、比較例1にかかる単層シートの伝送減衰率Rtpと反射減衰率S11を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性シートの片面または両面に、難燃性シートを積層してなる、難燃性積層シート。
【請求項2】
前記機能性シートがノイズ抑制シートまたは電磁波シールドシートである、請求項1に記載の難燃性積層シート。
【請求項3】
前記機能性シートが導電性であり難燃性シートが絶縁性である、請求項1または2に記載の難燃性積層シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−125974(P2009−125974A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300284(P2007−300284)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】