説明

電力ケーブルの差込式接続部

【課題】従来のケーブルに比べて使用温度が高いCVケーブルに適用しても、接続部の温度上昇が生じることなく長期的に電気性能が安定した電力ケーブルの差込式接続部を提供する。
【解決手段】ケーブル導体接続部3の外側に、絶縁ゴム部4、導電性ゴムの外部半導電層5、及び内部に電極部を有している内部半導電層6を一体成形したプレモールドゴム成形体7を装着して、接続部の絶縁部を形成し、その外側には外部ケース9がコンパウンド充填室10及び両側のケーブルシース8に跨るようにして固定し、プレモールドゴム成形体7と外部ケース9との間にコンパウンド充填室10を構成し、外部ケース9の一部にコンパウンド注入孔13を設けて、コンパウンド充填室10内に予め装着された1次コンパウンド11で充填しきれない領域全域に2次コンパウンド12を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの差込式接続部に関し、特に、接続部の温度上昇が生じにくく、長期的に電気性能が安定した電力ケーブルの差込式接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に、従来のプラスチック電力ケーブルの差込式接続部の構造例を示す。
この図において、1は架橋ポリエチレン等のケーブル絶縁体、2はケーブル外部半導電層、3は圧縮スリーブ等を用いて接続したケーブル導体接続部である。ケーブル導体接続部3の外側には、絶縁ゴム部4、導電性ゴムの外部半導電層5、及び内部に電極部を有している内部半導電層6を一体成形したプレモールドゴム成形体7が装着され、接続部の絶縁部を形成している。更に、その絶縁部外側には外部ケース9がコンパウンド充填室10及び両側のケーブルシース8に跨るように固定されている。コンパウンド充填室10はプレモールドゴム成形体7と外部ケース9との間に設けられた構造である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
コンパウンド充填室10には、一般に、接続部の放熱性を高めるため、ポリウレタンなどの常温硬化型コンパウンド(例えば、特許文献2参照)やクオーツサンドといった微粒材(例えば、特許文献1参照)が充填されている。
【0004】
上記のような従来の差込式接続部はケーブルの常時許容温度を90℃として設計されている。また、近年電力需要の増大に伴い、送電容量を大幅に増加させる必要に迫られている。このため、この従来の差込式接続部を90℃以上の温度で使用する架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(CVケーブル)へ適用する場合には、接続部の温度上昇を低減する必要があり、この解決方法として低熱抵抗タイプのコンパウンドを充填することが検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−16757号公報
【特許文献2】特公昭61−52171号公報
【特許文献3】特公平8−34660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような低熱抵抗タイプのコンパウンドは粘度が高く、流動性が低いことから、液状化状のコンパウンドをコンパウンド充填室10内に注入しながら充填しても十分には充填しきれずに部分的に空隙あるいはボイドが生じることがあった。このため、空隙あるいはボイドが存在する部分の接続部の熱抵抗が局所的に大きくなって接続部全体の温度が高くなり、汎用のプレモールドゴム成形体7の許容温度に対して裕度のない温度まで上昇して長期的な電気性能の維持が困難になるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、従来のケーブルに比べて使用温度が高いCVケーブルに適用しても、接続部の温度上昇が生じることなく長期的に電気性能が安定した電力ケーブルの差込式接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電力ケーブルの差込式接続部は、ケーブル導体接続部の外側に設けられたプレモールドゴム成形体と該プレモールドゴム成形体を保護する外部ケースとの間の空間部分に、熱抵抗の異なる1次コンパウンド及び2次コンパウンドが充填された電力ケーブルの差込式接続部であって、前記1次コンパウンドは前記2次コンパウンドよりも熱抵抗が低く、予め前記空間部分に充填されて前記ケーブル導体接続部の温度上昇を防止し、前記2次コンパウンドは前記1次コンパウンドよりも粘度が低く、前記1次コンパウンドが前記空間部分に充填されていない残りの空間に充填され熱抵抗が局部的に大きくなることを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電力ケーブルの差込式接続部によれば、放熱性が改善されて局所的に熱抵抗が大きくなる部分をなくすことができ、接続部全体の温度の上昇を防止できる。このため、従来のケーブルに比べて使用温度が高いCVケーブルに適用しても、接続部の温度上昇が生じにくく長期的に電気性能が安定した電力ケーブルの差込式接続部を提供することができる。
また、使用温度が高いCVケーブルの接続部として適用できるから、電力需要が伸びて送電容量がアップしたCVケーブル線路にも採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
(全体構成)
図1に、本発明に係る電力ケーブルの差込接続部の一実施形態を示す。
この図において、1は架橋ポリエチレン等のケーブル絶縁体、2はケーブル外部半導電層、3は圧縮スリーブ等を用いて接続したケーブル導体接続部である。ケーブル導体接続部3の外側には、絶縁ゴム部4、導電性ゴムの外部半導電層5、及び内部に電極部を有している内部半導電層6を一体成形したプレモールドゴム成形体7が装着され、接続部の絶縁部を形成している。更に、その絶縁部外側には外部ケース9がコンパウンド充填室10及び両側のケーブルシース8に跨るように固定されている。プレモールドゴム成形体7と外部ケース9との間にはコンパウンド充填室10が構成されている。また、外部ケース9の一部にはコンパウンド注入孔13が設けられ、コンパウンド充填室10内に予め装着された1次コンパウンド11で充填しきれない領域全域に2次コンパウンド12を注入できるようになっている。
【0011】
(コンパウンド充填室)
コンパウンド充填室10には、1次コンパウンド11と2次コンパウンド12が充填される。
図2に示すように、1次コンパウンド11はプレモールドゴム成形体7上に取り付けられるが、外部ケース9とプレモールドゴム成形体7の空間を埋める形状に合致するよう事前に注型成形して提供される。1次コンパウンド11は、取り付け時には予め分割して成形しておいてプレモールドゴム成形体7上に取り付けることができる。図2では2分割した例を示すが、分割数については作業性、成形のしやすさ等により任意に決定できる。
更に、1次コンパウンドで注型成形する形状、大きさは、接続部全体の寸法と放熱性および2次コンパウンドを残りの空間部分に空隙あるいはボイドが生じないような最適条件を満足するよう適宜決めることができる。
また、2次コンパウンドは、コンパウンド注入孔13から1次コンパウンド11で充填できていない領域全域に及ぶように注入される。
【0012】
(1次コンパウンド)
1次コンパウンド11には、低熱抵抗タイプのコンパウンドを用いる。低熱抵抗タイプのコンパウンドとしては、特に、特許文献3に開示されたA液とB液の2液混合型常温硬化性コンパウンドを用いることが好ましい。この2液混合型常温硬化性コンパウンドにおいて、A液は、液状化ジフェニルメタンジイソシアネート(I)と長鎖脂肪族モノヒドロオキシ化合物(II)を(I)のイソシアネート基1当量に対して(II)のヒドロキシル基が0.04〜0.3当量の割合となるように混合して得られるものである。一方、B液は、ヒマシ油および/またはポリエーテルポリオールおよび粉末状難燃剤および/または無機フィラーを含有しているものである。更に、A液とB液の混合後の初期粘度が20℃で10000cps以下、20000cpsに到達する時間が20分以上、効果したコンパウンドの熱抵抗が550cm℃/W以下、ショアD硬さが50以下とするものである。
このような2液混合型常温硬化性コンパウンドを用いることにより、接続部の温度上昇を低減できると共に、硬化時の発熱や収縮を小さくしてヒゲやボイドが生じるのを防止する。
【0013】
(2次コンパウンド)
2次コンパウンド12としては、特許文献2に開示されたポリウレタンなどの常温硬化型コンパウンドを用いることができる。このような低粘性のコンパウンドを用いることにより、外部ケース9、プレモールドゴム成形体7の空間部分の隙間にコンパウンドを隙間なく充填でき、その空間部分の空隙部を埋めることで局所的に熱抵抗が大きい部分をなくすことができる。
【0014】
(本実施形態の作用)
本実施形態に係る電力ケーブルの差込式接続部では、プレモールドゴム成形体7上に予め低熱抵抗のコンパウンドで形成された1次コンパウンド11を注型成形して取り付けた後、外部ケース9を取り付け、その後、残りの空間に粘度が低く空隙部を充填できる2次コンパウンド12を充填する。このため、1次コンパウンド11と外部ケース9、及び1次コンパウンド11とプレモールドゴム成形体7の隙間に粘度の低い2次コンパウンド12が空隙あるいはボイドが生じないよう隙間なく充填される。
【0015】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る電力ケーブルの差込式接続部によれば、1次コンパウンド11として低熱抵抗のコンパウンドを適用しているので、ケーブル使用温度を高めたケーブルを使用する際の差込式接続部の温度を低減でき、汎用のプレモールドゴム成形体7を使用することが可能になる。その結果、汎用のプレモールドゴム成形体7を使用して、ケーブル線路の使用温度を向上させることが可能になり、送電容量を増大させたケーブル線路の構築が可能になる。また、1次コンパウンド11を部品として使用できることから、現地でのコンパウンド充填作業を少なくできて、作業時間が短縮され施工時間が改善される。
更に、2次コンパウンド12として粘度の低いコンパウンドをコンパウンド注入孔13から注入し採用しているので、プレモールドゴム成形体7とそれを保護する外部ケース9との間に空隙あるいはボイドが生じないよう空隙なく確実にコンパウンドを充填できる。このため、局所的に熱抵抗が大きい部分をなくすことができ、接続部の温度の上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電力ケーブルの差込式接続部の一実施形態を示す断面図である。
【図2】プレモールドゴム成形体と1次コンパウンドを組合せた状態を示す説明図である。
【図3】従来の電力ケーブルの差込式接続部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ケーブル絶縁体
2 ケーブル外部半導電層
3 ケーブル導体接続部
4 絶縁ゴム部
5 導電性ゴムの外部半導電層
6 内部半導電層
7 プレモールドゴム成形体
8 ケーブルシース
9 外部ケース
10 コンパウンド充填室
11 1次コンパウンド
12 2次コンパウンド
13 コンパウンド注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル導体接続部の外側に設けられたプレモールドゴム成形体と該プレモールドゴム成形体を保護する外部ケースとの間の空間部分に、熱抵抗の異なる1次コンパウンド及び2次コンパウンドが充填された電力ケーブルの差込式接続部であって、前記1次コンパウンドは前記2次コンパウンドよりも熱抵抗が低く、予め前記空間部分に充填されて前記ケーブル導体接続部の温度上昇を防止し、前記2次コンパウンドは前記1次コンパウンドよりも粘度が低く、前記1次コンパウンドが前記空間部分に充填されていない残りの空間に充填され熱抵抗が局部的に大きくなることを防止することを特徴とする電力ケーブルの差込式接続部。
【請求項2】
前記1次コンパウンドは、前記外部ケースと前記プレモールドゴム成形体の空間を埋める形状に合致するよう事前に注型成形されていることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブルの差込式接続部。
【請求項3】
前記2次コンパウンドは、ポリウレタンの常温硬化型コンパウンドであることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブルの差込式接続部。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−115568(P2006−115568A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297985(P2004−297985)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】