説明

電力コンバータ

電力コンバータは、第1の制御可能なスイッチ(M2)による第1の主たる電流経路と、第2の制御可能なスイッチ(M3)による第2の主たる電流経路との直列接続を有している。直列接続は、DC入力電圧(V1)を受けるように構成されている。インダクタンス(L)とキャパシタンス(2)との直列接続は、第2の主たる電流経路と並列に接続されている。インダクタンス(L)に接続された出力ノード(NO)は、電力コンバータの出力電圧(VO)を供給する。電力コンバータはさらに、キャパシタンス(2)を変化させる手段(M1)を備える。制御装置(1)は、出力電圧(VO)を安定化させるために、可変繰り返し周波数(fr)にて、第1の制御可能なスイッチ(M2)と第2の制御可能なスイッチ(M3)とを制御すると共に、電力コンバータにおける要求出力電力に応じて、キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を変化させるために、変化させる手段(M1)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力コンバータ、異なる電力モードを有し電力コンバータを備えた装置、及び電力コンバータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、共振LLC型の電力コンバータは、直列接続の2つのMOSFETを備え、その直列接続にわたってDC入力電圧が供給される。LLC型の電力コンバータはさらに、変圧器の一次巻線とコンデンサとの直列接続を備え、この直列接続は、MOSFETの1つと並列に配置されている。変圧器の二次巻線は、整流器を介して、負荷にDC電圧を供給する。制御装置は、負荷に掛かる出力電圧を安定化させるように、可変繰り返し周波数にて、第1及び第2の制御可能なスイッチを制御する。
【0003】
そうしたLLC型の電力コンバータは、例えば、2002年に出版され、EN 3122 785 12770の番号を有する、"Philips Electronics Service Manual of Chassis FM24AA"のEN93頁から開示されている。
【0004】
そうしたLLC型の電力コンバータが負荷に供給できるピーク電力レベルは、変圧器によって形成されたインダクタンスのインダクタンス値と、コンデンサのキャパシタンスとの両方によって決定される。電力コンバータのピーク出力を増加させる1つの可能性は、キャパシタンス又はインダクタンスを大きくすることである。しかしながら、キャパシタンスを増やすことは、電力コンバータの損失が増加すると共に、電力コンバータの要素をこれらの高い損失を扱い得るような寸法にする必要が生じるという不都合がある。インダクタンスを増やすことには、変圧器が大きくなって、より高価になるという不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、要素の寸法を過大にする必要なしに、大きなピーク電力を供給できる、電力コンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、請求項1に記載された、電力コンバータを提供する。本発明の第2の態様は、請求項10に記載されるように、異なる電力モードで動作する回路と、電力コンバータを備えてなる装置を提供する。本発明の第3の態様は、請求項11に記載されるように、電力コンバータの制御方法を提供する。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の第1の態様による電力コンバータは、第1の制御可能なスイッチによる第1の主たる電流経路と、第2の制御可能なスイッチによる第2の主たる電流経路との直列接続を有している。DC入力電圧は、直列接続の両端にわたって供給される。インダクタンスとキャパシタンスとの直列接続は、第2の主たる電流経路と並列に接続されている。電力コンバータの出力電圧を供給する出力ノードは、インダクタンスに結合されている。インダクタンスは、単一のインダクタによって表されるコイルであるか、又は、変圧器の一次側に見られるインダクタンスである。変圧器における一次側に見られるインダクタンスは、磁気インダクタ及び漏れインダクタの直列接続によって表される。変圧器が使用されるならば、出力ノードは、変圧器における二次巻線に接続される。コイル又は変圧器におけるインダクタンス及びコンデンサのキャパシタンスは、共振回路を形成する。
【0008】
制御装置は、電力コンバータの出力電圧を安定化させるために、可変繰り返し周波数にて第1及び第2の制御可能なスイッチを制御する。制御装置は、電力コンバータの要求ピーク出力電力に応じて、キャパシタンス又はインダクタンスを制御する。出力電力は、出力部において、電流センサを用いて検出されるが、変形例としては、関連する従属請求項から明らかなように、出力電力を表す他の信号を使用してもよい。好ましくは、電力コンバータは、LLCコンバータである。
【0009】
コンデンサのキャパシタンス値、及び/又は、インダクタのインダクタンス値は、供給されるべき実際のピーク電力に合致するように選択される。従って、電力コンバータの寸法は、供給すべき出力電力に応じた、要求ピーク電流に合致するように自動的に変更される。ピーク電流を供給しなければならないのは短い時間期間であるので、構成要素の熱特性に関連する構成要素の寸法は、供給すべき平均電力によって定められる。対照的に、従来技術のLLC電力コンバータにおいては、キャパシタンス及びインダクタンスは一定の値を有し、この値は、最も高いピーク電力を供給できるように選択されている。従って、多くの時間期間中に供給される電力は、ピーク電力に比べてはるかに低いけれども、コンデンサの高いキャパシタンス値に起因するスイッチング損失は絶えず存在している。その結果、電力コンバータの効率は最適ではなく、構成要素は、これらのスイッチング損失を扱い得るように、過大寸法を有する必要がある。
【0010】
米国特許第6,621,718号が開示している電力コンバータは、一定の周波数で動作する発振器を備え、発振器に接続された共振回路を備えている。この電力コンバータは、その出力電圧を安定化させるために、動作周波数を変化させることによらずに、共振回路の共振を制御し、従って、本発明とは完全に異なった動作をする。
【0011】
請求項2に記載された実施形態においては、キャパシタンスは、第1及び第2のコンデンサの並列接続であるか、又は、第1及び第2のコンデンサの直列接続である。制御装置は、キャパシタンスを変化させるために、第2のコンデンサを第1のコンデンサと並列に接続するスイッチを、又は、第2のコンデンサが第1のコンデンサと直列に構成されている場合に、第2のコンデンサを短絡させる回路のスイッチを制御する。しかし、変形例としては、可変キャパシタンスをもった要素を使用してもよい。インダクタンスを、同様なやり方にて、変化させてもよい。
【0012】
請求項4に記載された実施形態においては、コンデンサと直列に構成されたインダクタは、変圧器の一次巻線を備え、又は、変圧器の一次巻線である。負荷は、変圧器の二次巻線に接続される。
【0013】
請求項5に記載された実施形態においては、制御装置は、負荷の電力モードを指示するコマンドを受ける。電力モードが、所定のレベルに比べて高い負荷の電力消費を指示するならば、キャパシタンス又はインダクタンスが増加する。そうした用途における、負荷の電力モードは知られている。
【0014】
請求項6に記載された実施形態においては、負荷は電力消費回路又は装置であって、スタンバイモードである第1の電力モードと、通常の動作モードである第2のモードとを有している。ユーザは、通常モードとスタンバイモードとの間において、回路又は装置を切り換える。ユーザの選択に応じて、制御装置は、キャパシタンス又はインダクタンスが、低電力のスタンバイモード中には、高い電力の通常の動作モードに比べて、低い値を有するように制御する。例えば、スタンバイモードを備えた装置は、テレビであり、低電力のスタンバイモードと、動作モードとを有している。高い電力モードと低い電力モードとの間の切り換えは、他の外部信号によって制御してもよい。例えば、基地局と通信する携帯電話においては、携帯電話の出力電力は、基地局によって設定される。
【0015】
請求項7に記載された実施形態においては、制御装置は、DC入力電圧を受ける入力部を有し、DC入力電圧が所定のレベルを下回ったならば、キャパシタンス又はインダクタンスを増加させる。高いDC入力電圧レベルでは、電力コンバータは、高いピーク出力電力を供給することができる。DC入力電圧が低下するならば、最大ピーク出力電力も減少する。特定の値のDC入力電圧を下回る場合には、キャパシタンス又はインダクタンスを大きくすることで、電力コンバータによって供給できるピーク電力を増加させる。
【0016】
請求項8に記載された実施形態においては、繰り返し周波数が所定の周波数を下回った場合に、制御装置は、キャパシタンス又はインダクタンスを増加させる。その結果、共振周波数は減少し、より高いピーク出力電力が可能になる。
【0017】
請求項9に記載された実施形態においては、制御装置は、周波数リミッタを備え、これは繰り返し周波数を所定の最小値に制限する。誤差増幅器は、出力電圧と基準レベルとを受けて、出力電圧が基準レベルと交差するか否かを決定する。クリッピング検出器は、誤差増幅器の出力信号を受けて、この出力信号がクリッピングしているか否かを検出する。出力信号がクリップしていることをクリッピング検出器が検出した場合には、制御装置は、キャパシタンス又はインダクタンスを増加させる。その結果、電力コンバータにおけるスイッチング周波数が最小値に達した場合には、キャパシタンス又はインダクタンスが増やされて、共振周波数を引き下げ、電力コンバータは、より高いピーク電力を供給することができる。
【0018】
最小繰り返し周波数は、実際の共振周波数と等しいか又はそれよりもいくらか高くなっていて、電力コンバータが、いわゆる容量性モードに入るのを防止する。電力コンバータがその最大のピーク電力を供給する瞬間には、繰り返し周波数は、最小繰り返し周波数に等しくなる。ここで、誤差増幅器はクリップし、このクリッピングは容易に検出でき、トリガとして使用されて、キャパシタンス又はインダクタンスを増加させる。
【0019】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下に述べる実施形態から明らかになるだろう。
【0020】
異なる図面において、同一の参照符号を有する要素は、同一の構造的特徴及び同一の機能、又は同一の信号を示していることに留意されたい。そうした要素の機能及び/又は構造が説明されたとき、詳細な説明において、それらの重複する説明をする必要はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態によるLLC型のコンバータを模式的に示したブロック図である。LLC型コンバータにおけるLLCという略語は、インダクタ、インダクタ、及びコンデンサを表す。図1に示すように、LLC型コンバータにおけるLLC部分は、インダクタL1及びL2、及びコンデンサC1の直列接続で構成されている。インダクタL1は、変圧器における漏れインダクタンスを表し、インダクタL2は磁気インダクタンスを表している。負荷LOは、任意的要素である整流器回路REを介して、インダクタL2に並列に接続されている。変圧器の代わりに、コイルが使用されるならば、インダクタンスL1は存在しない。整流器回路REは、単一のダイオード、フルブリッジ回路、又は任意のその他の適当な整流要素又は回路から構成される。負荷にまたがるLLC型コンバータの出力電圧は、VOによって示されている。
【0022】
インダクタL1は、ノードN1とN2との間に配置される。インダクタL2は、ノードN2とN3との間に配置される。コンデンサC1は、ノードN3とN4との間に配置される。LLC型コンバータはさらに、主たるスイッチM2及びM3を備え、主たる電流の経路がこれらの直列接続により構成されて、これがDC入力電圧V1を受ける。2つの主たる電流経路の接続部は、ノードN1であり、主たるスイッチM3は、ノードN1とN4との間に配置されている。制御回路10は、2つの出力を有し、それぞれ2つの主たるスイッチM2及びM3へのスイッチ信号CS2及びCS3を供給する。制御回路10は、主たるスイッチM2及びM3のオン及びオフを交互に切り換える。主たるスイッチM2及びM3の正しい切り換えは、当業者に良く知られている。インダクタL1、L2及びコンデンサC1は、共振回路を形成し、共振回路は、特定の共振周波数fr1にて共振し、この周波数は、インダクタL1及びL2によって形成されるインダクタンスと、コンデンサC1のキャパシタンスとによって定められる。
【0023】
制御回路10は出力電圧VOを受けて(この出力電圧は通常は適切なレベルを得るために分圧されるが)、この出力電圧VOを安定化させるために、主たるスイッチM2及びM3の繰り返し周波数を制御するが、これは当業者に良く知られている通りである。通常は、LLC型コンバータの繰り返し周波数frは、共振周波数fr1に比べて高く選択され、コンバータを誘導性モードに保ち、容量性モードに変化するのを防止している。LLC型コンバータが最大の電力を供給する場合、繰り返し周波数frは共振周波数fr1であるか、又は共振周波数とほとんど同一である。出力電力が減少する場合には、制御回路は、インダクタンスとキャパシタンスとによって形成された直列共振回路のクオリティ・ファクタを下げるために繰り返し周波数frを増加させ、これにより出力電圧VOが高まるのを防止する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、LLC型コンバータはさらに、スイッチ回路M1を備え、これは共振周波数fr1を変化させるために、LLC型コンバータの共振キャパシタンスを変化させる。図1に示した実施形態においては、スイッチ回路M1は、スイッチM1を備え、共振キャパシタンスは、コンデンサC1とコンデンサC2とを備えている。スイッチM1は、コンデンサC2と直列に配置され、この直列接続は、コンデンサC1と並列に接続されている。コンデンサC1とC2とによって形成される合計のキャパシタンスが、共振周波数を決定する。制御装置11は、制御信号CS1を供給して、スイッチM1を制御する。スイッチM1が開ならば、共振キャパシタンスはC1であり、共振周波数はfr1である。スイッチM1が閉ならば、共振キャパシタンスは、コンデンサC2をコンデンサC1に並列に接続することで増加する。結果としての共振周波数fr2は、共振周波数fr1に比べて低くなる。
【0025】
図1に示した実施形態においては、スイッチM1のスイッチングは、コマンドPCに応じて実行される。制御装置11は、コマンドPCを受けて、それを変換し、スイッチM1に適した切り換え信号CS1とする。コマンドPCが適当なレベルを有するならば、それは、直接、スイッチM1の制御入力部に供給してもよい。コマンドPCはスタンバイコマンドでもよく、このコマンドは、負荷LOが低電力モードに入ることを指示し、低電力モードにおいては、負荷LOによって消費される電力は、通常の動作モードに対して低下する。この電力消費の低下はかなり大きくてもよい。従来技術においては、共振キャパシタンス2は、単一の値を有しており、この値は、通常の動作モード中に、要求される最大ピーク電力を負荷に供給できるように選択される。同一の共振キャパシタンス2は、スタンバイモード中にも存在している。その結果、高いキャパシタンス値に起因して、スタンバイ中のスイッチング損失は比較的高い。これは重大な不都合であり、というのは、消費者がますます、電気機器のスタンバイモードにおける高い電力消費によって生じるコストに気付いているためである。
【0026】
しかしながら、スタンバイモード中に供給しなければならない比較的低いピーク電力のために、この共振キャパシタンス2は、スタンバイモード中には、通常の動作モード中に比べて、小さな値を有することができる。
【0027】
本発明によれば、コンデンサC1の値は、スタンバイモード中にピーク出力電力を供給できるように選択され、コンデンサC2の値は、通常の動作モード中におけるピーク電力を供給できるように、コンデンサC1とC2との並列接続で充分に高くなるように選択される。従って、スタンバイモード中には、コンデンサC2を外すことで、スタンバイモード中のスイッチング損失が比較的低くなり、通常の動作モード中には、コンデンサC2をコンデンサC1に並列に接続することで、通常の動作モード中には、要求される高いピーク電流を送出することができる。
【0028】
低ピーク電力でLLC型コンバータにおける損失を減少させるための、かかる共振キャパシタンス2の変化は、異なる電力消費モードをもったすべての用途に使用することができる。例えば、可変送信出力を有する携帯通信装置において使用できる。この種類の用途においては、再充電しなければならなくなる前に、バッテリを使用可能な時間を最適化するために、電力コンバータの効率は極めて重要である。
【0029】
制御装置10及び11は一緒になって、制御装置1と称される。実用的な実現においては、制御装置10と11とは、同一の統合された回路に存在するとよい。
【0030】
図2は、LLC型コンバータにおける共振キャパシタンス2を変化させるための別の実施形態について、回路図を示している。ここで、共振コンデンサ2は、コンデンサC1とC20との直列接続を備えている。スイッチM1は、コンデンサC20と並列に配置される。スイッチM1が閉ならば、共振キャパシタンス2は、コンデンサC1の値によって決定され、スイッチM1が開ならば、共振キャパシタンス2は、コンデンサC1とC20との直列接続のキャパシタンスによって決定される。
【0031】
図3は、電力コンバータのDC入力電圧のレベルに応じて、共振キャパシタンス2を変化させる回路について、模式的な回路図を示している。制御装置11は、ここでは、基準レベルVR1を受ける非反転入力部,分圧された入力電圧V1’を受ける反転入力部,制御信号CS1を供給する出力部,を有するコンパレータ110を備えている。分圧された入力電圧V1’は、抵抗器の分割器R1及びR2を用いて、DC入力電圧V1から得られる。分圧された入力電圧V1’が基準レベルVR1に比べて高い限り、スイッチング信号CS1はLレベルであり、スイッチM1は開かれる。図1に示したトポロジーにおいては、共振キャパシタンス2は、コンデンサC1によって決定され、従って、比較的低い値となる。分圧された入力電圧V1’が基準レベルVR1に比べて低いならば、スイッチング信号CS1はHレベルになり、スイッチM1は閉じられる。図1に示したトポロジーにおいては、共振キャパシタンス2は、コンデンサC1とC2との並列接続によって決定され、従って、比較的高い値となる。その結果、DC入力電圧V1が高いレベルを有し、LLC型コンバータが高いピーク出力電力を供給できるならば、DC入力電圧V1が低いレベルの場合に比べて、小さなキャパシタンス2を使用することができる。再び、供給すべきピーク電力に合致したキャパシタンス2を選択することで、電力コンバータの効率が最適化される。
【0032】
電力コンバータの特定の実現において、DC入力電圧レベルと、特定のレベルのDC入力電圧において供給できるピーク電力との関係が知られているので、DC入力電圧のレベルを使用することにより、供給すべきピーク電力に応じて、キャパシタンス2を制御することが可能である。
【0033】
図4は、コンバータの繰り返し周波数に応じて、キャパシタンスを変化させるためのブロック図を示している。コンバータ1は、繰り返し周波数frを有するスイッチ信号CS2及びCS3を発生する周波数決定回路10’を備えている。通常は、繰り返し周波数frは、出力電圧VOを安定化させるために制御される。周波数決定回路10’は、周波数信号RFを発生し、これは可変繰り返し周波数frの値の指標である。繰り返し周波数frが、インダクタンスL1、L2及びコンデンサC1によって決定される共振周波数fr1を下回った場合、スイッチ制御回路11’は、周波数信号RFを受けて、キャパシタンス2を増加させるためのスイッチング信号CS1を供給する。これは、図5により詳細に示されている。
【0034】
図5は、図4に示した回路の動作を説明するため、繰り返し周波数の範囲を示している。水平軸は、電力コンバータにおける繰り返し周波数frを示している。垂直な破線は、共振周波数fr1及びfr2を示している。IOPで示した矢印は、ピーク出力電力が増加する場合の、電力コンバータの繰り返し周波数の変化方向を示している。
【0035】
この例においては、図1に示したトポロジーに関連して、始動状況において、スイッチM1は開であり、ピーク電力IOPは特定値に比べて低く、電力コンバータの繰り返し周波数frはfr5であり、共振周波数fr1に比べて高いと仮定される。ここで、ピーク電力IOPは、矢印にて模式的に示されるように、増加を開始する。周波数決定回路10’は、出力電圧VOを安定化させるため、共振周波数fr1に向けて、繰り返し周波数frを減少させる。ピーク電力IOPは、共振周波数fr1に達するまでさらに増加する。ここで、スイッチ制御回路11’は、信号FRによって指示される実際の繰り返し周波数frを共振周波数fr1と比較して、スイッチM1を閉じて、キャパシタンス2を大きくする。その結果、共振周波数は、fr2の値に減少する。その結果、ピーク出力電力IOPは、共振周波数fr2に達するまで、さらに上昇する。ピーク電力が減少すると、繰り返し周波数frは増加する。スイッチ制御回路11’は、繰り返し周波数frが共振周波数fr1を上回ることを検出すると直ちに、スイッチM1は開かれる。ヒステリシスの挙動を実現することが可能である。例えば、スイッチM1が開かれるのは、繰り返し周波数frが、共振周波数fr1に特定のデルタ周波数を加えて得られた値よりも高くなったときである。
【0036】
再び、キャパシタンス2の値を選択し、キャパシタンスの値を小さくすることで、比較的低いピーク出力電力でスイッチング損失を引き下げ、また、依然として、必要に応じてキャパシタンス2を大きくすることで、要求に応じて高いピーク電力を可能にする。
【0037】
信号RFは、繰り返し周波数が特定の周波数の上下のいずれであるのかを既に示していてもよい。ここでは、スイッチ回路11’は、特定の周波数を知る必要はない。
【0038】
図6は、誤差増幅器のクリッピングに応じて、共振キャパシタンスを変化させるためのブロック図を示している。制御装置1は、制御装置10”と、誤差増幅器12と、クリッピング検出器13と、スイッチ制御回路11”とを備えている。
【0039】
誤差増幅器12は、抵抗器の分割器R3、R4を用いて得られた、分圧された出力電圧VO’を受ける。誤差増幅器12は、分圧された出力電圧VO’を所定のレベルVR2と比較して、分圧された出力電圧VO’と所定のレベルVR2との間の差を指示する誤差信号ERを供給する。
【0040】
制御装置10”は、誤差信号ERを受けて、出力電圧VOを安定化させるように制御された繰り返し周波数frを有するスイッチング信号CS2及びCS3を供給する。さらに、制御装置10”は、所定の最小値fmを知っており、繰り返し周波数frをかかる所定の最小値fmに制限する。
【0041】
クリッピング検出器13は、誤差信号ERを受けて、誤差信号ERのクリッピングを検出する。誤差信号ERのクリッピングが生じるのは、繰り返し周波数frが最小値fmに達したために、出力電圧VOの減少をもはや補償できないレベルにピーク出力電力が増加した場合である。その結果、分圧された出力電圧VO’と所定のレベルVR2との間の比較的大きな差により、誤差増幅器12が、その電圧又は電流範囲における限界値の一つにクリップされる。
【0042】
スイッチ制御回路11”は、クリッピング検出器13が誤差信号ERのクリッピングを検出した場合に、スイッチ信号CS1を変化させて、キャパシタンス2を増加させる。その結果、共振周波数は低下し、繰り返し周波数をさらに低下させることができるようになって、もはやクリッピングは生じなくなる。ここで、最小値fmは、より低い共振周波数に合わせるために、変えられるべきである。
【0043】
また、繰り返し周波数の最大値を設定することも、しばしば可能である。キャパシタンス2が増加したときに、この最大値を減少させることで、ピーク電力が減少して、繰り返し周波数の最大値に達したとき、誤差増幅器12は再びクリップする。このクリッピングをトリガとして使用して、キャパシタンス2を減少させ、最小値と最大値との両方を増加させる。
【0044】
図7は、図6に示した回路の動作を説明するため、繰り返し周波数の範囲を示している。水平軸は、電力コンバータにおける繰り返し周波数frを示している。垂直な破線は、共振周波数fr1及びfr2、及び最小値fmを示している。IOPで示した矢印は、ピーク出力電力IOPが増加する場合の、電力コンバータの繰り返し周波数の変化方向を示している。
【0045】
この例においては、図1に示したトポロジーに関連して、始動状況において、スイッチM1は開であり、ピーク電力IOPは特定値に比べて低く、電力コンバータの繰り返し周波数frはfr5であり、共振周波数fr1に比べて高いことが仮定される。ここで、ピーク電力IOPは、矢印にて模式的に示されるように増加を開始する。ピーク電力IOPが増加すると、出力電圧VOは低下する。この低下によって、誤差増幅器12は、誤差信号ERを増加させる。制御装置10”は、繰り返し周波数が最小値fmに比べて高い限り、誤差信号ERに応答して、繰り返し周波数frを減少させる。繰り返し周波数frが共振周波数fr1に向けて減少すると、負荷に供給される電力は増加し、出力電圧VOは、所定の値又はレベルVR2によって決定される所望のレベルに向けて、増加を開始する。しかしながら、負荷LOが求める電力が余りにも大きくて、繰り返し周波数frの最小値fmに達すると、制御装置10”は、繰り返し周波数をさらに減少させることができない。その結果、誤差信号ERは、電源電圧又は電流に対してクリップするまで大きくなる。このクリッピングは、クリッピング検出器13によって検出され、スイッチM1を閉じるトリガとして使用される。キャパシタンス2が増加すると、共振周波数はfr2に落下して、クリッピングはもはや生じなくなる。
【0046】
再び、キャパシタンス2の値を選択し、キャパシタンスの値を小さくすることで、比較的低いピーク出力電力でスイッチング損失を引き下げ、また、依然として、必要に応じてキャパシタンス2を大きくすることで、要求に応じて高いピーク電力を可能にする。
【0047】
上述した実施形態は、本発明の限定よりもむしろ例示であって、特許請求の範囲の範囲から逸脱せずに、当業者は多くの変形例による実施形態を設計できることに留意されたい。
【0048】
例えば、実施形態は、キャパシタンス2の値を変化させるために、コンデンサC2をスイッチングすることを示している。しかしながら、このキャパシタンスは、任意の他のやり方にて変化させても良く、例えば、両端の電圧を変化させることでキャパシタンスが変化するような要素を使用する。実施形態は、LLC型のコンバータを示しているけれども、当業者に明らかなように、本発明は、キャパシタンス及びインダクタンスによって共振周波数が決定されると共に、主たるスイッチを切り換える繰り返し周波数を制御することで出力電圧が安定化されるような、他の共振電力コンバータにも適用してもよい。また、キャパシタンスを変化させる代わりに、インダクタンスを変化させてもよい。
【0049】
特許請求の範囲において、括弧の間に記載したいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。動詞“備える”とその活用形は、特許請求の範囲に述べられた以外の要素又は段階の存在を排斥するものではない。要素に先行する不定冠詞“a”又は“an”は、かかる要素が複数存在することを排斥するものではない。本発明は、いくつかの異なる要素を備えてなるハードウェアによって、また、適当にプログラムされたコンピュータによって、実現してもよい。いくつかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段の複数を、1つの及び同一のハードウェアの要素によって実現してもよい。ある種の手段が互いに異なる従属請求項において記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用できないことを意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態によるLLCコンバータを模式的に示したブロック図である。
【図2】LLCコンバータにおける共振キャパシタンスを変化させるための、別の実施形態を示した回路図である。
【図3】コンバータのDC入力電圧のレベルに応じて、共振キャパシタンスを変化させるための回路を模式的に示した回路図である。
【図4】コンバータの繰り返し周波数に応じて、共振キャパシタンスを変化させるためのブロック図である。
【図5】図4に示した回路の動作を説明するための繰り返し周波数の範囲を示した図である。
【図6】誤差増幅器のクリッピングに応じて、共振キャパシタンスを変化させるためのブロック図である。
【図7】図6に示した回路の動作を説明するための繰り返し周波数の範囲を示した図である。
【符号の説明】
【0051】
1 制御装置
2 共振キャパシタンス
10,10”,11 制御装置(制御回路)
10’周波数決定回路
11’,11” スイッチ制御回路
12 誤差増幅器
13 クリッピング検出器
110 コンパレータ
C1,C2,C20 コンデンサ
CS1,CS2,CS3 スイッチング信号
ER 誤差信号
fr 繰り返し周波数
fr1,fr2 共振周波数
L インダクタンス
L1,L2 インダクタ
LO 負荷
M1,M2,M3 スイッチ
N1,N2,N3,N4 ノード
NO 出力ノード
PC コマンド
RE 整流器回路
V1 入力電圧
VO 出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力コンバータであって、
第1の制御可能なスイッチ(M2)による第1の主たる電流経路と、第2の制御可能なスイッチ(M3)による第2の主たる電流経路との直列接続であって、DC入力電圧(V1)を受けるように構成された、上記直列接続と、
インダクタンス(L)とキャパシタンス(2)との直列接続であって、第2の主たる電流経路と並列に接続され、インダクタンス(L)とキャパシタンス(2)とが、共振周波数(fr1,fr2)を決定しているような上記接続と、
インダクタンス(L)に接続された出力ノード(NO)であって、電力コンバータの出力電圧(VO)を供給するための上記出力ノード(NO)と、
キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を変化させる手段(M1)と、
出力電圧(VO)を安定化させるために、可変繰り返し周波数(fr)にて、第1の制御可能なスイッチ(M2)と第2の制御可能なスイッチ(M3)とを制御すると共に、電力コンバータにおける要求されるピーク出力電力に応じて、キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を変化させる手段(M1)を制御するための制御装置(1)と、
を備えていることを特徴とする電力コンバータ。
【請求項2】
キャパシタンス(2)は、第1のコンデンサ(C1)と第2のコンデンサ(C2;C20)とを備え、
制御装置(1)は、スイッチング信号(CS1)を供給するように構成され、
変化させる手段(M1)は、スイッチング信号(CS1)を受けるための制御入力部を有しており、選択的に第2のコンデンサ(C2)を第1のコンデンサ(C1)と並列に接続し、又は、第2のコンデンサ(C20)が第1のコンデンサ(C1)と直列に構成されている場合に、第2のコンデンサ(C20)を選択的に短絡させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項3】
インダクタ(L1,L2)と出力ノード(NO)との間に接続された整流器(RE)をさらに備え、出力ノード(NO)は、DC電圧である出力電圧(VO)を負荷(LO)に供給することを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項4】
インダクタンスは、変圧器の一次巻線から構成され、負荷が、変圧器の二次巻線に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項5】
制御装置(1)は、出力ノード(NO)に接続された負荷(LO)の電力モードを指示するコマンド(PC)を受けるように構成され、コマンド(PC)が所定のレベルよりも高い負荷(LO)の電力消費を指示する場合には、キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を増加させることを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項6】
負荷(LO)は、スタンバイモードである第1の電力モードと、通常の動作モードである第2のモードとを有し、コマンド(PC)は、スタンバイコマンドであり、キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)は、スタンバイモード中には、通常モード中に比べて、低い値を有していることを特徴とする請求項5に記載の電力コンバータ。
【請求項7】
制御装置(1)は、コンパレータ(110)を備え、コンパレータは、DC入力電圧(V1)を受けるための第1の入力部と、所定のレベル(VR1)を受けるための第2の入力部と、DC入力電圧(V1)が所定のレベル(VR1)を下回った場合にキャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を増加させるためにスイッチング信号(CS1)を、変化させる手段(M1)に供給するための出力部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項8】
制御装置(1)が、
可変繰り返し周波数(fr)を指示する周波数信号(RF)を発生させるための周波数決定回路(10’)と、
周波数信号(RF)を受けるためのスイッチ制御回路(11’)であって、繰り返し周波数(fr)が所定の周波数(fr1)を下回った場合に、キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を増加させるためのスイッチング信号(CS1)を供給するような上記スイッチ制御回路(11’)と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項9】
制御装置(1)が、
繰り返し周波数(fr)を所定の最小値(fm)に制限するための手段(10”)と、
基準信号(VR2),及び出力電圧(VO)に比例した入力信号(VO’)を受けるための誤差増幅器(12)であって、入力信号(VO’)と基準信号(VR2)との間の差を指示する誤差信号(ER)を供給するための上記誤差増幅器(12)と、
誤差信号(ER)のクリッピングを検出するために、誤差信号(ER)を受けるためのクリッピング検出器(13)と、
クリッピング検出器(13)が誤差信号(ER)のクリッピングを検出した場合に、キャパシタンス(2)を増加させるためのスイッチ制御回路(11”)と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力コンバータ。
【請求項10】
異なる電力を消費する異なる電力モードにて動作する回路(LO)と、請求項1に記載の電力コンバータとを備え、回路が出力ノード(NO)に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項11】
電力コンバータの制御方法であって、
この電力コンバータが、
第1の制御可能なスイッチ(M2)による第1の主たる電流経路及び第2の制御可能なスイッチ(M3)による第2の主たる電流経路との直列接続であって、DC入力電圧(V1)を受けるように構成された、上記直列接続と、
インダクタンス(L)とキャパシタンス(2)との直列接続であって、第2の主たる電流経路と並列に接続されているような上記接続と、
インダクタンス(L)に接続された出力ノード(NO)であって、電力コンバータの出力電圧(VO)を供給するための上記出力ノードと、を備えており、
前記方法が、
可変繰り返し周波数(fr)にて、第1の制御可能なスイッチ(M2)と第2の制御可能なスイッチ(M3)とを制御(1)し、出力電圧(VO)を安定化させる段階と、
電力コンバータにおける要求されるピーク出力電力に応じて、キャパシタンス(2)又はインダクタンス(L)を変化(M1)させる段階と、
を備えたことを特徴とする電力コンバータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−514495(P2009−514495A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537280(P2008−537280)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053898
【国際公開番号】WO2007/049220
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】