説明

電力システム用の制御システム

【課題】電力システム用の制御システムを提供する。
【解決手段】制御システム116は、1つまたは複数の電気自動車112を追跡把握し、前記電気自動車のバッテリ充電データを受信するための無線通信システム120を含む。本制御システムはまた、電力システムの負荷を検知するための負荷センサ124を含む。本制御システムは、電気自動車のバッテリ充電データおよび電力システムの負荷データに基づいて1つまたは複数の保護素子118を動作させるためのコントローラ122をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に提示される実施形態は、一般には電力システムに関し、より詳細には電力システム用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車が、最近多くの注目を集めている。電気自動車は、一般的に、バッテリパックによって電力を供給される電気モータよって走行する。バッテリパック内に蓄えられた電荷が電気自動車の通常の使用を通じて繰り返し引き出されるにつれて、電気自動車のバッテリパックを再充電することが頻繁に必要になる。電気自動車のかかる充電および再充電は、従来型の電力システムに対して技術的な課題を提起している。
【0003】
従来型の電力システムには、「故障」から利用者および装置を保護するための保護構造が一般に設けられている。故障状態は、電力配線がグランドに接触することにより生じる過大な電流が電力システムを通って流れる結果として生じる場合がある。この大電流は、装置に損傷を与える場合があり、故障を経験する人にとって潜在的に危険である。電力システムには、電力システム内での故障状態を分離するために、回路ブレーカおよびリクローザなどの保護装置が一般に設けられている。これらの保護装置は、サブステーションおよび電力システムの全体に配置される。回路ブレーカは、電力システムを通って送電される大きな故障電流を装置が検出するときに切れる、または開になるスイッチである。リクローザは、電力システム内の故障を分離するために使用する基本的にプログラム可能な回路ブレーカ装置である。保護装置の動作は、電力システムを通って送電される電流および電圧に基づく。電力システムを通って送電される電流が、所定のしきい値限界よりも大きい場合に、保護装置は、故障が生じたことを推測することができ、故障を分離するように動作することができる。保護装置が故障を分離するときには、運転が復帰するまで、装置の下流側の利用者が停電することを意味する。保護装置を、所定のしきい値限界で動作するようにプログラムすることができる。一般的に、保護装置を時間−電流特性によりプログラムする。時間−電流特性は、保護装置の動作を管理する。例えば、大きな故障電流が、保護装置に、より早い是正措置を取らせることができ、一方で小さな故障電流が保護装置の遅い動作という結果になるように、保護装置の時間−電流特性を設計することができる。
【0004】
通常の動作では、電気自動車の充電が、電力システムから大きな電流を引き出すことがある。電気自動車が移動するので、これらの自動車の充電を、電力システム内のランダムな地理的な場所で、ランダムな時間に行うことがある。したがって、事前にプログラムされた時間−電流特性を有する保護装置が、電気自動車が充電切れになることから生じるダイナミックな電力要求をサポートできない場合がある。例えば、特定の地域またはゾーン内に位置する多数の電気自動車の充電は、事前にプログラムされた保護装置に対しては故障として現れることがある。従来型の電力システムは、負荷の増加に起因する大電流と、故障に起因する大電流とを見分けない。これが、電力システム全体を通して不必要な電力の供給停止という結果を生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7773360号明細書
【発明の概要】
【0006】
グリッドからの電力要求にしたがってダイナミックに適合することができるシステムに対する必要性がある。
【0007】
電力システム用の制御システムを提供する。本制御システムは、1つまたは複数の電気自動車を追跡把握し、前記電気自動車のバッテリ充電データを受信するための無線通信システムを含む。本制御システムはまた、電力システムの負荷を検知するための負荷センサを含む。本制御システムは、電気自動車のバッテリ充電データおよび電力システムの負荷データに基づいて1つまたは複数の保護素子を動作させるためのコントローラをさらに含む。前記制御システムを利用する電力システムも提供する。
【0008】
別の一実施形態では、電力システムを提供する。本電力システムは、1つまたは複数の発電ステーションと、1つまたは複数の負荷センタと、発電ステーションから前記負荷センタへ電力を伝送するための送電線とを含む。本電力システムは、1つまたは複数の制御システムをさらに含む。制御システムは、1つまたは複数の電気自動車を追跡把握し、前記電気自動車のバッテリ充電データを受信するための無線通信システムを含む。制御システムはまた、電力システムの負荷データを検知するための負荷センサを含む。制御システムは、電気自動車のバッテリ充電データおよび電力システムの負荷データに基づいて1つまたは複数の保護素子を動作させるためのコントローラをさらに含む。
【0009】
さらに別の一実施形態では、電力システム用の制御システムを動作させる方法を提供する。本方法は、1つまたは複数の電気自動車を追跡把握するステップと、電気自動車のバッテリ充電データを入手するステップとを含む。電気自動車を追跡把握するステップは、前記制御システム内に設けられた無線通信システムを介して実行することが可能である。本方法は、電気自動車のバッテリ充電データおよび電力システムの負荷データに基づいて1つまたは複数の保護素子を動作させるステップをさらに含む。保護素子は、制御システム内に設けられたコントローラを介して動作させられる。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付した図面を参照して下記の詳細な説明を読むときにより良く理解されるようになるであろう。図面では、類似の参照符号は、図面全体を通して類似の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による例示的な電力システムのブロック図である。
【図2】電気自動車、充電ステーション、および電力システム用の制御システム間のデータ伝送の概略を示すブロック図である。
【図3】電力システムの回路ブレーカの時間−電流特性を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中で議論する実施形態は、電力システムの制御システムに関係する。図1は、一実施形態による電力システム100を図示する。電力システム100は、電力を発生するように構成された発電ステーション102を含む。発電ステーション102は、ガスタービン発電所、蒸気タービン発電所、原子力発電所、水力発電所などの発電施設を含むことができるが、これらに限定されない。発電ステーション102は、分散された発電源、再生可能発電源、およびマイクログリッド発電源を含むこともできる。発電ステーション102において発生した電力を、送電線104を介して給電網103へ送電する。給電網は、変圧器および給電線を含むことができる。給電網103は、負荷センタ106へ電力を供給することができる。負荷センタ106は、典型的には、家庭内負荷設備108および商業用負荷設備110を含む。家庭内負荷設備108は、家庭内電気機器などの家庭負荷設備を含む。商業用負荷設備110は、工場、事務所ビル、病院、テーマパークなどの商業用建物を含むが、これらに限定されない。
【0013】
負荷センタ106は、1つまたは複数の電気自動車(EV)112をさらに含むことができる。EV112は、バッテリパック113から電力を引き出す自動車である。バッテリパック113は、超コンデンサ、燃料電池などを含むこともできることに、本明細書においては留意すべきできる。本明細書において開示したEVが、バッテリパックによって電力を供給される電気モータである少なくとも1つ動力源を用いる、2つ以上の動力源を有する自動車を含むことができることに、留意されたい。例えば、バッテリで電力を供給されるモータおよび燃焼エンジンの両方を有するハイブリッド自動車を、EVと見なすことができる。EV112には、EV112の駆動シャフトに動力を与える1つまたは複数の電気モータが設けられる。EV112の連続走行を保証するために、バッテリパック113を充電する必要がある。バッテリ充電装置を設けた場所で、EV112はバッテリパック113を充電することができる。そのような場所を、電力システム100内の任意の地理的な点とすることができる。図示した実施形態では、EV112は、充電ステーション114においてバッテリパック113を充電することができる。ある実施形態では、充電ステーション114が、負荷センタ106内に含まれる場合がある。EV112のバッテリパック113を充電することができる任意の場所を、充電ステーション114と呼ぶことができることを、認識することができる。ある種の実施形態では、充電ステーション114を、家庭内施設または商業用施設とすることができる。
【0014】
電力システム100は、電力システム100の運転を制御するための制御システム116をさらに備えることができる。制御システム116は、電力システム100内の負荷バランスを管理するような方法で、電力システム100を運転する。制御システム116は、システム使用量を測定し、負荷設備による将来使用量を予測し、過剰な電力システム能力を計算し、故障を分離するために使用するエネルギー管理システム、給電管理システム、需要−応答システム、故障検出システム、分離システム、および回復システムなどのサブシステムを組み込むことができる。制御システム116およびそのサブシステムは、ネットワークオペレーションセンタ101のところに中央に設置すること、サブステーション105などの施設のところに中央から離れて設置すること、または、例えば負荷センタ106などの装置を有する電力システム100全体にわたって分散させることができる。制御システム116はまた、電力システム100内の故障を分離するために1つまたは複数の保護素子118の動作を制御する。故障は、例えば、送電線がグランドに接触することから生じることがある短絡に起因して、大電流が電力システム100を通って流れる状況を含む。大電流は、電力システム100に接続された電気設備に損傷を与えることがあり、故障を経験する人にとって危険であることもある。制御システム116は、保護素子118を動作させることによって故障を分離することができる。保護素子118は、リクローザ、回路ブレーカ、およびリクローザと回路ブレーカとの組み合わせを含むことができる。
【0015】
EV112の充電は、従来型の制御システムの動作では困難を引き起こすことがある。EV112の充電は、電力システム100からかなりの量の電流を引き出す。EV112の充電は、電力システム100内の様々な点のところで行われることがある。その上、多数のEV112が、充電のために特定の地理的な場所に密集することがあり、これによって、電力システム100上で同時に引き出される電流をさらに増加させる。従来型の制御システムは、この引き出される電流の増加を故障と解釈する場合があり、電力システムの心配な部分を分離するために保護素子118を作動させる場合がある。これが、望まれない停電を生じさせることがある。本明細書において説明する実施形態によれば、保護素子118を動作させる際に電力システム100がより多くの情報に基づいて判断できるように、制御システム116を装備する。
【0016】
一実施形態によれば、制御システム116は、無線通信システム120、コントローラ122、および負荷センサ124を含む。無線通信システム120を、給電自動化用のもの、先端計測基盤設備、商業用セルラ電話ネットワーク、プライベート無線ネットワーク、または本明細書中に提示された実施形態にしたがって構築された新たなネットワークなどの、電力システム100によって使用される既存の通信システムとすることができる。
【0017】
無線通信システム120は、EV112に設けられた自動車トランシーバ126を介してEV112を追跡把握することができる。無線通信システム120は、自動車トランシーバ126および無線通信システム120の両方の送信範囲内にある1つまたは複数のEV112を追跡把握することができる。一実施形態では、無線通信システム120は、一定の時間間隔でEV112を追跡把握することができる。一定の時間間隔が、例えば、10分から60分まで変わる場合がある。代替実施形態では、無線通信システム120は、EVの現在のバッテリ充電割合に基づいた時間間隔でEV112を追跡把握することができる。例えば、低いバッテリ充電量のEVを、頻繁にモニタすることができ、一方で、フル充電に近いEVを、比較的長い時間間隔でモニタすることができる。代替実施形態では、無線通信システム120は、自動車の運転手によって指定された所望の充電時間に基づいた時間間隔でEV112を追跡把握することができる。さらに、EV112を追跡把握する頻度は、無線通信システム120までの近接度および電力システム100上の負荷に依存する場合がある。無線通信システム120は、EV112の各々に設けられた自動車トランシーバ126と通信することができる。EV112は、バッテリパック113のバッテリ充電データを検知するためのセンサモジュール128をさらに有することができる。バッテリ充電データは、バッテリパック113中に残っている充電量の割合、充電速度、および充電開始時刻を含むことができる。バッテリの端子電圧が、バッテリ中に残っている充電量の割合を示す場合がある。充電速度は、充電電流に依存する。例えば、より大きな充電電流は、より速い充電速度を示し、より小さな充電電流は、より遅い充電速度を示す。自動車トランシーバ126は、センサモジュール128によって検知されたバッテリ充電データを受信し、無線通信システム120へバッテリ充電データを送信することができる。自動車トランシーバ126は、EV112が移動している間に無線通信システム120と通信することができる。あるいは、自動車トランシーバ126は、自動車が停まっている間に無線通信システム120と通信することができる。無線通信システム120は、EV112のバッテリパック113中の充電割合を入手するために、1つまたは複数のEV112と通信することができる。バッテリ充電データをコントローラ122によって処理して、どのEV112がバッテリパック113を充電する可能性が最も高いかを判断することができる。バッテリ充電データに基づいて、コントローラ122は、電力システム100に対して予想される負荷電流を計算することができる。このように、コントローラ122は、保護素子118を動作させるためにより多くの情報に基づいて判断を行うことができる。言い換えると、コントローラ122は、故障に起因する電流の増加とEV112の充電から生じる電流の増加とを見分けることができる。
【0018】
制御システム116は、電力システム100上の予想される負荷電流を推定することができる。予想される負荷電流を、バッテリパックを充電するEVの数に基づいて推定することができる。例えば、しきい値よりも低いバッテリ充電割合を有するEVがバッテリ充電を必要とする場合があることを、定式化することができる。無線通信システム120は、しきい値よりも低い現在のバッテリ充電割合を有するEVを追跡把握することができる。一実施形態では、しきい値を20パーセントとすることができる。代替実施形態では、しきい値が、10〜40パーセントで変化することがある。一旦、直ぐに充電する必要があるEVの数が分かると、これらのEVを充電するための負荷電流を推定することができる。コントローラ122は、推定した負荷電流が許容可能なしきい値内であるかどうかを評価することもできる。負荷電流が許容可能なしきい値を超える場合には、コントローラ122は、より低い充電電流をEV112に提示することができる。コントローラ122は、さらに、保護素子118の時間−電流特性を変えて、EV112の充電による負荷電流を調節することができる。
【0019】
無線通信システム120は、充電ステーション114内に設けられたステーショントランシーバ130とさらに通信することができる。一実施形態では、自動車トランシーバ126は、ステーショントランシーバ130へ1つまたは複数のEV112のバッテリ充電データを送信することができる。ステーショントランシーバ130は、順に、無線通信システム120へ1つまたは複数のEV112のバッテリ充電データを送信することができる。このように、バッテリ充電データを、いずれか、自動車トランシーバ126から無線通信システム120へ直接通信することができる、またはステーショントランシーバ130を介して無線通信システム120へ間接的に通信することができる。別の一実施形態では、充電ステーション114は、充電ステーション114においてバッテリパック113を現在充電しているEV112のバッテリ充電データを入手することができる充電データセンサ132を含むことができる。ステーショントランシーバ130は、充電データセンサ132または自動車トランシーバ126からバッテリ充電データを受信し、無線通信システム120へバッテリ充電データを送信することができる。
【0020】
電力システム100の負荷データを検知するために、負荷センサ124を使用する。負荷センサは、負荷電流を測定するための電流変換器を含むことができる。負荷センサは、負荷電圧を測定するための電位変換器をさらに含むことができる。負荷データは、負荷電流、負荷電圧、電力システム100によって給電された電力、および力率を含むことができる。電力システム100の負荷をバランスさせるために、負荷データをコントローラ122によって処理することができる。例えば、電力システム100のある一定の部分がフル負荷能力またはその近くで既に動作していることを、負荷データが示す場合には、コントローラ122は、無線通信システム120を介して自動車トランシーバ126およびステーショントランシーバ130へ負荷データ(またはもう1つの信号)を送信し、過負荷状態を避けるためにバッテリ充電を回避するように、電力システム100のその部分に所在する充電ステーション114およびEV112に指示することができる。さらに、コントローラ122は、電力システム100内の負荷バランスを依然として維持しながら、EV112を充電することが可能である適切な充電ステーション114にEV112を導くこともできる。電力システム100を一様な負荷に維持することによって、負荷バランスを得ることもでき、これによって、電力システム100の1つの部分が他の部分に対して釣り合いを失った状態で負荷がかかる状態を回避する。
【0021】
負荷データの知識は、EV112および充電ステーション114への適切な充電速度の通信を促進させることもできる。例えば、現在負荷をかけられている電力システム100のある部分は、小さな充電電流を支援することができるが、大きな充電量が過負荷に導くことがある。かかる条件下で、無線通信システム120は、自動車トランシーバ126およびステーショントランシーバ130へ適切な充電速度を通信することができる。
【0022】
トランシーバ間の通信を図2にさらに図示する。EV112、充電ステーション114、および制御システム116間の任意の通信が、無線通信システム120、自動車トランシーバ126およびステーショントランシーバ130を介して生じることに、留意されたい。図2を参照すると、EV112は、充電ステーション114および制御システム116へバッテリ充電データ202を通信する。EV112は、充電ステーション114および制御システム116から負荷データ204を受信することもできる。言い換えると、EV112は、制御システム116から直接または充電ステーション114を介してのいずれかで負荷データ204を入手することができる。充電ステーション114は、EV112からバッテリ充電データ202を、制御システム116から負荷データ204を受信することができる。さらに、EV112は、バッテリ充電データ202および負荷データ204を交換することができる。一実施形態では、EV112は、1つのEVへバッテリ充電データを通信することができ、1つのEVが、その後、制御システム116へEV112のバッテリ充電データを中継することができる。図2は、説明に役立つことを目的としており、本明細書において提示した教示の範囲を限定することを目的としていないことに、留意されたい。他の実施形態では、1つまたは複数の制御システム間の通信をそのように想定することができる。また、1つまたは複数の自動車間の通信も想定される。さらに、1つまたは複数の充電ステーションは、相互に通信することもできる。
【0023】
バッテリ充電データ202の知識は、電力システムの運用を最適化する際に有用である場合がある。例えば、EV112のいずれかがバッテリ充電を必要とするかどうかを、EV112のバッテリ充電データ202は示すことができる。制御システム116は、このように、EV112の累積バッテリ充電データ202に基づいて電力システム上の予想される負荷を効果的に推定することができる。負荷データ204の知識は、負荷限界まで負荷をかけられている電力システムの部分を判断する際に役立つことがある。制御システム116は、EV112および充電ステーション114へ電力システム(またはその一部分)の負荷データ204または負荷状況を通信することができ、その結果、充電ステーション114およびEV112は、電力システムを過負荷にさせないことができる。また、制御システム116は、EV112へ適切な充電ステーションをならびに充電ステーション114およびEV112に対する適切な充電速度を通信することができる。適切な充電ステーションは、フル能力まで負荷がかかっていない電力システムのある部分に所在する充電ステーションを含むことができる。言い換えると、適切な充電ステーションは、電力システムを過負荷にさせないでEVのバッテリパックを充電することができる充電ステーションを含むことができる。同様に、適切な充電速度は、電流負荷条件が与えられると、電力システムに過負荷がかからない充電速度を含むことができる。EVを適切な充電ステーションに導くことによって、制御システムは、電力システム内の負荷バランスを維持する。制御システムは、電力システムの均等な負荷を確実にし、電力システムの一部分への負荷の集中を防止する。あるいは、充電ステーション114およびEV112は、負荷データ204に基づいて適切な充電速度を決定することができる。
【0024】
制御システム116は、負荷データ204およびバッテリ充電データ202に基づいて、保護素子118の動作をさらに制御することができる。例えば、同時に多数のEVがバッテリパックを充電する可能性をバッテリ充電データ202が示す場合には、制御システム116は、保護素子118の時間−電流特性を変更して、EVの充電に起因して故障が検出されないように、より大きな負荷電流に適合させることができる。保護素子、具体的には回路ブレーカの時間−電流特性を、図3に図示する。
【0025】
図3は、回路ブレーカの時間−電流特性を図示する。前に述べたように、保護素子は、回路ブレーカ、リクローザおよびこれらの組み合わせを含むことができる。図3は、X軸に(動作値の倍数で)負荷電流を、Y軸に沿って保護素子の動作の時間(秒で)を表す。図3が、対数目盛でプロットしたグラフであることに、留意されたい。動作値は、それ以下では保護素子が動作しない負荷電流のしきい値である。保護素子は、電力システム中の負荷電流が動作値よりも大きい場合にのみ動作する。保護素子が動作するまでにかかる時間が、Y軸に表される。保護素子が動作するまでにかかる時間が、負荷電流の値に依存することを、曲線302から観察することができる。例えば、図3に示したように、負荷電流が動作電流の2倍であるときには、保護素子は2秒で動作し、負荷電流が動作電流の6倍であるときには、保護素子は0.3秒で動作する。言い換えると、負荷電流が大きいほど、保護素子の応答が速くなる。図3は、回路ブレーカの時間−電流特性を図示するが、本明細書中に提示した教示は、リクローザの時間−電流特性に拡張することもできることに、留意されたい。
【0026】
EVの充電が、電力システム中の動作電流よりも大きな電流を生じさせる場合がある。かかる状況では、制御システム116のない保護素子が動作し、回路の一部を分離することがある。そのような状況を回避するために、制御システム116は、負荷データおよびEVのバッテリ充電データに基づいて時間−電流特性を変えることができる。一実施形態では、保護素子の動作値を、増加させることができる。代替実施形態では、時間−電流特性を、時間座標に沿ってシフトさせることができる。例えば、曲線302をシフトさせることができ、シフトさせた曲線を、曲線304によって表すことができる。曲線304が、曲線302と比較してより長い動作時間を可能にすることを、観察することができる。言い換えると、曲線304によって表された時間−電流特性にしたがった回路ブレーカは、曲線302によって表された時間−電流特性にしたがった回路ブレーカよりもゆっくりと動作し、負荷電流は同じままである。したがって、回路ブレーカの時間−電流特性を変えることによって、回路ブレーカの動作の時間を変えることができる。時間−電流特性を、電力システムの予測した負荷電流に応じて選択することができる。例えば、大きな負荷電流に対して、曲線306を、回路ブレーカの動作を管理するために使用することができる。曲線306によって表された時間−電流特性を有する回路ブレーカの動作の時間が、曲線304によって表された時間−電流特性を有する回路ブレーカの動作の時間よりも長いことを、認識することができる。言い換えると、保護素子の時間−電流特性を、予想される負荷電流に応じてダイナミックに変えることができる。予想される負荷電流を、EVのバッテリ充電データおよび電力システムの電流負荷条件に基づいて得ることができる。
【0027】
本明細書中に提示した実施形態は、説明の目的にためであり、本明細書中に提示した教示の範囲を限定しない。例えば、図1および図2は、1つの充電ステーションおよび1つの制御システムだけを示す。しかしながら、複数のEV、複数の制御システムおよび複数の充電ステーションを有するシステムも想定される。さらに、電力システムは、複数の制御システムを有することができる。前記複数の制御システムは、相互にバッテリ充電データおよび負荷データを通信することができる。
【0028】
本発明を、単に説明の目的にためにいくつかの実施形態に関して説明してきている。別記の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定される変更形態および代替形態を用いて、かかる実施形態を実行することができることを、当業者は、この記載から認識するであろう。
【符号の説明】
【0029】
100 電力システム
101 ネットワークオペレーションセンタ
102 発電ステーション
103 給電網
104 送電線
105 サブステーション
106 負荷センタ
108 家庭内負荷設備
110 商業用負荷設備
112 電気自動車(EV)
114 充電ステーション
116 制御システム
118 保護素子
120 無線通信システム
122 コントローラ
124 負荷センサ
126 自動車トランシーバ
128 センサモジュール
130 ステーショントランシーバ
132 充電データセンサ
202 バッテリ充電データ
204 負荷データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムの近くの1つまたは複数の電気自動車を追跡把握し、前記1つまたは複数の電気自動車のバッテリ充電データおよび電力システムの負荷データを通信するように構成された無線通信システムと、
前記無線通信システムに通信可能に接続され、前記1つまたは複数の電気自動車の前記バッテリ充電データおよび前記電力システムの前記負荷データを受信し、前記1つまたは複数の電気自動車の前記充電データおよび前記電力システムの前記負荷データに基づいて前記電力システムの1つまたは複数の保護素子を動作させるように構成されたコントローラと
を備えた、制御システム。
【請求項2】
各電気自動車が、前記無線通信システムへ前記1つまたは複数の電気自動車のうちのそれぞれ1つの前記バッテリ充電データを送信し、前記無線通信システムから前記電力システムの前記負荷データを受信するように構成された自動車トランシーバを備える、請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記自動車トランシーバが、別の電気自動車へ前記電気自動車の前記バッテリ充電データおよび前記電力システムの前記負荷データを送信するように構成される、請求項1記載の制御システム。
【請求項4】
各電気自動車が、前記電気自動車の前記バッテリ充電データを検知するように構成されたセンサモジュールを備える、請求項1記載の制御システム。
【請求項5】
前記バッテリ充電データが、充電速度、充電開始時刻、および前記電気自動車のバッテリパック中の充電割合のうちの少なくとも1つを含む、請求項4記載の制御システム。
【請求項6】
1つまたは複数の充電ステーションをさらに備え、前記1つまたは複数の充電ステーションが、各電気自動車中に設けられた自動車トランシーバへ前記電力システムの前記負荷データを送信し、前記自動車トランシーバから前記電気自動車のバッテリ充電データを受信するように構成されたステーショントランシーバを備える、請求項1記載の制御システム。
【請求項7】
前記ステーショントランシーバが、前記無線通信システムへ前記電気自動車の前記充電データを送信し、前記無線通信システムから前記電力システムの前記負荷データを受信するように構成される、請求項6記載の制御システム。
【請求項8】
前記電力システムの前記負荷データを検知するための1つまたは複数の負荷センサをさらに備えた、請求項1記載の制御システム。
【請求項9】
前記1つまたは複数の充電ステーションが、充電速度、充電開始時刻、および前記電気自動車のバッテリパック中の充電の割合のうちの少なくとも1つを検知するための複数のバッテリ充電データセンサを備える、請求項6記載の制御システム。
【請求項10】
前記負荷データが、負荷電流、前記電力システムによって給電された電力、力率、および負荷電圧のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の制御システム。
【請求項11】
前記無線通信システムが、前記1つまたは複数の電気自動車のバッテリパックの現在の充電レベルおよび前記電力システムの前記負荷データのうちの少なくとも1つに基づいて選択した充電ステーションへ前記1つまたは複数の電気自動車を導くように構成される、請求項1記載の制御システム。
【請求項12】
前記無線通信システムが、前記1つまたは複数の電気自動車および1つまたは複数の充電ステーションのうちの少なくとも1つへ適切な充電速度を通信するように構成される、請求項1記載の制御システム。
【請求項13】
前記1つまたは複数の保護素子が、1つまたは複数のリクローザ、1つまたは複数の回路ブレーカ、またはこれらの組み合わせを備える、請求項1記載の制御システム。
【請求項14】
前記コントローラが、1つまたは複数の電気自動車の前記充電データおよび前記電力システムの前記負荷データのうちの少なくとも1つに基づいて前記1つまたは複数の保護素子の時間−電流特性を変更するように構成される、請求項1記載の制御システム。
【請求項15】
電力システムであって、
発電ステーションと、
前記発電ステーションから1つまたは複数の負荷センタへ電力を送電するための送電線と、
当該電力システム内の1つまたは複数の場所に配置された1つまたは複数の制御システムと
を備え、1つまたは複数の制御システムが、
前記1つまたは複数の制御システムの近くの1つまたは複数の電気自動車を追跡把握し、前記1つまたは複数の電気自動車のバッテリ充電データおよび当該電力システムの負荷データを通信するように構成された無線通信システムと、
前記無線通信システムに通信可能に接続され、前記1つまたは複数の電気自動車の前記バッテリ充電データおよび当該電力システムの前記負荷データを受信し、前記1つまたは複数の電気自動車の前記充電データおよび当該電力システムの前記負荷データに基づいて当該電力システムの1つまたは複数の保護素子を動作させるように構成されたコントローラと
を備える、電力システム。
【請求項16】
前記無線通信システムが、前記1つまたは複数の電気自動車のバッテリパックの現在の充電レベルおよび前記電力システムの前記負荷データのうちの少なくとも1つに基づいて選択した充電ステーションへ前記1つまたは複数の電気自動車を導くように構成される、請求項15記載の電力システム。
【請求項17】
前記無線通信システムが、前記1つまたは複数の電気自動車および1つまたは複数の充電ステーションのうちの少なくとも1つへ適切な充電速度を通信するように構成される、請求項15記載の電力システム。
【請求項18】
前記1つまたは複数の場所が、ネットワークオペレーションセンタ、前記1つまたは複数の負荷センタ、および1つまたは複数の負荷センタへ電力を送電するように構成されたサブステーションを含む、請求項15記載の電力システム。
【請求項19】
電力システム用の制御システムを動作させる方法であって、
無線通信システムを介して前記制御システムの近くの1つまたは複数の電気自動車を追跡把握し、前記1つまたは複数の電気自動車のバッテリ充電データおよび前記電力システムの負荷データを入手するステップと、
前記無線通信システムに通信可能に接続され、前記1つまたは複数の電気自動車の前記バッテリ充電データおよび前記電力システムの前記負荷データを受信するように構成されたコントローラを介して、前記1つまたは複数の電気自動車の前記充電データおよび前記電力システムの前記負荷データに基づいて前記電力システムの1つまたは複数の保護素子を動作させるステップと
を含む方法。
【請求項20】
バッテリパックの現在の充電レベルおよび前記電力システムの前記負荷データのうちの少なくとも1つに基づいて選択した充電ステーションへ前記1つまたは複数の電気自動車を導くステップをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記電力システムの前記負荷データに基づいて前記1つまたは複数の電気自動車および前記1つまたは複数の充電ステーションのうちの少なくとも1つへ適切な充電速度を通信するステップをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数の保護素子を動作させるステップが、1つまたは複数の電気自動車の前記充電データおよび前記電力システムの前記負荷データのうちの少なくとも1つに基づいて前記1つまたは複数の保護素子の時間−電流特性を変更するステップを含む、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−13312(P2013−13312A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−142551(P2012−142551)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】