説明

電力制御システム、電気機器、および充放電制御部

【課題】重負荷時の系統負荷を軽減し、電力不足を回避することが可能な電力制御システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る電力制御システムは、充電池210と、充電池を系統に連系しうるパワーコンディショナ214と、通信回線120を介して所定のリソースから系統110の電力使用量予測情報を取得する電気予報取得部254と、取得された電力使用量予測情報に基づいて、系統負荷が所定の値より大きい時間帯である重負荷時を算出する負荷状態算出部256と、充電池210の充電または放電を制御する充放電制御部258とを備え、充放電制御部258は、重負荷時以外の時間帯に充電池210を充電し、重負荷時に充電池210から放電させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重負荷時の系統の負荷を軽減し、電力不足を回避することが可能な電力制御システム、電気機器、および充放電制御部に関する。
【背景技術】
【0002】
系統への負荷、すなわち電力使用量は一日の中でも大きく変動する。電気が供給不足となれば発電所のタービンの回転が落ちて交流の周波数が低下し、供給過多となれば周波数が上昇してしまう。周波数が許容範囲を超えて変動すると安全装置が作動し、大規模停電を招くおそれもある。周波数の変動を定格周波数に対して許容範囲内に制御するためには、電力消費量に追従させて発電する必要がある。このため電気事業者は、予想される最大負荷(ピークロード)をまかなえるだけの発電設備を準備しておく必要がある。しかしながらピーク時以外は発電能力に余剰を生じるため、設備投資および維持費用の効率が悪いという問題がある。
【0003】
一方、近年、需要者(消費者)の建物に、再生可能エネルギー(自然エネルギー)による自家発電設備が普及してきている。代表的な例としては、太陽光発電設備や風力発電設備である。これらの自家発電設備はその需要者の建物の電力供給を目的に設置されるが、自家発電設備をパワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)によって系統に連系させ、余剰電力を系統に逆潮流させることも行われている。しかしながら再生可能エネルギーはエネルギー密度にむらが大きい(気象や天候に大きく依存する)ため、最大負荷のための発電設備として計上することは難しい。
【0004】
特許文献1には、過去のエネルギー消費の実績データと気象予報データとから予測日のエネルギー使用量を演算し、エネルギーコストと環境負荷抑制に関するバランスを評価するバランス評価システムが提案されている。特許文献1によれば、バランスを評価するだけでなく、建物内の各装置のエネルギー消費の分担を演算し、各装置を制御することが提案されている。
【0005】
また近年、充電池の技術の発展に伴い、小型、高容量、高出力の充電池が開発され、より多くの機器に充電池が搭載されるようになると予想される。また高容量、高出力の充電池を搭載した機器として、電気自動車も今後普及が進むと予想される。さらには、特定の機器ではなく建物全体に対して電力を供給する充電池(NAS電池など)についても、従来は大型で高価であったため病院など特定の施設に限られて設置されていたが、今後は一般住宅にも普及が進むと予想される。
【0006】
特許文献2には、充電装置からの電力供給が可能な複数の電気機器に対し、総電力需要予測DBから、予想電力需要最大時間と最小時間を抽出し、電気機器毎にピークシフト開始時間、ピークシフト終了時間、充電開始時間、充電終了時間を算出する電力需要量ピークシフト方法が提案されている。特許文献2によれば、予め定められたピークシフト期間に複数の電気機器を一斉にバッテリ駆動させるのではなく、ピークシフト期間を機器ごとに調整することにより、効率的に電力需要量(もしくは需要に対する供給量)を平滑化することができるとしている。
【0007】
また特許文献2(段落0014)や特許文献3(段落0012)でも説明されているように、電力会社の給電制御システムでは翌日以降の電力の需要予測を管理している。そして現在は、系統の電力使用量予測情報をいわゆる電気予報として配信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−164624号公報
【特許文献2】特開2007−336796号公報
【特許文献3】特開2006−268342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来から、様々な手法によって建物内の電力需要量の平滑化が図られている。平滑化の手段を大別すれば、特許文献1のように重負荷時(ピーク時)の機器の消費電力を抑えるものと、特許文献2のように重負荷時に電力を充電池からの電力でまかなうものが提案されている。後者は、実際の消費電力は変わっていないとしても、系統に対する見かけ上の消費電力(系統から消費する電力)を低減するものであると言い換えることができる。
【0010】
上記いずれの手法も系統の最大負荷を抑えるために有効であるとは考えられるものの、いずれもその建物ないしは需要家の単位で消費電力を低減するものである。したがって例えば、ある建物において電力供給能力(充電池や発電装置から供給可能な電力)に余裕があったとしても、他の建物において消費電力が大きければ、なお系統が電力供給不足となるおそれが残っている。
【0011】
そこで本発明は、各建物の消費電力を抑えるだけでなく、さらに積極的に重負荷時の系統負荷を軽減し、電力不足を回避することが可能な電力制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電力制御システムは、充電池と、充電池を系統に連系しうるパワーコンディショナと、通信回線を介して所定のリソースから系統の電力使用量予測情報を取得する電気予報取得部と、取得された電力使用量予測情報に基づいて、系統負荷が所定の値より大きい時間帯である重負荷時を算出する負荷状態算出部と、充電池の充電または放電を制御する充放電制御部とを備え、充放電制御部は、重負荷時以外の時間帯に充電池を充電し、重負荷時に充電池から放電させることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、重負荷時には充電池の電力を系統に逆潮流させることができるため、重負荷時の系統負荷を軽減し、電力不足を回避することができる。これにより、電力不足による周波数低下を回避して品質確保し、また停電を回避できるため、電気の信頼性を向上させることができる。
【0014】
上記の電力制御システムにおいて、さらに自家発電設備を備え、充放電制御部は、重負荷時以外の時間帯は自家発電設備が発電した電力を建物内の使用量に依らず優先的に充電池に充電できることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、自家発電設備の電力によって系統の電力不足を回避することができる。特に、再生可能エネルギーを用いる自家発電設備である場合には、低CO2のクリーンなエネルギーによって系統の電力を補えるために好ましい。
【0016】
上記の電力制御システムにおいて、さらに気象予報を取得する気象予報取得部と、気象予報に基づいて自家発電設備の発電量を予測する発電量予測部とを備え、充放電制御部は、予測発電量を充電池に充電しても充電量に余裕があると予測される場合に、重負荷時以外の時間帯に系統の電力によって充電池を充電することが好ましい。
【0017】
これにより、再生可能エネルギーによって発電した電力を最大限に利用しつつ、充電池により多くの電気を蓄積して、重負荷時に放電する電力が不足することを回避することができる。
【0018】
上記の電力制御システムにおいて、負荷状態算出部は、系統の電力の負荷状態を区分して時間帯に関連づけた負荷スケジュールを生成し、当システムは、さらに建物内の電気機器に対して負荷スケジュールを送信する負荷情報送信部を備えることを特徴とする電力制御システム。
【0019】
これにより、建物内の電気機器は、重負荷時に消費電力を抑えるように動作(対処)することが可能となる。ただし、対応するかどうか、または具体的対応方法は機器側次第である。
【0020】
上記の電力制御システムにおいて、充放電制御部は、重負荷時に充電池から放電させる際に、放電後に所定の電気残量が残るように放電量を制限することが好ましい。
【0021】
これにより、停電時のバックアップ電源として機能するための電気残量を充電池に確保することができる。したがって、電源供給を停止してはならない電気機器がある場合にも、安心して運用することができる。
【0022】
本発明にかかる電気機器の代表的な構成は、系統の電力の負荷状態を区分して時間帯に関連づけた負荷スケジュールを受信する負荷情報受信部と、自身の動作を制御する制御部とを備え、制御部は、負荷スケジュールに基づき、重負荷時に負荷を落とし、または重負荷時に動作を停止または中断し、または重負荷時の経過後に動作を開始し、または重負荷時の開始前に動作が完了するように動作開始時間を早めることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、受信した負荷スケジュールに応じて重負荷時の建物内の消費電力を抑えることができ、充電池から系統へと電力を供給する余力を生じさせることができる。
【0024】
本発明にかかる他の代表的な構成は、充電池の充電または放電を制御する充放電制御部において、系統負荷が所定の値よりも大きい時間帯である重負荷時以外の時間帯に充電池を充電し、重負荷時に充電池から放電させることを特徴とする。
【0025】
上記の充放電制御部において、自家発電設備が発電した電力を建物内の使用量に依らず優先的に充電池に充電できることが好ましい。また上記の充放電制御部において、自家発電設備について予測される発電量を充電池に充電しても充電量に余裕があると予測される場合に、重負荷時以外の時間帯に系統の電力によって充電池を充電することが好ましい。また上記の充放電制御部において、重負荷時に充電池から放電させる際に、放電後に所定の電気残量が残るように放電量を制限することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る電力制御システムによれば、重負荷時の系統負荷を軽減し、電力不足を回避することが可能な電力制御システム、電気機器、および充放電制御部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る電力制御システムを説明する図である。
【図2】第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る電力制御システムを説明する図である。
【図4】第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図5】第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図6】第3実施形態に係る電力制御システムを説明する図である。
【図7】第3実施形態の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る電力制御システムを説明する図、図2は第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。図1では需要家の建物100(住宅)に電力制御システム200を設置した例を示している。建物100には、インフラ(公共施設)として系統110と通信回線120が接続されている。系統110は、建物100内に敷設された商用電源112に接続されている(分電盤は図示省略)。商用電源112には、照明器具や冷蔵庫、エアコン、炊飯器などといった電気機器220が負荷として接続されている。
【0030】
電力制御システム200は、充電池210と、充電池210を系統に連系しうるパワーコンディショナ214(図ではPCSと表記する)、および後述する各種機能を備えた制御装置250を備えている。
【0031】
充電池210は二次電池であって、電気によって充電できるものである。現在高容量、高出力の電池として広く実用化されているのはリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池であるが、燃料電池に類される金属空気電池も二次電池として実用化が進んでいる。
【0032】
パワーコンディショナ214は、充電池210の電力を系統110と同じ形態(電圧、周波数、位相など)にして同期連系させるものである。また系統正常時には連系を行うが、系統異常時には連系を切って自立運転(その需要家の負荷のみに電力を供給する運転状態)も行うことができる。
【0033】
本実施形態においてパワーコンディショナ214は特殊なものではなく、一般的な市販品を用いることができる。パワーコンディショナ214の概略構成を説明すると、直流を交流電力に変換する交直変換器(DC/ACインバータ)、系統連系検出装置、各種の保護回路などを備えている。また、無効電力補償回路(SVC:Static Var Compensator)、高調波抑制回路(フィルタ)などの電力制御回路を備えていてもよい。
【0034】
制御装置250は、通信I/F252、電気予報取得部254、負荷状態算出部256、充放電制御部258を備えている。図2のフローチャートの流れに沿って各部の機能を説明する。
【0035】
通信I/F252は通信回線120に接続され、電気予報取得部254等が外部と通信することを可能にする。通信回線120としては電話回線、光ケーブル、メタルケーブル、電力線(PLC)など既知の方式を採用することができ、通信I/F252は通信回線120の方式に応じた構成を取ればよい。なお通信回線120は物理的な線の代わりに無線通信であってもよく、その場合は通信I/F252は無線の受信機の構成となる。なお通信はインターネットを介してTCP/IPプロトコルによって行うことが簡便であるが、電話回線を利用する場合には無手順プロトコルを使用できるなど、特定の通信方式に限定されるものではない。また、次に述べるように電気予報を受信するだけであるからダウンストリームがあればよく、双方向通信である必要はない。したがって通信回線120に代えて、ラジオ電波やテレビ電波、衛星放送などを用いることも可能である。
【0036】
電気予報取得部254は、通信I/F252を介して、所定のリソースから系統の電力使用量予測情報を取得する(ステップ302)。電力使用量予測情報(電気予報)とは電力会社が提供する情報である。一例として、翌日の電力需要の予測最大負荷(ピーク)の値と、その予測最大負荷の開始時および終了時のデータが含まれる。他の例としては、単位時間(例えば1時間)ごとに予測負荷の値を含んでいてもよい。所定のリソースとは電力使用量予測情報の供給源であって、通信回線120の方式に応じて様々な形態を取ることができる。例えば通信回線120がインターネットである場合には配信サーバであり、ラジオ電波等を利用する場合には所定の周波数の電波である。
【0037】
負荷状態算出部256は、電気予報取得部254が取得した電力使用量予測情報に基づいて、系統の重負荷時を算出する(ステップ304)。重負荷時とは、系統負荷が所定の値(閾値)より大きくなる時間帯(開始時間と終了時間)である。所定の値は、あらかじめ負荷状態算出部256のプログラムに設定値として与えてもよいし(絶対値による閾値)、系統の供給力を電力使用量予測情報の1項目として配信し、これに1未満の比率をかけて算出してもよい(比率による閾値)。
【0038】
なお、電力使用量予測情報に含まれる予測最大負荷の値がその電力会社の供給力にとって十分に余裕のある小さな値である場合には、重負荷とは判定されない。この場合、その日は重負荷時が存在しないことになる。一方、電力使用量予測情報が単位時間ごとの予測負荷の値である場合には、重負荷時は不連続の複数の時間帯となる場合もある。
【0039】
また、重負荷時のデータとして時間帯のデータだけではなく、重負荷の評価値を含ませてもよい。重負荷の評価値は、high/lowの2段階(1ビット)であってもよいが、3段階以上に量子化してもよい。
【0040】
充放電制御部258は、負荷状態算出部256が算出した重負荷時のデータに基づいてパワーコンディショナ214を制御し、重負荷時以外の時間帯に充電池210を充電し、重負荷時に充電池210から放電させる。
【0041】
図2に示すように、充放電制御部258はまずシステムクロックから取得した現在の時刻と重負荷時とを比較して、現在重負荷時であるか否かを判定する(ステップ306)。重負荷時以外であった場合(NO)には、商用電源112からパワーコンディショナ214を介して充電池210に充電する(ステップ308)。重負荷時であった場合(YES)には、充電池210からパワーコンディショナ214を介して系統110に電力を逆潮流させる(ステップ312)。
【0042】
上記のように、重負荷時以外の時間帯に充電池を充電し、重負荷時に充電池から放電させることにより、重負荷時には充電池の電力を系統110に逆潮流させることができるため、重負荷時の系統負荷を軽減し、電力不足を回避することができる。これにより、電力不足による周波数低下を回避して品質確保し、また停電を回避できるため、電気の信頼性を向上させることができる。さらには、担保すべき最大の供給力を下げることができるため、発電設備の設備投資および維持費用を抑えることができる。
【0043】
なお、ステップ308では理解を容易にするために「充電する」とのみ記載しているが、重負荷時以外には放電してはいけないという意味ではなく、重負荷時となるまでに十分な量の(ほぼ満充電となるように)充電をすることを意味している。例えば、充電池210の通常の用途に従って充電と放電を繰り返しつつ、充電池210の空き容量を監視し、重負荷時となる時刻より前にその充電池210の充電速度でその空き容量を埋めることができるタイミングからは専ら充電するようにしてもよい。また、重負荷時が存在しない日があれば、図2に示すフローチャートでは一日中「重負荷時以外」に該当するが、そのような日はそもそも本発明を適用する必要はなく、充電池210の通常の用途に従って適宜充電と放電を行えばよい。
【0044】
ただし充放電制御部258は、放電するにあたって充電池210の電気残量を監視し、所定の電気残量が残っているか否かを判定する(ステップ310)。そして電気残量が残っている場合(NO)は放電(ステップ312)を行うが、電気残量の残りが少ない場合(YES)には放電しない。すなわち、充電池210からの放電量を制限し、その建物100のために使用しうる量を残しておく。
【0045】
これにより、充電池210が停電時のバックアップ電源として機能するための電気残量を確保することができる。したがって、コンピュータや医療機器など電源供給を停止してはならない電気機器がある場合にも、安心して運用することができる。なお、充電池210に残すべき所定の電気残量は、充放電制御部258のプログラムに設定値として与えることもできるほか、電気機器側から取得してもよい。
【0046】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態に係る電力制御システムを説明する図、図4および図5は第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。第2実施形態は第1実施形態の構成に、自家発電設備と、気象予報を利用するための構成を追加したものである。
【0047】
図3に示すように、建物100には自家発電設備216の例として太陽光発電パネルを備えている。自家発電設備216の他の例としては、風力発電、ガス発電(給湯とのコージェネレーション)などが普及しているが、今後は地熱発電、波力発電なども増えてくるものと考えられる。
【0048】
自家発電設備216の発電した電力は、パワーコンディショナ218(図ではPCSと表記する)を介して系統110に連系して逆潮流させることができる。充放電制御部258は、パワーコンディショナ218に有線または無線により電気的に接続され、自家発電設備216の発電量を取得する。
【0049】
上記構成により、まず、充放電制御部258は図4に示すような動作を行うことが可能となる。図4では、第1実施形態と同様に電気予報取得部254が電力使用量予測情報を取得し(ステップ302)、負荷状態算出部256が系統の重負荷時を算出する(ステップ304)。充放電制御部258が現在重負荷時以外であると判定した場合(ステップ306のNO)、充放電制御部258はパワーコンディショナ218から現在の自家発電設備216の発電量を取得する(ステップ320)。そして充放電制御部258は、自家発電設備216が発電した電力を、建物100内の使用量に依らず、優先的に充電池210に充電することができる(ステップ322)。
【0050】
上記構成によれば、自家発電設備216の電力によって系統110の電力不足を回避することができる。特に、再生可能エネルギーを用いる自家発電設備216である場合には、低CO2のクリーンなエネルギーによって系統110の電力を補えるために好ましい。なお、自家発電設備216の電力を充電池210に回した結果として、その建物100内での電力を自家発電設備216の電力でまかなえなくなったとしても、そのとき系統は軽負荷であるため支障はない。
【0051】
なお、通常、自家発電設備216を備えている場合、代表的には以下のいずれかの構成が取られる。(1)まず建物100内で使用し、余剰分を系統に逆潮流させる。(2)いったん充電池に蓄え、商用電源112と電源を切り替えて使用する。(3)発電した電力は全て系統に逆潮流させ、系統から使った電力量と逆潮流の電力量を金銭的に相殺する。これらのうち(1)(3)は系統に対する逆潮流がある。しかしながら、自家発電設備216が再生可能エネルギーを利用する場合には、発電量は自然の成り行きになる。このため、重負荷時にできるだけ多くの逆潮流をさせたいと考えても、重負荷時のまさにそのときの発電量に依存してしまう。
【0052】
これら(1)〜(3)の既存技術に対する本実施形態の特徴的な点は、重負荷時の前に、建物内の使用量に依らず自家発電設備216の発電状況に応じて充電し、重負荷時以外には充電池210から放電せず、重負荷時になったら充電池210から放電する点である。これにより重負荷時に充電池210から確実に電力を供給することができる。
【0053】
またさらに図3の構成では、制御装置250に、気象予報取得部260と発電量予測部262を備えている。この構成により、充放電制御部258は、図5に示すような動作を行うことが可能となる。図5は、充放電制御部258が現在重負荷時以外であると判定した場合(図4のステップ306のNO)についての動作を示している。図5のフローチャートの流れに沿って各部の機能を説明する。
【0054】
気象予報取得部260は電気予報取得部254と同様に、通信I/F252および通信回線120を介して、所定のリソースから気象予報を取得する(ステップ330)。気象予報には、単位時間(例えば1時間)ごとの気温、天候、風速などの予測データが含まれる。ここでの所定のリソースとは、気象予報の供給源であって、気象庁またはこれに類する機関が提供する配信サーバや電波(放送)などを利用することができる。
【0055】
発電量予測部262は、自家発電設備216の特性に応じて、気象予報取得部260が取得した気象予報に基づいて翌日の予測発電量を算出する(ステップ332)。自家発電設備216が太陽光発電パネルである場合には、気象予報から得られる気温および天候と、日射量(緯度、経度、時刻、季節などから算出する)を用いて発電量を予測することができる。自家発電設備216が風力発電である場合には、主に風速から発電量を予測することができる。
【0056】
充放電制御部258は、予測発電量と充電池210の残量から、重負荷時になるまで自家発電設備216の発電した電力を充電した場合の充電池210の余裕分(空き容量)を算出する(ステップ334)。
【0057】
そして余裕分があるか否かを判定したとき(ステップ336)、余裕分がない場合(NO)は、自家発電設備216による発電分で足りるということである。したがって充放電制御部258はパワーコンディショナ218から現在の自家発電設備216の発電量を取得し(ステップ338)、発電分を優先的に充電池210に充電する(ステップ340)。
【0058】
余裕分がある場合は(ステップ336のYES)、系統110の電力を追加して充電池210を限りなく満充電することにより、重負荷時に充電池210の性能を発揮できると考えられる。そこで充放電制御部258は現在の発電量を取得し(ステップ342)、発電分に加えて余裕分に相当する電力を系統の電力から追加して充電を行う(ステップ344)。
【0059】
これにより、再生可能エネルギーによって発電した電力を最大限に利用しつつ、充電池により多くの電気を蓄積して、重負荷時に放電する電力が不足することを回避することができる。
【0060】
再生可能エネルギーによる発電量は不安定である。太陽光発電であれば日射量の影響を受け、風力発電であれば風の強さの影響を受ける。そこで上記のように、発電量をあらかじめ予測し、発電した電気を溜めてもなお充電池に余裕があるのであれば、系統の電力を補充して予め充電する(充電には時間がかかるため、計画的に充電する必要がある)。むろん、必ずしも充電池を満充電にする必要はなく、重負荷時の時間中に放電を継続できる量が溜まっていればよい(放電にも時間がかかる:単位時間あたりに出力できる電流には限りがあるため)。
【0061】
なお、図3においては、充電池210のためのパワーコンディショナ214と、自家発電設備216のためのパワーコンディショナ218を別々に2つ描いている。しかし複数の発電機(電源)を入力可能な仕様のパワーコンディショナを用いるか、または直流の段階でDC/DCコンバータによって電圧をあわせることにより、パワーコンディショナを1つにすることができる。
【0062】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。図6は第3実施形態に係る電力制御システムを説明する図、図7は第3実施形態の動作を説明する図である。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。第3実施形態は第1実施形態の構成において、充電池210の充放電だけでなく、電気機器220の制御も行う構成を追加したものである。
【0063】
第1実施形態において負荷状態算出部256は系統の重負荷時を算出すると説明したが、本実施形態ではさらに、系統の電力の負荷状態を区分して時間帯に関連づけた負荷スケジュールを生成する。「重負荷時」のデータと「負荷スケジュール」のデータは似たものである。重負荷時のデータは、上述したように、系統負荷が所定の値(閾値)より大きくなる時間帯(開始時間と終了時間)の1次元データである。これに対し負荷スケジュールは、時間帯と負荷状態のマトリクスの2次元データである。負荷状態の区分がhigh/lowの2段階(1ビット)であるとき、「重負荷時」と「負荷スケジュール」から得られる情報量は実質的に同等になる。
【0064】
なお、元データである電力使用量予測情報(電気予報)が予測最大負荷の開始時および終了時の1次元データである場合には、負荷スケジュールの区分も必然的に2段階になる。電力使用量予測情報が単位時間ごとの予測負荷の値を含んでいれば、負荷スケジュールは3段階以上に区分することが可能となる。区分が細かいほど、電気機器側は区分に応じてきめ細かな制御を行うことができる。
【0065】
図6に示すように、制御装置250には、さらに建物100内の電気機器220に対して負荷スケジュールを送信する負荷情報送信部264を備えている。一方、電気機器220側には、負荷スケジュールを受信する負荷情報受信部222と、自身の動作を制御する制御部224が備えられている。電気機器220の制御部224は、負荷情報受信部222を介して受信した負荷スケジュールに基づき、重負荷時に消費電力を低減させるように動作(対処)する。
【0066】
負荷スケジュールを送信する手段としては、電力線通信、無線LANや有線LAN、bluetooth(登録商標)やzigbeeなどの近距離無線通信、赤外線などの光通信など、様々なものを利用することができる。
【0067】
ここで、負荷スケジュールを受け取ったときにどのように動作するかは、その電気機器次第である。したがって制御装置250からは負荷スケジュールを送信するに留め、具体的な動作は各電気機器220に委ねる。
【0068】
図7は負荷スケジュールを3段階に区分したときの動作例を示している。13:00−14:00の区分1が重負荷時であり、その前後の区分2が2番目に負荷が高い区分であり、区分3は負荷が低い区分である。
【0069】
パターンAは、電気機器220が照明器具やエアコン、冷蔵庫などのように負荷の調整が可能な場合である。このとき、一時的に負荷を落としたり、動作を停止することが可能である。図では区分2で負荷を落とし、区分1で停止させているが、区分1でさらに負荷を落とすに留めて停止まではさせないように動作させてもよい。
【0070】
パターンBは電気機器220が洗濯機や食洗機などのように、負荷の調整は効かないが、中断することは可能な場合である。このとき、重負荷時(区分1)になるまでは動作を継続し、重負荷時になったら動作を中断し、重負荷時が終了したら動作を再開する。
【0071】
パターンCは、電気機器220が炊飯器のように、負荷の調整も効かず、中断することもできない場合である。このとき、タイマーなどによって予定された動作の時間が重負荷時にかからないようにシフトさせて、重負荷時の経過後に動作を開始したり、図7に示すように重負荷時の開始前に動作が完了するように動作開始時間を早めたりする。
【0072】
上記のように、重負荷時に充電池から電力を供給するばかりではなく、受信した負荷スケジュールに応じて重負荷時の建物内のそもそもの負荷(消費電力)を低減させることができる。このため、充電池から系統へと電力を供給する余力を生じさせることができ、さらに系統の負荷を軽減させることができる。
【0073】
なお、負荷スケジュールの内容を更新するタイミングは、電気予報(1日2回程度)または天気予報(3時間毎程度)が更新されるタイミングである。ただし、1時間毎程度で定期的に更新し続けて、結果的に内容が変わらないという運用でもよい。一方、負荷スケジュールを配信するタイミングは、電気機器220のON/OFFやコンセントのぬき差しを考慮すれば、数分間隔程度の高頻度であることが好ましい。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、重負荷時の系統の負荷を軽減し、電力不足を回避することが可能な電力制御システム、電気機器、および充放電制御部として利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
100…建物、110…系統、112…商用電源、120…通信回線、200…電力制御システム、210…充電池、214…パワーコンディショナ、216…自家発電設備、218…パワーコンディショナ、220…電気機器、222…負荷情報受信部、224…制御部、250…制御装置、252…通信I/F、254…電気予報取得部、256…負荷状態算出部、258…充放電制御部、260…気象予報取得部、262…発電量予測部、264…負荷情報送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電池と、
前記充電池を系統に連系しうるパワーコンディショナと、
通信回線を介して所定のリソースから系統の電力使用量予測情報を取得する電気予報取得部と、
取得された電力使用量予測情報に基づいて、系統負荷が所定の値より大きい時間帯である重負荷時を算出する負荷状態算出部と、
前記充電池の充電または放電を制御する充放電制御部とを備え、
前記充放電制御部は、前記重負荷時以外の時間帯に前記充電池を充電し、前記重負荷時に前記充電池から放電させることを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御システムにおいて、
さらに自家発電設備を備え、
前記充放電制御部は、前記重負荷時以外の時間帯は前記自家発電設備が発電した電力を建物内の使用量に依らず優先的に前記充電池に充電できることを特徴とする電力制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力制御システムにおいて、
さらに気象予報を取得する気象予報取得部と、
気象予報に基づいて前記自家発電設備の発電量を予測する発電量予測部とを備え、
前記充放電制御部は、
前記予測発電量を前記充電池に充電しても充電量に余裕があると予測される場合に、前記重負荷時以外の時間帯に系統の電力によって前記充電池を充電することを特徴とする電力制御システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力制御システムにおいて、
前記負荷状態算出部は、系統の電力の負荷状態を区分して時間帯に関連づけた負荷スケジュールを生成し、
当該システムは、さらに建物内の電気機器に対して前記負荷スケジュールを送信する負荷情報送信部を備えることを特徴とする電力制御システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力制御システムにおいて、
前記充放電制御部は、前記重負荷時に前記充電池から放電させる際に、放電後に所定の電気残量が残るように放電量を制限することを特徴とする電力制御システム。
【請求項6】
系統の電力の負荷状態を区分して時間帯に関連づけた負荷スケジュールを受信する負荷情報受信部と、
自身の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記負荷スケジュールに基づき、重負荷時に負荷を落とし、または重負荷時に動作を停止または中断し、または重負荷時の経過後に動作を開始し、または重負荷時の開始前に動作が完了するように動作開始時間を早めることを特徴とする電気機器。
【請求項7】
充電池の充電または放電を制御する充放電制御部において、
系統負荷が所定の値よりも大きい時間帯である重負荷時以外の時間帯に前記充電池を充電し、前記重負荷時に前記充電池から放電させることを特徴とする充放電制御部。
【請求項8】
請求項7記載の充放電制御部において、
自家発電設備が発電した電力を建物内の使用量に依らず優先的に前記充電池に充電できることを特徴とする充放電制御部。
【請求項9】
請求項8記載の充放電制御部において、
前記自家発電設備について予測される発電量を前記充電池に充電しても充電量に余裕があると予測される場合に、前記重負荷時以外の時間帯に系統の電力によって前記充電池を充電することを特徴とする充放電制御部。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれかに記載の充放電制御部において、
前記重負荷時に前記充電池から放電させる際に、放電後に所定の電気残量が残るように放電量を制限することを特徴とする充放電制御部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−17284(P2013−17284A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147589(P2011−147589)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(511161498)
【出願人】(511161502)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】