説明

電力効率が改善されたカラーOLEDディスプレイ

OLEDディスプレイ・デバイスが:発光画素アレイと、OLEDを駆動信号で選択的に駆動する手段とを含み、発光画素アレイの各画素が、赤色、緑色及び青色のOLEDと、赤色、緑色及び青色のOLEDによって画定されたガモットに対してディスプレイ・デバイスのガモットを拡張する1つ以上の付加的な有色OLEDとを有しており、この付加的なOLEDの輝度効率又は経時輝度安定性が、赤色、緑色及び青色のOLEDのうちの少なくとも1つの輝度効率又は経時輝度安定性よりも高く;そして、OLEDを駆動信号で選択的に駆動する手段により、ディスプレイ色精度を維持しつつ、全電力使用量全体を低減し、又はディスプレイの寿命を延ばす。種々の実施態様によれば、本発明は、改善された電力効率、より長い全寿命、正確な色相を有する拡張された色ガモット、及び改善された空間画質を有するカラー・ディスプレイ・デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)、フルカラー・ディスプレイ・デバイス、及びより具体的には、ガモット及び電力効率が改善されたOLEDカラー・ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー・デジタル画像ディスプレイ・デバイスがよく知られており、これらは、種々の技術、例えば陰極線管、液晶及びソリッドステート発光体、例えば有機発光ダイオード(OLED)に基づいている。一般的なOLEDディスプレイ・デバイスの場合、各ディスプレイ・デバイス素子又は画素は、赤色、緑色及び青色OLEDから成っている。加法色系においてこれら3つのOLEDのそれぞれからの照明を組み合わせることにより、種々様々な色を獲得することができる。
【0003】
所望の電磁スペクトル部分におけるエネルギーを放出するようにドープされた有機材料を直接に使用して、OLEDによって色を発生させることができる。しかし、既知の赤色及び青色発光材料は、特に高い輝度効率を有しない。しかし、輝度効率がより高い材料が当業者に知られている。電力効率が常に望まれるが、これは可搬性用途においては特に望まれる。なぜならば、非効率的なディスプレイは、電源が再充電される前にデバイスを使用できる時間を制限するからである。可搬性用途は、ディスプレイが強い周囲照明を有する場所で使用されるのを必要とし、ディスプレイが有用な高い輝度レベルを有する画像を提供するのを必要とし、さらに、十分な画像を提供するのに必要な電力を高くすることもあり得る。
【0004】
ディスプレイ・デバイスを設計するときには、観察者によって知覚される色、及びこれらの色に対するヒトの目の感受性を理解することが重要である。図1は、1931 CIE標準明所視感受性曲線2を示す。この曲線は、電磁エネルギーを知覚された明るさに変換するためのヒトの目の相対効率を、可視スペクトル内部の波長の関数として関連させる。この曲線によって重み付けされた電磁エネルギーは、一般に輝度と呼ばれ、これは、広範囲の観察条件下で、知覚された明るさと相関するものである。
【0005】
伝統的に、ディスプレイ・デバイスは、赤色、緑色及び青色発光素子の三つの組から構成されている。これらの発光素子のピーク波長は典型的には、青色に関しては可視スペクトルの短波長部分(例えば点4又は点4の近く)にあり、緑色に関しては可視スペクトルの中波長部分(例えば点6又は点6の近く)にあり、そして赤色に関しては可視スペクトルの長波長部分(例えば点8又は点8の近く)にあることになる。これらの発光素子の相対輻射効率が同様である場合、目が可視スペクトルの中波長部分内のエネルギーに対して最も感受性であるという事実により、緑色発光素子が典型的には、赤色又は青色発光素子よりも著しく高い輝度効率を有することになる。しかし、発光素子のうちの1つの輻射効率が、別の発光素子の輻射効率よりも著しく高いというのはもっともらしく思われるため、この関係は常に存在するわけではないかもしれない。
【0006】
OLEDディスプレイ・デバイスを設計するときの1つの目標は、各OLEDの効率を最大化することにより、電力消費量を最小化することであるのに対して、拮抗する目標は、ディスプレイ・デバイスの色ガモットを最大化することである。図2は、典型的な赤色12、緑色14及び青色16発光素子の色度座標を有するCIE 1931色度図である。色ガモット18は、色度図内部のこれらの点を結ぶ三角形によって画定することができる。ディスプレイ・デバイスの色ガモットを改善するためには、この三角形内部の面積を大きくしなければならない。この色ガモットを増大させるために、青色発光素子のピーク波長は典型的には低減され、波長がより短いエネルギーを提供し、そしてさらに、この発光素子によって提供された輻射エネルギーに対する目の感受性を低減することになる。同様に、色ガモットを増大させるために、赤色発光素子のピーク波長は増大されなければならず、波長がより長いエネルギーを生成し、そしてさらに、この発光素子によって提供された輻射エネルギーに対する目の感受性を低減する。このような理由から、増大された色ガモット、及び低減された電力消費量を提供するという目標は典型的には、拮抗しあう。
【0007】
ディスプレイ・デバイスを設計するときの別の重要なファクターは、製造されなければならない色のうちの多くが無彩色又は非飽和色になることである。すなわち、これらの色は、CIE 1931色度図上にプロットされたときに、ディスプレイの白色点に、又は白色点の近くにプロットされることになる。例えば、多くのグラフィック・ディスプレイ上の主要な色が白であることが知られている。これは、多くの一般的な用途において背景を含む。これらの用途は、ワードプロセッシング用途、例えばMicrosoft Word、及びオペレーティング・システム、例えばMicrosoft Windows(登録商標)を含む。加えて、ピクチャー画像は、無彩色又は非飽和色から成る傾向がある。この事実はまた、Yendrikhovskij, S. (2001) Computing Color Categories from Statistics of Natural Images in the Journal of Imaging Science and Technology, 第45巻、第5号、第409〜417頁によって従来技術において示されている。
【0008】
従って、典型的な使用条件下におけるディスプレイ・デバイスの電力消費量を低減するために、ディスプレイ・デバイスの白色点近くの色の消費電力をできる限り少なくすることが極めて重要である。しかし、典型的な3色ディスプレイ・デバイスの場合、赤色12、緑色14、及び青色16発光素子からの輝度を加えることにより、白色及び非飽和色が生成される。前述のように、赤色12及び青色16発光素子は典型的には輝度効率が比較的低いので、ディスプレイ・デバイスの電力消費量は、白色又は非飽和色を表示するときに、その最大値に近くなる。
【0009】
異なる色を生成するためにドープされた材料から形成されたOLEDは、著しく異なる輝度安定性を有することもある。すなわち、経時的に発生する輝度出力の変化は、異なる材料によって著しく異なることがある。このような異なる輝度安定性は、不適合な輝度効率変化を経時的にOLED内に発生させ、そして、ディスプレイ・デバイスの有効全寿命を制限するおそれがある。
【0010】
赤色、緑色及び青色素子に加えて、1つ又は2つ以上の付加的な発光素子を利用することが可能である。Boothによる米国特許出願公開2003/0011613号明細書(2003年1月16日)には、例えば、赤色、緑色、青色及びシアン発光素子を有するディスプレイ・デバイスが記載されている。この出願は、青色発光素子の輝度効率が典型的には、シアン発光体よりも低いという事実を論じている。この特許出願はまた、3色入力信号を4色信号に変換するために、3色-4色変換マトリックスを使用することを論じている。残念ながら、上述のように3色-4色マトリックスによる3色から4色への変換を利用すると、結果として不正確で非飽和の原色が生じる。上記特許出願はまた、色変換法、例えばインクジェット印刷において3色から4色以上への変換を採用するために用いられる方法を用いることを論じている。上記明細書本文は、3色から4色以上へのいくつかの変換方法を用いることを論じてはいるものの、正確な色を維持しつつ結果として電力消費量を低くするように色変換を実施するために、単一の発光体の効率のような情報を利用することを論じてはいない。
【0011】
赤色、緑色及び青色発光素子以外の発光素子を有するOLEDディスプレイ・デバイスはまた他の者によっても論じられている。例えば、Cok他による米国特許第6,750,584号明細書(2003年3月27日)に記載されたOLEDディスプレイ・デバイスは、ディスプレイ・デバイスの色ガモットを増大させるために利用される付加的なシアン、黄色及び/又はマゼンタOLEDを有する。上記特許は、3色入力信号を4色又は5色以上の信号に変換する必要を論じてはいるものの、ディスプレイ・デバイスの電力消費量を低減するように、これらのOLEDを利用する方法を論じてはいない。
【0012】
Liang他による米国特許出願公開第2002/0191130号明細書において論じられたディスプレイは、補色対(例えば青、黄、赤及び緑)を採用する。上記特許明細書は、色混合を可能にする方法に関しては論じていはいないが、このディスプレイ・デバイス構造は、4つ全ての発光素子を採用するフラットな白フィールドの形成を可能にする。1画素当たり4つ全ての発光素子を採用するフラットな白フィールドを提供することにより、ディスプレイは、無彩色に近い色の均一な領域を提供する。しかし、この方法は白色を生成するために4つ全ての発光素子を1画素内で利用するので、電力消費量は必ずしも低減されない。
【0013】
3色から4色への変換を採用するディスプレイ・システムはまた、投射ディスプレイの当業者に知られている。例えば2002年9月17日付けで発行された米国特許第6,453,067号明細書においてMorganによって提案された方法は、赤色、緑色、及び青色の強度のうちの最小値に応じて、白原色の強度を計算し、続いて、変更された赤色、緑色及び青色の強度をスケーリングを介して計算するアプローチを教示している。加えて、1999年7月27日付けで発行された米国特許第5,929,843号明細書においてTaniokaによって提供されるのは、R、G、及びB信号のうちの最小値をW信号に割り当て、同じ値をR、G、及びB信号のそれぞれから差し引く、よく知られたCMYKアプローチと類似のアルゴリズムに従う方法である。グレースケール分解能の欠如によって生じ得るアーチファクトの輪郭形成を回避するために、この方法は、低い輝度レベルでより平滑な色をもたらす最小信号に適用される可変のスケール・ファクターを教示する。これらの特許明細書のそれぞれは、3色から4色への変換法を提供するが、CIE色度図でプロットされたときに、3色から、3つのガモット内色と、赤色、緑色、及び青色発光体の色座標を結ぶ三角形の外側にある第4の色とに変換する方法を提供してはいない。事実、これらのアルゴリズムは、ディスプレイ・デバイスが第4のガモット拡張原色を提供するときに、正確な色変換を生成するために利用することはできない。
【0014】
3色信号から、4色以上の原色を採用する広幅ガモット・ディスプレイ・デバイスのために使用可能な信号に色変換するのを可能にする方法が、2002年12月12日付けで出願された国際公開第02/099557号パンフレットにおいてBen-Chorinによって提案されている。しかしこの記載の方法は、電力消費量を低減するか、又はOLEDディスプレイ・デバイスの寿命を延ばすように、この変換を可能にする手段を提供しているのではない。この方法はまた、ディスプレイ条件の変化に対してフレキシブルではない。
【0015】
Boothの米国特許出願公開第2003/0011613号明細書;Cok他の米国特許第6,750,584号明細書;及びLiang他の米国特許出願公開第2002/0191130号明細書は全て、4つ又は5つ以上の原色を有するOLEDディスプレイ・デバイスに関して論じており、また、3色から4色への変換プロセスの必要性を論じているものの、4色のうちの3つ又は2つ以下を使用して、フラットな色フィールドを形成できるという事実はこれらの著者によって論じられてはいない。さらに、4色発光素子のうちの3つだけを使用すると、輝度が均一に見えないフラットな色フィールドが生成され得るという事実も論じられていない。実際に、4つ又は5つ以上の原色に関する従来技術は、他のディスプレイ又は使用パラメーターに対応して、色変換プロセスをダイナミックに調節することに関して論じているようには見えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、正確な色相を維持しつつ、電力効率及び/又は全寿命が改善されたフルカラーOLEDディスプレイ・デバイスが必要である。理想的には、このディスプレイ・デバイスはまた、色ガモットを拡張し、空間画質を改善することになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1実施態様によれば、本発明は、カラーOLEDディスプレイ・デバイスであって、
発光画素アレイと、OLEDを駆動信号で選択的に駆動する手段とを含み;
a)該発光画素アレイの各画素が、赤色、緑色及び青色のOLEDと、該赤色、緑色及び青色のOLEDによって画定されたガモットに対して該ディスプレイ・デバイスのガモットを拡張する1つ以上の付加的な有色OLEDとを有しており、該付加的なOLEDの輝度効率又は経時輝度安定性が、該赤色、緑色及び青色のOLEDのうちの少なくとも1つの輝度効率又は経時輝度安定性よりも高く;そして、
b)該OLEDを駆動信号で選択的に駆動する手段により、ディスプレイ色精度を維持しつつ、電力使用量全体を低減し、又は該ディスプレイの寿命を延ばす、
カラーOLEDディスプレイ・デバイスに関する。
【発明の効果】
【0018】
種々の実施態様に従って、本発明は、改善された電力効率、より長い全寿命、正確な色相を有する拡張された色ガモット、及び改善された空間画質を有するカラー・ディスプレイ・デバイスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、赤色、緑色及び青色のOLEDとともに、色ガモットを拡張する1つ又は2つ以上の付加的なOLEDを有するフルカラー・ディスプレイ・デバイスであって、1つ又は2つ以上の付加的なOLEDの輝度効率又は経時輝度安定性が、赤色、緑色及び青色のOLEDのうちの少なくとも1つよりも高い、フルカラーOLEDディスプレイ・デバイスに関する。ディスプレイと組み合わされた信号プロセッサーは、標準3色画像信号を駆動信号に変換し、これらの駆動信号は、ディスプレイ色精度を維持しつつ、赤色、緑色及び青色のOLEDだけを使用して全ての色が形成されるときの同じディスプレイと比較して、ディスプレイの電力消費量を低減し、又はディスプレイの寿命を延ばすように、OLEDを駆動する。この変換プロセスは、使用条件又はディスプレイ条件に応じて調節することができる。
【0020】
付加的なOLEDは理想的にはCIE色度空間内部に位置決めされるので、付加的なOLEDは、ディスプレイの白点に又は白点近くに色を形成する場合に、低効率OLEDの代わりに使用することができる。この要件を満たすことにより、最も頻繁に発生する色(白に近い色)を形成するときに、低効率OLEDが低輝度効率OLEDの使用を排除しない場合に得られる10パーセント・オーダーの節減量から、最も頻繁に発生する色を形成するために高効率OLEDが低効率OLEDの使用の必要性を排除する場合に得られる25パーセントを上回る節減量へ、典型的な電力節減量を高めることができることを、発明者は実証した。
【0021】
従って、発光素子のうちの1つよりも輝度効率が高い1つ又は2つ以上の付加的な発光素子を導入することにより、ディスプレイ・デバイスの電力消費量を低減することができ、そしてこの発光素子からのエネルギーを使用することにより、輝度効率がより低い発光素子のうちの1つ又は2つ以上、典型的には赤色12及び/又は青色16発光素子の使用を低減することができる。
【0022】
本発明を理解するために、「輝度効率」という用語を定義することが重要である。この用語は、既知の電流に駆動されたときに輝度を生成するためのOLED発光体の効率を意味する。これは一般に、1アンペア当たりのカンデラ単位で測定される。
【0023】
図2を再び見ると、付加的な原色を選択することにより、そのCIE色度座標が、青色発光素子16のCIE色度座標と緑色発光素子14の色度座標とを繋ぐ線の左側にプロットされるようにすることができる。OLEDディスプレイ・デバイスにおいて、この発光素子はシアンOLEDと呼ばれることになる。しかし、この空間内部の特定のOLEDに割り当てられる最も一般的な色名称が必ずしもシアンでなくてもよいことは明らかである。或いは、付加的な原色のCIE色度座標は、これが緑色発光素子14のCIE色度座標と赤色発光素子12のCIE色度座標とを繋ぐ線の右側にプロットされるようになっていてもよい。OLEDディスプレイにおいて、この発光素子は黄色OLEDと呼ばれることになる。この場合もやはり、この空間内部の特定のOLEDに割り当てられる最も一般的な色名称が必ずしも黄色でなくてもよいことは明らかである。
【0024】
いかなるディスプレイ・デバイスにおいても、青色発光素子よりも効率が高いシアン発光素子を形成することが道理にかなっている。赤色発光素子よりも効率が高い黄色発光素子を形成することも道理にかなっている。これらの記述のそれぞれは、ヒトの目が青色又は赤色可視スペクトル部分にピーク波長を有するスペクトルと比較して、シアン及び黄色スペクトル領域にピーク波長を有する電磁エネルギーに対してより高い感受性を有するという事実によって支持される。ヒトの目の効率(明所視効率)と、発光体の色との関係は、図3に示すように、代表的な単ピーク・スペクトルの色度座標の関数として明所視効率をプロットすることにより示すことができる。この図面が示すように、明所視効率は、色度座標(.12, .85)を有する単ピークスペクトルに関して最高(点20)であり、CIE色度座標上のY座標が減小するにつれて、単調関数に従って下降する。従って、青色スペクトルの明所視効率(例えば点22)及び赤色スペクトルの明所視効率(例えば点24)はゼロに極めて近い。
【0025】
さらに言うまでもなく、緑色発光素子のスペクトル内容が、発光素子が典型的には緑と名付けられる色を生成するようになっていることが絶対に必要というわけではない。しかしこの発光素子は、青色発光素子16のCIE y色度座標、及び赤色発光素子12のCIE y色度座標よりも大きいCIE y色度座標を有することになる。
【0026】
図4は、本発明の1実施態様によるディスプレイ・デバイスにおけるOLEDのCIE 色度座標を示す。このディスプレイ・デバイスは、従来技術のディスプレイ・デバイス内部に存在するような、赤色30、緑色32、及び青色34のOLEDを含む。このディスプレイ・デバイスは加えて、付加的な黄色36のOLEDを含む。図4はまた、ディスプレイの白点38を示す。ディスプレイ・デバイスの白点を取り囲む赤色30、緑色32、及び黄色36のOLEDの色度座標を結ぶ三角形40が示されている。この三角形はディスプレイの白点を取り囲むので、高輝度効率の緑色OLED、高輝度効率の黄色OLED、及び青色発光OLED素子の組み合わせから、最も頻繁に発生する色(例えば白色又は白に近い色)を形成することができる。ディスプレイ・デバイスの電力消費量を低減するためには、最高効率の発光素子を最大限に利用する、3色から4色への変換が可能でなければならない。この機能は、信号プロセッサーによって提供される。信号プロセッサーは、標準色画像信号を省電力画像信号に変換する。省電力画像信号は、色精度に対して妥協することなしに、本発明のディスプレイを駆動するために採用される。
【0027】
本発明は、1画素当たり4つ又は5つ以上のOLEDを可能にするたいていのOLEDデバイス形態において採用することができる。これらの形態は、1つのOLED当たり別個のアノードとカソードとを含む極めて極めて単純な構造から、より精巧なデバイス、例えば画素を形成するためのアノードとカソードとの直交配列を有するパッシブ・マトリックス・ディスプレイ、及び各画素が例えば薄膜トランジスター(TFT)によって独立して制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイまでを含む。
【0028】
本発明は、図5に示すようなOLED発光素子の配列を含むことができる。この図面に示されているように、ディスプレイ・デバイス50は画素アレイ52を含む。各画素は赤色54、緑色56、青色58、及び黄色60のOLEDから成る。
【0029】
このようなディスプレイの1実施態様の断面の概略図が図6に示されている。本発明の実施が成功し得る有機層形態は多数ある。図6には典型的な構造が示されている。ディスプレイ・デバイスの各画素72は4つのOLEDを有する。各OLEDは透明基板76上に形成されている。この基板上には、赤色78、緑色80、青色82、及び黄色84のカラーフィルターが形成されている。カラーフィルター上には、次いで透明アノード86が形成され、続いて、OLEDディスプレイを構成するのに典型的に使用される層が形成される。ここではOLED材料は、正孔注入層88、正孔輸送層90、発光層92、及び電子輸送層94を含む。最後にカソード96が形成される。
【0030】
これらの層については、下に詳細に説明する。なお、これとは別に、基板をカソードに隣接して配置することもでき、又は、基板は実際にアノード又はカソードを構成することもできる。アノードとカソードとの間の有機層は便宜上、有機発光層と呼ぶ。有機発光層の組み合わせ総厚は、好ましくは500 nm未満である。デバイスは、カバーを通して発光される上側発光型デバイス、又は、(図6に示すように)基板を通して発光する下側発光型デバイスであってよい。
【0031】
本発明による下側発光型OLEDデバイスは、典型的には、支持基板76の上に設けられる。支持基板76上には、カラーフィルターがパターニングされる。カラーフィルター及び基板には、カソード又はアノードが接触していることが可能である。基板と接触する電極は、従来、下側電極と呼ばれる。従来、下側電極はアノードであるが、しかし本発明はそのような形態には限定されない。基板は、所期発光方向に応じて、光透過性又は不透明であってよい。光透過性は、基板を通してEL発光を見るのに望ましい。このような事例において、透明ガラス又はプラスチックが一般に採用される。EL発光が上側電極を通して見られる用途の場合には、下側支持体の透過性は重要ではなく、従って、下側支持体は光透過性、光吸収性、又は光反射性であることが可能である。この事例に使用するための基板の一例としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミックス、及び回路基板が挙げられる。もちろん、これらのデバイス形態において光透明上側電極を設けることが必要である。
【0032】
EL発光がアノード86を通して見られる場合、アノードは当該発光に対して透明又は実質的に透明であるべきである。本発明において使用される共通の透明アノード材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、及び酸化スズであるが、しかしアルミニウム又はインジウムでドープされた酸化亜鉛、酸化マグネシウムインジウム、及び酸化ニッケルタングステンを含む他の金属酸化物も働くことができる。これらの酸化物に加えて、金属窒化物、例えば窒化ガリウム、及び金属セレン化物、例えばセレン化亜鉛、及び硫化金属、例えば硫化亜鉛をアノードとして使用することができる。EL発光がカソード電極を通してのみ見られる用途の場合、アノードの透過性は重要ではなく、透明、不透明又は反射性の任意の導電性材料を使用することができる。この用途のための導体の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及び白金が挙げられる。透過性又はその他の典型的なアノード材料の仕事関数は4.1 eV以上である。望ましいアノード材料が、任意の好適な手段、例えば蒸発、スパッタリング、化学気相堆積、又は電気化学手段によって一般に堆積される。よく知られたフォトリソグラフィ法を用いてアノードをパターニングすることができる。
【0033】
アノード86と正孔輸送層90との間に正孔注入層88を設けることがしばしば有用である。正孔注入材料は、後続の有機層の膜形成特性を改善し、そして正孔輸送層内への正孔注入を容易にするのに役立つことができる。正孔注入層内の使用に適した材料の一例としては、米国特許第4,720,432号明細書に記載されているようなポリフィリン化合物、及び米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなプラズマ堆積型フルオロカーボン・ポリマーが挙げられる。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料が、欧州特許出願公開第0 891 121号明細書及び同第1 029 909号明細書に記載されている。
【0034】
正孔輸送層90は、1つ以上の正孔輸送化合物、例えば芳香族第三アミンを含有する。芳香族第三アミンは、当該炭素原子のうちの1つ以上が芳香環の員である炭素原子だけに結合された1つ以上の三価窒素原子を含有する化合物であると理解される。1形態において、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、又は高分子アリールアミンであってよい。モノマー・トリアリールアミンの一例が、米国特許第3,180,730号明細書においてKlupfel他によって示されている。1つ又は2つ以上のビニル基と置換された、且つ/又は、1つ以上の活性水素含有基を含む他の好適なトリアリールアミンが、米国特許第3,567,450号明細書及び同第3,658,520号明細書においてBrantley他によって開示されている。
【0035】
芳香族第三アミンのより好ましいクラスは、米国特許第4,720,432号明細書及び同第5,061,569号明細書に記載されているような2つ以上の芳香族第三アミン部分を含む。正孔輸送層は、単独の芳香族第三アミン化合物又はその混合物から形成することができる。有用な芳香族第三アミンの例は下記の通りである:
1,1-ビス(4-ジ-p-トリアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4-4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4''-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-ターフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4''-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]p-ターフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ)ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4''-ジアミノ-p-ターフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
【0036】
別のクラスの有用な正孔輸送層は、欧州特許第1 009 041号明細書に記載されているような多環式芳香族化合物を含む。加えて、高分子正孔輸送層、例えばポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びコポリマー、例えばPEDOT/PSSとも呼ばれるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)を使用することができる。
【0037】
米国特許第4,769,292号明細書及び同第5,935,721号明細書により十分に記載されているように、有機発光層の発光層(LEL)92は、ルミネッセント材料又は蛍光材料を含み、この領域における電子-正孔対の再結合の結果としてエレクトロルミネッセンスが生成される。発光層は、単一の材料から成ってよいが、しかし、より一般的には、ゲスト化合物でドープされたホスト材料から成る。発光は主にドーパントから生じ、そして任意の色を有していてよい。発光層内のホスト材料は、下記に定義されたような電子-輸送材料、上記に定義されたような正孔輸送材料、又は別の材料、又は正孔-電子再結合を支持する材料の組み合わせであってよい。ドーパントは通常、高蛍光色素から選ばれるが、しかし燐光性化合物、例えば国際公開第98/55561号パンフレット、同第00/18851号パンフレット、同第00/57676号パンフレット、及び同第00/70655号パンフレットに記載された遷移金属錯体も有用である。ドーパントは典型的には、ホスト材料中に0.01〜10質量%としてコーティングされる。高分子材料、例えばポリフルオレン及びポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV)を、ホスト材料として使用することもできる。この事例において、小分子ドーパントを高分子ホスト中に分子分散させることができ、或いは、微量成分をホスト・ポリマー中に共重合することによりドーパントを添加することもできる。
【0038】
ドーパントとして色素を選ぶための重要な関係は、バンドギャップ電位の比較である。バンドギャップ電位は、その分子の最高被占分子軌道と最低空分子軌道との間のエネルギー差として定義される。ホスト材料からドーパント分子への効率的なエネルギー移動のために、必要な状態は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。
【0039】
有用であることが知られているホスト分子及び発光分子の一例としては、米国特許第4,769,292号;同第5,141,671号;同第5,150,006号;同第5,151,629号;同第5,405,709号;同第5,484,922号;同第5,593,788号;同第5,645,948号;同第5,683,823号;同第5,755,999号;同第5,928,802号;同第5,935,720号;同第5,935,721号;及び同第6,020,078号に開示された分子が挙げられる。
【0040】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体及び同様の誘導体が、エレクトロルミネッセンスを支持することができる有用なホスト化合物の1クラスを構成する。有用なキレート型オキシノイド化合物の例は、下記の通りである:
CO-1:アルミニウムトリソキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビソキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリソキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチロキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニム(IV)]
【0041】
別のクラスの有用なホスト材料の一例としては、アントラセンの誘導体、例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン及びその誘導体、米国特許第5,121,029号明細書に記載されているようなジスチリルアリーレン誘導体、及びベンザゾール誘導体、例えば2,2',2''-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]が挙げられる。
【0042】
有用な蛍光ドーパントの一例としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム及びチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、及びカルボスチリル化合物の誘導体が挙げられる。
【0043】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機発光層の電子輸送層94を形成する際に使用するための好ましい薄膜形成材料は、オキシン自体のキレート(一般には8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)を含む、金属キレート型オキシノイド化合物である。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、高い性能レベルを示し、そして薄膜形態で容易に加工される。オキシノイド化合物の例は前に挙げた通りである。
【0044】
他の電子輸送材料は、米国特許第4,356,429号明細書に開示された種々のブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号明細書に開示された種々の複素環式蛍光増白剤を含む。ベンザゾール及びトリアジンも、有用な電子輸送材料である。
【0045】
いくつかの事例の場合、層92及び94は任意には、圧潰することにより単層にすることができる。単層は、発光及び電子輸送の両方を支援する機能を発揮する。これらの層は、小分子OLEDシステム及び高分子OLEDシステムの両方で圧潰することができる。例えば、高分子システムにおいて、正孔輸送層、例えばPEDOT-PSSを高分子発光層、例えばPPVと一緒に採用することが一般的である。このシステムでは、PPVは発光及び電子輸送の両方を支援する機能を発揮する。
【0046】
発光がアノードを通してのみ見られる場合、本発明において使用されるカソード96は、ほぼいずれの導電性材料からも構成することができる。望ましい材料は、下側の有機層との良好な接触を保証するための良好な膜形成特性を有し、低い電圧における電子注入を促進し、そして経時的な良好な輝度安定性を有する。有用なカソード材料はしばしば低仕事関数材料(<4.0 eV)又は金属合金を含有する。1つの好ましいカソード材料は、Mg:Ag合金から成る。銀のパーセンテージは、米国特許第4,885,221号明細書に記載されているように、1〜20 %である。別の好適なクラスのカソード材料は二層構造を含む。二層構造は、有機層(例えばETL)と接触する薄い電子注入層(EIL)を、より厚い導電性材料層でキャップされた状態で含む。この場合、EILは好ましくは、低仕事関数材料又は金属塩を含み、そしてもしこのようなものを含むならば、前記のより厚いキャップ層は低仕事関数を有する必要はない。このようなカソードは、米国特許第5,677,572号明細書に記載されているように、LiF薄層と、これに続くより厚いAl層とから成る。他の有用なカソード材料セットの一例としては、米国特許第5,059,861号;同第5,059,862号;及び同第6,140,763号の各明細書が挙げられる。
【0047】
発光がカソードを通して見られる場合、カソードは透明又はほとんど透明でなければならない。このような用途の場合、金属は薄くなければならず、或いは、透明な導電性酸化物、又はこれらの材料の組み合わせを使用しなければならない。米国特許第4,885,211号、同第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、米国特許第5,703,436号、同第5,608,287号、同第5,837,391号、同第5,677,572号、同第5,776,622号、同第5,776,623号、同第5,714,838号、同第5,969,474号、同第5,739,545号、同第5,981,306号、同第6,137,223号、同第6,140,763号、同第6,172,459号、欧州特許第1 076 368号、及び米国特許第6,278,236号の各明細書に、光学的に透明なカソードがより詳細に記載されている。蒸発、スパッタリング、又は化学気相堆積によってカソード材料が堆積される。必要な場合には、例えばスルーマスク堆積、米国特許第5,276,380号明細書及び欧州特許0 732 868号明細書に記載されたインテグラル・シャドー・マスキング、レーザー・アブレーション、及び選択的化学気相堆積を含むよく知られた多くの方法によって、パターニングを達成することができる。
【0048】
上述の有機材料は、気相法、例えば昇華によって好適に堆積されるが、しかし、流体から、例えば膜形成を改善するための任意のバインダーを有する溶剤から、堆積することもできる。材料がポリマーである場合、溶剤堆積が有用であるが、しかし他の方法、例えばスパッタリング又は供与体シートからの熱転写を用いることもできる。昇華によって堆積されるべき材料は、例えば米国特許第6,237,529号明細書に記載されているように、しばしばタンタル材料から成る昇華器「ボート」から蒸発させることができ、或いは、先ず供与体シート上にコーティングし、次いで基板により近接させた状態で昇華させることができる。材料混合物を有する層は別個の昇華器ボートを利用することができ、或いは、材料は単一のボート又は供与体シートから予混合してコートすることができる。シャドー・マスク、インテグラル・シャドー・マスク(米国特許第5,294,870号明細書)、供与体シートからの空間的に画定されたサーマル色素転写(米国特許第5,851,709号明細書及び同第6,066,357号明細書)、及びインクジェット法(米国特許第6,066,357号明細書)を用いて、パターン付き堆積を達成することができる。
【0049】
大抵のOLEDデバイスは、湿分又は酸素又はその両方に対して鋭敏なので、これらは一般には、乾燥剤、例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び過塩素酸塩とともに、不活性雰囲気、例えば窒素又はアルゴン中でシールされる。カプセル封入法及び乾燥法の一例としては、米国特許第6,226,890号明細書に記載されたものが挙げられる。加えて、バリア層、例えばSiOx、テフロン(登録商標)、及び交互の無機/高分子層がカプセル封入の当業者に知られている。
【0050】
本発明のOLEDデバイスは、種々のよく知られた光学効果を採用して、所望の場合にこれらの特性を増強することができる。このような増強は、最大の光透過をもたらすように層厚を最適化すること、誘電ミラー構造を設けること、反射性電極を光吸収電極と置き換えること、ディスプレイ上に眩光防止又は反射防止コーティングを設けること、ディスプレイ上に偏光媒体を設けること、又はディスプレイ上に色フィルター、減光フィルター、又は色変換フィルターを設けることを含む。カバー上に又はカバー部分として、フィルター、偏光子、及び眩光防止又は反射防止コーティングを具体的に設けることができる。
【0051】
OLEDのCIE座標を変更するためにカラーフィルターを使用することが可能ではあるものの、光効果、例えばマイクロキャビティを使用して、発光色を調節することもできる。これらの光学法を用いて、デバイスからの発光波長を調整することができ、そしてこれらの光学法を用いて、OLED色を形成することができ、或いは、これらの光学法はカラーフィルターとともに使用することもできる。マイクロキャビティを採用してディスプレイ・デバイスを構成する方法が、米国特許出願公開第2004/0140757号明細書及び同第2004/0160172号明細書に記載されている。
【0052】
第2の特に有用な実施態様は、異なる色を提供するためにドープされたいくつかの異なるOLED材料の使用を含む。例えば赤色54、緑色56、青色58、及び黄色60のOLED(図5)は、異なる有色OLEDを生成するためにドープされた異なるOLED材料から成ってよい。この実施態様は図7に示されている。図7は、透明基板100上に形成された複数のOLEDを含む。この基板上には、アノード102が形成されている。各アノード上には、有機発光ダイオード材料104, 106, 108及び110のスタックが形成されている。有機発光ダイオード材料の上にはカソード112が形成されている。有機発光ダイオード材料のスタックのそれぞれ(例えば114, 116, 118及び120)は、正孔注入層104、正孔輸送層106、発光層108、及び電子輸送層110から形成されている。
【0053】
この実施態様の場合、発光層及び潜在的には、有機発光ダイオード材料スタック内部の他の層は、赤色、緑色、青色、及び黄色のOLEDを提供するために選択される。第1発光ダイオード材料スタック114は、主として可視スペクトルの長波長又は赤色部分においてエネルギーを放出する。第2発光ダイオード材料スタック116は、主として可視スペクトルの中波長又は緑色部分においてエネルギーを放出する。第3発光ダイオード材料スタック118は、主として可視スペクトルの短波長又は青色部分においてエネルギーを放出する。最後に、第4発光ダイオード材料スタック120は、可視スペクトルの緑色部分よりも長い波長のミッドレンジにおいてエネルギーを放出する。こうして4つの異なる材料が、赤色、緑色、青色、及び黄色を含む4色OLEDデバイスを形成する。
【0054】
ディスプレイ・デバイスは赤、緑、青、及び黄の原色を有するものとして論じられているが、ディスプレイ・デバイスの効率を改善するために、黄原色の代わりに、残りのOLEDのうちの1つよりも輝度効率が高い、赤色、緑色、及び青色OLEDによって画定されたガモットの外側に位置する、1つ又は2つ以上の他のOLEDを使用できることは当業者には明らかである。
【0055】
ディスプレイ・デバイスはさらに、ディスプレイ・デバイスの電力消費量を低減し、ディスプレイ・デバイスの寿命を延ばし、又はその他の形式でディスプレイ・デバイスの性能を改善するために、標準3色入力画像信号を、OLEDを駆動する駆動信号に変換するように組み合わされた信号プロセッサーを含むことになる。電力消費量が低減されたディスプレイを提供するために、変換プロセスは、適切な変換プロセスを生み出すために、ディスプレイ内の発光素子の効率を考えなければならない。個々のOLEDの発光効率を考える1つの方法は下記の通りである。
【0056】
前述のように、ディスプレイ・デバイスは白点を有している。白点は一般には当業者に知られた方法を介してハードウェア又はソフトウェアによって調節可能であるが、しかしこの例の目的上、固定される。この白点は、3原色、この例では赤、緑、及び青原色の、最大限にアドレス可能な程度にまで駆動された組み合わせから生じる色である。白点は、一般にはxyY値と呼ばれる、その色度座標及びその輝度によって定義される。xyY値は、下記等式:
【0057】
【数1】

によってCIE XYZ三刺激値に変換することができる。
【0058】
3つ全ての三刺激値が輝度Yによってスケーリングされることに留意すれば、XYZ三刺激値が極めて厳密な意味で、輝度単位、例えばcd/m2を有することは明らかである。しかし白点輝度はしばしば、値100を有する無次元量に対して正規化され、これを有効に輝度パーセントとする。ここでは、XYZ三刺激値は、Yが輝度パーセントを表すようにスケーリングされるものと想定する。従って、xy色度値(0.3127, 0.3290)を有するD65の一般的なディスプレイ白点のXYZ三刺激値は、(95.0, 100.0, 108.9)である。
【0059】
ディスプレイ白点、及びディスプレイ3原色、この例では赤、緑、及び青原色の色度座標は共に、燐光体マトリックスを特定する。燐光体マトリックスの計算は当業者によく知られている。また、「燐光体マトリックス(phosphor matrix)」という俗称は、従来は発光燐光体を使用したCRTディスプレイに関連するものであるが、物理的な燐光体材料の有無とは無関係に、ディスプレイの数学的記述においてより一般的に使用することができる。燐光体マトリックスは強度をXYZ三刺激値に変換して、ディスプレイである加法色系を効果的にモデリングし、そしてその反転において、XYZ三刺激値を強度に変換する。
【0060】
原色の強度は、ここでは、その原色の輝度に対して比例的な値として定義され、そして3原色のそれぞれの単位強度の組み合わせが、ディスプレイ白点のXYZ三刺激値に等しいXYZ三刺激値を有する色刺激を生成するようにスケーリングされる。この定義はまた、燐光体マトリックスの項のスケーリングを制約する。赤、緑、及び青原色の色度座標がそれぞれ(0.6782, 0.3215)、(0.2437, 0.6183)、及び(0.1495, 0.0401)である、D65白点を有するOLEDディスプレイ例は、燐光体マトリックスM3:
【0061】
【数2】

を有する。燐光体マトリックスと、列ベクトルとしての強度とを掛け算すると、下記等式:
【0062】
【数3】

におけるように、XYZ三刺激値を生成する。I1は赤原色の強度であり、I2は緑原色の強度であり、そしてI3は青原色の強度である。
【0063】
なお、燐光体マトリックスは典型的には線形マトリックス変換であるが、しかし、燐光体マトリックス変換の概念は、強度からXYZ三刺激値に至る、又はその逆の任意の変換又は一連の変換に対して一般化することができる。
【0064】
燐光体マトリックスは、4つ以上の原色を取り扱うために一般化することもできる。目下の例は、xy色度座標(0.5306, 0.4659)の付加的な原色−黄色を含有する。100であるように任意に選ばれた輝度において、付加的な原色のXYZ三刺激値は(113.9, 100.0, 0.7512)である。これらの3つの値は、第4の列を形成するために変更を加えることなしに、燐光体マトリックスM3に付け加えることができるが、便宜上、XYZ三刺激値は赤、緑、及び青原色によって画定されたガモット内部で生じ得る最大値に対してスケーリングされる。燐光体マトリックスM4は下記の通りである:
【0065】
【数4】

【0066】
前に示したものと同様の等式が、赤、緑、青、及び付加的な原色に対応する強度の4値ベクトルを、XYZ三刺激値に変換するのを可能にし、これらの値の組み合わせはディスプレイ・デバイスにおいて:
【0067】
【数5】

を有することになる。
【0068】
一般に、燐光体マトリックスの値はその反転形にある。この反転はXYZ三刺激値において色を特定するのを可能にし、結果として、ディスプレイ・デバイス上にその色を生成するのに必要とされる強度をもたらす。もちろん、色ガモットは、再現が可能な色の範囲を記述し、そして、ガモット外のXYZ三刺激値を特定すると、範囲[0,1]外の強度がもたらされる。この状況を回避するために、既知のガモット・マッピング技術を適用することができるが、これらの技術の適用は本発明にはあまり関係ないので論じる必要はない。反転は3 x 3 燐光体マトリックスM3の場合には単純であるが、しかし3 x 4 燐光体マトリックスM4の場合には、これは一意的には定義されず、従って頑健な変換を可能にするために、単独の反転3 x 4燐光体マトリックスを利用することはできない。ここに提供される方法は、3 x 4燐光体マトリックスの反転を必要とすることなしに、4つ全ての原色チャネルに強度値を割り当てる方法である。
【0069】
本発明の方法は、赤、緑、及び青原色のための色信号、この例では強度で始まる。これらの色信号は、燐光体マトリックスM3の上記反転によってXYZ三刺激値を特定することから得られるか、又は線形的又は非線形的にコードされたRGB、YCC、又はその他の3チャネル色信号を、ガモット画定原色及びディスプレイ白点に対応する強度に変換する既知の方法により得られる。
【0070】
最小に近い電力で、変換された色を生成するという問題を単純化するために、数多くのアプローチを用いることができるが、本発明の1実施態様に従って用いることができる望ましいアプローチを図8に示す。この図面に示されているように、プロセスは各原色の効率を入力すること(122)で始まる。次いで、原色は最小効率のものから最大効率のものまでランク付けされる(124)。三原色の全ての可能な組み合わせ(すなわち全ての可能なサブガモット)のリストが見極められる(126)。最小電力の使用が望ましいディスプレイ・デバイスにおいて、電力消費量と相関する平均効率又は同様のものが計算される(128)。この平均効率は、例えば各サブガモットを形成するのに使用される3原色の効率を平均することにより計算することができる。次いでこのサブガモットは、最高平均効率から最低平均効率までこれらを順序付けすることにより優先順位付けされる(130)。
【0071】
色度座標も原色毎に入力される(132)。次いで、色変換に使用されるべき全てのサブガモットに関して、燐光体マトリックスが計算される(134)。次いで、最短波長エネルギーを有する原色から、最長波長エネルギーを有する原色へ、原色が配列される(136)。このことは、青色から赤色への色度図の境界に追従するように配列された色度座標を使用して行うことができる。次いで、隣接する、そしてオーバーラップしない3原色集合から形成することができるサブガモットの全てを見極める(138)。次いで、リスト内の中心原色、及びサブガモットを形成するために使用される三角形の極限又は末端における2つの隣接する原色を有する3原色によって、これらのサブガモットのそれぞれが画定されることになる。一例としては、図4に示された青色、緑色及び黄色OLEDから形成されたサブガモット三角形40は、中心原色として緑色OLED 32を有し、そして隣接する末端原色として青色OLED原色34及び黄色OLED原色36を有することになる。中心原色としての赤色OLED 30と、隣接末端原色としての青色OLED原色34及び黄色OLED原色36とによって、第2のオーバーラップしないサブガモットが画定されることになる。
【0072】
ステップ138において見極められたサブガモットのそれぞれに関して、各サブガモット内にはない各原色を形成するための理論上の強度が計算される(140)(例えばサブガモット40の場合、理論上の強度は、赤色OLED原色42を形成するために計算される)。これらのガモットを使用してこれらの色を形成することは物理的に可能でないが、この計算は有用である。それというのも、ガモット内の外側原色の強度の比が色空間内部のサブガモットを分割する線を画定するからである。次いで、目下のサブガモットの外側の各原色を形成するのに使用される、目下のサブガモットの末端に位置する2つの原色の理論上の強度の比が計算される(142)。最後に、この情報から決定ルール集合が構成される(144)。決定ルールは、正の強度を有するいずれの色も、ステップ138において見極められたサブガモットのうちの1つから形成されるときに、そのサブガモット内部に存在することになることを知った上で形成される。負の値を有するいずれの色も、サブガモットの外側に位置することになる。しかし、ステップ142において見極められた比よりも大きい比を有するいかなる色も、ステップ142において実施された比計算の分子に使用される末端原色と同じ、線の側に位置することになる。この線は、中心原色、及びサブガモットの外側からの対応原色を切り取る。
【0073】
この情報に基づいて、任意の入力色のための全ての可能なホーム・サブガモットを示す論理集合を形成することができる。ホーム・サブガモットは、n個の原色のn!/(3!*(n-3)!)個全ての組み合わせに対応する強度を計算するのとは異なり、n-2個の強度値集合及びn/2個の比較を計算することによって、n個の原色から成る集合から画定することができる。144で構成された決定ルールはまた、ルックアップ・テーブルを提供するために、サブガモットの優先順位を考えることになる。ルックアップ・テーブルは、システムに入力された各色に関して実施される計算の結果として、どのサブガモットが適用されるかを示す。ステップ122からステップ144は、原色、原色の効率及び原色の色度座標に依存し、そしてこの理由から、一度実施されるだけで済む。これらのステップはデバイス起動時に実施されてよいが、しかし、メモリー内に記憶された、結果として構成された決定ルールが実施されてもよく、後続のステップのそれぞれが更なる遅れを出さずに実施されるのが可能になる。
【0074】
この方法を適用するために、XYZ値が各色に関して入力される(148)。次いで、各XYZ集合の強度及び比が、ステップ138において見極められた、オーバーラップしていない、そして隣接するサブガモットのそれぞれに関して計算される(146)。ステップ144において形成された決定ルールに基づいて、所望の色を形成する上で有用な全てのサブガモットが見極められる(150)。次いで、最低優先順位サブガモット(例えば最低平均効率を有するサブガモット)が選択される(152)。次いで、最低優先順位サブガモット内にはない全ての付加的な原色が見極められる(154)。混合比群又は関数群が入力される(156)。最後に、実際の色変換が図9に示されるように実施される(158)。
【0075】
なお、4色以上の原色を有するディスプレイ・デバイスにおいて、2つ又は3つ以上のサブガモットから任意の色を形成することができる。画質を改善し、寿命を長くし、又は何らかの他の所望の状態を達成するために、サブガモットの2つ又は3つ以上の組み合わせから光を混合し、4つ以上の原色を適用して、所与の色を形成することが望ましい場合がある。所定の色を形成するために使用することができる低効率サブガモットの強度集合の比率とは異なり、同じ色を形成するために使用されるより高いエネルギー効率のサブガモットの強度集合の比率を「混合比」と呼ぶことにする。なお、混合比が高い場合には、強度のほとんどは、3原色の低効率サブガモット(4色系の場合には、これらの低効率原色は典型的にはRGBとなる)から、より高効率の第2のサブガモット(典型的には付加的な原色を含有する)に移動され、そしてこの混合比が低い場合には、低効率サブガモットから高効率サブガモットに移動される強度はより少ない。我々の例では、白色が緑色、青色及び黄色から最も効率的に形成され、そして完全にオフにされた赤色OLEDを有する結果、何らかの画質損失が生じるおそれがあるものと考えると、我々は、緑色、青色及び黄色から白色を形成するために用いられる強度の組み合わせと、この例では赤色、緑色、及び青色から白色を形成するために用いられる強度のより僅かな部分とから、白色を形成することを決定することができる。このようにすれば、赤色素子はこの例では完全にオフにされることはなく、フラットな画像領域に、より均一な外観を有することになるディスプレイをもたらす。従って、重要なディスプレイ・パラメーターに対する相関関係を計算しなくても、2つ以上のガモットから所定の色を計算し、そしてこれら2つの色ガモットからの原色の強度を混合することにより、所望の色を形成することがなおも望ましい場合がある。
【0076】
図8に示されたプロセスが完了したら、図9に示されたプロセスを行うことにより、色変換を実施する。図9に示されているように、3色入力信号(XYZ)がシステム内に入力される(160)。これらのCIE XYZ三刺激値は、既知の方法を用いて、他の色測定基準(RGB, YCCなど)から計算することができる。所望の色を生成することができる最低優先順位ガモットの入力される燐光体マトリックスが、図8のステップ152において論じられたように選択される(162)。次いで、3色入力信号(XYZ)を生成するために最低優先順位サブガモットを形成する3原色から必要とされる強度が、XYZ値を燐光マトリックスで掛け算することにより計算される(164)。上記赤色、緑色、黄色、青色OLEDの例に従って、そして入力色がディスプレイの白点であることを想定して、赤、緑、及び青原色の組み合わせ、及び緑、黄、及び青原色の組み合わせによって、2つの有用なサブガモットが画定されることになる。赤、緑、及び青原色の組み合わせが最低優先順位サブガモットを定義するので、赤、緑、及び青原色の強度はこうして、ステップ164において色入力信号(XYZ)に関して計算されることになる。
【0077】
次いで、図8のステップ154において見極められた残りの原色のうち最低効率のものが、選択される(166)。ステップ164において計算された強度値は、残りの原色のうち最低効率のもののCIE XYZ三刺激値に対して正規化される(168)。OLED例に従って、赤色、緑色及び青色強度を正規化して、それぞれの単位強度の組み合わせが、黄原色のCIE XYZ三刺激値に等しいCIE XYZ三刺激値を有する色刺激を生成するようにする。このことは、赤、緑及び青原色を使用して黄原色を再現するために必要とされる強度の逆数によって、列ベクトルとして示される強度のスケーリングにより達成される(なお、下記マトリックス内のA、B、及びCは、この方法において使用される総称的な原色を表し、そして我々の例の場合、これらの値は赤色、緑色、及び青色の強度を表すことになる):
【0078】
【数6】

【0079】
正規化信号は、関数F1(An, Bn, Cn)である共通信号Sを計算する(170)。この例の場合、関数F1は、3つの正規化値の最小非負信号を選ぶ特殊最小関数である。共通信号Sは、関数F2(S)の値を計算する(172)ために使用される。この例の場合、関数F2は、算術反転を提供する:
F2(S)= -S
関数F2の出力は、正規化色信号に加えられ(176)、その結果、元の原色チャネルに対応する正規化出力信号(An', Bn', Cn')が生じる(178)。これらの信号はディスプレイ白点に対して正規化される(180)。このことは、ガモット画定原色を使用して黄原色を再現するために必要となる強度によってスケーリングすることにより行われ、その結果、入力色チャネルに対応する出力信号(A', B', C')が生じる。
【0080】
【数7】

【0081】
共通信号Sは、関数F3(S)の値を計算する(174)ために使用される。我々の単純な4色OLED例において、我々は、機能F3が単に同一性関数であると想定する。関数F3の出力は、出力信号に割り当てられ、出力信号は付加的な原色のうちの第1の原色に対応する色信号である。
【0082】
なお、関数F2及びF3はいかなる数の方法でも定義することができる。1つの望ましい様式では、関数F2及びF3は共通の乗数を含んでよい。この乗数は、図8のステップ156で入力された混合比である。これらの関数の別の定義は、共通信号Sと、関数の出力との他の線形又は非線形の関係を含んでもよい。これらの関数が単一の乗数よりも複雑な関係によって定義される場合には、「混合比」は、これらの関係のパラメーター集合又は記述を含むように、より広範囲に定義することができる。なお、関数F1、F2及びF3は、反復に基づいて異なる定義が与えられてもよく、或いは原色が色変換プロセス中に加えられる。
【0083】
関数F2及びF3の結果が見極められたら、全ての原色がプロセスに含まれているかどうかを見極める決定182が行われる。ここで用いられた赤色、緑色、青色又は黄色の例の場合のように、もしyesならば、プロセスは完了する(184)。しかしもしそうでないなら、原色のうちの1つが取りのけておかれる(186)。取りのけておかれるべき原色は典型的には、最低強度値を有する原色であるが、しかし、この原色は多数の他の方法で選択することができる。次いで付加的な原色が加えられ、このプロセスを付加的な原色毎に通過し、残りの原色のうちの次の最高効率原色を選択すること(166)で開始し、そしてステップ186後に残った原色の強度を、次の最高効率原色の色度座標に対して正規化する(168)。
【0084】
要約レベルでは、詳細に説明したこの方法は、任意の色を形成するのに使用することができる最低優先順位のサブガモットを画定する原色に必要とされる強度を計算する。この計算に続いて、所望の色を形成するためにこれらの原色と組み合わせて使用することができる連続する、より高効率の原色が加えられ、そして、より高効率のこの原色と、CIE色度空間内部の2つの他の原色とによって画定されたサブガモット内部の強度の組み合わせが計算される。なお、4つ以上のOLEDのうちの3つの強度の組み合わせとして、サブガモットが定義される。ここに適用されるように、ディスプレイ・デバイスによって生成することができる色のわずかな割合だけが、任意の単一のサブガモット内部に位置することになる。最低優先順位サブガモットから、より高効率の原色を含むサブガモットへ進展することは、典型的には、形成される強度の組み合わせが任意の他の組み合わせよりも高い電力効率を有するようになることを保証することになる。より高効率の組み合わせを用いることができる事例がなおも生じ得る(例えば使用され得る2つの原色の効率が極めて近い事例)が、しかし、その結果、電力消費量の減少が最小限となるにすぎない。
【0085】
或いは、最高効率で全ての色が形成されることを真に保証するために、サブガモットの全ての可能な組み合わせを用いて任意の色を形成するために各原色に必要とされる強度を計算し、次いで、各サブガモットを使用して各色を形成するのに必要とされる重要なディスプレイ・パラメーター(例えば電力消費量、電流、電流密度など)との相関関係を計算することもできる。すなわち、我々の例では、赤色、緑色、及び青色の組み合わせから、又は青色、緑色、及び黄色の組み合わせから、白色を形成することができる。従って、我々は、これらの組み合わせのいずれかから白色を形成するのに必要な電力消費量を計算し、次いで、これらのサブガモットのいずれかから白色を形成するための組み合わせを選択することができる。或る特定の環境下では、単にサブガモットの一つ一つからこの色を形成するのに必要とされる強度を計算し、次いでどのサブガモットが各OLEDの物理的に実現可能な(例えば正の)輝度値を産出するかを見極め、次いで、色を形成するために最も望ましい特性(例えば最大効率又は最大ディスプレイ寿命)を提供するサブガモットを選択することが最も効率的となり得る。
【0086】
これも注目に値することであるが、原色の効率が著しく異なるときに、任意の色を形成する最も効率的な方法は、サブガモットの小さな部分集合を計算することを必要とするにすぎない。例えば、著者によって調査された1つのシステムは、シアン及び黄原色を含み、これらの原色は、残りの原色よりも著しく高効率であり、そしてこの特定の事例において、任意の色を形成する最も効率的な手段が必要としたのは、オーバーラップしないシアン/黄/緑;シアン/黄/赤;及び黄/赤/青のサブガモットだけを計算することであった。以前の計算を用いて、色を生成するための最も効率的な手段を決して生成しないサブガモットを排除することができる場合、残りのサブガモットを計算するだけで、可能な限り低い電力を保証することができる。これらの環境下では、並列プロセッサーを使用して、3つ全てのサブガモットの強度値を生成することができ、次いで、駆動強度を選択するために、正の(物理的に実現可能な)強度値を有する強度値集合を見極めることが必要となるにすぎない。
【0087】
注目に値するのは、図8及び図9に示された方法において言及された混合比が一定の値であってよく、その結果、サブガモット内部のOLED間の輝度比が等しくなることである。しかし、前に示唆したように、混合比は或いは共通信号Sの関数であってもよい。混合比を1つのOLEDの強度又は輝度全体、又は2つ以上の強度値又は輝度値の組み合わせの関数とすることにより、ディスプレイ・デバイス内の個々のOLEDの輝度比は輝度出力の関数として変化することになるのに対して、生成された統合色の色度座標は等価になる。関数を使用することにより、1つ又は2つ以上のOLEDを有することによる輝度不均一性が、観察人の目には認められにくくなるような低輝度信号を得るために、より小さな混合比を使用することができる。輝度又は強度信号が高いときに、より大きい混合比を使用することにより、ディスプレイ・デバイスの知覚均一性を改善するのを助けるだけでなく、複数のOLED全体にわたってエネルギーを広げることにより、OLED材料の劣化を増大させるような極めて高い輝度出力への単独OLEDの駆動を防止することもできる。このような関数を使用すると、輝度出力レベルの関数としてのサブガモット内部のOLED間の輝度比を等しくないものにする。ルックアップ・テーブルを使用して、非線形関数を単純に導入することができる。或いは、3つ以上の重要なディスプレイ属性(例えば画質及び電力効率)のバランスをとるコスト関数を適用することもでき、そしてこのコスト関数を採用して、適用すべき各サブガモットの比率を選択することもできる。
【0088】
上記例におけるように、関数F1が最低非負信号を選ぶ時、関数F2及びF3を選択することにより、ガモット内色に関してどのぐらい正確に色が再現されるかを見極める。負の勾配を有するF2及び正の勾配を有するF3が両方とも線形関数である場合には、その結果は、最低効率を有する原色から強度を差し引き、また次の最高効率を有する原色に強度を加えたものである。さらに、線形関数F2及びF3が規模の等しい、しかし符号が逆の勾配を有するときには、最低効率を有する3原色から差し引かれた強度は、最高効率を有する原色に割り当てられた強度によって完全に明らかにされ、正確な色再現を保ち、3色系と同一の輝度を提供する。
【0089】
なお、3色信号から4色又は5色以上の信号に変換する方法は、ASIC、又は変換がリアルタイムで計算されるのを可能にするその他のハードウェア・デバイスにおいて実例を示すことができる。当業者には明らかなように、これは別の実施態様を有することができる。例えば、アルゴリズムをソフトウェアにおいてプログラミングし、そしてこれを使用することによりリアルタイム変換を可能にすることができる。或いは、アルゴリズムを使用して、3Dルックアップ・テーブル(LUT)又は3Dルックアップ・テーブルに対するマトリックス概算値を形成することができ、そしてこのLUTは、ASIC、ソフトウェア、又は色変換がリアルタイムで実施されるのを可能にするための別のデバイス内に埋め込むことができる。
【0090】
これらの状況のいずれにおいても、関数F2及びF3は、色入力信号によって表される色に応じて変化するように構成することができる。例えば、輝度が増大し又は色飽和が減小するのにともなって、関数は急勾配になることができ、又は関数は、色入力信号(R, G, B)の色相に関して変化することもできる。RGB原色に対する付加的な原色の異なる利用レベルを有する色精度を提供する関数F2及びF3の多くの組み合わせがある。ディスプレイ・デバイスの構成又は用途において、これらの関数は、その意図された用途及び仕様に応じて選択されることになる。色精度が必要とされる実施態様の場合、関数F2及びF3は典型的には互いに等しくなる。これらの条件下で、ΔE*(La*b*)の項で表されるときの平均色差は、赤色、緑色及び青色OLEDだけが使用されるときのディスプレイ・デバイスと、全てのOLEDが採用されるときの同じディスプレイ・デバイスとを比較すると、RGB色ガモット内部の全ての色に関して3単位未満となる。
【0091】
計算に際して強度の概算値である信号を使用することにより、コスト又は処理時間を削減することができる。よく知られているように、ビット深度の使用を最大限にするために、又は、信号の対象となるディスプレイ・デバイスの特性曲線(例えばガンマ)を明らかにするために、画像信号はしばしば非線形的にコードされる。強度は以前には、デバイス白点における単一体に対して正規化されたものとして定義されたが、しかし、この方法における関数が線形であることを考えると、8ビット・デジタル-アナログ・プロセッサーに対応するコード値255(例えばピーク電圧、ピーク電流、又は各原色の輝度出力に線形的に関連する任意のその他の量)に対して強度をスケーリングすることが可能であり、また、その結果、色誤差が生じることはないことは明らかである。
【0092】
非線形的に関連する量、例えばガンマ補正コード値を使用することによって強度を概算する結果、色誤差が生じることになる。しかし、線形性からの逸脱、及びどの関連部分が用いられるかによっては、時間又はコストの削減を考えると、誤差は許容できる程度に小さいものであり得る。例えば、図10に示されたOLEDの特性曲線は、コード値に対するその非線形強度応答を示す。曲線は屈曲部200を有しており、この屈曲部の上方で、曲線は下方よりも著しく線形の外観を有している。曲線全体の強度を概算するためにコード値を使用すると、顕著な色再現誤差を招くおそれがあるが、しかし図示の屈曲部200を使用するための定数(図3に示す例では約175)を、コード値から差し引くことにより、このような定数を上回る値の著しく良好な概算が行われる。図8に示された方法に提供された信号(R, G, B)は下記のように計算される:
【0093】
【数8】

このシフトは、図8に示された方法が完了した後、下記ステップ:
【0094】
【数9】

によって除去される。この概算は、処理時間又はハードウェア・コストを削減することができる。なぜならば、これはルックアップ作業の代わりに単純な加算を用いるからである。
【0095】
なお、上記色処理は、ディスプレイ・デバイス内部のOLEDの空間レイアウトを考慮していない。しかし、伝統的な入力信号は、1画素を構成するために使用されるOLEDの全てが同じ空間位置に配置されることを想定していることが知られている。異なる空間位置に異なる有色OLEDを有する結果として生成される視覚的に明らかなアーチファクトが、しばしば空間補間アルゴリズム、例えばKlompenhouwer他(2002)“Subpixel Image Scaling for Color Matrix Displays”(SID 02 Digest 第176〜179頁)によって論じられているアルゴリズムを使用して補償される。これらのアルゴリズムは、画像の空間内容に応じて、各OLEDのための駆動信号を調節することにより、空間アーチファクトの視認性を低減し、そして特に画像内部の物体のエッジ近くで、ディスプレイの画質を改善することになり、そして上述の色処理とともに、又は色処理が適用された後で適用されることになる。なお、画像内部の物体のエッジ近くで得られる画質改善は、エッジの先鋭さの増大、色ぶちの視認性の減少、及びエッジ平滑さの改善に由来する。
【0096】
この方法は3色入力信号から4色又は5色以上の信号への正確な変換方法を提供する一方で、オーバーラップしない発光素子を有するディスプレイ上で、入力信号がディスプレイのためにサンプリングされたときに、エッジに沿った色及び輝度の分布が乱されるおそれがあり、また、Klompenhouwer他によって論じられるような方法は、これらのアーチファクトを克服するのに常に十分というわけではない。その代わりに、図8及び9に記載された方法を用いて、エッジの近くで発生し得るような、1つ又は2つ以上の原色から1つ又は2つ以上の他の原色へのエネルギー移動を平滑化することが必要である。この問題、及び4色系に対する潜在的ないくつかの解決手段は、同時係属中の同一譲受人による、Primerano他の米国特許出願第10/703,748号明細書によって以前に論じられている。この平滑化を実施する好ましい方法を図11に示す。図11に示されているように、この方法は平均化領域を選択する(210)ことを含む。すなわち、混合比の何らかの平滑化を実施するための画素群を選択する。次に、図9においてステップ160〜170を実施して、この選択された群内部の各画素に関して図9に示された共通信号(S)を計算する(212)。次いで、選択された平均化領域内部で、最小及び最大共通信号を見極める(214)。次いで、これらの最小値と最大値とを組み合わせるための加重を選択し(216)、これらの加重を使用して、最小値及び最大値の加重平均を計算する(218)。次いでこの加重平均を、元の共通信号(S)と比較し(220)、そして最小値を選択する(222)。新しい共通信号が選択されたら(222)、図9に示された方法の残りのステップが完了する。なお、共通信号(S)が計算される度に図11のステップが完了する。
【0097】
認識されるべきなのは、図11に示された方法は、関数F2及びF3が共通信号の大部分を正規化信号から第4の信号へシフトするときにはいつでも、大きな価値を有する点である。実際には、より高い画質を保証する別の方法は、元の原色から付加的な原色へ、共通信号(S)の半分以下をシフトする関数F2及びF3を選択することである。関数F2及びF3は静的関数であってよいが、しかし制御信号に応答して変化させることもできる。
【0098】
ここに記載される実施態様の場合、ディスプレイ・システムに加えられる付加的な原色は、赤色、緑色、及び青色素子のうちの1つ以上よりも高効率であることが想定される。この事実は、このOLEDが最大輝度出力を達成するために、赤色、緑色、及び青色OLEDと同じ高さの駆動レベルには駆動されないことを暗示する。OLED材料の寿命は、これらが駆動されるときの電力によって著しく影響されるので、このOLEDディスプレイ・デバイスの寿命が、従来技術のOLEDディスプレイ・デバイスを凌いでかなり改善されることを期待することができる。各OLEDの利用量が異なることも真実である。このような理由から、Arnold他によって米国特許出願公開第2004/0036421号明細書に記載されているように、ディスプレイの寿命を最適化するために、異なるサイズのOLEDを適用することを望むことができる。
【0099】
図7に示された実施態様の場合、異なる色を生成するためにドープされた材料から形成されたOLEDは、著しく異なる輝度安定性を有し得る。すなわち、経時的に発生する輝度出力の変化は、異なる材料に応じて異なる。このことを説明するために、他のOLEDの色度座標よりも、輝度安定性が経時的に最短であるOLEDに接近させて位置決めされた色度座標を有する材料を、付加的な原色に対して採用することができる。この基準に従って付加的なOLEDを位置決めすることにより、最も近いガモット画定OLEDの全使用量が低減され、最も近いガモット画定OLEDの寿命が延びる。この基準を使用し、原色を順序付けし、そしてこの基準に従ってガモットを優先順位付けすると、この方法により4つ以上の原色を有するディスプレイ・デバイスの寿命全体を延ばすことが可能になる。
【0100】
付加的なOLEDが赤色、緑色及び青色OLEDのうちの1つ以上よりも高効率なので、付加的なOLEDを駆動するために必要とされる電流密度又は電力は、同じ色及び輝度を生成する場合に、より低輝度効率のOLEDを駆動するために必要とされる電流密度よりも低いことに注目することが重要である。また、OLEDを形成するために使用される材料の経時的な輝度安定性が、典型的には、材料の経時的な輝度安定性がより高い電流密度への駆動時に著しく劣るような極めて非線形的な関数を介してOLEDを駆動するために使用される電流密度に関連することに注目することも重要である。事実、この関係を説明するために使用される関数は、典型的には電力関数として記述することができる。このような理由から、経時的な輝度安定性を記述する関数が特に急勾配であるような所与の閾値よりも高い電流密度に、任意のOLEDを駆動することは望ましくない。同時に、赤色、緑色及び青色OLEDがこの電流密度に駆動されることを典型的に必要とするような最大ディスプレイ輝度値を達成することが望ましい場合がある。
【0101】
付加的なOLEDを駆動するために必要とされる電流密度が、赤色、緑色及び青色OLEDのうちの1つ以上を駆動するために必要とされる電流密度よりも著しく低いので、この閾値電流密度に達するのは、OLEDのうちの最後のOLEDとなる。従って、画像の色再現(例えば色相)の点では妥協する一方で、3つのOLEDのいずれかの閾値電流密度を上回ることなしに所望の輝度を生成するように、コンベンショナルな3色データ信号をディスプレイにマッピングすることが望ましい場合がある。
【0102】
このことは、いくつかの方法で実施することができる。1つの方法は、この閾値を上回ることになる赤色、緑色及び青色コード値を見極め、ディスプレイが閾値を上回るコート値のいずれかに対応する閾値応答に駆動されるときのディスプレイの輝度を、ディスプレイが所望の輝度に駆動されるときのディスプレイの輝度と比較した場合の差を見極め、そしてこの輝度差を付加的なOLEDの輝度に加えることである。この手段を介して、所望のディスプレイ輝度が、赤色、緑色及び青色OLEDの閾値電流密度を上回ることなしに達成される。しかし、ディスプレイの輝度は、表示される画像の色精度を犠牲にすることによって達成され、また、ここに記載された方法によって、画像内部の高飽和型の明るい色の色精度を低減することがある。この調節を実施する別の方法は、電流密度又は電力駆動限界を上回りそうな色チャネル内部の全ての画像素子に対する色精度を低減することである。
【0103】
我々は画質、電力効率、又はディスプレイ・デバイスの寿命を変えるために図9の関数F2及びF3を効果的に変化させる方法を論じてきたが、これらの関数は実際に、多くの種々異なる望ましい効果を有するために、任意の数の制御信号に応答して変化させることができる。この制御信号は典型的には、使用者の設定値、ディスプレイ・システムの状態、表示されるべき画像内容、ディスプレイ・システムが利用可能な電力、及び/又は周囲照明の測定値に依存することになる。周囲照明が感知されると、ディスプレイ・システムは加えてディスプレイの輝度を調節することにより、適切な周囲照明条件下でディスプレイ視認性を維持することができる。使用者設定値に応じた変換を可能にすることにより、混合比によって影響される画質を、電力効率のために手放す可能性が使用者に与えられる。変換は加えてディスプレイの輝度に依存し得る。ディスプレイ・システムは変換に変化を加えることにより、他の輝度値のために、経時的なより高い電力効率及び/又は輝度安定性を有するOLEDのより高い利用率を可能にする。こうすることにより、過剰の電力又は明るさを要求するか、或いは、ディスプレイ・デバイスの許容できないほどの劣化を引き起こすおそれのある条件を、混合比を調節することにより回避することができる。
【0104】
制御信号を含む本発明の1実施態様が図12に示されている。図12を参照すると、システムは入力デバイス230、プロセッサー332、メモリー234、ディスプレイ・ドライバー236、及びディスプレイ・デバイス238を含む。入力デバイス230は、ジョイスティック、トラックボール、マウス、回転ダイヤル、スイッチ、ボタン、又はグラフィック・ユーザー・インターフェイスを含む任意の伝統的な入力デバイスを含んでよい。入力デバイスを使用することにより、使用者の一連の選択肢に由来する2つ又は3つ以上の選択肢の中から選ぶことができる。プロセッサー232は、本発明のステップを実施するのに必要な論理及び計算ステップを実施することができる任意のデジタル又はアナログの汎用又は特注の制御装置のいずれか又はこれらの制御装置の組み合わせである。プロセッサー232は、所定の用途に適した任意のコンピューター・デバイスであってよく、ディスプレイ・ドライバー236を有する単独の構成部分内に組み込まれても組み込まれなくてもよい。メモリー234は理想的には、使用者の選んだものを記憶するために使用することができる不揮発性の書き込み可能なメモリーを含む。このメモリーは、EPROMS、EEPROMS、メモリーカード、又は磁気又は光学ディスクを含む。
【0105】
ディスプレイ・ドライバー236は、標準3色画像信号を受信し、そしてこの信号を、本発明のディスプレイ・デバイスと適合可能な省電力型又は寿命維持型駆動信号に変換することができる1つ又は2つ以上のアナログ又はデジタルの信号プロセッサー又は制御装置である。ディスプレイ・ドライバー236は、3色信号を4色信号に変換することになる。このディスプレイ・ドライバーは加えて、プロセッサー232からの制御信号235、又は外部源(図示せず)からの制御信号237を受信し、そしてこの制御信号に応答して変換プロセスを調節することができる。制御信号235又は237のいずれか又は両方を採用することができる。プロセッサー232は、例えばディスプレイの経年数、電源の充電状態、ディスプレイ238上に表示されるべき情報の内容、又は周囲照明に関する情報に応じて、制御信号235を供給することができる。或いは、これらの信号は、周囲照明センサー(例えば光センサー)、又はディスプレイの経年数又は電源の充電状態を測定又は記録するデバイスから、外部制御信号237を介して供給することもできる。
【0106】
ディスプレイ・デバイス238は、画素アレイを有する以前に開示されているようなOLEDディスプレイ・デバイスである。各画素は、赤色、緑色及び青色を提供するためのOLEDと、付加的なOLEDとを有しており、付加的なOLEDは、赤色、緑色及び青色OLEDによって形成されたガモット境界を超えて位置し、そして他のガモット画定OLEDのうちの1つ以上よりも高効率である。
【0107】
種々の制御信号源を採用することができる。このような1制御信号は、周囲照明を表す信号によって生成することができる。動作中、ディスプレイ・ドライバー236又はプロセッサー232は、周囲照明中の光レベルを表す信号に対して応答することができる。明るい条件下では、色変換プロセスを調節することにより、元の3原色から付加的な原色へ、共通信号(S)の大部分を変換することができる。薄暗い条件下では、元の3原色から付加的な原色へ、共通信号(S)の僅かな部分を変換するように、混合比を選択することにより、これらの観察条件下でより良好な画質を提供することができる。周囲光照明が増大するにつれて、混合比を徐々に変化させることにより、いかなる変化も観察者には知覚できないようにすることが好ましい。性能全体を最適化するために、混合比を何らかの最大値(又は最小値)に制限することが可能である。特定の周囲照明レベルにおいて望ましい混合比を見極めるために、関数、例えば混合比及び周囲照明に関連する線形関数又は指数関数を提供することも可能である。このような関数は、混合比の変化速度を制限して混合比変化の知覚可能性を低減するために、制限又は減衰定数を有することができる。
【0108】
別の実施態様の場合、混合比の選択を決定付けるために、電源の状態を用いることが可能である。電源が消耗した状態では、電力使用量を低減するために、積極的な省電力手段を採用することができる。この場合、混合比を最大化することができる。電源が完全に充電されると、混合比を低減することができる。前述のように、混合比を徐々に低減することにより、経時的な知覚可能な変化を回避することができる。
【0109】
別の実施態様の場合、ディスプレイ上に示された情報を使用して、混合比を決定付けることが可能である。テキスト成分を有するグラフィック・インターフェイスがディスプレイ上に採用される状況において、混合比を低減することができる。画像がディスプレイ上に示される場合、混合比を増大させることができる。しかし、グラフィック・インターフェイスが特定の位置において長時間にわたってグラフィック要素を使用する傾向を有することも事実であり、場合によっては、これらのディスプレイ位置における発光材料を、他の位置におけるよりも急速に劣化させてしまう。本発明を採用することにより、これらの位置における電流及び電流密度範囲の両方を低減することができる。従って、発光材料の劣化速度及び色差劣化を低減することができる。
【0110】
さらに別の実施態様の場合、ディスプレイの経年数を用いて、混合比を決定付けることが可能である。今日使用される典型的なOLED材料は、最初の使用時に最も急速に劣化する。所定の時間経過後には、劣化速度は低減される。この状況において、本発明を採用してディスプレイ有効期間の開始時に色差老化を低減することにより、OLED素子内の最大電流密度を低減し、そして異なるOLED素子における電流密度の差を低減することが役立つ場合がある。
【0111】
ディスプレイ使用者がユーザー・インターフェイスを介して混合比を直接に制御することも可能である。より考えられるものとしては、使用者によって電力制御メカニズムを採用し、本発明を他の省電力手段、例えばディスプレイの明るさを低減する手段とともに採用することにより、使用者の判断で電力使用量を低減し、又はディスプレイ寿命を改善することができる。この場合、使用者はシステム属性間、例えば電力使用量、ディスプレイ視認性、及び画質の間で折り合いながらバランスをとることができる。
【0112】
本発明を採用する種々の実施態様を本明細書中で説明してきたが、他の用途がディスプレイのための寿命の改善又は電力使用量の低減を必要とし得ることは言うまでもない。従って、本発明の用途は、本明細書に記載された実施態様に限定されることはない。
【0113】
さらに、論じられた実施態様の場合、OLEDの種々異なる幾何学的形状を含む種々異なる画素レイアウトが望ましい場合もある。図13は別の可能な画素レイアウトを示す。図13に示されているように、ディスプレイ・デバイス240は画素242のアレイから成る。前述の実施態様におけるように、画素242は、赤色244、緑色246、青色248、及び付加的な色(例えば黄色)250のOLEDから成る。しかし、この実施態様において、OLEDはより空間対称的であり、ほぼ等しい鉛直方向及び水平方向の寸法を有している。
【0114】
画素内の異なる有色OLEDの多様な分解能を有することが望ましい場合もある。ヒトの視覚系の空間分解能が、色度情報に対してよりも輝度に対して著しく高いことがよく知られている。付加的な(黄色)OLEDは典型的には、他のガモット画定OLEDよりも高い輝度の情報を担持することになるので、他のガモット画定OLEDのいずれかよりも多くの付加的なOLEDを有することが望ましくなる。このような特性を有する画素配列を図14に示す。図14は、画素アレイから成るディスプレイ・デバイス260を示す。各画素262は、赤色264、緑色266、及び青色268のOLEDから成る。加えて、画素は2つの付加的な(例えば黄色)OLED 270及び272を含む。図示のように、付加的なOLEDは、これらのOLEDの間隔を最大限にするために、画素の互いに対向するコーナーに対角線方向に配置されている。さらに、付加的なOLEDを除いて最高輝度を有する赤色及び緑色のOLEDがさらに、画素の互いに対向するコーナーに対角線方向に配置されている。この実施態様において、強度から計算された付加的なOLEDの輝度は、2つの付加的なOLEDの間で等分され、付加的なOLEDのそれぞれに対応するコード値が、計算された輝度値の半分に対応して見極められる。
【0115】
1つのOLEDが他のOLEDよりも高い輝度を担持し、又は高い電力を必要とすることが認識されることもあり、場合によっては、赤色、緑色及び青色のOLEDのうちのいずれかを画素内部の別のOLEDよりも数多く有することが望ましくなる。図15は、画素アレイを有するディスプレイ・デバイス280を示す。画素282は、1つの赤色OLED 284、2つの緑色OLED 286及び288、1つの青色OLED 290、及び2つの黄色OLED 294及び296から成っている。黄色OLED 294及び296、並びに緑色OLED 286及び288の画素構造内部における隔離間隔を最大化することが望ましい。図15に示されているように、このことは、画素の対角線方向に互いに対向するコーナーに、黄色OLED 294及び296のそれぞれを配置することにより達成される。緑色OLED 286及び288も、画素282の対角線方向に互いに対向するコーナーに配置される。前記のように、緑色OLED 286及び288、並びに黄色OLED 294及び296の輝度は、緑色及び黄色のOLEDの強度計算値から導かれた輝度を、画素282内部の緑色及び黄色のOLEDのOLED数で割算することにより計算される。
【0116】
認識すべきなのは、別の色よりも1つの色のOLEDを多く使用する1つの理由は、OLEDディスプレイ・デバイスの知覚鮮鋭度を改善することではあるが、異なる理由から、(OLEDが全て同じ発光領域を有することを想定して)別の色よりも1つの色のOLEDを少なく使用することが望ましい場合もあるという点である。例えば、単に、今日の黄色OLEDを形成するために利用可能であることが知られている材料が、赤色、緑色、又は青色OLEDよりも高い電力効率及び安定性を有し、従ってより長い寿命を有すると思われるという理由から、種々異なる有色OLEDの寿命のバランスをとるために、赤色、緑色、又は青色OLEDよりも少ない付加的なOLEDを利用することを望む場合がある。従って、より高い電流密度で駆動されるより少ない黄色OLEDを有する一方、より低い電流密度で駆動されるより多くの赤色、緑色、又は青色OLEDを提供するOLEDディスプレイ・デバイス上の画素を生成することが望ましい場合がある。
【0117】
さらに認識すべきなのは、ディスプレイ・デバイスにおいて輝度を生成するために典型的に使用される青色又は赤色OLEDの代わりに、シアン又は黄色OLEDを使用する場合、等価の寿命を有するために青色又は赤色OLEDによって必要とされる面積は緑色OLEDよりも小さいと思われる点である。ヒトの目はまた、これらの青色又は赤色OLEDから成る色における空間的な詳細に対してあまり鋭敏でないので、緑色OLEDよりも少ない赤色及び青色OLEDを有するOLEDデバイス上の画素を生成することも望ましい。
【0118】
実施態様のうちの多くのものには、1画素当たり4つの異なる有色OLEDが示されているが、1画素当たり5つ以上の有色OLEDで画素パターンを形成することもできる。図16は、1画素302当たり5つの異なる色のOLEDを有する、本発明によるディスプレイ・デバイス300上の画素パターンを示す。このディスプレイ・デバイスにおける各画素302は例えば、赤色308、緑色306、青色304、黄色312、及びシアン310のOLEDから成ることができる。このようなデバイスの場合、主にシアン310及び黄色312のOLEDを使用して、白色及び白色に近い色の多くを形成することができる。これらの2つの原色が赤色308、緑色306、及び青色304のOLEDのうちの2つよりも高効率である場合、これらのより高効率の原色を使用して、最も頻繁に発生する色を形成し、その結果、電力消費量を有意に低減することができる。
【0119】
このパターンから注目され得るように、輝度均一性を維持するために、シアン310のOLEDを青色304のOLEDの代わりに使用するのが典型的なので、シアン310のOLEDは、青色304のOLEDの近くに配置するのが重要である。同様に、輝度均一性を維持するために、黄色312のOLEDを赤色308のOLEDの代わりに使用するのが極めて一般的なので、黄色312のOLEDと赤色308のOLEDとを互いの傍らに配置することが重要である。均一性をさらに改善するために、黄色312又はシアン310のOLEDのうちの少なくとも一方を、青色304又は赤色308のOLEDよりも、緑色306から遠くに配置することが望ましい場合がある。このことは、図16に示されたパターン内部で黄色/赤色対又はシアン/青色対の一方又は両方を転位することを必要とする。4原色以上を採用する場合には、ディスプレイ均一性に対処するために、選択されたOLED原色のスタック形成、例えば青及びシアンの原色、又は赤及び黄の原色のスタック形成を採用することもできる。米国特許出願公開第2004/0251820号に開示されているように、付加的なパターンを採用することもできる。
【0120】
なお、画素を画定するためにOLEDの種々異なるパターンのいずれかを使用することにより、異なるOLEDの相対的な面積を、寿命を維持するように調節し、これにより、画素内部の異なるOLEDの寿命のバランスをとることができる。また念のために述べておくが、OLEDディスプレイ・デバイスの知覚分解能を向上させるために前述した補間アルゴリズムを、これらのパターンのいずれかにおいて適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】電磁エネルギーに対するヒトの目の感受性を波長の関数として関連させる、明所視光度関数を示すグラフである。
【図2】赤色、緑色及び青色OLEDに対応する座標を示すCIE色度図である。
【図3】色度座標の関数として明所視効率を示すグラフである。
【図4】赤色、緑色、青色及び黄色OLEDに対応する座標を示すCIE色度図である。
【図5】本発明の1実施態様によるOLEDパターンを示す概略図である。
【図6】本発明の1実施態様による一連のOLEDの断面を示す概略図である。
【図7】本発明の別の実施態様による一連のOLEDの断面を示す概略図である。
【図8】飽和の損失なしにコンベンショナルな3色データから4つのOLEDにマッピングするためにコンピューターをプログラミングする際に有用なアルゴリズムを示すフローチャートの区分である。
【図9】飽和の損失なしにコンベンショナルな3色データから4つのOLEDにマッピングするためにコンピューターをプログラミングする際に有用なアルゴリズムを示すフローチャートの区分である。
【図10】典型的なOLEDの輝度出力をコード値の関数として示すグラフである。
【図11】エッジ近傍の空間アーチファクトを低減するように色マッピングを変更するためにコンピューターをプログラミングする際に有用なアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】ディスプレイ・デバイスの性能が制御信号に基づいて変更されるような、本発明のディスプレイ・デバイスを採用するディスプレイ・システムを示す概略図である。
【図13】本発明の別の実施態様による1つの可能な画素パターンを成して配列されたOLEDパターンを示す概略図である。
【図14】本発明のさらに別の実施態様による1つの可能な画素パターンを成して配列されたOLEDパターンを示す概略図である。
【図15】本発明のさらに別の実施態様による1つの可能な画素パターンを成して配列されたOLEDパターンを示す概略図である。
【図16】本発明のさらに別の実施態様による1つの可能な画素パターンを成して配列されたOLEDパターンを示す概略図である。
【符号の説明】
【0122】
2 明所視感受性曲線
4 青色ピーク波長
6 緑色ピーク波長
8 赤色ピーク波長
12 赤色OLEDの色度座標
14 緑色OLEDの色度座標
16 青色OLEDの色度座標
18 色ガモット
20 最高効率点
22 青色スペクトル点
24 赤色スペクトル点
30 赤色OLEDの色度座標
32 緑色OLEDの色度座標
34 青色OLEDの色度座標
36 黄色OLEDの色度座標
40 三角形
50 ディスプレイ・デバイス
52 画素
54 赤色OLED
56 緑色OLED
58 青色OLED
60 黄色OLED
72 画素
76 基板
78 赤色カラーフィルター
80 緑色カラーフィルター
82 青色カラーフィルター
84 黄色カラーフィルター
86 透明アノード
88 正孔注入層
90 正孔輸送層
92 発光層
94 電子輸送層
96 カソード
100 透明基板
102 アノード
104 正孔注入層
106 正孔輸送層
108 発光層
110 電子輸送層
112 カソード
114 赤色OLED材料スタック
116 緑色OLED材料スタック
118 青色OLED材料スタック
120 黄色OLED材料スタック
122 原色効率の入力ステップ
124 原色ランク付けステップ
126 サブガモットの見極めステップ
128 平均効率の計算ステップ
130 サブガモットの優先順位付けステップ
132 原色の色度座標の入力ステップ
134 燐光体マトリックスの計算ステップ
136 原色の配列ステップ
138 隣接サブガモットの見極めステップ
140 残りの原色の強度計算ステップ
142 比計算ステップ
144 決定ルールの構成ステップ
146 強度及び比の計算ステップ
148 XYZ値の入力ステップ
150 有用なガモットの見極めステップ
152 最低優先順位ガモットの選択ステップ
154 付加的な原色の見極めステップ
156 混合比の入力ステップ
158 色変換ステップ
160 XYZ値の入力ステップ
162 最低優先順位ガモットのための燐光体マトリックスの入力ステップ
164 強度の計算ステップ
166 残りの原色のうちの最低効率原色の選択ステップ
168 強度の正規化ステップ
170 信号Sの計算ステップ
172 F2(S)の計算ステップ
174 F3(S)の計算ステップ
176 加算ステップ
178 正規化出力信号
180 白点に対する正規化ステップ
182 決定ステップ
184 完了ステップ
186 原色の取りのけステップ
200 屈曲部
210 平均化領域の選択ステップ
212 共通信号(S)の計算ステップ
214 最小及び最大色信号の見極めステップ
216 加重の選択ステップ
218 加重平均の計算ステップ
220 加重平均と共通信号との比較ステップ
222 より小さな値の選択ステップ
230 入力デバイス
232 プロセッサー
234 メモリー
235 制御信号
236 ディスプレイ・ドライバー
237 制御信号
238 ディスプレイ・デバイス
240 ディスプレイ・デバイス
242 画素
244 赤色OLED
246 緑色OLED
248 青色OLED
250 付加的なOLED
260 ディスプレイ・デバイス
262 画素
264 赤色OLED
266 緑色OLED
268 青色OLED
270 付加的なOLED
272 付加的なOLED
280 ディスプレイ・デバイス
282 画素
284 赤色OLED
286 緑色OLED
288 緑色OLED
290 青色OLED
294 黄色OLED
296 黄色OLED
300 ディスプレイ・デバイス
302 画素
304 青色OLED
306 緑色OLED
308 赤色OLED
310 シアンOLED
312 黄色OLED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーOLEDディスプレイ・デバイスであって、
発光画素アレイと、OLEDを駆動信号で選択的に駆動する手段とを含み;
a)該発光画素アレイの各画素が、赤色、緑色及び青色のOLEDと、該赤色、緑色及び青色のOLEDによって画定されたガモットに対して該ディスプレイ・デバイスのガモットを拡張する1つ以上の付加的な有色OLEDとを有しており、該付加的なOLEDの輝度効率又は経時輝度安定性が、該赤色、緑色及び青色のOLEDのうちの少なくとも1つの輝度効率又は経時輝度安定性よりも高く;そして、
b)該OLEDを駆動信号で選択的に駆動する手段により、ディスプレイ色精度を維持しつつ、電力使用量全体を低減し、又は該ディスプレイの寿命を延ばす、
カラーOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項2】
該OLED駆動手段が結果として、低減された電力使用量で所与の色及び輝度を生成するように駆動信号をもたらす、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項3】
該駆動手段が、低減された電力使用量を可能にするように、各OLEDの輝度効率を考慮する、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項4】
該OLED駆動手段が結果として、改善された寿命で所与の色及び輝度を生成するように駆動信号をもたらす、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項5】
該駆動手段が、改善された寿命を可能にするように、各OLEDの輝度効率を考慮する、請求項4に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項6】
該駆動手段が、改善された寿命を可能にするように、各OLEDを形成するのに使用された材料の経時輝度安定性を考慮する、請求項4に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項7】
該駆動信号が制御信号に依存する、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項8】
該制御信号が、抵抗、電圧、電流、温度、周囲照明、ディスプレイ輝度、及び/又はシーン内容を含む集合のうちの1つ又は2つ以上とを関数として変化させる、請求項7に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項9】
該駆動手段が、色の異なる2つのOLEDの間の一定の輝度値比を生成すると同時に、OLED全ての組み合わせによって生成された統合色が一定の色度座標を有する、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項10】
該駆動手段が、色の異なる2つのOLEDの間の可変の輝度値比を生成すると同時に、OLED全ての組み合わせによって生成された統合色が一定の色度座標を有する、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項11】
該OLED駆動手段が、3色入力信号を、各画素内の異なる色発光OLEDの数に等しい4つ又は5つ以上の色信号に変換する手段を提供する、請求項1に記載のディスプレイ・デバイス。
【請求項12】
該付加的なOLEDのうちの1つ又は2つ以上の色がシアンである、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項13】
該付加的なOLEDのうちの1つ又は2つ以上の色が黄色である、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項14】
該OLEDのうちの1つ又は2つ以上が、該OLEDを形成するために異なる色を発光する異なる発光材料をパターニングすることにより形成される、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項15】
該OLEDのうちの1つ又は2つ以上が、白色発光材料をパターニングすることにより形成される、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項16】
該OLEDのうちの1つ又は2つ以上の色が、カラーフィルターを使用して生成される、請求項15に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項17】
該OLEDのうちの1つ又は2つ以上の色が、マイクロキャビティ構造を使用して生成される、請求項15に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項18】
該OLEDが種々異なるサイズを有している、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項19】
該付加的なOLEDが、該赤色、緑色、又は青色OLEDのうちの1つ以上よりも大きい、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項20】
該OLEDディスプレイ・デバイスが上側発光型OLEDデバイスである、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項21】
該OLEDディスプレイ・デバイスが下側発光型OLEDデバイスである、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項22】
該OLEDディスプレイ・デバイスがアクティブ・マトリックス・デバイスである、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項23】
該OLEDディスプレイ・デバイスがパッシブ・マトリックス・デバイスである、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項24】
各画素内に所望の色を生成するための電力消費量を最低にする、各画素内の3つのOLEDの組み合わせを選択することにより、該駆動手段が、電力使用量を最低限に低減する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項25】
該駆動手段が、該付加的なOLEDからの光と、最低輝度効率を有する2つのOLEDのうちの1つ以下からの光との組み合わせを用いて、白色に近い色を生成する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項26】
最低輝度効率を有する2つのOLEDが赤色OLED及び青色OLEDである、請求項25に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項27】
該赤色、緑色及び青色のOLEDによって画定されたガモットに対して該ガモットを拡張する2つ又は3つ以上の付加的なOLEDを有し、該付加的なOLEDのうちの1つ又は2つ以上がシアン光を発し、そして該付加的なOLEDのうちの1つ又は2つ以上が黄色光を発する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項28】
赤色OLEDと黄色OLEDとが互いに隣り合って位置決めされる、請求項27に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項29】
青色OLEDとシアンOLEDとが互いに隣り合って位置決めされる、請求項27に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項30】
緑色OLEDが黄色OLEDとシアンOLEDとの間に位置決めされる、請求項27に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項31】
該駆動手段がさらに、ディスプレイ寿命のために電力使用量を妥協する手段を含む、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項32】
該駆動手段が、リアルタイムでの計算によって、RGB信号からデバイス駆動信号への変換を実施する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項33】
該駆動手段が、ルックアップ・テーブルを参照することによって、RGB信号からデバイス駆動信号への変換を実施する、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項34】
各画素が、同じ色の光を放つために2つ又は3つ以上のOLEDを含む、請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項35】
各画素内で該同じ色を発光する該2つ又は3つ以上のOLEDが、該赤色、緑色及び青色のOLEDによって画定されたガモットに対して該ディスプレイ・デバイスのガモットを拡張する付加的な有色OLEDである、請求項34に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項36】
各画素内で該同じ色を発光する該2つ又は3つ以上のOLEDが、該赤色、緑色及び青色のOLEDのうちの1つ又は2つ以上である、請求項34に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項37】
赤色又は青色発光OLEDよりも多くの緑色発光OLEDが各画素内にある、請求項34に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項38】
青色発光OLEDよりも多くの赤色発光OLEDが各画素内にある、請求項34に記載のOLEDディスプレイ・デバイス。
【請求項39】
請求項1に記載のOLEDディスプレイ・デバイスの電力使用量を低減する方法であって:
画素内部の異なる色の任意の3つのOLEDの組み合わせによって画定することができる全ての可能なサブガモットを、平均効率に従って優先順位付けし;
各所望の色を形成するために使用することができる最低優先順位のサブガモットを画定する、各画素の該3つのOLEDに必要とされる強度を計算し;
該最低優先順位のサブガモットを形成しない、任意の残りのより高効率のOLEDを、該最低優先順位のサブガモットを形成するOLEDの組み合わせに逐次加え、そして、該加えられたOLEDと、各所望の色を形成するために使用することができる付加的なサブガモットを画定するOLEDのうちの他の2つとの組み合わせに必要とされる強度を計算し;そして、
ディスプレイ色精度を維持しつつ、電力使用量全体を低減するように、各画素内の該OLEDを駆動信号で選択的に駆動する、
ステップを含む、OLEDディスプレイ・デバイスの電力使用量を低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−531062(P2007−531062A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506446(P2007−506446)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010415
【国際公開番号】WO2005/096257
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】