説明

電力増幅器

【課題】本発明は、高出力時及び低出力時において効率を向上させるためにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを可変としつつ、通過位相及び入力反射を一定に保つことができる電力増幅器を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明にかかる電力増幅器は、入力整合回路を経由した入力信号を増幅する増幅用トランジスタと、該増幅用トランジスタのコレクタ電圧を変化させる手段と、該増幅用トランジスタのアイドル電流を変化させるバイアス回路と、該増幅用トランジスタの出力電力の変化による効率の悪化を抑制するように該コレクタ電圧とアイドル電流を変化させる前後で、通過位相と入力反射を一定に保つように該入力整合回路の容量の値を変化させる補償回路と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅用トランジスタのコレクタ電圧とアイドル電流を変化させる電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、増幅用トランジスタ(高周波トランジスタ)のコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icq(以後、増幅用トランジスタのコレクタ電圧Vc又はアイドル電流Icqを単にコレクタ電圧Vc又はアイドル電流Icqという)を増幅用トランジスタの出力電力に応じて変化させる電力増幅器が開示されている。この電力増幅器は、出力電力が高いときはコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを高くし、出力電力が低いときはコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを低くすることで、出力電力が低い場合にも効率を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−274433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力増幅器をW−CDMA方式に適合させるためには、電力増幅器の信号の通過位相が出力電力に関わらず一定であることが求められる。また、電力増幅器の入力反射の劣化を抑制するためには、電力増幅器の入力反射は出力電力に関わらず最適な値を保つことが求められる。
【0005】
ところが、特許文献1の場合のようにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを変化させると増幅用トランジスタのSパラメータが変化し、その変化の前後で通過位相及び入力反射が変化してしまう。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、高出力時及び低出力時において効率を向上させるためにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを可変としつつ、通過位相及び入力反射を一定に保つことができる電力増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明にかかる電力増幅器は、入力整合回路を経由した入力信号を増幅する増幅用トランジスタと、該増幅用トランジスタのコレクタ電圧を変化させる手段と、該増幅用トランジスタのアイドル電流を変化させるバイアス回路と、該増幅用トランジスタの出力電力の変化による効率の悪化を抑制するように該コレクタ電圧とアイドル電流を変化させる前後で、通過位相と入力反射を一定に保つように該入力整合回路の容量の値を変化させる補償回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力増幅器の効率を向上させるためにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを可変としつつ、通過位相及び入力反射を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電力増幅器を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るバイアス回路を示す図である。
【図3】高出力時及び低出力時における電力増幅器の効率などを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電力増幅器がコレクタ電圧とアイドル電流の変化の前後で通過位相と入力反射を一定に保つことを示す図である。
【図5】増幅用トランジスタのベース端から増幅用トランジスタ側を見込んだインピーダンスを示すスミスチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態6に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態7に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態7に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態8に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電力増幅器を示す図である。電力増幅器10は電力増幅器10の入力端子INと出力端子OUTを備えている。入力端子INには入力整合回路12の一端が接続されている。入力整合回路12の他端には容量C1を介して増幅用トランジスタTr1のベースが接続されている。増幅用トランジスタTr1はヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)である。増幅用トランジスタTr1のコレクタには所定の電気長を有する線路L11を介してコレクタ電圧端子Vc1及び容量Cd1が接続されている。
【0011】
増幅用トランジスタTr1のコレクタにはさらに段間整合回路14の一端が接続されている。段間整合回路14の他端には増幅用トランジスタTr2のベースが接続されている。増幅用トランジスタTr2はHBTで構成されている。増幅用トランジスタTr2のコレクタには所定の電気長を有する線路L23を介してコレクタ電圧端子Vc2及び容量Cd2が接続されている。増幅用トランジスタTr2のコレクタにはさらに出力整合回路16の一端が接続されている。出力整合回路16の他端は出力端子OUTと接続されている。ここで、コレクタ電圧端子Vc1及びVc2は電力増幅器10の外部のDC−DCコンバータにより制御される。
【0012】
増幅用トランジスタTr1のベースにはバイアス回路18が接続されている。増幅用トランジスタTr2のベースにはバイアス回路20が接続されている。バイアス回路18及び20はそれぞれ増幅用トランジスタTr1及びTr2のアイドル電流を制御するものである。バイアス回路18及び20は、基準電圧端子Vref、電源電圧端子Vcb、及びバイアス回路の制御信号端子Vmode1と接続されている。ここで、図2を参照してバイアス回路18及び20の構成を説明する。図2は本発明の実施の形態1に係るバイアス回路を示す図である。バイアス回路18及び20は制御信号端子Vmode1のオンオフによりトランジスタFb1のオンオフを切り替えるように構成される。トランジスタFb1をオンにするとVrefの電力はトランジスタFb1を経由して供給され、トランジスタFb1をオフにするとVrefの電力は抵抗Rbb7を経由して供給される。
【0013】
図1の説明に戻る。入力整合回路12の他端には補償回路22が接続されている。補償回路22は、トランジスタFc1、抵抗Rc1及びrc2、並びに容量Cc1(シャント容量)を備えている。トランジスタFc1のソースは入力整合回路12の他端と接続され、ドレインは容量Cc1に接続されている。ソースとドレインをつなぐように抵抗Rc2が接続されている。トランジスタFc1のゲートは抵抗Rc1を介して制御信号端子Vmode2に接続されている。容量Cc1はドレインと接地端の間に接続されている。
【0014】
次に、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10の動作について説明する。電力増幅器10は高出力(たとえば26〜29dBm程度)で動作する場合(高出力時という)と低出力(たとえば10dBm以下)で動作する場合(低出力時という)がある。図3は高出力時及び低出力時における電力増幅器の効率などを示す図である。まず、高出力時について説明する。高出力時は制御信号端子Vmode1をHighとし、バイアス回路18及び20のトランジスタFb1をオンとする。トランジスタFb1がオンとなると抵抗Rbb7に電流が流れず、基準電圧端子Vrefの電圧の電圧降下がほとんどない。よって、増幅用トランジスタTr1及びTr2のアイドル電流Icqが増大する。また増幅用トランジスタTr1及びTr2のコレクタ電圧Vcも高い値とする。
【0015】
高出力時には制御信号端子Vmode2の電圧をLowとする。そうすると補償回路22のトランジスタFc1はオフ(非動作状態)となり、容量Cc1は入力整合回路12から切り離される。
【0016】
一方、低出力時には制御信号端子Vmode1をLowとし、バイアス回路18及び20のトランジスタFb1をオフとする。トランジスタFb1がオフとなると抵抗Rbb7に電流が流れ、基準電圧端子Vrefの電圧の電圧降下が起こる。そのため、増幅用トランジスタTr1及びTr2のアイドル電流Icqが低下する。また増幅用トランジスタTr1及びTr2のコレクタ電圧Vcも低い値とする。
【0017】
低出力時には制御信号端子Vmode2の電圧をHighとする。そうすると補償回路22のトランジスタFc1はオン(動作状態)となり、容量Cc1は入力整合回路12に付加される。このように補償回路22はコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqの制御に同期して動作する。
【0018】
ところで、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10は高出力時に歪特性や効率が最適となるように設計されている。そして、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10は、低出力時における歪特性や効率が悪化しないように、高出力時のVc及びIcqと比べて、低出力時のVc及びIcqを低くする。これにより、高出力時のみならず低出力時においても電力増幅器10の歪特性や効率を高めることができる。なお、図3の破線は高出力時のVc及びIcqを低出力時にも利用した場合の効率を示す。この破線の場合には低出力時の効率は低いが、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10では低出力時に実線に示すとおり効率を高めることができる。具体的には、出力電力7dBmでの効率を2%程度から7%程度まで高めることができる(図3の白矢印に示す)。
【0019】
このように高出力時と低出力時でVcとIcqを変化させると、電力増幅器の信号の通過位相が高出力時と低出力時で数十度変化することになる。具体的には、低出力時の方が高出力時より通過位相が数十度大きくなる。この場合、たとえば電力増幅器の信号の通過位相が出力電力に関わらず一定であることが求められるW−CDMA方式に適合させることができない。
【0020】
また、高出力時と低出力時でVcとIcqを変化させると、増幅用トランジスタTr1又はTr2のベース端から増幅用トランジスタTr1又はTr2を見込んだインピーダンスが変化する。電力増幅器の入力反射は高出力時に最適化されているため、このインピーダンスの変化に伴い、低出力時では入力反射が劣化する。
【0021】
ところが、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10によれば 効率を向上させるためにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを可変としつつ、通過位相及び入力反射を一定に保つことができる。このことについて図4を参照して説明する。図4は本発明の実施の形態1に係る電力増幅器がコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqの変化の前後で通過位相と入力反射を一定に保つことを示す図である。この効果は低出力時にVmode2をHighとして、入力整合回路12に容量Cc1を付加することにより得られるものである。なお、図4の破線は補償回路22がない場合の通過位相と入力反射を示す。
【0022】
図5は増幅用トランジスタTr1のベース端から増幅用トランジスタTr1側を見込んだインピーダンスを示すスミスチャートである。補償回路22がない場合の低出力時におけるインピーダンス(P1)は高出力時のインピーダンス(P2)と相違する。しかし補償回路22により入力整合回路12に容量Cc1を付加すると、図5において矢印で示すようにP1をP2へ近づけることができる。
【0023】
以上より、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10によれば、低出力時の効率を向上させるためにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを可変としつつ、通過位相及び入力反射を一定に保つことができる。
【0024】
高出力時と低出力時において効率を高くするためには、増幅用トランジスタのコレクタ電圧Vcを変化させる手段と、増幅用トランジスタのアイドル電流Icqを変化させるバイアス回路を有していればよい。よって、コレクタ電圧Vcを変化させる手段とバイアス回路の構成は上述の構成に限定されない。
【0025】
また、増幅用トランジスタの出力電力の変化による効率の悪化を抑制するようにコレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを変化させる前後で、通過位相と入力反射を一定に保つためには、「入力整合回路12の容量の値を変化させる補償回路」を備えればよい。よって補償回路の構成は、容量を付加又は切り離しするものに限定されない。
【0026】
また、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器10は、高出力時に歪特性や効率が最適となるように設計されたが本発明はこれに限定されない。電力増幅器10は低出力時に歪特性や効率が最適となるように設計されていても、上述と同様に効率を高め、かつ通過位相と入力反射を一定に保つことができる。
【0027】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0028】
補償回路30では、容量Cc1に対し直列に抵抗Rc3が接続されている。この補償回路30では、トランジスタFc1がオンしたときに抵抗Rc3で電力損失が発生するため、電力増幅器10としての利得が減少する。したがって、抵抗Rc3を任意の値に設定することにより、トランジスタFc1がオンの場合の利得を調整することができる。
【0029】
図7は本発明の実施の形態2に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。補償回路32は図6の補償回路30の抵抗Rc3を、抵抗Rc4及びダイオードDc1で構成される可変抵抗に置き換えて、接地端側へ移動したことを特徴とする。すなわち、抵抗Rc4から電圧を印加しダイオードDc1の順方向バイアス電圧を制御することにより、ダイオードDc1を可変抵抗として動作させることができる。したがって、利得減少量を電気的かつアナログ的に制御し、電力増幅器の利得をアナログ的に制御できる。なお、その他の可変抵抗を用いてもよい。
【0030】
図8は本発明の実施の形態2に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。補償回路34は図6の補償回路30の抵抗Rc3を、半導体層を用いた抵抗Rc5で形成したことを特徴とする。半導体層を用いた抵抗Rc5における半導体層とは例えばベース層であるが特に限定されない。半導体層を用いた抵抗Rc5の抵抗値は温度により変化(例えばベース層を用いた抵抗の場合は温度の上昇により抵抗値が増大する)するので、利得減少量を温度によって変えることができる。
【0031】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0032】
補償回路40における容量は、抵抗Rc6、ダイオードDc2、及び容量Cc2からなる可変容量で形成されている。すなわち、補償回路40では、本発明の実施の形態1に係る補償回路22の容量Cc1が抵抗Rc6、ダイオードDc2、及び容量Cc2からなる可変容量で置き換えられている。
【0033】
この可変容量は、抵抗Rc6から印加する電圧によりダイオードDc2の逆バイアス電圧を制御して容量値を可変にするものである。つまり、Rc6から印加する電圧により通過位相と入力反射の補償量を可変にすることができる。例えば、製造ばらつき等により、コレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqの変化の前後において補償すべき通過位相と入力反射の量の変動が生じた場合に、当該補償量を電気的に調整することが可能である。なお、容量Cc2はダイオードDc2のアノード側に電圧を印加するためのDCカットの役割を果たしている。
【0034】
実施の形態4.
図10は本発明の実施の形態4に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0035】
補償回路50は、補償回路を2系統配置したことを特徴とする。すなわち、補償回路50は独立して制御できる2つの容量Cc1AとCc2Aを備えている。容量Cc1Aを制御するのは抵抗Rc1AとトランジスタFc1Aである。容量Cc1Bを制御するのは抵抗Rc1BとトランジスタFc1Bである。補償回路50によれば、容量Cc1Aのみをオンとする場合、容量Cc1Bのみをオンとする場合、又は容量Cc1A及びCc1Bをオンとする場合という風に3種類の補償量を実現できる。
【0036】
図11は本発明の実施の形態4に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。補償回路52は、補償回路を2系統配置し2つの容量Cc1AとCc1BはそれぞれボンディングパッドPc1AとPc1Bに接続されている。また、補償回路52は接地されたボンディングパッドPc2(接地端子)も有している。補償回路52の構成によれば、ワイヤボンディングパッドPc2を、ワイヤボンディングパッド(Pc1A、Pc1B)のいずれか又は両方にワイヤボンディングするかを選択し、複数の補償量を設定できる。また、複数の補償量を設定するための制御信号は本発明の実施の形態1に係る電力増幅器と同様に1つでよい。
【0037】
実施の形態5.
図12は本発明の実施の形態5に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0038】
補償回路60は、容量Cc3に直列にインダクタLc1が接続されたことを特徴とする。補償回路60によれば、トランジスタFc1がオンしたときにインダクタLc1が動作するので、本発明の実施の形態1に係る電力増幅器とは通過位相及び入力インピーダンスの補償の方向を逆にすることができる。
【0039】
実施の形態6.
図13は本発明の実施の形態6に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0040】
補償回路70は、減衰器ATTを備えたことを特徴とする。減衰器ATTはトランジスタFc2、抵抗Rc7、及び抵抗Rc8で構成されている。補償回路70によれば、トランジスタFc1がオンのときにトランジスタFc2をオフさせ、トランジスタFc1がオフのときにトランジスタFc2をオンさせて、容量Cc1が動作する際にRF信号(入力信号)を減衰させることができる。つまり、通過位相と入力反射を補償すると同時に、利得を任意の値に設定することができる。なお、減衰器ATTの減衰量は、抵抗Rc8により任意の値に設定できる。
【0041】
実施の形態7.
図14は本発明の実施の形態7に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0042】
補償回路80は、電界効果トランジスタ(FET)を用いずに、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)プロセスで製作可能な第1ダイオードDc3及び第2ダイオードDc4を用いて構成されている。第1ダイオードDc3と第2ダイオードDc4の間に接続された抵抗Rc9に第1ダイオードDc3の閾値以上の電圧を印加した場合、第2ダイオードDc4がオンし、第1ダイオードDc3は逆バイアスされて容量として動作する。このように、補償回路80ではFETではなく第2ダイオードDc4がスイッチの役割を果たしている。ここで、抵抗Rc9及びRc10は第1ダイオードDc3及び第2ダイオードDc4にバイアスを印加するための抵抗であるが、RF動作に影響を与えないような十分高い抵抗値にすることが望ましい。
【0043】
本発明の実施の形態7に係る補償回路80は、FETを用いることなく、HBTプロセスで製作可能なダイオードDc3とDc4を用いている。従って、安価に製造することができる。また、FETの製造ばらつきによる特性変動(補償量や利得の変動)も回避できる。
【0044】
図15は本発明の実施の形態7に係る電力増幅器の補償回路の変形例を示す図である。補償回路90は、ダイオードDc5及びDc6が並列接続されているため、補償回路80の場合と比較してスイッチを構成するダイオードが2倍になるので耐電力をおよそ4倍大きくすることができる。なお、容量Cc4はDCカットのための容量であり、実施の形態1に係る補償回路22の容量Cc1に相当するのは容量Cc5である。また、抵抗Rc11とRc12はダイオードDc5とDc6にバイアスを印加するための抵抗であるので、RF動作に影響を与えないように十分高い抵抗値に設定することが望ましい。
【0045】
実施の形態8.
図16は本発明の実施の形態8に係る電力増幅器の補償回路を示す図である。補償回路以外の部分は本発明の実施の形態1と同様である。
【0046】
補償回路100は、容量Cc1の付加又は切り離しに用いるFETであるトランジスタFc1のゲート−ドレイン間に容量Cc6を付加したことを特徴とする。容量Cc6によりトランジスタFc1の耐電力が向上するため、コレクタ電圧Vcとアイドル電流Icqを切り替える電力が比較的高い場合でも、トランジスタの段数を増やさないですむ。つまり、MMICのチップ面積の増加を最小限に抑えることができる。
【0047】
なお、図13乃至16では、各補償回路を左右に貫く配線が図1の入力整合回路12と容量C1の間の配線を構成するものである。
【符号の説明】
【0048】
10 電力増幅器、 12 入力整合回路、 14 段間整合回路、 16 出力整合回路、 18,20 バイアス回路、 22 補償回路、 Tr1,Tr2 増幅用トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力整合回路を経由した入力信号を増幅する増幅用トランジスタと、
前記増幅用トランジスタのコレクタ電圧を変化させる手段と、
前記増幅用トランジスタのアイドル電流を変化させるバイアス回路と、
前記増幅用トランジスタの出力電力の変化による効率の悪化を抑制するように前記コレクタ電圧とアイドル電流を変化させる前後で、通過位相と入力反射を一定に保つように前記入力整合回路の容量の値を変化させる補償回路と、を備えたことを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
前記容量に直列に接続された抵抗を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
前記抵抗は可変抵抗であることを特徴とする請求項2に記載の電力増幅器。
【請求項4】
前記抵抗は半導体層を用いた抵抗であることを特徴とする請求項2に記載の電力増幅器。
【請求項5】
前記容量は可変容量であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力増幅器。
【請求項6】
前記容量は独立して制御できる2つの容量であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力増幅器。
【請求項7】
前記2つの容量にそれぞれ接続された2つのワイヤボンディングパッドと、
接地端子と、を備え、
前記接地端子は、前記2つのワイヤボンディングパッドのいずれか又は両方にワイヤボンディングされたことを特徴とする請求項6に記載の電力増幅器。
【請求項8】
前記容量に直列に接続されたインダクタを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項9】
前記入力信号を減衰させる減衰器を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項10】
前記容量は、逆バイアスできるように構成された第1ダイオードであり、
前記補償回路は、前記第1ダイオードを前記入力整合回路に対し付加又は切り離しする第2ダイオードを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項11】
前記補償回路は、前記入力整合回路に対し付加又は切り離しする2つのダイオードを備え
前記容量の値を変化させるのは前記2つのダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項12】
前記補償回路は、前記入力整合回路に対し容量を付加又は切り離しするFETと、前記FETのゲート−ドレイン間に接続された容量と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−129592(P2012−129592A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276654(P2010−276654)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】