説明

電力変換装置のリアクトル配置構造

【課題】ソレノイドからなる複数のリアクトルの磁気結合の差異を緩和して安定した電力制御を行なうことができる電力変換装置のリアクトル配置構造を提供する。
【解決手段】三相交流回路の各相に接続されているリアクトル17,18,19の各々を、コイル41を巻きつけた開磁路のソレノイド42で構成し、各相のリアクトル(ソレノイド)17,18,19を、互いの軸線を同一方向に向け、所定直径Dの円周上に相順に等間隔となるように離間配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置のリアクトル配置構造に係り、例えば多相交流回路に使用されている複数のリアクトルの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多相交流回路として、例えば、特許文献1に記載した無停電電源装置が知られている。
この無停電電源装置は、図6に示すように、三相交流入力を、電圧または周波数の異なる別の三相交流に変換する装置であり、符号1は交流電源、符号2〜15はIGBTなどの半導体スイッチ、符号16A,16Bは直流コンデンサ、符号17〜23はリアクトル、符号24〜29はフィルタコンデンサである。
【0003】
半導体スイッチ2〜7、直流コンデンサ16A,16B、リアクトル17〜19、フィルタコンデンサ24〜26は順変換器を構成しており、交流電源1の電力を、半導体スイッチ2〜7の高周波スイッチングにより直流に変換して直流コンデンサ16A,16Bに蓄積する動作を行う。また、直流コンデンサ16A,16B、半導体スイッチ8〜13、リアクトル20〜22、フィルタコンデンサ27〜29は逆変換器(インバータ)を構成しており、直流コンデンサ16A,16Bを直流電源として、半導体スイッチ8〜13の高周波スイッチングによりフィルタコンデンサ27〜29に波形歪みの小さな交流電圧を発生させ、図示しない負荷に交流電力を供給する動作を行う。
【0004】
ところで、上記装置の交流電源1のR相、S相、T相に直列に接続している交流用のリアクトル17〜19、或いは負荷のU相、V相、W相に直列に接続している交流用のリアクトル20〜22は、所望のインダクタンスを得るためにリアクトル体積を小さく抑えることができる閉磁路のUI型コア、EI型コア等からな閉磁路のリアクトルが多く採用されている。
【0005】
一方、上記閉磁路のリアクトルとは別のリアクトル形態として、図7に示すように、棒状コア30にコイル31を巻き付けた構成とした開磁路のソレノイド32がある。このソレノイド32の棒状コア30は、磁性体、或いは非磁性体であるが、棒状コアを使用しない空芯の開磁路のソレノイド32もある。
このソレノイド32からなる開磁路のリアクトルは、閉磁路のリアクトルと比較して、コイル起磁力に対する発生磁束が小さくなり、所望のインダクタンスを得るためにリアクトル体積が大きくなってしまう。
【0006】
しかし、ソレノイド32は、UI型コア、EI型コア等のリアクトルと比較してコイル31の実装が容易となって安価に製造することができるので、交流用のリアクトル17〜22に採用すると、装置製造コストの低減化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−22094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成のソレノイド32を、図6の交流用のリアクトル17〜22として採用すると、各ソレノイド32の互いの磁気結合の差異を無視することができない。
すなわち、所定の相のソレノイド32のコイル31と他の相のソレノイド32のコイル31とに差異が生じると、三相の回路が不平衡になって各相のリアクトルを流れる交流電流に歪みが発生したり、振幅や位相がばらついてしまい、負荷に安定した電力制御を行なうことができなくなる場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、製造コストの低減化を図ることができるソレノイドを複数のリアクトルとして採用しても、各リアクトルの磁気結合の差異を緩和して安定した電力制御を行なうことができる電力変換装置のリアクトル配置構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置のリアクトル配置構造は、電力変換装置に使用される複数のリアクトルの配置構造であって、複数のリアクトルの各々を、コイルを巻きつけた開磁路のソレノイドで構成し、これら複数のソレノイドの間の相互インダクタンスが実質的に均一となるように、当該複数のソレノイドを配置した。
この発明によると、複数のリアクトルがコイルを巻きつけた開磁路のソレノイドで構成されており、コイルの実装が容易となって安価に製造することができる。そして、複数のソレノイドは、各ソレノイド間の相互インダクタンスが実質的に均一となるように配置され、各相のソレノイドの磁気結合の差異を緩和しているので、各相を流れる電流が不平衡になるのが抑制される。
【0011】
また、本発明に係る電力変換装置のリアクトル配置構造は、前記複数のソレノイドは電源の相数に等しい本数であり、各ソレノイドは、前記コイルの巻線数、コイル直径などの形状を同一としたものであり、前記複数のソレノイドを、互いの軸線を同一方向に向け、所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置した。
この発明によると、電力変換装置の相数に等しい本数のソレノイドは、それぞれがコイルの巻線数、コイル直径などの形状を同一としたものであり、互いの軸線を同一方向に向け、所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置しているので、各ソレノイド間の相互インダクタンスが実質的に均一となる。
【0012】
また、本発明に係る電力変換装置のリアクトル配置構造は、前記複数のソレノイドが、電源の各相に少なくとも2本の前記ソレノイドを直列、或いは並列に接続した電源の相数の倍数の本数であり、各ソレノイドは、前記コイルの巻線数、コイル直径などの形状を同一としたものであり、各相の直列、或いは並列に接続された複数のソレノイドのうちの所定のソレノイド同士を選択して第1ソレノイド群とし、これら第1ソレノイド群を、互いの軸線を同一方向に向け、所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置し、各相の複数のソレノイドのうちの前記所定のソレノイドと異なる他のソレノイドを選択して第2ソレノイド群とし、これら第2ソレノイド群を、前記第1ソレノイド群を配置した位置に対して軸方向に離間した位置であって、前記第1ソレノイド群と同一方向に軸線を向け、前記第1ソレノイド群と同一の所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置した。
【0013】
この発明によると、各ソレノイドが、コイルの巻線数、コイル直径などの形状を同一としたものであり、電源の各相に直列、或いは並列に接続したソレノイドの第1ソレノイド群及び第2ソレノイド群が、それぞれ同一方向に軸線を向け、所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置されているので、各ソレノイド間の相互インダクタンスが実質的に均一となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電力変換装置のリアクトル配置構造によれば、複数のリアクトルはコイルを巻きつけた開磁路のソレノイドで構成されており、コイルの実装が容易となって安価に製造することができるので、電力変換装置の製造コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る複数のソレノイドは、各ソレノイド間の相互インダクタンスが実質的に均一となるように配置され、各相のソレノイドの磁気結合の差異を緩和しているので、各相を流れる電流が不平衡になるのを抑制して負荷に安定した電力制御を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1実施形態の電力変換装置の三相のリアクトル配置構造を示す概略図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態の電力変換装置の各相に直列に接続されている複数のリアクトルを示す回路図である。
【図3】図2で示した各相に直列に複数接続されているリアクトルの具体的な配置構造を示す図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の電力変換装置の各相に並列に接続されている複数のリアクトルを示す回路図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の電力変換装置の各相に直列に接続されている複数のリアクトルを示す回路図である。
【図6】電力変換装置の一例である無停電電源装置の回路構成を示す図である。
【図7】棒状コアにコイルを巻き付けたソレノイドを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図6で示した構成と同一構成部分には、同一符号を付して説明する。
[第1実施形態]
図1は本発明に係る第1実施形態であり、図6で示した三相交流回路である無停電電源装置の順変換器を構成しており、交流電源1のR相に直列に接続しているR相リアクトル17、S相に直列に接続しているS相リアクトル18及びT相に直列に接続しているT相リアクトル19の配置構造を示すものである。
【0017】
これらR相、S相及びT相リアクトル17〜19は、棒状コア40にコイル41を巻き付けた開磁路のソレノイド42で構成されており、各リアクトル17〜19を構成するソレノイド42は、同一直径の棒状コア40に、同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のものである。なお、棒状コア30は、絶縁体、或いは非磁性体である。
そして、R相、S相及びT相リアクトル17〜19は、棒状コア40の軸線を同一方向に向け、所定直径Dの円周上に120°の間隔をあけて相順に配置されている。
【0018】
なお、図6の負荷に直列に接続しているU相、V相、W相に直列に接続しているリアクトル20〜22も、図示しないが、R相、S相及びT相リアクトル17〜19と同一の構成、配置構造とされている。
上記構成で配置されたR相、S相及びT相リアクトル17〜19には交流電源1から交流の電流が流れるが、R相、S相及びT相リアクトル17〜19を構成するソレノイド42の互いの磁気結合の差異を無視することができない。すなわち、例えばR相リアクトル17のコイル41とS相リアクトル18のコイル41とに差異が生じると、三相の回路が不平衡になって各相のリアクトル17〜19を流れる交流電流に歪みが発生したり、振幅や位相がばらついてしまい、順変換器を構成する半導体スイッチ2〜7に安定した交流電流を流すことができない。
【0019】
しかし、本実施形態は、R相、S相及びT相リアクトル17〜19は、同一直径の棒状コア40に同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42で構成されており、しかも、各ソレノイド42は、棒状コア40の軸線を同一方向に向けて所定直径Dの円周上に等間隔に(120°の間隔をあけて)相順に配置されているので、R相リアクトル17のソレノイド42及びS相リアクトル18のソレノイド42間の相互インダクタンス、S相リアクトル18のソレノイド42及びT相リアクトル19のソレノイド42間の相互インダクタンス、T相リアクトル19のソレノイド42及びR相リアクトル17のソレノイド42間の相互インダクタンスが実質的に均一となる。
【0020】
したがって、R相リアクトル17及びS相リアクトル18、S相リアクトル18及びT相リアクトル19、T相リアクトル19及びR相リアクトル17のソレノイド42間の相互インダクタンスが実質的に均一になると、R相,S相及びT相のソレノイド42の磁気結合の差異が緩和されるので、交流電源1から各相に流れる交流電流が不平衡になるのを抑制することができ、順変換器を構成する半導体スイッチ2〜7に安定した交流電流を流すことができる。
【0021】
また、同様に、U相リアクトル20及びV相リアクトル21、V相リアクトル21及びW相リアクトル22、W相リアクトル22及びU相リアクトル20のソレノイド42間の相互インダクタンスも実質的に均一になり、U相,V相及びW相のソレノイド42の磁気結合の差異が緩和されるので、負荷に向けて各相に流れる交流電流が不平衡になるのを抑制することができ、負荷に向けて安定した交流電流を流すことができる。
【0022】
また、本実施形態は、R相、S相及びT相リアクトル17〜19、U相、V相及びW相リアクトル20〜22が、棒状コア40にコイル41を巻き付けた開磁路のソレノイド42で構成されており、コイル41の実装が容易となって安価にソレノイド42を製造することができるので、三相交流回路からなる装置の製造コストの低減化を図ることができる。
【0023】
[第2実施形態]
次に、図2から図4は本発明に係る第2実施形態である。
図2は、図6で示した無停電電源装置の交流電源1に接続するR相リアクトルを直列に接続した第1R相リアクトル17a,第2R相リアクトル17bで構成し、交流電源1に接続するS相リアクトルを直列に接続した第1S相リアクトル18a,第2S相リアクトル18bで構成し、交流電源1に接続するT相リアクトルを直列に接続した第1T相リアクトル19a,第2T相リアクトル19bで構成したものを示している。
【0024】
なお、第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19aが本発明の第1ソレノイド群に対応し、第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19bが本発明の第2ソレノイド群に対応している。
第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19a同士は、同一直径の棒状コア40に、同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42であり、第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19b同士も、同一直径の棒状コア40に、同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42である。
【0025】
そして、第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19a同士は、棒状コア40の軸線を同一方向に向け、所定直径D1の円周上に120°の間隔をあけて相順に配置されている。
また、第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19b同士は、第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19aに対して軸方向に離間した位置で棒状コア40の軸線を同一方向に向け、前述した所定直径D1の円と中心が一致し、且つ直径も同一の円周上に120°の間隔をあけて相順に配置されている。
【0026】
上記構成のように、交流電源1のR相、S相、T相に直列に接続している2本のリアクトルのうちの一方の第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19a同士は、同一直径の棒状コア40に同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42で構成されており、しかも、各ソレノイド42が、棒状コア40の軸線を同一方向に向けて所定直径D1の円周上に等間隔に(120°の間隔をあけて)相順に配置されているので、第1R相リアクトル17aのソレノイド42及び第1S相リアクトル18aのソレノイド42間の相互インダクタンス、第1S相リアクトル18aのソレノイド42及び第1T相リアクトル19aのソレノイド42間の相互インダクタンス、第1T相リアクトル19aのソレノイド42及び第1R相リアクトル17aのソレノイド42間の相互インダクタンスが実質的に均一となる。
【0027】
また、R相、S相、T相に直列に接続している2本のリアクトルのうちの他方の第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19b同士も、同一直径の棒状コア40に同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42で構成されており、しかも、各ソレノイド42が、棒状コア40の軸線を同一方向に向けて所定直径D1の円周上に等間隔に(120°の間隔をあけて)相順に配置されているので、第2R相リアクトル17bのソレノイド42及び第2S相リアクトル18bのソレノイド42間の相互インダクタンス、第2S相リアクトル18bのソレノイド42及び第2T相リアクトル19bのソレノイド42間の相互インダクタンス、第2T相リアクトル19bのソレノイド42及び第2R相リアクトル17bのソレノイド42間の相互インダクタンスが実質的に均一となる。
【0028】
したがって、本実施形態も、R相に直列に接続したリアクトル17a,17b、S相に直列に接続したリアクトル18a,18b、T相に直列に接続したリアクトル19a,19bの各ソレノイド42の磁気結合の差異が緩和されるので、交流電源1から各相に流れる交流電流が不平衡になるのを抑制することができ、順変換器を構成する半導体スイッチ2〜7に安定した交流電流を流すことができる。
【0029】
なお、図6に示した負荷に接続するU相リアクトル20、V相リアクトル21及びW相リアクトル22も直列に接続した複数のソレノイドで構成し、上記のように配置することで、U相,V相及びW相のソレノイド42の磁気結合の差異が緩和され、負荷に向けて各相に流れる交流電流が不平衡になるのを抑制することができるので、負荷に向けて安定した交流電流を流すことができる。
【0030】
ここで、図4に示すように、交流電源1に接続するR相リアクトルを並列に接続した第1R相リアクトル17a,第2R相リアクトル17bで構成し、交流電源1に接続するS相リアクトルを並列に接続した第1S相リアクトル18a,第2S相リアクトル18bで構成し、交流電源1に接続するT相リアクトルを並列に接続した第1T相リアクトル19a,第2T相リアクトル19bで構成する場合もある。
【0031】
なお、第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19aが本発明の第1ソレノイド群に対応し、第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19bが本発明の第2ソレノイド群に対応する。
この場合も、第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19a同士を、同一直径の棒状コア40に、同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42とし、第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19b同士も、同一直径の棒状コア40に、同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42とし、図3に示すように、第1R相リアクトル17a,第1S相リアクトル18a及び第1T相リアクトル19a同士を、棒状コア40の軸線を同一方向に向け、所定直径D1の円周上に120°の間隔をあけて相順に配置し、第2R相リアクトル17b,第2S相リアクトル18b及び第2T相リアクトル19b同士も、同一直径の棒状コア40に同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42とし、棒状コア40の軸線を同一方向に向けて所定直径D1の円周上に120°の間隔をあけて相順に配置することで、交流電源1のR相、S相、T相に直列に接続したリアクトルと同様の効果を奏することができる。
【0032】
[第3実施形態]
次に、図5は本発明に係る第3実施形態である。
本実施形態は、図示しない六相交流回路に互いに並列接続されている6相のリアクトル50〜55の配置構造を示すものである。
本実施形態の6相のリアクトル50〜55の全てが、棒状コア40にコイル41を巻き付けた開磁路のソレノイド42で構成されており、各リアクトル50〜5を構成するソレノイド42は、同一直径の棒状コア40に、同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のものである。なお、棒状コア30は、絶縁体、或いは非磁性体である。
【0033】
そして、6相のリアクトル50〜55は、棒状コア40の軸線を同一方向に向け、所定直径Dの円周上に60°の間隔をあけて相順に配置されている。
本実施形態は、6相のリアクトル50〜55が、同一直径の棒状コア40に同一巻線数のコイル41を巻き付けた同一形状のソレノイド42で構成されており、しかも、各ソレノイド42は、棒状コア40の軸線を同一方向に向けて所定直径Dの円周上に等間隔に(60°の間隔をあけて)相順に配置されているので、第1相のリアクトル50及び第2相のリアクトル51間の相互インダクタンス、第2相のリアクトル51及び第3相のリアクトル52間の相互インダクタンス、第3相のリアクトル52及び第3相のリアクトル53間の相互インダクタンス、第3相のリアクトル53及び第4相のリアクトル54間の相互インダクタンス、第5相のリアクトル54及び第6相のリアクトル55間の相互インダクタンス、第6相のリアクトル55及び第1相のリアクトル50間の相互インダクタンスが実質的に均一となる。
【0034】
したがって、6相のリアクトル50〜55のソレノイド42間の相互インダクタンスが実質的に均一になると、6相のリアクトル50〜55を構成するソレノイド42の磁気結合の差異が緩和されるので、6相に流れる交流電流が不平衡になるのを抑制することができ、安定した交流電流を流すことができる。
また、本実施形態は、6相のリアクトル50〜55が、棒状コア40にコイル41を巻き付けた開磁路のソレノイド42で構成されており、コイル41の実装が容易となって安価にソレノイド42を製造することができるので、六相交流回路からなる装置の製造コストの低減化を図ることができる。
【0035】
なお、上記各実施形態では、棒状コア40にコイル41を巻き付けたソレノイド42を使用して説明したが、棒状コアを使用しない空芯の開磁路のソレノイドを使用しても同様の作用効果を奏することができる。
また、図6に示した多相交流回路に限るものではなく、さらには、図示しない交流−直流回路の直流用リアクトルに上記実施形態を適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…交流電源、2〜15…半導体スイッチ、17…R相リアクトル、17a…第1R相リアクトル、17b…第2R相リアクトル、18…S相リアクトル、18a…第1S相リアクトル、18b…第2S相リアクトル、19…T相リアクトル、19a…第1T相リアクトル、19b…第2T相リアクトル、20…U相リアクトル、21…V相リアクトル、22…W相リアクトル、24〜26…フィルタコンデンサ、27〜29…フィルタコンデンサ、16A,16B…直流コンデンサ、40…棒状コア、41…コイル、42…ソレノイド、50…第1相のリアクトル、51…第2相のリアクトル、52…第3相のリアクトル、53…第4相のリアクトル、54…第5相のリアクトル、55…第6相のリアクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置に使用される複数のリアクトルの配置構造であって、
複数のリアクトルの各々を、コイルを巻きつけた開磁路のソレノイドで構成し、これら複数のソレノイドの間の相互インダクタンスが実質的に均一となるように、当該複数のソレノイドを配置したことを特徴とする電力変換装置のリアクトル配置構造。
【請求項2】
前記複数のソレノイドは電源の相数に等しい本数であり、各ソレノイドは、前記コイルの巻線数、コイル直径などの形状を同一としたものであり、
前記複数のソレノイドを、互いの軸線を同一方向に向け、所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置したことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置のリアクトル配置構造。
【請求項3】
前記複数のソレノイドは、電源の各相に少なくとも2本の前記ソレノイドを直列、或いは並列に接続した電源の相数の倍数の本数であり、各ソレノイドは、前記コイルの巻線数、コイル直径などの形状を同一としたものであり、
各相の直列、或いは並列に接続された複数のソレノイドのうちの所定のソレノイド同士を選択して第1ソレノイド群とし、これら第1ソレノイド群を、互いの軸線を同一方向に向け、所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置し、
各相の複数のソレノイドのうちの前記所定のソレノイドと異なる他のソレノイドを選択して第2ソレノイド群とし、これら第2ソレノイド群を、前記第1ソレノイド群を配置した位置に対して軸方向に離間した位置であって、前記第1ソレノイド群と同一方向に軸線を向け、前記第1ソレノイド群と同一の所定直径の円周上に相順に等間隔となるように離間配置したことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置のリアクトル配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−41334(P2011−41334A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183303(P2009−183303)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】