説明

電力変換装置

【課題】交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制できる電力変換装置を得る。
【解決手段】コンバータ11は、入力側のフィルタ2を介して交流電源に接続され交流を直流に変換し、インバータ12は直流母線15を介してコンバータ11に接続され直流を交流に変換して出力側のフィルタ3を介して負荷に供給する。入力側及び出力側のコンデンサ22,32の中性点同士を接続線16にて接続し、接続線16をコンデンサ5にて接地し、浮遊容量による漏洩電流の低減を図る。ブリッジ回路100は、入力側を直流母線15に接続し、出力側をリアクトル101とコンデンサ102との直列回路により接地し、制御回路200にてコンデンサ5に発生するコモンモード電圧VCEN及び直流母線15に発生するコモンモード電圧Vcを打ち消す電圧をコンデンサ102に発生させ、変換器1から交流電源や負荷へ還流する漏洩電流を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流電源を受電して任意の周波数の交流電圧を出力する電力変換装置に係り、特には交流電圧を直流電圧に、もしくは直流電圧を交流電圧に変換する変換器の動作により交流電源側に発生する漏洩電流を低減することのできる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流電源を受電して任意の周波数をもつ交流電圧を出力する電力変換装置においては、コンバータとインバータとからなる変換器を備え、コンバータで交流電源の交流電圧を直流電圧に一旦変換し、得られた直流電圧をインバータで安定した交流電圧に変換して負荷に供給する。
【0003】
このような電力変換装置においては、コンバータを構成するスイッチング素子のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が交流電源側に伝わらないように、コンバータの入力側にフィルタを設け、また、インバータを構成するスイッチング素子のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が負荷側に伝わらないように、インバータの出力側にフィルタを設けて、これらの各フィルタによってキャリア周波数の影響を低減するようにしている。
【0004】
しかし、このように、コンバータの入力側とインバータの出力側にそれぞれフィルタを設置した場合には、キャリア周波数成分を除去することが可能であるものの、アースから見た直流電圧にはキャリア周波数成分に起因した電圧変動が発生する。このような状況に鑑みて、従来の電力変換装置において、コンバータの入力側のフィルタを構成するY結線されたコンデンサの中性点とインバータの出力側のフィルタを構成するY結線されたコンデンサの中性点とを互いに電気的に接続する電力変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−294381号公報(段落番号0007及び図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電力変換装置は以上のように構成され、入力側及び出力側のフィルタのコンデンサの中性点が互いに接続されているが、変換器を構成するコンバータやインバータとアースとの間には浮遊容量が必然的に存在するので、コンバータのスイッチングに伴って生じる高周波電流が浮遊容量を介してアースに漏洩し、当該高周波電流が交流電源側の接地点から入力側のフィルタを経由して再びコンバータに流入して循環したり、あるいは、浮遊容量を介してアースに漏洩した高周波電流が負荷側の接地点から出力側のフィルタを経由して再びインバータに流入して循環したりする。このように変換器から浮遊容量を介して漏洩する高周波電流は、コンバータやインバータのキャリア周波数成分の電流よりも周波数が高いために、変換器の入力側および出力側にそれぞれ設けられたフィルタのコンデンサによっては循環するのを十分に阻止することができない。
【0007】
そして、このように循環する高周波電流が放射ノイズ源となり、電源系統である交流電源側に接続される他の機器へ誘導障害を与えたり、ラジオ周波数帯に影響を及ぼすなどの問題点がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、電力変換装置と接続される交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制することができる電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電力変換装置においては、
入力側のフィルタと、変換器と、出力側のフィルタと、バイパスコンデンサと、補償回路と、補償制御装置とを有する電力変換装置であって、
入力側及び出力側のフィルタは、それぞれリアクトルとコンデンサとを有し、コンデンサが一方の端子がリアクトルに接続され他方の端子が共通に接続されたものであり、
変換器は、コンバータとインバータとを有し、
コンバータは、入力側のフィルタを介して交流電源に接続され交流を直流に変換するものであり、
インバータは、コンバータの直流出力側に接続され直流を交流に変換して出力側のフィルタを介して負荷に供給するものであり、
入力側及び出力側のフィルタのコンデンサの他方の端子同士が接続線によって接続されるとともにバイパスコンデンサを介して接地されたものであり、
補償回路は、ブリッジ回路と循環コンデンサとを有し、ブリッジ回路の入力側がコンバータの直流出力側に接続され、出力側が循環コンデンサを介して接地されたものであり、
補償制御装置は、バイパスコンデンサに流れる電流を減少させる方向の電圧を補償コモンモード電圧として循環コンデンサに発生させるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る電力変換装置においては、
入力側のフィルタと、変換器と、出力側のフィルタと、バイパスコンデンサと、補償回路と、補償制御装置とを有する電力変換装置であって、
入力側及び出力側のフィルタは、それぞれリアクトルとコンデンサとを有し、コンデンサが一方の端子がリアクトルに接続され他方の端子が共通に接続されたものであり、
変換器は、コンバータとインバータとを有し、
コンバータは、入力側のフィルタを介して交流電源に接続され交流を直流に変換するものであり、
インバータは、コンバータの直流出力側に接続され直流を交流に変換して出力側のフィルタを介して負荷に供給するものであり、
入力側及び出力側のフィルタのコンデンサの他方の端子同士が接続線によって接続されるとともにバイパスコンデンサを介して接地されたものであり、
補償回路は、ブリッジ回路と循環コンデンサとを有し、ブリッジ回路の入力側がコンバータの直流出力側に接続され、出力側が循環コンデンサを介して接地されたものであり、
補償制御装置は、バイパスコンデンサに流れる電流を減少させる方向の電圧を補償コモンモード電圧として循環コンデンサに発生させるものであるので、
変換器から交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1である電力変換装置の回路図である。
【図2】図1の電力変換装置の動作を説明するための説明図である。
【図3】図1のブリッジ回路を制御するための制御回路の詳細回路図である。
【図4】実施の形態2である電力変換装置の回路図である。
【図5】図4の制御回路の詳細回路図である。
【図6】実施の形態4である電力変換装置の回路図である。
【図7】実施の形態5である電力変換装置の回路図である。
【図8】実施の形態5の変形例を示す電力変換装置の回路図である。
【図9】実施の形態6である制御回路の詳細回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1〜図3は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は電力変換装置の回路図、図2は図1の電力変換装置の動作を説明するための説明図、図3は図1のブリッジ回路を制御するための制御回路の詳細回路図である。図1において、変換器1は、図示しない商用周波数の三相交流の交流電源から受電した交流電圧を直流電圧に変換し、得られた直流電圧を安定した交流電圧に変換する。変換器1の入力側にフィルタ2が設けられ、変換器1の出力側にフィルタ3が設けられている。なお、変換器1とアースとの間に存在する浮遊容量を浮遊容量4として表している。
【0013】
変換器1は、交流電源から受電してこれを直流電圧に一旦変換するコンバータ11と、コンバータ11で得られた直流電圧を安定した交流電圧に変換して図示しない負荷に供給するインバータ12とを備え、コンバータ11の直流出力側とインバータ12の直流入力側とは直流母線15にて接続され、直流母線15にコンデンサC0を有する電圧平滑回路13が接続されている。
【0014】
コンバータ11は、開閉手段としてスイッチング素子Tr1とダイオードD1とを有する3相フルブリッジ回路にて構成され、また、インバータ12は、開閉手段としてスイッチング素子Tr2とダイオードD2とを有する3相フルブリッジ回路で構成されている。そして、各スイッチング素子Tr1,Tr2が図示しない制御手段によってスイッチング制御される。
【0015】
また、上記の入力側のフィルタ2は、コンバータ11を構成するスイッチング素子Tr1のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が交流電源側に伝わらないように、また、出力側のフィルタ3は、インバータ12を構成するスイッチング素子Tr2のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が負荷側に伝わらないように、それぞれのキャリア周波数の影響を低減するためのものであって、入力側のフィルタ2は、リアクトル21とコンデンサ22とから構成され、同様に、出力側のフィルタ3もリアクトル31とコンデンサ32とから構成されている。
【0016】
また、入力側のフィルタ2を構成するコンデンサ22は一方の端子がリアクトル21に接続され他方の端子が中性点である共通接続点にて共通に接続されてY結線とされ、出力側のフィルタ3を構成するコンデンサ32は一方の端子がリアクトル31に接続され他方の端子が中性点である共通接続点にて共通に接続されてY結線とされている。そして、両者の共通接続点が互いに接続線16によって電気的に接続されると共に、バイパス用のコンデンサ5を介して接地されている。また、電圧検出器201がコンデンサ5の端子に接続され、その端子電圧を測定する。コンバータ11とインバータ12を接続する直流母線15のマイナス側の対地電圧を測定する電圧検出器202が設けられている。
【0017】
また、電力変換装置は、補償回路としてのブリッジ回路100、リアクトル101、循環用のコンデンサ102を有し、コンバータ11の直流出力側である直流母線15に接続されている。ブリッジ回路100はスイッチング素子Tr3とダイオードD3とを有する単相ハーフブリッジ回路を有し、ブリッジ回路の出力側はリアクトル101及びコンデンサ102の直列回路を介して接地されている。ブリッジ回路100を制御する補償制御装置としての制御回路200は、図3に示すように、バンドパスフィルタ108及び109、加算器110、極性反転器111、キャリア信号発生器112、比較器113を有する。なお、この実施の形態における電力変換装置の特徴は、バイパス用のコンデンサ5、補償回路としてのブリッジ回路100、リアクトル101、コンデンサ102、補償制御装置としての制御回路200を有することである。
【0018】
全体の動作の説明に先立ち、バイパス用のコンデンサ5を設けた場合の作用と問題点について説明する。コンデンサ5を設けることにより、変換器1の開閉手段のスイッチングに伴って生じた高周波電流が、変換器1とアースとの間に存在する浮遊容量4を介して流れたとしても、その高周波電流は直ちにコンデンサ5を経由して入力側のフィルタ2あるいは出力側のフィルタ3から変換器1に向けて流れる。このため、従来のように、浮遊容量4を介して変換器1からアースに漏洩した高周波電流が交流電源側の接地点から入力側のフィルタ2を経由して再び変換器1に流入して循環したり、あるいは、浮遊容量4を介して変換器1からアースに漏洩した高周波電流が負荷側の接地点から出力側のフィルタ3を経由して再び変換器1に流入して循環するといった現象が生じるのが抑制される。
【0019】
しかし、循環用のコンデンサ102を設けず、コンデンサ5を単独で設けた場合は、次のような問題点がある。すなわち、コンデンサ22とコンデンサ32の中性点が互いに接続され、さらにコンデンサ5により接地されている。このとき、変換器1の動作としてはコンバータ11の出力電圧指令とインバータ12の出力電圧指令が互いに異なるとき、例えば互いの出力周波数は同じでも互いの位相が異なるときは、互いの発生するコモンモード電圧の位相も同様に異なるため、コンデンサ5を介して交流電源側に漏洩電流として流れ込むという問題がある。特に、コモンモード電圧が変換器1の出力電圧の周波数の3倍成分であるような低周波である場合には、交流電源側に設置する図示しない漏電ブレーカの誤動作を誘発する可能性がある。この発明においては、コンデンサ5を設けて浮遊容量を介してアースに漏洩する漏洩電流を抑制するとともに、コンデンサ5を単独で設けた場合の上記のような問題点を解決することができる。
【0020】
次に、ブリッジ回路100を含む全体の動作を説明する。図2において、ブリッジ回路100はリアクトル101を介してコンデンサ102に所望の電圧VCEN2を発生させる(詳細後述)。このとき、コンデンサ5の静電容量とコンデンサ102の静電容量とが等しいとすると、例えばVCEN=VCEN2の関係となるようにブリッジ回路100を制御したとすると、コンデンサ5を流れる例えば低周波の漏洩電流iCENは、コンデンサ102の両端に発生する電圧VCEN2により流れるiCEN2としてブリッジ回路100を介して変換器1に帰還する。換言すると、コンデンサ5を流れる電流iCENがそのままコンデンサ102を介してiCEN2として流れるため、交流電源側の接地線を介して流れる漏洩電流をゼロとすることができる。なお、リアクトル101は、ブリッジ回路100のスイッチング動作により発生するスイッチングリプルを抑制するためのものである。
【0021】
ここで、ブリッジ回路100の目的は、図2に示すコンデンサ102に所望のVCEN2として−(VCEN+VC)を発生させることにある(後述)。ブリッジ回路100は、直流母線15を介してコンデンサCOに接続されている(図1)ことから、既にコンバータ11が発生するコモンモード電圧VCが存在しており、これはアースとの間の電圧である。そこでブリッジ回路100への電圧指令としては、まずコンバータ11の直流出力側である直流母線15のコモンモード電圧VCと逆の電圧(−VC)(波高値が同じで逆位相の電圧)を発生させ、接地点電位を確保する。併せて、コンデンサ102の両端にコンデンサ5に発生するコモンモード電圧VCENと逆位相の電圧(−VCEN)を重畳させる。これにより、ブリッジ回路100は、接地点電位に対してすなわちコンデンサ102の両端にコンデンサ5に発生するコモンモード電圧VCENと逆位相の電圧(−VCEN)とコモンモード電圧VCと逆位相の電圧(−VC)の和の電圧VCEN2(=−(VCEN1+VC))を発生させる。
【0022】
この動作を図3によりさらに詳細に説明する。制御装置200にはバンドパスフィルタ108及び109を介して図1に示す電圧検出器201,202により検出されたコンデンサ5の両端電圧であるVCEN、及びコンバータ11が発生するコモンモード電圧VCが入力電圧信号として入力される。なお、VCENやVCは、図1において矢印で示す電圧である。
【0023】
検出された信号はそれぞれバンドパスフィルタ108及び109を介して低減対象とする周波数成分(例えばコンバータ11の基本出力周波数fの3倍成分)が抽出される。次に加算器110においてこれらの電圧が加算されると共に、極性反転器111で加算された信号が反転されて、ブリッジ回路100への電圧指令Vd*が生成される。次にキャリア信号発生器112と比較器113によりPWM信号Vpwmが得られ、周知の方法によりブリッジ回路100を構成するスイッチング素子Tr3のオンオフ制御を行う。これにより、コンデンサ102の両端に補償コモンモード電圧としての所望の電圧VCEN2=−(VCEN1+VC)が発生し、変換器1からの漏洩電流が抑制される。
【0024】
以上のように、この実施の形態によれば、変換器1のスイッチングに伴う高周波電流が変換器1の浮遊容量を介して交流電源側の接地点や負荷側の接地点を経由するノイズ電流として流れるのを抑制すると共に、変換器1が発生するコモンモード電圧により入力側のノイズ抑制用のコンデンサ22を介して交流電源側へ漏洩する漏洩電流を低減することができるので、交流電源側に接続される他の機器へ誘導障害を与えたり、ラジオ周波数帯に影響を及ぼすなどの不具合発生を防止することができると共に、交流電源側に設置される漏電ブレーカの誤動作を防止することができる。
【0025】
なお、図1の電力変換装置においては、コンデンサ22の中性点とコンデンサ32の中性点とが互いに接続され、さらにコンデンサ5により接地することにより、変換器1の対地との間の浮遊容量による漏洩電流を抑制している。しかし、コンデンサ5を設けると、コンバータ11の電圧指令とインバータ12の電圧指令とが異なる場合、例えば互いの出力周波数は同じでも、位相が異なる場合は、コンバータ11が発生するコモンモード電圧とインバータ12が発生するコモンモード電圧の位相も、同期して異なるため、コンデンサ5を経由してコモンモードノイズ電流が発生するという問題が生じる。特に、第3高調波の電圧V3fがコンバータ11の制御信号が重畳された場合などのように低周波のコモンモード電圧が発生すると、漏電遮断器の誤動作を誘発する可能性がある。この現象の発生を、循環用のコンデンサ102を設け、コンバータ11の直流出力側である直流母線に発生するコモンモード電圧VCENに相当する端子電圧が逆方向に発生するようにして交流電源1側に還流する漏洩電流や負荷側を還流する漏洩電流を低減することにより防止している。なお、以下の実施の形態においても同様である。
【0026】
実施の形態2.
図4、図5は実施の形態2を示すものであり、図4は電力変換装置の回路図、図5は制御回路の詳細回路図である。図4において、出力側のフィルタ3を構成するコンデンサ32のうちの一相例えばU相のコンデンサの端子電圧を検出する電圧検出器301が設けられている。なお、V相またはW相のコンデンサの端子電圧を検出する構成としてもよい。また、補償制御装置としての制御回路300が設けられている。制御回路300は、図5に示すように、バンドパスフィルタ120,121,122、加算器123、減算器124、加算器125、極性反転器111、キャリア信号発生器112、比較器113を有する。この実施の形態における電力変換装置の特徴は、VCを直接検出する代わりに、コンデンサ32のうちの一相の端子電圧VINVを電圧検出器301で検出することである。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
ここで、インバータ12が発生するコモンモード電圧指令がViであるとき、次の(1)式によりVCを算出する。コモンモード電圧指令Viは制御の上では既知であるため、VCENとVINVを検出することによりVCが得られる。なお、リアクトル31の両端にもコモンモード電流による電圧が発生するがその値は小さいので、対象とするコモンモードが低周波の場合は無視できる。また、VINVはコンデンサ32のうちいずれの相のコンデンサの端子電圧であってもよい。これは、後述のバンドパスフィルタによりコモンモード成分のみを検出することを目的としており、どの相の電圧を検出するかは無関係であるためである。
VC = VCEN + VINV − Vi (1)
【0028】
制御回路300(図5)の入力電圧信号は、電圧検出器201にて検出されたコンデンサ5の両端電圧であるVCEN、電圧検出器301にて検出されたコンデンサ32に発生するコモンモード電圧VINV、図示しないインバータ12の制御装置から出力されるコモンモード電圧指令Viである。なお、VCENやVINVは、図4における矢印に示す電圧であり、上記電圧検出器201,301により検出する。
【0029】
検出された電圧信号であるVCEN及びVINV並びに電圧指令Viはそれぞれバンドパスフィルタ120〜122を介して低減対象とする周波数成分(例えば変換器の基本出力周波数fの3倍成分)が抽出される。次に加算器123及び減算器124により上記(1)式に相当する演算を行いVCを求め、電圧VCENを加算した後、極性反転器111で反転して、ブリッジ回路100への電圧指令Vd*が生成される。次にキャリア信号発生器112と比較器113によりPWM信号Vpwmが得られ、周知の方法によりブリッジ回路100を構成するスイッチング素子Tr3のオンオフ制御を行う。これにより、コンデンサ102の両端に補償コモンモード電圧としての所望の電圧VCEN2=−(VCEN+VC)が発生する。
【0030】
なお、出力側のフィルタ3のコンデンサ32のうちの一相の端子電圧VINV及びインバータ12が発生するコモンモード電圧指令電圧指令Viを検出する代わりに、入力側のフィルタ2のコンデンサ22のうちの一相の端子電圧VCON及びコンバータ11が発生するコモンモード電圧指令電圧指令V2を検出し、コンデンサ5の両端電圧VCENと合わせて、上記(1)と同様の方法で、直流母線15のコモンモード電圧VCを求めることもできる。
【0031】
以上のように、この実施の形態によれば、変換器1のスイッチングに伴う高周波電流が変換器1の浮遊容量を介して交流電源側の接地点や負荷側の接地点を経由するノイズ電流として流れるのを抑制すると共に、変換器1が発生するコモンモード電圧により入力側のノイズ抑制用のコンデンサ22を介して交流電源側へ漏洩する漏洩電流を低減することができるので、交流電源側に接続される他の機器へ誘導障害を与えたり、ラジオ周波数帯に影響を及ぼすなどの不具合発生を防止することができると共に、交流電源側に設置される漏電ブレーカの誤動作を防止することができる。
【0032】
また電圧検出としてVINVを検出するが、例えば電力変換装置ではVINVを検出する電圧検出器が既存であるため、上記電圧検出器をVINV検出用に兼用することにより、別途新たに電圧検出器を設ける必要がなくなるため、部品点数を低減することができる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態1では、コモンモード電圧VCを直接、電圧検出器201(図1)にて検出し、実施の形態2においては、コンデンサ32の端子電圧を電流検出器301にて検出することにより間接的に求めたが、コンバータ11が発生するコモンモード電圧の指令値をVCとして用いてもよい。これにより電圧検出箇所はVCENのみとなり、検出回路や演算回路の簡素化を図ることができる。
【0034】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4である電力変換装置の回路図である。図6において、バイパス用のコンデンサ5を流れる電流を検出する電流検出器401が設けられ、検出された電流信号は補償制御装置としての制御回路400へ入力される。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。実施の形態1〜3では、コンデンサ5の両端電圧を直接検出しているが、図6に示すようにコンデンサ5に流れる電流iCENを電流検出器401で検出し、次の(2)式に従ってコンデンサ5の端子電圧を間接的に検出してもよい。ここで、C5はコンデンサ5の静電容量である。
VCEN = 1/C5 × ∫(iCEN)dt (2)
これにより、電圧検出器201(図1)の代替として電流検出器401を適用することができる。電流検出器は電圧検出器と比較して一般的に安価であり、耐ノイズ性が高く、コンデンサ5と絶縁ができるといった利点もある。
【0035】
実施の形態5.
図7、図8は実施の形態5を示すものである、図7は電力変換装置の回路図,図8は変形例を示す電力変換装置の回路図である。図7において、出力側のフィルタ3を構成するコンデンサ32のうちの一相例えばU相のコンデンサの電流を検出する電流検出器501が設けられている。また、これら電流検出器501の検出結果が入力される補償制御装置としての制御回路500が設けられている。上記の実施の形態2では、コンデンサ32に発生する両端電圧を直接検出しているが、図7に示すようにコンデンサに流れる電流iINVを電流検出器501で検出し、次の(3)式に従ってコンデンサ32の両端電圧を間接的に検出してもよい。ここでC32はコンデンサ32の静電容量である。
VINV = 1/C32 × ∫(iINV)dt (3)
【0036】
これにより、電圧検出器の代替として電流検出器を適用することができる。電流検出器は電圧検出器と比較して一般的に安価であり、耐ノイズ性が良く、主回路への配線が不要になるという効果がある。
【0037】
また、図7に示したものにおいては、電流検出器501を用いたが、図8に示すようにコンデンサ32の共通接続点とコンデンサ22の共通接続点と接続する接続線16を流れる電流を電流検出器601で検出してもよい。補償制御装置としての制御回路600は、図7に示した制御回路500と同様の動作をする。このときのコンデンサのトータル容量はC32の容量を3倍して上記(3)式を適用する。
【0038】
実施の形態6.
図9は、実施の形態6である制御回路の詳細回路図である。図9において、補償制御装置としての制御回路700は、バンドパスフィルタ108及び109、加算器110、極性反転器兼倍率器150、キャリア信号発生器112、比較器113を有する。上記各実施の形態においては、コンデンサ5の静電容量とコンデンサ102の静電容量が等しいものについて示したが、これらの静電容量が互いに異なる場合は、静電容量の差異に応じてコンデンサ102に与える電圧指令を変更する。すなわちコンデンサ5の静電容量C5とコンデンサ102の静電容量C102の関係が次の(4)式で示されるものとする。
C5 = C102×K (4)
【0039】
このとき、コンデンサ5に流れる電流iCENとコンデンサ102に流れる電流iCEN2の振幅を同一にするには、コンデンサ102に与える電圧指令をK倍する。このために、極性反転器兼倍率器150にて加算器110からの信号の極性を反転させるとともにK倍する。これによりコンデンサ5とコンデンサ102の静電容量が互いに異なるときでも、交流電源側へ流出する漏洩電流を低減することができるため、静電容量の値を選択する自由度が増える。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施の形態1〜6に示した構成に限定されるものではなく、その目的を損なわない範囲内において各種の変形を加えることが可能である。例えば、図1においてブリッジ回路100は2レベルのハーフブリッジインバータとしたが、3値以上の電圧レベルを発生可能なマルチレベルインバータの場合であっても同様の効果を奏する。また、コンバータ11及びインバータ12を2レベルインバータとしたが、3値以上の電圧レベルを発生可能なマルチレベルインバータを適用する場合にも同様の効果を得ることができる。
【0041】
さらに、上記の各実施の形態では、変換器1においてコンバータ11やインバータ12のスイッチング素子として、トランジスタ(Tr)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの開閉素子を適宜用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 変換器、2,3 フィルタ、5 コンデンサ、11 コンバータ、
12 インバータ、15 直流母線、16 接続線、22 コンデンサ、
32 コンデンサ、100 ブリッジ回路、102 コンデンサ、
150 極性反転器兼倍率器、200 制御回路、201 電圧検出器、
202 電圧検出器、300 制御回路、301 電圧検出器、400 制御回路、
401 電流検出器、500 制御回路、501 電流検出器、600 制御回路、
601 電流検出器、700 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側のフィルタと、変換器と、出力側のフィルタと、バイパスコンデンサと、補償回路と、補償制御装置とを有する電力変換装置であって、
上記入力側及び出力側のフィルタは、それぞれリアクトルとコンデンサとを有し、上記コンデンサが一方の端子が上記リアクトルに接続され他方の端子が共通に接続されたものであり、
上記変換器は、コンバータとインバータとを有し、
上記コンバータは、上記入力側のフィルタを介して交流電源に接続され上記交流を直流に変換するものであり、
上記インバータは、上記コンバータの直流出力側に接続され上記直流を交流に変換して上記出力側のフィルタを介して負荷に供給するものであり、
上記入力側及び出力側のフィルタの上記コンデンサの上記他方の端子同士が接続線によって接続されるとともに上記バイパスコンデンサを介して接地されたものであり、
上記補償回路は、ブリッジ回路と循環コンデンサとを有し、上記ブリッジ回路の入力側が上記コンバータの直流出力側に接続され、出力側が上記循環コンデンサを介して接地されたものであり、
上記補償制御装置は、上記バイパスコンデンサに流れる電流を減少させる方向の電圧を補償コモンモード電圧として上記循環コンデンサに発生させるものである
電力変換装置。
【請求項2】
上記補償制御装置は、上記補償コモンモード電圧を、上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧と上記コンバータの直流出力側に発生するコモンモード電圧とに基づいて求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
上記補償制御装置は、上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧を、上記バイパスコンデンサの電圧に基づいて求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記補償制御装置は、上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧を、上記バイパスコンデンサを流れる電流に基づいて求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記バイパスコンデンサの静電容量と上記循環コンデンサの静電容量との容量比に応じて、上記補償コモンモード電圧を上記容量比倍するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記補償制御装置は、上記コンバータの直流出力側に発生するコモンモード電圧を、上記コンバータの直流出力側とアースとの間の電圧を検出することにより得るものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記補償制御装置は、上記コンバータの直流出力側に発生するコモンモード電圧を、上記出力側のフィルタの上記コンデンサの電圧と上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧と上記インバータが発生するコモンモード電圧とに基づいて求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記補償制御装置は、上記出力側のフィルタの上記コンデンサの電圧を、上記出力側のフィルタの上記コンデンサを流れる電流に基づいて求めるものであることを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
上記補償制御装置は、上記コンバータの直流出力側に発生するコモンモード電圧として上記コンバータの制御指令から取得したコモンモード電圧を用いるものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−147251(P2011−147251A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5371(P2010−5371)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】