説明

電力変換装置

【課題】電力変換装置の盤内に収容したフィルタ回路部などを対象に、その回路部品(例えば、コンデンサ)の相互間に布設して配線接続した板状のバー導体を利用して盤内に送風する冷却風を回路部品に向け集中的に導風できるように配線構造を改良する。
【解決手段】コンバータ,インバータ回路ユニットと組合せて、コンデンサなどを回路部品とするフィルタ回路部13をユニット化して盤内に収容し、この盤内に冷却風を送風して各ユニットの回路部品を風冷するようにした電力変換装置であり、前記フィルタ回路部13については主回路のU,V,W相に接続するコンデンサ(回路部品)14をユニットフレーム6aに並置配列した上で、コンデンサ14の相互間に板状の銅バー導体15,16,17を布設して配線接続したものにおいて、前記銅バー導体16,17の左右側縁をL形に屈曲して風胴形状に形成し、この風胴形状を介して盤内に送風する冷却風をコンデンサ14に向け集中的に導風させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置などに適用する電力変換装置に関し、詳しくは該電力変換装置の高調波対策(リップル,ノイズの低減)として主回路に接続したコンデンサ,リアクトルなどの回路部品に対する風冷,配線構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
まず、頭記した無停電電源装置を例に、本発明の実施対象となる電力変換装置の構成を図3〜図5に示す。図3(a),(b)において、1は前面に扉2を備えた制御盤で、その盤内に仕切られた上下段の各ユニット室にはコンバータ回路ユニット3,インバータ回路ユニット4,高調波抑制対策として主回路の入力,出力側に接続したリアクトルユニット5,MC(電磁接触器)ユニット6,端子ユニット7などがラックマウント式に収容されている。また、制御盤1にはユニット室の前面,天井部に送風ファン9を配備し、前面扉2に開口した外気吸気口のグリル9より吸い込んだ外気を盤内に送風し、前記ユニットごとにその回路部品(パワー半導体モジュール,リアクトル,コンデンサ,抵抗などの発熱素子)を冷却するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記のMCユニット6については、図4(a),(b)で示すように、前面,上面を開放した箱形のユニットフレーム6aに電磁接触器10,およびコンバータ回路とインバータ回路との間のDCリンクに接続したリアクトル11,直流コンデンサ12のほか、ユニット6の後部には入,出力側の主回路に接続したノイズ抑制用のフィルタ回路部13をユニットフレーム6aに搭載装備している。
【0004】
次に、前記フィルタ回路部13についての従来の配置構造を図5に、その回路結線を図6示す。すなわち、図6の3相主回路に対してU,V,W各相の間にコンデンサ14を2個ずつ並列にデルタ結線してノイズ低減用のフィルタ回路を形成している。
【0005】
ここで、前記コンデンサ14(角形のACコンデンサ)は、U−V,V−W,W−U相の間に並列接続する2個のコンデンサを組として、合計6個のコンデンサ14を図5(a)のようにユニットフレーム6aの背面パネルに千鳥状に配列し、かつ各コンデンサ14のリード端子相互間に跨がりU,V,W各相に対応する銅板製のバー導体15,16,17を接続した上で、この銅バー導体15,16,17からU,V,W相、およびu,v,w相の主回路電線18,19を引き出すようにしている。
【0006】
また、フィルタ回路部13のコンデンサ14,銅バー導体15〜17,および主回路電線18,19の引出し部分を包囲してユニットフレーム6aのパネル面には専用の風胴20を設け、この風胴20を通して盤内に送風する冷却風をコンデンサ14に向け集中的に導風して発熱部品のコンデンサ14を冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−147131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先記のように従来構造では、電力変換装置の盤内のユニットに構築したフィルタ回路部13のコンデンサ14に向け盤内に送風する冷却風を集中的に流して冷却するために、図5のようにコンデンサ14の周域を取り囲んでユニットフレーム6aに専用の風胴20を設けている。
【0009】
しかしながら、フィルタ回路部13に専用の風胴20を設けた従来構造では、図5(a)で示すように、コンデンサ14,およびコンデンサ14を相互接続する銅バー導体15,16,17の占有幅a、および銅バー導体15,16,17の左右両端から側方に引出した主回路電線18,19の配線スペース幅bを風胴20の内部に確保する必要があり、さらにこの風胴20をフレーム6aのパネルに設置するための取付スペース幅cも加わって風胴20の設置に必要なスペース幅dが大形化する。そのほか、コンデンサ14の周辺に他の回路部品,機器が接近して配置されていると、その部品相互間の熱的干渉も加わってコンデンサ14が高温になるおそれもある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的はコンバータ回路ユニット,インバータ回路ユニットと組合せて盤内に収容した先記フィルタ回路部などを対象に、従来構造で設けていた専用の風胴を排除して盤内に収容するユニットの省スペース化を図りつつ、その回路部品の間に布設して相互接続した板状のバー導体を巧みに利用して盤内に送風する冷却風を回路部品に向け集中的に導風できるように配線構造を改良した電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、コンバータ回路部,インバータ回路部,および高調波対策として主回路に接続したコンデンサ,リアクトルなどのフィルタ回路部をそれぞれユニット化して盤内に収容し、この盤内に冷却風を送風して前記各ユニットの回路部品を風冷するようにした電力変換装置であり、前記のフィルタ回路部については主回路の各相に接続する回路部品をユニットフレームに並置配列した上で、その回路部品の相互間に跨がり板状のバー導体を布設して配線接続したものにおいて、
(1)前記回路部品の相互間に布設した板状バー導体を、盤内に送風する冷却風を前記回路部品に向けて導風する風胴形状に形成する(請求項1)。
(2)前項(1)において、風胴形状に形成した前記バー導体の風胴入口側に冷却風を取り込む風向ガイドを形成する(請求項2)。
(3)前項(1),(2)に適用するフィルタ回路部の回路部品は、主回路の入,出力側に接続したノイズ抑制用のコンデンサである(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、ユニット化して盤内に収容したフィルタ回路部に専用の風胴部材を別設することなしに、該フィルタ回路部の部品相互間に跨がって布設した風胴形状に形成したバー導体により、盤内に送風する冷却風を回路部品に向け集中的に導風して該回路部品を風冷冷却することができる。また、専用の風胴部材(従来構造)を排除したことで盤内に収容するユニットの省スペース化が図れるほか、風胴を兼用するバー導体自身が熱遮蔽体として、その周辺に近接配置した他の回路部品,機器との不要な熱的干渉を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係わるフィルタ回路部の組立構造を表す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は模式斜視図である。
【図2】図1の応用実施例を示すフィルタ回路部の構造図であって、(a)は側面図、(b)は冷却風の上流側に配した銅バー導体の外形斜視図である。
【図3】本発明の実施対象となるインバータ盤の全体構成図であって、(a)は正面図、(b)は側視断面図である。
【図4】フィルタ回路部を組み込んだ図3におけるMCユニットの構成図であって、(a)は側視断面図、(b)は(a)の平面図である。
【図5】図4におけるコンデンサ回路部の従来における組立構造を表す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】図5におけるコンデンサの略示結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に示す実施例に基づいて説明する。なお、図示実施例において、図5(a),(b)に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0015】
図1(a),(b)は図5(a),(b)に対応する本発明実施例のフィルタ回路部13の組立構造図であり、この実施例では図5の従来構造に設けていた専用の風胴20を排除した上で、ユニットフレーム6aに千鳥状配列してU,V,W相間にデルタ結線する各相のコンデンサ14に対して、その相互間に跨がって布設した銅バー導体15,16,17が次記のように風胴形状に形成されている。
【0016】
すなわち、図示のようにコンデンサ14に向けて盤内に送風する冷却風の流れに対して上流左側に配した銅バー導体16はその左側縁16aを、右側に配した銅バー導体17はその右側縁17aをそれぞれL形に屈曲し、この銅バー導体16と17とでコンデンサ14に対応する断面U形の風胴を形成している。
【0017】
この構成により銅バー導体16,17自身が風胴として機能し、ユニットフレーム6aのパネル面に沿って盤内に送風される冷却風をコンデンサ14に向け集中的に導風してコンデンサ14を良好に冷却することができる。
【0018】
また、構造的には専用の風胴20(図5参照)を排除したことで、従来構造と比べて部品点数の削減化、およびユニットフレーム6aのスペース幅dを縮減して盤内の省スペース化が図れる。
【0019】
さらに、銅バー導体16,17の左右側縁16a、17aをL形に屈曲形成したことで、この屈曲形成された側壁部分(6a、17a)が熱遮蔽壁として機能し、コンデンサ14の周辺に並置した他の回路部品,機器との間の不要な熱的干渉を防ぐことができる。
【0020】
次に、本発明の応用実施例を図2(a),(b)に示す。この実施例では、図1で述べた風胴兼用の銅バー導体16,17について、その前縁(風胴の入口側)には斜め前方に突き出す風向ガイド16b,17bを追加形成している。したがって、この風胴入口側の開口高さL1が出口側の開口高さL2よりも大(L1>L2)となり、これによりコンデンサ14に向けて導風する冷却風の取り込み風量を増やしてコンデンサの冷却性能を高めることができる。
【0021】
なお、上記の図示実施例では、電力変換装置のノイズ低減対策として主回路の入,出力側に接続したフィルタ回路13のコンデンサ14を対象とした配線構造について述べたが、本発明はコンデンサへの適用に限定されるものではなく、例えば主回路に接続するリアクトルの配線構造にも同様に実施適用することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1:電力変換装置の制御盤
3:コンバータ回路ユニット
4:インバータ回路ユニット
6:MCユニット
6a:ユニットフレーム
8:送風ファン
9:吸気口グリル
13:フィルタ回路部
14:コンデンサ
15,16,17:銅バー導体
18,19:主回路電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータ回路部,インバータ回路部,および高調波対策として主回路に接続したコンデンサ,リアクトルなどのフィルタ回路部をそれぞれユニット化して盤内に収容し、この盤内に冷却風を通風して前記各ユニットの回路部品を風冷するようにした電力変換装置であり、前記のフィルタ回路部については主回路の各相に接続する回路部品をユニットフレームに並置配列した上で、その回路部品の相互間に跨がり板状のバー導体を布設して配線接続したものにおいて、
前記回路部品の相互間に布設した板状バー導体を、盤内に送風する冷却風を前記回路部品に向けて導風する風胴形状に形成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、風胴形状に形成したバー導体の風胴入口側に冷却風を取り込む風向ガイドを形成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、フィルタ回路部の回路部品は、主回路の入,出力側に接続したノイズ抑制用のコンデンサであることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−109299(P2012−109299A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254901(P2010−254901)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】