説明

電力変換装置

【課題】パワースイッチング素子の放熱効率を向上することが可能な電力変換装置を得る。
【解決手段】電力変換装置2は、所定のブリッジ回路を構成する複数のパワースイッチング素子15と、複数のパワースイッチング素子15の放熱を行うためのヒートシンク22と、を備え、ヒートシンク22は、互いに離間することによって電気的に絶縁された複数のブロック22Aに分割されており、各パワースイッチング素子15は、ブロック22Aとの間に絶縁シートを介在させることなく、各ブロック22Aに接触して取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、複数のパワースイッチング素子を用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、電気自動車に搭載されているバッテリを商用電源によって充電するための電力変換装置(AC−DCコンバータ)が開示されている。商用電源からの出力は、全波整流回路によって整流されて昇圧型力率改善回路に入力される。昇圧型力率改善回路からの出力は、ブリッジ回路によって高周波電圧に変換されてトランスに入力される。トランスからの出力は、全波整流回路によって整流された後に平滑回路によって平滑されてバッテリに供給される。ブリッジ回路は、IGBT等の複数のパワースイッチング素子を用いて構成されている。
【0003】
一般的に、パワースイッチング素子からの発熱を効果的に放熱すべく、パワースイッチング素子は単一のヒートシンク上に配列して実装される。その際、複数のパワースイッチング素子が導電性のヒートシンクを介して意図せず電気的に接続されることを防止すべく、各パワースイッチング素子は絶縁シートを介してヒートシンク上に実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−233818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、絶縁シートは熱抵抗が大きいため(例えば、熱伝導率1W/m℃、厚み0.2mmの絶縁シートの熱抵抗は、約0.83℃/W)、パワースイッチング素子からヒートシンクへの熱伝導が絶縁シートによって阻害され、その結果、パワースイッチング素子の放熱効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、パワースイッチング素子の放熱効率を向上することが可能な電力変換装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る電力変換装置は、所定のブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子の放熱を行うためのヒートシンクと、を備え、前記ヒートシンクは、互いに離間することによって電気的に絶縁された複数のブロックに分割されており、各前記スイッチング素子は、前記ブロックとの間に絶縁シートを介在させることなく、各前記ブロックに接触して取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
第1の態様に係る電力変換装置によれば、各スイッチング素子は、ヒートシンクのブロックとの間に絶縁シートを介在させることなく、各ブロックに接触して取り付けられている。スイッチング素子とブロックとの間に絶縁シートが介在しないことにより、スイッチング素子からヒートシンクへの熱伝導が絶縁シートによって阻害される事態を回避できる。その結果、絶縁シートを用いる場合と比較して、スイッチング素子の放熱効率を向上することが可能となる。しかも、ヒートシンクは、互いに離間することによって電気的に絶縁された複数のブロックに分割されている。そのため、複数のスイッチング素子が導電性のヒートシンクを介して意図せず電気的に接続されるという事態を回避することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る電力変換装置は、第1の態様に係る電力変換装置において特に、前記複数のブロックを所定方向に沿って配列して収容するための第1の収容部と、所定の押さえ板を収容するための第2の収容部と、を有する枠体をさらに備え、前記押さえ板には、前記スイッチング素子の外形に対応する形状の複数の凹部が、所定方向に沿って形成されており、各前記凹部に各前記スイッチング素子が嵌め込まれた前記押さえ板を、前記第2の収容部に収容して固定することにより、前記第1の収容部に収容された各前記ブロックに各前記スイッチング素子が接触することを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係る電力変換装置によれば、各凹部に各スイッチング素子が嵌め込まれた押さえ板を、第2の収容部に収容して固定することにより、第1の収容部に収容された各ブロックに各スイッチング素子が接触する。従って、各スイッチング素子を各ブロックに個別にねじ止めする場合と比較して、位置決め作業や固定作業を簡略化することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る電力変換装置は、第2の態様に係る電力変換装置において特に、前記第2の収容部には、第1の位置決め構造が形成されており、前記押さえ板には、前記第1の位置決め構造に対応する第2の位置決め構造が形成されており、前記押さえ板が前記ヒートシンクに固定されることにより、前記第1の位置決め構造及び前記第2の位置決め構造によって、前記複数のスイッチング素子が前記ヒートシンクに押し付けられることを特徴とするものである。
【0012】
第3の態様に係る電力変換装置によれば、押さえ板がヒートシンクに固定されることにより、第1の位置決め構造及び第2の位置決め構造によって、複数のスイッチング素子がヒートシンクに押し付けられる。スイッチング素子がヒートシンクに押し付けられることにより、スイッチング素子はヒートシンクに確実に接触する。その結果、スイッチング素子からヒートシンクへの熱伝導が良好となるため、スイッチング素子の放熱効率を向上することが可能となる。しかも、複数のスイッチング素子に関して一括して位置決めを行うことができるため、ヒートシンク上へ複数のスイッチング素子を実装する際の位置決め作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パワースイッチング素子の放熱効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変換装置の適用例を簡略化して示す図である。
【図2】電力変換装置の構成を簡略化して示す回路図である。
【図3】放熱部の構造を示す斜視図である。
【図4】放熱部の構造を示す側面図である。
【図5】放熱部を分解して示す斜視図である。
【図6】枠体の構造を示す斜視図である。
【図7】押さえ板の構造を示す斜視図である。
【図8】ブロックの構造を示す斜視図である。
【図9】パワースイッチング素子の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置2の適用例を簡略化して示す図である。電力変換装置2は、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動自動車に適用され、当該電動自動車に搭載されているバッテリ3を商用電源1によって充電するための充電装置として使用される。
【0017】
図2は、電力変換装置2の構成を簡略化して示す回路図である。図2の接続関係で示すように、電力変換装置2は、整流回路5、力率改善回路6、ブリッジ回路7、トランス8、整流回路9、及び平滑回路10を備えて構成されている。ブリッジ回路7は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の複数のパワースイッチング素子15を用いて構成されている。商用電源1からの出力は、整流回路5によって整流されて力率改善回路6に入力される。力率改善回路6からの出力は、ブリッジ回路7によって高周波電圧に変換されてトランス8に入力される。トランス8からの出力は、整流回路9によって整流された後に平滑回路10によって平滑されてバッテリ3に供給される。
【0018】
電力変換装置2が動作するとパワースイッチング素子15は発熱するため、電力変換装置2には、パワースイッチング素子15からの発熱をヒートシンク22によって放熱するための放熱部100が設けられる。
【0019】
図3は、放熱部100の構造を示す斜視図である。図4は、図3中に示したXYZ直交座標のX方向から眺めた放熱部100の構造を示す側面図である。図5は、放熱部100を分解して示す斜視図である。図3〜5に示すように、放熱部100は、枠体20、押さえ板21、及びヒートシンク22を備えて構成されている。枠体20及び押さえ板21は樹脂等によって形成されており、ヒートシンク22は金属等によって形成されている。また、図5に示すように、ヒートシンク22は、複数(この例では6個)のブロック22Aに分割されている。図3を参照して、図示しないファンによって枠体20の一方の側面内にX方向から冷却風が送り込まれることにより、ヒートシンク22が冷却される。冷却風は、枠体20の他方の側面から排出される。
【0020】
図6、図7、図8、図9はそれぞれ、枠体20、押さえ板21、ブロック22A、パワースイッチング素子15の単体の構造を示す斜視図である。
【0021】
図6を参照して、枠体20には、それぞれに1個のブロック22Aを収容するための複数(この例では6個)の第1収容部31が形成されている。第1収容部31は、X方向に沿って互いに離間して形成されている。また、枠体20には、押さえ板21を収容するための第2収容部32が形成されている。第2収容部32には、上面61及び傾斜面62を有する位置決め構造60が形成されている。また、枠体20には、各第1収容部31と第2収容部32との間に開口33が形成されおり、これにより、各第1収容部31と第2収容部32とは空間的に繋がっている。
【0022】
図7を参照して、押さえ板21には、それぞれに1個のパワースイッチング素子15を収容するための複数(この例では6個)の凹部41が形成されている。凹部41は、X方向に沿って互いに離間して形成されている。凹部41の形成ピッチは、枠体20における第1収容部31の形成ピッチに等しく設定されている。凹部41の形状は、パワースイッチング素子15の外形形状に対応しており、1個の凹部41に1個のパワースイッチング素子15を嵌め込んで固定することが可能である。また、押さえ板21には、底面51及び傾斜面52を有する位置決め構造50が形成されている。傾斜面52の傾斜角度は、枠体20における傾斜面62の傾斜角度に等しく設定されている。
【0023】
図8を参照して、ブロック22Aには、表面積の増大によって放熱効率を高めるための放熱フィンが形成されている。
【0024】
図9を参照して、パワースイッチング素子15は樹脂によってパッケージングされており、例えばIGBTのゲート電極、コレクタ電極、エミッタ電極に接続された3本のリードがパッケージ本体から突出している。
【0025】
図5を参照して、放熱部100を組み立てる際には、枠体20の各第1収容部31に各ブロック22Aが収容される。第1収容部31同士が互いに離間していることにより、第1収容部31に収容されたブロック22A同士も互いに離間し、これにより、隣り合うブロック22A同士は互いに電気的に絶縁される。また、押さえ板21の各凹部41に各パワースイッチング素子15が嵌め込まれる。そして、全ての凹部41にパワースイッチング素子15が嵌め込まれた状態の押さえ板21が、枠体20の第2収容部32に収容される。その後、図3に示すように、枠体20と押さえ板21とが、複数箇所でネジ止めされることによって互いに固定される。これにより、押さえ板21から突出している各パワースイッチング素子15の放熱面が枠体20の開口33内に進入することにより、各ブロック22Aに接触する。本実施の形態に係る放熱部100においては、各パワースイッチング素子15と各ブロック22Aとの間に絶縁シートは介在していない。また、必要に応じて各パワースイッチング素子15と各ブロック22Aとの間にグリースを塗布してもよい。
【0026】
また、図4を参照して、枠体20と押さえ板21とを固定することにより、押さえ板21の位置決め構造50の底面51及び傾斜面52と、枠体20の位置決め構造60の上面61及び傾斜面62とがそれぞれ当接する。これにより、各パワースイッチング素子15が各ブロック22Aに押し付けられ、両者の接触が確実なものとなる。
【0027】
このように本実施の形態に係る電力変換装置2によれば、各パワースイッチング素子15は、ヒートシンク22のブロック22Aとの間に絶縁シートを介在させることなく、各ブロック22Aに接触して取り付けられている。パワースイッチング素子15とブロック22Aとの間に絶縁シートが介在しないことにより、パワースイッチング素子15からヒートシンク22への熱伝導が絶縁シートによって阻害される事態を回避できる。その結果、絶縁シートを用いる場合と比較して、パワースイッチング素子15の放熱効率を向上することが可能となる。しかも、ヒートシンク22は、互いに離間することによって電気的に絶縁された複数のブロック22Aに分割されている。そのため、複数のパワースイッチング素子15が導電性のヒートシンク22を介して意図せず電気的に接続されるという事態を回避することができる。
【0028】
また、本実施の形態に係る電力変換装置2によれば、各凹部41に各パワースイッチング素子15が嵌め込まれた押さえ板21を、枠体20の第2収容部32に収容して固定することにより、第1収容部31に収容された各ブロック22Aに各パワースイッチング素子15が接触する。従って、各パワースイッチング素子15を各ブロック22Aに個別にねじ止めする場合と比較して、位置決め作業や固定作業を簡略化することが可能となる。
【0029】
また、本実施の形態に係る電力変換装置2によれば、押さえ板21がヒートシンク22に固定されることにより、位置決め構造50,60によって、複数のパワースイッチング素子15がヒートシンク22に押し付けられる。パワースイッチング素子15がヒートシンク22に押し付けられることにより、パワースイッチング素子15はヒートシンク22に確実に接触する。その結果、パワースイッチング素子15からヒートシンク22への熱伝導が良好となるため、パワースイッチング素子15の放熱効率を向上することが可能となる。しかも、複数のパワースイッチング素子15に関して一括して位置決めを行うことができるため、ヒートシンク22上へ複数のパワースイッチング素子15を実装する際の位置決め作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【0030】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
2 電力変換装置
7 ブリッジ回路
15 パワースイッチング素子
20 枠体
21 押さえ板
22 ヒートシンク
22A ブロック
31 第1収容部
32 第2収容部
41 凹部
50,60 位置決め構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】

所定のブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子の放熱を行うためのヒートシンクと、
を備え、
前記ヒートシンクは、互いに離間することによって電気的に絶縁された複数のブロックに分割されており、
各前記スイッチング素子は、前記ブロックとの間に絶縁シートを介在させることなく、各前記ブロックに接触して取り付けられている、電力変換装置。
【請求項2】
前記複数のブロックを所定方向に沿って配列して収容するための第1の収容部と、
所定の押さえ板を収容するための第2の収容部と、
を有する枠体をさらに備え、
前記押さえ板には、前記スイッチング素子の外形に対応する形状の複数の凹部が、所定方向に沿って形成されており、
各前記凹部に各前記スイッチング素子が嵌め込まれた前記押さえ板を、前記第2の収容部に収容して固定することにより、前記第1の収容部に収容された各前記ブロックに各前記スイッチング素子が接触する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2の収容部には、第1の位置決め構造が形成されており、
前記押さえ板には、前記第1の位置決め構造に対応する第2の位置決め構造が形成されており、
前記押さえ板が前記ヒートシンクに固定されることにより、前記第1の位置決め構造及び前記第2の位置決め構造によって、前記複数のスイッチング素子が前記ヒートシンクに押し付けられる、請求項2に記載の電力変換装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161177(P2012−161177A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19577(P2011−19577)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】