電力変換装置
【課題】冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供すること。
【解決手段】複数の冷却管21を積層すると共に連結してなる積層冷却器2と、複数の半導体モジュール3と、積層冷却器2及び半導体モジュール3を収容する筐体4とを有する電力変換装置1。筐体4は、積層冷却器2における積層方向(X方向)と直交する方向(Z方向)において積層冷却器2に対向配置されたベースプレート41を有する。積層冷却器2は、ベースプレート41へ向かって突出する突出部22を備える。突出部22は、ベースプレート41の法線方向(Z方向)についてのベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制するよう構成してある。
【解決手段】複数の冷却管21を積層すると共に連結してなる積層冷却器2と、複数の半導体モジュール3と、積層冷却器2及び半導体モジュール3を収容する筐体4とを有する電力変換装置1。筐体4は、積層冷却器2における積層方向(X方向)と直交する方向(Z方向)において積層冷却器2に対向配置されたベースプレート41を有する。積層冷却器2は、ベースプレート41へ向かって突出する突出部22を備える。突出部22は、ベースプレート41の法線方向(Z方向)についてのベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制するよう構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷却管を積層した積層冷却器と、隣り合う冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールとを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却媒体を流通させる複数の冷却管を積層すると共に連結してなる積層冷却器と、隣り合う上記冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールとを、筐体に収容してなる電力変換装置がある。
上記積層冷却器は、複数の冷却管を連結して構成されていることから、積層方向に直交する方向の剛性が低くなりやすい。
【0003】
かかる電力変換装置が、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載された場合、電力変換装置に振動が伝わり、筐体に対して積層冷却器が振動することとなる。この振動のうち、特に積層方向に直交する方向の振動が加わったとき、積層冷却器がこの方向に振動し、場合によっては変形するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1においては、積層冷却器の剛性を向上させるべく、積層方向に直交する方向の3方向から積層冷却器を囲むようなガイドユニットを一対配設した電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4016907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ガイドユニットを用いた電力変換装置においては、ガイドユニットを設ける分、装置の重量化、大型化、及び部品点数の増加を招くこととなる。
また、ガイドユニットは、積層冷却器を3方向から囲むような形状を備えているため、組み付け作業が煩雑となるおそれがある。
また、ガイドユニットと積層冷却器との間には、所定の隙間を設けているため、積層冷却器が振動したとき、積層冷却器の一部がガイドユニットと衝突するおそれがある。その結果、積層冷却器が部分的に変形して冷却性能に影響を与えるおそれがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷却媒体を流通させる複数の冷却管を積層すると共に連結してなる積層冷却器と、
隣り合う上記冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールと、
上記積層冷却器及び上記半導体モジュールを収容する筐体とを有し、
該筐体は、上記積層冷却器における積層方向と直交する方向において該積層冷却器に対向配置されたベースプレートを有し、
上記積層冷却器は、上記ベースプレートへ向かって突出する突出部を備え、
該突出部は、上記ベースプレートの法線方向についての該ベースプレートに対する上記積層冷却器の位置を規制するよう構成してあることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置においては、上記積層冷却器が上記突出部を備えている。そして、突出部は、上記ベースプレートの法線方向についての該ベースプレートに対する上記積層冷却器の位置を規制するよう構成してある。これにより、上記積層冷却器は、上記筐体に対する上記ベースプレートの法線方向の位置が規制される。そのため、電力変換装置に振動が加わったとき、積層冷却器が筐体に対して上記法線方向に振動することを抑制することができる。
【0010】
また、上記のようにベースプレートに対する積層冷却器の位置を規制する手段として、上記積層冷却器から突出した突出部を用いている。それゆえ、ベースプレートとの間の位置決めを行う部分が、積層冷却器における冷却管等から離れた部分に形成されることとなる。それゆえ、振動等の外力がベースプレートから冷却管等にかかることを抑制し、冷却性能に影響を与えることを防ぐことができる。
【0011】
また、上記突出部は積層冷却器から突出形成されているため、積層冷却器に対して別部材を組み付けて位置決めを行うなどの必要がない。それゆえ、電力変換装置の部品点数を低減することができると共に、組立工数を低減することができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面説明図。
【図2】図1のA−A線断面矢視図。
【図3】図1のB−B線断面相当の電力変換装置の説明図。
【図4】実施例1における、ベースプレートの平面説明図。
【図5】実施例1における、積層冷却器の組付の斜視説明図。
【図6】実施例1における、突出部とベースプレートの組付前の状態の側面説明図。
【図7】実施例1における、突出部とベースプレートの組付後の状態の側面説明図。
【図8】実施例2における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図9】実施例2における、ベースプレートの平面説明図。
【図10】実施例2における、積層冷却器の組付の斜視説明図。
【図11】実施例3における、突出部とベースプレートの組付前の状態の側面説明図。
【図12】実施例3における、突出部とベースプレートの組付後の状態の側面説明図。
【図13】実施例4における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図14】実施例5における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図15】実施例6における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図16】実施例7における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図17】実施例8における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記電力変換装置において、上記冷却管及び上記筺体の材質としては、例えば、熱伝導性に優れたアルミ材等の金属を用いることができる。また、上記突出部は、上記積層冷却器と一体化された部品によって構成してもよいし、積層冷却器に別部材を取り付けて構成してもよい。
【0015】
また、上記突出部は、上記冷却管の壁部よりも剛性が低いことが好ましい(請求項2)。この場合には、上記冷却管よりも上記突出部が優先して変形するようにすることができる。これにより、振動等の外力が上記ベースプレートから上記冷却管にかかることを抑制し、上記冷却管の変形を防ぐことができる。そのため、冷却性能に影響を与えることを効果的に防ぐことができる。
【0016】
また、上記突出部は、上記積層冷却器における積層方向の複数個所に形成されていることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記積層冷却器について、上記筐体に対する上記ベースプレートの法線方向の位置を規制しやすくできる。そのため、上記積層冷却器が上記筐体に対して上記法線方向に振動することを効果的に抑制することができる。
【0017】
また、上記突出部は、上記ベースプレートに係合していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記ベースプレートの法線方向の双方について、上記筐体に対する上記積層冷却器の位置規制を容易に行うことができる。そのため、上記積層冷却器が、上記筐体に対して上記法線方向に振動することを効果的に抑制することができる。また、ベースプレートに平行な方向についての積層冷却器の位置規制も可能となる。
【0018】
また、上記ベースプレートは、上記突出部を挿入して係合させる貫通係合孔を備え、上記突出部は、突出方向に対して直交する方向に弾性変形可能なバネ部を備え、該バネ部が上記貫通係合孔の内側面に圧接することによって上記突出部が上記ベースプレートに係合していることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記突出部を上記ベースプレートに容易かつ安定して係合させることができる。
【0019】
また、上記バネ部は、上記積層方向に直交する方向に弾性変形するよう形成されていることが好ましい(請求項6)。この場合には、ベースプレートに対する積層冷却器の位置が、ベースプレートの法線方向の他に、積層方向に直交する方向にも規制される。また、かかる構成をとると積層方向については、ベースプレートに対して積層冷却器の位置を規制しないようにすることができる。その結果、筐体に積層冷却器を半導体モジュールと共に組み付けた後に、積層冷却器を積層方向に圧縮したりするなどの調整を行うことが可能となる。
【0020】
また、上記貫通係合孔は、上記ベースプレートの法線方向に貫通した貫通部と、該貫通部に隣接すると共に上記積層冷却器と反対側の面から窪んだ段部を形成してなり、該段部は、上記貫通部側を向いた側壁面と、上記貫通部の貫通方向を向いた底壁面とを備え、上記バネ部は、該段部の上記底壁面に面接触可能なストッパー部を有することが好ましい(請求項7)。この場合には、上記バネ部のストッパー部を、上記段部の上記底壁面に面接触させることができる。そのため、上記突出部を上記ベースプレートに確実に係合させることができると共に、上記ベースプレートから上記突出部の抜けを確実に防止することもできる。そのため、大きい振動が電力変換装置に加わった場合においても、上記積層冷却器が、上記筐体に対して大きく振動することを確実に抑制することができる。
【0021】
また、上記筐体は、互いに対向配置された一対の上記ベースプレートを備え、該一対のベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持してなり、上記突出部が上記一対のベースプレートの少なくとも一方に当接していることが好ましい(請求項8)。この場合には、上記ベースプレートの構造を簡素化しやすく、また筐体への積層冷却器の組み付けも容易にし易い。すなわち、一対の上記ベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持する構造とすることによって、例えば、上記ベースプレートに上記突出部が係合する被係合部を形成するなどの加工が不要となる。また、これに伴い、突出部を被係合部に係合する作業が不要となるため、組付けをより容易にできる。また、上記突出部を上記ベースプレートに当接させて積層冷却器の位置規制を行うことで、上記積層冷却器の冷却管等が変形することも防ぐことができる。
【0022】
また、上記積層冷却器は、上記一対のベースプレートに向かって上記突出部をそれぞれ突出形成してなり、上記一対のベースプレートの双方に上記突出部が当接していることが好ましい(請求項9)。この場合には、上記積層冷却器が上記突出部以外の部分においてベースプレートに当接しないようにすることができるため、上記積層冷却器の冷却管等が変形することをより確実に防ぐことができる。
【0023】
また、上記突出部は、上記冷却管から突出形成されていることが好ましい(請求項10)。この場合には、容易に上記突出部を形成することができる。
【0024】
また、上記冷却管は、上記積層方向及び上記ベースプレートの法線方向に直交する方向の複数個所に、上記突出部を備えていることが好ましい(請求項11)。この場合には、上記積層冷却器が上記筐体に対して振動することをより効果的に抑制することができる。
【0025】
また、上記突出部は、すべての上記冷却管から突出形成されていることが好ましい(請求項12)。この場合には、上記積層冷却器が上記筐体に対して振動することを、さらに効果的に抑制することができる。また、すべての冷却管の形状を同じ形状とすることも可能となるため、生産性を向上しやすくなる。
【0026】
また、上記突出部は、互いに隣り合わない複数の上記冷却管から突出形成されていてもよい(請求項13)。この場合には、すべての冷却管に突出部を形成する場合に比べて、材料費を低減させることができると共に、ベースプレートへの積層冷却器の組み付けを容易にすることができる。
【0027】
また、上記突出部は、隣り合う上記冷却管同士を連結する連結部から突出形成されていることが好ましい(請求項14)。この場合には、上記ベースプレートとの間の位置決めを行う部分を冷却管とは異なる部分に形成することとなるため、冷却管の変形を確実に防止できる。その結果、積層冷却器の冷却性能への影響をより低減することができる。
【0028】
また、上記突出部は、上記冷却管よりも上記ベースプレート側へ突出していることが好ましい(請求項15)。この場合には、例えば、平板状の一対のベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持することができる。それゆえ、ベースプレートの構造を簡素化することができると共に、組付けをより容易にできる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる、電力変換装置について、図1〜図7を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、冷却媒体を流通させる複数の冷却管21を積層すると共に連結してなる積層冷却器2と、隣り合う冷却管21の間に挟持された複数の半導体モジュール3と、積層冷却器2及び半導体モジュール3を収容する筐体4とを有する。
【0030】
また、図2に示すごとく、筐体4は、積層冷却器2における積層方向(X方向)と直交する方向(Z方向)において積層冷却器2に対向配置されたベースプレート41を有する。
また、積層冷却器2は、ベースプレート41へ向かって突出する突出部22を備えている。そして、突出部22は、ベースプレート41の法線方向(Z方向)についてのベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制するよう構成されている。
【0031】
以下において、積層冷却器2の積層方向を「X方向」、ベースプレート41の法線方向を「Z方向」、積層冷却器2の積層方向及びベースプレート41の法線方向に直交する方向を「Y方向」として説明する。
また、図3においては、半導体モジュール3を省略してある。
【0032】
図1〜図3に示すごとく、冷却管21は、互いに反対側を向いた一対の主面を備えている。そして、該主面が積層方向(X方向)となるように複数の冷却管21が積層されて、積層冷却器2が構成されている。冷却管21は、Y方向に長尺な形状を備え、その内部を冷却媒体がY方向に流通するよう構成されている。また、冷却管21は、アルミニウム等、熱伝導性に優れた金属によってその壁部を構成している。また、冷却管21以外においても、積層冷却器2は、アルミニウム等の金属によって構成されている。
【0033】
X方向に隣り合う冷却器21同士は、Y方向の両端部付近において、連結部23によって互いに連結されている。本例において、連結部23は、一方の冷却管21と一体化された突出開口管210と他方の冷却管21と一体化された突出開口管210とを嵌合してなる。ただし、連結部23の構成は、これに限らず、例えば冷却管21とは別部材である環状部材を隣り合う冷却管21の双方に接合することによって形成することもできる(後述する実施例8参照)。
【0034】
また、X方向の一端に配置された冷却管21におけるY方向の両端部付近には、X方向に突出するように冷媒導入管24と冷媒排出管25とが取り付けてある。これにより、冷却媒体を冷媒導入管24から積層冷却器2内に導入すると共に、冷却媒体を複数の冷却管21に循環させた後、冷媒排出管25から排出することができる。
上記のように構成された積層冷却器2における隣り合う冷却管21の間に、半導体モジュール3が挟持されている。そのため、冷却媒体が積層冷却器2内を循環する間に、冷却媒体が半導体モジュール3との間で熱交換することにより、半導体モジュール3を冷却することができる。
【0035】
また、図2、図3に示すごとく、冷却管21におけるZ方向の端部からは、Z方向に突出部22が突出形成されている。突出部22は、冷却管21と一体的に形成されており、冷却管21と同じく、アルミニウム等の金属からなる。ただし、突出部22は、冷却管21の壁部よりも剛性を低くしてある。
【0036】
また、図3に示すごとく、突出部22は、積層冷却器2における積層方向(X方向)の複数個所に形成されている。本例においては、すべての冷却管21に突出部22が形成されている。また、各冷却管21は、Y方向の2個所に突出部22を備えている。
【0037】
また、図2に示すごとく、突出部22は、ベースプレート41に係合している。
ベースプレート41は、突出部22を挿入して係合させる貫通係合孔42を有している。ここで、図4に示すごとく、本例の貫通係合孔42は、ベースプレート41におけるY方向の2箇所において、X方向に長尺な長方形状に形成されている。一方の貫通係合孔42には、複数の冷却管21における一方の突出部22が係合し、他方の貫通係合孔42には、複数の冷却管21における他方の突出部22が係合する。
【0038】
また、図2に示すごとく、突出部22は、突出方向(Z方向)及び積層方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に弾性変形可能なバネ部220を備えている。そして、図7に示すごとく、バネ部220が貫通係合孔42の内側面420に圧接することによって突出部22がベースプレート41に係合している。
【0039】
バネ部220は、図6に示すごとく、突出部22の突出側先端部からY方向の内側に折り返されるように形成されている。バネ部220を含めた突出部22は、板状体によって形成されており、板状体の厚み方向がY方向となるように形成されている。この板状体が上記のように厚み方向に折り返されることにより、バネ部220が形成されており、折り返された部分は湾曲している。
このように形成されたバネ部220は、ベースプレート41における貫通係合孔42に挿嵌されたとき、Y方向の両側に向かって付勢力(復元力)が作用した状態で、貫通係合孔42の内壁面420に圧接することとなる。
【0040】
また、この状態において、バネ部220は、貫通係合孔42における積層冷却器2と反対側の面に開口する開口部の角部に当接することとなるため、積層冷却器2がベースプレート41に向かって引っ張られるような力が作用する。これにより、積層冷却器2に挟持された半導体モジュール3がベースプレート41に当接した状態で、積層冷却器2と半導体モジュール3とが、筐体4内に保持されることとなる。
【0041】
次に、筐体4に対する積層冷却器2の組付け手順について、図5〜図7を用いて説明する。
まず、図5、図6に示すごとく、ベースプレート41の貫通係合孔42に対して、積層冷却器2の突出部22を、上方(Z方向)から挿嵌させる。なお、図5においては、積層冷却器2の一部のみを記載しており、また、筐体4についてもベースプレート41のみを記載している。
【0042】
そして、図7に示すごとく、組付け後の弾性変形したバネ部220においては、貫通係合孔42の内側面420に向かう復元力が生じており、この復元力により突出部22がベースプレート41に係合した状態となる。
次いで、隣り合う冷却管21の間に、半導体モジュール3を配置する。なお、筐体4に積層冷却器2を配置する前に、積層冷却器2に半導体モジュール3を配置しておいて、積層冷却器2と共に半導体モジュール3を筐体4内に配置してもよい。
【0043】
次いで、半導体モジュール3を配置した積層冷却器2を、積層方向(X方向)に加圧して、半導体モジュール3と冷却管21との密着力を高める。このとき、各冷却管21はベースプレート41に対して、積層方向(X方向)に移動することがあるが、突出部22が係合している貫通係合孔42がX方向に長尺に形成されているため、この移動を許容することができる。
また、組付け後の積層冷却器2は、例えば、板バネ等から構成される加圧部材(図示略)によって積層方向(X方向)に加圧され、半導体モジュール3と冷却管21との密着力が保持される。
【0044】
次に、本例の電力変換装置1の作用効果について説明する。
本例の電力変換装置1においては、積層冷却器2が突出部22を備えている。そして、突出部22は、ベースプレート41の法線方向(Z方向)についてのベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制するよう構成してある。これにより、積層冷却器2は、筐体4に対するZ方向の位置が規制される。そのため、電力変換装置1に振動が加わったとき、積層冷却器2が筐体4に対してZ方向に振動することを抑制することができる。
【0045】
また、上記のようにベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制する手段として、積層冷却器2から突出した突出部22を用いている。それゆえ、ベースプレート41との間の位置決めを行う部分が、積層冷却器2における冷却管21等から離れた部分に形成されることとなる。それゆえ、振動等の外力がベースプレート41から冷却管21等にかかることを抑制し、冷却性能に影響を与えることを防ぐことができる。
【0046】
また、突出部22は積層冷却器2から突出形成されているため、積層冷却器2に対して別部材を組み付けて位置決めを行うなどの必要がない。それゆえ、電力変換装置1の部品点数を低減することができると共に、組立工数を低減することができる。
【0047】
また、突出部22は、冷却管21の壁部よりも剛性が低い。これによって、冷却管21よりも突出部22が優先して変形するようにすることができる。これにより、振動等の外力がベースプレート41から冷却管21にかかることを抑制し、冷却管21の変形を防ぐことができる。そのため、冷却性能に影響を与えることを効果的に防ぐことができる。
【0048】
また、突出部22は、積層冷却器2における積層方向(X方向)の複数個所に形成されている。これによって、積層冷却器2を、筐体4に対するZ方向の位置を規制しやすくできる。そのため、積層冷却器2が筐体4に対してZ方向に振動することを効果的に抑制することができる。
【0049】
また、突出部22は、ベースプレート41に係合している。これによって、Z方向の双方について、筐体4に対する積層冷却器2の位置規制を容易に行うことができる。そのため、積層冷却器2が、筐体4に対してZ方向に振動することを効果的に抑制することができる。また、ベースプレート41に平行な方向についての積層冷却器2の位置規制も可能となる。
【0050】
また、ベースプレート41は、突出部22を挿入して係合させる貫通係合孔42を備え、突出部22は、突出方向に対して直交する方向に弾性変形可能なバネ部220を備え、バネ部220が貫通係合孔42の内側面に圧接することによって突出部22がベースプレート41に係合している。これによって、突出部22をベースプレート41に容易かつ安定して係合させることができる。
【0051】
また、バネ部220は、積層方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に弾性変形するよう形成されている。これによって、ベースプレート41に対する積層冷却器2の位置が、Z方向の他に、Y方向にも規制される。また、かかる構成をとるとX方向については、ベースプレート41に対して積層冷却器2の位置を規制しないようにすることができる。その結果、筐体4に積層冷却器2を半導体モジュール3と共に組み付けた後に、積層冷却器2をX方向に圧縮したりするなどの調整を行うことが可能となる。
【0052】
また、冷却管21は、積層方向(X方向)及びベースプレート41の法線方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)の複数個所に、突出部22を備えている。これによって、積層冷却器2が筐体4に対して振動することをより効果的に抑制することができる。
【0053】
また、突出部22は、すべての冷却管21から突出形成されている。これによって、積層冷却器2が筐体4に対して振動することを、さらに効果的に抑制することができる。また、すべての冷却管21の形状を同じ形状とすることも可能となるため、生産性を向上しやすくなる。
【0054】
以上のごとく、本例によれば、冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供することができる。
【0055】
なお、本例の電力変換装置1においては、図3に示すごとく、突出部22がすべての冷却管21に形成されているが、これに限定されるものではなく、一部の冷却管21にのみ
形成してもよい。例えば、突出部22を、互いに隣り合わない複数の冷却管21から突出形成させてもよい。この場合には、すべての冷却管21に突出部22を形成する場合に比べて、材料費を低減させることができると共に、ベースプレート41への積層冷却器2の組み付けを容易にすることができる。
また、場合によっては、突出部22を、1個の冷却管21にのみ形成しても構わない。
【0056】
また、本例の突出部22は、冷却管21と一体的に形成されているが、例えば、突出部22を冷却管21とは別体によって形成してもよい。
また、本例の冷却管21は、Y方向の2個所に、突出部22を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、各冷却管21における突出部22の形成箇所は3個所以上としてもよいし、1個とすることもできる。
【0057】
(実施例2)
本例は、図8〜図10に示すごとく、突出部22におけるバネ部220が、積層方向(X方向)に弾性変形するよう形成された例である。
本例においても、突出部22は、冷却管21から突出した板状体を屈曲して形成したものであるが、その板状体の板厚方向がX方向となるように配設してある。
【0058】
ベースプレート41の貫通係合孔42は、図9に示すごとく、突出部22の形成数に応じて形成されている。つまり、一つの突出部22に対して一つの貫通係合孔42が、ベースプレート41の所定の位置に形成されている。
貫通係合孔42は、突出部22のバネ部220が貫通係合可能なよう、若干Y方向に長尺な長方形に形成されている。
【0059】
本例の電力変換装置1においても、筐体4に積層冷却器2を配置するにあたって、図10に示すごとく、ベースプレート41の貫通係合孔42に対して積層冷却器2の突出部22を上方(Z方向)から挿嵌させて組付ける。ただし、本例においては、貫通係合孔42がX方向に長尺に形成されていないため、ベースプレート41に突出部22を係合させた後に積層冷却器2と半導体モジュール3との積層体をX方向に圧縮することが困難である。それゆえ、本例の場合には、筐体4の外で、積層冷却器2と半導体モジュール3とを組み合せると共に積層方向(X方向)に圧縮した後に、これらの積層体を筐体4内に配設することとなる。
その他は、実施例1と同様である。
【0060】
本例のバネ部220は、積層方向(X方向)に平行する方向に弾性変形すると共に、ベースプレート41の貫通係合孔42の形状は、突出部22のバネ部220が、貫通係合可能に、突出部22の数に応じて形成されている。これによって、組付ける際の筺体4のベースプレート41に対する積層冷却器2の位置決めを容易にできる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0061】
(実施例3)
本例は、図11、図12に示すごとく、貫通係合孔42に貫通部421と段部422を形成すると共に、バネ部220には、段部422に面接触可能なストッパー部221を形成した例である。
【0062】
上記貫通係合孔42は、図11、図12に示すごとく、ベースプレート41の法線方向(Z方向)に貫通した貫通部421と、貫通部421に隣接すると共に積層冷却器2と反対側(図11、図12における下側)の面から窪んだ段部422を形成している。段部422は、貫通部421側を向いた側壁面423と、貫通部421の貫通方向を向いた底壁面424とを備える。
【0063】
また、バネ部220は、段部422の底壁面424に面接触可能なストッパー部221を有する。すなわち、バネ部220は、突出部22の突出側先端部から折り返された折返し部の先端において、突出部22の突出方向(Z方向)に直交するように屈曲して、ストッパー部221を形成している。
【0064】
図12に示すごとく、バネ部220を貫通係合孔42に嵌合させたとき、バネ部220の一部は、段部422の側壁部423の角部に当接し、ストッパー部221が底壁部424に対向配置される。ここで、ストッパー部221は、底壁部424に接触していてもよいし、隙間を介して対向していてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0065】
本例の場合には、バネ部220のストッパー部221を、段部422の底壁面424に面接触させることができる。そのため、突出部22をベースプレート41に確実に係合させることができると共に、ベースプレート41から突出部22の抜けを確実に防止することもできる。そのため、大きい振動が電力変換装置1に加わった場合においても、積層冷却器2が、筐体4に対して大きく振動することを確実に抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0066】
(実施例4)
本例は、図13に示すごとく、積層冷却器2における連結部23に突出部22を設けると共に、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持した例である。
突出部22は、隣り合う冷却管21同士を連結する連結部23から突出形成されている。具体的には、連結部23を構成する一方の突出開口管210の一部を延長することによって、突出部22を形成している。
【0067】
筐体4は、図13に示すごとく、互いに対向配置された一対のベースプレート41を備える。具体的には、筐体4は、Z方向の一方の面が開放された略直方体形状の箱型を有するケース本体401と、ケース本体401の開放面を塞ぐように配設される蓋体402とからなる。上記一対のベースプレート41のうちの一方がケース本体401の底面部を構成するものであり、他方が蓋体402である。蓋部402は、ケース本体401に対して、ボルト等によって固定される。
【0068】
本例の電力変換装置1は、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持してなり、突出部22が一対のベースプレート41の一方(蓋体402)に当接している。そして、積層冷却器2の冷却管21を他方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)に当接させている。
【0069】
また、本例においては、突出部22は、冷却管21よりもZ方向に突出していない。そのため、突出部22に当接する側のベースプレート41(蓋体402)には、突出部22に向かって隆起した複数の凸部43が形成されている。この凸部43に突出部22が当接している。
その他は、実施例1と同様である。
【0070】
本例の場合には、ベースプレート41の構造を簡素化しやすく、また筐体4への積層冷却器2の組み付けも容易にし易い。すなわち、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持する構造とすることによって、例えば、ベースプレート41に突出部22が係合する被係合部(例えば、実施例1の図2〜図5に示した貫通係合孔42)を形成するなどの加工が不要となる。また、これに伴い、突出部22を被係合部に係合する作業が不要となるため、組付けをより容易にできる。また、突出部22をベースプレート41に当接させて積層冷却器2の位置規制を行うことで、積層冷却器2の冷却管21等が変形することも防ぐことができる。
【0071】
また、突出部22は、隣り合う冷却管21同士を連結する連結部23から突出形成されている。これによって、ベースプレート41との間の位置決めを行う部分を冷却管21とは異なる部分に形成することとなるため、冷却管21の変形を確実に防止できる。その結果、積層冷却器2の冷却性能への影響をより低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0072】
(実施例5)
本例は、図14に示すごとく、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持して、突出部22を一対のベースプレート41の双方に当接させた例である。
積層冷却器2は、連結管23から一対のベースプレート41に向かって突出部22をそれぞれ突出形成してなり、一対のベースプレート41の双方に突出部22が当接している。
また、本例においては、一対のベースプレート41の双方(蓋部402及びケース本体401の底面部)に、突出部22が当接可能な凸部43が形成されている。
その他は、実施例4と同様である。
【0073】
本例の場合には、積層冷却器2が突出部22以外の部分においてベースプレート41に当接しないようにすることができるため、積層冷却器2の冷却管21等が変形することをより確実に防ぐことができる。
その他、実施例4と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施例6)
本例は、図15に示すごとく、突出部22を冷却管21よりもベースプレート41側へ突出するように形成した例である。
一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持して、突出部22を一対のベースプレート41の一方(蓋体402)に当接させている。また、他方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)には、積層冷却器2の冷却管21が当接している。
なお、突出部22をケース本体401の底面部に当接させ、冷却管21を蓋体402に当接させる構成としてもよい。
その他、実施例4と同様である。
【0075】
本例の場合には、平板状の一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持することができる。それゆえ、ベースプレート41の構造を簡素化することができると共に、組付けをより容易にできる。
その他、実施例4と同様の作用効果を有する。
【0076】
(実施例7)
本例は、図16に示すごとく、突出部22を、一対のベースプレート41の双方へ向かって、冷却管21よりも突出させた例である。
これにより、連結部23から一方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)側に突出した突出部22と、他方のベースプレート41(蓋部402)側に突出した突出部22との双方が、ベースプレート41に当接している。
その他は、実施例6と同様である。
本例によれば、上述した実施例5の作用効果と実施例6の作用効果との双方を奏することができる。
【0077】
(実施例8)
本例は、図17に示すごとく、連結部23を冷却管21とは別部材の環状部材によって構成し、該環状部材の外周面から突出部22を突出させた例である。
すなわち、連結部23は、環状部材を冷却管21に接合してなる。この連結部23の外周面から、少なくともZ方向の一方へ突出部22を突出形成してある。また、突出部22は、一方のベースプレート41(蓋部402)へ向かって、冷却管21よりも突出している。これにより、平板状の蓋部402(ベースプレート41)に突出部22が当接している。
また、積層冷却器2は、冷却管21において、他方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)に当接している。
その他は、実施例6と同様である。
【0078】
本例の場合には、冷却管21とは、別部材の連結管23(環状部材)に突出部22を形成することとなるため、その加工が容易となる。
その他、実施例6と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
なお、突出部22は、連結部23の全周にわたって環状に形成することもできる。この場合には、突出部22をZ方向の双方において、冷却管21よりも突出させることができる。そのため、実施例7と同様に、一対のベースプレート41に突出部22を当接させることができる。
【0080】
本発明の電力変換装置は、上述した実施例以外にも、種々の態様をとり得る。
例えば、冷却管から突出させた突出部をベースプレートに当接させる構成とすることもできるし、連結部から突出させた突出部をベースプレートに係合させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 電力変換装置
2 積層冷却器
21 冷却管
22 突出部
3 半導体モジュール
4 筺体
41 ベースプレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷却管を積層した積層冷却器と、隣り合う冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールとを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却媒体を流通させる複数の冷却管を積層すると共に連結してなる積層冷却器と、隣り合う上記冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールとを、筐体に収容してなる電力変換装置がある。
上記積層冷却器は、複数の冷却管を連結して構成されていることから、積層方向に直交する方向の剛性が低くなりやすい。
【0003】
かかる電力変換装置が、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載された場合、電力変換装置に振動が伝わり、筐体に対して積層冷却器が振動することとなる。この振動のうち、特に積層方向に直交する方向の振動が加わったとき、積層冷却器がこの方向に振動し、場合によっては変形するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1においては、積層冷却器の剛性を向上させるべく、積層方向に直交する方向の3方向から積層冷却器を囲むようなガイドユニットを一対配設した電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4016907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ガイドユニットを用いた電力変換装置においては、ガイドユニットを設ける分、装置の重量化、大型化、及び部品点数の増加を招くこととなる。
また、ガイドユニットは、積層冷却器を3方向から囲むような形状を備えているため、組み付け作業が煩雑となるおそれがある。
また、ガイドユニットと積層冷却器との間には、所定の隙間を設けているため、積層冷却器が振動したとき、積層冷却器の一部がガイドユニットと衝突するおそれがある。その結果、積層冷却器が部分的に変形して冷却性能に影響を与えるおそれがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷却媒体を流通させる複数の冷却管を積層すると共に連結してなる積層冷却器と、
隣り合う上記冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールと、
上記積層冷却器及び上記半導体モジュールを収容する筐体とを有し、
該筐体は、上記積層冷却器における積層方向と直交する方向において該積層冷却器に対向配置されたベースプレートを有し、
上記積層冷却器は、上記ベースプレートへ向かって突出する突出部を備え、
該突出部は、上記ベースプレートの法線方向についての該ベースプレートに対する上記積層冷却器の位置を規制するよう構成してあることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置においては、上記積層冷却器が上記突出部を備えている。そして、突出部は、上記ベースプレートの法線方向についての該ベースプレートに対する上記積層冷却器の位置を規制するよう構成してある。これにより、上記積層冷却器は、上記筐体に対する上記ベースプレートの法線方向の位置が規制される。そのため、電力変換装置に振動が加わったとき、積層冷却器が筐体に対して上記法線方向に振動することを抑制することができる。
【0010】
また、上記のようにベースプレートに対する積層冷却器の位置を規制する手段として、上記積層冷却器から突出した突出部を用いている。それゆえ、ベースプレートとの間の位置決めを行う部分が、積層冷却器における冷却管等から離れた部分に形成されることとなる。それゆえ、振動等の外力がベースプレートから冷却管等にかかることを抑制し、冷却性能に影響を与えることを防ぐことができる。
【0011】
また、上記突出部は積層冷却器から突出形成されているため、積層冷却器に対して別部材を組み付けて位置決めを行うなどの必要がない。それゆえ、電力変換装置の部品点数を低減することができると共に、組立工数を低減することができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面説明図。
【図2】図1のA−A線断面矢視図。
【図3】図1のB−B線断面相当の電力変換装置の説明図。
【図4】実施例1における、ベースプレートの平面説明図。
【図5】実施例1における、積層冷却器の組付の斜視説明図。
【図6】実施例1における、突出部とベースプレートの組付前の状態の側面説明図。
【図7】実施例1における、突出部とベースプレートの組付後の状態の側面説明図。
【図8】実施例2における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図9】実施例2における、ベースプレートの平面説明図。
【図10】実施例2における、積層冷却器の組付の斜視説明図。
【図11】実施例3における、突出部とベースプレートの組付前の状態の側面説明図。
【図12】実施例3における、突出部とベースプレートの組付後の状態の側面説明図。
【図13】実施例4における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図14】実施例5における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図15】実施例6における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図16】実施例7における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【図17】実施例8における、電力変換装置の図3に相当する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記電力変換装置において、上記冷却管及び上記筺体の材質としては、例えば、熱伝導性に優れたアルミ材等の金属を用いることができる。また、上記突出部は、上記積層冷却器と一体化された部品によって構成してもよいし、積層冷却器に別部材を取り付けて構成してもよい。
【0015】
また、上記突出部は、上記冷却管の壁部よりも剛性が低いことが好ましい(請求項2)。この場合には、上記冷却管よりも上記突出部が優先して変形するようにすることができる。これにより、振動等の外力が上記ベースプレートから上記冷却管にかかることを抑制し、上記冷却管の変形を防ぐことができる。そのため、冷却性能に影響を与えることを効果的に防ぐことができる。
【0016】
また、上記突出部は、上記積層冷却器における積層方向の複数個所に形成されていることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記積層冷却器について、上記筐体に対する上記ベースプレートの法線方向の位置を規制しやすくできる。そのため、上記積層冷却器が上記筐体に対して上記法線方向に振動することを効果的に抑制することができる。
【0017】
また、上記突出部は、上記ベースプレートに係合していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記ベースプレートの法線方向の双方について、上記筐体に対する上記積層冷却器の位置規制を容易に行うことができる。そのため、上記積層冷却器が、上記筐体に対して上記法線方向に振動することを効果的に抑制することができる。また、ベースプレートに平行な方向についての積層冷却器の位置規制も可能となる。
【0018】
また、上記ベースプレートは、上記突出部を挿入して係合させる貫通係合孔を備え、上記突出部は、突出方向に対して直交する方向に弾性変形可能なバネ部を備え、該バネ部が上記貫通係合孔の内側面に圧接することによって上記突出部が上記ベースプレートに係合していることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記突出部を上記ベースプレートに容易かつ安定して係合させることができる。
【0019】
また、上記バネ部は、上記積層方向に直交する方向に弾性変形するよう形成されていることが好ましい(請求項6)。この場合には、ベースプレートに対する積層冷却器の位置が、ベースプレートの法線方向の他に、積層方向に直交する方向にも規制される。また、かかる構成をとると積層方向については、ベースプレートに対して積層冷却器の位置を規制しないようにすることができる。その結果、筐体に積層冷却器を半導体モジュールと共に組み付けた後に、積層冷却器を積層方向に圧縮したりするなどの調整を行うことが可能となる。
【0020】
また、上記貫通係合孔は、上記ベースプレートの法線方向に貫通した貫通部と、該貫通部に隣接すると共に上記積層冷却器と反対側の面から窪んだ段部を形成してなり、該段部は、上記貫通部側を向いた側壁面と、上記貫通部の貫通方向を向いた底壁面とを備え、上記バネ部は、該段部の上記底壁面に面接触可能なストッパー部を有することが好ましい(請求項7)。この場合には、上記バネ部のストッパー部を、上記段部の上記底壁面に面接触させることができる。そのため、上記突出部を上記ベースプレートに確実に係合させることができると共に、上記ベースプレートから上記突出部の抜けを確実に防止することもできる。そのため、大きい振動が電力変換装置に加わった場合においても、上記積層冷却器が、上記筐体に対して大きく振動することを確実に抑制することができる。
【0021】
また、上記筐体は、互いに対向配置された一対の上記ベースプレートを備え、該一対のベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持してなり、上記突出部が上記一対のベースプレートの少なくとも一方に当接していることが好ましい(請求項8)。この場合には、上記ベースプレートの構造を簡素化しやすく、また筐体への積層冷却器の組み付けも容易にし易い。すなわち、一対の上記ベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持する構造とすることによって、例えば、上記ベースプレートに上記突出部が係合する被係合部を形成するなどの加工が不要となる。また、これに伴い、突出部を被係合部に係合する作業が不要となるため、組付けをより容易にできる。また、上記突出部を上記ベースプレートに当接させて積層冷却器の位置規制を行うことで、上記積層冷却器の冷却管等が変形することも防ぐことができる。
【0022】
また、上記積層冷却器は、上記一対のベースプレートに向かって上記突出部をそれぞれ突出形成してなり、上記一対のベースプレートの双方に上記突出部が当接していることが好ましい(請求項9)。この場合には、上記積層冷却器が上記突出部以外の部分においてベースプレートに当接しないようにすることができるため、上記積層冷却器の冷却管等が変形することをより確実に防ぐことができる。
【0023】
また、上記突出部は、上記冷却管から突出形成されていることが好ましい(請求項10)。この場合には、容易に上記突出部を形成することができる。
【0024】
また、上記冷却管は、上記積層方向及び上記ベースプレートの法線方向に直交する方向の複数個所に、上記突出部を備えていることが好ましい(請求項11)。この場合には、上記積層冷却器が上記筐体に対して振動することをより効果的に抑制することができる。
【0025】
また、上記突出部は、すべての上記冷却管から突出形成されていることが好ましい(請求項12)。この場合には、上記積層冷却器が上記筐体に対して振動することを、さらに効果的に抑制することができる。また、すべての冷却管の形状を同じ形状とすることも可能となるため、生産性を向上しやすくなる。
【0026】
また、上記突出部は、互いに隣り合わない複数の上記冷却管から突出形成されていてもよい(請求項13)。この場合には、すべての冷却管に突出部を形成する場合に比べて、材料費を低減させることができると共に、ベースプレートへの積層冷却器の組み付けを容易にすることができる。
【0027】
また、上記突出部は、隣り合う上記冷却管同士を連結する連結部から突出形成されていることが好ましい(請求項14)。この場合には、上記ベースプレートとの間の位置決めを行う部分を冷却管とは異なる部分に形成することとなるため、冷却管の変形を確実に防止できる。その結果、積層冷却器の冷却性能への影響をより低減することができる。
【0028】
また、上記突出部は、上記冷却管よりも上記ベースプレート側へ突出していることが好ましい(請求項15)。この場合には、例えば、平板状の一対のベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持することができる。それゆえ、ベースプレートの構造を簡素化することができると共に、組付けをより容易にできる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる、電力変換装置について、図1〜図7を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、冷却媒体を流通させる複数の冷却管21を積層すると共に連結してなる積層冷却器2と、隣り合う冷却管21の間に挟持された複数の半導体モジュール3と、積層冷却器2及び半導体モジュール3を収容する筐体4とを有する。
【0030】
また、図2に示すごとく、筐体4は、積層冷却器2における積層方向(X方向)と直交する方向(Z方向)において積層冷却器2に対向配置されたベースプレート41を有する。
また、積層冷却器2は、ベースプレート41へ向かって突出する突出部22を備えている。そして、突出部22は、ベースプレート41の法線方向(Z方向)についてのベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制するよう構成されている。
【0031】
以下において、積層冷却器2の積層方向を「X方向」、ベースプレート41の法線方向を「Z方向」、積層冷却器2の積層方向及びベースプレート41の法線方向に直交する方向を「Y方向」として説明する。
また、図3においては、半導体モジュール3を省略してある。
【0032】
図1〜図3に示すごとく、冷却管21は、互いに反対側を向いた一対の主面を備えている。そして、該主面が積層方向(X方向)となるように複数の冷却管21が積層されて、積層冷却器2が構成されている。冷却管21は、Y方向に長尺な形状を備え、その内部を冷却媒体がY方向に流通するよう構成されている。また、冷却管21は、アルミニウム等、熱伝導性に優れた金属によってその壁部を構成している。また、冷却管21以外においても、積層冷却器2は、アルミニウム等の金属によって構成されている。
【0033】
X方向に隣り合う冷却器21同士は、Y方向の両端部付近において、連結部23によって互いに連結されている。本例において、連結部23は、一方の冷却管21と一体化された突出開口管210と他方の冷却管21と一体化された突出開口管210とを嵌合してなる。ただし、連結部23の構成は、これに限らず、例えば冷却管21とは別部材である環状部材を隣り合う冷却管21の双方に接合することによって形成することもできる(後述する実施例8参照)。
【0034】
また、X方向の一端に配置された冷却管21におけるY方向の両端部付近には、X方向に突出するように冷媒導入管24と冷媒排出管25とが取り付けてある。これにより、冷却媒体を冷媒導入管24から積層冷却器2内に導入すると共に、冷却媒体を複数の冷却管21に循環させた後、冷媒排出管25から排出することができる。
上記のように構成された積層冷却器2における隣り合う冷却管21の間に、半導体モジュール3が挟持されている。そのため、冷却媒体が積層冷却器2内を循環する間に、冷却媒体が半導体モジュール3との間で熱交換することにより、半導体モジュール3を冷却することができる。
【0035】
また、図2、図3に示すごとく、冷却管21におけるZ方向の端部からは、Z方向に突出部22が突出形成されている。突出部22は、冷却管21と一体的に形成されており、冷却管21と同じく、アルミニウム等の金属からなる。ただし、突出部22は、冷却管21の壁部よりも剛性を低くしてある。
【0036】
また、図3に示すごとく、突出部22は、積層冷却器2における積層方向(X方向)の複数個所に形成されている。本例においては、すべての冷却管21に突出部22が形成されている。また、各冷却管21は、Y方向の2個所に突出部22を備えている。
【0037】
また、図2に示すごとく、突出部22は、ベースプレート41に係合している。
ベースプレート41は、突出部22を挿入して係合させる貫通係合孔42を有している。ここで、図4に示すごとく、本例の貫通係合孔42は、ベースプレート41におけるY方向の2箇所において、X方向に長尺な長方形状に形成されている。一方の貫通係合孔42には、複数の冷却管21における一方の突出部22が係合し、他方の貫通係合孔42には、複数の冷却管21における他方の突出部22が係合する。
【0038】
また、図2に示すごとく、突出部22は、突出方向(Z方向)及び積層方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に弾性変形可能なバネ部220を備えている。そして、図7に示すごとく、バネ部220が貫通係合孔42の内側面420に圧接することによって突出部22がベースプレート41に係合している。
【0039】
バネ部220は、図6に示すごとく、突出部22の突出側先端部からY方向の内側に折り返されるように形成されている。バネ部220を含めた突出部22は、板状体によって形成されており、板状体の厚み方向がY方向となるように形成されている。この板状体が上記のように厚み方向に折り返されることにより、バネ部220が形成されており、折り返された部分は湾曲している。
このように形成されたバネ部220は、ベースプレート41における貫通係合孔42に挿嵌されたとき、Y方向の両側に向かって付勢力(復元力)が作用した状態で、貫通係合孔42の内壁面420に圧接することとなる。
【0040】
また、この状態において、バネ部220は、貫通係合孔42における積層冷却器2と反対側の面に開口する開口部の角部に当接することとなるため、積層冷却器2がベースプレート41に向かって引っ張られるような力が作用する。これにより、積層冷却器2に挟持された半導体モジュール3がベースプレート41に当接した状態で、積層冷却器2と半導体モジュール3とが、筐体4内に保持されることとなる。
【0041】
次に、筐体4に対する積層冷却器2の組付け手順について、図5〜図7を用いて説明する。
まず、図5、図6に示すごとく、ベースプレート41の貫通係合孔42に対して、積層冷却器2の突出部22を、上方(Z方向)から挿嵌させる。なお、図5においては、積層冷却器2の一部のみを記載しており、また、筐体4についてもベースプレート41のみを記載している。
【0042】
そして、図7に示すごとく、組付け後の弾性変形したバネ部220においては、貫通係合孔42の内側面420に向かう復元力が生じており、この復元力により突出部22がベースプレート41に係合した状態となる。
次いで、隣り合う冷却管21の間に、半導体モジュール3を配置する。なお、筐体4に積層冷却器2を配置する前に、積層冷却器2に半導体モジュール3を配置しておいて、積層冷却器2と共に半導体モジュール3を筐体4内に配置してもよい。
【0043】
次いで、半導体モジュール3を配置した積層冷却器2を、積層方向(X方向)に加圧して、半導体モジュール3と冷却管21との密着力を高める。このとき、各冷却管21はベースプレート41に対して、積層方向(X方向)に移動することがあるが、突出部22が係合している貫通係合孔42がX方向に長尺に形成されているため、この移動を許容することができる。
また、組付け後の積層冷却器2は、例えば、板バネ等から構成される加圧部材(図示略)によって積層方向(X方向)に加圧され、半導体モジュール3と冷却管21との密着力が保持される。
【0044】
次に、本例の電力変換装置1の作用効果について説明する。
本例の電力変換装置1においては、積層冷却器2が突出部22を備えている。そして、突出部22は、ベースプレート41の法線方向(Z方向)についてのベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制するよう構成してある。これにより、積層冷却器2は、筐体4に対するZ方向の位置が規制される。そのため、電力変換装置1に振動が加わったとき、積層冷却器2が筐体4に対してZ方向に振動することを抑制することができる。
【0045】
また、上記のようにベースプレート41に対する積層冷却器2の位置を規制する手段として、積層冷却器2から突出した突出部22を用いている。それゆえ、ベースプレート41との間の位置決めを行う部分が、積層冷却器2における冷却管21等から離れた部分に形成されることとなる。それゆえ、振動等の外力がベースプレート41から冷却管21等にかかることを抑制し、冷却性能に影響を与えることを防ぐことができる。
【0046】
また、突出部22は積層冷却器2から突出形成されているため、積層冷却器2に対して別部材を組み付けて位置決めを行うなどの必要がない。それゆえ、電力変換装置1の部品点数を低減することができると共に、組立工数を低減することができる。
【0047】
また、突出部22は、冷却管21の壁部よりも剛性が低い。これによって、冷却管21よりも突出部22が優先して変形するようにすることができる。これにより、振動等の外力がベースプレート41から冷却管21にかかることを抑制し、冷却管21の変形を防ぐことができる。そのため、冷却性能に影響を与えることを効果的に防ぐことができる。
【0048】
また、突出部22は、積層冷却器2における積層方向(X方向)の複数個所に形成されている。これによって、積層冷却器2を、筐体4に対するZ方向の位置を規制しやすくできる。そのため、積層冷却器2が筐体4に対してZ方向に振動することを効果的に抑制することができる。
【0049】
また、突出部22は、ベースプレート41に係合している。これによって、Z方向の双方について、筐体4に対する積層冷却器2の位置規制を容易に行うことができる。そのため、積層冷却器2が、筐体4に対してZ方向に振動することを効果的に抑制することができる。また、ベースプレート41に平行な方向についての積層冷却器2の位置規制も可能となる。
【0050】
また、ベースプレート41は、突出部22を挿入して係合させる貫通係合孔42を備え、突出部22は、突出方向に対して直交する方向に弾性変形可能なバネ部220を備え、バネ部220が貫通係合孔42の内側面に圧接することによって突出部22がベースプレート41に係合している。これによって、突出部22をベースプレート41に容易かつ安定して係合させることができる。
【0051】
また、バネ部220は、積層方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に弾性変形するよう形成されている。これによって、ベースプレート41に対する積層冷却器2の位置が、Z方向の他に、Y方向にも規制される。また、かかる構成をとるとX方向については、ベースプレート41に対して積層冷却器2の位置を規制しないようにすることができる。その結果、筐体4に積層冷却器2を半導体モジュール3と共に組み付けた後に、積層冷却器2をX方向に圧縮したりするなどの調整を行うことが可能となる。
【0052】
また、冷却管21は、積層方向(X方向)及びベースプレート41の法線方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)の複数個所に、突出部22を備えている。これによって、積層冷却器2が筐体4に対して振動することをより効果的に抑制することができる。
【0053】
また、突出部22は、すべての冷却管21から突出形成されている。これによって、積層冷却器2が筐体4に対して振動することを、さらに効果的に抑制することができる。また、すべての冷却管21の形状を同じ形状とすることも可能となるため、生産性を向上しやすくなる。
【0054】
以上のごとく、本例によれば、冷却性能に影響を与えることなく、積層冷却器の振動を抑制することができ、部品点数が少なく組立が容易な、電力変換装置を提供することができる。
【0055】
なお、本例の電力変換装置1においては、図3に示すごとく、突出部22がすべての冷却管21に形成されているが、これに限定されるものではなく、一部の冷却管21にのみ
形成してもよい。例えば、突出部22を、互いに隣り合わない複数の冷却管21から突出形成させてもよい。この場合には、すべての冷却管21に突出部22を形成する場合に比べて、材料費を低減させることができると共に、ベースプレート41への積層冷却器2の組み付けを容易にすることができる。
また、場合によっては、突出部22を、1個の冷却管21にのみ形成しても構わない。
【0056】
また、本例の突出部22は、冷却管21と一体的に形成されているが、例えば、突出部22を冷却管21とは別体によって形成してもよい。
また、本例の冷却管21は、Y方向の2個所に、突出部22を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、各冷却管21における突出部22の形成箇所は3個所以上としてもよいし、1個とすることもできる。
【0057】
(実施例2)
本例は、図8〜図10に示すごとく、突出部22におけるバネ部220が、積層方向(X方向)に弾性変形するよう形成された例である。
本例においても、突出部22は、冷却管21から突出した板状体を屈曲して形成したものであるが、その板状体の板厚方向がX方向となるように配設してある。
【0058】
ベースプレート41の貫通係合孔42は、図9に示すごとく、突出部22の形成数に応じて形成されている。つまり、一つの突出部22に対して一つの貫通係合孔42が、ベースプレート41の所定の位置に形成されている。
貫通係合孔42は、突出部22のバネ部220が貫通係合可能なよう、若干Y方向に長尺な長方形に形成されている。
【0059】
本例の電力変換装置1においても、筐体4に積層冷却器2を配置するにあたって、図10に示すごとく、ベースプレート41の貫通係合孔42に対して積層冷却器2の突出部22を上方(Z方向)から挿嵌させて組付ける。ただし、本例においては、貫通係合孔42がX方向に長尺に形成されていないため、ベースプレート41に突出部22を係合させた後に積層冷却器2と半導体モジュール3との積層体をX方向に圧縮することが困難である。それゆえ、本例の場合には、筐体4の外で、積層冷却器2と半導体モジュール3とを組み合せると共に積層方向(X方向)に圧縮した後に、これらの積層体を筐体4内に配設することとなる。
その他は、実施例1と同様である。
【0060】
本例のバネ部220は、積層方向(X方向)に平行する方向に弾性変形すると共に、ベースプレート41の貫通係合孔42の形状は、突出部22のバネ部220が、貫通係合可能に、突出部22の数に応じて形成されている。これによって、組付ける際の筺体4のベースプレート41に対する積層冷却器2の位置決めを容易にできる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0061】
(実施例3)
本例は、図11、図12に示すごとく、貫通係合孔42に貫通部421と段部422を形成すると共に、バネ部220には、段部422に面接触可能なストッパー部221を形成した例である。
【0062】
上記貫通係合孔42は、図11、図12に示すごとく、ベースプレート41の法線方向(Z方向)に貫通した貫通部421と、貫通部421に隣接すると共に積層冷却器2と反対側(図11、図12における下側)の面から窪んだ段部422を形成している。段部422は、貫通部421側を向いた側壁面423と、貫通部421の貫通方向を向いた底壁面424とを備える。
【0063】
また、バネ部220は、段部422の底壁面424に面接触可能なストッパー部221を有する。すなわち、バネ部220は、突出部22の突出側先端部から折り返された折返し部の先端において、突出部22の突出方向(Z方向)に直交するように屈曲して、ストッパー部221を形成している。
【0064】
図12に示すごとく、バネ部220を貫通係合孔42に嵌合させたとき、バネ部220の一部は、段部422の側壁部423の角部に当接し、ストッパー部221が底壁部424に対向配置される。ここで、ストッパー部221は、底壁部424に接触していてもよいし、隙間を介して対向していてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0065】
本例の場合には、バネ部220のストッパー部221を、段部422の底壁面424に面接触させることができる。そのため、突出部22をベースプレート41に確実に係合させることができると共に、ベースプレート41から突出部22の抜けを確実に防止することもできる。そのため、大きい振動が電力変換装置1に加わった場合においても、積層冷却器2が、筐体4に対して大きく振動することを確実に抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0066】
(実施例4)
本例は、図13に示すごとく、積層冷却器2における連結部23に突出部22を設けると共に、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持した例である。
突出部22は、隣り合う冷却管21同士を連結する連結部23から突出形成されている。具体的には、連結部23を構成する一方の突出開口管210の一部を延長することによって、突出部22を形成している。
【0067】
筐体4は、図13に示すごとく、互いに対向配置された一対のベースプレート41を備える。具体的には、筐体4は、Z方向の一方の面が開放された略直方体形状の箱型を有するケース本体401と、ケース本体401の開放面を塞ぐように配設される蓋体402とからなる。上記一対のベースプレート41のうちの一方がケース本体401の底面部を構成するものであり、他方が蓋体402である。蓋部402は、ケース本体401に対して、ボルト等によって固定される。
【0068】
本例の電力変換装置1は、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持してなり、突出部22が一対のベースプレート41の一方(蓋体402)に当接している。そして、積層冷却器2の冷却管21を他方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)に当接させている。
【0069】
また、本例においては、突出部22は、冷却管21よりもZ方向に突出していない。そのため、突出部22に当接する側のベースプレート41(蓋体402)には、突出部22に向かって隆起した複数の凸部43が形成されている。この凸部43に突出部22が当接している。
その他は、実施例1と同様である。
【0070】
本例の場合には、ベースプレート41の構造を簡素化しやすく、また筐体4への積層冷却器2の組み付けも容易にし易い。すなわち、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持する構造とすることによって、例えば、ベースプレート41に突出部22が係合する被係合部(例えば、実施例1の図2〜図5に示した貫通係合孔42)を形成するなどの加工が不要となる。また、これに伴い、突出部22を被係合部に係合する作業が不要となるため、組付けをより容易にできる。また、突出部22をベースプレート41に当接させて積層冷却器2の位置規制を行うことで、積層冷却器2の冷却管21等が変形することも防ぐことができる。
【0071】
また、突出部22は、隣り合う冷却管21同士を連結する連結部23から突出形成されている。これによって、ベースプレート41との間の位置決めを行う部分を冷却管21とは異なる部分に形成することとなるため、冷却管21の変形を確実に防止できる。その結果、積層冷却器2の冷却性能への影響をより低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0072】
(実施例5)
本例は、図14に示すごとく、一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持して、突出部22を一対のベースプレート41の双方に当接させた例である。
積層冷却器2は、連結管23から一対のベースプレート41に向かって突出部22をそれぞれ突出形成してなり、一対のベースプレート41の双方に突出部22が当接している。
また、本例においては、一対のベースプレート41の双方(蓋部402及びケース本体401の底面部)に、突出部22が当接可能な凸部43が形成されている。
その他は、実施例4と同様である。
【0073】
本例の場合には、積層冷却器2が突出部22以外の部分においてベースプレート41に当接しないようにすることができるため、積層冷却器2の冷却管21等が変形することをより確実に防ぐことができる。
その他、実施例4と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施例6)
本例は、図15に示すごとく、突出部22を冷却管21よりもベースプレート41側へ突出するように形成した例である。
一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持して、突出部22を一対のベースプレート41の一方(蓋体402)に当接させている。また、他方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)には、積層冷却器2の冷却管21が当接している。
なお、突出部22をケース本体401の底面部に当接させ、冷却管21を蓋体402に当接させる構成としてもよい。
その他、実施例4と同様である。
【0075】
本例の場合には、平板状の一対のベースプレート41の間に積層冷却器2を挟持することができる。それゆえ、ベースプレート41の構造を簡素化することができると共に、組付けをより容易にできる。
その他、実施例4と同様の作用効果を有する。
【0076】
(実施例7)
本例は、図16に示すごとく、突出部22を、一対のベースプレート41の双方へ向かって、冷却管21よりも突出させた例である。
これにより、連結部23から一方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)側に突出した突出部22と、他方のベースプレート41(蓋部402)側に突出した突出部22との双方が、ベースプレート41に当接している。
その他は、実施例6と同様である。
本例によれば、上述した実施例5の作用効果と実施例6の作用効果との双方を奏することができる。
【0077】
(実施例8)
本例は、図17に示すごとく、連結部23を冷却管21とは別部材の環状部材によって構成し、該環状部材の外周面から突出部22を突出させた例である。
すなわち、連結部23は、環状部材を冷却管21に接合してなる。この連結部23の外周面から、少なくともZ方向の一方へ突出部22を突出形成してある。また、突出部22は、一方のベースプレート41(蓋部402)へ向かって、冷却管21よりも突出している。これにより、平板状の蓋部402(ベースプレート41)に突出部22が当接している。
また、積層冷却器2は、冷却管21において、他方のベースプレート41(ケース本体401の底面部)に当接している。
その他は、実施例6と同様である。
【0078】
本例の場合には、冷却管21とは、別部材の連結管23(環状部材)に突出部22を形成することとなるため、その加工が容易となる。
その他、実施例6と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
なお、突出部22は、連結部23の全周にわたって環状に形成することもできる。この場合には、突出部22をZ方向の双方において、冷却管21よりも突出させることができる。そのため、実施例7と同様に、一対のベースプレート41に突出部22を当接させることができる。
【0080】
本発明の電力変換装置は、上述した実施例以外にも、種々の態様をとり得る。
例えば、冷却管から突出させた突出部をベースプレートに当接させる構成とすることもできるし、連結部から突出させた突出部をベースプレートに係合させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 電力変換装置
2 積層冷却器
21 冷却管
22 突出部
3 半導体モジュール
4 筺体
41 ベースプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体を流通させる複数の冷却管を積層すると共に連結してなる積層冷却器と、
隣り合う上記冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールと、
上記積層冷却器及び上記半導体モジュールを収容する筐体とを有し、
該筐体は、上記積層冷却器における積層方向と直交する方向において該積層冷却器に対向配置されたベースプレートを有し、
上記積層冷却器は、上記ベースプレートへ向かって突出する突出部を備え、
該突出部は、上記ベースプレートの法線方向についての該ベースプレートに対する上記積層冷却器の位置を規制するよう構成してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記冷却管の壁部よりも剛性が低いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記積層冷却器における積層方向の複数個所に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記ベースプレートに係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、上記ベースプレートは、上記突出部を挿入して係合させる貫通係合孔を備え、上記突出部は、突出方向に対して直交する方向に弾性変形可能なバネ部を備え、該バネ部が上記貫通係合孔の内側面に圧接することによって上記突出部が上記ベースプレートに係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、上記バネ部は、上記積層方向に直交する方向に弾性変形するよう形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電力変換装置において、上記貫通係合孔は、上記ベースプレートの法線方向に貫通した貫通部と、該貫通部に隣接すると共に上記積層冷却器と反対側の面から窪んだ段部を形成してなり、該段部は、上記貫通部側を向いた側壁面と、上記貫通部の貫通方向を向いた底壁面とを備え、上記バネ部は、該段部の上記底壁面に面接触可能なストッパー部を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記筐体は、互いに対向配置された一対の上記ベースプレートを備え、該一対のベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持してなり、上記突出部が上記一対のベースプレートの少なくとも一方に当接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、上記積層冷却器は、上記一対のベースプレートに向かって上記突出部をそれぞれ突出形成してなり、上記一対のベースプレートの双方に上記突出部が当接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記冷却管から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置において、上記冷却管は、上記積層方向及び上記ベースプレートの法線方向に直交する方向の複数個所に、上記突出部を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の電力変換装置において、上記突出部は、すべての上記冷却管から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の電力変換装置において、上記突出部は、互いに隣り合わない複数の上記冷却管から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記突出部は、隣り合う上記冷却管同士を連結する連結部から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項14に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記冷却管よりも上記ベースプレート側へ突出していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
冷却媒体を流通させる複数の冷却管を積層すると共に連結してなる積層冷却器と、
隣り合う上記冷却管の間に挟持された複数の半導体モジュールと、
上記積層冷却器及び上記半導体モジュールを収容する筐体とを有し、
該筐体は、上記積層冷却器における積層方向と直交する方向において該積層冷却器に対向配置されたベースプレートを有し、
上記積層冷却器は、上記ベースプレートへ向かって突出する突出部を備え、
該突出部は、上記ベースプレートの法線方向についての該ベースプレートに対する上記積層冷却器の位置を規制するよう構成してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記冷却管の壁部よりも剛性が低いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記積層冷却器における積層方向の複数個所に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記ベースプレートに係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、上記ベースプレートは、上記突出部を挿入して係合させる貫通係合孔を備え、上記突出部は、突出方向に対して直交する方向に弾性変形可能なバネ部を備え、該バネ部が上記貫通係合孔の内側面に圧接することによって上記突出部が上記ベースプレートに係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、上記バネ部は、上記積層方向に直交する方向に弾性変形するよう形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電力変換装置において、上記貫通係合孔は、上記ベースプレートの法線方向に貫通した貫通部と、該貫通部に隣接すると共に上記積層冷却器と反対側の面から窪んだ段部を形成してなり、該段部は、上記貫通部側を向いた側壁面と、上記貫通部の貫通方向を向いた底壁面とを備え、上記バネ部は、該段部の上記底壁面に面接触可能なストッパー部を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記筐体は、互いに対向配置された一対の上記ベースプレートを備え、該一対のベースプレートの間に上記積層冷却器を挟持してなり、上記突出部が上記一対のベースプレートの少なくとも一方に当接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、上記積層冷却器は、上記一対のベースプレートに向かって上記突出部をそれぞれ突出形成してなり、上記一対のベースプレートの双方に上記突出部が当接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記冷却管から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置において、上記冷却管は、上記積層方向及び上記ベースプレートの法線方向に直交する方向の複数個所に、上記突出部を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の電力変換装置において、上記突出部は、すべての上記冷却管から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の電力変換装置において、上記突出部は、互いに隣り合わない複数の上記冷却管から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記突出部は、隣り合う上記冷却管同士を連結する連結部から突出形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項14に記載の電力変換装置において、上記突出部は、上記冷却管よりも上記ベースプレート側へ突出していることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−222132(P2012−222132A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86056(P2011−86056)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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