説明

電力通信床構造及びそのための供給パネルと機能モジュール

【課題】広範な給電通信対象平面にも容易に電力供給を行なうことができると共に、利用者の安全確保を行うことができ、さらに電力や通信信号の供給形態の自由度や利便性を高めることができる電力通信床構造等を提供すること。
【解決手段】複数の導電板11、12と、これらの相互間に設けられた絶縁層13とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された、電力又は通信信号を供給するための供給パネル10と、この供給パネル10を下方から支持する床部20と、供給パネル10の上方に複数並設されるものであって、床面を構成する機能を有する第1の機能モジュール51、又は、床面を構成する機能に加えて供給パネル10に接続されて電力若しくは通信信号の入力若しくは出力を行う機能を有する第2の機能モジュール52を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力及び通信信号を供給するための電力通信床構造と、この電力通信床構造を構築するための供給パネル及び機能モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般住宅やオフィス等の各種の空間に対して電力や通信信号を供給するための様々な供給構造が提案されている。一般的には、配電盤から床下や壁面内部にケーブルを敷設すると共に、このケーブルの端部を室内近傍に引出していた。そして、この端部に電源コネクタや信号端子を接続し、これら電源コネクタや信号端子に電気機器を接続することによって、電力や通信信号を供給していた。しかしながら、近年のOA機器を中心とする電気機器の多様化に伴い、空間内の様々な位置で電力や通信信号を使用したいとのニーズが高まっており、より自由度の高い電力や通信信号の供給構造が要望されている。
【0003】
このような自由度の高い供給構造の一形態として、従来から、いわゆるフラットケーブルを用いた構造が提案されている。このフラットケーブルは、一対の平線型の導体を複数本並べた状態で被覆して構成されている。このフラットケーブルは一般的なケーブルに比べて薄厚であり、このフラットケーブルを床上面に敷設してカーペット等にて覆うことでその存在感をほぼ消すことができるため、このフラットケーブルの敷設経路の自由度を高めることができる。
【0004】
また、特許文献1には、板状の導体を用いた電力用配線構造が開示されている。この構造は、第1の導体及び第2の導体にて絶縁膜を介して第3の導体を挟むことによって層状に構成されている。第1から第3の導体はそれぞれ細幅の板状に形成されており、このような構造を用いることで、平坦状の電力供給構造を構築することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−151367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の電力や通信信号の供給構造は、平坦化を図ることで敷設経路の自由度を高めることが可能になる一方で、細幅の導体を用いていたことから、依然として一部の領域に対してしか電力や通信信号を供給することができなかった。例えば、広範な室内の多数の位置で電力や通信信号を使用する可能性がある場合、フラットケーブルや特許文献1の電力用配線構造を用いる場合にはこれらを多数本敷設しなければならず、その敷設や接続に多大な手間を要する等、実用性に欠けていた。
【0007】
特に、特許文献1の如き電力供給構造においては、導体が表面側に露出していて利用者に触れる可能性があるため、電力供給構造における最も基本的な目標である利用者の安全確保が、阻害される危険性があった。
【0008】
また、通信信号を供給する場合、電力に通信信号を重畳するPLC(電力線搬送通信:Power Line Communications)の如き技術も提案されているが、ケーブルがアンテナとして作用することによって漏洩電磁波が発生するという問題があった。
【0009】
さらに、従来のフラットケーブルや特許文献1の如き電力供給構造は、電力や通信信号を送受するための個別的手段にすぎず、その使用形態については従来の通信線や電力線と何ら変わりがないものであり、単にその端部等にコネクタを介して負荷等を接続するものであった。しかしながら、このような構造では、自由度の高い電力や通信信号の供給形態のニーズに十分に応えるものとは言えなかった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、広範な給電通信対象平面にも容易に電力や通信信号の供給を行なうことができると共に、利用者の安全確保を行うことができ、さらに電力や通信信号の供給形態の自由度や利便性を高めることができる、電力通信床構造及びそのための供給パネルと機能モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る発明は、複数の導電板と、複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された、電力又は通信信号を供給するための供給パネルと、前記供給パネルを下方から支持する支持体と、前記供給パネルの上方に複数並設されるものであって、床面を構成する機能を有する第1の機能モジュール、又は、床面を構成する機能に加えて前記供給パネルに接続されて電力若しくは通信信号の入力若しくは出力を行う機能を有する第2の機能モジュール、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記供給パネルは、前記機能モジュールに最も近接する側に配置された導電板を接地極とするように、前記複数の導電板に直流電源が接続され、前記導電板又は前記絶縁層を、前記通信信号を伝播するための通信路としたこと、を特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の機能モジュールは、電源にて供給された電力を前記供給パネルに供給する電源モジュール、又は、前記供給パネルを介して供給された電力を負荷に供給する配電モジュールであること、を特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の機能モジュールは、通信機器から出力された通信信号を前記供給パネルに有線又は無線にて中継し、又は、前記供給パネルを介して供給された通信信号を通信機器に有線又は無線にて中継する、通信モジュールであること、を特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の機能モジュールは、当該第2の機能モジュールの上方における所定の検知対象を検知し、当該検知結果に関する通信信号を前記供給パネルに出力するセンサモジュールであること、を特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の機能モジュールは、当該第2の機能モジュールの内部又は外部に対する動作を行なうアクチュエータモジュールであること、を特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の機能モジュールは、情報処理を行なうための情報処理モジュールであること、を特徴とする。
【0018】
請求項8に係る発明は、支持体と、床面を構成する機能を有する第1の機能モジュール又は当該床面を構成する機能に加えて電力若しくは通信信号を供給する機能を有する第2の機能モジュールとの相互間に敷設されるものであって、当該第2機能モジュールとの間において前記電力又は前記通信信号の入力又は出力を行う供給パネルであって、複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成され、前記機能モジュールに最も近接する側に配置された導電板を接地極とするように、前記複数の導電板に直流電源が接続され、前記導電板又は前記絶縁層を、前記通信信号を伝播するための通信路としたこと、を特徴とする。
【0019】
請求項9に係る発明は、電力又は通信信号を供給可能な供給パネルの上面に複数並設されるものであって、床面を構成する機能、又は、床面を構成する機能に加えて前記供給パネルに対して電力若しくは通信信号の入力若しくは出力を行う機能を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、供給パネルを敷設することで電力供給又は通信のプラットフォームを面状領域として構築することができ、その上面の任意の位置に第2の機能モジュールを付加することで電力供給又は通信を容易に実現できて、広範な領域における電力供給又は通信の実現性やその自由度を飛躍的に高めることができる。
特に、第1の機能モジュール又は第2の機能モジュールを並設することで、平坦状の床面を構成することができ、通常の床面と同様、その上面に機器類や家具等を配置することができ、給電通信対象空間の利便性を維持することができる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、機能モジュールに最も近接する側に配置された導電板を接地極とすることで、人がこの導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。
特に、絶縁層を通信信号を伝播するための通信路としたので、特別な構成を用いることなく、絶縁層によってカバーされた広範な給電通信対象平面に任意の経路で電力供給ラインを容易に構築でき、電力利用の利便性を高めることができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、電源にて供給された電力を供給パネルに供給でき、あるいは、供給パネルを介して供給された電力を負荷に供給できるので、これら電源モジュールや配電モジュールを供給パネル上に配置することで、電力供給構造を容易に構築することができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、通信機器から出力された通信信号を供給パネルに有線又は無線にて中継し、又は、供給パネルを介して供給された通信信号を通信機器に有線又は無線にて中継できるので、この通信モジュールを供給パネル上に配置することで、通信構造を容易に構築することができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、所定の検知対象の検知結果に関する通信信号を供給パネルに出力できるので、このセンサモジュールを供給パネル上に配置することで、給電通信対象空間の検知対象の有無を遠隔位置で把握でき、給電通信対象空間の状態を遠隔監視することが可能になる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、第2の機能モジュールの内部又は外部において各種の動作を行なうことができるので、例えば、アクチュエータモジュールの上方に配置された任意の対象物を駆動することが可能になる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、情報処理を行なうことができるので、この処理結果に応じた様々な制御を行うことが可能になる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、供給パネルを敷設するだけで、面状の給電通信対象平面を形成することができ、広範な領域において容易に電力供給や通信を行なうことができる。
また、平坦状の供給パネルを並設することで電力供給や通信を行うことができるので、連続する平坦な床面を形成することができ、給電通信対象空間の利便性や意匠性を損なうことがない。
特に、機能モジュールに最も近接する側に配置された導電板を接地極とすることで、人がこの導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。
【0028】
請求項9に係る発明によれば、機能モジュールを供給パネルの上面に設置するだけで、電力供給又は通信を容易に実現できて、広範な領域における電力供給又は通信の実現性やその自由度を飛躍的に高めることができる。
特に、機能モジュールを並設することで、平坦状の床面を構成することができ、通常の床面と同様、その上面に機器類や家具等を配置することができ、給電通信対象空間の利便性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る電力通信床構造は、一般住宅やオフィス等の任意空間における電力供給を行うためのものである。この空間は、室内に限定されず室外であってもよく、また建屋に限定されずに電車や飛行機の如き乗り物の内部空間を含む。以下では、このように電力通信床構造が適用される3次元空間を「給電通信対象空間」と称すると共に、この給電通信対象空間を区画する各平面のうち、電力や通信信号を供給するための平面を「給電通信対象平面」、それ以外の平面を「給電通信非対象平面」と称する。給電通信対象平面は、例えば、給電通信対象空間を区画する床の全領域や、あるいはこれら領域のうちの一部(例えば、床面のうち、四周の周縁部のみを除外した中央領域)である。
【0031】
供給パネルは、概略的には、複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成されている。ここで、導電板とは、従来のような細幅の導体ではなく、広幅のパネル体であって、広範な面積をカバーする。このことにより、広範な給電通信対象平面において容易に電力供給や通信を行なうことができる。ただし、給電通信対象平面の全てを1枚の供給パネルで覆う必要はなく、複数の供給パネルを並設すると共に相互に連結してもよい。この供給パネルは、給電通信対象平面に応じた平面形状、例えば方形状や円形状として形成可能である。
【0032】
この供給パネルは、支持体によって支持される。支持体は、給電通信対象空間を他の空間から区画するものであって、供給パネルを支持し得る任意の構造体を含み、例えば、床部である。この支持体としては、供給パネルを支持する支持面を平面とした平面構造体の他、桟構造のように非平面を介して供給パネルを不連続的に支持するものを含む。
【0033】
このような構成において、各実施の形態に共通の基本的特徴の一つは、供給パネルの複数の導電板のうち、少なくとも一方の導電板を接地極とするように、複数の導電板を直流電源に接続した点にある。例えば、給電通信対象空間を区画する支持体によって供給パネルを支持する構造の場合、支持体に近接する側の導電板を陽極、この陽極と対向する側の導電板を接地極とする。この場合、給電通信対象空間に居る人間に対しては、接地極の導電板が近接することになり、人間が導電板に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができるので、人の安全性を確保することが可能になる。なお、人体に限らず、ペットや家畜の如き人間以外の生物がいる側を基準に、接地極側とする導電板の配置位置を決定してもよい。
【0034】
また、各実施の形態に共通の基本的特徴の他の一つは、供給パネルを介して、電力に加えて通信信号を供給する点にある。この通信形態としては、1)絶縁層を用いた電界変化による通信(以下、「電界通信」)、2)絶縁層を用いた磁界変化による通信(以下、「磁界通信」)、3)導電板を用いたPLCによる通信(以下、「PLC通信」)、の3形態がある。これら多様な形態での通信を個別に又は相互に組み合わせて行うことで、供給パネルを介しての広範な給電通信対象平面における通信を実現することができる。
【0035】
さらに、各実施の形態に共通の基本的特徴の他の一つは、供給パネルの上面に複数の機能モジュールを並設する点にある。この機能モジュールは、その機能に基づいて2種類に大別される。第1は、床面を構成する機能のみを有する第1の機能モジュール、第2は、床面を構成する機能に加えて供給パネルに接続されて電力若しくは通信信号の入力若しくは出力を行う機能を有する第2の機能モジュールである。さらに第2の機能モジュールは、電力の送受を行う電力モジュール、通信信号の送受を行う通信モジュール、検知対象の検知を行なって当該検知結果に関する信号を出力するセンサモジュール、制御信号の入力を受けて当該制御信号に応じた動作を第2の機能モジュールの内部又は外部に対して行なうアクチュエータモジュール、通信信号の入力を受けて当該通信信号に基づいた情報処理を行なったり、情報処理の結果に関する通信信号の出力を行うための情報処理モジュールに区分される。さらに、電力モジュールは、電力の供給のみを行う電源モジュールと、電力の取得及び負荷への供給のみを行う配電モジュールとに分けられる。また通信モジュールは、有線による通信信号の入力及び出力を行う有線通信モジュールと、無線による通信信号の入力及び出力を行う無線通信モジュールとに分けられる。ただし、特にこれらを相互に区別する必要がない場合には、各種のモジュールを「機能モジュール」、電源モジュールと配電モジュールとを「電力モジュール」、有線通信モジュールと無線通信モジュールとを「通信モジュール」とそれぞれ総称する。このようなモジュールを単独で又は任意に組み合わせて供給パネルの上面に配置することで、各モジュールの持つ多様な機能と供給パネルの電力の送受機能や通信信号の送受機能とを相互に連携させることができ、各モジュールの持つ多様な機能を広範な給電通信対象平面において実現することができる。
【0036】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る電力通信床構造及びそのための供給パネルと機能モジュールの各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0037】
〔実施の形態1〕
まず、本発明の実施の形態1について説明する。この形態は、最も基本的な構造の供給パネルを支持体にて支持した形態であって、供給パネルの上面に各種の機能モジュールを並設した形態である。
【0038】
(給電通信システムの全体構成)
図1は本実施の形態1に係る給電通信システムを適用した居室の斜視図、図2は図1の要部平面図、図3は図1の要部縦断面図(機能モジュールは非断面として示す。以下各縦断面図において同じ)である。これら各図に示すように、給電通信システムは、給電通信対象空間である居室1における床部2の上面に、複数の供給パネル10を並設し、さらに供給パネル10の上面に複数の機能モジュール50を並設して構成されている。
【0039】
床部2は、供給パネル10を支持する支持体であり、例えば鉄筋コンクリート造の床スラブとして構成されており、その上面を平滑状の水平面とした面構造体である。この床部2の上面の略全面には絶縁シート3が敷設されており、この絶縁シート3によって、床部2と供給パネル10とが相互に電気的に絶縁されている。このように構成された平面方形状の床部2のうち、本実施の形態では、図2に示すように、一部の領域のみを給電通信対象平面5としており、その他の周縁部を給電通信非対象平面6としている。
【0040】
給電通信対象平面5においては、複数の供給パネル10を並設することでその上面に連続する平坦な床面が形成されており、床面に機能モジュール50を配置することができる。各供給パネル10は、床部2の上面に敷設されており、隣接する他の供給パネル10と相互に接続されている。一方、給電通信非対象平面6においては、床部2を単に露出状としてもよいが、ここでは供給パネル10と略同一の厚みを有する床構成パネル7を配置することで、供給パネル10と床構成パネル7との上面を相互に略面一状として、平坦な床面を構成している。床構成パネル7は、例えば樹脂や木材にて形成された板状体である。
【0041】
図4は、電力供給機能や通信機能のための構造を概念的に示す側面図である。給電通信非対象平面6においては、第1の機能モジュール51のみが並設されて略平坦な床面を構成している。この給電通信非対象平面6には電力供給や通信の必要性がないことから、供給パネル10に代えて床材である床構成パネル7が敷設してもよい。一方、給電通信対象平面5においては、複数の供給パネル10の上面に複数の第2の機能モジュール52が並設されており、給電通信非対象平面6と略面一の略平坦な床面を構成している。特に、この給電通信対象平面5には、上述した各種の第2の機能モジュール52が任意の組み合わせで配置されており、電力供給機能や通信機能の如き複数種類の様々な機能を奏することができる。例えば、第2の機能モジュール52の上面には各種の負荷100(図1、4ではロボットRB)を配置し、この装置に対する電力供給や通信を行うことができる。なお、本実施の形態では、供給パネル10と機能モジュール50とを相互に同一の幅にて構成した例を示しているが、相互に任意の異なる幅で構成してもよい。また、ここでは省略するが、機能モジュール50の上面に、フロアタイルやタイルカーペット等の仕上げ材を敷設してもよい。
【0042】
(供給パネル10の構成)
次に、各供給パネル10の構成の詳細について説明する。図5は、供給パネル10の斜視図である。供給パネル10は、平面方形状に形成されており、複数(ここでは2枚)の導電板11、12と、これら複数の導電板11、12の相互間に設けられた絶縁層13とを、相互に重畳状に配置して構成されている。これら導電板11と導電板12とは、例えば接着の如き任意の固定方法によって相互に固定されており、全体として1枚の供給パネル10が構成されている。
【0043】
各導電板11、12は、金属等の導電体から形成された板状体である。これら導電板11、12の具体的な材質や厚みは、所望の強度や供給電力等を考慮して決定することができる。
【0044】
絶縁層13は、導電板11、12を相互に絶縁することによってこれら相互間における短絡を防止すると共に、通信信号を伝播させる導波管として機能する。この絶縁層13は、導電板11、12と略同一の平面形状に形成され、これら導電板11、12の相互間のほぼ全域に設けられている。この絶縁層13の具体的な材質や厚みは、所望の絶縁性や導波性を考慮して決定することができ、例えば、ポリエチレンや塩化ビニル等の樹脂、マイカやガラス繊維などの無機材料、あるいは、磁器を用いることができる。
【0045】
(機能モジュール−第1の機能モジュール)
次に、第1の機能モジュール51の構成の詳細について説明する。図6は、第1の機能モジュール51の構成を概念的に示す図である。第1の機能モジュール51は、例えば公知のOAフロアと同様に構成されるもので、平面略正方形状の床面構成板51aと当該床面構成板51aを支持する複数の支持脚51bとを有し、全体として略直方体状に構成されている。これら床面構成板51a及び支持脚51bは、当該第1の機能モジュール51の上方に設置された機器や家具を支持するための十分な支持強度を有するもので、例えば軽金属を用いて構成される。支持脚51bは、公知の機構によって上下方向の長さを微調整自在であり、各支持脚51bの長さを微調整することで床面構成板51aの水平を取ることができる。なお、図6以外の各図面では、支持脚51bを省略し、機能モジュールを単なる直方体として示す。また、支持脚51bを実際に省略することもできる。
【0046】
(機能モジュール−第2の機能モジュール)
次に、第2の機能モジュール52の構成の詳細について説明する。この第2の機能モジュール52は、基本的に第1の機能モジュール51と同様に床面構成板51a及び支持脚51bを備えて構成されることによって、当該第2の機能モジュール52の上方に設置された機器や家具を支持するための十分な支持強度を有する。第2の機能モジュール52に属する以下の各モジュールは、このような第2の機能モジュール52の基本構造に対して諸機能を奏するために必要な構成を付加したものである。以下、これら各第2の機能モジュール52について説明する。
【0047】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−電源モジュール又は配電モジュール−電力供給構造の基本概念)
まず、第2の機能モジュール52の中の電源モジュール53又は配電モジュール54について説明する。最初に電力供給構造の基本概念を説明する。図7は電力供給構造を概念的に示す縦断面図、図8は電力供給構造を概念的に示す斜視図である。
【0048】
ここでは、図7に示すように、電源モジュール53には電力供給部14が内蔵されている。電力供給部14は、供給パネル10に対して直流電流を供給するための直流電流入力手段であり、直流電源14a、陽極側供給線14b、及び、接地極側供給線14cを備える。直流電源14aは、供給パネル10に対して直流電力を供給するための電源手段であり、例えば、蓄電池や、商用交流電源を直流変換して供給する直流安定化電源を用いて構成される。陽極側供給線14bは、支持体である床部2に近接する導電板12が陽極(非接地極)となるように当該導電板12に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板12の側面や端面に接続されると共に、その他端を直流電源14aの陽極に接続されている。接地極側供給線14cは、導電板12に対向配置された導電板(供給パネル10の外側に配置された導電板であって、給電通信対象空間に最も近接する位置に配置された導電板)11が接地極となるように当該導電板11に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板11の側面や端面に接続されると共に、その他端を接地されている。
【0049】
また、図7に示すように、配電モジュール54の内部には電力取出部15が接続されている。電力取出部15は、供給パネル10から直流電流を取得して任意の負荷100に供給するための直流電流出力手段であり、陽極側取出線15a及び接地極側取出線15bを備えて構成されている。陽極側取出線15aは、陽極側の導電板12と負荷100とを相互に接続するものであり、その一端を導電板12の内面に接続されると共に、その他端を負荷100の陽極に接続されている。より具体的には、接地極側の導電板11、及び、絶縁層13には、相互に連通する引出孔15cが形成されており、この引出孔15cを介して陽極側取出線15aが給電通信対象空間側に引き出されて、負荷100に接続されている。接地極側取出線15bは、接地極側の導電板11と負荷100とを相互に接続するものであり、具体的には、その一端を接地極側の導電板11の上面に接続されると共に、その他端を負荷100の陰極に接続されている。なお実際には、これら陽極側取出線15a及び接地極側取出線15bと負荷100との間に、必要に応じて図示しない整流装置を設けることができる。また、負荷100が直流機器の場合には電力取出部15をそのまま当該直流機器に接続することができるが、負荷100が交流機器の場合には公知の直流/交流変換アダプタを介して当該交流機器に交流電流を供給することができる。
【0050】
例えば、複数枚の供給パネル10を並設してこれらを相互に通電可能に接続した場合には、いずれか1枚の供給パネル10にのみ電力供給部14を接続し、他の供給パネル10に対して負荷100に応じた任意の数だけ電力取出部15を設けて電力を複数個所で取得してもよい。あるいは、各々の供給パネル10に対して、1組の電力供給部14及び電力取出部15を設けてもよい。実際には、電力供給部14は電源モジュール53に、電力取出部15は配電モジュール54にそれぞれ設けられるが、その詳細については後述する。
【0051】
次に、このように構成された電力供給構造の機能について、その作用・効果を交えつつ説明する。この電力供給構造では、直流電源14aの陽極、陽極側供給線14b、陽極側の導電板12、陽極側取出線15a、負荷100、接地極側取出線15b、接地極側の導電板11、接地極側供給線14c、及び、接地面に順次至る直流回路が形成され、負荷100に対して直流電力を供給することができる。このように交流電力ではなく直流電力を供給することとしたのは、供給パネル10は巨大なコンデンサと回路上等価であるため、このコンデンサの容量が大きくなるとこれに反比例するインピーダンスが小さくなり、交流電流を流すことが困難だからである。また、直流電流を導電板11、12の如き平面導体に流した場合には、図8に矢印で示すように、直流電流が導電板11、12に沿って面状に広がり、電圧降下を小さくできるので、高効率な送電を行うことができる。また、上述のように機能モジュール50に近接する側の導電板11を接地極側としたので、この導電板11に人が直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。なお、さらに絶縁性を高めるためには、導電板11と機能モジュール50との間に図1の絶縁シート3を敷設してもよい。さらに、引出孔15cを介して陽極側取出線15aを給電通信対象空間に引き出しているので、居室1側で使用する負荷100に対して陽極側取出線15aや接地極側取出線15bを容易に接続でき、導電板12に床部2の側からアクセスする必要がなくなるので、電力使用が一層容易である。
【0052】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−電力モジュール−電源モジュールの構成1)
次に、電源モジュール53の具体的構成について説明する。図9は、電源モジュール53と供給パネル10との接続構造を示す図である。この図9に示すように、電源モジュール53は、上述した電力供給部14と、接続端子20とを備えて構成されている。
【0053】
図10は接続端子周辺の拡大図である。この接続端子20は、円筒状の外部電極20aと、棒状の内部電極20bと、これら外部電極20aと内部電極20bを絶縁する円筒状の絶縁層20cとを、相互に同心状に組み合わせて構成されている。内部電極20bは、陽極側の電極であり、接地極側の導電板11及び絶縁層13を貫通して陽極側の導電板12に至る長さに形成されている。外部電極20aは、接地極側の電極であり、内部電極20bよりも短く形成され、内部電極20bと共に導電板11に貫通される。これら外部電極20aと内部電極20bとは、導電板11や絶縁層13に対する差込みが容易なように、先鋭状に形成されている。そして、内部電極20bには陽極側供給線14b、外部電極20aには接地極側供給線14cがそれぞれ接続されている。
【0054】
この接続端子20は、図9の右側に示すように、その先鋭側の端部を電源モジュール53の下面より下方に突出するように配置されている。このような構成において、供給パネル10における任意位置に電源モジュール53を載置すると、図9の左側に示すように、接続端子20が上方から供給パネル10に自動的に挿入されて、引出孔15cが自動的に形成されると同時に、内部電極20bを陽極の導電板12に接触させると共に、外部電極20aを接地極の導電板11に接触させることができる。従って、供給パネル10に対して直流電力を供給することができる。なお、電源モジュール53に交流/直流変換器を内蔵し、外部から取り込んだ交流電源を交流/直流変換器で直流変換してから供給パネル10に供給するようにしてもよい。
【0055】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−電力モジュール−電源モジュールの構成2)
次に、電源モジュール53の接続構造の他の例について説明する。図11は他の例に係る接続端子22を備えた電源モジュール53と供給パネル10との接続構造を示す図である。図12は接続端子周辺の拡大図である。図11に示すように、供給パネル10の複数位置には接続孔21が形成されており、この接続孔21の全部又は任意の一部に接続端子22が取付けられている。
【0056】
接続端子22は、図12に拡大して示すように、外部電極22a、内部電極22b及び絶縁層22cを同心状に配置して構成されており、外部電極22aと内部電極22bとは非先鋭状に形成されていると共に、外部電極22aには円環状の接触部22dが一体に設けられている。接続孔21は、接続端子22の外形に略適合した円筒状の開口部であり、接地極側の導電板11から絶縁層13を介して陽極側の導電板12に至るように形成されている。この接続孔21は、例えば供給パネル10の製造工場において予め穿設しておくことができる。
【0057】
このような構成において、供給パネル10を床部2に敷設した後の任意のタイミングで、ユーザが、電力を取得したい任意位置に近い接続孔21に接続端子22が差し込まれるように、電源モジュール53を配置する。この配置後の状態においては、図12の左側に示すように、外部電極22aの接触部22dが接地極側の導電板11の上面に当接すると共に、内部電極22bの先端が陽極側の導電板12に接触するので、当該接続端子22を介して電力取得が可能になる。また、電力取得が不要になった場合には、図12の右側に示すように、接続孔21から接続端子22を抜けばよい。
【0058】
ここで、接続端子22を差し込んだ状態において、外部電極22aの接触部22dと導電板11とを相互に一層確実に接続するため、図13に示すように、円環状の導電性シール23を接触部22dから導電板11に至って架け渡すように貼付してもよい。この導電性シール23の貼付のためには、例えば、電源モジュール53を構成する床面構成板51aの全部又は一部を開閉自在とし、床面構成板51aを開いた状態において上方から接続端子22にアクセスできるようにしてもよい(後述する取付ネジ28の固定も同様)。また、導電板11と接触部22dとの相互の接触面における酸化膜を紙ヤスリ等で取り除いた後、当該接触面に酸化皮膜付着防止グリース等を塗って、導電性を向上及び持続させてもよい。
【0059】
また、使用していない接続孔21は、図14に示すように、導電性カバー24によって塞いでもよい。この導電性カバー24は、導電板11に設けた開口部と略同一形状の円盤状に形成されている。この導電性カバー24にて接続孔21を塞ぐことで、接続孔21を介して陽極側の導電板11に不用意に接触することを防止できると共に、接続孔21への埃や水等の侵入を防止でき、さらには供給パネル10の上面を平坦状に維持しておくことができる。なお、導電板11と導電性カバー24との相互の導通を一層確実にするため、導電性カバー24から導電板11に至る円盤状の導電性シール25を貼付してもよい。なお、未使用の接続孔21における導通を遮断しても問題ない場合には、導電性カバー24や導電性シール25に代えて、導電性のない素材にてカバーやシールを構成してもよい。
【0060】
あるいは、図15に示すように、接続孔21に対応する側面T字状の絶縁体26を用いて、未使用の接続孔21を塞いでもよく、この場合には接続孔21を一層確実に塞ぐことができる。さらには、水の浸入を防ぐ為のグリースを接続孔21の周囲に塗布してもよい。
【0061】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−電力モジュール−電源モジュールの構成3)
次に、電源モジュール53の接続構造の他の例について説明する。図16は供給パネル10を他の例に係る接続端子27と共に示す縦断面図である。この図16の左側に示すように、接続端子27は、外部電極27a、内部電極27b及び絶縁層27cを備え、接続端子22とほぼ同様の構造にて構成されている。ここで、外部電極27aの接触部27dから導電板11に至る導電性の取付ネジ28がネジ込まれている。この構造では、取付ネジ28の締結力によって接触部27dを導電板11に一層確実に接触させることができるので、図13の如き導電性シール23を省略することができる。あるいは、図16の右側に示すように、導電板11の全体又は接続端子27を取付ける所定箇所のみをネジ孔27dが形成可能な厚みとし、この部分を介して取付ネジ28をネジ込んでもよい。
【0062】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−配電モジュール1)
次に、第2の機能モジュール52の中の配電モジュール54について説明する。この配電モジュール54は、図17に示すように、上述した電力取出部15及び接続端子20を内蔵すると共に、電力供給端子54aを上面に露出させるように備えて構成されている。接続端子20は、図10と同様に構成できるので、その説明は省略する。この接続端子20の内部電極20bには陽極側取出線15a、外部電極20aには接地極側取出線15bがそれぞれ接続されている。電力供給端子54aは、配電モジュール54から電力を取り出して任意の負荷100に供給するための接続端子であり、床面構成板51aの上面に略面一状に設けられている。この電力供給端子54aは、例えば公知のプラグソケットと同様に一対の陽極端子及び陰極端子を備えて構成されており、陽極端子には陽極側取出線15a、陰極端子には接地極側取出線15bがそれぞれ接続されている。従って、負荷100の電源コードのコンセントプラグをこの電力供給端子に差し込むことで、負荷100に直流電力を供給できる。なお、配電モジュール54には、直流/交流変換器を内蔵して直流を交流変換した上で供給してもよい。
【0063】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−配電モジュール2)
次に、配電モジュール54の接続構造の他の例について説明する。図18は、配電モジュール54を供給パネル10と共に示す縦断面図、図19は、配電モジュール54の平面図である。ここでは、電力供給端子54aが配電モジュール54の上面に露出させた複数の金属板として形成されている。このような構成において、例えば、ロボットの如き自走式装置の脚部底面に平板状の電力取得端子を露出状に配置し、このロボットを配電モジュール54の上面に自走させることで、電力供給端子54aと電力取得端子とを相互に自動的に接触させて電力供給を行ってもよい。この場合、ロボットが配電モジュール54の上面を移動した場合でも電力供給を継続できるので、ロボットの移動の自由度を高めることができる。
【0064】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−有線通信モジュール−電界通信)
次に、第2の機能モジュール52の中の有線通信モジュール55について説明する。特に、電界通信を行うための有線通信モジュール55について説明する。図20は通信システムを概念的に示す縦断面図、図21は図20の要部縦断面図である。有線通信モジュール55は、電界プローブ32及び信号線36a、36bを内蔵すると共に、信号接続端子55aを上面に露出するように備えて構成されている。
【0065】
電界プローブ32は、図21に示すように、外部電極32a、内部電極32b、及び、これらの相互間に配置された絶縁層32cを、相互に同芯状に配置した同軸プローブとして構成されている。この電界プローブ32の先端部は、供給パネル10の任意の位置に上方から差し込まれることによって、接地極側の導電板11を貫通して絶縁層13の内部に至っている。より具体的には、電界プローブ32の先端部は、伝播される電波の電界方向(電波がTE10波の場合には、絶縁層13の長手方向に直交する方向であり、図21の矢印方向)に沿うように、かつ、所定寸法L=λ/4(ここでλは電波の波長)だけ突出するように配置されている。
【0066】
このような構成において、光回線終端装置(Optical Network Unit)の如き図示しない任意の信号供給源から出力されたアナログ通信信号が電界プローブ32を介して電界変化として絶縁層13に供給される。実際には、電波を遮断周波数以上の周波数で伝播させる必要があるため、必要な周波数変換を行う変換装置を介して電波が供給される。このような伝播された電波は、他の有線通信モジュール55の電界プローブ32を介して電圧変化として取得され、所定の通信機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に入力される。
【0067】
この電界プローブ32は、その先鋭側の端部を有線通信モジュール55の下面より下方に突出するように配置されている。このような構成において、供給パネル10における任意位置に有線通信モジュール55を載置すると、電界プローブ32が上方から供給パネル10に自動的に挿入されて、供給パネル10に対して通信信号を入力することができる。
【0068】
このように構成される有線通信モジュール55は、供給パネル10に対してそれぞれ任意の数だけ設けることができ、例えば、1つの有線通信モジュール55から入力された通信信号を複数の有線通信モジュール55の各々から出力したり、複数の有線通信モジュール55から入力された通信信号を1つの有線通信モジュール55から出力することができる。複数の通信信号を通信する場合には、例えば公知の通信プロトコルに準じた通信を行ったり、通信信号に識別情報を付加することで、各通信信号を相互に識別することができる。
【0069】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−有線通信モジュール−磁界通信)
次に、磁界通信を行うための有線通信モジュールについて説明する。図22は有線通信モジュールを概念的に示す縦断面図、図23は図22の要部縦断面図である。これら各図において、有線通信モジュール55には、電界プローブ32に代えて磁界プローブ33が内蔵されている。磁界プローブ33は、図23に示すように、円環状のいわゆるループアンテナとして構成されている。この磁界プローブ33の先端部は、供給パネル10の任意の位置に上方から差し込まれることによって、接地極側の導電板11を貫通して絶縁層13の内部に至っている。具体的には、磁界プローブ33の先端部は、伝播される電波の磁界方向(電波がTE10波の場合には、絶縁層13の長手方向に沿った方向であり、図22の矢印方向)に対してループ面が直交するように配置されている。
【0070】
このような構成において、光回線終端装置の如き図示しない任意の信号供給源から出力された通信信号が、磁界プローブ33を介して磁界変化として絶縁層13に供給される。この磁界変化は絶縁層13を介して伝播され、他の有線通信モジュール55の磁界プローブ33を介して電圧変化として取得され、所定の通信機器に入力される。なお、磁界プローブ33と有線通信モジュール55との関係は、上記電界通信の場合と同様であり、供給パネル10に有線通信モジュール55を載置することで、電界プローブ32が上方から供給パネル10に自動的に挿入されて、供給パネル10に対して通信信号を入力することができる。
【0071】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−有線通信モジュール−PLC通信)
次に、PLC通信を行うための有線通信モジュール55について説明する。図24は電力供給用の有線通信モジュール周辺の要部縦断面図である。電力供給用の有線通信モジュール55にはモデム55bが内蔵されており、光ファイバ35を介して送信されたデジタル通信信号が、モデム55bにて数十MHzの高周波のアナログ通信信号に変換された後、信号線37a、37b及び図10と同様に構成された接続端子20を介して導電板11、12に供給されることで直流電流に重畳され、この導電板11、12を介して伝播される。なお、図24には、重畳前の直流信号、重畳前の通信信号、重畳後の直流信号及び通信信号の波形をそれぞれ方形枠内に示す。
【0072】
一方、図25は電力取出用の有線通信モジュール周辺の要部縦断面図である。図25に示すように、電力取出用の有線通信モジュール55は、図10と同様の接続端子20を備えて構成されており、この接続端子20から信号線37a、37bが引き出されている。このうち、陽極側の信号線37aの後段には信号分離フィルタ55dが接続されている。この信号分離フィルタ55dは、直流電流から信号成分を分離するものであり、例えばコンデンサを含んで構成されたハイパスフィルタである。この信号分離フィルタ55dにて分離されたアナログ通信信号が、モデム55cにてデジタル通信信号に変換されて図示しない通信機器に出力される。
【0073】
図24、25においては接続端子20を用いた例を示すが、図13、16の接続端子22、27を用いてもよい。なお、接続端子20と有線通信モジュール55との関係は、上記電界通信の場合と同様であり、供給パネル10に有線通信モジュール55を載置することで、接続端子20が上方から供給パネル10に自動的に挿入されて、供給パネル10に対して通信信号を入力することができる。
【0074】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−無線通信モジュール)
次に、無線通信モジュール56について説明する。ただし、特記なき構成については上述した有線通信モジュール55と同様であり、略同様の構成要素については、必要に応じて同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。無線通信モジュールは、図26に概念的に示すように、上述した電界プローブ30及び信号線36a、36bと、無線送受信器56aを内蔵して構成されている。
【0075】
ここで、無線送受信器56aは、任意の無線機器との間において通信信号を無線にて送受信するための無線送受信手段であり、例えばループアンテナや図示しない信号処理部を備えて構成されている。このような構成において、電界プローブ30を介して入力された通信信号が無線送受信器56aを介して無線送信され、あるいは、無線送受信器56aを介して受信された信号が電界プローブ30を介して供給パネル10に出力される。従って、無線通信モジュール56の上方近傍位置に、無線通信を行う通信部を備えたコンピュータやロボット装置等の負荷100を配置することで、これらとの間において無線通信を行うことができる。
【0076】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−センサモジュール)
次に、センサモジュール57について説明する。ただし、特記なき構成については上述した有線通信モジュール55と同様であり、略同様の構成要素については、必要に応じて同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。センサモジュール57は、図27に概念的に示すように、上述した電界プローブ30及び信号線36a、36bを内蔵すると共に、センサ57aを上面に露出するように備えて構成されている。
【0077】
ここで、センサ57aは、所定の検知対象を検知して検知信号を出力する検知手段であり、例えば、公知の磁気センサ、熱センサ、赤外線センサ、静電容量センサ等を用いることができる。このような構成において、センサ57aから出力された検知信号が電界プローブ32を介して供給パネル10に出力される。従って、センサモジュール57の上方近傍における検知対象の検知状態を供給パネル10を介して遠方に送信することができ、給電通信対象空間の状態を遠隔から監視することができる。
【0078】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−アクチュエータモジュール)
次に、アクチュエータモジュール58について説明する。ただし、特記なき構成については上述した配電モジュール54と同様であり、略同様の構成要素については、必要に応じて同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。アクチュエータモジュール58は、図28に概念的に示すように、上述した接続端子20に加えて、アクチュエータ58aを備えて構成されている。
【0079】
このアクチュエータ58aは、接続端子20を介して供給された電源にて駆動され、所定動作を行なうもので、例えば、各種のモータや、電磁弁を介して空気圧又は油圧を制御することで駆動される駆動機構として構成することができ、アクチュエータモジュール58の内部や外部に配置された任意の対象物を駆動することが可能になる。
【0080】
(機能モジュール−第2の機能モジュール−処理モジュール)
次に、処理モジュール59について説明する。ただし、特記なき構成については上述した有線通信モジュール55と同様であり、略同様の構成要素については、必要に応じて同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。処理モジュール59は、図29に概念的に示すように、上述した電界プローブ32、信号線36a、36b、及び、接続端子55aに加えて、処理部59aを備えて構成されている。
【0081】
処理部59aは、例えばCPU(Central Processing Unit)59b及びメモリ59cと、必要に応じてメモリ59cにロードされてCPUにて解釈及び実行されるプログラムとから構成されており、電界プローブ32を介して受信した信号に対して所定アルゴリズムによる情報処理を行ない、その結果を接続端子55aを介して外部に出力する。なお、ここでは、情報処理の結果を外部に出力するものとしているが、外部から入力された情報を処理して電界プローブ32や磁界プローブ33を介して供給パネル10に出力したり、供給パネル10から入力された情報を処理してその結果を外部に出力することなく供給パネル10に出力してもよい。
【0082】
(供給パネル10の接続構造)
次に、供給パネル10を相互に接続するための接続構造について説明する。図30は、接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は供給パネル10の付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す。
【0083】
図30(a)に示すように、相互に接続される2枚の供給パネル10は、それぞれの接続側の端部を傾斜状に加工されている。より具体的には、下側の導電板12のみが相手方の供給パネル10に向けて突出され、絶縁層13は上方に至るに伴って相手方の供給パネル10から遠ざかるように傾斜し、上側の導電板11は絶縁層13の傾斜上端位置よりさらに相手方の供給パネル10から遠ざかる位置に配置されている。そして、これら2枚の供給パネル10を並設することで、これら2枚の供給パネル10の相互間には断面略V字状の空間部10aが形成される。
【0084】
このような状態において、下側の導電板12を所定方法(例えば、溶接、あるいは、導電性部材を用いたピン留めやテープ留め)にて相互に接続して図30(b)の状態とすることで、下側の導電板12を相互に導通可能とする。そして、連結部29を上方から空間部10aに挿入して図30(c)の状態とする。この連結部29は、導電部29aと絶縁部29bとから構成され、全体として、空間部10aに略対応する断面略V字状に形成されている。
【0085】
その後、上側の導電板11と連結部29の導電部29aとを溶接等の任意の方法にて相互に連結し、あるいは、導電性のシールをこれら上側の導電板11及び導電部29aに架け渡すように貼付すことにより、導電部29aを介して上側の導電板11を相互に導通可能に接続すると共に、絶縁部29bを介して絶縁層13を相互に電界又は磁界を伝播可能に接続する。これにて接続を終了する。なお、図30には一断面のみを示しているが、本接続構造は、供給パネル10の接続側の側辺の全長に渡って適用することができ、連結部29は当該接続側の側辺の全長に対応した長手部材として構成することができる。
【0086】
(実施の形態1の効果)
このような構成によれば、供給パネル10を敷設するだけで、面状の給電通信対象平面5を形成することができ、広範な領域にも容易に電力供給を行なうことができる。特に、平坦状の供給パネル10を並設することで電力供給や通信を行うことができるので、連続する平坦な床面を形成することができ、給電通信対象空間の利便性や意匠性を損なうことがない。また、機能モジュール50に近接する導電板12を接地極側としたので、人が導電板11に直接的に又は他の導体を介して間接的に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を確保することができる。さらに、供給パネル10の任意の位置に対して接続端子20、22、27を取付けることで電力の供給や取得を行うことができるので、広範な給電通信対象平面5に任意の経路で電力供給ラインを容易に構築でき、電力利用の利便性を高めることができる。さらにまた、供給パネル10の任意の位置に対して電界プローブ32や磁界プローブ33を取付け、絶縁層13を導波管として機能させて電界又は磁界を伝播させることができる。あるいは、電流に通信信号を重畳して導電板11、12を介して伝播できる。従って、広範な給電通信対象平面5に任意の経路で通信ラインを容易に構築でき、通信の利便性を高めることができ、供給パネル10を通信パネルとしても利用できる。
【0087】
特に、第1の機能モジュール51又は第2の機能モジュール52を並設することで、平坦状の床面を構成することができ、通常の床面と同様、その上面に機器類や家具等を配置することができ、給電通信対象空間の利便性を維持することができる。
【0088】
また、供給パネル10を敷設することで電力供給又は通信のプラットフォームを面状領域として構築することができ、その上面の任意の位置に第2の機能モジュール52を付加することで電力供給又は通信を容易に実現できて、広範な領域における電力供給又は通信の実現性やその自由度を飛躍的に高めることができる。
具体的には、電源モジュール53や配電モジュール54を供給パネル10上に配置することで、電源にて供給された電力を供給パネル10に供給でき、あるいは、供給パネル10を介して供給された電力を負荷100に供給できるので、電力供給構造を容易に構築することができる。
また、有線通信モジュール55を供給パネル10上に配置することで、通信機器から出力された通信信号を供給パネル10に中継し、又は、供給パネル10を介して供給された通信信号を通信機器に中継できるので、通信構造を容易に構築することができる。
特に、無線通信モジュール56を供給パネル10上に配置することで、供給パネル10に対して通信信号を無線にて入力又は出力できるので、無線通信構造を容易に構築することができ、有線通信に比べて通信の利便性を一層高めることができる。
また、センサモジュール57を供給パネル10上に配置することで、所定の検知対象の検知結果に関する通信信号を供給パネル10に出力できるので、給電通信対象空間の検知対象の有無を遠隔位置で把握でき、給電通信対象空間の状態を遠隔監視することが可能になる。
また、アクチュエータモジュール58を供給パネル10上に配置することで、当該アクチュエータモジュール58の内部又は外部において各種の動作を行なうことができるので、例えば、アクチュエータモジュール58の上方に配置された任意の対象物を駆動することが可能になる。
また、情報処理モジュール59を供給パネル10上に配置することで、各種の情報処理を行なうことができるので、この処理結果に応じた様々な制御を行うことが可能になる。
【0089】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2は、供給パネルを半密閉型に構成した形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0090】
(供給パネルの構成)
図31は、本実施の形態2に係る給電通信システムの縦断面図である。この図31に示すように、給電通信システムは、実施の形態1と同様に構成された床部2及び絶縁シート3の上面に、複数の供給パネル70を並設して構成されている。
【0091】
各供給パネル70は、一対の導電板71、72と、これら一対の導電板71、72の相互間に配置された導電板73と、導電板71と導電板73との相互間に配置された絶縁層74と、導電板72と導電板73との相互間に配置された絶縁層75とを備えて構成されている。また、導電板73の側方には絶縁層76が配置されており、これら絶縁層74〜76によって導電板73が完全に囲繞されて外部から絶縁されることで、当該導電板73の端部が電力供給パネル70の端面に対して非露出状とされている。なお、図32に示すように、隣接する複数の供給パネル70の導電板73を後述する接続構造を用いることで相互に接続してもよい。
【0092】
(電力通信システムの構成)
次に、電力通信システムについて説明する。図33は電力供給構造を概念的に示す縦断面図である。電力供給部14の接地極側供給線14cは、供給パネル70の外側に配置される一対の導電板71、72が接地極になるように当該導電板71、72に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板71、72の上面や端面に接続されると共に、その他端を接地面に接続されている。陽極側供給線14bは、絶縁層74、75によって囲繞された導電板73が陽極になるように当該導電板73に電力を供給するものであり、具体的には、その一端を導電板73の上面や端面に接続されると共に、その他端を直流電源14aの陽極に接続されている。なお、陽極側供給線14bを導電板73の端面に接続する場合には、絶縁層76に貫通孔を形成し、当該貫通孔を介して陽極側供給線14bを引き込んでもよい。
【0093】
また、電力取出部15の陽極側取出線15aは、陽極側の導電板53と負荷100とを相互に接続するものであり、その一端を導電板73の上面に接続されると共に、その他端を負荷100の陽極に接続されている。具体的には、接地極側の導電板71及び絶縁層74には、相互に連通するものであって陽極側の導電板73に至る引出孔15cが形成されており、この引出孔15cを介して陽極側取出線15aが給電通信対象空間側に引き出されて、負荷100に接続されている。接地極側取出線15bは、接地極側の導電板71と負荷100とを相互に接続するものであり、具体的には、その一端を接地極側の導電板71の上面に接続されると共に、その他端を負荷100の陰極に接続されている。
【0094】
次に、供給パネル70に対して負荷100を接続するための接続構造について詳細に説明する。この接続構造では、実施の形態1において図10、13、16に示したのと同様の接続端子20、22、27を用いることができる。これら図10、13、16に対応する構造を図34〜36にそれぞれ示す。ただし、本実施の形態では、接続端子20、22、27の外部電極20a、22a、27aは接地極側の導電板71に接続され、内部電極20b、22b、27bは接地極側の導電板71及び絶縁層74を貫通する引出孔15cを介して、陽極側の導電板73に接続される。
【0095】
(通信構造)
通信構造は、実施の形態1において図21、23〜25に示したのと同様の電界プローブ、磁界プローブ、PLC通信構造を用いることができる。これら図21、23〜25に対応する構造を図37〜40にそれぞれ示す。なお、ここでは、これら電界プローブ32や磁界プローブ33が導電板71を貫通して絶縁層74に差し込まれている例を示しているが、供給パネル70の下側から当該供給パネル70にアクセスできる場合(例えば実施の形態2のような桟構造にて供給パネル70を支持した場合)には、導電板72を貫通して絶縁層75に差し込むようにしてもよい。また、PLC通信を行う場合には、接地極側の導電板72及び陽極側の導電板73を用いてもよい。
【0096】
(供給パネル70相互の接続構造)
次に、供給パネル70を相互に接続するための接続構造について説明する。図41は、接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は供給パネル70の付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す。
【0097】
図41(a)に示すように、相互に接続される2枚の供給パネル70は、それぞれの接続側の端部を傾斜状に加工されている。より具体的には、下側の導電板72のみが相手方の供給パネル70に向けて突出され、絶縁層75、導電板73、絶縁層74の各々は上方に至るに伴って相手方の供給パネル70から遠ざかるように傾斜し、上側の導電板71は絶縁層74の傾斜上端位置よりさらに相手方の供給パネル70から遠ざかる位置に配置されている。そして、これら2枚の供給パネル70を並設することで、これら2枚の供給パネル70の相互間には断面略V字状の空間部70aが形成される。この状態においては導電板73の端部が外部に露出されているが、例えば、導電板73の側方を絶縁層76で囲繞した供給パネル70を準備し、この供給パネル70の連結面を傾斜状に加工することで、導電板73の端部を露出させてもよい。あるいは、絶縁層76を省略して、始めから導電板73の端部を露出させた供給パネル70を用いてもよい。
【0098】
このような状態において、下側の導電板72を所定方法(例えば、溶接、あるいは、導電性部材を用いたピン留めやテープ留め)にて相互に接続して図41(b)の状態とすることで、下側の導電板72を相互に導通可能とする。そして、連結部77を上方から空間部70aに挿入して図41(c)の状態とする。この連結部77は、導電部77a、絶縁部77b、導電部77c、絶縁部77dを図示のように順次重合して構成され、全体として、空間部70aに略対応する断面略V字状に形成されている。特に、導電部77cの両側方には下方に突出する接続端子77eが設けられている。従って、連結部77を空間部70aに挿入すると、接続端子77eが導電板73の端部に差し込まれ、接続端子77eを介して導電板73を導電部77cに導通可能に連結することができる。
【0099】
その後、上側の導電板71と連結部77の導電部77aとを溶接等の任意の方法にて相互に接続し、あるいは、導電性のシールをこれら上側の導電板71及び導電部77aに架け渡すように貼付すことにより、導電部77aを介して上側の導電板71を相互に導通可能に接続すると共に、絶縁部77b、77dを介して絶縁層74、75を相互に電界又は磁界を伝播可能に接続する。これにて接続を終了する。
【0100】
(実施の形態2の効果)
【0101】
このような構造によれば、供給パネル70の外面に配置される導電板の全てを接地極としているので、人が供給パネル70のいずれの外面に接触した場合においても、人への通電を防止することができ、人体の安全性を一層高めることができる。
そして、このような構成の供給パネル70に対しても、その上面に機能モジュール50を簡易に設置して、各種の機能を発揮させることができる。
【0102】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、供給パネルを密閉型に構成した形態である。なお、実施の形態2と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態2で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0103】
(供給パネルの構成)
図42は、本実施の形態3に係る給電通信システムの縦断面図である。この図42に示すように、給電通信システムは、建屋内の居室1の床部2の上面に、複数の供給パネル90を並設して構成されている。
【0104】
各供給パネル90は、一対の導電板91、92と、これら一対の導電板91、92の相互間に配置された導電板93と、導電板91と導電板93との相互間に配置された絶縁層94と、導電板92と導電板93との相互間に配置された絶縁層95とを備えて構成されている。また、導電板93の側方には絶縁層96が配置されており、これら絶縁層94〜96によって導電板93が完全に囲繞されて外部から絶縁されることで、当該導電板93の端部が電力供給パネル90の端面に対して非露出状とされている。さらに、実施の形態3と異なり、絶縁層94〜96の四周側方にも導電板97が配置された密閉構造となっており、この導電板97を介して一対の導電板91、92が相互に導通可能に接続されている。なお、図43に示すように、隣接する複数の電力通信パネル90の導電板93を後述する接続構造を用いることで相互に接続してもよい。
【0105】
(電力供給構造)
電力供給構造については、実施の形態2と同様に、図34〜36に示した接続端子20、22、27を用いることができるので、その説明を省略する。このような電力通信システムにより、供給パネル90の外側に露出する導電板91、92及び側方の導電板97が接地極側、中央の導電板93が陽極側になるように電力が供給される。なお、陽極側供給線14bを導電板93の端面に接続する場合には、絶縁層96及び導電板97に貫通孔を形成し、当該貫通孔を介して陽極側供給線14bを引き込んでもよい。この際には、導電板97と陽極側供給線14bとの相互間に絶縁部材を設けて絶縁を確保することが好ましい。
【0106】
(通信構造)
電力供給構造については、実施の形態2と同様に、図37〜40に示した電界プローブ、磁界プローブ、PLC通信構造を用いることができるので、その説明を省略する。
【0107】
(供給パネル90相互の接続構造)
次に、供給パネル90を相互に接続するための接続構造については、図41に示した接続構造を適用できるので、その説明を省略する。この場合において、例えば、導電板93の側方を絶縁層96や導電板97で囲繞した供給パネル90を準備し、この電力供給パネル90の連結面を傾斜状に加工することで、導電板93の端部を露出させてもよい。あるいは、絶縁層96や導電板97を省略して、始めから導電板93の端部を露出させた供給パネル90を用いてもよい。
【0108】
(実施の形態3の効果)
このような構成によれば、陽極側の導電板93が絶縁層94〜96及び接地極側の導電板97にて完全に囲繞されて外部に露出しないので、供給パネル90の安全性を一層高めることができる。特に、陽極側の導電板93を絶縁層94〜96及び接地極側の導電板97にて完全に囲繞することで、陽極側の導電板93を流れるプラス電流に起因するノイズが供給パネル90の外部に漏洩しないようにシールドすることができ、通信環境を高めることができる。
そして、このような構成の供給パネル50に対しても、その上面に機能モジュール50を簡易に設置して、各種の機能を発揮させることができる。
【0109】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0110】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0111】
(各実施の形態の組合せ)
各実施の形態に示した構成は、相互に組合せることができ、例えば、各実施の形態1から3の供給パネル10、70、90を、同一の給電通信対象平面5に混在して敷設してもよい。
【0112】
(機能モジュールの構造)
また、各機能モジュールの具体的構造は、当該各機能モジュールの機能を奏し得る公知の構造を採用することができる。また、各機能モジュールと供給パネルや負荷との接続構造についても、接続端子と機能モジュールとを相互に別構成とする等、変更することが可能である。
【0113】
(絶縁層の構成)
絶縁層は、板状体以外にも、複数の導電板の相互の絶縁性を維持できる限りにおいて任意の形状にて構成することができる。例えば、立方体状、直方体状、角棒状、あるいは、球状の如き絶縁性物質を、複数の導電板の相互間に連続的に又は断続的に配置することで、絶縁層を形成してもよい。すなわち、複数の導電板の相互間に板状の絶縁空間部が形成できればよく、この絶縁空間部の内部に絶縁性物質を必ずしも充満させる必要はない。ただし、絶縁性物質を充満させた場合には、水の浸入を防止することが可能となる点においてより好ましい。
【0114】
(陽極の導電板の端部の非露出化のための構成)
実施の形態2においては、接地極側の導電板の相互間に配置された陽極の導電板を、その側方においても絶縁層にて囲繞することで、当該陽極の導電板の端部が電力供給パネルの端面から外部に露出しないようにしている。また、実施の形態3においては、接地極側の導電板の相互間に配置された陽極の導電板の側方にも、接地極になる導電板を配置することで、当該陽極の導電板の端部が電力供給パネルの端面から外部に露出しないようにしている。この他にも、陽極の導電板の端部を電力供給パネルの端面から外部に露出させないための構成を採用することができ、例えば、陽極の導電板の長さ及び幅を、接地極側の導電板の長さ及び幅より短くすることで、陽極の導電板の端部を電力供給パネルの内側に位置させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
この発明は、各種の空間に電力を供給するものであり、特に、広範な給電通信対象平面に電力供給を行なうと共に、利用者の安全確保を図ることに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態1に係る給電通信システムを適用した居室の斜視図である。
【図2】図1の要部平面図である。
【図3】図1の供給パネル周辺の縦断面図である。
【図4】電力供給機能や通信機能のための構造を概念的に示す側面図である。
【図5】供給パネルの斜視図である。
【図6】第1の機能モジュールの構成を概念的に示す斜視図である。
【図7】電力供給構造を概念的に示す縦断面図である。
【図8】電力供給構造を概念的に示す斜視図である。
【図9】電源モジュールと供給パネルとの接続構造を示す図である。
【図10】接続端子周辺の拡大図である。
【図11】他の例に係る接続端子を備えた電源モジュールと供給パネルとの接続構造を示す図である。
【図12】接続端子周辺の拡大図である。
【図13】接続端子に導電性シールを貼付した状態を示す図である。
【図14】接続孔を導電性カバーにて塞いだ状態を示す図である。
【図15】接続孔を絶縁体にて閉鎖した状態を示した図である。
【図16】供給パネルを他の例に係る接続端子と共に示す縦断面図である。
【図17】配電モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図18】他の例係る配電モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図19】図18の配電モジュールの平面図である。
【図20】電界通信用の有線通信モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図21】図20の要部縦断面図である。
【図22】磁界通信用の有線通信モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図23】図22の要部縦断面図である。
【図24】PLC通信における電力供給用の有線通信モジュール周辺の要部縦断面図である。
【図25】PLC通信における電力取得用の有線通信モジュール周辺の要部縦断面図である。
【図26】無線通信モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図27】センサモジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図28】アクチュエータモジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図29】処理モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図30】接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は供給パネルの付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す図である。
【図31】実施の形態2に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図32】実施の形態2の他の例に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図33】電力供給構造を概念的に示す縦断面図である。
【図34】図10に対応する、実施の形態2に係る接続端子周辺の拡大図である。
【図35】図13に対応する、実施の形態2に係る接続端子周辺の拡大図である。
【図36】図16に対応する、実施の形態2に係る接続端子周辺の拡大図である。
【図37】図21に対応する、電界通信用の有線通信モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図38】図23に対応する、磁界通信用の有線通信モジュールを供給パネルと共に示す縦断面図である。
【図39】図24に対応する、PLC通信における電力供給用の有線通信モジュール周辺の要部縦断面図である。
【図40】図25に対応する、PLC通信における電力取得用の有線通信モジュール周辺の要部縦断面図である。
【図41】接続構造及び接続手順を示す縦断面図であり、(a)は供給パネルの付き合わせ状態、(b)は連結部の挿入前の状態、(c)は連結部の挿入後の状態をそれぞれ示す図である。
【図42】実施の形態3に係る給電通信システムの縦断面図である。
【図43】実施の形態3の他の例に係る給電通信システムの縦断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1 居室
2 床部
3 絶縁シート
5 給電通信対象平面
6 給電通信非対象平面
7 床構成パネル
10、70、90 供給パネル
11、12、71〜73、91〜93、97 導電板
13、74〜76、94〜96 絶縁層
14 電力供給部
14a 直流電源
14b 陽極側供給線
14c 接地極側供給線
15 電力取出部
15a 陽極側取出線
15b 接地極側取出線
15c 引出孔
20、22、27 接続端子
20a、22a、27a、32a 外部電極
20b、22b、27b、32b 内部電極
20c、22c、27c、32c 絶縁層
21 接続孔
22d、27d 接触部
23、25 導電性シール
24 導電性カバー
26 絶縁体
28 取付ネジ
32 電界プローブ
33 磁界プローブ
55b モデム
35 光ファイバ
36a、36b、37a、37b 信号線
50 機能モジュール
51 第1の機能モジュール
51a 床面構成板
51b 支持脚
52 第2の機能モジュール
53 電源モジュール
54 配電モジュール
54a 電力供給端子
55 有線通信モジュール
55a 信号接続端子
55d 信号分離フィルタ
56 無線通信モジュール
56a 無線送受信器
57 センサモジュール
100 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電板と、複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成された、電力又は通信信号を供給するための供給パネルと、
前記供給パネルを下方から支持する支持体と、
前記供給パネルの上方に複数並設されるものであって、床面を構成する機能を有する第1の機能モジュール、又は、床面を構成する機能に加えて前記供給パネルに接続されて電力若しくは通信信号の入力若しくは出力を行う機能を有する第2の機能モジュール、
を備えたことを特徴とする電力通信床構造。
【請求項2】
前記供給パネルは、
前記機能モジュールに最も近接する側に配置された導電板を接地極とするように、前記複数の導電板に直流電源が接続され、
前記導電板又は前記絶縁層を、前記通信信号を伝播するための通信路としたこと、
を特徴とする請求項1に記載の電力通信床構造。
【請求項3】
前記第2の機能モジュールは、
電源にて供給された電力を前記供給パネルに供給する電源モジュール、又は、前記供給パネルを介して供給された電力を負荷に供給する配電モジュールであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電力通信床構造。
【請求項4】
前記第2の機能モジュールは、
通信機器から出力された通信信号を前記供給パネルに有線又は無線にて中継し、又は、前記供給パネルを介して供給された通信信号を通信機器に有線又は無線にて中継する、通信モジュールであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電力通信床構造。
【請求項5】
前記第2の機能モジュールは、
当該第2の機能モジュールの上方における所定の検知対象を検知し、当該検知結果に関する通信信号を前記供給パネルに出力するセンサモジュールであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電力通信床構造。
【請求項6】
前記第2の機能モジュールは、
当該第2の機能モジュールの内部又は外部に対する動作を行なうアクチュエータモジュールであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電力通信床構造。
【請求項7】
前記第2の機能モジュールは、
情報処理を行なうための情報処理モジュールであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電力通信床構造。
【請求項8】
支持体と、床面を構成する機能を有する第1の機能モジュール又は当該床面を構成する機能に加えて電力若しくは通信信号を供給する機能を有する第2の機能モジュールとの相互間に敷設されるものであって、当該第2機能モジュールとの間において前記電力又は前記通信信号の入力又は出力を行う供給パネルであって、
複数の導電板と、これら複数の導電板の相互間に設けられた絶縁層とを、相互に重畳状に配置して一体に構成され、
前記機能モジュールに最も近接する側に配置された導電板を接地極とするように、前記複数の導電板に直流電源が接続され、
前記導電板又は前記絶縁層を、前記通信信号を伝播するための通信路としたこと、
を特徴とする供給パネル。
【請求項9】
電力又は通信信号を供給可能な供給パネルの上面に複数並設されるものであって、床面を構成する機能、又は、床面を構成する機能に加えて前記供給パネルに対して電力若しくは通信信号の入力若しくは出力を行う機能を有すること、
を特徴とする機能モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2008−280783(P2008−280783A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126983(P2007−126983)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】