説明

電動アクチュエータ及び電動アクチュエータシステム

【課題】機器駆動の信頼性を確保でき、構造の簡素化及び小型化を図れるとともに、重量及びコストの増大を抑制でき、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる、電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】第1電動モータ11は、第1スクリュー23に伝達される回転駆動トルクを発生させ、ハウジング13に対して第1出力部19を変位させる。第1ナットランナ24は第1出力部19に一体に設けられ、第1スクリュー23は第1ロック機構16によってロック可能に設置される。第2スクリュー26は第2出力部20に固定され、第2ナットランナ27が第2ロック機構17によってロック可能に設置される。第1スクリュー23及び第2スクリュー26は同軸線上に設置される。第1スクリュー23の筒状の部分の内側に第2スクリュー26の端部が隙間を介した状態で挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線方向に沿って伸縮するように変位することで機器を駆動する電動アクチュエータ、及びその電動アクチュエータを備える電動アクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、ヘリコプター、飛しょう体、等においては、直線方向に沿って伸縮するように変位することで各種機器を駆動するアクチュエータが用いられている。このようなアクチュエータでは、ギア或いはスクリュー等の駆動機構において、焼き付き或いは固着といったような故障が発生することがある。また、駆動源に故障が発生してその機能の喪失又は低下等が生じることもある。
【0003】
上記のような故障が発生した場合に備え、上述したようなアクチュエータでは、バックアップ用の駆動機構を備えて冗長化が図られた構造が設けられることで、機器駆動の信頼性が確保されることが重要となる。或いは、上述したようなアクチュエータでは、故障が発生したアクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能な構造が設けられることで、機器駆動の信頼性が確保されることが重要となる。
【0004】
特許文献1においては、電動駆動機構又は油圧駆動機構のいずれを用いても可動ロッドを作動させることができ、冗長化が図られたアクチュエータが開示されている。このアクチュエータは、シリンダ、ピストン、ピストンに連結された可動ロッド、可動ロッド内部に一部が挿入されたネジ軸、ネジ軸に螺合してピストンとともに移動するナット、ネジ軸を回転駆動する電動モータ、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−155075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたアクチュエータは、電動モータと油圧シリンダ機構とが備えられたハイブリッド構造のアクチュエータとして構成されるため、冗長化が図られることになる。しかしながら、電動モータ及び油圧シリンダ機構のハイブリッド化によって、構造が複雑化し、更に、重量及びコストの増大も招いてしまうことになる。
【0007】
上記のようなハイブリッド化によらず、油圧シリンダ機構を用いずに電動モータによる電動駆動機構のみを用いて冗長化が図られた構造の電動アクチュエータの実現も可能と考えられる。このような冗長化が図られた電動アクチュエータとしては、電動モータとこの電動モータからの駆動力を伝達して機器を駆動するギア或いはスクリュー等の駆動機構とを備えた電動駆動機構が2つ設けられた構造が考えられる。そして、このように2つの電動駆動機構が設けられた電動アクチュエータとしては、2つの電動駆動機構が並列に或いは直列に設置された構造が考えられる。
【0008】
2つの電動駆動機構が並列に設置された電動アクチュエータの場合、並列に設置された各電動駆動機構が、駆動対象の機器に対してそれぞれ連結されることになる。そして、一方の電動駆動機構において固着等の故障が発生すると、その故障の影響が、連結された駆動対象の機器を介して、故障が発生していない他方の電動駆動機構にまで生じることになる。即ち、両電動駆動機構が連結された機器を介して、故障した電動駆動機構の作動不良が、故障が生じていない電動駆動機器の作動を制約する要因となってしまう。このように、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことになる。更に、電動駆動機構が並列に設置されているため、直線方向に沿って変位することで機器を駆動する電動アクチュエータにおいて、変位方向と垂直な幅方向の寸法が増大し、構造が大型化し、設置スペースの増大を招いてしまうことになる。
【0009】
また、2つの電動駆動機構が直列に設置された電動アクチュエータの場合、変位方向である長手方向の寸法が増大し、構造が大型化し、設置スペースの増大を招いてしまうことになる。更に、一方の電動駆動機構において固着等の故障が発生すると、故障が生じていない他方の電動駆動機構を作動させるためには、他方の電動駆動機構の可動範囲を確保するために非常に長大なストロークが必要となり、更に設置スペースの大型化を招いてしまうことになる。即ち、他方の電動駆動機構の可動範囲として、一方の電動駆動機構が固着等した位置に基づいて他方の電動駆動機構を中立位置にポジショニングでき、更にその中立位置からの作動ストロークが確保される長大なストロークが必要となる。また、このことに伴い、一方の電動駆動機構での故障が発生した場合における他方の電動駆動機構による位置制御の複雑化を招くことになり、更に、位置を検出するための位置センサの寸法も長大化してしまうことになる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、機器駆動の信頼性を確保でき、構造の簡素化及び小型化を図れるとともに、重量及びコストの増大を抑制でき、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる、電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータシステムと、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1発明に係る電動アクチュエータは、 ハウジングと、前記ハウジングの一端側で当該ハウジングに対して突出して相対変位可能に設けられた第1出力部と、前記ハウジングの他端側で当該ハウジングに対して突出して相対変位可能に設けられた第2出力部と、前記ハウジングに少なくとも一部が収納される第1スクリューと、前記第1スクリューに対して相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで当該第1スクリューに対して軸方向に相対変位可能な第1ナットランナと、前記ハウジングに少なくとも一部が収納される第2スクリューと、前記第2スクリューに対して相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで当該第2スクリューに対して軸方向に相対変位可能な第2ナットランナと、前記第1スクリュー及び前記第1ナットランナのうちのいずれかに対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、前記ハウジングに対して前記第1出力部を変位させる第1電動モータと、前記第1スクリューに対する前記第1ナットランナの相対回転動作を規制するようロック可能な第1ロック機構と、前記第2スクリューに対する前記第2ナットランナの相対回転動作を規制するようロック可能な第2ロック機構と、を備え、前記第1スクリュー及び前記第1ナットランナは、一方が前記第1出力部に対して一体に設けられ又は固定され、他方が前記第1ロック機構によってロック可能に設置され、前記第2スクリュー及び前記第2ナットランナは、一方が前記第2出力部に対して一体に設けられ又は固定され、他方が前記第2ロック機構によってロック可能に設置され、前記第1スクリュー及び前記第2スクリューは同軸線上に沿って設置され、前記第1スクリュー及び前記第2スクリューの一方が筒状に形成された部分を有し、当該第1スクリュー及び当該第2スクリューの一方の筒状の部分の内側に他方の端部が隙間を介した状態で挿入されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によると、第1ロック機構が第1スクリュー及び第1ナットランナのロック動作を解放するとともに第2ロック機構が第2スクリュー及び第2ナットランナのロック動作を作動させた状態で、第1電動モータが作動する。そして、第1電動モータによる回転駆動トルクによって、第1スクリュー及び第1ナットランナの相対回転動作が生じて第1出力部が変位し、第1及び第2出力部の少なくともいずれかが連結された機器が駆動される。また、上記の構成によると、第1スクリュー及び第2スクリューのうちの一方の内側に他方の端部が隙間を介した状態で挿入され、第1スクリュー及び第2スクリューの機械的な連結が切り離されている。このため、第1スクリュー及び第1ナットランナの固着等の故障、或いは第1電動モータの故障、等が発生しても、第2スクリュー及び第2ナットランナの作動に影響を与えないことになる。よって、この構成によると、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる。
【0013】
また、ハウジング内で同軸線上に沿って設置された第1スクリュー及び第2スクリューのうちの一方の内側に他方の端部が挿入される構造のため、変位方向である長手方向及びそれに垂直な幅方向のいずれにおいても構造の小型化を図れ、設置スペースのコンパクト化を図ることができる。更に、上記の構成により、構造の簡素化を図れ、重量及びコストの増大を抑制できる。また、上記の構成により、第1スクリュー及び第1ナットランナ等の固着等の故障が生じた際における第2スクリュー又は第2ナットランナの作動ストロークが、長手方向の寸法が短い電動アクチュエータであっても容易に確保される。
【0014】
また、上記の構成によると、第1スクリュー及び第1ナットランナ等の駆動機構の固着等の故障、或いは第1電動モータの故障、等が発生しても、第2スクリュー及び第2ナットランナの作動が確保され、第2出力部の変位が可能となる。よって、第2スクリュー及び第2ナットランナのいずれかに回転駆動トルクを伝達することで、上記の故障の発生時におけるバックアップ用の駆動機構を実現でき、冗長化を図ることができる。或いは、第2スクリュー及び第2ナットランナの作動が確保されていることで、上記の故障の発生時において、故障が発生したアクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能な構造を実現できる。よって、上記の構成によると、機器駆動の信頼性を確保することができる。
【0015】
従って、上記の構成によると、機器駆動の信頼性を確保でき、構造の簡素化及び小型化を図れるとともに、重量及びコストの増大を抑制でき、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる、電動アクチュエータを提供することができる。
【0016】
第2発明に係る電動アクチュエータは、第1発明の電動アクチュエータにおいて、前記第2スクリュー及び前記第2ナットランナのうちのいずれかに対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、前記ハウジングに対して前記第2出力部を変位させる第2電動モータを、更に備えていることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、第2ロック機構が第2スクリュー及び第2ナットランナのロック動作を解放するとともに第1ロック機構が第1スクリュー及び第1ナットランナのロック動作を作動させた状態で、第2電動モータが作動する。そして、第2電動モータによる回転駆動トルクによって、第2スクリュー及び第2ナットランナの相対回転動作が生じて第2出力部が変位し、第1及び第2出力部の少なくともいずれかが連結された機器が駆動される。このため、この構成では、第1スクリュー及び第1ナットランナ等の駆動機構の固着等の故障、或いは第1電動モータの故障、等が発生しても、バックアップ用の駆動機構としての第2スクリュー及び第2ナットランナを第2電動モータによって作動でき、冗長化が図られることになる。
【0018】
第3発明に係る電動アクチュエータは、第1発明又は第2発明の電動アクチュエータにおいて、前記第1ロック機構は、前記第1電動モータの回転軸の回転を規制することで、前記第1スクリューに対する前記第1ナットランナの相対回転動作を規制するようロックすることを特徴とする。
【0019】
この構成によると、第1ロック機構が、第1電動モータの回転軸の回転を規制するように設けられ、第1電動モータに一体化するように効率よくコンパクトに構成される。このため、電動アクチュエータの更なる小型化を図ることができる。
【0020】
第4発明に係る電動アクチュエータは、第1発明乃至第3発明のいずれかの電動アクチュエータにおいて、前記第2ロック機構は、前記第2スクリューに対する前記第2ナットランナの相対回転動作を規制した状態で当該第2スクリューに対して当該第2ナットランナを相対回転させるように生じる回転トルクが当該第2スクリュー又は当該第2ナットランナから伝達された際であって当該回転トルクが所定の大きさ以上のときに、滑りを生じ、当該第2スクリューに対する当該第2ナットランナの相対回転を許容することを特徴とする。
【0021】
この構成によると、第2スクリュー又は第2ナットランナ側からの回転トルクが所定の大きさ以上のときに第2ロック機構で滑りを生じて第2スクリュー及び第2ナットランナの相対回転が許容される。このため、第1スクリュー、第1ナットランナ、第1電動モータ、等の故障の発生時において、即ち、第1電動モータから第1出力部へと至る駆動力伝達経路における故障の発生時において、故障が発生した電動アクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に、所定の大きさ以上の回転トルクが作用したときに第2スクリュー及び第2ナットランナの作動を許容する構造を容易に実現できる。よって、他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能で、ダンピング動作(減衰動作)が可能な機構を簡素な構造で実現することができる。
【0022】
第5発明に係る電動アクチュエータは、第1発明乃至第4発明のいずれかの電動アクチュエータにおいて、ケース及び当該ケースに対して変位するプローブを有し、前記ケースに対する前記プローブの相対位置を検出する位置検出機構を更に備え、前記ケース及び前記プローブの一方は、前記第1出力部とともに変位可能に設置され、前記ケース及び前記プローブの他方は、前記第2出力部とともに変位可能に設置されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によると、ケース及びプローブの一方が第1出力部に他方が第2出力部に設置されて構成された簡素な位置検出機構によって、第1及び第2出力部の一方に対する他方の位置を検出することができる。また、この構成によると、第1スクリュー、第1ナットランナ、第1電動モータ、等の故障が発生しているとき、及び故障が発生していないときのいずれにもおいても、1つの位置検出機構によって、電動アクチュエータのストロークを制御するための位置情報を検出することができる。
【0024】
また、他の観点の発明として、上述した電動アクチュエータを備えた電動アクチュエータシステムの発明を構成することもできる。即ち、第6発明に係る電動アクチュエータシステムは、第5発明の電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの作動を制御するコントローラと、を備え、前記電動アクチュエータは、前記第2スクリュー及び前記第2ナットランナのうちのいずれかに対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、前記ハウジングに対して前記第2出力部を変位させる第2電動モータを有し、前記コントローラは、前記位置検出機構での検出結果に基づいて、前記第1出力部に対する前記第2出力部の位置が所定の中立位置となるように、前記第2電動モータに対する回転指令を出力可能であることを特徴とする。
【0025】
この構成によると、第1スクリュー、第1ナットランナ、第1電動モータ、等の故障が発生した際に、コントローラは、位置検出機構での検出結果に基づいて第2電動モータを駆動させ、第1出力部に対する第2出力部の位置が所定の中立位置となるように制御することができる。これにより、故障して作動不良となった第1スクリュー又は第1ナットランナの位置に応じて、第2スクリュー又は第2ナットランナを中立位置にポジショニングして、速やかに電動アクチュエータの制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、機器駆動の信頼性を確保でき、構造の簡素化及び小型化を図れるとともに、重量及びコストの増大を抑制でき、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる、電動アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電動アクチュエータが航空機の翼及び舵面に対して取り付けられた状態を示す模式図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータの正面図である。
【図3】図1に示す電動アクチュエータの断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る電動アクチュエータシステムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、航空機の動翼を駆動するための航空機用動翼駆動機構において電動アクチュエータが設けられた形態を例にとって説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態で例示した形態に限らず、直線方向に沿って伸縮するように変位することで機器を駆動する電動アクチュエータに関して広く適用することができるものである。例えば、航空機、ヘリコプター、或いは、飛しょう体において用いられる電動アクチュエータに対して、本発明を適用することができる。また、航空機及びヘリコプターに関しては、有人機及び無人機のいずれで用いられる電動アクチュエータに対しても本発明を適用することができる。
【0029】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電動アクチュエータ1が航空機の翼101及び舵面102に対して取り付けられた状態を示す模式図である。電動アクチュエータ1の説明にあたり、まず、電動アクチュエータ1が適用される例である動翼駆動機構100について説明する。図1に示す電動アクチュエータ1を含む動翼駆動機構100は、図1にて翼101及び舵面102のみを図示して主要部の図示を省略した航空機に設置される。そして、動翼駆動機構100は、航空機の舵面102を駆動するために用いられる。
【0030】
尚、舵面102を構成する航空機の動翼(操縦翼面)として、補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)、昇降舵(エレベータ)などが挙げられる。また、電動アクチュエータ1を含む動翼駆動機構100は、フラップやスポイラー等として構成される動翼を駆動する機構として用いられてもよい。
【0031】
図2は、電動アクチュエータ1を含む動翼駆動機構100の正面図である。尚、図2では、舵面102の一部が切り欠き状態で図示されている。図1及び図2に示すように、動翼駆動機構100は、電動アクチュエータ1とこの電動アクチュエータ1に連結されるリアクションリンク103とを備えるリンク駆動機構として構成されている。
【0032】
電動アクチュエータ1は、直線方向に沿って伸縮するように変位することで本実施形態の機器である舵面102を駆動するアクチュエータとして設けられている。そして、電動アクチュエータ1の一端側の端部が、舵面102に取り付けられた揺動軸104に対して、軸受或いは円筒状の摺動用部材としてのブッシュを介して回転自在に取り付けられている。これにより、電動アクチュエータ1は、舵面102に対して、一端側が揺動自在に取り付けられている。
【0033】
リアクションリンク103は、電動アクチュエータ1からの出力が舵面102に出力された際に、この出力による舵面102からの反力を支持する部材として設けられている。そして、リアクションリンク103は、翼101に対して揺動する可動側の舵面102が受ける負荷が、舵面102が揺動自在に支持される固定側の翼101に対して、直接に影響しないようにするために設けられている。
【0034】
リアクションリンク103は、一端側の端部が、舵面102を翼101側に対して回転自在に支持する支点軸105に対して取り付けられる。尚、リアクションリンク103における一端側の端部は、例えば、支点軸105に対して、軸受或いは円筒状の摺動用部材としてのブッシュを介して回転自在に取り付けられている。これにより、リアクションリンク103は、その一端側が、支点軸105に対して、揺動自在に取り付けられている。また、支点軸105と揺動軸104とは、軸方向が互いに平行に延びるように設けられている。そして、支点軸105と揺動軸104との間の距離寸法は、電動アクチュエータ1の作動によって支点軸105を中心として揺動させて舵面102を駆動するために必要なトルクアーム長さを確保できるように、適宜設定されている。
【0035】
また、リアクションリンク103は、例えば、支点軸105に取り付けられる一端側からその反対側の他端側にかけて、二股に分岐するように形成されている。そして、リアクションリンク103における二股に分岐した部分の間に、電動アクチュエータ1の一部が配置される。また、リアクションリンク103における二股に分岐した他端側の各端部は、電動アクチュエータ1における揺動軸104に取り付けられる一端側と反対側の他端側に対して揺動自在に取り付けられている。そして、リアクションリンク103の他端側の各端部は、電動アクチュエータ1とリアクションリンク103とを互いに回転自在に連結する連結軸106に対して、軸受或いは円筒状の摺動用部材としてのブッシュを介して回転自在に取り付けられている。尚、電動アクチュエータ1及びリアクションリンク103は、連結軸106を介して、翼101に対して回転自在に支持されている。
【0036】
次に、本実施形態に係る電動アクチュエータ1について詳しく説明する。図3は、電動アクチュエータ1の断面図である。図1乃至図3に示す電動アクチュエータ1は、第1電動モータ11、第2電動モータ12、ハウジング13、第1駆動機構14、第2駆動機構15、第1電磁クラッチ16、第2電磁クラッチ17、位置検出機構18、等を備えて構成されている。尚、図3においては、第1電動モータ11、第2電動モータ12、第1電磁クラッチ16、第2電磁クラッチ17については、断面ではなく外形が図示されている。
【0037】
ハウジング13は、第1駆動機構14及び第2駆動機構15の主要部を収納するとともに、第1電動モータ11及び第2電動モータ12が固定されている。尚、後述する第1駆動機構14における第1出力部19は、ハウジング13に対して一端側の端部から露出して突出した状態で設けられている。また、後述する第2駆動機構15における第2出力部20は、ハウジング13に対して他端側の端部から露出して突出した状態で設けられている。
【0038】
第1電動モータ11は、正逆回転動作が可能であって、後述するアクチュエータコントローラ21からの指令に基づいてフィードバック制御が行われる電動モータとして構成されている。そして、第1電動モータ11は、第1駆動機構14に対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、ハウジング13に対して第1出力部19を変位させる電動モータとして設けられている。
【0039】
第2電動モータ12は、正逆回転動作が可能であって、後述するアクチュエータコントローラ21からの指令に基づいてフィードバック制御が行われる電動モータとして構成されている。そして、第2電動モータ12は、第2駆動機構15に対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、ハウジング13に対して第2出力部20を変位させる電動モータとして設けられている。
【0040】
第1駆動機構14は、第1出力部19、第1ギヤユニット22、第1スクリュー23、第1ナットランナ24、等を備えて構成されている。
【0041】
第1出力部19は、電動アクチュエータ1の一端側の端部として設けられ、揺動軸104に対して回転自在に取り付けられている。そして、第1出力部19は、ハウジング13の一端側でハウジング13に対して突出して相対変位可能に設けられ、第1電動モータ11から伝達された回転駆動トルクによって生じる駆動力を出力するように構成されている。
【0042】
第1スクリュー23は、ハウジング13に収納され、ハウジング13の内側で回転自在に支持されている。そして、第1スクリュー23は、一体に形成されたネジ軸部23aとギヤ部23bとを備えて構成されている。ネジ軸部23aは、中空で円筒状の部分として形成され、外周に螺旋状のネジ溝が設けられている。ネジ軸部23aの一端側の端部は、第1出力部19において筒状に形成された部分に設けられてハウジング13内で開口する穴19aに対して、隙間を介して挿入された状態で配置されている。
【0043】
また、ネジ軸部23aの他端側の端部には、中空のギヤ部23bが一体に設けられている。ギヤ部23bの外周には、外歯歯車が形成されている。ネジ軸部23a及びギア部23bの中空の領域は、連続しており、本実施形態では、第1スクリュー23を貫通する貫通孔として構成されている。
【0044】
第1ナットランナ24は、第1スクリュー23のネジ軸部23aの外周に対して相対回転可能に取り付けられている。また、本実施形態では、第1ナットランナ24は、例えば、円筒状の部分として設けられ、内周に螺旋状のネジ溝が設けられている。そして、第1ナットランナ24は、第1出力部19における揺動軸104に連結される一端側と反対側の他端側において、第1出力部19と一体に設けられている。第1ナットランナ24の中空の領域と第1出力部19の穴19aとは、連続しており、第1スクリュー23のネジ軸部23aが挿通された状態で配置されている。
【0045】
そして、第1ナットランナ24の内周のネジ溝と第1スクリュー23のネジ軸部23aの外周のネジ溝との間においては、複数のボール30が循環して転動するように構成されている。即ち、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24は、ボールネジ機構を構成している。第1スクリュー23が軸心を中心として回転することで、ボール30がネジ軸部23aのネジ溝と第1ナットランナ24のネジ溝との間で転動し、第1ナットランナ24が、ハウジング13内で第1スクリュー23の軸方向に変位することになる。
【0046】
上記のように、第1ナットランナ24は、ネジ軸部23aに対して相対回転することで、第1スクリュー23に対してその軸方向に、即ち、ネジ軸23aに対してその軸方向に、相対変位可能に構成されている。尚、本実施形態では、第1スクリュー23が回転し、第1ナットランナ24が第1スクリュー23に対して軸方向に変位する形態を例示しているが、この逆の関係の構成が実施されてもよい。即ち、第1ナットランナが回転し、第1スクリューが第1ナットランナに対して第1スクリューの軸方向に変位する形態が実施されてもよい。
【0047】
また、第1ナットランナ24は、その外周がハウジング13の内壁13aに対して摺動自在の状態で、ハウジング13内に設置されている。そして、第1スクリュー23の回転に伴って第1ナットランナ24がハウジング13内で第1スクリュー23の軸方向に変位すると、第1ナットランナ24に一体に設けられた第1出力部19もハウジング13に対して変位することになる。
【0048】
尚、第1ナットランナ24の第1ハウジング13内での第1スクリュー23の軸方向における変位は、ハウジング13内で第1ナットランナ24に当接可能な段部として設けられたストローク規制部(13b、13c)によって、規制されている。即ち、第1ナットランナ24は、ストローク規制部13bとストローク規制部13cとの間の領域で第1スクリュー23の軸方向に変位可能なように、ストロークが規制されている。
【0049】
また、第1ナットランナ24が一体に設けられた第1出力部19とハウジング13との間には、第1ナットランナ24及び第1出力部19の軸心を中心とした回転方向の変位を規制する回り止め機構28が設置されている。回り止め機構28は、複数のリンク部材が連結されたリンク機構として設けられ、一方の端部が第1出力部19に取り付けられ、他方の端部がハウジング13に取付けられている。
【0050】
第1ギヤユニット22は、大径歯車として設けられたスパーギヤ22aと、小径歯車として設けられたピニオンギヤ22bとを備えて構成されている。スパーギヤ22aは、第1電動モータ11の回転軸11aに固定されており、第1電動モータ11の回転駆動トルクが入力される。ピニオンギヤ22bは、ハウジング13内において回転自在に支持され、スパーギヤ22a及び第1スクリュー23のギヤ部23bの両方に噛合うように設置されている。そして、ピニオンギヤ22bは、スパーギヤ22aに入力された回転駆動トルクが伝達され、この回転を増速して第1スクリュー23のギヤ部23bに伝達する。上記により、第1電動モータ11で発生した回転駆動トルクは、第1ギヤユニット22を介して、第1スクリュー23に対して伝達される。尚、第1ギヤユニット22及びギヤ部23bは、平歯車機構以外の歯車機構として構成されていてもよい。例えば、第1ギヤユニット22及びギヤ部23bが、ヘリカルギヤ機構として構成されていてもよい。
【0051】
第2駆動機構15は、第2出力部20、第2ギヤユニット25、第2スクリュー26、第2ナットランナ27、等を備えて構成されている。
【0052】
第2出力部20は、電動アクチュエータ1の他端側の端部として設けられ、連結軸106に対して回転自在に取り付けられている。そして、第2出力部20は、ハウジング13の他端側でハウジング13に対して突出して相対変位可能に設けられ、第2電動モータ12から伝達された回転駆動トルクによって生じた駆動力を出力するように構成されている。
【0053】
第2スクリュー26は、ハウジング13に一部が収納されたネジ軸部材として構成されている。この第2スクリュー26は、中央に貫通孔が形成された丸棒状の部材として形成され、外周にネジが設けられている。
【0054】
また、第2スクリュー26の一端側の端部は、第1スクリュー23のギヤ部23b及びネジ軸部23aにおいて形成された中空領域に対して挿入され、第1スクリュー23の内側に対して隙間を介して挿入された状態で配置されている。即ち、本実施形態では、第1スクリュー23及び第2スクリュー26の一方である第1スクリュー23が筒状に形成された部分を有し、第1スクリュー23の筒状の部分の内側に第1スクリュー23及び第2スクリュー26の他方である第2スクリュー26の端部が隙間を介した状態で挿入されている。一方、第2スクリュー26の他端側の端部は、ハウジング13の他端側から突出しており、第2出力部20に対して固定されている。
【0055】
また、第1スクリュー23及び第2スクリュー26は同軸線上に沿って設置されている。即ち、第1スクリュー23の軸心と第2スクリュー26の軸心とは、同一線上に配置されている。
【0056】
第2ナットランナ27は、ハウジング13の内側で回転自在に支持されており、第2スクリュー26の外周に対して相対回転可能に取り付けられている。また、本実施形態では、第2ナットランナ27は、例えば、円筒状の部分として設けられた円筒部27aと、円筒部27aの一端側の端部にフランジ状に設けられて外周に外歯歯車が形成されたギヤ部27bと、を備えて構成されている。
【0057】
第2ナットランナ27の円筒部27aに形成された中央の貫通孔には、第2スクリュー26が挿通されている。このため、第2ナットランナ27の軸心は、第2スクリュー26の軸心と一致した状態に設定されている。そして、円筒部27aの内周にはネジが形成されており、この円筒部27aの内周のネジは、第2スクリュー26の外周のネジに螺合している。これにより、第2ナットランナ27が軸心を中心として回転することで、第2ナットランナ27に螺合する第2スクリュー26が、ハウジング13に対して第2スクリュー26及び第2ナットランナ27の軸方向に変位することになる。
【0058】
上記のように、第2ナットランナ27は、第2スクリュー26に対して相対回転することで、第2スクリュー26に対してその軸方向に相対変位可能に構成されている。尚、本実施形態では、第2ナットランナ27が回転し、第2スクリュー26が第2ナットランナ27に対して軸方向に変位する形態を例示しているが、この逆の関係の構成が実施されてもよい。即ち、第2スクリューが回転し、第2ナットランナが第2スクリューに対して軸方向に変位する形態が実施されてもよい。
【0059】
また、第2ナットランナ27の回転に伴って第2スクリュー26が軸方向に変位すると、第2スクリュー26に固定された第2出力部20もハウジング13に対して変位することになる。尚、第2スクリュー26が一体に設けられた第2出力部20とハウジング13との間には、第2スクリュー26及び第2出力部20の軸心を中心とした回転方向の変位を規制する回り止め機構29が設置されている。回り止め機構29は、複数のリンク部材が連結されたリンク機構として設けられ、一方の端部がハウジング13に取り付けられ、他方の端部が第2出力部20に取付けられている。
【0060】
第2ギヤユニット25は、大径歯車として設けられたスパーギヤ25aと、小径歯車として設けられたピニオンギヤ25bとを備えて構成されている。スパーギヤ25aは、第2電動モータ12の回転軸12aに固定されており、第2電動モータ12の回転駆動トルクが入力される。ピニオンギヤ25bは、ハウジング13内において回転自在に支持され、スパーギヤ25a及び第2ナットランナ27のギヤ部27bの両方に噛合うように設置されている。そして、ピニオンギヤ25bは、スパーギヤ25aに入力された回転駆動トルクが伝達され、この回転を増速して第2ナットランナ27のギヤ部27bに伝達する。上記により、第2電動モータ12で発生した回転駆動トルクは、第2ギヤユニット25を介して、第2ナットランナ26に対して伝達される。尚、第2ギヤユニット25及びギヤ部27bは、平歯車機構以外の歯車機構として構成されていてもよい。例えば、第2ギヤユニット25及びギヤ部27bが、ヘリカルギヤ機構として構成されていてもよい。
【0061】
第1電磁クラッチ16は、第1スクリュー23に対する第1ナットランナ24の相対回転動作を規制するようロック可能な本実施形態の第1ロック機構として設けられている。そして、本実施形態では、第1電磁クラッチ16は、第1電動モータ11に対して取り付けられ、第1電動モータ11の回転軸11aの回転を規制することで、第1ギヤユニット22を介して、第1スクリュー23に対する第1ナットランナ24の相対回転動作を規制するようロックするように構成されている。
【0062】
尚、本実施形態では、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24は、その一方である第1ナットランナ24が、第1出力部19に対して一体に設けられる。そして、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24の他方である第1スクリュー23が、第1ギヤユニット22を介して、第1電磁クラッチ16によってロック可能に設置されている。
【0063】
また、第1電磁クラッチ16は、例えば、噛み合いクラッチ、又は、摩擦クラッチとして構成されている。そして、第1電磁クラッチ16は、例えば、非励磁の状態でバネ力によってクラッチによるロック動作を作動させ、励磁した状態でバネ力に抗してクラッチによるロック動作を解放させるように構成されている。
【0064】
第2電磁クラッチ17は、第2スクリュー26に対する第2ナットランナ27の相対回転動作を規制するようロック可能な本実施形態の第2ロック機構として設けられている。そして、本実施形態では、第2電磁クラッチ17は、第2電動モータ12に対して取り付けられ、第2電動モータ12の回転軸12aの回転を規制することで、第2ギヤユニット25を介して、第2スクリュー26に対する第2ナットランナ27の相対回転動作を規制するようロックするように構成されている。
【0065】
尚、本実施形態では、第2スクリュー26及び第2ナットランナ27は、その一方である第2スクリュー26が、第2出力部20に対して固定される。そして、第2スクリュー26及び第2ナットランナ27の他方である第2ナットランナ27が、第2ギヤユニット25を介して、第2電磁クラッチ17によってロック可能に設置されている。
【0066】
また、第2電磁クラッチ17は、例えば、噛み合いクラッチ、又は、摩擦クラッチとして構成されている。そして、第2電磁クラッチ17は、例えば、非励磁の状態でバネ力によってクラッチによるロック動作を作動させ、励磁した状態でバネ力に抗してクラッチによるロック動作を解放させるように構成されている。
【0067】
位置検出機構18は、ケース31及びこのケース31に対して変位するプローブ32を有し、ケース31に対するプローブ32の相対位置を検出する機構として設けられている。そして、位置検出機構18は、プローブ32及びケース31の主要部が、第1出力部19及び第1スクリュー23の内側に配置されている。
【0068】
プローブ32は、軸状部材32a、軸状部材32aに固定された取付部32b及びコア32c、を有して構成されている。軸状部材32aは、第1出力部19の穴19aから第1スクリュー23の内側の中空領域に亘って第1スクリュー23の軸方向に沿って延びるように設置されている。軸状部材32aは、例えば、SUS300系ステンレス鋼によって形成されている。
【0069】
取付部32bは、軸状部材32aの一端側の端部に設けられ、第1出力部19に対して例えば螺合によって固定されることでプローブ32を第1出力部19に取り付けるための部分として構成されている。これにより、プローブ32は、第1出力部19に対して片持ち状に支持されている。また、この構成により、本実施形態では、ケース31及びプローブ32の一方であるプローブ32が、第1出力部19とともに変位可能に設置されている。
【0070】
また、プローブ32におけるコア32cは、軸状部材32aの他端側の端部に設けられ、ケース31の内側でケース31に対して相対変位する可動鉄心として構成されている。このコア13は、例えば、Fe−Niの合金であるパーマロイ、或いは、電磁軟鉄によって形成されている。
【0071】
ケース31は、第2スクリュー26の一端側の端部に固定された筒状の構造体として設けられ、第1スクリュー23の内側の中空領域に配置されている。ケース31の内側には、プローブ32の他端側の端部が挿入され、コア32cがケース31の内側でケース31に対して相対変位可能に配置されている。また、ケース31は、他端側の端部において、第2スクリュー26の一端側の端部に固定されており、第2スクリュー26に対して片持ち状に支持されている。これにより、本実施形態では、ケース31及びプローブ32の他方であるケース31が、第2スクリュー26が固定された第2出力部20とともに変位可能に設置されている。
【0072】
また、図3では、図示が省略されているが、ケース31は、その内側において、ケース31に対するプローブ32のコア32aの位置検出信号を出力する位置検出信号出力部が設けられている。この位置検出信号出力部は、ケース31に保持されるとともに内側にコア32cが変位可能に配置されるコイルを有している。そして、この位置検出信号出力部は、入力電圧が印加されて励磁される1次側のコイルと、1次側のコイルが励磁された状態でコア32cが変位することによって誘起電圧が発生する2次側のコイルとを有し、2次側のコイルで発生した誘起電圧に基づく信号を位置検出信号として出力する。尚、この位置検出信号は、第2スクリュー26の内側の貫通孔を経て外部へと延びるケーブル33を介して後述のアクチュエータコントローラ21へと送信される。
【0073】
次に、電動アクチュエータ1を備える電動アクチュエータシステム10について説明する。図4は、本発明の一実施の形態に係る電動アクチュエータシステム10を模式的に示す図である。図4に示すように、電動アクチュエータシステム10は、電動アクチュエータ1、ドライバ(34a、34b)、アクチュエータコントローラ21を備えて構成されている。
【0074】
ドライバ34aは、アクチュエータコントローラ21からの指令信号に基づいて第1電動モータ11を駆動するモータ駆動装置として構成されている。一方、ドライバ34bは、アクチュエータコントローラ21からの指令信号に基づいて第2電動モータ12を駆動するモータ駆動装置として構成されている。
【0075】
アクチュエータコントローラ21は、電動アクチュエータ1の作動を制御する本実施形態のコントローラとして設けられている。このアクチュエータコントローラ21は、舵面102の動作を指令する図示しない上位のコンピュータからの指令信号に基づいて、電動アクチュエータ1の作動を制御するように構成されている。そして、アクチュエータコントローラ21は、位置検出機構18での検出結果に基づいて、即ち、位置検出機構18の位置検出信号出力部から送信される位置検出信号に基づいて、ドライバ34aを介して第1電動モータ11の運転状態を制御し、ケース13に対する第1出力部19の位置を制御する。
【0076】
更に、アクチュエータコントローラ21は、位置検出機構18での検出結果に基づいて、ドライバ34bを介して第2電動モータ12の運転状態を制御し、ケース13に対する第2出力部20の位置も制御可能に構成されている。また、アクチュエータコントローラ21は、第1電動モータ11或いは第1駆動機構14にて故障が発生した際には、第1出力部19がハウジング13に対して停止している位置に応じて、位置検出機構18での検出結果に基づいて、第1出力部19に対する第2出力部20の位置が所定の中立位置となるように、第2電動モータ12に対する回転指令を出力可能に構成されている。
【0077】
また、アクチュエータコントローラ21は、第1電磁クラッチ16及び第2電磁クラッチ17の作動状態も制御するように構成されている。即ち、第1電磁クラッチ16は、アクチュエータコントローラ21からの指令信号に基づいて、励磁状態と非励磁状態とのいずれかに切り替えられる。同様に、第2電磁クラッチ17は、アクチュエータコントローラ21からの指令信号に基づいて、励磁状態と非励磁状態とのいずれかに切り替えられる。
【0078】
次に、電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータシステム10の作動について説明する。電動アクチュエータ1において故障が発生していない通常の状態では、アクチュエータコントローラ21からの指令に基づいて、第1電動モータ11の運転による電動アクチュエータ1の作動が行われる。
【0079】
上記の場合、第1電磁クラッチ16は、アクチュエータコントローラ21の指令によって励磁された状態であり、バネ力によるロック動作が解放され、第1電動モータ11の回転軸11aの回転が可能である。一方、第2電磁クラッチ17は、アクチュエータコントローラ21の指令によって励磁されておらず非励磁状態であり、バネ力によるロック動作を作動させ、第2電動モータ12の回転軸12aの回転を規制している。これにより、第2ナットランナ27が、第2ギヤユニット25を介して、第2電磁クラッチ17によってロックされている。そして、第2ナットランナ27に対する第2スクリュー26の相対変位が生じず、第2出力部20のハウジング13に対する位置が変化せずに保持されている。
【0080】
上記の状態で、アクチュエータコントローラ21からの指令信号に基づいて第1電動モータ11の回転が制御される。そして、第1電動モータ11が回転することで、回転軸11aとともにスパーギヤ22aが回転し、スパーギヤ22aに噛合うピニオンギヤ22bも回転する。更に、ピニオンギヤ22bの回転が第1スクリュー23のギヤ部23bに伝達され、第1スクリュー23が軸心を中心として回転する。
【0081】
第1スクリュー23が回転すると、ネジ軸部23aと第1ナットランナ24との間の複数のボール30が転動し、第1ナットランナ24が第1スクリュー23に対して相対回転しながら第1スクリュー23の軸方向に変位する。これにより、回転止め機構28によって軸心を中心とする回転が規制された第1出力部19とともに、第1ナットランナ24がハウジング13に対して第1スクリュー23の軸方向に変位することになる。
【0082】
上記の作動により、第1出力部19がハウジング13に対して伸張又は収縮するように変位する。そして、このように電動アクチュエータ1が伸張又は収縮して第1出力部19と第2出力部20との間で生じる駆動力によって、舵面102が駆動されることになる。即ち、連結軸106を中心として揺動可能な電動アクチュエータ1によって付勢されて、舵面102が駆動される。そして、リアクションリンク103は、一端側が支点軸105に対して、他端側が連結軸106に対して、取り付けられており、電動アクチュエータ1の作動に伴って、舵面102が、支点軸105を中心として揺動して駆動されることになる。
【0083】
尚、第1電動モータ11が所定の方向に回転することで、第1出力部19がハウジング13から伸張するように変位し、第1電動モータ11が上記の所定の方向と反対の方向に回転することで、第1出力部19がハウジング13に対して収縮するように変位することになる。また、第1出力部19のハウジング13に対する位置は、位置検出機構18での検出結果に基づいて、アクチュエータコントローラ21によって制御される。
【0084】
一方、第1電動モータ11から第1出力部19へと至る駆動力伝達経路において、即ち、第1電動モータ11或いは第1駆動機構14において、故障が発生する場合がある。この場合、アクチュエータコントローラ21からの指令に基づいて、第1電動モータ11の運転が停止されて第2電動モータ12の運転による電動アクチュエータ1の作動が行われる。
【0085】
第1電動モータ11から第1出力部19へと至る駆動力伝達経路における故障としては、第1電動モータ11の故障、第1ギヤユニット22における焼き付き或いは固着等の故障、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24における焼き付き或いは固着等の故障、等が発生し得る。このような故障については、例えば、第1電動モータ11に供給される電流の過電流の検出、或いは、電動アクチュエータ1内に設置された図示しない温度センサによる温度上昇の検出、等によって検知される。
【0086】
第1電動モータ11から第1出力部19へと至る駆動力伝達経路における故障が検知された場合、その故障検知信号は、アクチュエータコントローラ21に送信される。そして、アクチュエータコントローラ21は、上記の故障検知信号を受信すると、第1電磁クラッチ16の励磁を解除して非励磁状態に移行させ、バネ力によるロック動作が作動した状態に移行させる。これにより、第1電動モータ11の回転軸11aの回転が規制され、第1スクリュー23が、第1ギヤユニット22を介して、第1電磁クラッチ16によってロックされた状態となる。そして、第1スクリュー23に対する第2ナットランナ24の相対変位が生じず、故障の状況にかかわらず、第1出力部19のハウジング13に対する位置が変化せずに保持される。
【0087】
更に、アクチュエータコントローラ21は、前述の故障検知信号を受信すると、第2電磁クラッチ17を励磁させ、バネ力によるロック動作を解放し、第2電動モータ12の回転軸12aの回転が可能な状態に移行させる。これにより、第2電動モータ12の運転による電動アクチュエータ1の作動が可能な状態となる。
【0088】
また、アクチュエータコントローラ21は、上記のように第1電磁クラッチ16のロック動作が作動するとともに第2電磁クラッチ17のロック動作が解放された状態で、位置検出機構18での検出結果に基づいて、第1出力部19に対する第2出力部20の位置が所定の中立位置となるように、第2電動モータ12に対する回転指令を出力する。
【0089】
例えば、第1電動モータ11から第1出力部19へと至る駆動力伝達経路における故障が発生する前の状態における第1出力部19のハウジング13に対する中立位置から、所定のストロークだけ第1出力部19の位置がずれた状態で上記の故障が発生したとする。この場合、アクチュエータコントローラ21は、位置検出機構18での検出結果に基づいて、故障発生前の第1出力部19の中立位置からのずれ量である上記の所定のストローク分だけ第2出力部20をハウジング13に対して変位させるように、第2電動モータ12に対する回転指令を出力する。
【0090】
上記により、故障発生時に、第1出力部19がハウジング13に対して停止している位置に応じて、第1出力部19に対する第2出力部20の位置が所定の中立位置となるように調整されるセンタリング動作が行われることになる。即ち、故障発生前の第1出力部19の中立位置からのずれ量に応じて、第2出力部20の第1出力部19に対する位置が調整される。そして、故障発生前に第1出力部19が中立位置に位置した状態と、故障発生後に上記のセンタリング動作が行われて第2出力部20が新たな所定の中立位置に位置した状態とにおいては、第1出力部19に連結された搖動軸104と第2出力部20に連結された連結軸106との間の距離は同じとなる。
【0091】
上記のセンタリング動作が終了した後は、アクチュエータコントローラ21からの指令信号に基づいて第2電動モータ12の回転が制御される。そして、第2電動モータ12が回転することで、回転軸12aとともにスパーギヤ25aが回転し、スパーギヤ25aに噛合うピニオンギヤ25bも回転する。更に、ピニオンギヤ25bの回転が第2ナットランナ27のギヤ部27bに伝達され、第2ナットランナ27が軸心を中心として回転する。
【0092】
第2ナットランナ27が回転すると、第2スクリュー26が第2ナットランナ27に対して相対回転しながら第2スクリュー26の軸方向に変位する。これにより、回転止め機構29によって軸心を中心とする回転が規制された第2出力部20とともに、第2スクリュー26がハウジング13に対して第2スクリュー26の軸方向に変位することになる。
【0093】
上記の作動により、第2出力部20がハウジング13に対して伸張又は収縮するように変位する。そして、このように電動アクチュエータ1が伸張又は収縮して第1出力部19と第2出力部20との間で生じる駆動力によって、舵面102が駆動されることになる。即ち、連結軸106を中心として揺動可能な電動アクチュエータ1によって付勢されて、舵面102が、支点軸105を中心として揺動して駆動されることになる。また、第2出力部20のハウジング13に対する位置は、位置検出機構18での検出結果に基づいて、アクチュエータコントローラ21によって制御される。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によると、第1電磁クラッチ16が第1スクリュー23及び第1ナットランナ24のロック動作を解放するとともに第2電磁クラッチ17が第2スクリュー26及び第2ナットランナ27のロック動作を作動させた状態で、第1電動モータ11が作動する。そして、第1電動モータ11による回転駆動トルクによって、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24の相対回転動作が生じて第1出力部19が変位し、第1出力部19が連結された舵面102が駆動される。また、本実施形態によると、第1スクリュー23の内側に第2スクリュー26の端部が隙間を介した状態で挿入され、第1スクリュー23及び第2スクリュー26の機械的な連結が切り離されている。このため、第1スクリュー23、第1ナットランナ24、第1ギヤユニット22の固着等の故障、或いは第1電動モータ11の故障、等が発生しても、第2スクリュー26及び第2ナットランナ27の作動に影響を与えないことになる。よって、本実施形態によると、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる。
【0095】
また、本実施形態によると、ハウジング13内で同軸線上に沿って設置された第1スクリュー23及び第2スクリュー26のうちの一方の内側に他方の端部が挿入される構造のため、変位方向である長手方向及びそれに垂直な幅方向のいずれにおいても構造の小型化を図れ、設置スペースのコンパクト化を図ることができる。更に、上記の構成により、構造の簡素化を図れ、重量及びコストの増大を抑制できる。また、上記の構成により、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24等の固着等の故障が生じた際における第2スクリュー26の作動ストロークが、長手方向の寸法が短い電動アクチュエータ1であっても容易に確保される。
【0096】
また、本実施形態によると、第1スクリュー23及び第1ナットランナ24等の駆動機構の固着等の故障、或いは第1電動モータ11の故障、等が発生しても、第2スクリュー26及び第2ナットランナ27の作動が確保され、第2出力部20の変位が可能となる。よって、第2スクリュー26及び第2ナットランナ27のいずれかに回転駆動トルクを伝達することで、上記の故障の発生時におけるバックアップ用の駆動機構を実現でき、冗長化を図ることができる。よって、舵面駆動の信頼性が確保されることになる。尚、本実施形態では、舵面102を駆動する動翼駆動機構100に用いられた電動アクチュエータ1を例にとって説明したが、この例に限らず、舵面102以外の他の機器を駆動するために電動アクチュエータ1が用いられてもよい。これにより、機器駆動の信頼性が確保されることになる。
【0097】
従って、本実施形態によると、機器駆動の信頼性を確保でき、構造の簡素化及び小型化を図れるとともに、重量及びコストの増大を抑制でき、一部の故障が全体の作動に制約を生じてしまうことを防止できる電動アクチュエータ1、及びその電動アクチュエータ1を備える電動アクチュエータシステム10、を提供することができる。
【0098】
また、本実施形態によると、第2電磁クラッチ17が第2スクリュー26及び第2ナットランナ27のロック動作を解放するとともに第1電磁クラッチ16が第1スクリュー23及び第1ナットランナ24のロック動作を作動させた状態で、第2電動モータ12が作動する。そして、第2電動モータ12による回転駆動トルクによって、第2スクリュー26及び第2ナットランナ27の相対回転動作が生じて第2出力部20が変位し、第1出力部19が連結された舵面102が駆動される。このため、この構成では、第1スクリュー23、第1ナットランナ24、第1ギヤユニット22等の駆動機構の固着等の故障、或いは第1電動モータ11の故障、等が発生しても、バックアップ用の駆動機構としての第2スクリュー26及び第2ナットランナ27を第2電動モータ12によって作動でき、冗長化が図られることになる。
【0099】
また、本実施形態によると、第1電磁クラッチ16が、第1電動モータ11の回転軸11aの回転を規制するように設けられ、第1電動モータ11に一体化するように効率よくコンパクトに構成される。このため、電動アクチュエータ1の更なる小型化を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態によると、ケース31及びプローブ32の一方が第1出力部19に他方が第2出力部20に設置されて構成された簡素な位置検出機構18によって、第1出力部19及び第2出力部20の一方に対する他方の位置を検出することができる。また、この構成によると、第1スクリュー23、第1ナットランナ24、第1ギヤユニット22、第1電動モータ11、等の故障が発生しているとき、及び故障が発生していないときのいずれにもおいても、1つの位置検出機構18によって、電動アクチュエータ1のストロークを制御するための位置情報を検出することができる。
【0101】
また、本実施形態によると、第1スクリュー23、第1ナットランナ24、第1ギヤユニット22、第1電動モータ11、等の故障が発生した際に、アクチュエータコントローラ21は、位置検出機構18での検出結果に基づいて第2電動モータ12を駆動させ、第1出力部19に対する第2出力部20の位置が所定の中立位置となるように制御することができる。これにより、故障して作動不良となった第1スクリュー23又は第1ナットランナ24の位置に応じて、第2スクリュー26又は第2ナットランナ27を中立位置にポジショニングして、速やかに電動アクチュエータ1の制御を行うことができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0103】
(1)前述の実施形態では、航空機の動翼を駆動するための航空機用動翼駆動機構における電動アクチュエータ及びそれを備えるシステムとして構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。本発明は、直線方向に沿って伸縮するように変位することで機器を駆動する電動アクチュエータ及びそれを備えるシステムとして広く適用することができるものである。例えば、航空機、ヘリコプター、或いは、飛しょう体において用いられ、直線方向に沿って伸縮するように変位することで各種機器を駆動するアクチュエータに対して、本発明を適用することができる。この場合、航空機及びヘリコプターに関しては、有人機及び無人機のいずれに対しても本発明を適用することができる。
【0104】
(2)前述の実施形態では、ハウジングに対して第1スクリューが回転自在に支持され、第1ナットランナが第1スクリュー及びハウジングに対して変位する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第1ナットランナが、第1スクリューに対して相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで第1スクリューに対して軸方向に相対変位可能な形態であればよい。例えば、ハウジングに対して第1ナットランナが回転自在に支持され、第1スクリューが第1ナットランナ及びハウジングに対して変位する形態が実施されてもよい。
【0105】
(3)前述の実施形態では、ハウジングに対して第2ナットランナが回転自在に支持され、第2スクリューが第2ナットランナ及びハウジングに対して変位する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第2ナットランナが、第2スクリューに対して相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで第2スクリューに対して軸方向に相対変位可能な形態であればよい。例えば、ハウジングに対して第2スクリューが回転自在に支持され、第2ナットランナが第2スクリュー及びハウジングに対して変位する形態が実施されてもよい。
【0106】
(4)前述の実施形態では、第1スクリューに対して第1電動モータの回転駆動トルクが伝達されるとともにこの第1スクリューが第1ロック機構(電磁クラッチ)によってロック可能に設置され、第1ナットランナが第1出力部に一体に設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、第1スクリュー及び第1ナットランナのいずれかに対して第1電動モータの回転駆動トルクが伝達され、第1スクリュー及び第1ナットランナは、一方が第1出力部に対して一体に設けられ又は固定され、他方が第1ロック機構によってロック可能に設置される形態が実施されてもよい。
【0107】
(5)前述の実施形態では、第2ナットランナに対して第2電動モータの回転駆動トルクが伝達されるとともにこの第2ナットランナが第2ロック機構(電磁クラッチ)によってロック可能に設置され、第2スクリューが第2出力部に固定された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、第2スクリュー及び第2ナットランナのいずれかに対して第2電動モータの回転駆動トルクが伝達され、第2スクリュー及び第2ナットランナは、一方が第2出力部に対して一体に設けられ又は固定され、他方が第2ロック機構によってロック可能に設置される形態が実施されてもよい。
【0108】
(6)前述の実施形態では、第1スクリュー及び第1ナットランナがボールねじ機構を構成し、第2スクリュー及び第2ナットランナが螺合する形態を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。即ち、第1ナットランナが第1スクリューに対して相対回転可能でこの相対回転によって第1スクリューに対して軸方向に相対変位可能な構成であればよい。そして、第2ナットランナが第2スクリューに対して相対回転可能でこの相対回転によって第2スクリューに対して軸方向に相対変位可能な構成であればよい。第1又は第2ナットランナが第1又は第2スクリューに対して相対回転して軸方向に相対変位する形態としては、ボールねじ機構、螺合以外の種々の形態を採用でき、例えば、ローラスクリュー機構を用いた形態が採用されてもよい。ローラスクリュー機構の場合、第1又は第2スクリューと第1又は第2ナットランナとの間に、外周に螺旋溝が設けられた複数のスクリュー状のローラ軸が回転自在に設置されることになる。第1又は第2スクリューの回転に伴って、或いは、第1又は第2ナットランナの回転に伴って、各ローラ軸は、第1又は第2スクリューと、第1又は第2ナットランナとに対して、螺旋溝で噛み合って各軸心を中心として回転することになる。
【0109】
(7)前述の実施形態では、第1電動モータと第1スクリュー又は第1ナットランナとの間に第1ギヤユニットが設けられ、第2電動モータと第2スクリュー又は第2ナットランナとの間に第2ギヤユニットが設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第1ギヤユニット及び第2ギヤユニットが設けられていない形態であってもよい。
【0110】
上記の場合、第1電動モータ、第1スクリュー、第1ナットランナ、第1出力部が、同軸線上に沿って設置される構成であってもよい。例えば、第1電動モータのロータに対して第1ナットランナが固定され、第1出力部に一体に設けられ又は固定された第1スクリューが、上記のロータ及び第1ナットランナを貫通して設置された構成であってもよい。そして、この場合、上記の第1スクリューは、第1電動モータのロータに固定された第1ナットランナに対して相対回転可能に取り付けられ、ロータとともに第1ナットランナが回転することで、軸方向に変位することになる。尚、第1電動モータのロータに対して第1スクリューが固定され、第1ナットランナが、第1出力部に一体に設けられ又は固定されて第1スクリューに対して相対回転可能に取り付けられてもよい。
【0111】
また、第2電動モータ、第2スクリュー、第2ナットランナ、第2出力部が、同軸線上に沿って設置される構成であってもよい。例えば、第2電動モータのロータに対して第2ナットランナが固定され、第2出力部に一体に設けられ又は固定された第2スクリューが、上記のロータ及び第2ナットランナを貫通して設置された構成であってもよい。そして、この場合、上記の第2スクリューは、第2電動モータのロータに固定された第2ナットランナに対して相対回転可能に取り付けられ、ロータとともに第2ナットランナが回転することで、軸方向に変位することになる。尚、第2電動モータのロータに対して第2スクリューが固定され、第2ナットランナが、第2出力部に一体に設けられ又は固定されて第2スクリューに対して相対回転可能に取り付けられてもよい。
【0112】
(8)前述の実施形態では、第1電動モータ或いは第1駆動機構の故障時に第2電動モータの運転による電動アクチュエータの作動が行われる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第2電動モータの運転による電動アクチュエータの作動が行われない形態が実施されてもよい。例えば、第2電磁クラッチが摩擦クラッチとして設けられ、所定の大きさ以上の回転トルクが第2ギヤユニットから第2電動モータに作用したときに、ロック動作を作動させている第2電磁クラッチにおいて滑りを生じ、第2スクリューに対する第2ナットランナの相対回転を許容する形態が実施されてもよい。この場合、第2電磁クラッチは、フリクションダンパとしての機能を果たすことができる。そして、第2スクリュー及び第2ナットランナの作動が確保されていることで、上記の故障の発生時において、故障が発生した電動アクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能な構造を実現できる。よって、上記の構成によっても、機器駆動の信頼性を確保することができる。
【0113】
(9)前述の実施形態では、第2電動モータが設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくもよく、第2電動モータが設けられていない形態が実施されてもよい。この場合、例えば、第2ギヤユニットのスパーギヤの回転軸の回転を規制することで、第2スクリューに対する第2ナットランナの相対回転動作を規制する第2ロック機構が設けられてもよい。そして、この場合、第2ロック機構が、第2スクリューに対する第2ナットランナの相対回転動作を規制した状態で第2スクリューに対して第2ナットランナを相対回転させるように生じる回転トルクが第2スクリュー又は第2ナットランナから伝達された際であって回転トルクが所定の大きさ以上のときに、滑りを生じ、第2スクリューに対する第2ナットランナの相対回転を許容する形態が実施されてもよい。
【0114】
上記の変形例によると、第2スクリュー又は第2ナットランナ側からの回転トルクが所定の大きさ以上のときに第2ロック機構で滑りを生じて第2スクリュー及び第2ナットランナの相対回転が許容される。このため、第1スクリュー、第1ナットランナ、第1電動モータ、等の故障の発生時において、故障が発生した電動アクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に、所定の大きさ以上の回転トルクが作用したときに第2スクリュー及び第2ナットランナの作動を許容する構造を容易に実現できる。よって、他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能で、ダンピング動作(減衰動作)が可能な機構を簡素な構造で実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、直線方向に沿って伸縮するように変位することで機器を駆動する電動アクチュエータ及びそれを備える電動アクチュエータシステムに関して広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0116】
1 電動アクチュエータ
11 第1電動モータ
13 ハウジング
16 第1ロック機構
17 第2ロック機構
19 第1出力部
20 第2出力部
23 第1スクリュー
24 第1ナットランナ
26 第2スクリュー
27 第2ナットランナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの一端側で当該ハウジングに対して突出して相対変位可能に設けられた第1出力部と、
前記ハウジングの他端側で当該ハウジングに対して突出して相対変位可能に設けられた第2出力部と、
前記ハウジングに少なくとも一部が収納される第1スクリューと、
前記第1スクリューに対して相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで当該第1スクリューに対して軸方向に相対変位可能な第1ナットランナと、
前記ハウジングに少なくとも一部が収納される第2スクリューと、
前記第2スクリューに対して相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで当該第2スクリューに対して軸方向に相対変位可能な第2ナットランナと、
前記第1スクリュー及び前記第1ナットランナのうちのいずれかに対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、前記ハウジングに対して前記第1出力部を変位させる第1電動モータと、
前記第1スクリューに対する前記第1ナットランナの相対回転動作を規制するようロック可能な第1ロック機構と、
前記第2スクリューに対する前記第2ナットランナの相対回転動作を規制するようロック可能な第2ロック機構と、
を備え、
前記第1スクリュー及び前記第1ナットランナは、一方が前記第1出力部に対して一体に設けられ又は固定され、他方が前記第1ロック機構によってロック可能に設置され、
前記第2スクリュー及び前記第2ナットランナは、一方が前記第2出力部に対して一体に設けられ又は固定され、他方が前記第2ロック機構によってロック可能に設置され、
前記第1スクリュー及び前記第2スクリューは同軸線上に沿って設置され、
前記第1スクリュー及び前記第2スクリューの一方が筒状に形成された部分を有し、当該第1スクリュー及び当該第2スクリューの一方の筒状の部分の内側に他方の端部が隙間を介した状態で挿入されていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータであって、
前記第2スクリュー及び前記第2ナットランナのうちのいずれかに対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、前記ハウジングに対して前記第2出力部を変位させる第2電動モータを、更に備えていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動アクチュエータであって、
前記第1ロック機構は、前記第1電動モータの回転軸の回転を規制することで、前記第1スクリューに対する前記第1ナットランナの相対回転動作を規制するようロックすることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータであって、
前記第2ロック機構は、前記第2スクリューに対する前記第2ナットランナの相対回転動作を規制した状態で当該第2スクリューに対して当該第2ナットランナを相対回転させるように生じる回転トルクが当該第2スクリュー又は当該第2ナットランナから伝達された際であって当該回転トルクが所定の大きさ以上のときに、滑りを生じ、当該第2スクリューに対する当該第2ナットランナの相対回転を許容することを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電動アクチュエータであって、
ケース及び当該ケースに対して変位するプローブを有し、前記ケースに対する前記プローブの相対位置を検出する位置検出機構を更に備え、
前記ケース及び前記プローブの一方は、前記第1出力部とともに変位可能に設置され、
前記ケース及び前記プローブの他方は、前記第2出力部とともに変位可能に設置されていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの作動を制御するコントローラと、を備え、
前記電動アクチュエータは、前記第2スクリュー及び前記第2ナットランナのうちのいずれかに対して伝達される回転駆動トルクを発生させ、前記ハウジングに対して前記第2出力部を変位させる第2電動モータを有し、
前記コントローラは、前記位置検出機構での検出結果に基づいて、前記第1出力部に対する前記第2出力部の位置が所定の中立位置となるように、前記第2電動モータに対する回転指令を出力可能であることを特徴とする、電動アクチュエータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−42602(P2013−42602A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178283(P2011−178283)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】