説明

電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置

【課題】電動アシスト自転車の共同利用システムにおいて電動アシスト自転車のカギの貸出しと返却とを行う小型で経済的なカギ管理装置を提供する。
【解決手段】本発明のカギ管理装置は、正面パネルに配列され、貸出し対象のカギが外部から見える状態で保持する複数のカギ保持機構(K1 〜K10)と、これらカギ保持機構のそれぞれに近接して正面パネルに配列され、電動アシスト自転車の充電状態を表示するランプ(6a〜6j) とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、電動アシスト自転車の共同利用システムに適用されるカギ管理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、マンションなどの集合住宅を対象として、自転車や電動アシスト自転車などの共同利用システムが普及しつつある。この共同利用システムは、マンションなどの駐輪場の不足や、自転車の放置や盗難などの問題を解消すると共に、共同利用による各人の負担コストの軽減を目的としている。本出願人の先願に係わる特開平10ー306630号公報, 同306631号公報, 同307952号公報には、バッテリー着脱型の電動アシスト自転車を含む自転車の共同利用システムにおけるキー管理システムとバッテリー供給装置とが開示されている。
【0003】上記先願のキー管理システムとバッテリー供給装置によれば、駐輪場の一隅にキー供給装置とバッテリー供給装置とが設置される。利用希望者が共同利用の利用者証をキー供給装置に読取らせると、キー供給装置はこの利用者証の正当性を確認したうえで、希望者に貸し出すように構成されている。貸出し可能な電動アシスト自転車やバッテリーは、キー管理システム側からタッチパネル表示装置上に表示される。また、カギの貸出しを受けた共同利用者は、使用後に利用者証をキー供給装置に読取らせたのち、キーとバッテリーの返却処理を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記先願のキー管理システムでは、貸出し対象のカギをキーボックスの中に収納しているため、共同利用者はカギの選択に際してどのカギが貸出されているかを外見上からは判別できず、比較的大型の表示装置上に表示される案内画面の情報に頼らなければならない。また、先願のバッテリー供給装置では、バッテリーの貸出しに際して、充電が完了し貸出が可能であるバッテリーと、貸出中あるいは充電が完了していないバッテリーとが色分け等による識別可能な状態で一覧表示される。
【0005】この結果、上記先願のキー管理システムやバッテリー供給装置では、共同利用者に使用可能な車両やバッテリーに関する案内情報を提供するために、比較的大型の表示装置が必要になり、専有空間がかさむだけでなく、システムの構築と維持のための費用もかさむという問題がある。また、表示画面の見誤りによって既に貸出し中のカギに対して貸出し要求を行ったり、希望のものとは異なるカギを借り出してしまうというおそれもある。
【0006】また、先願のシステムのように、電動アシスト自転車の車体とバッテリーとを分離すると、共同利用者は、両者を別々に借り出しかつ返却しなければならず、労力と時間が倍加するという問題がある。さらに、最近では、貸出し対象のカギを管理するキーボックスなどと称されるカギ管理装置を、駐輪場から離れた箇所に設置したいという要望も高まっている。
【0007】従って、本発明の一つの目的は、電動アシスト自転車の共同利用システムにおいて、大型で高価な表示装置を必要とせず、この結果、専有空間が小さくしかも経済的なカギ管理装置を提供することある。
【0008】本発明の他の目的は、車体とバッテリーとを分離して貸出すことに伴う利用者側とシステム側の作業量と時間を軽減することにより、カギ管理装置の小型化、経済化を実現することにある。
【0009】本発明の更に他の目的は、カギ管理装置が貸出し対象の電動アシスト自転車の保管場所から離れた箇所に設置される形式の共同利用システムに最も適したカギ管理装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解決する本発明のカギ管理装置が使用される電動アシスト自転車の共同利用システムは、貸出し対象の電動アシスト自転車の保管場所でそのバッテリーの充電が行われる。そして、本発明のカギ管理装置は、その正面パネルに配列され、貸出し対象のカギを外部から見える状態で保持する複数のカギ保持機構と、これらカギ保持機構のそれぞれに近接して前記正面パネルに配列され、電動アシスト自転車の充電状態を表示するランプとを備えることにより、大型で高価な表示装置を不要として小型化、経済化を図ると同時に、利用者の手間と時間とを軽減してその利便性を向上させるように構成されている。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の好適な実施の形態によれば、上記充電状態を表示するランプは、対応の電動アシスト自転車が故障中であることを表示するランプを兼ねており、この故障中の表示が充電状態の表示に優先して行われる。この結果、表示用のランプなどの部品点数が削減され、一層小型で安価なカギ管理装置が提供される。
【0012】本発明の他の好適な実施の形態によれば、上記充電状態は異なる色彩の連続的な点灯によって表示されると共に、上記使用不能状態はこれらの一つの色彩の点滅によって表示される。
【0013】本発明の更に他の好適な実施の形態によれば、使用料金その他の情報を表示するための表示パネルがカギ管理装置の正面パネルに設置されている。
【0014】本発明の更に他の好適な実施の形態によれば、各電動アシスト自転車の充電状態を通知する信号がこのカギ管理装から離れた保管場所に設置された送信機から定期的に送信され、このカギ管理装置は前記充電状態を通知する信号を受信するための信号受信部を備えている。
【0015】
【実施例】図3は、本発明の一実施例のカギ管理装置から離れた箇所に設置された駐輪場に保管中の複数の電動アシスト自転車のうちの一つについて、その保管中の様子を例示する斜視図である。この電動アシスト自転車30は、車体部分31と、この車体部分に取付けられたカゴの内部において車体部分に固定されたバッテリー32とから構成されている。保管場所には保管ポール40が固定され、電動アシスト自転車30の前輪がカギ管理装置からの遠隔操作によって開閉される盗難防止用の駐輪機42を介して保管ポール40に取付けられる。
【0016】バッテリー32は駐輪場での保管中でも車体部分31から取り外されない。保管ポール40を通して引き出されるケーブル41がバッテリー31に接続されることにより、駐輪場においてバッテリーの充電が行われる。ポール40から引き出されるケーブル41は、図示しない充電器に接続されており、ケーブル41がバッテリー32に接続されると同時に充電が開始される。バッテリーが満充電の状態に達すると、充電が自動的に停止される。バッテリーが充電中であるか、その充電が終了したかを示すステータス信号が図示しない無線送信機を介して上記実施例のカギ管理装置に送信される。
【0017】図1は、上記電動アシスト自転車の共同利用システムで使用される本発明の一実施例のカギ管理装置10の外観を示す斜視図である。この実施例のカギ管理装置10は、上述のように、上記先願の特許公報に記載されたものとは異なり、マンションなどの集合住宅の駐輪場内やその片隅には設置されておらず、そのような駐輪場から離れた集合住宅の集会所や管理人室などに設置されている。
【0018】図2は、上記カギ管理装置10の機能上の構成を示す機能ブロックである。上記図1と図2とにおいて、1はディジタル・プロセッサ、2はデータメモリ、3はカード読取り部、4はキー・ロック/解除部、5は表示部、6(6a,6b,6c・・・6j)はランプ、7はキー入力部、8は印字出力部、9は無線送受信部、11は電話自動発呼部、12は筐体、13はIDカード挿入口、k1,k2,k3・・・k10はカギのキーホールダ挿入口である。
【0019】まず、図1の外観図を参照すれば、本実施例のカギ管理装置10を収容する筐体12の正面パネルには、10個のキーホールダ挿入口k1,k2,k3・・・k10が形成されており、各キーホールダ挿入口には、先端にカギが取付けられた矩形板状のキーホールダが挿入され、ロック状態で保持される。このように、貸出し対象のカギが装置の正面パネル上に外部から見える状態で保持されているため、共同利用者は借り出せるカギがどれであるかを、表示装置の案内画面などに頼ることなく一見して判断できる。
【0020】各キーホールダ挿入口k1〜k10の真上には、このキーが使用される電動アシスト自転車に固定されたバッテリーの充電の状態を示す矩形状のランプ6a,6b,6c・・・6jが設置されている。ランプ6a〜6jのそれぞれは、対応の電動アシスト自転車のバッテリーが充電済みであれば緑で、充電中であれば赤で連続的な点灯が行われる。ランプ6a〜6jのそれぞれの上方には、貸出し対象のカギの番号が算用数字で表示され、対応の算用数字が各カギのキーホールダにも表示されている。
【0021】正面パネルに配列されたランプ6a〜6jは、対応の電動アシスト自転車が故障中であることを表示する場合にも使用される。すなわち、対応の電動アシスト自転車にパンクや、ブレーキの不具合や、ランプがつかないなどの故障が発生すると、これに気付いた共同利用者は、この故障の発生をキー入力部7の所定のキーを操作することによってディジタル・プロセッサ1に通報する。
【0022】この通知を受けたディジタル・プロセッサ1は、対応のランプをその充電の状態とは無関係に赤色で点滅させることにより、対応の電動アシスト自転車が貸出し停止状態にあることを、このシステムの共同利用者に知らせる。ディジタル・プロセッサ1は、上記貸出し停止状態を解除すると同時に、該当のランプを対応の電動アシスト自転車のバッテリーの充電状態の表示モードに復帰させる。
【0023】カギの貸出しを受けたり、借り出したカギを返却しようとする共同利用者は、まず、磁気カードや非接触型のICカードなどで構成された自己のIDカードをIDカード挿入口13に挿入し、磁気カードの場合にはこれを上下に動かす(コスル)ことにより、このカギ管理装置10に識別子を読取らせ、自己が正当な共同利用者であることをこのカギ管理装置10に認識させる。
【0024】ディジタル・プロセッサ1は、カード読取り部7が読取ったIDカードの識別子がデータメモリ2に保存中の共同利用者の識別子の一つと一致するか否かの判別により、このカギ管理装置10の操作者の正当性を検査する。ディジタル・プロセッサ1は、操作者の正当性を確認すると、キー入力部7からのキー入力などによって発せられる共同利用者からのカギの貸出し要求や、返却要求などに応じて、キー・ロック/解除部4に指令を発し、各キーホールダに対するロック状態を解除させる。共同利用者は、ロック状態が解除されたキーホールダ挿入口からカギを借りだし、あるいは借りだしたカギを返却したりする。この貸出しの際、充電中や故障中のものについてはロック状態が解除されず、要求が拒否される。
【0025】ディジタル・プロセッサ1は、カギの貸出しや返却の状況をデータ・メモリ上に記録する。ディジタル・プロセッサ1は、カギの返却時などに使用料金を算定し、料金明細の合計金額を更新すると共に、液晶パネルなどで構成される表示部5に今回の使用料金と、これまでの合計料金とを表示する。また、各共同利用者に定期的に配付される請求書は、このシステムの管理者などによって、各共同利用別の利用履歴情報と共に印字出力部8からプリントアウトされる。
【0026】ディジタル・プロセッサ1は、データメモリ2で管理中の電動アシスト自転車の故障台数が所定値に達すると、電話自動発呼部11を起動し、その旨を通報するメッセージをこのシステムの管理者や修理店などの所定の宛て先に自動転送させる。
【0027】このように、表示部5は、先願のシステムのように在庫車両の一覧表などを表示する場合とは異なり、利用金などの小容量の情報を表示すれば足りるため、カギ管理装置の正面パネル上の一部に設置できる程度の小型なものでよい。
【0028】以上、カギ管理装置の正面パネルの貸出し対象のカギの保持箇所に充電状態や貸出し停止中などを表示するランプを配列する構成を例示したが、このランプに加えて、貸出し対象の電動アシスト自転車の車種や外観を示すうシールや写真などを貼付するなど、種々の表示を追加することもできる。
【0029】また、充電状態を充電済と充電中の2段階で表示する構成を例示したが、充電の進み具合を棒グラフなどによって示すと共に、充電の進み具合が所定の閾値以上であれば満充電状態でなくともこの電動アシスト自転車を貸出す構成としてもよい。
【0030】更に、電動アシスト自転車のみを貸出し対象とする共同利用システムの場合を例にとって本発明のカギ管理装置を説明した。しかしながら、このような電動アシスト自転車に、バッテリーを持たない自転車や、オードバイなどの他の車両を混在させることもできる。この場合、バッテリーを持たない車両については、充電状態を表示するランプを電動アシスト自転車とは異なる車種であることを表示するためなどの他の用途に使用できる。
【0031】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明のカギ管理装置は、貸出し対象のカギを外部から見える状態で装置の正面パネル上に保持させることにより、利用者は、表示装置上の案内画面に頼ることなく一見しただけでどれが利用可能なカギであるかが分かる。
【0032】そして、貸出し対象のカギがカギ管理装置の正面パネル上に存在してもバッテリーの充電が終了していなければ借りだせない訳であるが、この充電に関する情報はカギの置き場に隣接して配置されているランプなどによって直截的に表示される。
【0033】さらに、故障中の電動アシスト自転車は、充電状態に関係なく利用できない訳であるが、これについても、本発明の好適な実施の形態を採用することにより、本来充電状態を表示するランプの点滅などによって直截的に表示される。すなわち、共同利用者は、カギ管理装置の正面パネルを一べつするだけで、借り出しに必要な全ての情報を直截的に得ることができる。
【0034】また、本発明のカギ管理装置が使用される電動アシスト自転車の共同利用システムは、電動アシスト自転車の車体部とバッテリーとを分離せずに結合しておき駐輪場においてバッテリーの充電を行う構成であるから、カギの貸出しや返却に際し、共同利用者の労力と時間が大幅に軽減され、利便性が向上する。しかも、カギ管理装置が小型かつ安価になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】上記実施例のカギ管理装置の機能上の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】上記実施例のカギ管理装置から離れた駐輪場に保管される貸出し対象の電動アシスト自転車の保管中の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 カギ管理装置
1 ディジタル・プロセッサ
2 データ・メモリ
3 カード読取り部
6a 〜6j 充電状態表示ランプ
k1 〜K10 カギのキーホールダ挿入穴
30 電動アシスト自転車
31 車体部
32 バッテリー
33 充電用コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】電動アシスト自転車の保管場所でそのバッテリーの充電を行う形式の電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置であって、このカギ管理装置の正面パネルに配列され、貸出し対象のカギを外部から見える状態で保持する複数のカギ保持機構と、これらカギ保持機構のそれぞれに近接して前記正面パネルに配列され、電動アシスト自転車の充電状態を表示するランプとを備えたことを特徴とする電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置。
【請求項2】請求項1において、前記充電状態を表示するランプは、対応の電動アシスト自転車が故障中であることを表示するランプを兼ねており、この故障中の表示が充電状態の表示に優先して行われることを特徴とする電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置。
【請求項3】請求項2において、前記充電状態は異なる色彩の連続的な点灯によって表示されると共に、前記故障中であることはこれらの一つの色彩の点滅によって表示されることを特徴とする電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置。
【請求項4】請求項1乃至3のそれぞれにおいて、使用料金その他の情報を表示するための表示パネルが前記正面パネルに設置されたことを特徴とする電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置。
【請求項5】請求項1乃至4のそれぞれにおいて、前記各電動アシスト自転車の充電状態を通知する信号がこのカギ管理装から離れた保管場所に設置された送信機から定期的に送信され、このカギ管理装置は前記充電状態を通知する信号を受信するための信号受信部を備えたことを特徴とする電動アシスト自転車の共同利用システムのカギ管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−27060(P2001−27060A)
【公開日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−201267
【出願日】平成11年7月15日(1999.7.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】