説明

電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置

【課題】昇降用電動機及び横行用電動機の単独・同時運転操作が簡単で、同時に昇降用電動機と横行用電動機を駆動でき、更に容量の小さい電磁開閉器を用いることで装置が小型化できる電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置を提供すること。
【解決手段】電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置において、横行用電動機19又は昇降用電動機20の駆動を操作ボックスの先行して操作されたスイッチによるものをインバータ12の駆動とし、次に操作されたスイッチ操作によるものを商用電源10の駆動とする制御手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置に関し、特に電源部に商用電源と1台のインバータを備え、電動トロリーの横行電動機又は電動チェーンブロックの昇降電動機の任意の一方をインバータ駆動とし、他方を商用電源駆動とする電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商用電源とインバータを備え、電動トロリー付き電動チェーンブロックの電動トロリーの横行電動機又は電動チェーンブロックの昇降電動機の任意の一方をインバータ駆動とし、他方を商用電源駆動とする電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置が特許文献1により公知である。
【0003】
図1は特許文献1に記載の電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置のシステム構成を示す図である。図示するように、電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置は、電源部に商用電源100とインバータ101を備え、商用電源100の電力は電磁開閉器102を介してインバータ101及び電動チェーンブロックの昇降用電動機103に供給されるようになっている。104、105は昇降用電動機103と電磁開閉器102の間を接続する正転用(巻上用)電磁開閉器及び逆転用(巻下用)電磁開閉器である。また、昇降用電動機103は電磁開閉器106を介してインバータ101に接続され、電動トロリーの横行用電動機107は電磁開閉器108を介してインバータ101に接続されている。
【0004】
操作回路は、主回路電源投入回路I、操作方式(単独運転・同時運転)切替回路II、巻上回路III、巻下回路IV前進走行回路V、後退走行回路VI、昇降電動機電源投入回路VII、走行タイマー回路VIII等をそなえている。図2に示す構成の操作ボックス110の「入」、「切」、「同」、「単」、「上」、「下」、「東」、「西」の押しボタンスイッチの操作による回路I〜VIIIの操作により、電磁開閉器102のON・OFFによる電源の入り切り、昇降用電動機103と横行用電動機107の同時運転、単独運転、電磁開閉器106のON・OFFによるインバータ101から昇降用電動機103の電力の供給・遮断、正転用(巻上用)電磁開閉器104又は逆転用(巻下用)電磁開閉器105のON・OFFによるインバータ101から昇降用電動機103へ電力の供給・遮断、電磁開閉器108のON・OFFによるインバータ101から横行用電動機107へ電力の供給・遮断により、昇降用電動機103の正転逆転による電動チェーンブロックの昇・降動作、電動トロリーの前・後退の同時運転又は単独運転が行われる。
【0005】
図1及び図2において、Rはリレー、R−aはリレーRの常開接点、R−bはリレーRの常閉接点、TRはタイマーリレー、T−bはタイマーリレーTRの常閉接点、VRは速度調整用可変抵抗器である。また、102mは電磁開閉器102の駆動コイル、104mは正転用(巻上用)電磁開閉器104の駆動コイル、105は逆転用(巻下用)電磁開閉器105の駆動コイル、106mは電磁開閉器106の駆動コイル、108mは電磁開閉器108の駆動コイルである。
【特許文献1】特開昭61−94999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示すように商用電源100とインバータ101を備えた電動トロリー付き電動チェーンブロックでは、横行用電動機107の正・逆回転により電動トロリーの前・後退、昇降用電動機103の正・逆回転により電動チェーンブロックの巻上・下げ、単独運転、同時運転が、操作ボックス110の「同」、「単」の押しボタンスイッチの操作で行われるため、押しボタンスイッチの切り替えに手間が掛かるという問題がある。更に、昇降用電動機103をインバータ101による駆動としたときには、電動トロリーの横行用電動機107を同時運転できないという問題があった。
【0007】
また、後に記述するように、1台のインバータを共用する駆動回路には6個の電磁開閉器を使用することになるが、これらの電磁開閉器は電動トロリーの横行用電動機や電動チェーンブロックの昇降用電動機の容量に従って大きさが決まるため、装置の小型化が難しく、コスト高になるという問題もある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、電動チェーンブロックの昇降用電動機及び電動トロリーの横行用電動機の単独・同時運転操作が簡単で、昇降用電動機又は横行用電動機をインバータ駆動とした時でも、同時に昇降用電動機又は横行用電動機を駆動でき、更に容量の小さい電磁開閉器を用いることで装置が小型化できる電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、電源部に商用電源と1台のインバータを備え、該商用電源の電力を正転・逆転用に切り替える正逆転切替用電磁開閉器と、前記インバータと電動トロリーの横行用電動機を接続する第1電磁開閉器と、該インバータと電動チェーンブロックの昇降用電動機を接続する第2電磁開閉器と、前記正逆転切替用電磁開閉器と前記横行用電動機を接続する第3電磁開閉器と、該正逆転切替用電磁開閉器と前記昇降用電動機を接続する第4電磁開閉器とを備え、操作ボックスの横行スイッチ及び昇降スイッチの操作により、前記横行用電動機や前記昇降用電動機に前記商用電源から前記インバータを介して電力を供給するインバータ駆動とするか又は前記商用電源から正逆転切替用電磁開閉器を介して供給する商用電源駆動とするように構成された電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置であって、前記横行用電動機又は前記昇降用電動機の駆動を前記操作ボックスの先行して操作されたスイッチによるものをインバータ駆動とし、次に操作されたスイッチによるものを商用電源駆動とする制御手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動トロリー付き電動チェーンブロック駆動制御装置において、前記制御手段は前記正逆転切替用電磁開閉器が一度閉じたら所定の一定時間開かないようにすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置において、前記制御手段は前記横行用電動機又は前記昇降用電動機の起動時は、前記第1乃至第4電磁開閉器を閉じてから、前記インバータを起動又は前記正逆転切替用電磁開閉器を閉じ、前記横行用電動機又は前記昇降用電動機の停止時は前記インバータを停止又は前記正逆転切替用電磁開閉器を開いてから、前記第1乃至第4電磁開閉器を開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、横行用電動機又は昇降用電動機の駆動を操作ボックスの先行して操作されたスイッチによるものをインバータ駆動とし、次に操作されたスイッチによるものを商用電源駆動とする制御手段を設けたので、先行操作スイッチによるものが自動的にインバータ駆動となるから、操作が極めて簡単となる。また、横行用電動機又は昇降用電動機をインバータ駆動としても、昇降用電動機又は横行用電動機を商用電源駆動で同時に運転できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段は正逆転切替用電磁開閉器が一度と閉じたら所定の一定時間開かないようにすることにより、正逆転切替用電磁開閉器が昇降用電動機や横行用電動機の起動時の大電流を切ることがないから、正逆転切替用電磁開閉器に容量の小さいもの、即ち寸法の小さいものを使用でき、装置の小型化が可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段は横行用電動機又は昇降用電動機の起動時は、第1乃至第4電磁開閉器を閉じてから、インバータを起動又は正逆転切替用電磁開閉器を閉じ、横行用電動機又は昇降用電動機の停止時はインバータを停止又は正逆転切替用電磁開閉器を開いてから、第1乃至第4電磁開閉器を開くので、第1乃至第4電磁開閉器は電流を通電するのみで、電流を切ることがないから、第1乃至第4電磁開閉器をに容量の小さいものを使用でき、装置の小型化が可能となると同時に接点の消耗も小さいから、その寿命も長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本願発明の実施の形態例を図面に基いて説明する。図3は本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の動力回路の構成例を示す図である。図3に示すように、電源部に3相交流の商用電源10と1台のインバータ12を備えている。11は電源投入用の電磁開閉器であり、該電磁開閉器11をON・OFFすることにより、駆動制御装置に商用電源10から3相(R,S,T)の交流電力を投入・遮断するようになっている。13は電動トロリー(図示は省略)の横行用電動機19や電動チェーンブロック(図示は省略)の昇降用電動機20に逆転用の3相電力を供給するための逆転用電磁開閉器であり、14は正転用の3相電力を供給するための正転用電磁開閉器である。この逆転用電磁開閉器13と正転用電磁開閉器14で正逆転切替用電磁開閉器を構成する。
【0016】
15はインバータ12の出力側と電動トロリーの横行用電動機19を接続するための第1電磁開閉器、16はインバータ12の出力側と電動チェーンブロックの昇降用電動機20を接続するための第2電磁開閉器、17は上記逆転用電磁開閉器13と正転用電磁開閉器14からなる正逆転切替用電磁開閉器と横行用電動機19を接続するための第3電磁開閉器、18は正逆転切替用電磁開閉器と昇降用電動機20を接続するための第4電磁開閉器である。
【0017】
図4は本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の制御部の構成例を示す図である。21はコントローラであり、該コントローラ21には電動チェーンブロックに上昇を指示する押しボタンスイッチBS1(上)、下降を指示する押しボタンスイッチBS2(下)、高速昇降を指示する押しボタンスイッチBS3(高)が接続されている。また、電動トロリーに前進走行を指示する押しボタンスイッチBS4(東)、後退走行を指示する押しボタンスイッチBS5(西)、高速走行を指示する押しボタンスイッチBS6(高)が接続されている。また、BS7は非常停止用押しボタンスイッチであり、交流電源22から電源投入用の電磁開閉器11の駆動コイル11m、及び非常停止用押しボタンスイッチBS7を通して、上記押しボタンスイッチBS1〜BS6が並列に接続されている。なお、上記押しボタンスイッチBS1〜BS7を備えた操作ボックスの外観構成は図2と略同じであるから図示は省略する(但し「同」、「単」の押しボタンスイッチはない)。
【0018】
また、コントローラ21には、交流電源22を通して逆転用電磁開閉器13の駆動コイル13m、正転用電磁開閉器14の駆動コイル14m、第1電磁開閉器15の駆動コイル15m、第2電磁開閉器16の駆動コイル16m、第3電磁開閉器17の駆動コイル17m、第4電磁開閉器18の駆動コイル18mが接続されている。
【0019】
押しボタンスイッチBS1乃至BS4を操作して、電動トロリーの横行用電動機19の前進・後退動作、電動チェーンブロックの昇降用電動機20の上昇・下降動作を先行して操作した押しボタンスイッチに係るものをインバータ12の出力により、即ちインバータ駆動とし、このインバータ駆動中に、次に操作した押しボタンスイッチに係るものを商用電源10の電力により、即ち商用電源駆動とする。
【0020】
図5は押しボタンスイッチ操作と電動トロリーの横行動作及び電動チェーンブロックの昇降動作の関係を示す図である。図5において、(1)は電動トロリー又は電動チェーンブロックの単独操作の場合、(2)は電動トロリーと電動チェーンブロックの同時操作の場合、(3)は電動トロリーと電動チェーンブロックの同時操作で先行操作が入れ替わる場合をそれぞれ示す。
【0021】
(1)の単独操作の場合は、電動トロリーの横行用電動機19と電動チェーンブロックの昇降用電動機20が押しボタンスイッチの操作によりインバータ12の出力による駆動(インバータ駆動)となり、前進・後退(東・西)方向に横行する。図5では、押しボタンスイッチBS1又はBS2の操作により電動トロリーの横行用電動機19がインバータ駆動となり、前進・後退(東・西)方向に横行する。また、押しボタンスイッチBS4又はBS5の操作により電動チェーンブロックの昇降用電動機20がインバータ駆動となり上下方向に昇降する。
【0022】
(2)の同時操作の場合は、先行操作した押しボタンスイッチがインバータ12の出力による駆動(インバータ駆動)となり、次操作の押しボタンスイッチが商用電源による駆動(商用電源駆動)となる。図5では、押しボタンスイッチBS1又はBS2の先行操作により横行用電動機19がインバータ駆動となり、押しボタンスイッチBS4又はBS5の次操作により昇降用電動機20が商用電源駆動となる。
【0023】
(3)の同時操作で先行操作が入れ替わる場合は、同時操作されている押しボタンスイッチのうち先行操作が切れた場合の次動作は、インバータ駆動に移行せず商用電源駆動を維持する。図5では、押しボタンスイッチBS1又はBS2の先行操作により横行用電動機19がインバータ駆動となり、押しボタンスイッチBS4又はBS5の次操作により昇降用電動機20が商用電源駆動となる。そして押しボタンスイッチBS1又はBS2の操作が切れても昇降用電動機20の商用電源駆動が継続し、その途中で押しボタンスイッチBS1又はBS2が操作されると横行用電動機19がインバータ駆動となる。
【0024】
図6は押しボタンスイッチと電磁開閉器の関係を示す図である。電動トロリーに前進走行を指示する押しボタンスイッチBS4(東)が先行して操作されると、コントローラ21は第1電磁開閉器15の駆動コイル15mに励磁電流を通電し、第1電磁開閉器15をONとすると共に、インバータ12に正転信号S1を出力し、インバータ12から電動トロリーの横行用電動機19に正転用電力が供給され、横行用電動機19が正転し、電動トロリーは前進走行する。また、電動トロリーに後退走行を指示する押しボタンスイッチBS5(西)が先行して操作されると、コントローラ21は第1電磁開閉器15の駆動コイル15mに励磁電流を通電し、第1電磁開閉器15がONとすると共に、インバータ12に逆転信号S2を出力し、インバータ12から電動トロリーの横行用電動機19に逆転用電力が供給され、横行用電動機19が逆転し、電動トロリーは後退走行する。
【0025】
また、電動チェーンブロックの昇降用電動機20に上昇を指示する押しボタンスイッチBS1(上)が先行して操作されると、コントローラ21は第2電磁開閉器16の駆動コイル16mに励磁電流を通電し、第2電磁開閉器16をONとすると共に、インバータ12に正転信号S1を出力し、インバータ12から電動チェーンブロックーの昇降用電動機20に正転用電力が供給され、昇降用電動機20は正転し、電動チェーンブロックは上昇(巻上げ)動作する。
【0026】
また、電動チェーンブロックー下降を指示する押しボタンスイッチBS2(下)が先行して操作されると、コントローラ21は第2電磁開閉器16の駆動コイル16mに励磁電流を通電し、第2電磁開閉器16をONとすると共に、インバータ12に逆転信号S2を出力し、インバータ12から電動チェーンブロックの昇降用電動機20に下降用電力が供給され、昇降用電動機20が逆転し、電動チェーンブロックは下降(巻下げ)動作する。
【0027】
また、電動トロリーに前進走行を指示する押しボタンスイッチBS4(東)が次に操作されると、コントローラ21は第4電磁開閉器18の駆動コイル18mに励磁電流を通電し、第4電磁開閉器18がONし、更に正転用電磁開閉器14の駆動コイル14mに励磁電流が流れ、正転用電磁開閉器14がONとなり、商用電源10から電動トロリーの横行用電動機19に正転用電力が供給され、横行用電動機19が正転し、電動トロリーは前進走行する。
【0028】
また、電動トロリーに後退走行を指示する押しボタンスイッチBS5(西)が次に操作されると、コントローラ21は第3電磁開閉器17の駆動コイル17mに励磁電流を通電し、第3電磁開閉器17がONし、更に逆転用電磁開閉器13の駆動コイル13mに励磁電流を通電し、逆転用電磁開閉器13がONとなり、商用電源10から電動トロリーの横行用電動機19に逆転用電力が供給され、横行用電動機19が逆転し、電動トロリーは後退走行する。
【0029】
また、電動チェーンブロックに昇降を指示する押しボタンスイッチBS1(上)が次に操作されると、コントローラ21は第4電磁開閉器18の駆動コイル18mに励磁電流を通電し、第4電磁開閉器18がONし、更に正転用電磁開閉器14の駆動コイル14mに励磁電流を通電し、正転用電磁開閉器14がONとなり、商用電源10から電動チェーンブロックの昇降用電動機20に正転用電力が供給され、昇降用電動機20が正転し、電動チェーンブロックは上昇(巻上げ)動作する。
【0030】
また、電動チェーンブロックに下降を指示する押しボタンスイッチBS2(上)が次に操作されると、コントローラ21は第4電磁開閉器18の駆動コイル18mに励磁電流を通電し、第4電磁開閉器18がONし、更に逆転用電磁開閉器13の駆動コイル13mに励磁電流を通電し、逆転用電磁開閉器13がONとなり、商用電源10から電動チェーンブロックの昇降用電動機20に逆転用電力が供給され、昇降用電動機20が逆転し、電動チェーンブロックは下降(巻下げ)動作する。
【0031】
コントローラ21は正転用電磁開閉器14及び逆転用電磁開閉器13がONしたら最低数100msec連続してONするようにその駆動コイル14m及び駆動コイル13mに励磁電流を通電する。これにより正転用電磁開閉器14及び逆転用電磁開閉器13は横行用電動機19及び昇降用電動機20の大きな起動電流を遮断することはない。なお、この時間は電動機の起動電流に依存する。電動機の駆動電流は定常電流の約3倍以上であるので、この効果が大きい。即ち、正転用電磁開閉器14及び逆転用電磁開閉器13は大きな起動電流を遮断することがないから、遮断容量の少ない小型の電磁開閉器ですむから、装置を小型化できると共に、接触部の消耗も少く寿命が長くなる。
【0032】
また、コントローラ21は、起動時には第1電磁開閉器15乃至第4電磁開閉器18のONの動作の数10msec後にインバータ12の出力及び正転用電磁開閉器14又は逆転用電磁開閉器13をONさせる。更に停止時にはインバータ12の出力停止後、又は正転用電磁開閉器14及び逆転用電磁開閉器13のOFF後に第1電磁開閉器15乃至第4電磁開閉器18をOFFとする。これにより第1電磁開閉器15乃至第4電磁開閉器18は電流の投入・遮断をすることがないから、その容量を小さくなる共に装置を小型化できる。
【0033】
例えば、押しボタンスイッチBS1(上)を操作した場合には、コントローラ21は、電磁開閉器16の駆動コイル16mに通電し、電磁開閉器16をONにし、数10msec後にインバータ12に正転信号S1を出力する。その後、押しボタンスイッチBS4(東)を操作された場合には第3電磁開閉器17の駆動コイル17mに通電し、電磁開閉器17をONとし、数10msec後に正転用電磁開閉器14の駆動コイル14mに通電し、正転用電磁開閉器14をONにする。押しボタンスイッチBS1(上)を離した場合にはインバータ12の出力停止後、電磁開閉器16の駆動コイル16mの通電を停止し、電磁開閉器16をOFFとする。押しボタンスイッチBS4(東)を離した場合には、正転用電磁開閉器14の駆動コイル14mの通電を停止した後、正転用電磁開閉器14をOFFにした後、第3電磁開閉器17の駆動コイル17mの通電を停止し、第3電磁開閉器17をOFFとする。
【0034】
図7は本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の動作の流れを示す図である。先ず押しボタンスイッチの操作があるか否かを判断し(ステップST1)、押しボタンスイッチBS1(上)又はBS2(下)が操作された場合はステップST2に移行し、押しボタンスイッチBS4(東)又はBS5(西)が操作された場合はステップST3に移行する。
【0035】
ステップST2において、起動指令か停止指令かを判断し、起動指令の場合は電動トロリーの横行用電動機19がインバータ12により運転中(横行インバータ運転中)かを判断し(ステップST4)、インバータ12が停止中であったら、電動チェーンブロックの昇降用電動機20の駆動がインバータ12を選択(昇降運転インバータ選択)し(ステップST5)、インバータ12が運転中であったら、電動チェーンブロックの昇降用電動機20の駆動に商用電源10を選択(昇降運転商用電源選択)する(ステップST6)。前記ステップST2において、停止指令である場合、電動チェーンブロックの昇降用電動機20の駆動がインバータ12により運転中(昇降インバータ運転中)を判断し(ステップST7)、インバータ12による運転中であったら、昇降用電動機20の停止のためインバータ12の選択を解除(昇降停止インバータ選択解除)し(ステップST8)、商用電源運転中であったら、昇降用電動機20の停止のため商用電源の選択を解除(昇降停止商用電源選択解除)(ステップST9)する。
【0036】
前記ステップST3において、起動指令か停止指令かを判断し、起動指令の場合は電動チェーンブロックの昇降用電動機20がインバータ12により運転中(昇降インバータ運転中)かを判断し(ステップST10)、インバータ12が停止中であったら、電動トロリーの横行用電動機19の駆動にインバータ12を選択(横行運転インバータ選択)し(ステップST11)、インバータ12が運転中であったら、電動トロリーの横行用電動機の駆動に商用電源10を選択(横行運転商用電源選択)する(ステップST12)。前記ステップST3において、停止指令である場合、電動トロリーの横行用電動機19の駆動がインバータ12により運転中(横行インバータ運転中)を判断し(ステップ13)、インバータ12による運転中であったら、横行用電動機19の停止のためインバータ12の選択を解除(横行停止インバータ選択解除)し(ステップST14)、商用電源による運転中であったら、横行用電動機19の停止のため商用電源の選択を解除(横行停止商用電源選択解除)する(ステップST15)。
【0037】
なお、緊急等により非常停止する場合は、非常停止用押しボタンスイッチBS7を操作することにより、電源投入用の電磁開閉器11の駆動コイル11mへの通電が遮断され、電磁開閉器11がOFFとなり、駆動制御装置への電源が遮断される。また、高速指示用の押しボタンスイッチBS3、BS6を操作することにより、昇降用電動機20、横行用電動機19を高速昇降、高速横行させることも可能である。また、図4において、11aは電磁開閉器11の補助接点、20bは電動チェーンブロックの昇降用電動機20のブレーキである。
【0038】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の構成例を示す図である。
【図2】操作ボックスの外観構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の動力回路の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の制御部の構成例を示す図である。
【図5】本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の押しボタンスイッチ操作と横行動作及び昇降動作の関係を示す図である。
【図6】本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の押しボタンスイッチと電磁開閉器の関係を示す図である。
【図7】本発明に係る電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置の動作の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10 商用電源
11 電源投入用の電磁開閉器
12 インバータ
13 逆転用電磁開閉器
14 正転用電磁開閉器
15 第1電磁開閉器
16 第2電磁開閉器
17 第3電磁開閉器
18 第4電磁開閉器
19 電動トロリーの横行用電動機
20 電動チェーンブロックの昇降用電動機
21 コントローラ
22 交流電源
BS1 上昇指示用の押しボタンスイッチ
BS2 下降指示用の押しボタンスイッチ
BS3 高速指示用の押しボタンスイッチ
BS4 前進横行指示用の押しボタンスイッチ
BS5 後退横行指示用の押しボタンスイッチ
BS6 高速指示用の押しボタンスイッチ
BS7 非常停止用押しボタンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部に商用電源と1台のインバータを備え、該商用電源の電力を正転・逆転用に切り替える正逆転切替用電磁開閉器と、前記インバータと電動トロリーの横行用電動機を接続する第1電磁開閉器と、該インバータと電動チェーンブロックの昇降用電動機を接続する第2電磁開閉器と、前記正逆転切替用電磁開閉器と前記横行用電動機を接続する第3電磁開閉器と、該正逆転用切替用電磁開閉器と前記昇降用電動機を接続する第4電磁開閉器とを備え、操作ボックスの横行スイッチ及び昇降スイッチの操作により、前記横行用電動機や前記昇降用電動機に前記商用電源から前記インバータを介して電力を供給するインバータ駆動とするか又は前記商用電源から正逆転切替用電磁開閉器を介して供給する商用電源駆動とするように構成された電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置であって、
前記横行用電動機又は前記昇降用電動機の駆動を前記操作ボックスの先行して操作されたスイッチによるものをインバータ駆動とし、次に操作されたスイッチによるものを前記商用電源駆動とする制御手段を設けたことを特徴とする電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置において、
前記制御手段は前記正逆転切替用電磁開閉器が一度閉じたら所定の一定時間開かないようにすることを特徴とする電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置において、
前記制御手段は前記横行用電動機又は前記昇降用電動機の起動時は、前記第1乃至第4電磁開閉器を閉じてから、前記インバータを起動又は前記正逆転切替用電磁開閉器を閉じ、前記横行用電動機又は前記昇降用電動機の停止時は前記インバータを停止又は前記正逆転切替用電磁開閉器を開いてから、前記第1乃至第4電磁開閉器を開くことを特徴とする電動トロリー付き電動チェーンブロックの駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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