説明

電動圧縮機

【課題】インバータおよび平滑リアクトルを一体化した電動圧縮機において、車両への搭載性の向上を図る。
【解決手段】電動圧縮機は、ハウジング10と、ハウジング10内に収容され、冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機構11と、ハウジング10の内部に収容され、車載バッテリ3から投入された電力により駆動する電動モータ12と、電動モータ12の駆動力を圧縮機構11に伝達するシャフト13と、ハウジング10外周のインバータ収容部14aに収容され、電動モータ12の駆動を制御する駆動制御手段、および商用電源2を用いて車載バッテリ3を充電する充電手段を兼ねるインバータ14と、車載バッテリ3を充電する際に、商用電源2の電源電圧を昇圧するための環状の平滑リアクトル16と、を備える。そして、平滑リアクトル16は、ハウジング10の内部に収容され、シャフト13を囲むようにシャフト13の径方向外側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外部の外部電源から投入された電力を受けて車両に搭載された蓄電手段を充電可能な車両に適用され、蓄電手段からの投入された電力により駆動する電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外部の外部電源(商用電源)から投入された電力を受けて車載バッテリを充電可能に構成された車両(例えば、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車)では、外部電源から投入された交流電流を直流電流に変換して、車載バッテリに電力を供給する充電器を新たに搭載する必要があり、車両重量が増加するといった問題がある。
【0003】
これに対して、特許文献1では、空調用冷凍サイクルの圧縮機の電動モータを駆動するインバータを、外部電源から電力が投入されたときの車載バッテリの充電器として機能させることによって、車両重量の増加の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−195336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外部電源から投入された電力を受けて車載バッテリを充電可能に構成された車両では、外部電源等の電源電圧を昇圧(または昇降圧)してインバータに供給するために、環状の平滑リアクトルを設ける必要がある。
【0006】
ここで、本発明者らは、圧縮機の電動モータとインバータとの間や、インバータと平滑リアクトルとの間の接続部品(例えば、配線やコネクタ)の簡素化等を図るために、インバータ、および平滑リアクトルを一体化する構成(電動圧縮機)を検討している。
【0007】
このような構成として、例えば、インバータを収容するインバータ収容部を、圧縮機のハウジングの外周に配置すると共に、平滑リアクトルをインバータ収容部内に配置する構成が考えられる。
【0008】
ところが、平滑リアクトルは、その内部に中空部を有するため、平滑リアクトルをインバータ収容部内に収容する場合、インバータ収容部内にデッドスペースが生じてしまう。これにより、電動圧縮機全体の体格が増大してしまい、電動圧縮機の車両への搭載性が悪化するといった課題がある。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、インバータおよび平滑リアクトルを一体化した電動圧縮機において、車両への搭載性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両の外部の外部電源(2)から投入された電力を受けて車両に搭載された蓄電手段(3)を充電可能な車両に適用され、蓄電手段(3)からの投入された電力により駆動する電動圧縮機であって、流体の吸入口(101)および吐出口(102)が形成されたハウジング(10)と、ハウジング(10)の内部に収容され、吸入口(101)から流入した流体を吸入圧縮して吐出口(102)へ吐出する圧縮機構(11)と、ハウジング(10)の内部に収容され、蓄電手段(3)から投入された電力により駆動する電動モータ(12)と、ハウジング(10)の内部に軸受(13a)を介して支持されて、電動モータ(12)の駆動力を圧縮機構(11)に伝達するシャフト(13)と、ハウジング(10)の外周に設けられたインバータ収容部(14a)に収容され、電動モータ(12)の駆動を制御する駆動制御手段、および外部電源(2)を用いて蓄電手段(3)を充電する充電手段を兼ねるインバータ(14)と、蓄電手段(3)を充電する際に、外部電源(2)の電源電圧を昇圧するための環状の平滑リアクトル(16)と、を備え、平滑リアクトル(16)は、ハウジング(10)の内部に収容され、シャフト(13)を囲むようにシャフト(13)の径方向外側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、円環状の平滑リアクトル(16)におけるデッドスペース(内側空間)を、電動モータ(12)の駆動力を圧縮機構(12)に伝達するシャフト(13)を配置する空間として利用するので、平滑リアクトル(16)を内蔵することによる電動圧縮機の体格の増大を抑制することができる。この結果、電動圧縮機の車両への搭載性の向上を図ることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電動圧縮機において、平滑リアクトル(16)は、少なくとも一部が、シャフト(13)の径方向において軸受(13a)と重合する位置に配置されていることを特徴とする。
【0013】
これよれば、平滑リアクトル(16)におけるデッドスペース(内側空間)を、シャフト(13)およびシャフト(13)を支持する軸受(13a)を配置する空間として利用するので、電動圧縮機の体格の増大をより効果的に抑制することができる。
【0014】
ところで、平滑リアクトル(16)は、作動時に流れる電流によって発熱するが、その発熱により温度が過剰に上昇すると、平滑リアクトル(16)の作動安定性が損なわれる虞がある。
【0015】
そこで、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の電動圧縮機において、ハウジング(10)は、その内部に吸入口(101)から流入した流体を、少なくとも平滑リアクトル(16)の周辺部を介して圧縮機構(11)へと導く流体流路(163a)が形成されていることを特徴とする。
【0016】
これによると、ハウジング(16)内に流入した流体により、平滑リアクトル(16)を冷却することができるので、平滑リアクトル(16)の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0017】
また、インバータ(14)は、作動時に流れる電流によって発熱するが、その発熱により温度が過剰に上昇すると、インバータ(14)の作動安定性が損なわれる虞がある。
【0018】
そこで、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電動圧縮機において、インバータ(14)は、少なくとも一部が、シャフト(13)の径方向において流体流路(163a)と重合する位置に配置されていることを特徴とする。
【0019】
これによると、ハウジング(10)内に流入した流体により、インバータ(14)を冷却することができるので、インバータ(14)の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る電動圧縮機の軸方向断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電動圧縮機の電源システムの概略を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に電源システムの各リレーRY1〜RY6の制御内容を説明するための説明図である。電源システムの作動を説明する説明図である。
【図4】第2実施形態に係る電動圧縮機の軸方向断面図である。
【図5】第3実施形態に係る電動圧縮機の電源システムの概略を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態に係る電源システムの各リレーRY1〜RY4の制御内容を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る電動圧縮機の軸方向断面図である。
【0024】
本実施形態に係る電動圧縮機1は、車両外部の商用電源(外部電源)2から投入された電力を受けて車両に搭載された車載バッテリ(蓄電手段)3を充電可能な車両(例えば、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車)に適用される。この電動圧縮機1は、図示しない凝縮器、膨張弁、および蒸発器とともに、周知の蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成している。
【0025】
本実施形態の電動圧縮機1は、図1に示すように、冷媒(流体)の冷媒吸入口(吸入口)101および冷媒吐出口(吐出口)102が形成されたハウジング10を有して構成されている。ハウジング10は、伝熱性の高いアルミニウム等の金属からなるもので、略円筒状に形成されている。
【0026】
ハウジング10における冷媒吸入口101は、ハウジング10の長手方向一端側(紙面右側)の端面に形成されており、蒸発器(図示略)の冷媒流出口側に接続されている。そして、冷媒吸入口101を介して蒸発器から流出した低温低圧冷媒がハウジング10の内部に流入する。
【0027】
また、ハウジング10における冷媒吐出口102は、ハウジング10の長手方向他端側(紙面左側)の端面に形成されており、凝縮器(図示略)の冷媒吸入口側に接続されている。そして、冷媒吐出口102を介して高温高圧冷媒が凝縮器へ吐出される。
【0028】
ハウジング10には、その内部に冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機構11が配置されている。本実施形態の圧縮機構11は、ハウジング10における長手方向他端側(冷媒吐出口102側)に配置されている。
【0029】
本実施形態では、圧縮機構11を周知のスクロール型圧縮機構で構成している。すなわち、本実施形態の圧縮機構11は、渦状のラップが形成された固定スクロール(図示略)および旋回スクロール(図示略)を有し、各スクロールのラップを互いに噛み合わせ、旋回スクロールを旋回運動させることで、冷媒を吸入・圧縮して吐出するものである。
【0030】
また、ハウジング10には、その内部に圧縮機構11を駆動する電動モータ12、および電動モータ12の駆動力を圧縮機構11に伝達するシャフト13が配置されている。シャフト13は、ハウジング10における長手方向に延びるように配置されており、ハウジング10における冷媒吸入口101側に設けられた軸受13a、および圧縮機構11側に設けられた軸受(図示略)にて回転可能に支持されている。
【0031】
電動モータ12は、ハウジング10における長手方向の略中央部に配置されており、シャフト13に対して固定されたロータ121、ロータ121と径方向に重合するようにハウジング10の内壁に固定されたステータコア122を有して構成されている。
【0032】
電動モータ12のロータ121は、例えば、永久磁石が埋め込まれたものであって、ステータコア122から発生される回転磁界によってシャフト13と共に回転する。また、ステータコア122は、磁性体からなるもので、その軸線方向がシャフト13の軸方向に一致する筒状部材で構成され、回転磁界を発生させるためのステータコイル123が設けられている。なお、ステータコア122に設けられたステータコイル123は、後述するインバータ14にクラスタブロック15aおよび中継端子15bからなる接続部15を介して接続されている。
【0033】
また、ハウジング10には、その内部に後述する商用電源2からの電源電圧を昇降圧するための昇圧コンバータ4の一部を構成する環状の平滑リアクトル16が、焼き嵌めによりハウジング10における長手方向一端側(冷媒吸入口101側)に固定されている。
【0034】
本実施形態の平滑リアクトル16は、その内側に中空部160を有している。そして、平滑リアクトル16は、シャフト13を囲むようにシャフト13の径方向外側に配置されると共に、その一部が、シャフト13の径方向において、軸受13aと重合するように配置されている。すなわち、平滑リアクトル16の内側に形成される中空部160には、シャフト13および軸受13aが配置されている。
【0035】
本実施形態の平滑リアクトル16は、外鉄型のリアクトルであり、ダストコア161にてモールドされたコイル162、およびコイル162を収容するための金属製の環状ケース163で構成されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、電動モータ12のステータコア122の外周面とハウジング10の内周面との間、および平滑リアクトル162と環状ケース163の間には、それぞれ冷媒吸入口101から流入した低温冷媒が流通する冷媒流路(流体流路)122a、163aが形成されている。この冷媒流路122aは、ハウジング10の冷媒吸入口101から流入した冷媒を電動モータ12および平滑リアクトル16の周辺部を介して圧縮機構11へと導く流路である。
【0037】
ハウジング10には、その外周に電動モータ12の駆動を制御するインバータ14を収容するインバータ収容部14aが取り付けられている。インバータ収容部14aに収容されたインバータ14は、シャフト13の径方向において、冷媒流路122a、163aと重合する位置に配置されている。
【0038】
次に、インバータ14を含む電動圧縮機1の電源システムについて説明する。図2は本実施形態に係る電動圧縮機の電源システムの概略を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の電動圧縮機1の電源システムは、電動圧縮機1のインバータ14を、電動モータ12の駆動を制御する駆動制御手段として機能させると共に、車載バッテリ3を充電する際の充電手段として機能させている。
【0040】
図2に示すように、電動圧縮機1の電源システムは、主に電動圧縮機1の電動モータ12、インバータ14、車載バッテリ3、昇圧コンバータ4、商用電源2から投入された電力により受電する受電部21、制御装置5を有して構成されている。
【0041】
受電部21は、商用電源2に接続するためのコネクタ、フィルタ回路等を有して構成されている。なお、受電部21には、商用電源2から投入される電源電圧を検出する第1電圧センサ21aが接続されている。
【0042】
電動圧縮機1の電動モータ12は、三相交流モータであって、そのステータコイル123がU相コイル123a、V相コイル123b、およびW相コイル123cで構成されている。
【0043】
インバータ14は、U相コイル123aに対応するU相アーム141、V相コイル123bに対応するV相アーム142、W相コイル123cに対応するW相アーム143を含んで構成されている。
【0044】
各アーム141〜143は、後述するシステムメインリレーSMR1、SMR2を介して、車載バッテリ3の正極に接続された電源ラインと、車載バッテリ3の負極に接続された接地ラインとの間に並列接続されている。
【0045】
U相アーム141は、一対の半導体スイッチQ1、Q2、および各半導体スイッチQ1、Q2に対して逆導通可能な向き(エミッタ側からコレクタ側への電流の流れを許容する向き)に並列接続されたダイオードD1、D2を有する。
【0046】
同様に、V相アーム142は、一対の半導体スイッチQ3、Q4、および各半導体スイッチQ3、Q4に対して逆導通可能な向きに並列接続されたダイオードD3、D4を有し、W相アーム143は、一対の半導体スイッチQ5、Q6、および各半導体スイッチQ5、Q6に対して逆導通可能な向きに並列接続されたダイオードD5、D6を有する。なお、半導体スイッチQ1〜Q6としては、例えば、IGBTを採用することができる。
【0047】
ここで、インバータ14のU相アーム141の半導体スイッチQ1、Q2の接続点には、リレーRY3を介して電動モータ12のU相コイル123aが接続されると共に、リレーRY1を介して受電部21が接続されている。
【0048】
V相アーム142の半導体スイッチQ3、Q4の接続点には、電動モータ12のV相コイル123bに接続されると共に、リレーRY2を介して受電部21に接続されている。
【0049】
W相アーム143の半導体スイッチQ5、Q6の接続点には、リレーRY4を介して電動モータ12のW相コイル123cに接続されると共に、リレーRY6を介して後述する昇圧コンバータ4の平滑リアクトル16に接続されている。
【0050】
ここで、リレーRY1、RY2がインバータ14と受電部21との間を切替接続する第1接続部を構成し、リレーRY3、RY4がインバータ4と電動モータ12との間を切替接続する第2接続部を構成している。
【0051】
車載バッテリ3は、電動圧縮機1を含む各種電気負荷に供給するための電力を蓄える蓄電手段を構成するもので、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池等の二次電池を用いることができる。
【0052】
車載バッテリ3は、昇圧コンバータ4へ直流電圧を出力すると共に、昇圧コンバータ4から出力される直流電圧により充電される。なお、車載バッテリ3には、車載バッテリ3の電源電圧を検出する第2電圧センサ3aが接続されている。
【0053】
車載バッテリ3の正極側には、第1システムメインリレーSMR1が接続され、負極側には第2システムメインリレーSMR2が接続されている。車載バッテリ3には、各システムメインリレーSMR1、SMR2を介してコンデンサ144が並列接続されている。具体的には、コンデンサ144の正電圧側に第1システムメインリレーSMR1が接続され、負電圧側に第2システムメインリレーSMR2が接続されている。
【0054】
第1システムメインリレーSMR1に接続された配線は、コンデンサ144の正電圧側との接続点から分岐して後述する昇圧コンバータ4の半導体スイッチQa1のコレクタに接続されている。そして、第1システムメインリレーSMR1に接続された配線は、さらに昇圧コンバータ4の半導体スイッチQa1のコレクタとの接続点から分岐して、リレーRY5を介してインバータ14の半導体スイッチQ1、Q3、Q5のコレクタに接続されている。
【0055】
また、第2システムメインリレーSMR2に接続された配線は、コンデンサ144の負電圧側との接続点から分岐して後述する昇圧コンバータ4の半導体スイッチQa2のエミッタに接続されている。そして、第2システムメインリレーSMR2に接続された配線は、さらに昇圧コンバータ4の半導体スイッチQa2のエミッタとの接続点から分岐して、インバータ14の半導体スイッチQ2、Q4、Q6のエミッタに接続されている。
【0056】
昇圧コンバータ4は、上述した平滑リアクトル16、半導体スイッチQa1、Qa2、および各半導体スイッチQa1、Qa2に対して逆導通可能な向きに並列接続されたダイオードDa1、Da2を含んで構成されている。
【0057】
平滑リアクトル16は、一端が半導体スイッチQa1、Qa2の接続点に接続され、他端がリレーRY6を介してインバータ14におけるW相アーム143の半導体スイッチQ5、Q6の接続点に接続されている。なお平滑リアクトル16には、平滑リアクトル16を流れる電流を検出する電流センサ16aが接続されている。
【0058】
制御装置5は、各種入力信号に基づいて各種演算処理を実行するもので、CPU、およびROM、RAMといった記憶手段等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路により構成されている。
【0059】
制御装置5の入力側には、電圧センサ3aおよび電流センサ16aが接続されており、各センサ3a、16aから検出値が入力される。また、制御装置5の出力側には、インバータ14の各半導体スイッチQ1〜Q6、昇圧コンバータ4の各半導体スイッチQa1、Qa2、各リレーRY1〜RY6、SMR1、SMR2等が接続されており、制御装置5からの制御信号に応じて、その作動が制御される。
【0060】
次に、本実施形態の電源システムおよび電動圧縮機1の作動について説明する。図3は、制御装置5による電源システムの各リレーRY1〜RY6の制御内容を説明するための説明図である。
【0061】
ここで、図3では、時刻T1〜T2の期間および時刻T3〜T4の期間が、電動圧縮機1の作動期間とし、時刻T2〜T3の期間が車載バッテリ3の充電期間としている。なお、電動圧縮機1の作動と車載バッテリ3の充電との切替は、受電部21に接続された第1電圧センサ21aの検出値に基づいて行われる。
【0062】
図3に示すように、電動圧縮機1の作動期間は、リレーRY3、RY4、RY5をONし、リレーRY1、RY2、RY6をOFFすることで、インバータ14を電動モータ12の駆動を制御する駆動制御手段として機能させることができる。
【0063】
一方、車載バッテリ3の充電期間は、リレーRY1、RY2、RY6をONし、リレーRY3、RY4、RY5をOFFすることで、インバータ14を車載バッテリ3の充電手段として機能させることができる。この際、インバータ14のU相アーム141およびV相アーム142は、ダイオード整流回路として機能し、インバータ14のW相アーム143、昇圧コンバータ4は、商用電源2の電源電圧の昇降圧回路として機能する。
【0064】
以上説明した本実施形態の構成では、円環状の平滑リアクトル16を、ハウジング10の内部において、シャフト13の径方向においてシャフト13を囲むようにシャフト13の径方向外側に配置する構成としている。これによると、平滑リアクトル16におけるデッドスペース(中空部160)を、シャフト13を配置する空間として利用するので、平滑リアクトル16を内蔵することによる電動圧縮機1の体格の増大を抑制することができる。この結果、電動圧縮機の車両への搭載性の向上を図ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、平滑リアクトル16の一部を、シャフト13の径方向において軸受13aと重合する位置に配置する構成としている。これによると、平滑リアクトル16におけるデッドスペース(中空部160)を、シャフト13および軸受13aを配置する空間として利用するので、電動圧縮機の体格の増大をより効果的に抑制することができる。
【0066】
また、ハウジング10と平滑リアクトル16の環状ケース163との間に、冷媒吸入口101から流入した冷媒が流れる冷媒流路163aを形成している。これによれば、ハウジング10内に流入した冷媒により、平滑リアクトル16を冷却することができるので、平滑リアクトル16の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0067】
このように、冷媒により平滑リアクトル16の温度を低下させる構成とすれば、平滑リアクトル16における許容損失が増加させることができるので、平滑リアクトル16自身を小型化することができる。これにより、電動圧縮機1の体格の小型化を図ることができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、インバータ14の一部を、シャフト13の径方向においてハウジング10内の冷媒流路122a、163aと重合する位置に配置する構成としている。これによれば、ハウジング10内に流入した冷媒により、インバータ14を冷却することができるので、インバータ14の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0070】
図4は、本実施形態に係る電動圧縮機の軸方向断面図である。図4に示すように、本実施形態の電動圧縮機1は、ハウジング10の略中央部に平滑リアクトル16を配置し、平滑リアクトル16に対して冷媒吐出口102側に圧縮機構11、冷媒吸入口101側に電動モータ12を配置する構成としている。そして、本実施形態の平滑リアクトル16は、ハウジング10内において、シャフト13の径方向においてシャフト13を囲むようにシャフト13の径方向外側に配置されている。
【0071】
このように、平滑リアクトル16をシャフト13の径方向においてシャフト13と重合する位置に配置する構成では、平滑リアクトル16におけるデッドスペース(中空部160)を、シャフト13を配置する空間として利用するので、電動圧縮機の体格の増大をより効果的に抑制することができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0073】
図5は、本実施形態に係る電動圧縮機1の電源システムの概略を示すブロック図であり、図6は、本実施形態に係る電源システムの作動を説明する説明図である。
【0074】
図5に示すように、本実施形態では、昇圧コンバータ4、およびリレーRY5、RY6を廃し、平滑リアクトル16および電流センサ16aを、リレーRY1と、リレーRY3およびU相アーム141の半導体スイッチQ1、Q2の接続点との間に接続する構成としている。さらに、V相アーム142の半導体スイッチQ3、Q4の接続点に、リレーRY4を介して電動モータ12のV相コイル123cを接続し、W相アーム143の半導体スイッチQ5、Q6の接続点に、電動モータ12のW相コイル123cを接続する構成としている。
【0075】
そして、図6に示すように、電動圧縮機1の作動期間は、リレーRY3、RY4をONし、リレーRY1、RY2をOFFすることで、インバータ14を電動モータ12の駆動を制御する駆動制御手段として機能させることができる。
【0076】
一方、車載バッテリ3の充電期間は、リレーRY1、RY2をONし、リレーRY3、RY4をOFFすることで、インバータ14を車載バッテリ3の充電手段として機能させることができる。この際、インバータ14のU相アーム141およびV相アーム142は、PWM整流回路および昇圧回路として機能する。
【0077】
このように構成される電源システムに対して、本発明の電動圧縮機1を適用することができる。そして、本実施形態の構成においても、第1、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0078】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0079】
(1)上述の各実施形態では、電動圧縮機1の圧縮機構11としてスクロール型圧縮機構を採用する例について説明したが、これに限定されない。例えば、電動圧縮機1の圧縮機構11として、ベーン型圧縮機構を採用してもよい。
【0080】
(2)上述の各実施形態のように、ハウジング10の内壁面と平滑リアクトル16の環状ケース163との間に、冷媒吸入口101から流入した冷媒が流れる冷媒流路162を設ける構成が好ましいが、平滑リアクトル16の温度が過剰に上昇しない場合等には、冷媒流路162を設けなくともよい。
【0081】
(3)上述の各実施形態では、ハウジング10における長手方向の一端側の端面に冷媒吐出口102を設け、他端側の端面に冷媒吸入口101を設ける構成したが、これに限定されず、冷媒吸入口101および冷媒吐出口102は、ハウジング10における径方向の側面に設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 電動圧縮機
2 商用電源(外部電源)
3 車載バッテリ(蓄電手段)
10 ハウジング
101 冷媒吸入口(吸入口)
102 冷媒吐出口(吐出口)
11 圧縮機構
12 電動モータ
13 シャフト
13a 軸受
14 インバータ
14a インバータ収容部
16 平滑リアクトル
163a 冷媒流路(流体流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部の外部電源(2)から投入された電力を受けて車両に搭載された蓄電手段(3)を充電可能な車両に適用され、前記蓄電手段(3)からの投入された電力により駆動する電動圧縮機であって、
流体の吸入口(101)および吐出口(102)が形成されたハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)の内部に収容され、前記吸入口(101)から流入した流体を吸入圧縮して前記吐出口(102)へ吐出する圧縮機構(11)と、
前記ハウジング(10)の内部に収容され、前記蓄電手段(3)から投入された電力により駆動する電動モータ(12)と、
前記ハウジング(10)の内部に軸受(13a)を介して支持されて、前記電動モータ(12)の駆動力を前記圧縮機構(11)に伝達するシャフト(13)と、
前記ハウジング(10)の外周に設けられたインバータ収容部(14a)に収容され、前記電動モータ(12)の駆動を制御する駆動制御手段、および前記外部電源(2)を用いて前記蓄電手段(3)を充電する充電手段を兼ねるインバータ(14)と、
前記蓄電手段(3)を充電する際に、前記外部電源(2)の電源電圧を昇圧するための環状の平滑リアクトル(16)と、を備え、
前記平滑リアクトル(16)は、前記ハウジング(10)の内部に収容され、前記シャフト(13)を囲むように前記シャフト(13)の径方向外側に配置されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記平滑リアクトル(16)は、少なくとも一部が、前記シャフト(13)の径方向において前記軸受(13a)と重合する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジング(10)は、その内部に前記吸入口(101)から流入した流体を、少なくとも前記平滑リアクトル(16)の周辺部を介して前記圧縮機構(11)へと導く流体流路(163a)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記インバータ(14)は、少なくとも一部が、前記シャフト(13)の径方向において前記流体流路(163a)と重合する位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電動圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193667(P2012−193667A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58199(P2011−58199)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】