説明

電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置

【課題】電動巻上下装置の三相交流電動機やブレーキに電動機用コンタクタやブレーキ用コンタクタを介して駆動電力を供給する駆動回路の各コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の状態を監視でき、且つコンタクタをONする前に三相交流の逆相を検出する。
【解決手段】交流電源回路1から電動機用コンタクタ2、ブレーキ用コンタクタ4を介してそれぞれ交流電動機3、ブレーキ5に駆動電力を供給する駆動回路の電動機用コンタクタ2及び/又はブレーキ用コンタクタ4の各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続し、交流電源回路の交流に同期したパルス信号を出力する検出回路6a〜6eを設け、検出回路からのパルス信号を処理し、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の正・異常を検出する信号処理回路7を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置の電動機やブレーキに駆動電力を供給する駆動回路のコンタクタや半導体素子の溶着・溶断、逆相の故障を検出する電動巻上下装置の駆動回路故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の技術としては、特許文献1乃至5に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1には、三相電動機の位相切換え装置に関する技術が開示されている。この技術は、ゼロクロスタイミングで検出する3組の相間の位相を検出する位相検出回路を備え、この位相検出回路からの信号の有無の検出により欠相の検出と、信号の立上り立下りの順序を判断し、三相交流が正相か否かの判断を行う制御部を備えている。
【0004】
特許文献2には、三相電源逆相検出回路に関する技術が開示されている。この技術は、R相、S相、T相から成る三相電源に結合される負荷入力回路のR−S相間電圧により作動する第1のホトカプラと、R−T相間電圧により作動する第2のホトカプラとからなる信号生成回路を備え、前記何れか一方のホトカプラの出力信号の立上がり時又は立ち下がり時に、他方のホトカプラの出力信号の有無を判定することにより、三相電源の誤接続を検出する。
【0005】
特許文献3には、交流電源の周波数、欠相及び逆相検出装置に関する技術が開示されている。この技術は、交流電源によって作動するホトカプラと、ホトカプラの出力信号の立上りから立下りまでのパルス幅時間を検出するパルス幅検出手段を備え、パルス幅時間検出手段によって検出したパルス幅時間が許容値外であった場合、交流電源にノイズが印加されていると判断する。
【0006】
特許文献4には、三相交流電源の逆相検出装置に関する技術が開示されている。この技術は、各相の交流電圧信号を所定レベルまで降圧した後にデジタル化して入力する電圧入力手段と、電圧入力手段により入力された各相の交流電圧信号に基づいて、所定の相を基準にした各相の位相ずれを示す電源位相を生成する位相信号生成手段と、位相信号生成手段によって生成された電源位相信号の進み方向を検出する進み方向検出手段と、進み方向検出手段によって検出された電源位相の進み方向に基づいて上記三相交流電源の逆相状態を判定する逆相判定手段を設けている。
【0007】
特許文献5には、駆動回路の異常検出装置に関する技術が開示されている。この技術は、半導体素子に並列接続され、半導体素子が負荷電流を遮断する状態で交流電源に同期したパルス信号を発生するように形成された異常検出回路と、半導体素子の異常検出回路を流れる電流と負荷電流を識別する識別信号検出回路と、該異常検出回路と識別信号検出回路との出力信号から異常内容を判定する判定回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−187819号
【特許文献2】実開平3−106838号
【特許文献3】特開平7−107658号
【特許文献4】特開2006−38531号
【特許文献5】特開平2−192316号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記引用文献1乃至4に記載の技術は、交流電源の相間電圧を検出する構成となっており、駆動回路のコンタクタや半導体素子そのものを直接的に監視する機能を有していないため、コンタクタや半導体素子の状態(例えば、コンタクタの接点の溶着・溶断)を監視することができないという問題がある。
【0010】
上記引用文献5に記載の技術は、電磁弁の駆動回路であり、三相交流電源を使用するものでないから、三相交流の逆相を検出する逆相検出機能はない。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置の三相交流電動機やブレーキに三相交流電源回路から電動機用コンタクタやブレーキ用コンタクタを介して駆動電力を供給する駆動回路の各コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の状態を監視でき、且つコンタクタのON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子をONする前に三相交流の逆相を検出する逆相検出機能や溶着・溶断等の故障検出機能を備えた電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明は、交流電源回路を備え、交流電源回路から電動機用コンタクタ、ブレーキ用コンタクタを介してそれぞれ交流電動機、ブレーキに駆動電力を供給するように構成した電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置であって、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続し、交流電源回路の交流に同期したパルス信号を出力する検出回路と、検出回路からのパルス信号を処理し、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の正・異常を検出する正・異常検出機能を備えた信号処理手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置でおいて、交流電源回路は三相交流電源回路であり、交流電動機は三相交流電動機であり、電動機用コンタクタは三相用コンタクタであり、信号処理手段は三相用コンタクタである電動機用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続された検出回路からのパルス信号を処理し、三相交流電動機に供給させる三相電力の逆相を正・異常検出機能で検出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置において、検出回路は発光ダイオードとホトトランジスタからなるホトカプラを備え、ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に印加される交流電圧で前記発光ダイオードを発光させ、該光をホトトランジスタでパルス電気信号に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続し、交流電源回路の交流に同期したパルス信号を出力する検出回路と、検出回路からのパルス信号を処理し、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の正・異常を検出する正・異常検出機能を備えた信号処理手段を設けたので、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子が正常或いは異常(溶着状態か或いは溶断状態)を電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子がONする前にフェイエルセーフで検出できる。
【0016】
また、本発明によれば、信号処理手段は三相用コンタクタである電動機用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続された検出回路からのパルス信号を処理し、三相交流電動機に供給させる三相電力の逆相を正・異常検出機能で検出するので、電動機用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子がONする前に、三相交流電動機に供給させる三相電力が逆相であった場合、三相交流電動機に駆動電力を通電する前に該逆相を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置の回路構成を示す図である。
【図2】三相交流電圧と各検出回路からのパルス電気信号S、S、Sを示す図である。
【図3】本発明に係る電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置の逆相及び欠相検知の処理フローを示す図である。
【図4】三相交流電圧と各検出回路からのパルス電気信号S、S、Sを示す図である。
【図5】本発明に係る電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置の逆相及び欠相検知の処理フローを示す図である。
【図6】三相交流電圧と各検出回路からのパルス電気信号S、S、Sを示す図である。
【図7】本発明に係る電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置の逆相及び欠相検知の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本発明に係る電動巻上下装置の故障検出装置の回路構成を示す図であり、図1(a)は全体構成を示す図、図1(b)は検出回路の構成例を示す図である。図1において、1はR相、S相、T相の三相交流電源回路であり、該三相交流電源回路1から電動機用コンタクタ2を介して巻上下用の三相交流電動機3に駆動電力を供給するようになっている。また、三相交流電源回路1からブレーキ用コンタクタ4を介してブレーキ5に駆動電力を供給するようになっている。
【0019】
電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2a、2b、2cにはそれぞれ三相交流電源回路1のR相、S相、T相の交流電圧に同期したパルス電気信号S、S、Sを出力する検出回路6a、6b、6cが並列に接続され、該検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sは信号処理回路7に入力される。また、ブレーキ用コンタクタ4のON/OFF機械的接点4a、4bにはそれぞれ三相交流電源回路1のR相、T相の交流電圧に同期したパルス電気信号S、Sを出力する検出回路6d、6eが並列に接続され、該検出回路6d、6eからのパルス電気信号S、Sは信号処理回路7に入力される。
【0020】
図1(b)は電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2aに並列に接続された検出回路6aの構成例を示す図である。図示するように、検出回路6aは電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2aに抵抗器11とホトカプラ12のホトダイオード12bの直列回路が並列に接続され、更にホトダイオード12bに並列に逆耐圧保護用ダイオード13が接続されている。また、ホトカプラ12のホトトランジスタ12aのエミッターには抵抗器14が接続され、コレクタには+Vの直流電源が接続されている。電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2aが開(OFF)中に三相交流電源回路1のR相の電圧が抵抗器11を介してホトダイオード12bに印加され、該ホトダイオード12bは発光し、該発光を受けてホトトランジスタ12aがONとなり、パルス電気信号Sが信号処理回路7に出力される。この実施形態例に限らず、逆耐圧保護用ダイオードに代わり、全波整流式のホトカプラを用いても良い。パルス信号はホトトランジスタ12aのスレシホールド電圧を、抵抗器11で調節することで、パルス信号にすることができる。
【0021】
なお、検出回路6b、6c、6d、6eは検出回路6aと同じ構成であるのでその説明は省略する。また、8は非常停止用コンタクタであり、該非常用コンダクタ8を通して商用三相交流電源から三相交流電源回路1に三相電力が供給されるようになっている。なお、非常停止用コンダクタ8の各ON/OFF機械的接点8a、8b、8cにも検出回路6a、6b、6cを並列に接続し、各ON/OFF機械的接点の状態を監視するようにしている。図1においては、電動機用コンタクタ2、ブレーキ用コンタクタ4、非常停止用コンタクタ8はON/OFF機械的接点を有するコンタクタであるが、ON/OFF機械的接点ではなく、ON/OFF半導体素子を有するコンタクタでもよい。また、上記電動巻上下装置では、巻上下用の三相交流電動機3を有する例を示したが、これに横行用、走行用の三相交流電動機3を有する場合もある。
【0022】
上記回路構成の電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置において、電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点がOFF状態で、三相交流電源回路1からON/OFF機械的接点2a、2b、2cにそれぞれ三相交流電源回路1のR相、S相、T相の各交流電圧が印加されるとON/OFF機械的接点2a、2b、2cが溶着状態(接点が溶着した導通状態)でなければ、R、S、T相の交流電圧に同期したパルス電気信号S、S、Sが信号処理回路7に入力される。信号処理回路7は後に詳述するように、逆相検知機能を備えているから、三相交流電源回路1から電動機用コンタクタ2に入力される電力が逆相になっていれば、電動機用コンタクタ2をONして三相交流電動機3に逆相の電力を供給する前に、供給される三相電力の逆相を検出できる。
【0023】
また、電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2a、2b、2c、ブレーキ用コンタクタ4のON/OFF機械的接点4a、4b内に溶着等でコンタクタがOFFであるにもかかわらず、導通状態となっているものがあれば、このON/OFF機械的接点に各相の交流電圧が印加されてもON/OFF機械的接点の両端には電圧が現われない。そのため、ホトカプラ12は作動せず、ホトトランジスタ12aからパルス電気信号が出力されない。これによりON/OFF機械的接点の溶着を検知することができる。また、ON/OFF機械的接点2a、2b、2cやON/OFF機械的接点4a、4b内のいずれかが溶断状態である場合、電動機用コンタクタ2及びブレーキ用コンタクタ4をONとしても、溶断状態にある接点はOFF状態のままであるから、検出回路6からパルス電気信号が出力されるから、これから欠相状態を検知できる。以下、信号処理回路7で逆相及び欠相検知の処理手順を詳細に説明する。
【0024】
図2は電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2a、2b、2cに印加されるR相、S相、T相の交流電圧と各検出回路6a、6b、6cから出力されるパルス電気信号S、S、S、相配列が正常時のパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベル(図2(b))、相配列が逆相時のパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベル(図2(c))、接点溶着時のパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベル(図2(d))、接点溶断時のパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベル(図2(e))を示す図である。示す図である。図2(a)に示すように、電動機用コンタクタ2がOFF状態で三相交流電源回路1から三相交流が印加されると、検出回路6a、6b、6cから各相の交流電圧に同期したパルス電気信号S、S、Sが信号処理回路7に出力される。
【0025】
信号処理回路7はマイクロコンピュータで構成され、図2ではR相、S相、Tの各相の交流電圧が入力される毎に入力ポートのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルを読み込む。電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2a、2b、2cに正常相順の3相電圧が印加されていると、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルは図2(b)に示すようになる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(b)に示すようであれば、相順が正常であることを、電動機用コンタクタ2をONして、三相交流電動機3に駆動電力を供給する前に検知できる。
【0026】
また、例えば、S相及びT相の相順が逆でR相、T相、S相の相順であれば、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルは図2(c)に示すようになる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(c)に示すようであれば、S、T相順が逆相状態(逆相配列)であることを電動機用コンタクタ2をONして、三相交流電動機3に逆相の駆動電力を供給する前に検知できる。即ち、逆相の駆動電力を三相交流電動機3に供給する前に検知できる。
【0027】
また、例えば、電動機用コンタクタ2のS相のON/OFF機械的接点2bが溶着している場合は、電動機用コンタクタ2がOFF状態で三相交流電源回路1から三相交流が印加されてもON/OFF機械的接点2bが導通状態であるから、ホトカプラ12は不動作となり、検出回路6bからのパルス電気信号Sが低(L)レベルであるから、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(d)になる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(d)であれば、電動機用コンタクタ2が機械的接点2bが溶着状態(溶着配列)にあることを電動機用コンタクタ2をONする前に検知できる。
【0028】
また、例えば、電動機用コンタクタ2のS相のON/OFF機械的接点2bが溶断している場合は、電動機用コンタクタ2をONとし、三相交流電源回路1から三相交流が印加されてもON/OFF機械的接点2bがOFF状態であるから、検出回路6bからはS相の交流電圧と同期したパルス電気信号Sが信号処理回路7に出力されることになるから、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(e)になる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がON状態で、パルス電気信号S、S、Sの高(H)、低(L)レベルが図2(e)に示すようであれば、電動機用コンタクタ2が機械的接点2bが溶断状態(欠相配列)にあることを電動機用コンタクタ2をONすることにより検知できる。
【0029】
図3はマイクロコンピュータで構成される信号処理回路7の正常配列、欠相配列、逆相配列及び溶着配列の検知処理のフローを示す図である。先ず、ステップST1で、電動機用コンタクタ2をOFF状態として、入力割込毎に入力ポート読み込みを行う。次にステップST2でパルス電気信号S、S、Sの高(H)、低(L)レベルを検出し、電動機用コンタクタ2の三相交流が正常配列であるか否を判断し、正常配列(Y)である場合は、ステップST3で電動機用コンタクタ2をONとし、続いてステップST4で欠相配列か否かを判断し、欠相配列(Y)であったら、ステップST5で欠相検知を報知する。欠相配列でない(N)と判断された場合は、ステップST6で三相交流電動機3の正常運転を行う。
【0030】
前記ステップST2で、正常配列でない(N)と判断された場合、ステップST7に移行し、逆相配列か否かを判断し、逆相配列(Y)であったら、ステップST8で逆相検知を報知する。逆相配列でない(N)と判断された場合、ステップST9に移行し溶着配列か否かを判断し、溶着配列(Y)であったら、ステップST10で溶着検知を報知する。溶着配列でない(N)場合は、ステップST1に戻り処理を繰り返す。
【0031】
図2では、信号処理回路7はR相、S相、T相の各相の交流電圧が入力される毎に入力ポートのパルス電気信号S、S、Sを読み込んでいるが、図4では信号処理回路7はタイマ割り込みにより、所定時間(図ではt秒)毎に割り込みをかけ、入力ポートのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルを読み込んでいる。電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2a、2b、2cに正常相順の3相電圧が印加されていると、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルは図4(b)に示すようになる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図4(b)に示すようであれば、相順が正常であることを、電動機用コンタクタ2をONして、三相交流電動機3に駆動電力を供給する前に検知できる。
【0032】
また、例えば、S相及びT相の相順が逆でR相、T相、S相の相順であれば、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルは図2(c)に示すようになる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(c)に示すようであれば、S、T相順が逆相であることを電動機用コンタクタ2をONして、三相交流電動機3に逆相の駆動電力を供給する前に検知できる。
【0033】
また、例えば、電動機用コンタクタ2のS相のON/OFF機械的接点2bが溶着している場合は、電動機用コンタクタ2がOFF状態で三相交流電源回路1から三相交流が印加されてもON/OFF機械的接点2bが導通状態であるから、ホトカプラ12は不動作となり、検出回路6bからのパルス電気信号Sが低(L)レベルであるから、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(d)になる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(d)であれば、電動機用コンタクタ2が機械的接点2bが溶着状態にあることを電動機用コンタクタ2をONする前に検知できる。
【0034】
また、例えば、電動機用コンタクタ2のS相のON/OFF機械的接点2bが溶断している場合は、電動機用コンタクタ2をONとし、三相交流電源回路1から三相交流が印加されてもON/OFF機械的接点2bがOFF状態であるから、検出回路6bからはS相の交流電圧と同期したパルス電気信号Sが信号処理回路7に出力されることになるから、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図4(e)になる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がON状態で、パルス電気信号S、S、Sの高(H)、低(L)レベルが図4(e)に示すようであれば、電動機用コンタクタ2が機械的接点2bが溶断状態(欠相状態)にあることを電動機用コンタクタ2をONすることにより検知できる。
【0035】
図5はマイクロコンピュータで構成される信号処理回路7の正常配列、欠相配列、逆相配列及び溶着配列の検知処理のフローを示す図である。先ず、ステップST21で、電動機用コンタクタ2をOFF状態として、所定時間毎(図では2mS毎)に入力ポート読み込みを行う。次にステップST22でパルス電気信号S、S、Sの高(H)、低(L)レベルを検出し、電動機用コンタクタ2の三相交流が正常配列であるか否を判断し、正常配列(Y)である場合は、ステップST23で電動機用コンタクタ2をONとする。続いてステップST24で欠相配列か否かを判断し、欠相配列である(Y)場合は、ステップST25で欠相検知を報知する。欠相配列でない(N)場合は、ステップST26で三相交流電動機3の正常運転を行う。
【0036】
前記ステップST22で、正常配列でない(N)と判断された場合、ステップST27に移行し、逆相配列か否かを判断し、逆相配列(Y)であったら、ステップST28で逆相検知を報知する。逆相配列でない(N)と判断された場合、ステップST29に移行し、溶着配列であった(Y)場合は、ステップST30で溶着検知を報知し、溶着配列でない(N)場合は、前記ステップST21に戻り処理を繰り返す。
【0037】
図6は信号処理回路7は1相の交流電圧(図ではR相の交流電圧)を基準に割り込みをかけ、入力ポートのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルを読み込んいる図である。電動機用コンタクタ2のON/OFF機械的接点2a、2b、2cに正常相順の3相電圧が印加されていると、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルは図6(b)に示すようになる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図6(b)に示すようであれば、相順が正常であることを、電動機用コンタクタ2をONして、三相交流電動機3に駆動電力を供給する前に検知できる。
【0038】
また、例えば、S相及びT相の相順が逆でR相、T相、S相の相順であれば、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルは図6(c)に示すようになる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、検出回路6a、6b、6cからのパルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図6(c)に示すようであれば、S、T相順が逆相であることを電動機用コンタクタ2をONして、三相交流電動機3に逆相の駆動電力を供給する前に検知できる。
【0039】
また、例えば、電動機用コンタクタ2のS相のON/OFF機械的接点2bが溶着している場合は、電動機用コンタクタ2がOFF状態で三相交流電源回路1から三相交流が印加されてもON/OFF機械的接点2bが導通状態であるから、ホトカプラ12は不動作となり、検出回路6bからのパルス電気信号Sが低(L)レベルであるから、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図6(d)になる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がOFF状態で、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図2(d)であれば、電動機用コンタクタ2が機械的接点2bが溶着状態にあることを電動機用コンタクタ2をONする前に検知できる。
【0040】
また、例えば、電動機用コンタクタ2のS相のON/OFF機械的接点2bが溶断している場合は、電動機用コンタクタ2をONとし、三相交流電源回路1から三相交流が印加されてもON/OFF機械的接点2bがOFF状態であるから、検出回路6bからはS相の交流電圧と同期したパルス電気信号Sが信号処理回路7に出力されることになるから、パルス電気信号S、S、Sの高(H)・低(L)レベルが図6(e)になる。信号処理回路7は電動機用コンタクタ2がON状態で、パルス電気信号S、S、Sの高(H)、低(L)レベルが図6(e)に示すようであれば、電動機用コンタクタ2が機械的接点2bが溶断状態(欠相状態)にあることを電動機用コンタクタ2をONすることにより検知できる。
【0041】
図7はマイクロコンピュータで構成される信号処理回路7の正常配列、欠相配列、逆相配列及び溶着配列の検知処理のフローを示す図である。先ず、ステップST41で、電動機用コンタクタ2をOFF状態として、基準相割込毎(図ではR相毎)に入力ポート読み込みを行う。次にステップST42 でパルス電気信号S、S、Sの高(H)、低(L)レベルを検出し、電動機用コンタクタ2の三相交流が正常配列であるか否を判断し、正常配列(Y)である場合は、ステップST43で電動機用コンタクタ2をONとし、続いてステップST44で欠相配列か否かを判断し、欠相配列(Y)の場合は、ステップST45で欠相検知を報知する。欠相配列でない(N)の場合は、ステップST46で三相交流電動機3の正常運転を行う。
【0042】
前記ステップST42で、正常配列でない(N)と判断された場合、ステップST47に移行し、逆相配列か否かを判断し、逆相配列(Y)であったら、ステップST48で逆相検知を報知する。逆相配列でない(N)と判断された場合、ステップST49に移行し溶着配列か否かを判断し、溶着配列(Y)であったら、ステップST48で溶着検知を報知する。溶着配列でない(N)と判断された場合は、前記ステップST41に戻り処理を繰り返す。
【0043】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。上記実施形態例では、電動巻上下装置用駆動回路の電動機用コンタクタ2及びブレーキ用コンタクタ4には、ON/OFF機械的接点を備えた電動巻上下装置用駆動回路を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ON/OFF半導体素子を備えた電動機用コンタクタ2及びブレーキ用コンタクタ4を備えた電動巻上下装置用駆動回路でも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続し、交流電源回路の交流に同期したパルス信号を出力する検出回路を設け、検出回路からのパルス信号を処理し、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の正・異常を検出する正・異常検出機能を備えた信号処理手段を設けたので、電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子が正常或いは異常(溶着状態か或いは溶断状態)を電動機用コンタクタ及び/又はブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子がONする前にフェイエルセーフで検出できる電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置として利用できる。
【0045】
また、信号処理手段は三相用コンタクタである電動機用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続された検出回路からのパルス信号を処理し、三相交流電動機に供給させる三相電力の逆相を正・異常検出機能で検出するので、電動機用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子がONする前に、三相交流電動機に供給させる三相電力が逆相であった場合、三相交流電動機に駆動電力を通電する前に該逆相を検出できる電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置として利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 三相交流電源回路
2 電動機用コンタクタ
3 三相交流電動機
4 ブレーキ用コンタクタ
5 ブレーキ
6a,6b,6c,6d,6e 検出回路
7 信号処理回路
8 非常停止用コンタクタ
11 抵抗器
12 ホトカプラ
13 逆耐圧保護用ダイオード
14 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源回路を備え、交流電源回路から電動機用コンタクタ、ブレーキ用コンタクタを介してそれぞれ交流電動機、ブレーキに駆動電力を供給するように構成した電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置であって、
前記電動機用コンタクタ及び/又は前記ブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続し、前記交流電源回路の交流に同期したパルス信号を出力する検出回路と、
前記検出回路からのパルス信号を処理し、前記電動機用コンタクタ及び/又は前記ブレーキ用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子の正・異常を検出する正・異常検出機能を備えた信号処理手段を設けたことを特徴とする電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置において、
前記交流電源回路は三相交流電源回路であり、
前記交流電動機は三相交流電動機であり、
前記電動機用コンタクタは三相用コンタクタであり、
前記信号処理手段は前記三相用コンタクタである前記電動機用コンタクタの各ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に並列に接続された前記検出回路からのパルス信号を処理し、前記三相交流電動機に供給させる三相電力の逆相を正・異常検出機能で検出することを特徴とする電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置において、
前記検出回路は発光ダイオードとホトトランジスタからなるホトカプラを備え、前記ON/OFF機械的接点又は各ON/OFF半導体素子に印加される交流電圧で前記発光ダイオードを発光させ、該光を前記ホトトランジスタでパルス電気信号に変換することを特徴とする電動巻上下装置用駆動回路の故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75294(P2012−75294A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220187(P2010−220187)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】