説明

電動弁駆動装置

【課題】 電動弁駆動装置により駆動されるバルブの開度情報を記録可能な運転情報記録手段を備えた電動弁駆動装置を提供する。
【解決手段】 モータ1と、前記モータ1の回転速度を減速する減速歯車列8と、前記減速歯車列8に接続されバルブステム21を駆動するドライブスリーブ2と、前記減速歯車列8の途中から取り出した回転速度を減速する減速機構33と、前記減速機構33の出力軸の回転量をバルブ開度情報として表示する開度表示装置32を有する電動弁駆動装置3であって、前記バルブ開度情報を挿脱自在な記録媒体36に書き込む書き込み手段37と、前記書き込み手段37を制御する制御装置38と、を備えることにより上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等の各種プラントにおける電動弁駆動装置の運転情報を記録可能な電動弁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の大型のプラントにおいては、数多くの電動弁駆動装置が設置されている。たとえば、原子力発電所では1プラント当たり数百台にも及ぶ電動弁駆動装置が設置されている。これらの電動弁駆動装置には、必要に応じてバルブの開度を表示する現場開度表示器が設けられているものがある。また、バルブの開度情報をポテンショメータ等によりアナログ信号として取り出し、電気信号または光信号に変換して有線によりプラント中央制御室へ伝送している場合もある。それはバルブ開度情報が、この種の電動弁駆動装置にとってもっとも重要な基本情報だからである。
【0003】
さらに、電動弁の開度情報を携帯型無線装置により収集し、無線通信によってプラント中央制御室へ伝送する装置も存在する(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
図8はバルブの開度を表示する現場開度表示器を備えた従来技術による電動弁駆動装置の概略構成を示すものである。モータからバルブステムを駆動するドライブスリーブまでは、一般に大きな減速比が要求される場合が多いことから、減速歯車列は最終段にウォーム歯車を採用した多段構成とされている。そして、バルブの開度情報は、この多段構成の減速歯車列の途中から回転量を取り出し、減速機構によりさらに減速して最終的にバルブ開度表示器の指針の回転角度が270度以下となるようにしてバルブ開度を表示している。多くのプラントでは、電動弁駆動装置の現場開度を表示するのに、このような機械式開度表示器が採用されている。
【特許文献1】特開平5−28391号公報
【特許文献2】特開2004−62537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来技術のうち、現場開度表示器を備えただけのものは、電動弁駆動装置が設置されている現場に出向かない限りバルブの開度情報を得ることができない。また、プラントの定期点検時には電動弁駆動装置も停止しており、プラント運転時の電動弁駆動装置のバルブ開度情報を得ることはできない。したがって、電動弁駆動装置の劣化診断等を行うためにバルブ開度情報を得ようとすると、プラント定期点検時に改めて電動弁駆動装置を運転してバルブ開度情報を取得する必要がある。1プラントに設置されている電動弁駆動装置の台数が少なければ改めてデータを取得することもさほど負担とならないが、電動弁駆動装置の設置台数が多くなると、データの取得に長時間を要してしまうという問題があった。
【0006】
また、有線を通じてバルブ開度情報を中央制御室へ送信する場合には、予め通信ケーブルや光ファイバーを敷設しておく必要があるし、そのためには多大な設備投資を必要とするという問題があった。その結果、バルブの開度情報をプラント中央制御室へ伝送可能にしている例は少なく、多くの場合、バルブ開度情報はプラント中央制御室へ伝送されるようにはなっていない。したがって、バルブの開度情報は、現場へ行かなければ知ることができないし、時系列としてのバルブ開度の履歴を把握することもできないのが現状である。
【0007】
さらに、無線を通じてバルブ開度情報を中央制御室に送信する場合には、有線を通じて行う場合に比較すると設備費用は安価であるものの既存プラントに適用するには、依然として障害がある。すなわち、無線でデータを送信する場合には、伝送距離に制約があるし、発電プラント等には数多くの重要機器が設置されているため、混信によるトラブルを防止するという観点から実際には無線によるデータ伝送はなされていない。
【0008】
そこで、本発明は必要な時に、必要な運転情報を取得可能な電動弁駆動装置を実現することを課題とする。すなわち、プラントの運転状態の如何に拘わらず、必要なときはいつでもバルブおよび電動弁駆動装置の運転情報の取得が可能な電動弁駆動装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、モータと、前記モータの回転速度を減速する減速歯車列と、前記減速歯車列に接続されバルブステムを駆動するドライブスリーブと、前記減速歯車列の途中から取り出した回転速度を減速する減速機構と、前記減速機構の出力軸の回転量をバルブ開度情報として表示する開度表示装置を有する電動弁駆動装置であって、前記バルブ開度情報を挿脱自在な記録媒体に書き込む書き込み手段と、前記書き込み手段を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする電動弁駆動装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動弁駆動装置において、バルブ開度情報とともにモータの電流情報、電動弁駆動装置のハウジングの振動情報、負荷トルク情報のいずれか1以上の運転情報を記録可能としたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の電動弁駆動装置において、前記記録媒体が半導体記録媒体または磁気記録媒体であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動弁駆動装置において、前記書き込み手段と前記記録媒体および前記制御装置を、電動弁駆動装置とは別の筐体内に配置したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動弁駆動装置において、前記書き込み手段と前記記録媒体および前記制御装置を、前記開度表示装置の筐体内に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の電動弁駆動装置によれば、運転頻度の少ない電動弁駆動装置であってもバルブの開度情報を確実に把握することができる。また、プラント運転中には近づくことが困難な場所に設置された電動弁駆動装置であっても、プラントの運転停止後に記録媒体を回収することでプラント運転中のバルブ開度情報を容易に把握することができる。
【0015】
請求項2記載の電動弁駆動装置によれば、バルブの開度情報の他に、モータの電流値、電動弁駆動装置のハウジングの振動値、負荷トルク値を記録できるので、電動弁駆動装置について信頼性の高い診断や解析が可能となる。
【0016】
請求項3記載の電動弁駆動装置によれば、記録する情報量の多寡によって適正な記録容量の情報記録媒体を選択することができるので、経済的な電動弁駆動装置を実現することができる。
【0017】
請求項4または請求項5記載の電動弁駆動装置によれば、電動弁駆動装置を分解することなく、電動弁駆動装置の運転情報が記録された記録媒体を回収できるので、極めて短時間のうちに回収作業を行なうことができる。ここで、現場における作業時間が短時間で済むということは、とりわけ原子力発電所において大きなメリットがある。すなわち、原子力発電所では人体に対する放射線被曝時間、ひいては放射線被曝量を減らすことができるということは大きな利点である。それに加えて、定期点検に要する時間を短縮することも可能となり、プラント全体の設備利用率の向上を図ることができる。
【0018】
また、電動弁駆動装置を分解しないで記録媒体を回収できることから、再組立の必要もなく、電動弁駆動装置のシール性に悪影響を及ぼす心配もなくなる。さらに、電動弁駆動装置とは別の筐体内に記録機器を配置したことで、既存設備への適用が容易になる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本発明においても、モータ1の回転動力をドライブスリーブ2に伝達する動力伝達系統は、従来技術の電動弁駆動装置3と共通している。そこで、先ず電動弁駆動装置3の基本構成と作用について説明する。図1は、電動弁駆動装置3の概略構造を示す一部断面斜視図である。図1に示すように、電動弁駆動装置3には、箱状のハウジング4のほぼ中央部に、前後方向(便宜上図1における右側を前方、左側を後方とする。)を向くウォーム軸5が枢支されている。
【0020】
ウォーム軸5は、複数の平歯車等6,7からなる減速歯車列8と、クラッチ機構9とを介して、ハウジング4の後部に設けられたモータ1に連係され、モータ1の作動により、正逆回転(以下、便宜上後述するバルブ装置における弁体11を閉じる方向の回転を正転、同じく開く方向の回転を逆転という。)させられるとともに、1対の平歯車6,7を介して、手動操作用のハンドル12が設けられたハンドル軸13にも連係され、クラッチ機構9を切った状態で、ハンドル12を回転させることによっても正逆回転させられるようになっている。
【0021】
ウォーム軸5には、筒状のウォーム14がスプライン15結合により軸線方向に相対移動可能、かつ相対回転不能として外嵌されている。ウォーム軸5の前端部には、スリーブ16がウォーム14に対して軸線方向に相対移動不能、かつウォーム軸5とウォーム14に対して相対回転可能として設けられ、このスリーブ16には、ウォーム14を軸線方向に付勢する複数の皿ばねよりなるトルクバランスばね17が外嵌されている。
【0022】
ウォーム14と噛合するウォームホイール18は、上下方向を向く筒状のステムナット19が内嵌されたドライブスリーブ2の外周に一体的に形成されている。ステムナット19の内面に刻設された雌ねじには、上下方向を向くバルブステム21の上部に形成された雄ねじが螺合している。バルブステム21の下端には、バルブ装置(図示略)における弁体11が連結され、バルブステム21は昇降のみ可能で軸線まわりの回転ができないように拘束されている。したがって、ウォーム14が軸線方向に移動することなく回転すると、ウォームホイール18とステムナット19とが一体となって正逆回転させられ、そのときの雌ねじと雄ねじとの螺合により、バルブステム21と弁体11とが一体となって下降または上昇させられて、バルブ装置が閉弁または開弁させられるようになっている。
【0023】
ウォーム軸5の比較的後部に刻設された小ウォーム22には、小ウォームホイール23が噛合し、この小ウォームホイール23の軸である回転数検出軸24は、バルブステム21の上限及び下限を自由に設定するための弁位置リミットスイッチ25に連係されている。
【0024】
また、スリーブ16の後部外周に形成されたラック26には、ピニオン27が噛合し、そのピニオン27の軸であるトルク検出軸28は、弁体11を開閉させるトルクが予め定めた設定値に達することにより、より正確にはウォーム14の軸線方向の移動量が予め定めた設定値に達することにより、モータ1の作動を停止させるようにしたロータリー式のトルクリミットスイッチ29を備えるトルク検出器31に連係されている。
【0025】
このような電動弁駆動装置3においては、モータ1によりウォーム軸5が正転させられると、それに伴ってウォーム14が同方向に回転させられ、最初はバルブステム21側の摩擦抵抗等により、ウォームホイール18が停止した状態で、ウォーム14とスリーブ16とが軸線方向に移動させられ、トルクバランスばね17が圧縮される。このトルクバランスばね17の圧縮によるウォーム14の軸線方向の付勢力がバルブステム21側の摩擦抵抗等より大となると、ウォーム14とスリーブ16との軸線方向の移動は停止し、ウォーム14の回転力はすべてウォームホイール18に伝達され、ウォームホイール18とドライブスリーブ2とステムナット19とが一体となって正転させられ、バルブステム21と弁体11とが一体となって下降し、バルブ装置は閉弁される。
【0026】
弁体11が閉弁途中で異物を挟み込んだような場合は、バルブステム21の下降抵抗が増大して、ウォームホイール18の正転が停止させられ、その間にウォーム14とスリーブ16とが軸線方向に移動させられ、トルクバランスばね17が上記の状態よりさらに圧縮される。このトルクバランスばね17の圧縮量、すなわちスリーブ16の軸線方向の移動量が予め定めた設定値に達すると、トルクリミットスイッチ29が作動し、モータ1の正転が停止させられ、モータ1の焼き付きが防止されるようになっている。
【0027】
以上、モータ1が正転する場合についてのトルクリミットスイッチ29の動作を説明したが、モータ1が逆転する場合、すなわちバルブが開動作する場合についてもトルクリミットスイッチ29は同様にして作動する。
【0028】
次に、バルブの開度を表示する開度表示装置32について説明する。本発明に係るバルブ開度表示装置32は、図2に示すようにして構成される。すなわち、モータ1と、前記モータ1の回転速度を減速する減速歯車列8と、前記減速歯車列8に接続されバルブステム21を駆動するドライブスリーブ2と、前記減速歯車列8の途中から取り出した回転速度を減速する減速機構33と、前記減速機構33の出力軸の回転量を検出する開度検出器34と、バルブ開度情報を表示する開度表示器35を有し、前記バルブ開度情報を挿脱自在な記録媒体36に書き込む書き込み手段37と、前記書き込み手段37を制御する制御装置38とを備える。ここで、減速歯車列8の途中から取り出した回転速度を減速する減速機構33に接続する開度検出器34には、ロータリーエンコーダを用いることができる。このロータリーエンコーダは、電動弁駆動装置3内に配置される。なお、本発明に用いるロータリーエンコーダとしては、アブソリュート式が適している。アブソリュート式ロータリーエンコーダを用いると、モータ1の回転量と弁体11の絶対的位置関係を容易に把握することができるという利点がある。
【0029】
ここで、制御装置38はCPUとRAMおよびプログラムを収納したROMを備えている。また、開度表示装置32内には時計回路39が設けられている。なお、記録媒体36には一般市場で販売されている半導体式メモリーカードまたは磁気式メモリーカードが使用でき、書き込み手段37には、公知技術であるカード書き込み手段37を使用することができる。
【0030】
このような構成とすることにより、弁体11の全開または全開位置からモータ1を始動させると、減速歯車列8および減速機構33によりモータ1の回転速度は減速され、開度検出器34としてのロータリーエンコーダに伝達される。そして、ロータリーエンコーダにより、回転量はデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された信号は、信号ライン41を経由して制御装置38に送られ、制御装置38からバルブ開度信号が開度表示器35に送られてバルブ開度が表示される。そして、制御装置38から当該バルブの識別番号とともに、電動弁駆動装置3が作動すると、作動時刻情報とバルブ開度情報が信号ライン41を経由して書き込み装置37に送られ、書き込み装置37により記録媒体36に書き込まれる。このようにして、本発明によれば電動弁駆動装置3の実運転状態でのバルブの開度情報を確実に記録することができる。したがって、運転頻度の少ない電動弁駆動装置3であってもバルブ開度情報を確実に把握することができる。そして、必要に応じて記録媒体36を回収して運転情報を取得することができる。また、プラント運転中には近づくことが困難な場所に設置された電動弁駆動装置3であっても、プラントの運転停止後に記録媒体36を回収することで電動弁駆動装置3の運転状況を容易に把握することができる。
【0031】
図3は、別の実施形態を示すものである。図2の実施例ではバルブの開度情報と作動時刻情報だけを記録媒体36に記録するようにしていたが、図3に示す実施例ではバルブの開度情報に加えてモータ1に供給される電流値と、電動弁駆動装置3のハウジング4に取付けた振動検出器42の振動値、および電動弁駆動装置3の負荷トルク値も記録可能なようにされている。具体的には、図3に示すようにバルブ開度表示装置32の筐体内に、制御装置38や書き込み装置37等に加えて、振動検出器42と電流検出器43およびトルク検出器44からの各アナログデータをデジタルデータに変換するためのA/D変換器45が設けられている。一方、振動検出器42や電流検出器43は電動弁駆動装置3のハウジング4内に設けられている。
【0032】
ここで、振動検出器42を電動弁駆動装置3のハウジング4に取り付ける際には、一般に市販されている汎用の振動センサを用いることができる。振動センサをハウジング4の一部に取り付け、開度表示装置32内に設けられたA/D変換器45とは信号線で接続される。
【0033】
また、モータ1の電流検出はモータ1へ電流を供給している電源線に小型のクランプメータを装着することにより行うことができる。そして、クランプメータの出力信号を信号線により開度表示装置32内に設けられたA/D変換器45へ送られるようにされている。
【0034】
さらに、電動弁駆動装置3の負荷トルク検出は、スリーブ16の後部外周に形成されたラック26、ピニオン27の軸に装着されたロータリー式のトルクリミットスイッチ29を利用して実現することができる。すなわち、トルクリミットスイッチ29に替えて、またはトルクリミットスイッチ29とともに、ピニオン27の軸にポテンショメータ等を装着して電気信号を得ることで実現することができる。そして、この電気信号は信号線により開度表示装置32内に設けられたA/D変換器45へ送られるようにされている。なお、ポテンショメータの替わりにアブソリュート式のロータリーエンコーダを用いることもできる。ロータリーエンコーダを用いた場合には、A/D変換器45を省略することができる。
【0035】
ここで、バルブ開度表示装置32は、電動弁駆動装置3のハウジング4とは別の筐体として構成されている。このバルブ開度表示装置32の筐体には、先に述べたA/D変換器45の他に、バルブの開度を表示するための開度表示器35と、バルブ開度情報を記録媒体36に書き込む書き込み装置37と、時計回路39と、これらの機器およびロータリーエンコーダからのデータを制御する制御装置(CPU)38が設けられている。また、書き込み装置37には、記録媒体36が外部から挿脱自在になるようバルブ開度表示装置32の筐体の表面には、カード挿入口46が設けられている。
【0036】
図4は、本発明によるバルブ開度表示装置32の外観を示す図面である。図4において開度表示装置32の下面には電動弁駆動装置3へ取り付けるため、外周面に螺子が設けられた管状体47が設けられている。そして、電動弁駆動装置3の外面に設けられた雌ねじに、前記管状体47の螺子をねじ込んで開度表示装置32を電動弁駆動装置3に取り付けることができる。この管状体47内には電動弁駆動装置3のハウジング4内に設置された開度検出器34であるロータリーエンコーダやモータ1の電流検出器43等の各検出器と制御装置38等を接続するための電線が配されている。また、開度表示装置32の正面となる面には、バルブの全開、全開位置および必要に応じて中間開度を表示するための表示ランプ48が設けられ、さらに記録媒体36を書き込み装置37に挿脱するためのカード挿入口46が設けられている。図4に示す開度表示装置32には、バルブ開度を全開、全閉、中間開度といったような限界表示としているが、必要に応じてバルブ開度は数値表示することもできる。また、電動弁駆動装置3の設置環境が悪く、塵挨等が多い場所であればカード挿入口46から塵挨が侵入するのを防止するため、カード挿入口46に塵挨侵入を防止するためのカバーが取り付けられる。
【0037】
このような開度表示装置32を備えた電動弁駆動装置3において、バルブ開度等の運転情報を記録するには、プラントの運転開始に先立って開度表示装置32のカード挿入口46にメモリーカード等の記録媒体36を挿入する。記録媒体36が挿入されると、先ず当該電動弁駆動装置3の識別番号が記録される。そして、プラント運転時に電動弁駆動装置3が作動すると、バルブの開度情報等がその操作時刻情報とともに記録媒体36に記録されるようにされている。その後、必要なときに記録媒体36を回収して、公知の読み出し装置を介してパソコンで記録情報を読み出すことにより、バルブの開度情報等を把握することができる。
【0038】
本発明によれば、開度表示装置32内にCPUを備えた制御装置38、書き込み装置37、時計回路39、A/D変換器45を設けているので、開度表示装置32の筐体49と電動弁駆動装置3のハウジング4との間の接続は、信号線および電源線だけとなるので機器配置の自由度が向上する。さらに、記録情報の回収はカード挿入口46からカードを回収するだけでよいので、電動弁駆動装置3を何ら分解することなくカードを回収することができる。また、バルブ開度情報の他にもモータ1の電流値、電動弁駆動装置3のハウジング振動値、負荷トルク値を記録できるので、信頼性の高い電動弁駆動装置3の診断・解析が可能となる。
【0039】
次に、本発明に係る電動弁駆動装置3により記録されたバルブ開度等の運転情報について説明する。図5は記録媒体36に記録されたバルブ開度情報を公知のデータ読み出し器およびパソコンを用いて読み出して図示したものである。横軸は時間軸を表し、縦軸はバルブ開度を示している。バルブには各種のものがあるが、図の例は仕切弁のデータを示している。したがって、電動弁駆動装置停止時のバルブの状態は、全開か全閉のいずれかとされており、いわゆる中間開度状態がない。もちろん仕切弁であっても、バルブ開度が中間開度状態にある場合には、記録されるデータは全開でも全閉でもないバルブ中間開度を示すことになる。
【0040】
図5において、t1はバルブの全閉状態から開方向にモータが始動し出した時刻である。t2はバルブが全開状態に達してモータが停止した時刻である。したがって、t1からt2に至る時間がバルブの開動作に要した時間となる。一方、t3はバルブの全開状態から閉方向にモータが始動し出した時刻であり、t4はバルブが全閉状態に達してモータが停止した時刻である。したがって、t3からt4に至る時間がバルブの閉動作に要した時間となる。
【0041】
このようにして、本発明によればプラントの運転中であっても、各現場に設置された電動弁駆動装置3から記録媒体36を回収して、記録媒体36に記録されたバルブの開度情報を読み出すことにより、電動弁駆動装置3の運転情報を容易、かつ確実に知ることができるようになる。すなわち、過去のある時刻に当該バルブの開度が如何なる状態にあったかを確実に把握することが可能になる。
【0042】
図6は記録媒体36に記録されたバルブ駆動用モータ1の電流値を読み出して経時的に表したものである。横軸は時間軸であり、縦軸はモータ1に供給された実際の電流値を示している。図5に表わされたデータと照らし合わせると、バルブ開度が全閉状態t1から全開状態t2へと変化する際、またはバルブ開度が全開状態t3から全閉状態t4へと変化する際にモータ電流値が記録されている。すなわち、バルブの開度状態が変化するときにはモータ1に電流が供給され、モータ1が回転しているからである。ここで、バルブ開度が変化し始める際t1,t3に大きな電流値が記録されているのは、モータ1に大きな始動電流が流れるためである。また、バルブ開度が変化し終える際t2,t4にも大きな電流値が記録されているのは、弁体11が弁座等にトルクシートされることに基づくものである。一方、バルブが中間開度にあるときには、モータ1には定常電流しか流れないことから、モータ1の電流値は比較的小さな値となっている。なお、図6においては時間軸が圧縮されているため、一見するとモータ電流値の変動は少ないが、時間軸を拡大すればモータ電流には多くのリップルが重畳している。
【0043】
図7は電動弁駆動装置3のハウジング4に取付けた振動検出器42の振動記録を読み出して経時的に表したものである。横軸は時間軸であり、縦軸は振動値の大きさを示している。振動値の記録波形は、モータ1の電流波形とほぼ同様な波形となるが、モータ1が定常回転数で運転されている場合であっても、振動値はモータ電流値のように大きく低下することはなく、ある程度の大きさを示す傾向にある。
【0044】
また、トルク情報については図示を省略するが、負荷トルク検出器44からの出力信号を記録して、横軸に時間軸を、縦軸に負荷トルクを表すトルク情報を取得することができる。
【0045】
このようにして、本発明によれば、必要な時に必要な運転情報を取得可能な電動弁駆動装置3を確実に実現することができる。すなわち、プラントの運転状態の如何を問わず、必要なときはいつでも電動弁駆動装置3の運転情報の取得が可能な電動弁駆動装置3を実現することができる。
【0046】
なお、本発明は種々の変形実施をすることができる。たとえば前記の実施例ではモータ1へ供給する電流値を検出記録するようにしているが、電流値に替えて電力値を検出記録するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】電動弁駆動装置の概略構造を示す一部断面斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施例を示すブロック図である。
【図4】本発明による開度表示装置を示す外観図である。
【図5】本発明による記録媒体に記録されたバルブ開度情報の1例を示す図面である。
【図6】本発明による記録媒体に記録されたモータ電流情報の1例を示す図面である。
【図7】本発明による記録媒体に記録されたモータ振動情報の1例を示す図面である。
【図8】従来例による電動弁駆動装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1 モータ
2 ドライブスリーブ
3 電動弁駆動装置
4 ハウジング
8 減速歯車列
21 バルブステム
32 開度表示装置
33 減速機構
36 記録媒体
37 書き込み手段(書き込み装置)
38 制御装置
49 開度表示装置の筐体





【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの回転速度を減速する減速歯車列と、前記減速歯車列に接続されバルブステムを駆動するドライブスリーブと、前記減速歯車列の途中から取り出した回転速度を減速する減速機構と、前記減速機構の出力軸の回転量をバルブ開度情報として表示する開度表示装置を有する電動弁駆動装置であって、前記バルブ開度情報を挿脱自在な記録媒体に書き込む書き込み手段と、前記書き込み手段を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする電動弁駆動装置。
【請求項2】
バルブ開度情報とともにモータの電流情報、電動弁駆動装置のハウジングの振動情報、負荷トルク情報のいずれか1以上の運転情報を記録可能としたことを特徴とする請求項1記載の電動弁駆動装置。
【請求項3】
前記記録媒体が半導体記録媒体または磁気記録媒体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電動弁駆動装置。
【請求項4】
前記書き込み手段と前記記録媒体および前記制御装置を、電動弁駆動装置とは別の筐体内に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動弁駆動装置。
【請求項5】
前記書き込み手段と前記記録媒体および前記制御装置を、前記開度表示装置の筐体内に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動弁駆動装置。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29428(P2006−29428A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208254(P2004−208254)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(500054329)原電事業株式会社 (11)
【出願人】(000228419)日本ギア工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】