説明

電動弁

【課題】電動弁の全閉ストッパ部の当接によって発生する衝撃音による居住環境の悪化や、電動弁の短命化を防止する。
【解決手段】電動モータのロータ7の回転に伴って回転し、弁本体5に固定された弁軸ホルダ11と螺合する弁軸10と、弁軸10が回転することにより、弁本体5内の弁座4と接離する弁体12とを備えた電動弁1において、ロータ7の回転に伴って回転する全閉上ストッパ部14cと、弁軸ホルダ11に設けられ、電動弁1の全閉時において、全閉上ストッパ部14cに当接して弁軸10の弁閉方向の回転を規制する全閉下ストッパ部11cと、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに衝突する際の衝撃を緩和する緩衝部材15を備える電動弁1等。緩衝部材15は、全閉上ストッパ部14cを、全閉下ストッパ部11cへの衝突方向と反対側に付勢するコイルばねとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムにおける冷媒の流量制御等に使用される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記電動弁として、例えば、特許文献1には、図12に示すように、弁室51に連通する第1流路52及び第2流路53を有し、第2流路53の弁室連通部に弁シート54を設けた弁本体55と、弁本体55のシート弁座56に接離する棒状のニードル弁57と、円筒状の密閉ケース59と、密閉ケース59の外側に配置されるステータコイル67と、密閉ケース59の内側にステータコイル67の通電励磁によって回転して弁開閉方向に移動可能で、筒状のスリーブ62及び該スリーブ62の外側に止環66で固定された筒状の永久磁石63を有するロータ64と、ロータ64の回転によるねじ送り作用でニードル弁57を開閉作動させる雄ねじ管61とを備え、密閉ケース59の下蓋60が弁本体55に溶接固定された電動弁50が記載されている。
【0003】
この電動弁50には、スリーブ62の下端部に全閉上ストッパ部62aが突設され、フランジ体58に全閉下ストッパ部58aが突設され、ニードル弁57の閉弁時に、閉弁規制ストッパ62aが全閉下ストッパ部58aに当接することにより、閉弁時においてロータ64がさらに下降することを規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3310042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の電動弁50においては、全開位置から全閉位置に至るまでの全ストロークを超えるパルス数で電動弁を閉弁駆動し、電動弁の開度を強制的に全閉状態へ遷移させるイニシャライズ処理を行う際などに、ロータ64の回転に伴って下降する全閉上ストッパ部62aが全閉下ストッパ部58aに当接して頻繁に衝撃音が発生し、この電動弁50を室内用の空調機等に用いると、居住環境の悪化に繋がるという問題があった。
【0006】
また、電動弁50では、スリーブ62が1回転する間に全閉上ストッパ部62a及び全閉下ストッパ部58aが当接又は非当接を行うように構成する必要があるため、両ストッパ部62a、58aの当接面の面積が小さく設定されていることから、上記衝撃による両ストッパ部62a、58aの摩耗、劣化により、電動弁50の製品寿命が短くなる原因になるという問題があった。
【0007】
特に、上記電動弁50のように、ニードル弁57がシート弁座56に着座してから全閉上ストッパ部62aが全閉下ストッパ部58aに当接する全閉状態となる間に、ニードル弁57をシート弁座56に付勢するコイルばね70を有するものは、このコイルばね70によって、全閉上ストッパ部62aが全閉下ストッパ部58aに衝突する際の衝撃が多少緩和されるが、そのようなコイルばね70が設けられていない簡易構造の電動弁については、上記衝撃による問題が顕著に現れる。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の電動弁における問題点に鑑みてなされたものであって、全閉ストッパ部の当接によって発生する衝撃音による居住環境の悪化や、電動弁の短命化を防止することのできる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、電動弁であって、電動モータのロータの回転に伴って回転し、弁本体に固定された第1のねじ部材と螺合する第2のねじ部材と、該第2のねじ部材が回転することにより、前記弁本体内の弁座と接離する弁体とを備えた電動弁において、前記ロータの回転に伴って回転する全閉上ストッパ部と、前記第1のねじ部材に設けられ、該電動弁の全閉時において、前記全閉上ストッパ部に当接して前記第2のねじ部材の弁閉方向の回転を規制する全閉下ストッパ部と、前記全閉上ストッパ部が前記全閉下ストッパ部に衝突する際の衝撃を緩和する緩衝部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、緩衝部材によって、全閉上ストッパ部が全閉下ストッパ部に衝突する際の衝撃を緩和することができるため、両ストッパ部の当接によって発生する衝撃音を軽減し、両ストッパ部への負荷を軽減することができ、居住環境の向上や、電動弁の長寿命化を図ることができる。
【0011】
上記電動弁において、前記緩衝部材は、前記全閉上ストッパ部を、前記全閉下ストッパ部への衝突方向と反対側に付勢するコイルばねであってもよい。また、前記全閉上ストッパ部を、前記第2のねじ部材に螺嵌し、前記コイルばねを、前記ロータと前記第2のねじ部材とを接続する支持リング又は前記ロータに装着することができる。
【0012】
さらに、上記電動弁は、前記弁体が、前記第2のねじ部材の前記弁座側の先端部に固定されたものであってもよく、このような電磁弁は、弁体と第2のねじ部材との間にコイルばねなどの緩衝手段が存在しないため、全閉上ストッパ部が全閉下ストッパ部へ衝突した際の衝撃が特に大きくなるが、本発明では、緩衝部材によって、全閉上ストッパ部が全閉下ストッパ部に衝突する際の衝撃を緩和することができるため、全閉ストッパ部の衝撃音を軽減し、全閉ストッパ部への負荷の軽減を図った簡易型の電動弁を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、全閉ストッパ部の当接によって発生する衝撃音による居住環境の悪化や、電動弁の短命化を防止することのできる電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる電動弁の第1の実施形態を示す図であって、(a)は全開時、(b)は中間弁開度時、(c)は全閉時の断面を示し、各々の上面図は、キャン及び支持リングを透明なものとして描いている。
【図2】図1の電動弁に用いられる支持リングを一体化したロータを示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は底面図である。
【図3】図1の電動弁に用いられるコイルばねを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図4】図1の電動弁に用いられる全閉上ストッパを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図である。
【図5】図2乃至図4に示した部品を弁軸に組み付ける要領を説明するための分解断面図である。
【図6】本発明にかかる電動弁の第2の実施形態を示す図であって、(a)は全開時、(b)は全閉時の断面を示し、各々の上面図は、キャン及び支持リングを透明なものとして描いている。
【図7】本発明にかかる電動弁の第3の実施形態を示す図であって、(a)は全開時、(b)は中間弁開度時、(c)は全閉時の断面を示し、各々の上面図は、キャン及び支持リングを透明なものとして描いている。
【図8】図7の電動弁に用いられる支持リングを一体化したロータを示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は底面図である。
【図9】図7の電動弁に用いられるコイルばねを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図10】図7の電動弁に用いられる全閉上ストッパを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図である。
【図11】図8乃至図10に示した部品を弁軸に組み付ける要領を説明するための分解断面図である。
【図12】従来の電動弁の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明にかかる電動弁の第1の実施形態を示し、(a)は全開時、(b)は中間弁開度時、(c)は全閉時の各々断面を示す。この電動弁1は、2本の導管2、3と弁座4とを備える弁本体5と、弁本体5に接合されたキャン6と、キャン6の内部に配置され、電動モータの一部を構成するロータ7と、キャン6の外周部に固定され、ロータ7を回転駆動するステータ(不図示)と、支持リング9を介してロータ7に一体に連結された弁軸(第2のねじ部材)10と、弁本体5に下端部が圧入固定され、弁軸10が内挿された弁軸ホルダ11(第1のねじ部材)と、弁軸10の下端部に固定されたばね収容部8に係止された弁体12等で構成される。
【0017】
弁本体5は、円筒状に形成され、2本の導管2、3によって形成される2つの流路2a、3aに連通する弁室5aを備える。弁室5aと流路3aとの間に弁座4が位置し、弁体12を弁座4に接離させることで電動弁1が開閉する。弁本体5の上部側面には、弁室5aとキャン6との均圧を図る均圧孔5cが穿設される。
【0018】
キャン6は、下部が開口し、上部が閉じた円筒状に形成され、弁本体5の上部に接合される。キャン6の内部には、ロータ7等の主要部品が収容される。
【0019】
ロータ7は、円筒状に形成され、キャン6の内部に回転可能に配置される。ロータ7は、該ロータ7の上部に固定された支持リング9を介して弁軸10と一体に連結される。ロータ7と、キャン6の外周部に固定されたステータとで電動モータが構成され、ステータへの給電によりロータ7が回転する。
【0020】
図2は、ロータ7の上部に支持リング9を固定した状態を示す。ロータ7の溝部7aに円板状の支持リング9の外周縁部が収容、固定される。支持リング9の中心部には孔部9aが穿設され、支持リング9は、さらに、下方に向かって突出する突出部9bと、緩衝部材としてのコイルばね15(図1参照)を収容するためのばね収容部9cとを備える。尚、この支持リング9の形状は複雑であるため、ロータ7の成形時に一体成形してもよく、その際、孔部9aを含む中心部のみに金属製ブッシュを設けるようにしてもよい。
【0021】
支持リング9のばね収容部9cに収容されるコイルばね15は、図3に示すように、ばね本体15aの上下端部が外側に向かって突出する突出部15b、15cを有する。突出部15cは、コイルばね15が支持リング9のばね収容部9cに収容された状態で、図2(c)に示した支持リング9の突出部9bの端部9dに当接し、ばね収容部9c内でコイルばね15全体が空転するのを防止する。
【0022】
図4に示すように、全閉上ストッパ14は、リング状に形成され、基部14aの中心部に穿設された孔部14fに雌ねじ部14gが螺刻される。全閉上ストッパ14の上面にはコイルばね15と係合する突出部14bが、下面には、弁軸ホルダ11の全閉下ストッパ部11cに当接する全閉上ストッパ部14cが各々突出し、全閉上ストッパ部14cは、傾斜面14eを備える。
【0023】
上記ロータ7を一体化した支持リング9(図2参照)、全閉上ストッパ14(図4参照)及びコイルばね15(図3参照)を弁軸10に組み付ける際には、図5に示すように、弁軸10の上端部10a側から全閉上ストッパ14の孔部14fを挿通させた後、雄ねじ部10bに雌ねじ部14gを螺合させ、支持リング9のばね収容部9cにコイルばね15を収容した状態で、弁軸10の上端部10aを支持リング9の孔部9aを挿通させて図1(a)に示す状態とし、弁軸10の上端部10aを支持リング9の上面に固定する。
【0024】
図1に示すように、弁軸10は、略々全長にわたって雄ねじ部10bが螺刻されるとともに、弁軸10の下端部にばね収容部8がかしめ固定される。弁軸10の下端部には、雄ねじ部10bに螺嵌されてばね収容部8の上方に固定される全開下ストッパ17が設けられる。全開下ストッパ17には、上面に全開下ストッパ部17aが突設される。
【0025】
ばね収容部8は、弁体12を押圧板18を介して下方に付勢する緩衝用のコイルばね13を縮装するために備えられ、下端部8aには、弁体12の係止リング16がかしめ固定される。また、ばね収容部8の側面には、弁室5a及びキャン6とばね収容部8との均圧を図る均圧孔8bが穿設される。
【0026】
弁軸ホルダ11は、樹脂製で、上下方向に貫通する雌ねじ部11aが成形されるとともに、底面には、全開下ストッパ部11bが突設される。この弁軸ホルダ11は、リング19を介して弁本体5の上端部5bに固定される。弁軸ホルダ11の雌ねじ部11aと弁軸10の雄ねじ部10bとが螺合し、弁軸ホルダ11の内部を弁軸10が上下方向に案内される。また、弁軸ホルダ11の上面には、全閉下ストッパ部11cが突設される。
【0027】
弁体12は、下部に円錐状部分を有し、全体的に円柱状に形成される。弁体12の上部12aは、ばね収容部8に内挿されるとともに、係止リング16により抜け止め係止される。
【0028】
次に、上記構成を有する電動弁1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0029】
電動弁1を閉じる場合には、図1(a)の状態で、ステータに一方向の通電を行い励磁すると、ロータ7が上面視時計方向(矢視方向)に回転すると同時に弁軸10も回転下降し、図1(b)の中間弁開度の状態を経て、図1(c)の断面図に示すように、弁体12が弁座4に着座して電動弁1が閉弁する。
【0030】
但し、弁体12が弁座4に着座した時点では、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cまで到達せず、ロータ7がさらに回転可能な状態にある。ロータ7がさらに上面視時計方向(矢視方向)に回転し、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに当接すると(図1(c−1)に示す状態)、ロータ7の回転が強制的に停止される。
【0031】
また、弁体12が弁座4に着座すると、弁体12の移動は停止するが、上述のように、弁軸10はさらに下降するため、コイルばね13が圧縮されて弁体12を弁座4に押圧し、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに当接して弁閉動作が完了する。
【0032】
ロータ7は、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに当接した図1(c−1)に示す状態から、さらに上面視時計方向に回転し、コイルばね15の弾性により、ロータ7の回転力を吸収しながら突出部15cと突出部15bの間が徐々に縮まり、最終的に、ロータ7の回転力とコイルばね15の弾性力が釣り合った状態(図1(c−2)に示す状態であって、図1(c−1)からロータ7がさらに角度α回転した状態)で停止する。これにより、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0033】
一方、電動弁1を開く場合には、図1(c)の状態で、ステータに上記とは逆方向の通電を行い励磁すると、ロータ7が上面視反時計方向に回転し、弁軸10が上昇し、弁体12が弁座4から離れて電動弁1が開弁する。そして、ロータ7がさらに回転し、全開下ストッパ部17aが全開上ストッパ部11bに当接すると、ロータ7の回転が停止し、弁体12の上昇も停止する。
【0034】
次に、本発明にかかる電動弁の第2の実施形態について、図6を参照しながら説明する。
【0035】
この電動弁31は、図1に示した電動弁1と略々同様の構成を備え、電動弁1と同一の構成要素については、図6において同一の参照番号を付してその説明を省略する。また、本発明の特徴部分であるロータ7、弁軸10、全閉上ストッパ14及びコイルばね15からなる構成についても電動弁1と同様に電動弁31にも適用されている。
【0036】
電動弁31が電動弁1と相違するのは、電動弁1のように弁体12を下方に付勢するコイルばね13と、係止リング16が存在せず、電動弁31の弁体32は、弁軸10に一体化された弁体保持部材33の下端部33aによってかしめ固定され、閉弁時に弁体32と弁座4は互いに当接せず、弁体32が弁座4に着座する寸前に下降動作を停止する点である。このような電動弁31は、例えば、空調機に簡易型の流量制御弁として用いられる。
【0037】
次に、上記構成を有する電動弁31の動作について、図6を参照しながら説明する。
【0038】
電動弁31を閉じる場合には、図6(a)の状態で、ステータに一方向の通電を行い励磁すると、ロータ7が上面視時計方向(矢視方向)に回転すると同時に弁軸10も回転下降し、図6(b)の断面図に示すように、弁体32が弁座4に着座する寸前に下降動作を停止し弁閉状態となる。
【0039】
ロータ7は、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに当接した図6(b−1)に示す状態から、さらに上面視時計方向に回転し、コイルばね15の弾性により、ロータ7の回転力を吸収しながら突出部15cと突出部15bの間が徐々に縮まり、最終的に、ロータ7の回転力とコイルばね15の弾性力が釣り合った状態(図6(b−2)に示す状態であって、図6(b−1)からロータ7がさらに角度α回転した状態)で停止する。これにより、全閉上ストッパ部14cが全閉下ストッパ部11cに当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0040】
特に、この電動弁31では、弁体保持部材33の下端部に弁体32が直接かしめ固定され、電動弁1のような緩衝用のコイルばね13が存在しないため、コイルばね13による全閉ストッパ部の衝撃の緩和作用が得られず、コイルばね15が存在しないと全閉ストッパ部の衝撃がかなり大きくなるが、コイルばね15を設けたことで、より効果的に衝撃音の低減による居住環境の向上、及び電動弁の長寿命化を図ることができる。
【0041】
一方、電動弁31を開く場合には、図6(b)の状態で、ステータに上記とは逆方向の通電を行い励磁すると、ロータ7が上面視反時計方向に回転し、弁軸10が上昇し、弁体32が弁座4から離れて電動弁31が開弁する。そして、ロータ7がさらに回転し、全開下ストッパ部17aが全開上ストッパ部11bに当接すると、ロータ7の回転が停止し、弁体32の上昇も停止する。
【0042】
次に、本発明にかかる電動弁の第3の実施形態について、図7乃至図11を参照しながら説明する。
【0043】
この電動弁41は、図1に示した電動弁1と略々同様の主要部分を備え、電動弁1と同一の構成要素については、図7において、同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0044】
電動弁41が電動弁1と相違するのは、電動弁41の弁軸10の上端部10aに装着される全閉上ストッパ44、コイルばね45及び支持リング49の部分である。
【0045】
図8は、ロータ7の上部に支持リング49を固定した状態を示す。ロータ7の溝部7aに円板状の支持リング49の外周縁部が収容、固定される。支持リング49の中心部には孔部49aが穿設され、支持リング49は、さらに、コイルばね45(図9参照)全体を収容するためのばね収容部49cと、コイルばね45の突出部45bを挿入固定するための孔部49fとを備える。尚、この支持リング49についても、ロータ7の成形時に一体成形してもよく、その際、孔部49aを含む中心部のみに金属製ブッシュを設けるようにしてもよい。
【0046】
支持リング49のばね収容部49cに収容されるコイルばね45は、図9に示すように、ばね本体45aの上下端部が上方又は下方に向かって突出する突出部45b、45cを有する。突出部45cの先端部は、支持リング49の孔部49fに挿入され、ばね収容部49c内でコイルばね45全体が空転するのを防止する。また、突出部45bは、全閉上ストッパ44(図10参照)の切欠部44bに挿入される。
【0047】
図10に示すように、全閉上ストッパ44は、リング状に形成された基部44aの中心部に穿設された孔部44fに雌ねじ部44gが螺刻される。全閉上ストッパ44の左側面には切欠部44bが形成され、下面には全閉上ストッパ部44cが突出し、全閉上ストッパ部44cは傾斜面44eを備える。
【0048】
上記ロータ7を一体化した支持リング49(図8参照)、全閉上ストッパ44(図10参照)及びコイルばね45(図9参照)を弁軸10に組み付ける際には、図11に示すように、弁軸10の上端部10a側から全閉上ストッパ44の孔部44fを挿通させた後、雄ねじ部10bに雌ねじ部44gを螺合させ、支持リング49のばね収容部49cにコイルばね45を収容した状態で、弁軸10の上端部10aを支持リング49の孔部49aを挿通させて図7(a)に示す状態とし、弁軸10の上端部10aを支持リング49の上面に固定する。
【0049】
次に、上記構成を有する電動弁41の動作について、図7を参照しながら説明する。
【0050】
電動弁41を閉じる場合には、図7(a)の状態で、ステータに一方向の通電を行い励磁すると、ロータ7が上面視時計方向(矢視方向)に回転すると同時に弁軸10も回転下降し、図7(b)の中間弁開度の状態を経て、図7(c)の断面図に示すように、弁体12が弁座4に着座して電動弁41が閉弁する。
【0051】
但し、弁体12が弁座4に着座した時点では、全閉上ストッパ部44cが全閉下ストッパ部11cまで到達せず、ロータ7がさらに回転可能な状態にある。ロータ7がさらに上面視時計方向(矢視方向)に回転し、全閉上ストッパ部44cが全閉下ストッパ部11cに当接すると(図7(c−1)に示す状態)、ロータ7の回転が強制的に停止される。
【0052】
また、弁体12が弁座4に着座すると、弁体12の移動は停止するが、上述のように、弁軸10はさらに下降するため、コイルばね13が圧縮されて弁体12を弁座4に押圧し、全閉上ストッパ部44cが全閉下ストッパ部11cに当接して弁閉動作が完了する。
【0053】
ロータ7は、全閉上ストッパ部44cが全閉下ストッパ部11cに当接した図7(c−1)に示す状態から、さらに上面視時計方向に回転し、コイルばね45の弾性により、ロータ7の回転力を吸収しながら突出部45cと突出部45bの間が徐々に縮まり、最終的に、ロータ7の回転力とコイルばね45の弾性力が釣り合った状態(図7(c−2)に示す状態であって、図7(c−1)からロータ7がさらに角度α回転した状態)で停止する。これにより、全閉上ストッパ部44cが全閉下ストッパ部11cに当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0054】
一方、電動弁41を開く場合には、図7(c)の状態で、ステータに上記とは逆方向の通電を行い励磁すると、ロータ7が上面視反時計方向に回転し、弁軸10が上昇し、弁体12が弁座4から離れて電動弁41が開弁する。そして、ロータ7がさらに回転し、全開下ストッパ部17aが全開上ストッパ部11bに当接すると、ロータ7の回転が停止し、弁体12の上昇も停止する。
【0055】
尚、上記実施の形態においては、コイルばね15、45を、ロータ7の上部に固定した支持リング9、49の内部に収容した場合について説明したが、支持リング9、49が存在せずロータ7と弁軸10とが直接接続される電動弁においては、コイルばね15、45をロータ7自体の内部に収容することもできる。
【0056】
また、上記実施の形態においては、弁軸10と、ばね収容部8又は弁体保持部材33とを別部品とし、弁軸10の下端部にばね収容部8又は弁体保持部材33の天井部をかしめ固定した場合を例示したが、弁軸10とばね収容部8又は弁体保持部材33とを一体に形成することもできる。
【0057】
また、上記実施の形態においては、弁本体に固定される第1のねじ部材を雌ねじ部材とし、第1のねじ部材に螺合する第2のねじ部材を雄ねじ部材としているが、第1のねじ部材を雄ねじ部材とし、第2のねじ部材を雌ねじ部材とすることもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 電動弁
2 導管
2a 流路
3 導管
3a 流路
4 弁座
5 弁本体
5a 弁室
5b 上端部
5c 均圧孔
6 キャン
7 ロータ
7a 溝部
8 ばね収容部
8a 下端部
8b 均圧孔
9 支持リング
9a 孔部
9b 突出部
9c ばね収容部
9d 端部
9e 端部
10 弁軸(第2のねじ部材)
10a 上端部
10b 雄ねじ部
11 弁軸ホルダ(第1のねじ部材)
11a 雌ねじ部
11b 全開上ストッパ部
11c 全閉下ストッパ部
12 弁体
12a 上部
13 コイルばね
14 全閉上ストッパ部
14a 基部
14b 突出部
14c 全閉上ストッパ部
14e 傾斜面
14f 孔部
14g 雌ねじ部
15 コイルばね
15a ばね本体
15b、15c 突出部
16 係止リング
17 全開下ストッパ
17a 全開下ストッパ部
18 押圧板
19 リング
31 電動弁
32 弁体
33 弁体保持部材
33a 下端部
41 電動弁
44 全閉上ストッパ
44a 基部
44b 切欠部
44c 全閉上ストッパ部
44e 傾斜面
44f 孔部
44g 雌ねじ部
45 コイルばね
45a ばね本体
45b 突出部
45c 突出部
49 支持リング
49a 孔部
49c ばね収容部
49f 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータのロータの回転に伴って回転し、弁本体に固定された第1のねじ部材と螺合する第2のねじ部材と、
該第2のねじ部材が回転することにより、前記弁本体内の弁座と接離する弁体とを備えた電動弁において、
前記ロータの回転に伴って回転する全閉上ストッパ部と、
前記第1のねじ部材に設けられ、該電動弁の全閉時において、前記全閉上ストッパ部に当接して前記第2のねじ部材の弁閉方向の回転を規制する全閉下ストッパ部と、
前記全閉上ストッパ部が前記全閉下ストッパ部に衝突する際の衝撃を緩和する緩衝部材とを備えることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記全閉上ストッパ部を、前記全閉下ストッパ部への衝突方向と反対側に付勢するコイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記全閉上ストッパ部は、前記第2のねじ部材に螺嵌され、前記コイルばねは、前記ロータと前記第2のねじ部材とを接続する支持リング又は前記ロータに装着されることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁体は、前記第2のねじ部材の前記弁座側の先端部に固定されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−230149(P2010−230149A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81255(P2009−81255)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】