説明

電動機の製造方法と、その製造方法を用いた電動機、圧縮機及び車両

【課題】
圧縮機や車両用途に電動機を組み付ける場合の作業性を改善した製造方法を提供する。
【解決手段】
固定子鉄心と回転子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きを順送プレス型を用いて打ち抜き、前記薄板電磁鋼板に設けた凸凹の切り起こし突起により隣接した薄板電磁鋼板同士をからませることにより積層した積層鉄心を用いた電動機において、
前記固定子鉄心と回転子鉄心の積層した積層鉄心の薄板電磁鋼板の打ち抜きバリ方向は全て同じ方向とし、前記積層した積層鉄心の薄板電磁鋼板の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向からケースもしくは回転軸を挿入する電動機の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板電磁鋼板を積層した回転子鉄心の軸中心の軸孔に回転軸を挿入する電動機の製造方法、或いは、薄板電磁鋼板を積層した固定子鉄心にケースを組み込む電動機の製造方法と、その製造方法を用いた電動機、圧縮機及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような電動機には、特許文献1(実開59−145248号公報)に示すようなものがある。本願では図9に示している。図9には回転子の軸孔に回転軸を圧入する際、圧入抵抗が大きく回転軸が曲がったり、変形して回転軸の軸芯ズレを防ぐために、回転子鉄心の軸孔の径を僅かに大きく構成している。回転軸と軸孔との間に隙間を形成することにより軸の挿入圧力が軽減でき、回転軸の曲がりや変形を防止し、回転軸の軸心ズレ等を解消しようとするものである。
【0003】
図9の(a)には、回転子200の回転子軸方向の両端部には回転子鉄心200aの軸孔92の径より僅かに大きくした部分を設けている。また、(b)には回転子300の回転子鉄心300aの回転子軸方向の中央部分の軸孔93の径を僅かに大きく構成した部分を設けている。これにより回転子200の軸孔92に回転軸94及び回転子300の軸孔93に回転軸95を圧入する際、圧入長さを短くすることができ圧入抵抗を軽減することができる。
【0004】
【特許文献1】実開昭和59−145248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9の(a)、(b)のような方法では、回転子鉄心200a及び300aの軸孔92及び93を打ち抜く場合、軸孔92及び93の打ち抜き型が少なくとも其々2種類以上必要になり余分な型費が係ってしまう。また、回転子200及び300の軸孔92及び93の打ち抜き型が少なくとも其々2種類以上必要であるため型の寸法管理等も増えることになる。また、回転軸94及び95と軸孔92及び93との締め代が不足し回転子200及び300の回転に対する応力不足となり、回転子200及び300の位置ズレがおきて音、振動が発生する可能性もある。また、回転軸94及び95が薄板電磁鋼板を積層した回転子鉄心200a及び300aよりも硬い材質でできている場合、回転軸94及び95と軸孔92及び93の間に、薄板電磁鋼板の順送プレス型で打ち抜いた、打ち抜きバリが挟まり回転軸94及び95が挿入でき無くなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
固定子鉄心と回転子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きを順送プレス型を用いて打ち抜き、前記薄板電磁鋼板に設けた凸凹の切り起こし突起により隣接した薄板電磁鋼板同士をからませることにより積層した積層鉄心を用いた電動機において、
前記回転子鉄心の軸中心には回転軸に圧入もしくは回転子を250℃〜350℃まで加熱し回転軸に焼嵌め挿入するための軸孔が設けられ、前記軸孔の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリ方向は全て同じ方向とし、前記軸孔の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向から回転軸に挿入した電動機の製造方法を用いる。
【0007】
また、固定子鉄心と回転子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きを順送プレス型を用いて打ち抜き、前記薄板電磁鋼板に設けた凸凹の切り起こし突起により隣接した薄板電磁鋼板同士をからませることにより積層した積層鉄心を用いた電動機において、
前記固定子鉄心にケースを圧入もしくはケースを250℃〜350℃まで加熱し固定子鉄心に焼嵌めし組み付け固定する際、前記固定子鉄心とケースとが接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリ方向は全て同じ方向とし、前記固定子鉄心とケースとが接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向からケースを組み込んだ電動機の製造方法を用いる。
【0008】
また、これらの製造方法により製作された電動機は、作業性を改善し不良率を低減した電動機とすることができ、特に冷蔵庫やエアコン等の室外機の圧縮機内に組み込む場合や車両用途として組み込む場合に最適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定子鉄心と回転子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きを順送プレス型を用いて打ち抜き、前記薄板電磁鋼板に設けた凸凹の切り起こし突起により隣接した薄板電磁鋼板同士をからませることにより積層した回転子鉄心のバリ方向が全て同じ方向に向いた回転子鉄心の軸中心の軸孔に回転軸を挿入する際、軸孔の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向から回転軸に挿入する製造方法を用いることにより、軸孔に回転軸が挿入する挿入圧力を低減することができ、軸孔に回転軸を挿入する際バリ等が回転軸と軸孔との間に挟まり回転軸が挿入できなくなるような不良を低減できる。
【0010】
また、これにより電動機の回転子鉄心の軸孔の抜き型を複数設ける必要も無く、余分な型費や、型の寸法管理も必要で無くなる。また、回転軸と軸孔との締め代も十分とることができ回転子の位置ズレも無くなり、回転子の位置ズレによる音、振動も低減することができる。
【0011】
また、固定子鉄心も同様に、ケースを固定子鉄心に組み込み固定する際、固定子鉄心とケースとが接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリ方向は全て同じ方向に向き、固定子鉄心とケースとが接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリの発生する方向とは逆方向からケースを組み込む製造方法を用いることにより、ケースを組み込む挿入圧力を低減することができ、ケースを組み込む際バリ等が固定子鉄心とケースとの間に挟まりケースが挿入できなくなるような不良も低減できる。
【0012】
また、このような製造方法をもちいて製造された電動機や、或いはこのような製造方法を冷蔵庫やエアコン等の室外機の圧縮機または車両用途にもちいることによって、回転子を回転軸に圧入もしくは焼嵌めする場合、回転軸が途中で止まってしまう挿入不良や、ケースに固定子を圧入もしくは焼嵌めする場合、固定子が途中で止まってしまう組み付け不良を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を図面を用いて説明する。回転子鉄心もしくは固定子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きは、順送プレス型を用いて行われ、薄板電磁鋼板がプレス型に自動で送り込まれ各工程において指定形状に打ち抜かれる連続型である。図1に示す様に所定のクリアランスW1を有する上刃140と下刃150とによって必要でない部分の薄板電磁鋼板30aを抜き落す構造となっている。必要でない薄板電磁鋼板30aが打ち抜かれると同時に、必要な部分の薄板電磁鋼板20が残されて次の工程(例えば図2)へと運ばれる。
【0014】
図2では、所定のクリアランスW2を有する上刃141と下刃151とによって必要な部分の薄板電磁鋼板20を抜き落す構造となっている。必要な部分の薄板電磁鋼板20が打ち抜かれると同時に、必要でない薄板電磁鋼板30bが次の工程へと運ばれる。
このように打ち抜かれた必要な部分の薄板電磁鋼板20は、図2に示す様に下刃151の下方に設けられたスクイズリング5b内へ押し込まれて積層される。
【0015】
このスクイズリング5bは、鉄心外周を打ち抜く上刃141より若干小径にできており、スクイズリング5b内で外周部からの側圧を受け、同時に上方からの加圧により図3に示したクランプ部60をからませ積層している。クランプ部60は薄板電磁鋼板20の打ち抜き時に同時に設けた切り起こし突起のクランプ手段により凸凹をからませ順次嵌め合い、隣同士に隣接した薄板電磁鋼板20をからませながら積層鉄心を形成している。
【0016】
図4に示すような永久磁石を回転子内に埋め込む永久磁石埋め込み型回転子(以降、回転子10と呼ぶ)の回転子鉄心10aを打ち抜く場合は、図1の工程が複数のステージから構成されている。この回転子10の回転子鉄心10aの打ち抜きは、回転子鉄心10aの軸孔90の打ち抜き、永久磁石51を挿入する永久磁石収容孔50の打ち抜き、永久磁石収容孔50から永久磁石51が飛び出さないように回転子鉄心10aの積層方向の両端部に端板11a、11bが設けられ、それらがバラバラにならないようにカシメピン71(ボルトも含む)等を挿入するためのカシメピン孔70の打ち抜き、及び、冷却目的などの貫通孔80の打ち抜き等が其々別々のステージまたは組み合わされたステージで打ち抜かれている。また、この工程とは別に図3に示しているような切り起こし突起のクランプ部60を設ける工程もある。
【0017】
図1の工程に置き換えて説明すれば、回転子鉄心10aとして必要でない薄板電磁鋼板30aが下方に打ち抜かれ、必要である薄板電磁鋼板20が次の工程に送られている。従って、回転子鉄心10aを構成する薄板電磁鋼板20のせん断面と破断面は図1のようになる。上刃140が下刃150に打ち込まれることにより上側の板面からせん断し、更に下刃150に打ち込まれることにより薄板電磁鋼板30aが下刃150の下方に押し込まれだれ込み部が生じ破断する。この場合、回転子鉄心10aとして必要な部分を残した薄板電磁鋼板20は次の工程へと運ばれる。薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2a(かえり)は下向きに発生している。
【0018】
尚、図4の回転子鉄心10aの必要でない部分は、回転子鉄心10aの軸孔90を打ち抜いたスクラップ、永久磁石51を挿入する永久磁石収容孔50を打ち抜いたスクラップ、永久磁石収容孔50から永久磁石51が飛び出さないように回転子鉄心10aの積層方向の両端部に端板11a、11bが設けられ、それらがバラバラにならないようにカシメピン71(ボルトも含む)等を挿入するためのカシメピン孔70を打ち抜いたスクラップ、及び、冷却目的などの貫通孔80を打ち抜いたスクラップである。また、必要な部分は其々打ち抜かれた残りの部分である。
【0019】
また、この場合回転子鉄心10aの軸孔90の打ち抜き方向と、永久磁石51を挿入する永久磁石収容孔50の打ち抜き方向、永久磁石収容孔50から永久磁石51が飛び出さないように回転子鉄心10aの積層方向の両端部に端板11a、11bが設けられ、それらがバラバラにならないようにカシメピン71(ボルトも含む)等を挿入するためのカシメピン孔70の打ち抜き方向、及び、冷却目的などの貫通孔80の打ち抜き方向等は同じ方向へ打ち抜かれることになる。従って、回転子鉄心10aの各打ち抜きによる薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2a(かえり)は下向きに発生している。
【0020】
更に、次の工程へ移された薄板電磁鋼板20(回転子鉄心10aとしての必要な部分)は、回転子鉄心10aの外周部分を図2の如く打ち抜かれ、図1と同様に上刃141が下刃151に打ち込まれることにより上側の板面からせん断し下刃151の下方に押し込まれ、だれ込み部が生じ破断する。この場合、必要な回転子鉄心10aの破断面のだれ込み部によるバリ2b(かえり)は上向きに発生している。
【0021】
打ち抜かれた薄板電磁鋼板20の回転子鉄心10aは下刃151の下方に位置するスクイズリング5bに破断面の先端部分のだれ込み部が一方向に全て揃うようにスクイズリング5b内へ押し込まれて積層される。このスクイズリング5bは、鉄心外周を打ち抜く下刃151より若干小径にできており、スクイズリング5b内で外周部からの側圧を受け、同時に上方からの加圧により図3に示した薄板電磁鋼板20の打ち抜き時に同時に設けた切り起こし突起のクランプ手段により凸凹をからませたクランプ部分60により順次嵌め合い、隣同士の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ方向を一方向に揃えた積層鉄心を形成している。
【0022】
図5は、図4に示した回転子10の軸孔90に回転軸91を挿入する前の回転子10のE−E’断面図である。図5は、このように隣同士の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ方向が一方向に揃った回転子鉄心10aの軸孔90に回転軸91を圧入もしくは、回転子10を250℃〜350℃まで加熱し回転軸91に焼嵌め挿入する際、回転軸91への挿入抵抗が低減するように、回転子鉄心10aの軸孔90の薄板電磁鉄板20の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向から回転軸91を挿入している。図5では回転子10の軸孔90のバリ方向は上向きに発生している。回転軸91の挿入方向はバリが発生している方向とは逆方向から回転軸91を挿入している。
【0023】
これにより、回転軸91への挿入方向と薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2a(かえり)が向いている方向と同じ向きから挿入することになり、この薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ2a等が逆立ち回転軸91と軸孔90との間に挟まり回転軸91が途中で挿入できなくなることはない。また、一旦、回転子10の軸孔90の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ方向が発生する方向とは逆方向から回転軸91を挿入するとバリ2aが回転軸91の抜け止めの役目をする。尚、回転子外径は軸孔90の打ち抜きバリ方向とは逆方向に打ち抜きバリ2bが発生している。
【0024】
また、同様に図6に示す様に、永久磁石収容孔50に永久磁石51を挿入する場合や、カシメピン孔70にカシメピン71等を挿入する場合においても薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ2aが発生する方向とは逆方向から永久磁石51やカシメピン71等を挿入している。
【0025】
これにより、永久磁石51やカシメピン71の挿入方向と薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2a(かえり)が向いている向きとを合わせることにより、この薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリが逆立ち永久磁石収容孔50と永久磁石51との間や、カシメピン孔70とカシメピン71との間に挟まり途中で挿入できなくなるような不良を低減することができる。
【0026】
また、図7に示すような固定子100の固定子鉄心100aを打ち抜く場合は、図1の工程が複数のステージから構成されている。固定子鉄心100aに絶縁紙4を介して巻線3を挿入するスロット101の打ち抜き、及び固定子鉄心100aの内径が打ち抜かれている。また、この工程とは別に図3に示しているような切り起こし突起部分のクランプ部160を設ける工程もある。
【0027】
この打ち抜き工程を、回転子鉄心10aの薄板電磁鋼板20を打ち抜く工程と同様に図1で説明する。尚、回転子鉄心10aの打ち抜きと固定子鉄心100aと同じ工程になるので同じ記号を便宜上用いて説明する。
【0028】
図1の工程では固定子鉄心100aとして必要でない薄板電磁鋼板30aが下方に打ち抜かれ、必要である薄板電磁鋼板20が次の工程に送られている。従って、固定子鉄心100aを構成する薄板電磁鋼板20のせん断面と破断面は図1のようになる。上刃140が下刃150に打ち込まれることにより上側の板面からせん断し、更に下刃150に打ち込まれることにより薄板電磁鋼板30aが下刃150の下方に押し込まれだれ込み部が生じ破断する。この場合、固定子鉄心100aとして必要な部分を残した薄板電磁鋼板20は次の工程へと運ばれる。薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2a(かえり)は下向きに発生している。
【0029】
尚、図7の固定子鉄心100aの必要でない部分は、固定子鉄心100aのスロット101を打ち抜いたスクラップ、及び固定子鉄心100aの内径を打ち抜いたスクラップである。また、必要な部分はそれらを打ち抜いた残りの部分である。
【0030】
また、この場合固定子100のスロット101の打ち抜き方向と、固定子100の内径の打ち抜き方向等は同じ方向へ打ち抜かれることになる。従って、固定子鉄心100aの各打ち抜きによる薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2a(かえり)は下向きに発生している。
【0031】
更に、次の工程へ移された薄板電磁鋼板20(固定子鉄心100aとしての必要な部分)は、固定子鉄心100aの外周部分を図2の如く打ち抜かれ、図1と同様に上刃141が下刃151に打ち込まれることにより上側の板面からせん断し下刃151の下方に押し込まれ、だれ込み部が生じ破断する。この場合、必要な固定子鉄心100aの破断面のだれ込み部によるバリ2b(かえり)は上向きに発生している。
【0032】
打ち抜かれた薄板電磁鋼板20の固定子鉄心100aは下刃151の下方に位置するスクイズリング5bに破断面の先端部分のだれ込み部が一方向に全て揃うようにスクイズリング5b内へ押し込まれて積層される。このスクイズリング5bは、鉄心外周を打ち抜く下刃151より若干小径にできており、スクイズリング5b内で外周部からの側圧を受け、同時に上方からの加圧により図3に示した薄板電磁鋼板20の打ち抜き時に同時に設けた切り起こし突起のクランプ手段により凸凹をからませたクランプ部分160により順次嵌め合い、隣同士の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ方向が一方向に揃えた積層鉄心を形成している。
【0033】
図8は、図7に示した固定子100にケース191のケース内径190に挿入する前の固定子100のG−G’断面図である。図8は、このように隣同士の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ方向が一方向に揃った固定子鉄心100aにケース191のケース内径190に圧入もしくは、ケース191を250℃〜350℃まで加熱し固定子100に焼嵌め挿入する際、ケース191への挿入抵抗が低減するように、固定子鉄心100aの外径(外周)の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ2bが発生する方向とは逆方向からケースを挿入している。図8では固定子100の外径のバリ方向は下向きに発生している。ケース191の挿入方向はバリ2bが発生している方向とは逆方向からケースを挿入している。
【0034】
これにより、ケース191の挿入方向と薄板電磁鋼板20の破断面のだれ込み部によるバリ2b(かえり)が向いている方向と同じ向きに挿入することにより、この薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ等が逆立ちケース191のケース内径190との間に挟まりケース191が途中で挿入できなくなるようなこともない。また、一旦、固定子100の外径の薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ方向が発生する方向とは逆方向からケース191を挿入するとバリ2bが固定子100の抜け止めの役目をする。尚、固定子100の内径は、外径の打ち抜きバリ方向とは逆方向に打ち抜きバリ2aが発生している。
【0035】
また、同様に、スロット101に絶縁紙4を挿入する場合、薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ2aが発生する方向とは逆方向からを挿入することにより、絶縁紙4の挿入抵抗が軽減でき作業性を向上することができる。また、絶縁紙4を挿入時、バリ2a等に引っ掛り破れて絶縁不良を起こすことも無くなる。
【0036】
従って、このような電動機の製造方法を用いれば、例えば電動機或いは冷蔵庫やエアコン等の室外機の圧縮機内に搭載する場合、回転子10の軸孔に回転軸91を挿入する挿入圧力が低減することができ、回転子10を挿入する際バリ2a等が回転子10と軸孔90との間に挟まり回転子10が挿入できなくなるような不良も低減できる。
【0037】
また、これにより電動機の回転子鉄心10aの軸孔90の抜き型も少なくて済み余分な型費や、型の寸法管理も必要で無くなる。また、回転軸91と軸孔90との締め代も十分とることができ締め代不足で回転子10の位置ズレも無くなり、回転子10の位置ズレによる音、振動も低減することができる。
【0038】
また、固定子鉄心100aも同様に、固定子鉄心100aにケース191を組み込み固定する際、固定子鉄心100aとケース191との接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ2b方向は全て同じ方向とし、固定子鉄心100aとケース191との接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板20の打ち抜きバリ2bが発生する方向とは逆方向からケース191を組み込む製造方法を用いることにより、ケース191を組み込む挿入圧力を低減することができ、ケース191を組み込む際バリ2b等が固定子鉄心100aとケース191のケース内径190との間に挟まりケース191が挿入できなくなるような不良も低減できる。
【0039】
また、近年、車両用途として用いられる電動機が増えてきているので、車両用途の電動機の製造法として用いることができ、品質を向上し、音、振動のない、作業性を向上した車両を得ることができる。
【0040】
尚、本実施形態では回転子軸91に回転子10を圧入もしくは焼嵌めしているが、回転子10に回転軸91を圧入もしくは焼嵌めしてもよい。また、固定子100にケース191を圧入もしくは焼嵌めしているが、ケース191に固定子100を圧入もしくは焼嵌めしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】薄板電磁鋼板を打ち抜く順送プレス型の打ち抜きを説明する図。
【図2】薄板電磁鋼板を打ち抜く順送プレス型の打ち抜きを説明する図。
【図3】クランプ部分の詳細図。
【図4】実施形態の回転子鉄心の平面図。
【図5】実施形態の回転軸に回転子を挿入する図。
【図6】実施形態の回転子に永久磁石やカシメピンを挿入する図。
【図7】実施形態の固定子鉄心の平面図。
【図8】実施形態の固定子にケースを挿入する図。
【図9】従来の回転子鉄心の図。
【符号の説明】
【0042】
2a、2b・・・バリ
3・・・巻線
4・・・絶縁紙
5b・・・スクイズリング
10、200、300・・・回転子
10a、200a、300a・・・回転子鉄心
11a、11b・・・端板
20、30a、30b・・・薄板電磁鋼板
50・・・永久磁石
51・・・永久磁石収容孔
60、160・・・スランプ部
70・・・カシメピン孔
71・・・カシメピン
80・・・貫通孔
90、92、93・・・軸孔
91、94、95・・・回転軸
100・・・固定子
100a・・・固定子鉄心
101・・・スロット
140、141・・・上刃
150、151・・・下刃
190・・・ケース内径
191・・・ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心と回転子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きを順送プレス型を用いて打ち抜き、前記薄板電磁鋼板に設けた凸凹の切り起こし突起により隣接した薄板電磁鋼板同士をからませることにより積層した積層鉄心を用いた電動機において、
前記回転子鉄心の軸中心には回転軸を挿入するための軸孔が設けられ、前記軸孔の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリ方向は全て同じ方向とし、前記軸孔の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向から回転軸を挿入したことを特徴とする電動機の製造方法。
【請求項2】
固定子鉄心と回転子鉄心を構成する薄板電磁鋼板の打ち抜きを順送プレス型を用いて打ち抜き、前記薄板電磁鋼板に設けた凸凹の切り起こし突起により隣接した薄板電磁鋼板同士をからませることにより積層した積層鉄心を用いた電動機において、
前記固定子鉄心にケースを組み込み固定する際、前記固定子鉄心とケースとが接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリ方向は全て同じ方向とし、前記固定子鉄心のケースと接触する外径部分の積層した薄板電磁鋼板の打ち抜きバリが発生する方向とは逆方向からケースを組み込んだことを特徴とする電動機の製造方法。
【請求項3】
請求項1項または請求項2項記載の電動機の製造方法を用いた電動機。
【請求項4】
前記電動機の製造方法を用いて冷蔵庫やエアコン等の室外機の圧縮機内に組み込んだことを特徴とする請求項1項または請求項2項記載の圧縮機。
【請求項5】
前記電動機の製造方法を用いて車両用途として組み込んだことを特徴とする請求項1項または請求項2項記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−199831(P2008−199831A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34321(P2007−34321)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】