説明

電動機制御システム

【課題】本発明は、周波数電圧変換部で異常が発生したとしても、電動機の回転を確保することができる電動機制御システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る電動機制御システム200は、回転動作を行う電動機7と、電動機7に電力を供給する電力供給源部1,3と、電力供給源部1,3から出力された電力に対して、周波数および電圧の変換を行う周波数電圧変換部5とを備えている。さらに、電動機制御システム200は、周波数電圧変換部5に異常が生じたときに、電力供給源部1,3から出力される電力を、周波数電圧変換部5を介さず、電動機7に供給するバイパス回路6と、周波数電圧変換部5に異常が生じたときに、電力供給源部1,3から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う制御部12,2,4とを、備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の回転数を制御することができる電動機制御システムに関するものであり、たとえば、船舶に配設される推進用のプロペラの回転制御に採用することができる。
【背景技術】
【0002】
船舶の電気推進システムにおいて、発電系統から出力された電力を電圧・周波数変換して、当該変換後の電力を電動機に供給する技術が開示されている先行文献として、たとえば特許文献1が存在する。
【0003】
特許文献1には、船舶の電気推進システムにおいて、電気推進機と発電系統との間に接続された電力変換器が、開示されている。特許文献1には、さらに、当該電力変換器に対する初期突入電流の発生を抑える技術が開示されている。
【0004】
図7は、電動機7と発電機3との間に、周波数電圧変換部5が配設された構成を示す回路構成図である(特許文献1には、当該図7に示す構成と類似の回路構成が含まれている)。
【0005】
図7に示した電動機制御システム500は、原動機1、ガバナ装置2、発電機3、自動電圧調整器4、周波数電圧変換部5、電動機7、遮断機8およびプロペラ9を備えている。
【0006】
原動機1には、ガバナ装置2が接続されている。ガバナ装置2により、原動機1は、所定の一定回転数で駆動するように、制御されている。また、発電機3は、原動機1の回転駆動により発電する。ここで、自動電圧調整器4により、発電機3の出力電圧は、所定の電圧値に制御されている。発電機3から出力される電力は、遮断機8を介して、周波数電圧変換部5へと入力される。周波数電圧変換部5では、入力された電力を、所望の電圧および所望の周波数に変換し、当該変換後の電力は、電動機7に対して出力される。電動機7は、電力が供給されることにより、プロペラ9を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−155503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示す電動機制御システム500において、周波数電圧変換部5で異常が発生したときには、周波数電圧変換部5から異常信号10が遮断機8に対して出力される。そして、当該異常信号10を受けて遮断機8は「入」状態から「切」状態へとなり、電動機7への電力供給が遮断されていた。つまり、周波数電圧変換部5で異常が発生したときには、電動機7は停止していた。このような電動機7の停止は、電動機7に接続されるプロペラ9の回転駆動の停止を意味し、結果として、船舶の推進力が喪失する。
【0009】
そこで、本発明は、周波数電圧変換部で異常が発生したとしても、電動機の回転を確保することができる電動機制御システムを提供することを目的とする。また、より好ましくは、周波数電圧変換部で異常が発生したとしても、回転数命令を無視した電動機の駆動を防止する電動機制御システムを提供することを目的とする。また、当該異常発生に備えて、システムを構成する回路の性能に変更を与えることなく、さらには、当該異常が発生した場合においても、電動機の回転数を変化させることができる電動機制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電動機制御システムは、回転動作を行う電動機と、前記電動機に、電力を供給する電力供給源部と、前記電力供給源部と前記電動機との間に配設され、前記電力供給源部から出力された電力に対して、周波数および電圧の変換を施し、当該変換後の電力を前記電動機に対して出力する周波数電圧変換部と、前記周波数電圧変換部に異常が生じたときに、前記電力供給源部から出力される電力を、前記周波数電圧変換部を介さず、前記電動機に供給するバイパス回路と、前記周波数電圧変換部に異常が生じたときに、前記電力供給源部から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う制御部とを、備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の電動機制御システムは、回転動作を行う電動機と、前記電動機に、電力を供給する電力供給源部と、前記電力供給源部と前記電動機との間に配設され、前記電力供給源部から出力された電力に対して、周波数および電圧の変換を施し、当該変換後の電力を前記電動機に対して出力する周波数電圧変換部と、前記周波数電圧変換部に異常が生じたときに、前記電力供給源部から出力される電力を、前記周波数電圧変換部を介さず、前記電動機に供給するバイパス回路と、前記周波数電圧変換部に異常が生じたときに、前記電力供給源部から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う制御部とを、備えている。
【0012】
したがって、当該電動機制御システムは、周波数電圧変換部に異常が発生したとしても、電動機への電力供給を確保することができ、電動機7の駆動を確保することが可能である。
【0013】
また、当該電動機制御システムは、周波数電圧変換部に異常が生じたときに、電動機の駆動確保だけなく、電動機回転数指令を無視した電動機の駆動を防止することができる(たとえば、常にトップスピードで電動機が回転することを防止できる)。
【0014】
また、制御部で調整された電力が電動機に供給され、突然かつ直接的に、電力供給源部から50,60Hzといった周波数の電力が電動機に供給されることを防止できる。これにより、電動機7に突入電流が流れることを防止できる。したがって、電動機制御システムでは、当該突入電流に備えて、システムを構成する回路(たとえば、遮断機や発電機等)の性能に変更を与える必要もない(つまり、各回路に対する過剰な性能設定が不要となる)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る電動機制御システム200の前提となる構成(電動機制御システム100の構成)を示す回路構成図である。
【図2】電動機制御システム100の動作を説明するための図である。
【図3】実施の形態に係る電動機制御システム200の構成を示す回路構成図である。
【図4】制御装置12内部の構成を示すブロック図である。
【図5】第一の指令生成部40内部の構成を示すブロック図である。
【図6】電動機制御システム200の動作を説明するための図である。
【図7】背景技術で説明した電動機制御システム500の構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、後述する実施の形態に係る電動機制御システム200の前提となる構成(電動機制御システム100の構成)を示す回路構成図である。なお、本明細書では、当該電動機制御システム100が船舶に搭載される場合につて言及する。
【0017】
図1に示す電動機制御システム100は、原動機1、ガバナ装置2、発電機3、自動電圧調整器4、周波数電圧変換部5、バイパス回路6、電動機7、遮断機8およびプロペラ9を備えている。ここで、バイパス回路6には、スイッチ6sが配設されている。また、原動機1および発電機3により電力供給源部が構成されている。
【0018】
原動機1に対応して、ガバナ装置2が配設されている。ガバナ装置2は、原動機1が所定の一定回転数で駆動するように、燃料供給の調整を行う。また、原動機1には、発電機3が接続されている。当該発電機3は、原動機1の回転駆動により発電する。発電機3に対応して、自動電圧調整器4が配設されている。自動電圧調整器4は、発電機3から出力される電力が、電源電圧として既定の電圧となるように、発電機3の界磁電流を調整する。
【0019】
図1に示すように、発電機3と電動機7との間には、周波数電圧変換部5が配設されている。したがって、発電機3から出力される電力は、遮断機8を介して、周波数電圧変換部5へと入力される。周波数電圧変換部5では、入力された電力に対して、周波数および電圧の変換処理を施す。そして、周波数電圧変換部5は、所望の電圧および所望の周波数に変換された電力を、電動機7に対して出力する。電動機7は、電力が供給されることにより回転動作を行う。電動機7には、プロペラ9が接続されている。したがって、電動機7の回転動作に連動して、プロペラ9は回転する。そして、当該プロペラ9の回転により、船舶は推進する。
【0020】
次に、図2を用いて、図1に示した電動機制御システム100の動作について説明する。
【0021】
図2には、発電機3から出力される電力の周波数の時系列変化を示す図(縦軸:周波数、横軸:時間)、発電機3から出力される電力における電源電圧としての既定電圧値の時系列変化を示す図(縦軸:電圧、横軸:時間)、電動機7に供給される電流の時系列変化を示す図(縦軸:電流、横軸:時間)、および電動機7の回転数の時系列変化を示す図(縦軸:回転数、横軸:時間)が、上から順に併記されている。
【0022】
図2における発電機3の周波数波形および発電機3の電圧波形に示すように、電動機制御システム100では、ガバナ装置2および自動電圧調整器4により、周波数電圧変換部5の正常・異常にかかわらず、一定の周波数(たとえば、50Hzまたは60Hz)、一定の既定電圧値(たとえば、数百Vや数kV)の電力が、発電機3から定常的に出力される。
【0023】
周波数電圧変換部5の正常状態では、発電機3から出力された電力は、周波数電圧変換部5において、所望の周波数および所望の電圧に変換される。ここで、周波数電圧変換部5に入力された電力に対して、周波数および電圧をどのような値に変換させるのかは、操舵室からの推進力に関する命令に応じて決定される。当該変換された電力は、周波数電圧変換部5から電動機7に対して出力される。これにより、電動機7は、操舵室からの推進力に関する命令に応じて、所望の回転数でプロペラ9を回転させる(図2の「周波数電圧変換部5での異常発生時点より左側における、電動機7の電流波形および電動機7の回転数波形参照)。
【0024】
つまり、周波数電圧変換部5の正常状態では、周波数電圧変換部5は、電動機7に接続されたプロペラ9の回転で得られる船舶の推進力を増減するために、発電機3から供給される電力に対して、周波数および電圧を増減させる。このとき、発電機3から供給される電力は、上述したように、自動電圧調整器4は、電源電圧として既定の電圧を一定に保つように発電機3を制御し、ガバナ装置2は、周波数を一定に保つように原動機1を制御する(図2における発電機3の周波数波形および発電機3の電圧波形参照)。
【0025】
さて、周波数電圧変換部5において、異常が発生したとする。当該異常は、周波数電圧変換部5内に配設されるパワー半導体素子の破損や周波数電圧変換部5内に配設される冷却ファンの故障等により、発生する。
【0026】
周波数電圧変換部5において異常が発生すると、発電機3から電動機7への電力供給は、一時的に停止し、図2における電動機7の電流波形に示すように、電動機7に供給される電流は、一時的にゼロとなる。また、電動機7への電流供給が一時的に停止するので、図2における電動機7の回転数波形に示すように、プロペラ9の慣性に応じて、電動機7の回転数も減衰し始める。
【0027】
一方、周波数電圧変換部5において異常が発生すると、当該周波数電圧変換部5は、スイッチ6sに対して、異常信号10を送信する。当該異常信号10を受信したスイッチ6sは、「切」状態から「入」状態へと移行する。これにより、図1に示す電動機制御システム100では、前記異常発生時点から短期間経過した後、発電機3から出力された電力は、周波数電圧変換部5を介さず、電動機7へと供給される。換言すると、発電機3から出力された電力は、バイパス回路6を介して、電動機7へと供給される(図2の「スイッチ6sが「切」から「入」へと移行した時点」における。電動機7の電流波形参照)。
【0028】
当該バイパス回路6を介した発電機3から電動機7への電力供給により、電動機制御システム100では、周波数電圧変換部5で異常が発生したとしても、電動機7の回転停止持続を防止することができる(図2の「スイッチ6sが「切」から「入」へと移行した時点」における。電動機7の回転数波形参照)。つまり、周波数電圧変換部5で異常が発生したとしても、船舶の推進力は確保される。しかしながら、図1に示す電動機制御システム100では、次のような問題が残る。
【0029】
つまり、バイパス回路6を介した電動機7への給電に切り替わることにより、電動機7の特性および給電される電力の電圧位相状態等に応じて(換言すると、電動機7への電力供給停止状態において、50,60Hzといった周波数の電力が、発電機3側から直接電動機7に供給再開されることにより)、過渡的に、突入電流(当該突入電流とは、短期間に流れる非常大きな値の電流であり、定常時の電流の7倍以上の電流が瞬時に流れる電流である)が電動機7に流れる(図2における電動機7の電流波形参照)。
【0030】
電動機7に突入電流が流れる際には、遮断器8においても当該突入電流が流れる。遮断器8は、当該突入電流を、給電系統1,3から電動機7に至る経路における短絡・地絡により生じる事故電流と誤って判断し、遮断状態となる。当該突入電流による遮断機8の遮断を防止するためには、周波数電圧変換部5における異常発生時に備えて、遮断機の性能に変更を加える必要がある(つまり、遮断機8が大きな突入電流が流れても遮断しないように、当該遮断機8の遮断電流値を大きな値に設定する必要がある)。
【0031】
また、発電機3の容量は、周波数電圧変換部5が正常時に、電動機7へ給電する前提で選定されており、当該突入電流に耐え得る容量には通常設定されていない。したがって、遮断機8の遮断電流値を変更したとしても、発電機3が突入電流を給電することができるように、周波数電圧変換部5における異常発生時に備えて、発電機3の性能に変更を加える必要がある(つまり、発電機3が大きな突入電流により破損が生じないように、当該発電機3の容量を大きく選定する必要がある。当該発電機3の容量の増加は、発電機3の大型化に繋がり、船舶等への設置が困難になる。)。
【0032】
また、図2の発電機3の周波数・電圧に関する図に示すように、発電機3から直接電動機7に供給される電力は、電圧値および周波数が一定のものである。したがって、周波数電圧変換部5で異常が発生し、その後にバイパス回路6を介した電動機7への電力供給が再開されたとしても、電動機7は定格回転数(トップスピード)まで加速し、当該電動機7の回転数は、当該定格回転数(トップスピード)で一定となる(図2における電動機7の回転数波形参照)。つまり、図1に示す電動機制御システム100では、周波数電圧変換部5で異常が発生し、その後に電動機7への電力供給を再開したとしても、プロペラ9の回転数の調整(換言すれば、船舶の推進力の調整)が出来ず、たとえばトップスピードでの運航が断続的に実施される。
【0033】
なお、図2における電動機7の電流波形に示すように、電動機7に流れる電流は、突入電流が流れた後、上記定格回転数を維持するために必要な電流値に落ち着く。
【0034】
以上のように、電動機制御システム100では、周波数電圧変換部5で異常が発生したときには、発電機3からバイパス回路6を介して電動機7へと電力を供給することは可能である。
【0035】
しかしながら、電動機制御システム100では、バイパス回路6を介した電力供給のためには、遮断機8や発電機3などの回路の性能に変更を加える必要がある(つまり、周波数電圧変換部5の異常に備えて、遮断機8や発電機3などの回路に関する性能を、過剰なものに設定する必要がある)。
【0036】
また、電動機制御システム100では、周波数電圧変換部5の異常発生後に、バイパス回路6を介した電力供給を行った場合には、操舵室からの速度命令(電動機7の回転数に関する命令)にかかわらず、電動機7の回転数が一定(トップスピード)で維持され、電動機7の回転数を変更・調整することができない。
【0037】
そこで、本発明は、周波数電圧変換部5で異常が発生したとき、電動機7の回転を確保するだけでなく、電動機7の回転数命令(後述する電動機回転数指令13)を無視した電動機7の駆動を防止する電動機制御システムを提供する。さらには、システムを構成する回路(たとえば、遮断機8や発電機3等)の性能に変更を与えることなく(過剰な設定不要を防止し)、さらには電動機7の回転数を変化(調整)することができる電動機制御システムを提供する。
【0038】
以下、当該電動機制御システムを、その実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0039】
<実施の形態>
図3は、本発明に係る電動機制御システム200の構成を示す回路構成図である。なお、本明細書では、当該電動機制御システム200が船舶に搭載される場合につて言及する。
【0040】
図3に示す電動機制御システム200は、図1に示す電動機制御システム100の構成に加えて、回転数検出器11および制御装置12を備えている。原動機1、ガバナ装置2、発電機3、自動電圧調整器4、周波数電圧変換部5、バイパス回路6、電動機7、遮断機8およびプロペラ9に関しては、電動機制御システム200と電動機制御システム100との間において、同一の回路構成を有する。したがって、各ブロック1〜9の各構成の説明は、ここでは省略する。
【0041】
なお、電動機制御システム200において、ガバナ装置2、自動電圧調整器4および制御装置12により、電力供給源部1,3から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う制御部が構成されている。
【0042】
図3に示すように、電動機制御システム200では、電動機7に回転数検出器11が接続されている。また、制御装置12は、当該回転数検出器11に接続されると共に、ガバナ装置2および自動電圧調整器4および周波数電圧変換部5とも接続されている。
【0043】
回転数検出器11は、電動機7の回転数を検出し、当該検出結果(電動機回転数信号11a)を制御装置12に対して送信する。また、電動機制御システム200では、周波数電圧変換部5は、スイッチ6sだけでなく、制御装置12に対しても異常信号10を送信する。
【0044】
制御装置12は、上記電動機回転数信号11aを受信する共に、電動機回転数指令13を受信する。ここで、電動機回転数指令13は、操舵室などから送信される信号であり、ユーザにより指定された電動機7の目標回転数を示す信号である(つまり、船舶推進力の出力に関する操舵室などからの命令信号である)。
【0045】
また、制御装置12は、電圧周波数可変制御の際に、ガバナ装置2に対して、原動機回転数指令12aを送信する。ここで、原動機回転数指令12aは、原動機1の回転数を制御(調整)するための信号である。原動機回転数指令12aを受信したガバナ装置2は、当該原動機回転数指令12aに基づいて、燃料を調整することにより、原動機1の回転数を制御(調整)する。
【0046】
さらに、制御装置12は、電圧周波数可変制御の際に、自動電圧調整器4に対して、発電機電圧指令12bを送信する。ここで、発電機電圧指令12bは、発電機3の出力電圧を制御(調整)するための信号である。発電機電圧指令12bを受信した自動電圧調整器4は、当該発電機電圧指令12bに基づいて、界磁電流を調整することにより、発電機3の出力電圧を制御(調整)する。
【0047】
制御装置12を含む上述した制御部は、周波数電圧変換部5において異常が生じたときに、発電機3から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う。具体的に、制御装置12は、電動機回転数信号11aおよび電動機回転数指令13を用いて、原動機回転数指令12aおよび発電機電圧指令12bを生成する。そして、制御装置12は、当該生成した各指令12a,12bを、各ブロック2,4に対して送信する。各ブロック2,4は、当該指令12a,12bに従って、電力供給源部1,3から出力される電力の周波数・電圧を制御(調整する)。
【0048】
制御部12の具体的な内部構成を、図4のブロック図に示す。また、図4に示す第一の指令生成部40の具体的な内部構成を、図5のブロック図に示す。
【0049】
図4に示すように、制御装置12は、第一の指令生成部10、第二の指令生成部41および二つのスイッチ42を含む。
【0050】
第一の指令生成部40は、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとを入力する。そして、第一の指令生成部40は、電動機回転数指令13および電動機回転数信号11aに基づいて、電動機7の回転数が目標回転数(電動機回転数指令13で示される操舵室からの出力に関する命令)に近づくように、原動機回転数指令12aを生成する。
【0051】
また、第二の指令生成部41は、第一の指令生成部40で生成された原動機回転数指令12aと、予め設定されている電圧・周波数特性とに基づいて、発電機電圧指令12bを生成する。
【0052】
原動機回転数指令12aの出力端子側および発電機電圧指令12bの出力端子側には各々、スイッチ42が配設されている。当該各スイッチ42は、周波数電圧変換部5から送信される異常信号10を受信したとき、各スイッチ42を「切」状態から「入」状態へと移行する。つまり、制御装置12が異常信号10を受信することにより、当該制御装置12から、原動機回転数指令12aおよび発電機電圧指令12bが出力される。なお、原動機回転数指令12aは、ガバナ装置2に対して出力され、発電機電圧指令12bは、自動電圧調整器4に対して出力される。
【0053】
ここで、図4に示す構成では、制御装置12の異常信号10の受信にかかわらず、原動機回転数指令12aの生成および発電機電圧指令12bの生成は実行されている。しかしながら、制御装置12が異常信号10を受信したタイミングで、当該制御装置12は、原動機回転数指令12aの生成および発電機電圧指令12bの生成を開始する構成も採用できる。
【0054】
また、図5に示すように、第一の指令生成部40は、ローパスフィルタ(低域通過濾波器)40Aおよびリミッタ(差分制限器)40Bを備えている。
【0055】
ローパスフィルタ40Aは、電動機回転数指令13を受信する。ローパスフィルタ40Aには、閾値が設定されており、当該閾値以下の周波数の電動機回転数指令13を出力する(ローパスフィルタ40Aは、電動機回転数指令13の変化量に制限を与えていると、把握できる)。
【0056】
つまり、ローパスフィルタ40Aは、閾値より高い周波数で変動する電動機回転数指令13はフィルタリングし、閾値以下である低い周波数で変動する電動機回転数指令13を濾波する。当該ローパスフィルタ40Aの配設により、第一の指令生成部40は、短い期間に高頻度に変化する電動機回転数指令13を用いた原動機回転数指令12aの生成を、防止することができる。つまり、第一の指令生成部40は、ローパスフィルタ40Aによりフィルタリングされた電動機回転数指令13を用いて、原動機回転数指令12aを生成する。
【0057】
ここで、当該閾値は、船体抵抗、船体慣性、電動機7や電力供給源部1,3の電気特性に依存している。したがって、当該閾値は、可変可能な値である。
【0058】
リミッタ40Bは、ローパスフィルタ40Aを濾波した電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値を、入力する。また、リミッタ40Bには、差分制限値が予め設定されている。
【0059】
電動機回転数11aから大幅に増減した値である原動機回転数指令12aを出力すると、電力供給源部1,3および電動機7は過負荷状態となり、故障の原因となる(また、電動機7に流れる電流が大きくなる)。当該差分制限値は、電力供給源部1,3および電動機7は過負荷状態を防止する観点で、選択的に設定される(特に、当該差分制限値は、発電機3の発電容量を超えないように選択される)。当該差分制限値は、船体抵抗、船体慣性、電動機7や電力供給源部1,3の電気特性に依存している。したがって、当該差分制限値は、可変可能な値である。
【0060】
また、差分制限値は複数であってもよい。たとえば、電動機7の回転数状態に応じて異なる値が設定される(たとえば、電動機7の回転数が低速である時には、当該回転数時に対する差分制限値は比較的大きな値を設定でき、電動機7の回転数が高速である時には、当該回転数時に対する差分制限値は比較的小さな値となる)。また、電動機7がある回転数である状態において、電動機7の回転数を増加させる場合の差分制限値と、電動機7の回転数を減少させる場合の差分制限値とは、異なる場合もある。
【0061】
また、差分制限値は、単数であっても良い(固定差分制限値と称することとする)。この場合には、電動機7の回転数状態や、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値に依存せず、リミッタ40Bは、常に上記固定差制限値を用いて、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値に制限をかける。
【0062】
リミッタ40Bは、当該差分制限値により、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値に対して、制限をかけることができる。ここで、当該差分値の制限は、電動機回転数信号11aに示す回転数よりも電動機回転数指令13で示される回転数が大きい場合であっても、この逆で小さい場合であっても、実施される(換言すると、電動機7の回転数を加速させる場合でも、減速させる場合でも、当該差分値の制限は実施される)。
【0063】
つまり、リミッタ40Bは、電動機回転数指令13と前記電動機回転数信号11aとの差分値が、予め設定されている差分制限値を超えるとき、当該差分制限値に内に納まる任意の値を差分値情報値として生成する。また、リミッタ40Bは、電動機回転数指令13と前記電動機回転数信号11aとの差分値が、予め設定されている差分制限値以内であるときには、当該差分値を前記差分値情報値として生成する。
【0064】
第一の指令生成部40では、リミッタ40Bから出力される前記差分値情報値に、電動機回転数信号11aを加えた値を、原動機回転数指令12aとして生成する。
【0065】
上記の通り、第二の指令生成部41は、第一の指令生成部40で生成された原動機回転数指令12aと、予め設定されている電圧・周波数特性とに基づいて、発電機電圧指令12bを生成する。
【0066】
ここで、当該電圧・周波数特性は、電動機7の電気特性に応じて決定される、電圧と電動機7の周波数との関係を示すパターンである(電動機7の性能に応じて、当該電動機7の回転周波数に応じた、電動機7に与える最適な電圧が、特性として決定されている)。たとえば、周波数(原動機回転数指令12a)が高くなるに連れて、電圧(発電機電圧指令12b)は線形的に高くなる。また、ある値以上の周波数(原動機回転数指令12a)では、電圧(発電機電圧指令12b)が一定となるパターンである場合もある。
【0067】
なお、図3に示す電動機制御システム200においても、遮断器8は、電源供給源部1,3から、大きな電流が流れた際に遮断する、保護回路として機能している。
【0068】
次に、電動機制御システム200の動作を、図6を用いて説明する。
【0069】
図6には、発電機3から出力される電力の周波数の時系列変化を示す図(縦軸:周波数、横軸:時間)、発電機3から出力される電力における電源電圧としての既定電圧値の時系列変化を示す図(縦軸:電圧、横軸:時間)、電動機7に供給される電流の時系列変化を示す図(縦軸:電流、横軸:時間)、および電動機7の回転数の時系列変化を示す図(縦軸:回転数、横軸:時間)が、上から順に併記されている。
【0070】
周波数電圧変換部5の正常時における電動機制御システム200では、制御装置12からは、原動機回転数指令12aおよび発電機電圧指令12bは出力されない。したがって、周波数電圧変換部5の正常時における電動機制御システム200の動作は、周波数電圧変換部5の正常時における図1に示した電動機制御システム100の動作と同じである。したがって、周波数電圧変換部5の正常時における電動機制御システム200の動作の詳細な説明は、ここでは省略する。
【0071】
なお、図6の「周波数電圧変換部5での異常発生時」より左側が、電動機制御システム200の正常時における、発電機3および電動機7の動作を示している。図6に示すように、周波数電圧変換部5の正常時には、電動機制御システム200では、ガバナ装置2および自動電圧調整器4により、一定の周波数(たとえば、50Hzまたは60Hz)、一定の既定電圧値(たとえば、数百Vや数kV)の電力が、発電機3から定常的に出力される。そして、発電機3から出力された電力は、周波数電圧変換部5において、所望の電圧および所望の周波数になるように、周波数および電圧の変換が実施される。当該変換後の電力は、周波数電圧変換部5から電動機7へと供給される。
【0072】
次に、周波数電圧変換部5で異常が発生したときにおける、電動機制御システム200の動作について説明する。
【0073】
周波数電圧変換部5において、異常が発生したとする。当該異常は、周波数電圧変換部5内に配設されるパワー半導体素子の破損や周波数電圧変換部5内に配設される冷却ファンの故障等により、発生する。
【0074】
周波数電圧変換部5において異常が発生すると、発電機3から電動機7への電力供給は、一時的に停止し、図6における電動機7の電流波形に示すように、電動機7に供給される電流は、一時的にゼロとなる。また、電動機7への電流供給が一時的に停止するので、図6の電動機7の回転数波形に示すように、プロペラ9の慣性や船舶のその時における速度応じた反抗力に応じて、電動機7の回転数も減衰し始める。また、図6の発電機3の周波数波形および発電機3の電圧波形に示すように、周波数電圧発生器5に異常が発生してから、後述するように電動機7への電力供給が再開されるまでの期間、発電機3から出力される電力において、周波数および電圧は、船舶の慣性に対応して減少する。
【0075】
一方、周波数電圧変換部5において異常が発生すると、当該周波数電圧変換部5は、スイッチ6sに対して、異常信号10を送信する。当該異常信号10を受信したスイッチ6sは、「切」状態から「入」状態へと移行する。
【0076】
これにより、図3に示す電動機制御システム200では、前記異常発生時点から短期間経過した後、発電機3から出力された電力は、周波数電圧変換部5を介さず、電動機7へと供給される。換言すると、発電機3から出力された電力は、バイパス回路6を介して、電動機7へと供給される(図6における「スイッチ6sが「切」から「入」へと移行した時点の各波形を参照)。
【0077】
これにより、電動機制御システム200は、電動機制御システム100と同様に、周波数電圧変換部5で異常が発生したとしても、電動機7への電力供給を行うことが可能である。つまり、周波数電圧変換部5で異常が発生したとしても、船舶の推進力は確保することができる。
【0078】
ここで、電動機制御システム200では、周波数電圧変換部5は、制御装置12対しても異常信号10を送信する。そこで、電動機制御システム200では、周波数電圧変換部5において異常が発生した場合には、制御部12,2,4を用いた後述する態様で、発電機3からバイパス回路6を介して電動機7へと電力供給を行う。
【0079】
図4に示すように、第一の指令生成部40には、その時点における電動機回転数信号11aと、その時点における電動機回転数指令13とが入力されている。そこで、図5に示すように、まず、ローパスフィルタ40Aが、電動機回転数指令13に対して、上記閾値を利用したフィルタリングをかける。したがって、ローパスフィルタ40Aは、低域の電動機回転数指令13を出力する(つまり、高周波で変化する(短期間に大きくまたは激しく変動する)電動機回転数指令13は、当該ローパスフィルタ40Aにより、フィルタリングされる)。
【0080】
なお、高周波で変動する電動機回転数指令13を用いた原動機回転数指令12aの生成が許容できる場合には、当該ローパスフィルタ40Aを省略する構成を採用することも可能である。
【0081】
ローパスフィルタ40Aを通過した電動機回転数指令13と入力している電動機回転数信号11aとの差分値を、第一の指令生成部40は計算する。そして、当該差分値は、リミッタ40Bに入力される。
【0082】
上述したように、リミッタ40Bは、予め設定されている差分制限値を利用して、入力してきた前記差分値に対して、制限をかけることができる(換言すると、リミッタ40Bにより、原動機回転指令12aに基づく発電機7の電源周波数と電動機7の回転数との差分で生じる電力量に制限が設けられる)。
【0083】
つまり、リミッタ40Bは、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値が、予め設定されている差分制限値を超えるとき、当該差分制限値に内に納まる任意の値を差分値情報値として生成する(たとえば、当該差分制限値自身または、当該差分制限値より若干小さい値が、差分値情報値として、生成される)。また、リミッタ40Bは、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値が、予め設定されている差分制限値以内であるときには、当該差分値を前記差分値情報値として生成する。
【0084】
そして、第一の指令生成部40では、リミッタ40Bから出力される前記差分値情報値に、電動機回転数信号11aを加えた値を、原動機回転数指令12aとして生成する。図4に示すように、当該生成された原動機回転数指令12aは、第二の指令生成部41および一方のスイッチ42に向けて出力される。
【0085】
第二の指令生成部41では、受信した原動機回転数指令12aと、予め設定されている電圧・周波数特性とを用いて、発電機電圧指令12bを生成する。ここで、当該電圧・周波数特性として、たとえば、複数の周波数値に対応して電圧値が各々設定されている対応テーブルが採用される。第二の指令生成部41は、当該対応テーブルを参照し、受信した原動機回転数指令12aの値である周波数値に対応する、電圧値を見出す。そして、第二の指令生成部41は、当該見出した電圧値を、発電機電圧指令12bとして生成する。その後、図4に示すように、当該生成された発電機電圧指令12bは、他方のスイッチ42に向けて出力される。
【0086】
ところで、周波数電圧変換部5において異常が発生すると、当該周波数電圧変換部5は異常信号10を出力し、当該異常信号10は、制御装置12においても受信される(図3,4参照)。各スイッチ42は、当該異常信号10の入力応じて、「切」状態から「入」状態へと移行する。したがって、周波数電圧変換部5において異常が発生すると、一方のスイッチ42を介して、制御装置12から原動機回転数指令12aが出力され、他方のスイッチ42を介して、制御装置12から発電機電圧指令12bが出力される(図4参照)。
【0087】
図3に示すように、制御装置12から出力された原動機回転数指令12aは、ガバナ装置2に入力し、制御装置12から出力された発電機電圧指令12bは、自動電圧調整器4に入力する。
【0088】
ガバナ装置2は、受信した原動機回転数指令12aに基づいて、燃料供給の調整を行い、原動機1の回転数が当該原動機回転数指令12aに示す値になるように、原動機1の制御を行う。他方、自動電圧調整器4は、受信した発電機電圧指令12bに基づいて、発電機3の界磁電流を調整し、発電機3から出力される電圧が当該発電機電圧指令12に示す値となるように、発電機3の制御を行う。
【0089】
電力供給源部1,3からは、原動機回転数指令12aおよび発電機電圧指令12bに従った電力が出力される。そして、電力供給源部1,3から出力された電力は、バイパス回路6を介して(換言すると、周波数電圧変換部5を介さず)、電動機7に供給される。これにより、図6の「スイッチ6sが「切」から「入」へと移行した時点」で示すように、電動機7には、供給された電力に応じた電流が流れ、供給された電力に応じた回転数となるように回転を変化させる。
【0090】
また、当該電動機7の回転数の変化を、回転数検出器11が検出し、図3に示すように、当該検出結果(電動機回転数信号11a)を、制御装置12対して送信する。制御装置12では、受信した電動機回転数信号11aと、その時点において受信した電動機回転数指令13とを用いて、上記同様に、原動機回転数指令12aおよび発電機電圧指令12bを生成し、出力する。そして、原動機回転数指令12aおよび発電機電圧指令12bに従った電力が電動機7に直接供給され、当該電力の供給を受けて電動機7は回転駆動を続ける。
【0091】
当該動作を繰り返すことにより、図6の「スイッチ6sが「切」から「入」へと移行した時点」から右側における電動機7の電流波形および電動機7の回転波形に示すように、制御装置12は、電動機7の回転数が、電動機回転数指令13に示す目標回転数に近づき到達するように、ガバナ装置2および自動電圧調整器4を制御する(図6の「スイッチ6sが「切」から「入」へと移行した時点」から右側における発電機3の周波数波形および発電機3の電圧波形参照)。このような繰り返しによる制御が、電圧周波数可変制御である。
【0092】
つまり、電動機7の回転数(電動機回転数信号11a)が電動機回転数指令13となった時点で、当該回転数を維持するために必要な電力が、電力供給源部1,3から定常的(安定的)に供給され続け、当該回転数を維持するために必要な電流が、電動機7に対して定常的(安定的)に流れる。
【0093】
ここで、操舵室に居るユーザの操作(命令)により、船舶の推進力(船舶の速度)を変化させるため、電動機回転数指令13は、適宜変更される。当該変更がローパスフィルタ41Aによりフィルタリングされない程度の変化量である場合には、制御部12,2,4は、当該変更後の電動機回転数指令13に基づいて、上記電圧周波数可変制御を実施する。
【0094】
以上のように、本実施の形態に係る電動機制御システム200では、周波数電圧変換部5に異常が生じたときに、電力供給源部1,3から出力される電力を、周波数電圧変換部5を介さず、電動機7に供給するバイパス回路6を、備えている。
【0095】
したがって、当該電動機制御システム200は、周波数電圧変換部5に異常が発生したとしても、電動機7への電力供給を確保することができ、電動機7の駆動を確保することができる。よって、当該電動機制御システム200を搭載する船舶は、周波数電圧変換部5で異常が発生したとしても、船舶の推進力を確保することができる。
【0096】
また、本実施の形態に係る電動機制御システム200では、周波数電圧変換部5に異常が生じたときに、電力供給源部1,3から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う制御部12,2,4を、備えている。
【0097】
したがって、当該電動機制御システム200は、周波数電圧変換部5に異常が生じたときに、電動機7の駆動確保だけなく、電動機回転数指令13を無視した電動機7の駆動を防止することができる(たとえば、常にトップスピードで電動機7が回転することを防止できる)。
【0098】
また、制御部12,2,4で調整された電力が電動機7に供給され、図1に示す構成のように、突然かつ直接的に、電力供給源部1,3から50,60Hzといった周波数の電力が電動機7に供給されることを防止できる。これにより、図2に示したような突入電流の発生を防止できる。したがって、電動機制御システム200では、当該突入電流に備えて、システムを構成する回路(たとえば、遮断機8や発電機3等)の性能に変更を与える必要もない(前記回路に対する過剰な性能設定が不要となる)。
【0099】
また、本実施の形態に係る電動機制御システム200では、電力供給源部1,3は、周波数電圧変換部5が正常のときには、周波数電圧変換部5に対して、所定の周波数および他の所定の電圧である電力を出力する。
【0100】
したがって、電動機制御システム200は、周波数電圧変換部5が正常のときには、電力供給源部1,3を所定の電圧・周波数の電力を定常的に供給する電源として機能させ、周波数電圧変換部5により、操舵室からの電動機7の回転数に関する命令に応じて、電力供給源部1,3から供給される電力に対して、周波数および電圧の変換処理を行うことができる。
【0101】
また、本実施の形態に係る電動機制御システム200では、第一の指令生成部40は、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとを用いて、電動機7の回転数が、目標回転数(電動機回転数指令13に示される回転数)に近づくように、原動機回転数指令12aを生成している。より具体的には、第一の指令生成部40は、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値が、予め設定されている差分制限値を超えるとき、当該差分制限値に内に納まる任意の値を差分値情報値として生成し(第一の指令生成部40内のリミッタ40Bの動作)、電動機回転数信号11aに当該差分値情報値を加えた値を、原動機回転数指令12aとして生成している。
【0102】
このように、電動機制御システム200では、上記動作を行う、つまり、電動機7に対する急激な回転数の変化に対して制限を加える(換言すれば、電動機回転数信号11aに対して大きく増減した原動機回転数指令12aを生成することを防止する)リミッタ40Bを備えている。よって、電動機7に流れる電流の大きな変化を防止できる。したがって、電動機7に大きな値の電流が流れることに備えて、システムを構成する回路(たとえば、遮断機8や発電機3等)の性能に変更を与える必要もない(前記回路に対する過剰な性能設定が不要となる)。換言すれば、周波数電圧変換部5の異常発生後において、リミッタ40を備える電動機制御システム200は、過大な性能を発電機3を含む構成ブロック回路に設定しなくても、各構成ブロック回路を保護しながら、制御装置12を用いた電力供給の制御が可能となる。
【0103】
また、原動機7の回転の減速の際にも、当該リミッタ40Bを利用して、電動機回転数指令13と電動機回転数信号11aとの差分値に制限を設けることにより、電動機7を含めた各回路における過負荷状態や異常発生を防止できる。
【0104】
また、電動機制御システム200では、第二の指令生成部41は、第一の指令生成部40で生成された原動機回転数指令12aと、予め設定されている電圧・周波数特性とに基づいて、発電機電圧指令12bを生成している。
【0105】
したがって、制御装置12は、原動機回転数指令12aに応じて、電動機7に適切な電圧を常に印加することができる。
【0106】
また、電動機制御システム200では、制御装置12は、入力される電動機回転数指令13が変化したとき、当該変化した電動機回転数指令13に基づいた上記電圧周波数可変制御を行う。
【0107】
したがって、操舵室からの電動機7の回転数変化の指令(つまり、船舶の速度変化の指令)に応じて、電力供給源部1,3から出力される電力の電圧・周波数を変化させるように、制御装置12は、ガバナ装置2および自動調整器4を制御することができる。つまり、周波数電圧変換部5に異常が発生した後においても、電動機制御システム200は、電動機回転数指令13に応じて、電動機7の回転数を変化(調整)することができる(電動機7の可変速運転が可能)。
【0108】
また、電動機制御システム200では、第一の指令生成部40は、ローパスフィルタ40Aを、備えており、第一の指令生成部40は、ローパスフィルタ40Aによりフィルタリングされた電動機回転数指令13を用いて、原動機回転数指令12a生成している。
【0109】
したがって、第一の指令生成部40は、高周波で変化する電動機回転数指令13を用いた、原動機回転数指令12aの生成を防止することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 原動機
2 ガバナ装置
3 発電機
4 自動電圧調整器
5 周波数電圧変換部
6 バイパス回路
6s スイッチ
7 電動機
8 遮断器
9 プロペラ
10 異常信号
11 回転数検出器
11a 電動機回転数信号
12 制御装置
12a 原動機回転数指令
12b 発電機電圧指令
13 電動機回転数指令
40 第一の指令生成部
40A ローパスフィルタ(低域通過濾波器)
40B リミッタ(差分制限器)
41 第二の指令生成部
42 スイッチ
100,200,500 電動機制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動作を行う電動機と、
前記電動機に、電力を供給する電力供給源部と、
前記電力供給源部と前記電動機との間に配設され、前記電力供給源部から出力された電力に対して、周波数および電圧の変換を施し、当該変換後の電力を前記電動機に対して出力する周波数電圧変換部と、
前記周波数電圧変換部に異常が生じたときに、前記電力供給源部から出力される電力を、前記周波数電圧変換部を介さず、前記電動機に供給するバイパス回路と、
前記周波数電圧変換部に異常が生じたときに、前記電力供給源部から出力される電力の電圧および周波数を、可変に制御する電圧周波数可変制御を行う制御部とを、備えている、
ことを特徴とする電動機制御システム。
【請求項2】
前記電力供給源部は、
前記周波数電圧変換部が正常のときには、前記周波数電圧変換部に対して、所定の周波数および他の所定の電圧である電力を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動機制御システム。
【請求項3】
前記電力供給源部は、
原動機と、
前記原動機の駆動によって発電する発電機とを、含み、
前記制御部は、
前記原動機の回転数を調整するガバナ装置と、
前記発電機の出力電圧を調整する電圧調整器と、
前記電圧周波数可変制御の際に、前記ガバナ装置に対して、前記原動機の回転数を制御するための信号である原動機回転数指令を出力し、前記電圧調整器に対して、前記発電機の出力電圧を制御するための信号である発電機電圧指令を出力する、制御装置とを、含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動機制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
ユーザにより指定された前記電動機の目標回転数を示す電動機回転数指令と、前記電動機の回転数を示す電動機回転数信号とを入力し、前記電動機回転数指令と前記電動機回転数信号とに基づいて、前記電動機の回転数が前記目標回転数に近づくように、前記原動機回転数指令を生成する第一の指令生成部と、
前記第一の指令生成部で生成された前記原動機回転数指令と、予め設定されている電圧・周波数特性とに基づいて、前記発電機電圧指令を生成する第二の指令生成部とを、含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の電動機制御システム。
【請求項5】
前記第一の指令生成部は、
前記電動機回転数指令と前記電動機回転数信号との差分値が、予め設定されている差分制限値を超えるとき、当該差分制限値に内に納まる任意の値を差分値情報値として生成し、前記電動機回転数信号に前記差分値情報値を加えた値を、前記原動機回転数指令として生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動機制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、
入力される前記電動機回転数指令が変化したとき、当該変化した前記電動機回転数指令に基づいた前記電圧周波数可変制御を行う、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動機制御システム。
【請求項7】
前記第一の指令生成部は、
ローパスフィルタを、備えており、
前記第一の指令生成部は、
前記ローパスフィルタによりフィルタリングされた前記電動機回転数指令を用いて、前記原動機回転数指令を生成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電動機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−21889(P2013−21889A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155498(P2011−155498)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】