説明

電動車のバッテリーパック構造

【課題】バッテリーパック内への水の浸入を防止し、バッテリーパック自体の剛性を高め同時に車体に強固に取り付けることができるバッテリーパック構造を提供すること。
【解決手段】外フレーム部材16は一対設けられ、左右のサイドメンバ30にそれぞれ連結されると共に、トレー18の周壁1804に取着されている。内フレーム部材22は、収容空間1808の底部上で収容空間1808の左右方向(車幅方向)の全長にわたって延在している。内フレーム部材22の長手方向の両端が取着される周壁1804の箇所の外面に、外フレーム部材16が位置している。バッテリー12は、トレー18の底壁1802から上方に離間した内フレーム部材22の箇所に取着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車のバッテリーパック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とした電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車においてモータに電力を供給するバッテリーは、該バッテリーを収容保持したバッテリーパックとして配設されている。
バッテリーは、高圧の直流電力をモータに供給することから、複数の電池セルを直列に接続したバッテリーモジュールを複数個直列に接続して構成されている。
バッテリーパックの構造として以下のものが提案されている。
1)上部支持フレームおよび下部支持フレームで束ねられた複数のバッテリーモジュールを合成樹脂製の上部バッテリーカバーおよび下部バッテリーカバーで覆う。そして、下部支持フレームの左右両端部を、上部バッテリーカバーと下部バッテリーカバーとの間を通して外部に延出し、下部支持フレームの左右両端部を左右のサイドフレームに固定する(特許文献1、図5)。
2)バッテリーパック(複数のバッテリー)をバッテリーボックスの底壁に貫通形成された取り付け穴を用いて取着する。バッテリーボックスの底壁の外面に溶接された外側板体部を左右のサイドフレームにねじ部材により締結する(特許文献2,図3〜図6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4385020号公報
【特許文献2】特許第3229637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の従来技術は、下部支持フレームの左右両端部と上部バッテリーカバーおよび下部バッテリーカバーとの間に隙間が生じ、バッテリーパックに水がかかった場合に、この隙間から水がバッテリーパック内に侵入することが懸念される。
また、後者の従来技術も、バッテリーボックスに水がかかった場合に、バッテリーボックスの底壁に形成された取り付け穴から水がバッテリーボックス内に侵入することが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、バッテリーパック内への水の浸入を防止する上で有利で、しかもバッテリーパック自体の剛性を高め同時に車体に強固に取り付けることができるバッテリーパック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、底壁と、この底壁の周囲から起立する周壁とを有し車両の駆動用のバッテリーを収容するトレーと、前記トレーの上部を閉塞するカバーとを備える電動車のバッテリーパック構造であって、前記バッテリーパックは、前記車両の少なくとも2つのメンバ部材間に配置されており、前記2つのメンバ部材にそれぞれ取着されると共に、前記周壁の外面に沿って前記メンバ部材から前記底壁に向かって延在した状態で前記周壁に取着されることで前記トレーを支持する第1及び第2の外フレーム部材と、前記トレーの内部に取着されて前記第1の外フレームから前記第2の外フレームに向かって延在し前記バッテリーを前記底壁から離間させて下方から支持する内フレーム部材とを備え、前記外フレーム部材の延在方向と前記内フレーム部材の延在方向とが交差していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、バッテリーは、トレーの底壁から離れた内フレーム部材上に取着されるので、トレーの底壁にバッテリーを取り付けるための孔を形成する必要がなくなり、トレー内への水の浸入を防止する上で有利となる。
また、トレーの内部に内フレーム部材が設けられると共に、トレーの周壁に、内フレーム部材の延在方向と交差する方向に延在しメンバ部材に連結された第1及び第2の外フレーム部材が取着されることから、トレー自体の剛性が高められ、バッテリーパックを車体に強固に取り付けることができる。また、内フレーム部材をトレーの底壁から離間させているので、内フレーム部材上にバッテリーを取着するために用いられる締結部材等のための空間を確保できる。
請求項2記載の発明によれば、内フレーム部材が設けられるトレーの箇所の剛性がより高められ、また、バッテリーパックの車体への取り付けをより強固に行う上で有利となる。
【0007】
請求項3記載の発明によれば、周壁を挟んで内フレーム部材と第1及び第2の外フレーム部材とがあたかも一体化されたように連続状に設けられるため、トレー自体の剛性が高め、バッテリーパックを車体に強固に取り付ける上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、第1及び第2の外フレーム部材が設けられるトレーの箇所の剛性がより高められ、したがって、トレー自体の剛性が高め、バッテリーパックを車体に強固に取り付ける上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、内フレーム部材が第1及び第2の外フレーム部材に対応して複数設けられるので、トレーの剛性がより高められ、バッテリーパックの車体への取り付けをより強固に行なう上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、充電時、放電時に、バッテリーおよびその周辺部材で発生した熱を、内フレーム部材とトレーの底壁との間のスペースを利用して、空気によって効率的に冷却することができ、バッテリーパックの性能や耐久性を高める上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態の電動車のバッテリーパック構造を示す斜視図である。
【図2】バッテリーパック構造の断面図である。
【図3】サイドメンバ、外フレーム部材、トレー、内フレーム部材、バッテリーパックの取り付け状態を示す断面図である。
【図4】フロアパンに水をこぼした状態を説明する断面図である。
【図5】内フレーム部材と左右の外フレーム部材とがあたかも一体化したように連続状に設けられた状態の説明図である。
【図6】バッテリーパックとトレーの底壁との間に形成される空間を利用した冷却機構の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1,図2に示すように、電動車のバッテリーパック10の構造は、バッテリー12と、フロアパン14と、外フレーム部材16(第1の外フレーム部材及び第2の外フレーム部材)と、トレー18と、カバー20と、内フレーム部材22とを含んで構成されている。
【0010】
図2に示すように、バッテリー12は、直列に接続された複数個(図2では5つ)の電池モジュール1202で構成され、バッテリー12にはこれら電池モジュール1202を機能させるための周辺部品が付設されている。
各電池モジュール1202は、直列に接続された複数個(図2では4つ)の電池セル1204と、それら電池セル1204を収容保持するケース1206とを備えている。
周辺部品としては、DC−DCコンバータ24やジャンクションヒューズボックス26などが例示される。
DC−DCコンバータ24は、バッテリー12から出力される高電圧の直流電圧を降圧し、降圧した直流電圧を、例えば、電動車に搭載された電装装置や補機用のバッテリーに供給するものである。
ジャンクションヒューズボックス26は、バッテリー12に接続された電線、DC−DCコンバータ24に接続された電線、電動車の走行用のモータに電力を供給するインバータに接続された電線やヒューズ、コンタクタ、電流センサなどを互いに結合、分岐、中継するものである。
【0011】
フロアパン14は、車室内と車室外とを区画する鋼板製のフロアパネルの、例えば後部座席の下方の箇所、あるいは、後部座席の後方の箇所などに一体成形されており、フロアパン14には、バッテリー12を収容する凹部1402が形成されている。
フロアパン14は、電動車の前後方向および左右方向(車幅方向)にわたって延在し、左右方向の両端が車体フレームをなすメンバ部材である左右のサイドメンバ30に掛け渡され、それらサイドメンバ30に取着されている。
図2において符号32は、凹部1402と右側のサイドメンバ30との間に配置された排気管を示す。
【0012】
外フレーム部材16は車幅方向に間隔をおいて左右一対設けられ、左右のサイドメンバ30にそれぞれ連結されている。図2において、右側のサイドメンバ30に連結された外フレーム部材16を、本発明で言う第1の外フレーム部材、左側のサイドメンバ30に連結された外フレーム部材16を、本発明で言う第2の外フレーム部材とする。
左右一対の外フレーム部材16は電動車の前後方向に間隔をおいて、言い換えると外フレーム部材16の延在方向と直交する方向に間隔をおいて2組(複数組)設けられている。つまり、本発明で言う第1の外フレーム部材及び第2の外フレーム部材はそれぞれ間隔をおいて2組(複数組)設けられている。
外フレーム部材16は、電動車の前後方向におけるトレー18の前後長さよりも小さい寸法の幅を有している。
図2に示すように、外フレーム部材16は、フロアパン14の上面に載置される上部16Aと、上部14Aの内端から屈曲し凹部1402の側面に沿ってサイドメンバ30からトレー18の底壁1802に向かって延在する下部16Bと、下部16Bの下端から屈曲し凹部1402の底面上を延在する下端部16Cとを備えている。すなわち、外フレーム部材16は、フロアパン14の上方で左右のサイドメンバ30から車幅方向内側に向けて突出している。
【0013】
より詳細には、図1に示すように、外フレーム部材16は、板金製の細長状の2枚の板材1610、1620が重ね合わされて構成されている。
図1、図3に示すように、一方の板材1610は、平板状を呈し、上部16Aから下部16Bの上部にわたって設けられている。
他方の板材1620は、幅方向の両端に位置する取り付け片部1622と、各取り付け片部1622の内端から起立する脚片部1624と、各脚片部1624の先端を接続する中央辺部1626とから構成されている。
【0014】
上部16Aでは、他方の板材1620の各取り付け片部1622が、一方の板材1610にスポット溶接により接合されている。
下部16Bの上部では、他方の板材1620の各取り付け片部1622が一方の板材1610に重ねられた状態で、トレー18の周壁1804にスポット溶接により接合されている。
また、一方の板材1610が位置していない下部16Bでは、他方の板材1620の各取り付け片部1622がトレー18の周壁1804にスポット溶接により接合されている。
【0015】
また、下端部16Cでは、平板状に成形された他方の板材1620のみがトレー18の底壁1802にスポット溶接により接合されている。
なお、図面において、×印は、スポット溶接を示す。
上部16Aと下部16Bの上部は、一方の板材1610と、他方の板材1620とにより閉断面構造が形成され、また、一方の板材1610が位置していない下部16Bは、他方の板材1620とトレー18の周壁1804とにより閉断面構造が形成されている。
したがって、外フレーム部材16自体の剛性が高められることから、バッテリーパック10を車体に強固に取り付ける上で有利となり、また、外フレーム部材16が取着されることによりバッテリーパック10自体の剛性を高める上で有利となる。
【0016】
外フレーム部材16の左右のサイドメンバ30への連結は、図1、図3に示すように、上部16Aをフロアパン14に載置し、一方の板材1610に形成されたボルト頭部挿通孔1612、他方の板材1620の中央辺部1626に形成されたねじ挿通孔1628を挿通したねじ部材1630を、サイドメンバ30上方のフロアパン14に取着されたナット1632に締結することでなされている。
【0017】
トレー18は板金製で、矩形板状の底壁1802と、底壁1802の周囲から起立する周壁1804と、周壁1804の上部の全周に外側に向けて折り返されたトレー側フランジ1806を有している。
そして、底壁1802と周壁1804によりバッテリーパック12を収容する上方に開放状の収容空間1808が形成されている。
トレー18は、上記のように外フレーム部材16に取着されることでフロアパン14の凹部1402上に配置されている。
【0018】
カバー20は、収容空間1808の上部を閉塞するものである。
カバー20は、収容空間1808の上方を覆う矩形状の上壁2002と、上壁2002の周囲から下方に延在する周壁2004と、周壁2004の下部の全周から外側に向けて折り返されたカバー側フランジ2006と、カバー側フランジ2006の先端全周に設けられた屈曲部2008とを有している。
上壁2002と周壁2004により収容空間1808の上方を覆う本体部が形成されている。
カバー側フランジ2006は、トレー側フランジ1806を覆う大きさで形成されている。
屈曲部2008は、カバー側フランジ2006でトレー側フランジ1806を覆った状態でトレー側フランジ1806の外側方を覆うように形成されている。したがって、上方からカバー20に水がかかった場合に、水がカバー側フランジ2006と屈曲部2008を介して下方に導かれ、カバー側フランジ2006とトレー側フランジ1806との間に水が回り込むことを抑制し、収容空間1808内への水の浸入の防止が図られている。
カバー20のトレー18への取り付けは、図3に示すように、カバー側フランジ2006に設けられたねじ挿通孔を挿通したねじ部材2010をトレー側フランジ1806に設けられた雌ねじ部材2012に締結することでなされ、カバー側フランジ2006とトレー側フランジ1806との間にシール材2020が介設され、収容空間1808の気密性の向上が図られている。
【0019】
内フレーム部材22は、収容空間1808の内部で底部上に設けられている。
内フレーム部材22は、外フレーム部材16に対応して前後方向に間隔をおいて2つ設けられている。
内フレーム部材22は、収容空間1808の底部上で収容空間1808の左右方向(車幅方向)の全長にわたって、つまり、右側のサイドメンバ30に設けられた一方の外フレーム部材16(第1の外フレーム部材)から左側のサイドメンバ30に設けられた他方の外フレーム部材16(第2の外フレーム部材)に向かって延在している。
内フレーム部材22の延在方向と、周壁1804に取着された外フレーム部材16の延在方向、すなわち下部16Bの延在方向は交差している。
内フレーム部材22は板金製で細長状を呈しており、幅方向の両端に位置する取り付け片部2202と、各取り付け片部2202の内端から起立する脚片部2204と、各脚片部2204の先端を接続する中央辺部2206とで構成されている。
内フレーム部材22の取り付けは、各取り付け片部2202がトレー18の底壁1802にスポット溶接により接合され、また、内フレーム部材22の長手方向の両端は、取り付け片部2202や中央辺部2206が平面状に屈曲され周壁1804にスポット溶接により接合されることで行なわれている。
【0020】
内フレーム部材22は、底壁1802に取着された状態で、底壁1802と、脚片部2204と、中央辺部2206とにより閉断面構造を形成しており、トレー18の剛性を高める上で有利となっている。
また、内フレーム部材22の延在方向の両端が取着された周壁1804の箇所の外面に、外フレーム部材16が位置している。
トレー18を平面視した状態で、左右の外フレーム部材16と内フレーム部材22とは左右方向に延在する単一の直線上を延在している。
したがって、内フレーム部材22は、左右の外フレーム部材16を周壁1804を挟んで連結し、それら左右の外フレーム部材16と周壁1804を挟んであたかも一体化したように連続状に設けられており、トレー18自体の剛性が高められている。
また、内フレーム部材22が左右の外フレーム部材16に周壁1804を挟んで連結されることから、トレー18を左右のサイドメンバ30により強固に取り付ける上で有利となっている。
また、本実施の形態では、トレー18には、外フレーム部材16による閉断面構造と、内フレーム部材22による閉断面構造とが連続状に設けられることになり、トレー18自体の剛性を高め、トレー18を左右のサイドメンバ30により強固に取り付ける上で有利となっている。
【0021】
バッテリー12は、トレー18の底壁1802から上方に離間した内フレーム部材22の箇所に取着されている。
詳細には、図1〜図3に示すように、各電池モジュール1202のケース1206の下面の両端を中央辺部2206に載置し、ケース1206の下部両側の取り付け片1220を、中央辺部2206に載せ、取り付け片1220のねじ挿通孔1222、中央辺部2206のねじ挿通孔2208を挿通したねじ部材2230を、中央辺部2206の下面に溶着した雌ねじ部材2240に締結することでバッテリー12が取着されている。
また、周辺部材は、周辺部材に設けられた不図示の取り付け片のねじ挿通孔、中央辺部2206のねじ挿通孔に挿通したねじ部材を、中央辺部2206の下面に溶着した雌ねじ部材に締結することで取着されている。
【0022】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
バッテリー12は、トレー18の底壁1802から離れた内フレーム部材22上に取着されているので、トレー18の底壁1802にバッテリー12を取り付けるための孔を形成する必要がなくなる。
したがって、このような孔から水が浸入することもなく、トレー18内への水の浸入を防止する上で有利となる。
特に、図4にハッチングで示すように、フロアパン14に水がこぼれて水が凹部1402を満たすような状況になったとしても、トレー18の底壁1802に上述した孔がないため、バッテリー12内への水の浸入を防止する上で有利となる。
【0023】
また、トレー18の内部に、外フレーム部材16の下部16Bの延在方向と交差する方向に延在する内フレーム部材22が設けられていることから、トレー18自体の剛性を高める上で有利となる。
本実施の形態では、図5に黒点が付された領域Aで示すように、この内フレーム部材22は、左右のサイドメンバ30に連結された左右の外フレーム部材16が周壁1804を挟んであたかも一体化したように連続状に設けられる。
したがって、あたかも左右のサイドメンバ30に架け渡された単一のフレーム部材にトレー18が取り付けられることになり、バッテリーパック12を車体に強固に取り付ける上で有利となる。
また、内フレーム部材22と、左右の外フレーム部材16は、電動車の前後方向に間隔をおいて複数設けられているのでトレー18自体の剛性がより高められ、バッテリー12を車体により強固に取り付ける上で有利となっている。
【0024】
また、トレー18とカバー20とによって閉塞された収容空間1808にバッテリー12が収容されているため、車室内において上方からフロアパン14上に水をこぼし、カバー20やトレー18に水がかかったとしても、バッテリー12内への水の浸入を防止でき、カバー側フランジ2006でトレー側フランジ1806を覆った状態でトレー側フランジ1806の外側方を覆う屈曲部2008が設けられているので、収容空間1808内への水の浸入の防止する上でより有利となっている。
【0025】
ところで、トレー18をフロアパン14の凹部1402に配設するに際して、本実施の形態のように車幅方向で互いに切り離された左右の外フレーム部材16の代わりに、車幅方向に連続して形成された外フレーム部材16を用い、内フレーム部材22を用いないことが考えられる。
しかしながら、車幅方向に連続して形成された外フレーム部材16を用いる場合には、フロアパン14の凹部1402の底壁1802と、トレー18の底壁1802との間に位置する外フレーム部材16の部分が、高さ方向においてスペースを占有することになる。
したがって、フロアパン14の凹部1402の底壁1802と、トレー18の底壁1802との間にデッドスペースが発生し、バッテリーパック10の省スペース化を図る上で不利が生じる。
これに対して本実施の形態のように、外フレーム部材16を左右に切り離し、それら外フレーム部材16を連結する内フレーム部材22をトレー18の内部に設けると、そのようなデッドスペースが生じず、バッテリーパック10の省スペース化を図る上で有利となる。
【0026】
また、バッテリー12は、トレー18の底壁1802から上方に離間した内フレーム部材22の箇所に取着されているので、バッテリー12とトレー18の底壁1802との間にスペースを確保することができる。
本実施の形態では、トレー18の底壁1802の前後部において、バッテリー12との間に内フレーム部材22が配置されることで、それら前後の内フレーム部材22の間でバッテリー12とトレー18の底壁1802との間にスペースが確保される。
したがって、このスペースを利用し、このスペースに空気を流通させることによりバッテリー12の冷却を行うことが可能となる。
【0027】
図6は、バッテリー12の冷却機構40の一例を示す説明図である。
この冷却機構40は、空気導入路4002と、空気排出路4004と、ファン4008とを含んで構成されている。
空気導入路4002は、外部からトレー18とカバー20とによって閉塞された収容空間1808内に外気を導くものである。
空気排出路4004は、収容空間1808内を流通した空気を収容空間1808の外部に導くものである。
ファン4008は、空気排出路4004に設けられ、空気を空気導入路4002に導くと共に、収容空間1808内の空気を外部に排出するものである。
【0028】
このような冷却機構40によれば、ファン4008が作動することにより空気導入路4002を介して収容空間1808に導入された冷却用の空気が、各電池モジュール1202の間の空間、バッテリー12とトレー18の底壁1802との間の空間、周辺部材24,26の周囲の空間を流通し、空気排出路4004を経て外部に排出される。
したがって、充電時、放電時に、電池モジュール1202および周辺部材24,26で発生した熱を冷却用の空気によって効率的に冷却することができ、バッテリー12の性能や耐久性を高める上で有利となる。
なお、前述したように外フレーム部材16をトレー18の外側で車幅方向に連続して形成した場合は、外フレーム部材16はトレー18の外部に位置することから、外フレーム部材16により冷却用の空気を流通させる空間を確保できない。したがって、本実施の形態は、内フレーム部材22によって得られるスペースを有効利用する点において優れている。
【0029】
なお、本実施の形態では、外フレーム部材16、トレー18、内フレーム部材22が金属材料で形成されており、外フレーム部材16とトレー18との取着、および、トレー18と内フレーム部材22との取着が、スポット溶接によってなされている場合について説明した。
しかしながら、外フレーム部材16、トレー18、内フレーム部材22の材料は金属材料に限定されるものではなく、合成樹脂材料で形成されていてもよい。この場合には、外フレーム部材16とトレー18との取着、および、トレー18と内フレーム部材22との取着は、接着剤を用いることでなされることになる。
【0030】
また、本実施の形態では、外フレーム部材16はサイドメンバ30に取り付けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、サイドメンバ以外の車体フレームをなすメンバ部材である例えばクロスメンバなどに取り付けられてもよい。
【0031】
また、本実施の形態では、内フレーム部材22はトレー18の底壁1802に取着され、底壁1802と共に閉断面構造を形成するものとしたが、これに限られるものではなく、内フレーム部材の両端が互いに対向する周壁1804の箇所に取着されるようにしてもよい。この場合、内フレーム部材22はトレー18の底壁1802と閉断面構造を形成しないが、この構成においてもトレー18の剛性強化およびバッテリーパック10の構造の強化を図ることが可能である。しかし、内フレーム部材22とトレー18の底壁1802とで閉断面構造を形成させた構成の方がより効果的にトレー18の剛性強化およびバッテリーパッ10の構造の強化を図る上で有利となる。
【0032】
また、本実施の形態では、外フレーム部材16の下部16cがトレー18の周壁1804と共に閉断面構造を形成するものとしたが、これに限られるものでなく、外フレーム部材16の下部16cがトレー18の周壁1804の外面に取着されるにあたり、外フレーム部材16の下部16cがトレー18の周壁1804と閉断面構造を形成しない構成であってもよい。この構成においてもトレー18の剛性強化およびバッテリーパック10の構造の強化を図ることが可能である。しかし、外フレーム部材16の下部16cとトレー18の周壁1804とで閉断面構造を形成させた構成の方がより効果的にトレー18の剛性強化およびバッテリーパック10の構造の強化を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0033】
10……バッテリーパック、12……バッテリー、1202……電池モジュール、1204……電池セル、1206……ケース、14……フロアパン、1402……凹部、16……外フレーム部材(第1及び第2の外フレーム部材)、16A……上部、16B……中間部、16C……下部、1610、1620……板材、18……トレー、1802……底壁、1804……周壁、1806……トレー側フランジ、20……カバー、2006……カバー側フランジ、2008……屈曲部、22……内フレーム部材、2202……取り付け片部、2204……脚片部、2206……中央辺部、30……サイドメンバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、この底壁の周囲から起立する周壁とを有し車両の駆動用のバッテリーを収容するトレーと、
前記トレーの上部を閉塞するカバーとを備える電動車のバッテリーパック構造であって、
前記バッテリーパックは、前記車両の少なくとも2つのメンバ部材間に配置されており、
前記2つのメンバ部材にそれぞれ取着されると共に、前記周壁の外面に沿って前記メンバ部材から前記底壁に向かって延在した状態で前記周壁に取着されることで前記トレーを支持する第1及び第2の外フレーム部材と、
前記トレーの内部に取着されて前記第1の外フレーム部材から前記第2の外フレーム部材に向かって延在し前記バッテリーを前記底壁から離間させて下方から支持する内フレーム部材とを備え、
前記第1及び第2の外フレーム部材の延在方向と前記内フレーム部材の延在方向とが交差している、
ことを特徴とする電動車のバッテリーパック構造。
【請求項2】
前記内フレーム部材は前記底壁に取着され、前記底壁と共に閉断面構造を形成している、
ことを特徴とする請求項1記載の電動車のバッテリーパック構造。
【請求項3】
前記内フレーム部材の延在方向の両端は互いに対向する前記周壁の箇所に取着されており、
前記両端が取着された前記周壁の箇所の外面に、前記第1及び第2の外フレーム部材が取着されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の電動車のバッテリーパック構造。
【請求項4】
前記第1及び第2の外フレーム部材は、前記メンバ部材に取着され前記トレー側に延在する上部と、前記上部の端部から前記周壁の前記外面に沿って延在し前記周壁に取着される下部とを有し、
前記下部は、前記周壁と共に閉断面構造を形成している、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の電動車のバッテリーパック構造。
【請求項5】
前記第1の外フレーム部材は、該第1の外フレーム部材の延在方向と直交する方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記第2の外フレーム部材は、該第2の外フレーム部材の延在方向と直交する方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記内フレーム部材は前記複数の第1及び第2外フレーム部材に対応して間隔をおいて複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の電動車のバッテリーパック構造。
【請求項6】
前記内フレーム部材と前記底壁との間に形成された空間に空気を流通させ、バッテリーパックの冷却を行なう冷却機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の電動車のバッテリーパック構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−109845(P2013−109845A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251714(P2011−251714)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】