電動車両のブレーキ制御装置
【課題】回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータを停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消すること。
【解決手段】ハイブリッド車のブレーキ制御装置は、マスタシリンダ13と、ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRと、VDCブレーキ液圧ユニット2と、モータコントローラ8と、統合コントローラ9と、を備える。モータコントローラ8は、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する。統合コントローラ9は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、マスタシリンダ圧による基本液圧分と回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分をVDCブレーキ液圧ユニット2による加圧分で補償する制御を行う。加えて、回生協調ブレーキ制御にてVDCモータ21を停止させた際、差圧弁であるM/Cカットソレノイドバルブ25,26による差圧制御を、VDCモータ21のモータ回転数に基づいて行う。
【解決手段】ハイブリッド車のブレーキ制御装置は、マスタシリンダ13と、ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRと、VDCブレーキ液圧ユニット2と、モータコントローラ8と、統合コントローラ9と、を備える。モータコントローラ8は、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する。統合コントローラ9は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、マスタシリンダ圧による基本液圧分と回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分をVDCブレーキ液圧ユニット2による加圧分で補償する制御を行う。加えて、回生協調ブレーキ制御にてVDCモータ21を停止させた際、差圧弁であるM/Cカットソレノイドバルブ25,26による差圧制御を、VDCモータ21のモータ回転数に基づいて行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーが要求する減速度を基本液圧分と回生分の総和で達成し、不足する回生分を基本液圧の加圧分により補償する回生協調ブレーキ制御を行う電動車両のブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバーが要求する減速度を基本液圧分と回生分の総和で達成し、不足する回生分を基本液圧の加圧分により補償する回生協調ブレーキ制御を行う車両用ブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来装置は、マスタシリンダとホイルシリンダ間に設置してある差圧弁のコントロールと、液圧ポンプによるポンプアップ昇圧により、マスタシリンダ圧より高いホイルシリンダ圧を発生し、この差圧を加圧分としている。そして、差圧弁のコントロールは、液圧ポンプのVDCモータが作動している状態にて目標とする差圧が得られるように、フィードフォワード制御によりバルブ作動電流を変化させることで達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−168460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用ブレーキ装置にあっては、液圧ポンプのVDCモータの作動状態に適合させたフィードフォワード制御にて差圧弁の作動電流値を決定している。このため、液圧ポンプのVDCモータが停止した時には、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が想定値以下になってしまい、加圧分の制動力が不足し、車両の減速度が低下することにより乗員に違和感を与える、という問題があった。
【0006】
すなわち、液圧ポンプにより送り込まれたブレーキ液はホイルシリンダ圧を上昇させるが、所望の差圧を上回ると、差圧弁を介してマスタシリンダ側にリリースすることによって所望の差圧を保つように調整される。しかし、液圧ポンプのVDCモータが停止すると、ブレーキ液の流れがなくなり、差圧弁を介してマスタシリンダ側へリリースされるブレーキ液がなくなる。その際、差圧弁によるオリフィス効果にて発生していたホイルシリンダ側の昇圧分が減少してしまい、差圧が想定値以下になる。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータを停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる電動車両のブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両のブレーキ制御装置は、マスタシリンダと、ホイルシリンダと、ブレーキ液圧アクチュエータと、回生制動力制御手段と、回生協調ブレーキ制御手段と、差圧弁作動制御手段と、を備える手段とした。
前記マスタシリンダは、ドライバー操作に応じたマスタシリンダ圧を発生する。
前記ホイルシリンダは、前後輪の各輪に設けられ、ホイルシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与える。
前記ブレーキ液圧アクチュエータは、前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとの間に介装され、ポンプモータにより駆動する液圧ポンプと、前記ポンプモータの作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有する。
前記回生制動力制御手段は、駆動輪に連結された走行用電動モータに接続され、前記走行用電動モータにより発生する回生制動力を制御する。
前記回生協調ブレーキ制御手段は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、前記マスタシリンダ圧による基本液圧分と前記回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分を前記ブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分で補償する制御を行う。
前記差圧弁作動制御手段は、回生協調ブレーキ制御にて前記ポンプモータを停止させた際、前記差圧弁による差圧制御を、前記ポンプモータのモータ回転数に基づいて行う。
【発明の効果】
【0009】
よって、制動操作時、回生協調ブレーキ制御手段において、ドライバーが要求する減速度を基本液圧分と回生分の総和で達成し、不足する回生分をブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分で補償する制御が行われる。そして、差圧弁作動制御手段において、回生協調ブレーキ制御にてポンプモータを停止させた際、差圧弁による差圧制御が、ポンプモータのモータ回転数に基づいて行われる。
すなわち、ポンプモータを停止させた際、ポンプモータ作動状態で所望の差圧を得る制御を維持すると、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が想定値以下になってしまい、加圧分の制動力が不足する。これに対し、ポンプモータ作動状態での差圧制御に代え、ポンプモータ停止状態での差圧制御を、ブレーキ液の流量変化をあらわすポンプモータのモータ回転数に基づいて行う。したがって、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が想定値に保たれ、加圧分の制動力不足により車両の減速度が低下することを防止できる。
このように、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータを停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車(電動車両の一例)の構成を示すブレーキシステム図である。
【図2】実施例1のブレーキ制御装置におけるVDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータの一例)を示すブレーキ液圧回路図である。
【図3】実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラで実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】制動操作時に負圧ブースタによりドライバー要求の減速度を得る場合のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図5】制動操作時に負圧ブースタにより基本液圧を発生するようにドライバー要求の減速度からのオフセットギャップを設定した場合のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図6】制動操作時にドライバー要求の減速度を負圧ブースタと回生ブレーキにより補償する最大回生トルク発生時のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図7】制動操作時にドライバー要求の減速度を負圧ブースタと回生ブレーキとVDCブレーキ液圧ユニットにより補償する回生協調時のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図8】実施例1のブレーキ制御装置における車速に対する走行用電動モータで発生する回生制動力による発生減速度の相関関係を示す図である。
【図9】実施例1のブレーキ制御装置における車速に対する目標減速度と各制動装置での発生減速度の相関関係を示す図である。
【図10】実施例1のブレーキ制御装置におけるVDCブレーキ液圧ユニット内に設けられた第1M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)での目標差圧と作動電流値の関係を示すP−Iマップである。
【図11】制動操作開始から停車して停車状態を保つまでのVDCモータ回転数・差圧弁駆動電流・ホイルシリンダ圧・減速度・車速の各比較特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電動車両のブレーキ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車(電動車両の一例)の構成を示すブレーキシステム図である。図2は、VDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータの一例)を示すブレーキ液圧回路図である。以下、図1および図2に基づき、ブレーキシステム構成を説明する。
【0013】
実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ減速度発生系は、図1に示すように、ブレーキ液圧発生装置1と、VDCブレーキ液圧ユニット2(ブレーキ液圧アクチュエータ)と、ストロークセンサ3と、左前輪ホイルシリンダ4FLと、右前輪ホイルシリンダ4FRと、左後輪ホイルシリンダ4RLと、右後輪ホイルシリンダ4RRと、走行用電動モータ5と、を備えている。
【0014】
実施例1のブレーキ減速度発生系は、実車(エンジン車)に搭載されている既存のVDCシステム(VDCは、「Vehicle Dynamics Control」の略)を利用した構成による回生協調ブレーキシステムである。VDCシステムとは、高速でのコーナー進入や急激なハンドル操作などによって車両姿勢が乱れた際に、横滑りを防ぎ、優れた走行安定性を発揮する車両挙動制御(=VDC制御)を行うシステムである。運転状況に応じて自動的に制御するVDC制御は、車両姿勢等をセンサによって感知し、例えば、オーバーステアと判断するとコーナー外側の前輪にブレーキをかけ、逆にアンダーステアと判断すると駆動パワーを落とすとともに後輪のコーナー内側のタイヤにブレーキをかける。
【0015】
前記ブレーキ液圧発生装置1は、ドライバーによるブレーキ操作に応じた基本液圧を発生する基本液圧発生手段である。このブレーキ液圧発生装置1は、図1および図2に示すように、ブレーキペダル11と、負圧ブースタ12と、マスタシリンダ13と、リザーブタンク14と、を有する。つまり、ブレーキペダル11に加えられたドライバーのブレーキ踏力を、負圧ブースタ12により倍力し、マスタシリンダ13でマスタシリンダ圧によるプライマリ液圧とセカンダリ液圧を作り出す。このとき、マスタシリンダ圧で発生する減速度が、ドライバーの要求減速度より小さくなるように設計する。
【0016】
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、ブレーキ液圧発生装置1と各輪のホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとの間に介装される。VDCブレーキ液圧ユニット2は、VDCモータ21(ポンプモータ)により駆動する液圧ポンプ22,22を有し、マスタシリンダ圧の増圧・保持・減圧を制御するブレーキ液圧アクチュエータである。そして、VDCブレーキ液圧ユニット2とブレーキ液圧発生装置1とは、プライマリ液圧管61とセカンダリ液圧管62により接続されている。VDCブレーキ液圧ユニット2と各輪のホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとは、左前輪液圧管63と右前輪液圧管64と左後輪液圧管65と右後輪液圧管66により接続されている。つまり、制動操作時には、ブレーキ液圧発生装置1により発生したマスタシリンダ圧を、VDCブレーキ液圧ユニット2により加圧し、各輪のホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに加えることで液圧制動力を得るようにしている。
【0017】
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、図2に示すように、VDCモータ21と、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22と、リザーバー23,23と、マスタシリンダ圧センサ24と、を有する。ソレノイドバルブ類として、第1M/Cカットソレノイドバルブ25(差圧弁)と、第2M/Cカットソレノイドバルブ26(差圧弁)と、保持ソレノイドバルブ27,27,27,27と、減圧ソレノイドバルブ28,28,28,28と、を有する。第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26は、VDCモータ21の作動時、ホイルシリンダ圧(下流圧)とマスタシリンダ圧(上流圧)の差圧を制御する。加えて、VDCモータ21の停止時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を、モータ回転数に基づいて制御する。
【0018】
前記ストロークセンサ3は、ドライバーによるブレーキペダルストローク量を検出する手段である。このストロークセンサ3は、回生協調ブレーキ制御での必要情報である要求減速度を検出する構成として、既存のVDCシステムに対して追加された部品である。
【0019】
前記各ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRは、前後各輪のブレーキディスクに設定され、VDCブレーキ液圧ユニット2からの液圧が印加される。そして、各ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへの液圧印加時、ブレーキパットによりブレーキディスクを挟圧することにより、前後輪に液圧制動力を付与する。
【0020】
前記走行用電動モータ5は、左右前輪(駆動輪)の走行用駆動源として設けられ、駆動モータ機能と発電ジェネレータ機能を持つ。この走行用電動モータ5は、力行時、バッテリ電力を消費しながらのモータ駆動により、左右前輪へ駆動力を伝達する。そして、回生時、左右前輪の回転駆動に負荷を与えることで電気エネルギーに変換し、発電分をバッテリへ充電する。つまり、左右前輪の回転駆動に与える負荷が、回生制動力となる。
この走行用電動モータ5が設けられる左右前輪(駆動輪)の駆動系には、走行用電動モータ5以外に、走行用駆動源としてエンジン10が設けられ、変速機11を介して左右前輪へ駆動力を伝達する。
【0021】
実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ減速度制御系は、図1に示すように、ブレーキコントローラ7と、モータコントローラ8(回生制動力制御手段)と、統合コントローラ9と、エンジンコントローラ12と、を備えている。
【0022】
前記ブレーキコントローラ7は、回生協調ブレーキ制御時、統合コントローラ9からの制御指令とVDCブレーキ液圧ユニット2のマスタシリンダ圧センサ24からの圧力情報を入力する。そして、所定の制御則にしたがって、VDCブレーキ液圧ユニット2のVDCモータ21とソレノイドバルブ類25,26,27,28に対し駆動指令を出力する。このブレーキコントローラ7では、回生協調ブレーキ制御以外に、上記VDC制御やTCS制御やABS制御、等を行う。
【0023】
前記モータコントローラ8は、駆動輪である左右前輪に連結された走行用電動モータ5にインバータ13を介して接続され、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段である。このモータコントローラ8は、走行時、走行状態や車両状態に応じて走行用電動モータ5により発生するモータトルクやモータ回転数を制御する機能も併せ持つ。
【0024】
前記統合コントローラ9は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、マスタシリンダ圧による基本液圧分と回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分をVDCブレーキ液圧ユニット2による加圧分で補償する制御を行う。この統合コントローラ9には、バッテリコントローラ91からのバッテリ充電容量情報や車輪速センサ92からの車輪速情報(=車速情報)やブレーキスイッチ93からのブレーキ操作情報、等が入力される。
【0025】
図3は、実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラ8で実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3の各ステップについて説明する。
【0026】
ステップS1では、常時、ドライバーによるブレーキ操作を認識させるため、ブレーキ操作量情報として、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストローク量と、マスタシリンダ圧センサ24からのマスタシリンダ圧と、を読み込み、ステップS2へ進む。
【0027】
ステップS2では、ステップS1でのブレーキ操作量情報の読み込みに続き、ブレーキスイッチ93からスイッチ信号がONか否かを判断する。YES(ブレーキON)の場合はステップS3へ進み、NO(ブレーキOFF)の場合はリターンへ進む。
【0028】
ステップS3では、ステップS2でのブレーキONであるとの判断に続き、ステップS1にて読み込んだブレーキペダルストローク量とマスタシリンダ圧のうち、少なくとも一方のセンサ値に基づき、ドライバーの要求減速度である目標減速度を算出し、ステップS4へ進む。
【0029】
ステップS4では、ステップS3での目標減速度の算出に続き、車輪速センサ92からの車輪速と、車輪速に応じた回生トルクを読み込み、ステップS5へ進む。
なお、回生トルクは、車輪速だけでなく、バッテリコントローラ91からのバッテリ充電容量(バッテリ充電余裕分)を用いて決める。
【0030】
ステップS5では、ステップS4での車輪速、回生トルクの読み込みに続き、取得した目標減速度、マスタシリンダ圧、回生トルク、等に基づき、ホイルシリンダ圧目標値を算出し、ステップS6へ進む。
【0031】
ステップS6では、ステップS5でのホイルシリンダ圧目標値の算出に続き、VDCモータ21がONであるか否かを判断する。YES(VDCモータON)の場合はステップS7へ進み、NO(VDCモータOFF)の場合はステップS8へ進む。
【0032】
ステップS7では、ステップS6でのVDCモータONであるとの判断に続き、VDCモータ回転数に応じた差圧弁作動電流値を演算し、ステップS9へ進む。
ここで、VDCモータON時における差圧弁作動電流値は、例えば、目標差圧と作動電流値の関係を示すP−Iマップ(図10の実線特性を参照)を用いて演算される。
【0033】
ステップS8では、ステップS6でのVDCモータOFFであるとの判断に続き、VDCモータOFF時のモータ回転数特性に合致させた差圧弁作動電流値を演算し、ステップS9へ進む。
ここで、VDCモータOFF時における差圧弁作動電流値は、VDCモータOFF時の回転数低下特性に追従して目標差圧を維持するように作動電流値を上げてゆく(図10の矢印を参照)。そして、モータ停止になっても目標差圧を維持する作動電流値とするように演算される(図10の点線特性を参照)。
【0034】
ステップS9では、ステップS7でのVDCモータON時における差圧弁作動電流値の演算、あるいは、ステップS8でのVDCモータOFF時における差圧弁作動電流値の演算に続き、演算された作動電流値を、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26に印加して駆動し、リターンへ進む。
【0035】
次に、作用を説明する。
まず、「VDCを利用した回生協調ブレーキシステムについて」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車のブレーキ制御装置における作用を、「車速条件に基づくVDC利用の回生協調ブレーキ制御作用」、「液圧ポンプON時の差圧弁作動制御作用」、「液圧ポンプOFF時の差圧弁作動制御作用」に分けて説明する。
【0036】
[VDCを利用した回生協調ブレーキシステムについて]
VDCを利用した回生協調ブレーキ制御は、ドライバーの要求減速度に対し、基本液圧分と回生分だけでは補償しきれないシーンが発生すると、VDCブレーキ液圧ユニットによって補償しきれない分の液圧を加圧し、ドライバーの要求減速度を達成する制御である。
この回生協調ブレーキ制御を行うためのVDCを利用した回生協調ブレーキシステムについて、図4〜図7に基づいて説明する。
【0037】
まず、既存のコンベンショナルVDCの場合、図4に示すように、制動操作時に負圧ブースタによる基本液圧分でドライバー要求の減速度を得るようにしている。これに対し、図5に示すように、制動操作時に負圧ブースタによる基本液圧分を、ドライバー要求の減速度に達しないように、ドライバー要求の減速度からオフセットし、減速度のギャップを設定する。これによって、減速度のギャップ分がドライバー要求の減速度に対して不足することになる。そこで、図6に示すように、最大回生トルク発生時には、ドライバー要求の減速度を、負圧ブースタ(基本液圧分)と回生ブレーキ(回生分)により補償する。
【0038】
しかし、例えば、車速条件やバッテリ充電容量条件等により、ドライバー要求の減速度に対し、不足する減速度を回生分だけでは補償することができない場合がある。そこで、図7に示すように、ドライバー要求の減速度を、負圧ブースタ(基本液圧分)と回生ブレーキ(回生分)とVDCブレーキ液圧ユニット(加圧分)により補償する。
【0039】
したがって、既存のコンベンショナルVDCに対し、負圧ブースタの特性変更と、VDCブレーキ液圧ユニットの特性変更と、ストロークセンサの追加を行うだけで、VDCを利用した廉価な回生協調ブレーキシステムを構成することができる。つまり、コンベンショナルVDCの安全機能を拡張(安全機能+回生協調機能)することになる。
【0040】
しかし、この機能拡張の跳ね返りとして、VDCブレーキ液圧ユニットのVDCモータの作動頻度の高まりや作動時間の長時間化により、VDCモータの耐久信頼性の低下という課題が新たに生じ、この対策が必要になる。
【0041】
[車速条件に基づくVDC利用の回生協調ブレーキ制御作用]
まず、走行用電動モータ5を回生モータとして使うとき、走行用電動モータ5による回生制動力で発生する減速度を、図8に示す。通常、走行用電動モータ5は、高速域で回生トルクを発生できないため、高速域から第2設定車速V2に向けて車速が低下すると、車速低下にしたがって回生制動力で発生する減速度が増加する。そして、第2設定車速V2〜第1設定車速V1の車速域では、回生制動力が最大状態となる。一方、車両停止状態においても回生制動力は発生できないため、第1設定車速V1から車速0km/hにかけては、車速低下にしたがって徐々に回生制動力で発生する減速度が減少する。
【0042】
以上のように、回生制動力は、車速Vによって変化するため、例えば、車速Vが、V1<V≦V2の最大回生域車速範囲にある場合は、図9に示すように、基本液圧分の発生減速度を、回生分の発生減速度により補償する回生協調制御により、目標減速度(=要求減速度)を達成できる。しかし、車速Vが、V>V2の回生制動力増加方向の車速範囲のシーン、あるいは、0<V≦V1の回生制動力減少方向の車速範囲のシーンでは、図9に示すように、基本液圧分の発生減速度を、回生分の発生減速度だけでは補償できない。そこで、ドライバーの要求減速度に対し、基本液圧分と回生分では補償しきれないシーンが発生すると、VDCブレーキ液圧ユニット2により補償しきれない分の液圧を加圧し、ドライバーの要求減速度を達成する。
【0043】
このように、制動操作時から停車時までの加圧分を必要とする減速領域では、VDCモータ21をONにし、回生協調ブレーキ制御を行う。これにより、制動操作時、(基本液圧分+回生分)あるいは(基本液圧分+回生分+加圧分)によって、減速による車速変化にかかわらず、目標減速度(=要求減速度)を達成することができる。
【0044】
そして、車速がゼロとなり停車すると、図9の0km/hの特性に示すように、回生分が無くなり、(基本液圧分+加圧分)によって、目標減速度(=要求減速度)を達成することができる。よって、停車と同時にVDCモータ21をOFFにすることで、VDCモータ21の作動頻度を低下させ、VDCモータの耐久信頼性を向上させることができる。
【0045】
[液圧ポンプON時の差圧弁作動制御作用]
上記のように、制動操作時から停車時までの減速領域では、加圧分を必要とするため、VDCモータ21をONにする構成を採用している。以下、これを反映するVDCモータON時の差圧弁作動制御作用を説明する。
【0046】
走行状況で制動操作を開始すると、VDCモータ21がONとされ、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS9へと進む流れが繰り返される。ステップS7では、VDCモータ回転数に応じた差圧弁作動電流値が演算され、ステップS9では、演算された作動電流値を印加することにより、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26が駆動される。
【0047】
ここで、VDCモータON時における差圧弁作動電流値の演算について説明すると、例えば、図10の実線特性に示すように、VDCモータON時(所定のVDCモータ回転数)における目標差圧と作動電流値の関係を示すP−Iマップを用意しておく。そして、加圧分の大きさにより目標差圧が決まると、P−Iマップの検索により作動電流値を決める。同様に、加圧分の大きさが変動することにより目標差圧が変動すると、目標差圧の変動に応じて作動電流値を変動させる。
【0048】
図11は、時刻Aでドライバーがブレーキ操作を行い、その後、車速が低下していき、時刻Bにて車両が停止しているタイムチャートである。この時刻Aから時刻Bまでの減速期間中は、VDCモータ21をONにしてモータ回転数を一定回転数に保つ。差圧弁駆動電流は、時刻Aから所定の電流値まで立ち上がり、その後、時刻Bまで一定の作動電流を保つ。このため、ホイルシリンダ圧と減速度は、差圧弁駆動電流に応じ、所定の圧力と減速度まで立ち上がり、その後、時刻Bまで一定の圧力と減速度を保つ。このように、制動操作時である時刻Aから停車時である時刻Bまでの加圧分を必要とする減速領域では、VDCモータ21をONにし、回生協調ブレーキ制御が行われる。
【0049】
したがって、時刻Aにて制動操作を行うと、(基本液圧分+回生分)あるいは(基本液圧分+回生分+加圧分)によって目標減速度(=要求減速度)が達成され、図11の車速特性に示すように、減速度をほぼ一定に保ちながら時刻Bにて停車することができる。
【0050】
[液圧ポンプOFF時の差圧弁作動制御作用]
上記のように、VDCモータ21の耐久性対策として、停車するとVDCモータ21をOFFにする構成を採用している。そこで、先ず、VDCモータOFF時、VDCモータON時の制御を維持すると、差圧が想定値以下になる理由について説明する。
【0051】
VDCモータ21の作動時、液圧ポンプ22,22により送り込まれたブレーキ液はホイルシリンダ圧を上昇させるが、所望の差圧を上回ると、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26を介してマスタシリンダ13側にリリースすることによって所望の差圧を保つように調整される。
【0052】
しかし、VDCモータ21の停止時には、ブレーキ液の流れがなくなり、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26を介してマスタシリンダ13側へリリースされるブレーキ液がなくなる。その際、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26において、オリフィス効果により発生していたホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RR側の昇圧分が減少してしまう。その結果、VDCモータ21のON時におけるフィードフォワード制御にて、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26の作動電流値を決定すると、VDCモータ21の停止時には、マスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧の差圧が想定値以下になってしまう。
【0053】
さらに、上記のように、耐久性向上のため、車速0km/hの停車時、VDCモータ21をOFFにし、この際、図11の差圧弁駆動電流の点線特性に示すように、両ソレノイドバルブ25,26への作動電流値を保持する。この場合、図11のホイルシリンダ圧の点線特性に示すように、ホイルシリンダ圧の低下により、図11の減速度の点線特性に示すように、ドライバーが要求する減速度(実線特性)よりも低下してしまう。この結果、図11の車速の点線特性に示すように、車両停止を維持できなくなる。また、ドライバーにブレーキペダルを踏み込ませることになり、VDCモータ21のON作動を誘発し、耐久性、消費電力(燃費)の悪化となる。
【0054】
次に、これを解消するVDCモータOFF時の差圧弁作動制御作用を説明する。
制動操作に基づく減速により停車すると、VDCモータ21がOFFとされ、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS8→ステップS9へと進む流れが繰り返される。ステップS8では、VDCモータOFF時のモータ回転数特性に合致させた差圧弁作動電流値が演算され、ステップS9では、演算された作動電流値を印加することにより、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26が駆動される。
【0055】
ここで、VDCモータOFF時における差圧弁作動電流値の演算について説明すると、VDCモータOFF時、図10の矢印に示すように、ON→OFFへの移行に伴う回転数低下特性に追従して目標差圧を維持するように作動電流値を上げてゆく。そして、図10の点線特性に示すように、モータ停止になっても目標差圧を維持する作動電流値とする。
【0056】
このように、VDCモータ21がON→OFFに移行すると、上記VDCモータ21のON状態での差圧制御に代え、VDCモータ21のOFF状態での差圧制御を、ブレーキ液の流量変化をあらわすVDCモータ21のモータ回転数に基づいて行う。すなわち、図11のVDCモータ回転数特性に示すように、時刻BにてモータOFFにすると、時刻Bから時刻Cまでの間は、モータ回転数が徐々に低下し、時刻C以降になると完全にモータ停止状態になる。そこで、時刻Bから時刻Cまでの間は、図11の差圧弁駆動電流の実線特性に示すように、モータ回転数の低下特性に合致させて駆動電流を上昇させ、時刻C以降になると上昇させた駆動電流を維持する。
【0057】
したがって、図11のホイルシリンダ圧の実線特性に示すように、減速時のホイルシリンダ圧が停車後もそのまま保たれ、一定加圧分の制動力が確保され、図11の車速の実線特性に示すように、停車状態を維持することができる。つまり、VDCモータ21を停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。
【0058】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0059】
(1) ドライバー操作に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ13と、
前後輪の各輪に設けられ、ホイルシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与えるホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRと、
前記マスタシリンダ13と前記ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとの間に介装され、ポンプモータ(VDCモータ21)により駆動する液圧ポンプ22,22と、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)と、を有するブレーキ液圧アクチュエータ(VDCブレーキ液圧ユニット2)と、
駆動輪に連結された走行用電動モータ5に接続され、前記走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段(モータコントローラ8)と、
制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、前記マスタシリンダ圧による基本液圧分と前記回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分を前記ブレーキ液圧アクチュエータ(VDCブレーキ液圧ユニット2)による加圧分で補償する制御を行う回生協調ブレーキ制御手段(統合コントローラ9、図3)と、
回生協調ブレーキ制御にて前記ポンプモータ(VDCモータ21)を停止させた際、前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)による差圧制御を、前記ポンプモータ(VDCモータ21)のモータ回転数に基づいて行う差圧弁作動制御手段(図3のステップS6→ステップS8)と、
を備える。
このため、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータ(VDCモータ21)を停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。また、余分なブレーキ操作や余分な踏み増しを解消できるため、ポンプモータ(VDCモータ21)の耐久性改善や消費電力の低減が可能となる。
【0060】
(2) 前記差圧弁作動制御手段(図3のステップS6→ステップS8)は、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の停止後、前記ポンプモータ(VDCモータ21)のモータ回転数低下に応じて、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が大きくなるように、前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)による差圧制御を行う。
このため、上記(1)の効果に加え、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止後、ホイルシリンダ圧による制動力が低下するのを確実に防止することができる。
【0061】
(3) 前記差圧弁作動制御手段(図3のステップS6→ステップS8)は、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の停止後、前記ポンプモータ(VDCモータ21)のモータ回転数低下特性に応じて、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の停止前のホイルシリンダ圧をそのまま維持するように差圧制御を行う。
このため、上記(2)の効果に加え、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止中、ドライバー要求に応じた制動力を維持し、極低速走行時や停車時等の減速度違和感を解消することができ、ブレーキ操作しやすさを向上させることができる。
【0062】
(4) 前記回生協調ブレーキ制御手段(統合コントローラ9、図3)は、制動操作に基づく回生協調ブレーキ制御により車両が停止すると、停止直前の減速領域で作動していた前記ポンプモータ(VDCモータ21)を停止するモータ制御を行う。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止によるモータ耐久信頼性の向上と、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止状態での停車維持と、の両立を図ることができる。
【0063】
以上、本発明の電動車両のブレーキ制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0064】
実施例1では、VDCモータ21を停止後、VDCモータ21のモータ回転数低下特性に応じて、VDCモータ21の停止前のホイルシリンダ圧をそのまま維持するように差圧制御を行う例を示した。しかし、VDCモータを停止後、VDCモータの停止前のホイルシリンダ圧より圧力低下することがない差圧制御を行う例としても良い。この場合、停車時において少し高めのホイルシリンダ圧を加えることにより、停車状態を維持することができる。
【0065】
実施例1では、制動操作による全減速領域でVDCモータ21をONとし、停車するとVDCモータ21をOFFとする例を示した。しかし、制動操作による全減速領域のうち、例えば、加圧分を必要としない車速V2〜V1の領域でVDCモータをOFFとするモータON/OFF制御を行う例であっても良い。さらに、加圧分が減少方向にある制動操作時から車速V2までの領域を、車速V2〜V1の領域に含め、VDCモータをOFFとするモータON/OFF制御を行う例であっても良い。これらの場合、減速領域の途中にてVDCモータがOFFとされた際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。
【0066】
実施例1では、ブレーキ液圧アクチュエータとして、図2に示すVDCブレーキ液圧ユニット2を利用する例を示した。しかし、ブレーキ液圧アクチュエータとしては、VDCモータにより駆動する液圧ポンプと、ポンプモータの作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有するものであれば良い。
【0067】
実施例1では、前輪駆動のハイブリッド車への適用例を示した。しかし、後輪駆動のハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、等の電動車両であれば、本発明のブレーキ制御装置を適用することができる。なお、エンジンが搭載されていない電動車両の場合、負圧ブースタに代えて電動ブースタ等を用いる。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレーキ液圧発生装置
2 VDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータ)
21 VDCモータ(ポンプモータ)
22 液圧ポンプ
25 第1M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
26 第2M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
3 ストロークセンサ
4FL 左前輪ホイルシリンダ
4FR 右前輪ホイルシリンダ
4RL 左後輪ホイルシリンダ
4RR 右後輪ホイルシリンダ
5 走行用電動モータ
61 プライマリ液圧管
62 セカンダリ液圧管
63 左前輪液圧管
64 右前輪液圧管
65 左後輪液圧管
66 右後輪液圧管
7 ブレーキコントローラ
8 モータコントローラ(回生制動力制御手段)
9 統合コントローラ
91 バッテリコントローラ
92 車輪速センサ
93 ブレーキスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーが要求する減速度を基本液圧分と回生分の総和で達成し、不足する回生分を基本液圧の加圧分により補償する回生協調ブレーキ制御を行う電動車両のブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバーが要求する減速度を基本液圧分と回生分の総和で達成し、不足する回生分を基本液圧の加圧分により補償する回生協調ブレーキ制御を行う車両用ブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来装置は、マスタシリンダとホイルシリンダ間に設置してある差圧弁のコントロールと、液圧ポンプによるポンプアップ昇圧により、マスタシリンダ圧より高いホイルシリンダ圧を発生し、この差圧を加圧分としている。そして、差圧弁のコントロールは、液圧ポンプのVDCモータが作動している状態にて目標とする差圧が得られるように、フィードフォワード制御によりバルブ作動電流を変化させることで達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−168460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用ブレーキ装置にあっては、液圧ポンプのVDCモータの作動状態に適合させたフィードフォワード制御にて差圧弁の作動電流値を決定している。このため、液圧ポンプのVDCモータが停止した時には、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が想定値以下になってしまい、加圧分の制動力が不足し、車両の減速度が低下することにより乗員に違和感を与える、という問題があった。
【0006】
すなわち、液圧ポンプにより送り込まれたブレーキ液はホイルシリンダ圧を上昇させるが、所望の差圧を上回ると、差圧弁を介してマスタシリンダ側にリリースすることによって所望の差圧を保つように調整される。しかし、液圧ポンプのVDCモータが停止すると、ブレーキ液の流れがなくなり、差圧弁を介してマスタシリンダ側へリリースされるブレーキ液がなくなる。その際、差圧弁によるオリフィス効果にて発生していたホイルシリンダ側の昇圧分が減少してしまい、差圧が想定値以下になる。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータを停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる電動車両のブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両のブレーキ制御装置は、マスタシリンダと、ホイルシリンダと、ブレーキ液圧アクチュエータと、回生制動力制御手段と、回生協調ブレーキ制御手段と、差圧弁作動制御手段と、を備える手段とした。
前記マスタシリンダは、ドライバー操作に応じたマスタシリンダ圧を発生する。
前記ホイルシリンダは、前後輪の各輪に設けられ、ホイルシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与える。
前記ブレーキ液圧アクチュエータは、前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとの間に介装され、ポンプモータにより駆動する液圧ポンプと、前記ポンプモータの作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有する。
前記回生制動力制御手段は、駆動輪に連結された走行用電動モータに接続され、前記走行用電動モータにより発生する回生制動力を制御する。
前記回生協調ブレーキ制御手段は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、前記マスタシリンダ圧による基本液圧分と前記回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分を前記ブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分で補償する制御を行う。
前記差圧弁作動制御手段は、回生協調ブレーキ制御にて前記ポンプモータを停止させた際、前記差圧弁による差圧制御を、前記ポンプモータのモータ回転数に基づいて行う。
【発明の効果】
【0009】
よって、制動操作時、回生協調ブレーキ制御手段において、ドライバーが要求する減速度を基本液圧分と回生分の総和で達成し、不足する回生分をブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分で補償する制御が行われる。そして、差圧弁作動制御手段において、回生協調ブレーキ制御にてポンプモータを停止させた際、差圧弁による差圧制御が、ポンプモータのモータ回転数に基づいて行われる。
すなわち、ポンプモータを停止させた際、ポンプモータ作動状態で所望の差圧を得る制御を維持すると、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が想定値以下になってしまい、加圧分の制動力が不足する。これに対し、ポンプモータ作動状態での差圧制御に代え、ポンプモータ停止状態での差圧制御を、ブレーキ液の流量変化をあらわすポンプモータのモータ回転数に基づいて行う。したがって、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が想定値に保たれ、加圧分の制動力不足により車両の減速度が低下することを防止できる。
このように、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータを停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車(電動車両の一例)の構成を示すブレーキシステム図である。
【図2】実施例1のブレーキ制御装置におけるVDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータの一例)を示すブレーキ液圧回路図である。
【図3】実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラで実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】制動操作時に負圧ブースタによりドライバー要求の減速度を得る場合のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図5】制動操作時に負圧ブースタにより基本液圧を発生するようにドライバー要求の減速度からのオフセットギャップを設定した場合のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図6】制動操作時にドライバー要求の減速度を負圧ブースタと回生ブレーキにより補償する最大回生トルク発生時のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図7】制動操作時にドライバー要求の減速度を負圧ブースタと回生ブレーキとVDCブレーキ液圧ユニットにより補償する回生協調時のドライバー入力に対する減速度の関係を示す減速度特性図である。
【図8】実施例1のブレーキ制御装置における車速に対する走行用電動モータで発生する回生制動力による発生減速度の相関関係を示す図である。
【図9】実施例1のブレーキ制御装置における車速に対する目標減速度と各制動装置での発生減速度の相関関係を示す図である。
【図10】実施例1のブレーキ制御装置におけるVDCブレーキ液圧ユニット内に設けられた第1M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)での目標差圧と作動電流値の関係を示すP−Iマップである。
【図11】制動操作開始から停車して停車状態を保つまでのVDCモータ回転数・差圧弁駆動電流・ホイルシリンダ圧・減速度・車速の各比較特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電動車両のブレーキ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を適用した前輪駆動によるハイブリッド車(電動車両の一例)の構成を示すブレーキシステム図である。図2は、VDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータの一例)を示すブレーキ液圧回路図である。以下、図1および図2に基づき、ブレーキシステム構成を説明する。
【0013】
実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ減速度発生系は、図1に示すように、ブレーキ液圧発生装置1と、VDCブレーキ液圧ユニット2(ブレーキ液圧アクチュエータ)と、ストロークセンサ3と、左前輪ホイルシリンダ4FLと、右前輪ホイルシリンダ4FRと、左後輪ホイルシリンダ4RLと、右後輪ホイルシリンダ4RRと、走行用電動モータ5と、を備えている。
【0014】
実施例1のブレーキ減速度発生系は、実車(エンジン車)に搭載されている既存のVDCシステム(VDCは、「Vehicle Dynamics Control」の略)を利用した構成による回生協調ブレーキシステムである。VDCシステムとは、高速でのコーナー進入や急激なハンドル操作などによって車両姿勢が乱れた際に、横滑りを防ぎ、優れた走行安定性を発揮する車両挙動制御(=VDC制御)を行うシステムである。運転状況に応じて自動的に制御するVDC制御は、車両姿勢等をセンサによって感知し、例えば、オーバーステアと判断するとコーナー外側の前輪にブレーキをかけ、逆にアンダーステアと判断すると駆動パワーを落とすとともに後輪のコーナー内側のタイヤにブレーキをかける。
【0015】
前記ブレーキ液圧発生装置1は、ドライバーによるブレーキ操作に応じた基本液圧を発生する基本液圧発生手段である。このブレーキ液圧発生装置1は、図1および図2に示すように、ブレーキペダル11と、負圧ブースタ12と、マスタシリンダ13と、リザーブタンク14と、を有する。つまり、ブレーキペダル11に加えられたドライバーのブレーキ踏力を、負圧ブースタ12により倍力し、マスタシリンダ13でマスタシリンダ圧によるプライマリ液圧とセカンダリ液圧を作り出す。このとき、マスタシリンダ圧で発生する減速度が、ドライバーの要求減速度より小さくなるように設計する。
【0016】
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、ブレーキ液圧発生装置1と各輪のホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとの間に介装される。VDCブレーキ液圧ユニット2は、VDCモータ21(ポンプモータ)により駆動する液圧ポンプ22,22を有し、マスタシリンダ圧の増圧・保持・減圧を制御するブレーキ液圧アクチュエータである。そして、VDCブレーキ液圧ユニット2とブレーキ液圧発生装置1とは、プライマリ液圧管61とセカンダリ液圧管62により接続されている。VDCブレーキ液圧ユニット2と各輪のホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとは、左前輪液圧管63と右前輪液圧管64と左後輪液圧管65と右後輪液圧管66により接続されている。つまり、制動操作時には、ブレーキ液圧発生装置1により発生したマスタシリンダ圧を、VDCブレーキ液圧ユニット2により加圧し、各輪のホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに加えることで液圧制動力を得るようにしている。
【0017】
前記VDCブレーキ液圧ユニット2は、図2に示すように、VDCモータ21と、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22と、リザーバー23,23と、マスタシリンダ圧センサ24と、を有する。ソレノイドバルブ類として、第1M/Cカットソレノイドバルブ25(差圧弁)と、第2M/Cカットソレノイドバルブ26(差圧弁)と、保持ソレノイドバルブ27,27,27,27と、減圧ソレノイドバルブ28,28,28,28と、を有する。第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26は、VDCモータ21の作動時、ホイルシリンダ圧(下流圧)とマスタシリンダ圧(上流圧)の差圧を制御する。加えて、VDCモータ21の停止時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を、モータ回転数に基づいて制御する。
【0018】
前記ストロークセンサ3は、ドライバーによるブレーキペダルストローク量を検出する手段である。このストロークセンサ3は、回生協調ブレーキ制御での必要情報である要求減速度を検出する構成として、既存のVDCシステムに対して追加された部品である。
【0019】
前記各ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRは、前後各輪のブレーキディスクに設定され、VDCブレーキ液圧ユニット2からの液圧が印加される。そして、各ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへの液圧印加時、ブレーキパットによりブレーキディスクを挟圧することにより、前後輪に液圧制動力を付与する。
【0020】
前記走行用電動モータ5は、左右前輪(駆動輪)の走行用駆動源として設けられ、駆動モータ機能と発電ジェネレータ機能を持つ。この走行用電動モータ5は、力行時、バッテリ電力を消費しながらのモータ駆動により、左右前輪へ駆動力を伝達する。そして、回生時、左右前輪の回転駆動に負荷を与えることで電気エネルギーに変換し、発電分をバッテリへ充電する。つまり、左右前輪の回転駆動に与える負荷が、回生制動力となる。
この走行用電動モータ5が設けられる左右前輪(駆動輪)の駆動系には、走行用電動モータ5以外に、走行用駆動源としてエンジン10が設けられ、変速機11を介して左右前輪へ駆動力を伝達する。
【0021】
実施例1のブレーキ制御装置のブレーキ減速度制御系は、図1に示すように、ブレーキコントローラ7と、モータコントローラ8(回生制動力制御手段)と、統合コントローラ9と、エンジンコントローラ12と、を備えている。
【0022】
前記ブレーキコントローラ7は、回生協調ブレーキ制御時、統合コントローラ9からの制御指令とVDCブレーキ液圧ユニット2のマスタシリンダ圧センサ24からの圧力情報を入力する。そして、所定の制御則にしたがって、VDCブレーキ液圧ユニット2のVDCモータ21とソレノイドバルブ類25,26,27,28に対し駆動指令を出力する。このブレーキコントローラ7では、回生協調ブレーキ制御以外に、上記VDC制御やTCS制御やABS制御、等を行う。
【0023】
前記モータコントローラ8は、駆動輪である左右前輪に連結された走行用電動モータ5にインバータ13を介して接続され、走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段である。このモータコントローラ8は、走行時、走行状態や車両状態に応じて走行用電動モータ5により発生するモータトルクやモータ回転数を制御する機能も併せ持つ。
【0024】
前記統合コントローラ9は、制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、マスタシリンダ圧による基本液圧分と回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分をVDCブレーキ液圧ユニット2による加圧分で補償する制御を行う。この統合コントローラ9には、バッテリコントローラ91からのバッテリ充電容量情報や車輪速センサ92からの車輪速情報(=車速情報)やブレーキスイッチ93からのブレーキ操作情報、等が入力される。
【0025】
図3は、実施例1のブレーキ制御装置における統合コントローラ8で実行される回生協調ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3の各ステップについて説明する。
【0026】
ステップS1では、常時、ドライバーによるブレーキ操作を認識させるため、ブレーキ操作量情報として、ストロークセンサ3からのブレーキペダルストローク量と、マスタシリンダ圧センサ24からのマスタシリンダ圧と、を読み込み、ステップS2へ進む。
【0027】
ステップS2では、ステップS1でのブレーキ操作量情報の読み込みに続き、ブレーキスイッチ93からスイッチ信号がONか否かを判断する。YES(ブレーキON)の場合はステップS3へ進み、NO(ブレーキOFF)の場合はリターンへ進む。
【0028】
ステップS3では、ステップS2でのブレーキONであるとの判断に続き、ステップS1にて読み込んだブレーキペダルストローク量とマスタシリンダ圧のうち、少なくとも一方のセンサ値に基づき、ドライバーの要求減速度である目標減速度を算出し、ステップS4へ進む。
【0029】
ステップS4では、ステップS3での目標減速度の算出に続き、車輪速センサ92からの車輪速と、車輪速に応じた回生トルクを読み込み、ステップS5へ進む。
なお、回生トルクは、車輪速だけでなく、バッテリコントローラ91からのバッテリ充電容量(バッテリ充電余裕分)を用いて決める。
【0030】
ステップS5では、ステップS4での車輪速、回生トルクの読み込みに続き、取得した目標減速度、マスタシリンダ圧、回生トルク、等に基づき、ホイルシリンダ圧目標値を算出し、ステップS6へ進む。
【0031】
ステップS6では、ステップS5でのホイルシリンダ圧目標値の算出に続き、VDCモータ21がONであるか否かを判断する。YES(VDCモータON)の場合はステップS7へ進み、NO(VDCモータOFF)の場合はステップS8へ進む。
【0032】
ステップS7では、ステップS6でのVDCモータONであるとの判断に続き、VDCモータ回転数に応じた差圧弁作動電流値を演算し、ステップS9へ進む。
ここで、VDCモータON時における差圧弁作動電流値は、例えば、目標差圧と作動電流値の関係を示すP−Iマップ(図10の実線特性を参照)を用いて演算される。
【0033】
ステップS8では、ステップS6でのVDCモータOFFであるとの判断に続き、VDCモータOFF時のモータ回転数特性に合致させた差圧弁作動電流値を演算し、ステップS9へ進む。
ここで、VDCモータOFF時における差圧弁作動電流値は、VDCモータOFF時の回転数低下特性に追従して目標差圧を維持するように作動電流値を上げてゆく(図10の矢印を参照)。そして、モータ停止になっても目標差圧を維持する作動電流値とするように演算される(図10の点線特性を参照)。
【0034】
ステップS9では、ステップS7でのVDCモータON時における差圧弁作動電流値の演算、あるいは、ステップS8でのVDCモータOFF時における差圧弁作動電流値の演算に続き、演算された作動電流値を、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26に印加して駆動し、リターンへ進む。
【0035】
次に、作用を説明する。
まず、「VDCを利用した回生協調ブレーキシステムについて」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車のブレーキ制御装置における作用を、「車速条件に基づくVDC利用の回生協調ブレーキ制御作用」、「液圧ポンプON時の差圧弁作動制御作用」、「液圧ポンプOFF時の差圧弁作動制御作用」に分けて説明する。
【0036】
[VDCを利用した回生協調ブレーキシステムについて]
VDCを利用した回生協調ブレーキ制御は、ドライバーの要求減速度に対し、基本液圧分と回生分だけでは補償しきれないシーンが発生すると、VDCブレーキ液圧ユニットによって補償しきれない分の液圧を加圧し、ドライバーの要求減速度を達成する制御である。
この回生協調ブレーキ制御を行うためのVDCを利用した回生協調ブレーキシステムについて、図4〜図7に基づいて説明する。
【0037】
まず、既存のコンベンショナルVDCの場合、図4に示すように、制動操作時に負圧ブースタによる基本液圧分でドライバー要求の減速度を得るようにしている。これに対し、図5に示すように、制動操作時に負圧ブースタによる基本液圧分を、ドライバー要求の減速度に達しないように、ドライバー要求の減速度からオフセットし、減速度のギャップを設定する。これによって、減速度のギャップ分がドライバー要求の減速度に対して不足することになる。そこで、図6に示すように、最大回生トルク発生時には、ドライバー要求の減速度を、負圧ブースタ(基本液圧分)と回生ブレーキ(回生分)により補償する。
【0038】
しかし、例えば、車速条件やバッテリ充電容量条件等により、ドライバー要求の減速度に対し、不足する減速度を回生分だけでは補償することができない場合がある。そこで、図7に示すように、ドライバー要求の減速度を、負圧ブースタ(基本液圧分)と回生ブレーキ(回生分)とVDCブレーキ液圧ユニット(加圧分)により補償する。
【0039】
したがって、既存のコンベンショナルVDCに対し、負圧ブースタの特性変更と、VDCブレーキ液圧ユニットの特性変更と、ストロークセンサの追加を行うだけで、VDCを利用した廉価な回生協調ブレーキシステムを構成することができる。つまり、コンベンショナルVDCの安全機能を拡張(安全機能+回生協調機能)することになる。
【0040】
しかし、この機能拡張の跳ね返りとして、VDCブレーキ液圧ユニットのVDCモータの作動頻度の高まりや作動時間の長時間化により、VDCモータの耐久信頼性の低下という課題が新たに生じ、この対策が必要になる。
【0041】
[車速条件に基づくVDC利用の回生協調ブレーキ制御作用]
まず、走行用電動モータ5を回生モータとして使うとき、走行用電動モータ5による回生制動力で発生する減速度を、図8に示す。通常、走行用電動モータ5は、高速域で回生トルクを発生できないため、高速域から第2設定車速V2に向けて車速が低下すると、車速低下にしたがって回生制動力で発生する減速度が増加する。そして、第2設定車速V2〜第1設定車速V1の車速域では、回生制動力が最大状態となる。一方、車両停止状態においても回生制動力は発生できないため、第1設定車速V1から車速0km/hにかけては、車速低下にしたがって徐々に回生制動力で発生する減速度が減少する。
【0042】
以上のように、回生制動力は、車速Vによって変化するため、例えば、車速Vが、V1<V≦V2の最大回生域車速範囲にある場合は、図9に示すように、基本液圧分の発生減速度を、回生分の発生減速度により補償する回生協調制御により、目標減速度(=要求減速度)を達成できる。しかし、車速Vが、V>V2の回生制動力増加方向の車速範囲のシーン、あるいは、0<V≦V1の回生制動力減少方向の車速範囲のシーンでは、図9に示すように、基本液圧分の発生減速度を、回生分の発生減速度だけでは補償できない。そこで、ドライバーの要求減速度に対し、基本液圧分と回生分では補償しきれないシーンが発生すると、VDCブレーキ液圧ユニット2により補償しきれない分の液圧を加圧し、ドライバーの要求減速度を達成する。
【0043】
このように、制動操作時から停車時までの加圧分を必要とする減速領域では、VDCモータ21をONにし、回生協調ブレーキ制御を行う。これにより、制動操作時、(基本液圧分+回生分)あるいは(基本液圧分+回生分+加圧分)によって、減速による車速変化にかかわらず、目標減速度(=要求減速度)を達成することができる。
【0044】
そして、車速がゼロとなり停車すると、図9の0km/hの特性に示すように、回生分が無くなり、(基本液圧分+加圧分)によって、目標減速度(=要求減速度)を達成することができる。よって、停車と同時にVDCモータ21をOFFにすることで、VDCモータ21の作動頻度を低下させ、VDCモータの耐久信頼性を向上させることができる。
【0045】
[液圧ポンプON時の差圧弁作動制御作用]
上記のように、制動操作時から停車時までの減速領域では、加圧分を必要とするため、VDCモータ21をONにする構成を採用している。以下、これを反映するVDCモータON時の差圧弁作動制御作用を説明する。
【0046】
走行状況で制動操作を開始すると、VDCモータ21がONとされ、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS9へと進む流れが繰り返される。ステップS7では、VDCモータ回転数に応じた差圧弁作動電流値が演算され、ステップS9では、演算された作動電流値を印加することにより、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26が駆動される。
【0047】
ここで、VDCモータON時における差圧弁作動電流値の演算について説明すると、例えば、図10の実線特性に示すように、VDCモータON時(所定のVDCモータ回転数)における目標差圧と作動電流値の関係を示すP−Iマップを用意しておく。そして、加圧分の大きさにより目標差圧が決まると、P−Iマップの検索により作動電流値を決める。同様に、加圧分の大きさが変動することにより目標差圧が変動すると、目標差圧の変動に応じて作動電流値を変動させる。
【0048】
図11は、時刻Aでドライバーがブレーキ操作を行い、その後、車速が低下していき、時刻Bにて車両が停止しているタイムチャートである。この時刻Aから時刻Bまでの減速期間中は、VDCモータ21をONにしてモータ回転数を一定回転数に保つ。差圧弁駆動電流は、時刻Aから所定の電流値まで立ち上がり、その後、時刻Bまで一定の作動電流を保つ。このため、ホイルシリンダ圧と減速度は、差圧弁駆動電流に応じ、所定の圧力と減速度まで立ち上がり、その後、時刻Bまで一定の圧力と減速度を保つ。このように、制動操作時である時刻Aから停車時である時刻Bまでの加圧分を必要とする減速領域では、VDCモータ21をONにし、回生協調ブレーキ制御が行われる。
【0049】
したがって、時刻Aにて制動操作を行うと、(基本液圧分+回生分)あるいは(基本液圧分+回生分+加圧分)によって目標減速度(=要求減速度)が達成され、図11の車速特性に示すように、減速度をほぼ一定に保ちながら時刻Bにて停車することができる。
【0050】
[液圧ポンプOFF時の差圧弁作動制御作用]
上記のように、VDCモータ21の耐久性対策として、停車するとVDCモータ21をOFFにする構成を採用している。そこで、先ず、VDCモータOFF時、VDCモータON時の制御を維持すると、差圧が想定値以下になる理由について説明する。
【0051】
VDCモータ21の作動時、液圧ポンプ22,22により送り込まれたブレーキ液はホイルシリンダ圧を上昇させるが、所望の差圧を上回ると、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26を介してマスタシリンダ13側にリリースすることによって所望の差圧を保つように調整される。
【0052】
しかし、VDCモータ21の停止時には、ブレーキ液の流れがなくなり、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26を介してマスタシリンダ13側へリリースされるブレーキ液がなくなる。その際、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26において、オリフィス効果により発生していたホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RR側の昇圧分が減少してしまう。その結果、VDCモータ21のON時におけるフィードフォワード制御にて、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26の作動電流値を決定すると、VDCモータ21の停止時には、マスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧の差圧が想定値以下になってしまう。
【0053】
さらに、上記のように、耐久性向上のため、車速0km/hの停車時、VDCモータ21をOFFにし、この際、図11の差圧弁駆動電流の点線特性に示すように、両ソレノイドバルブ25,26への作動電流値を保持する。この場合、図11のホイルシリンダ圧の点線特性に示すように、ホイルシリンダ圧の低下により、図11の減速度の点線特性に示すように、ドライバーが要求する減速度(実線特性)よりも低下してしまう。この結果、図11の車速の点線特性に示すように、車両停止を維持できなくなる。また、ドライバーにブレーキペダルを踏み込ませることになり、VDCモータ21のON作動を誘発し、耐久性、消費電力(燃費)の悪化となる。
【0054】
次に、これを解消するVDCモータOFF時の差圧弁作動制御作用を説明する。
制動操作に基づく減速により停車すると、VDCモータ21がOFFとされ、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS8→ステップS9へと進む流れが繰り返される。ステップS8では、VDCモータOFF時のモータ回転数特性に合致させた差圧弁作動電流値が演算され、ステップS9では、演算された作動電流値を印加することにより、差圧弁である第1M/Cカットソレノイドバルブ25と第2M/Cカットソレノイドバルブ26が駆動される。
【0055】
ここで、VDCモータOFF時における差圧弁作動電流値の演算について説明すると、VDCモータOFF時、図10の矢印に示すように、ON→OFFへの移行に伴う回転数低下特性に追従して目標差圧を維持するように作動電流値を上げてゆく。そして、図10の点線特性に示すように、モータ停止になっても目標差圧を維持する作動電流値とする。
【0056】
このように、VDCモータ21がON→OFFに移行すると、上記VDCモータ21のON状態での差圧制御に代え、VDCモータ21のOFF状態での差圧制御を、ブレーキ液の流量変化をあらわすVDCモータ21のモータ回転数に基づいて行う。すなわち、図11のVDCモータ回転数特性に示すように、時刻BにてモータOFFにすると、時刻Bから時刻Cまでの間は、モータ回転数が徐々に低下し、時刻C以降になると完全にモータ停止状態になる。そこで、時刻Bから時刻Cまでの間は、図11の差圧弁駆動電流の実線特性に示すように、モータ回転数の低下特性に合致させて駆動電流を上昇させ、時刻C以降になると上昇させた駆動電流を維持する。
【0057】
したがって、図11のホイルシリンダ圧の実線特性に示すように、減速時のホイルシリンダ圧が停車後もそのまま保たれ、一定加圧分の制動力が確保され、図11の車速の実線特性に示すように、停車状態を維持することができる。つまり、VDCモータ21を停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。
【0058】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車のブレーキ制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0059】
(1) ドライバー操作に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ13と、
前後輪の各輪に設けられ、ホイルシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与えるホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRと、
前記マスタシリンダ13と前記ホイルシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRとの間に介装され、ポンプモータ(VDCモータ21)により駆動する液圧ポンプ22,22と、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)と、を有するブレーキ液圧アクチュエータ(VDCブレーキ液圧ユニット2)と、
駆動輪に連結された走行用電動モータ5に接続され、前記走行用電動モータ5により発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段(モータコントローラ8)と、
制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、前記マスタシリンダ圧による基本液圧分と前記回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分を前記ブレーキ液圧アクチュエータ(VDCブレーキ液圧ユニット2)による加圧分で補償する制御を行う回生協調ブレーキ制御手段(統合コントローラ9、図3)と、
回生協調ブレーキ制御にて前記ポンプモータ(VDCモータ21)を停止させた際、前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)による差圧制御を、前記ポンプモータ(VDCモータ21)のモータ回転数に基づいて行う差圧弁作動制御手段(図3のステップS6→ステップS8)と、
を備える。
このため、回生協調ブレーキ制御時に加圧分を補償するポンプモータ(VDCモータ21)を停止させる際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。また、余分なブレーキ操作や余分な踏み増しを解消できるため、ポンプモータ(VDCモータ21)の耐久性改善や消費電力の低減が可能となる。
【0060】
(2) 前記差圧弁作動制御手段(図3のステップS6→ステップS8)は、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の停止後、前記ポンプモータ(VDCモータ21)のモータ回転数低下に応じて、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が大きくなるように、前記差圧弁(第1M/Cカットソレノイドバルブ25、第2M/Cカットソレノイドバルブ26)による差圧制御を行う。
このため、上記(1)の効果に加え、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止後、ホイルシリンダ圧による制動力が低下するのを確実に防止することができる。
【0061】
(3) 前記差圧弁作動制御手段(図3のステップS6→ステップS8)は、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の停止後、前記ポンプモータ(VDCモータ21)のモータ回転数低下特性に応じて、前記ポンプモータ(VDCモータ21)の停止前のホイルシリンダ圧をそのまま維持するように差圧制御を行う。
このため、上記(2)の効果に加え、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止中、ドライバー要求に応じた制動力を維持し、極低速走行時や停車時等の減速度違和感を解消することができ、ブレーキ操作しやすさを向上させることができる。
【0062】
(4) 前記回生協調ブレーキ制御手段(統合コントローラ9、図3)は、制動操作に基づく回生協調ブレーキ制御により車両が停止すると、停止直前の減速領域で作動していた前記ポンプモータ(VDCモータ21)を停止するモータ制御を行う。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止によるモータ耐久信頼性の向上と、ポンプモータ(VDCモータ21)の停止状態での停車維持と、の両立を図ることができる。
【0063】
以上、本発明の電動車両のブレーキ制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0064】
実施例1では、VDCモータ21を停止後、VDCモータ21のモータ回転数低下特性に応じて、VDCモータ21の停止前のホイルシリンダ圧をそのまま維持するように差圧制御を行う例を示した。しかし、VDCモータを停止後、VDCモータの停止前のホイルシリンダ圧より圧力低下することがない差圧制御を行う例としても良い。この場合、停車時において少し高めのホイルシリンダ圧を加えることにより、停車状態を維持することができる。
【0065】
実施例1では、制動操作による全減速領域でVDCモータ21をONとし、停車するとVDCモータ21をOFFとする例を示した。しかし、制動操作による全減速領域のうち、例えば、加圧分を必要としない車速V2〜V1の領域でVDCモータをOFFとするモータON/OFF制御を行う例であっても良い。さらに、加圧分が減少方向にある制動操作時から車速V2までの領域を、車速V2〜V1の領域に含め、VDCモータをOFFとするモータON/OFF制御を行う例であっても良い。これらの場合、減速領域の途中にてVDCモータがOFFとされた際、車両の減速度が低下することによる違和感を解消することができる。
【0066】
実施例1では、ブレーキ液圧アクチュエータとして、図2に示すVDCブレーキ液圧ユニット2を利用する例を示した。しかし、ブレーキ液圧アクチュエータとしては、VDCモータにより駆動する液圧ポンプと、ポンプモータの作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有するものであれば良い。
【0067】
実施例1では、前輪駆動のハイブリッド車への適用例を示した。しかし、後輪駆動のハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、等の電動車両であれば、本発明のブレーキ制御装置を適用することができる。なお、エンジンが搭載されていない電動車両の場合、負圧ブースタに代えて電動ブースタ等を用いる。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレーキ液圧発生装置
2 VDCブレーキ液圧ユニット(ブレーキ液圧アクチュエータ)
21 VDCモータ(ポンプモータ)
22 液圧ポンプ
25 第1M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
26 第2M/Cカットソレノイドバルブ(差圧弁)
3 ストロークセンサ
4FL 左前輪ホイルシリンダ
4FR 右前輪ホイルシリンダ
4RL 左後輪ホイルシリンダ
4RR 右後輪ホイルシリンダ
5 走行用電動モータ
61 プライマリ液圧管
62 セカンダリ液圧管
63 左前輪液圧管
64 右前輪液圧管
65 左後輪液圧管
66 右後輪液圧管
7 ブレーキコントローラ
8 モータコントローラ(回生制動力制御手段)
9 統合コントローラ
91 バッテリコントローラ
92 車輪速センサ
93 ブレーキスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバー操作に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダと、
前後輪の各輪に設けられ、ホイルシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与えるホイルシリンダと、
前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとの間に介装され、ポンプモータにより駆動する液圧ポンプと、前記ポンプモータの作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有するブレーキ液圧アクチュエータと、
駆動輪に連結された走行用電動モータに接続され、前記走行用電動モータにより発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段と、
制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、前記マスタシリンダ圧による基本液圧分と前記回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分を前記ブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分で補償する制御を行う回生協調ブレーキ制御手段と、
回生協調ブレーキ制御にて前記ポンプモータを停止させた際、前記差圧弁による差圧制御を、前記ポンプモータのモータ回転数に基づいて行う差圧弁作動制御手段と、
を備えることを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記差圧弁作動制御手段は、前記ポンプモータの停止後、前記ポンプモータのモータ回転数低下に応じて、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が大きくなるように、前記差圧弁による差圧制御を行うことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記差圧弁作動制御手段は、前記ポンプモータの停止後、前記ポンプモータのモータ回転数低下特性に応じて、前記ポンプモータの停止前のホイルシリンダ圧をそのまま維持するように差圧制御を行うことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記回生協調ブレーキ制御手段は、制動操作に基づく回生協調ブレーキ制御により車両が停止すると、停止直前の減速領域で作動していた前記ポンプモータを停止するモータ制御を行うことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項1】
ドライバー操作に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダと、
前後輪の各輪に設けられ、ホイルシリンダ圧に応じて各輪に液圧制動力を与えるホイルシリンダと、
前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとの間に介装され、ポンプモータにより駆動する液圧ポンプと、前記ポンプモータの作動時、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧を制御する差圧弁と、を有するブレーキ液圧アクチュエータと、
駆動輪に連結された走行用電動モータに接続され、前記走行用電動モータにより発生する回生制動力を制御する回生制動力制御手段と、
制動操作時、ドライバーが要求する減速度を、前記マスタシリンダ圧による基本液圧分と前記回生制動力による回生分の総和で達成し、不足する回生分を前記ブレーキ液圧アクチュエータによる加圧分で補償する制御を行う回生協調ブレーキ制御手段と、
回生協調ブレーキ制御にて前記ポンプモータを停止させた際、前記差圧弁による差圧制御を、前記ポンプモータのモータ回転数に基づいて行う差圧弁作動制御手段と、
を備えることを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記差圧弁作動制御手段は、前記ポンプモータの停止後、前記ポンプモータのモータ回転数低下に応じて、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧の差圧が大きくなるように、前記差圧弁による差圧制御を行うことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記差圧弁作動制御手段は、前記ポンプモータの停止後、前記ポンプモータのモータ回転数低下特性に応じて、前記ポンプモータの停止前のホイルシリンダ圧をそのまま維持するように差圧制御を行うことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両のブレーキ制御装置において、
前記回生協調ブレーキ制御手段は、制動操作に基づく回生協調ブレーキ制御により車両が停止すると、停止直前の減速領域で作動していた前記ポンプモータを停止するモータ制御を行うことを特徴とする電動車両のブレーキ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−81814(P2012−81814A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228082(P2010−228082)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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