電動車両
【課題】歩行者に対して電動車両の接近報知音を有効確実に確認させることができ、ま た、その電動車両の接近報知音をその車両の右折、左折等の進行方向の歩行者等に効果的に届かせることができる電動車両を提供する。
【解決手段】電動モータを駆動源としてもしくは駆動源の1つとして走行する電動車両 であって、車両前部側に超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cを設け、車両速度検知部6a出力によりこの超音波パラメトリックスピーカからは車両速度に応じた種類の超音波を放射させ、また、ハンドル操作方向検知部6b出力によりハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる。
【解決手段】電動モータを駆動源としてもしくは駆動源の1つとして走行する電動車両 であって、車両前部側に超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cを設け、車両速度検知部6a出力によりこの超音波パラメトリックスピーカからは車両速度に応じた種類の超音波を放射させ、また、ハンドル操作方向検知部6b出力によりハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを駆動源として走行する電気自動車、エンジン(内燃機関)およびエンジンの停止状態での走行に寄与する電動モータを駆動源とするハイブリッド車、等の電動車両に関するものである。電動車両は、電動モータを駆動源あるいは駆動源の1つとする車両であればよく、さらに、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、等を例示することができる。
【背景技術】
【0002】
近年における地球環境の保全策として、バッテリ電力により電動モータを駆動して走行し、有害なガスを排出しない電気自動車、あるいは、エンジンと電動モータとを組み合わせて走行し、有害なガスの排出を低減するハイブリッド車等の電動車両が開発され、実用化されている。
【0003】
かかる電動車両では、電動モータを駆動源として走行するときの車両走行音は、モータ駆動音であり、エンジン駆動音と比較して極めて小さい。そのため、電動モータ駆動で走行中の電動車両の前方を歩行している歩行者にとって、電動車両が後方から接近してくることに気付くタイミングが、通常、遅くなり、また、車両走行音により行う電動車両との離隔距離の推測も誤ってしまうなどして、これらのことが交通事故を発生させる可能性も指摘されるという問題点がある。
【0004】
このような問題点に鑑みて、エンジン音に擬似した音を走行音として発生させるようにしたり、あるいは電動車両の接近を警告する警告音を発生させたりすることで、歩行者等に、電動車両の接近を報知するようにした技術が、これまで、種々、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−27810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電動車両の接近を報知するためのエンジン音擬似走行音や車両接近警告音等(以下、これらの音を車両接近報知音と称する)は、電動車両の進行方向を走行する歩行者の存在領域のみならず、その領域外周囲の領域にも広がる。そのため、進行方向の歩行者に確実に認識させることができるような大きな報知音を出力させると、電動車両の進行方向の歩行者存在領域外の周囲の歩行者にも過大で不快な騒音として聞こえてしまうという課題がある。
【0007】
そこで本発明者らは特願2009−196612で車両進行方向の歩行者等の存在領域に対してのみ車両接近報知音が確実にかつ大きい音量レベルで伝わりその領域外周囲には車両接近報知音の影響を与えないように、車両接近報知音を発生することができる電動車両を提供した。
【0008】
この電動車両では超音波パラメトリックスピーカを具備し、車両接近報知音に対応した信号で超音波の信号を振幅変調し、その振幅変調した信号で超音波パラメトリックスピーカを駆動して、該超音波パラメトリックスピーカから超音波を放射させると共に、この超音波を歩行者の位置で可聴可能な車両接近報知音に自己復調させるようにしたものである。そして、超音波パラメトリックスピーカは超狭指向性であり、進行方向の歩行者に確実に認識させることができるような大きな報知音を出力させることができる一方で、電動車両の進行方向の歩行者存在領域外の周囲の歩行者にはその報知音を聞こえないか小さく抑制するようにしたものである。
【0009】
そして、本発明は、さらに、そうした車両接近報知音の種類を車両速度に応じて変化させたり、あるいはハンドル操作方向に超音波を放射させたりすることができるようにして、より一層、歩行者に対して車両接近報知音を有効確実に確認させることができ、また、車両進行方向に効果的に届かせることができる電動車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる電動車両は、車両前部側の超音波パラメトリックスピーカと、この超音波パラメトリックスピーカを駆動制御する駆動制御回路とを備え、上記駆動制御回路は上記超音波パラメトリックスピーカから車両速度に応じた音源種類に対応して振幅変調された超音波を放射させる制御、および/または、ハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる制御を行うようになっている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の電動車両によると、超音波パラメトリックスピーカからの放射超音波は、歩行者が可聴できる車両接近報知音に自己復調される結果、当該歩行者らにその車両接近報知音により後方から車両が接近することを知らせることができる。そして、本発明では、駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカから車両速度に応じた超音波を放射させる場合では、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音の種類により車両の接近と共にその車両速度を認識できるから、所要の対応を迅速に行うことができるようになり、また、駆動制御回路により超音波がハンドル操作方向に応じた向きに放射させる制御を行う場合では、そのハンドル操作方向の歩行者に早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【0012】
なお、超音波パラメトリックスピーカによる超音波の到達距離を、車速に応じて制御することが好ましい。超音波の到達距離の制御は、例えば、超音波の周波数を、車速に応じて切替選択することによって行うことができる。そして、車速に応じて超音波の到達距離を制御する場合、高速走行時には、超音波に変換された車両接近報知音の到達距離を長くする一方、低速走行時には、超音波に変換された車両接近報知音の到達距離を短くすることができ、車速に応じて必要な領域に車両の接近を報知することができる。
【0013】
好ましい態様は、複数の音源を備え、上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからは車両速度に応じた種類の超音波を放射させる制御を行うときは上記複数の音源から車両速度に対応した音源を選択し、この選択した音源に基づく超音波を放射させる、ことである。
【0014】
別の好ましい態様は、上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる制御を行うときは当該超音波パラメトリックスピーカをハンドル操作方向に向けて回動させるか、または、上記超音波パラメトリックスピーカを複数設け、この複数の超音波パラメトリックスピーカそれぞれを複数のハンドル操作方向それぞれに向けて個別配置し、ハンドル操作方向に対応してこれら超音波パラメトリックスピーカを駆動する、ことである。
【0015】
この場合、複数の超音波パラメトリックスピーカそれぞれを複数のハンドル操作方向それぞれに向けて個別配置した場合では、ハンドル操作方向に向けて各超音波パラメトリックスピーカの駆動比率を制御したり、あるいは個別制御することが好ましい。
【0016】
別の好ましい態様は、上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからは車両進行方向とは逆方向に超音波を放射させる制御を行う一方、その放射した超音波を車両進行方向に向けて反射する反射板を設ける、ことである。
【0017】
別の好ましい態様は、上記超音波パラメトリックスピーカとは別に車両後部側にも別の超音波パラメトリックスピーカを設け、上記駆動制御回路によりこの別の超音波パラメトリックスピーカを車両後方に向けて放射制御する、ことである。この場合、上記別の超音波パラメトリックスピーカを後進レバー操作に応じて超音波を放射させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電動車両によれば、超音波を使用した超指向性の超音波パラメトリックスピーカを具備したから、この超音波パラメトリックスピーカを用いて車両接近報知音により変調した超音波を車両の進行方向の限られた特定領域に向けて放射させることで、歩行者等には車両の接近を確実に認識させることができる。
【0019】
そして、本発明の電動車両の場合、超音波が車両速度に応じた超音波である場合、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音の種類により車両の接近と共にその車両速度を認識できるから、所要の対応を迅速に行うことができるようになり、また、超音波がハンドル操作方向に応じた向きに放射された場合、そのハンドル操作方向の歩行者に早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る電動車両において当該車両前部における超音波パラメトリックスピーカの配置例を示す平面図である。
【図2】図2は超音波パラメトリックスピーカの概略外観構成を示す図である。
【図3】図3は上記超音波パラメトリックスピーカを含んで構成される車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図4】図4は図1の電動車両に搭載された車両接近報知音発生装置の動作説明に供するもので(a)は電動車両が直進しているときの図、(b)は電動車両を左カーブさせるためハンドル操作が開始された状態を示す図、(c)はハンドル操作がより深く左カーブ切替操作された状態を示す図である。
【図5】図5は本発明の他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図6】図6は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図7】図7は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図8】図8は図7の車両接近報知音発生装置の超音波パラメトリックスピーカと反射板との配置例を示す図である。
【図9】図9は図7の車両接近報知音発生装置の超音波パラメトリックスピーカと反射板との他の配置例を示す図である。
【図10】図10は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図11】図11は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図12】図12は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図13】図13は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態にかかる電動車両について詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1ないし図4を参照して本発明の実施の形態1に係る電動車両を説明する。図1に、本発明の実施の形態1に係る電動車両と、その電動車両において車両前部側での複数の超音波パラメトリックスピーカの配置例を示し、図2に超音波パラメトリックスピーカの概略の外観構成を示し、図3に超音波パラメトリックスピーカを備えた車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す。
【0023】
実施の形態1の電動車両1は、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車等の電動モータを推進力として利用する車両であり、電動モータ、電動モータの動力を走行系へ伝える伝動機構、走行用の車輪、操縦用のハンドル、アクセル、ブレーキ、始動用のキー、等の周知の構成を有している。
【0024】
この実施の形態1の電動車両1は、歩行者等に車両の接近を報知する車両接近報知音を、車両の進行方向の特定の空間領域のみに対して放射することができる超狭指向性の超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cを搭載している。超音波パラメトリックスピーカ2aは車両前部左側、超音波パラメトリックスピーカ2bは車両前部中央側、超音波パラメトリックスピーカ2cは車両前部右側にそれぞれ搭載されている。これら超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cは図2で示すように、平面基板3上に複数の超音波素子(トランスデューサ)4を平面パラメトリックアレイ配置して構成されている。これら超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cにおいて、超音波パラメトリックスピーカ2aは、車両左側前方の超音波放射領域5aへ、超音波パラメトリックスピーカ2bは、車両中央前方の超音波放射領域5bへ、超音波パラメトリックスピーカ2cは、車両右側前方の超音波放射領域5cへ、それぞれ、超音波を放射することができるようにその超音波放射方向が向けられている。中央側の超音波放射領域5bに対して左右の超音波放射領域5a,5cは部分的に重畳するように放射方向を設定することが好ましい。
【0025】
図3でブロック回路で示す車両接近報知音発生装置は、上記した超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cと、これらを駆動制御する駆動制御回路6と、を備える。
【0026】
駆動制御回路6は、車両速度検知部6aと、ハンドル操作方向検知部6bと、音源6cと、音源切替部6dと、変調器6eと、出力制御部6fと、複数の、この例では3つの駆動アンプ6g,6h,6iと、を含む。
【0027】
車両速度検知部6aは、電動車両1の速度を検出し、その検出に対応した車両速度検知信号を出力する。このような車両速度検知は各種あり周知であるからその詳細を略する。ハンドル操作方向検知部6bはハンドル(ステアリング・ホイール)の操作角度(車両の直進操作、左折操作、右折操作等、車両の進行方向を決めるための角度)を検出することができるものであり、その検出に対応したハンドル操作方向検知信号を出力する。このハンドル操作方向検知部6bにも各種あり周知であるからその詳細を略する。
【0028】
音源6cは図面的には1つのブロックで示すが、複数の音源を含む。複数の音源の例として、例えば低音、中音、高音の音源、である。音源の種類は何等限定されない。音源切替部6dは、車両速度検知部6aから車両速度が高速であるとの検知信号を入力すると、音源6cから高音の音源に切り替えて出力し、中速であるとの検知信号を入力すると、音源6cから中音の音源に切り替えて出力し、低速であるとの検知信号を入力すると、複数音源6cから低音の音源に切り替えて出力する。
【0029】
変調器6eは、音源切替部6dから出力される音源対応の電気信号で超音波対応の電気信号を振幅変調して出力する。出力制御部6fは、ハンドル操作方向検知部6bからのハンドル操作方向検出信号に応じて上記超音波対応信号を駆動アンプ6g,6h,6iに比率印加して駆動制御する。各駆動アンプ6g,6h,6iはそれぞれ超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cに個別に接続されている。例えば駆動アンプ6g,6h,6iそれぞれに入力する超音波対応信号のレベルがa:b:cであれば、超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cから出力される超音波のレベル(超音波音圧)La,Lb,LcはそれぞれLa:Lb:Lc=a:b:cとなる。
【0030】
図4を参照して上記比率印加を説明する。まず図4(a)で示すようにハンドル操作方向検知部6bからのハンドル操作方向検出信号が車両1を直進させるハンドル操作方向を示す信号である場合、3つの駆動アンプ6g,6h,6iのうち、超音波パラメトリックスピーカ2bに対応する駆動アンプ6hに印加する超音波対向信号の印加レベルLbを大きくし、他の超音波パラメトリックスピーカ2a,2cに対応する駆動アンプ6g,6iに印加する超音波対応信号の印加レベルLa,Lcを相対的に小さくする。これにより車両前部の左、中央、右それぞれに配置された3つの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波放射領域5a,5b,5cのうち、中央側の超音波パラメトリックスピーカ2bの超音波放射領域5bにはレベルLbが最大の超音波が放射される。
【0031】
そして、図4(b)で示すようにハンドル操作を左折方向に切り、ハンドル操作方向検知部6bから出力制御部6fにハンドル操作方向検出信号が車両1を左折させるハンドル操作方向を示す信号が入力された場合、出力制御部6fにより、3つの駆動アンプ6g,6h,6iのうち、車両左側の超音波パラメトリックスピーカ2aに対応する駆動アンプ6gに印加する超音波対向信号の印加レベルLaを大きくし、他の超音波パラメトリックスピーカ2b,2cに対応する駆動アンプ6h,6iに印加する超音波対応信号の印加レベルLb,Lcを相対的に小さくする出力制御が行われる。この場合、例えば超音波パラメトリックスピーカ2aの放射レベルLa>超音波パラメトリックスピーカ2bの放射レベルLb>超音波パラメトリックスピーカ2cの放射レベルLcの関係となる。
【0032】
これにより車両前部の左、中央、右それぞれに配置された3つの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波放射領域5a,5b,5cのうち、上記関係により、左側の超音波パラメトリックスピーカ2aの超音波放射領域5aにレベルLaが最大の超音波が放射される。さらに、ハンドル操作方向検知部6bからのハンドル操作方向検出信号が車両をより深く左折させるハンドル操作方向を示す信号である場合、左側の超音波パラメトリックスピーカ2aの超音波放射領域5aにはレベルLaがより大きい超音波が放射される。この結果、車両1左折方向の歩行者は車両1が左折されてくることを事前に認識することができるようになる。なお、車両1が右折する場合は左折する場合と同様であるからその説明を略する。
【0033】
以上説明したように本実施の形態1では、超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cをそれぞれ車両前部の左側、中央側、右側に配置し、車両速度に応じてそれぞれの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波の種類、例えば放射レベルを制御するので、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音のレベルから車両の接近と共にその車両速度を認識でき、所要の対応を迅速に行うことができるようになる。また、本実施の形態1では、ハンドル操作方向に応じた比率で放射レベルが相違した超音波を放射するので、そのハンドル操作方向の歩行者に対して早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【0034】
この場合、実施の形態1では、車両の進行方向に合わせて超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波の放射レベルを連続的に比率制御することで、超音波放射レベルを車両進行方向にスムーズに連続的に制御することができるようになる。
【0035】
(実施の形態2)
図5を参照して本発明の実施の形態2を説明する。図5において図1ないし図4と対応する部分には同一の符号を付している。実施の形態1では超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cそれぞれに対して駆動アンプ6g,6h,6iが3つであったが、実施の形態2においては、駆動制御回路6Aにおいて、駆動アンプは符号で6jの駆動アンプが1つであり、この駆動アンプ6jの出力をハンドル操作方向検知部6bが検知した出力に応じて切替部6uが超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cのいずれかに選択的に切替出力するようになっている。例えば、ハンドル操作方向が直進方向である場合は、駆動アンプ6jの出力は切替部6uにより超音波パラメトリックスピーカ2bに対して入力され、また、ハンドル操作方向が左折である場合は、駆動アンプ6jの出力は切替部6uにより超音波パラメトリックスピーカ2aに対して入力され、ハンドル操作方向が右折である場合は、駆動アンプ6jの出力は切替部6uにより超音波パラメトリックスピーカ2cに対して入力される。
【0036】
以上から本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、車両速度に応じてそれぞれの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波の放射レベルLa,Lb,Lcを制御するので、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音のレベルから車両の接近と共にその車両速度を認識でき、所要の対応を迅速に行うことができるようになる。そして、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、超音波がハンドル操作方向に応じた向きに放射されるので、そのハンドル操作方向の歩行者に対して早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【0037】
特に、実施の形態2では、駆動アンプ6jが1つであり、ハンドル操作方向が直進操作、左折操作、右折操作に応じて、駆動アンプ6jの出力をそれら操作に対応する超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cに印加するので、超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cの切替駆動が容易である。
【0038】
(実施の形態3)
図6を参照して本発明の実施の形態3を説明する。図6において図5と対応する部分には同一の符号を付している。図6で示す実施の形態3では、駆動制御回路6Bにおいて、実施の形態2の構成に加えて、さらに、車両のシフトレバーの操作を検知するシフトレバー操作位置検知部6mと、車両の後部中央に配置されて車両後方に超音波を放射する超音波パラメトリックスピーカ2dとを具備したことを特徴とする。
【0039】
切替部6uは、シフトレバー操作位置検知部6mが車両を前進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6jの出力を超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2c側に出力するよう切り替え、また、シフトレバー操作位置検知部6mが車両を後進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6j出力を超音波パラメトリックスピーカ2dに出力する。これにより、各超音波パラメトリックスピーカ2a−2dは駆動される。また、切替部6uは、シフトレバー操作位置検知部6mが車両を前進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力されたときは、ハンドル操作方向検知部6bの検知信号の入力に対しては実施の形態2と同様に駆動アンプ6j出力を各超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cに切り替えて入力させるようになっている。
【0040】
以上説明した実施の形態3では、車両が後進する場合も車両後方の歩行者等に超音波パラメトリックスピーカ2dから超音波を放射して車両の後進を知らせることができる。
【0041】
(実施の形態4)
図7を参照して本発明の実施の形態4を説明する。図7において図1ないし図6と対応する部分には同一の符号を付している。実施の形態1ないし3は、いずれも、車両前部に超音波パラメトリックスピーカを複数、例えば3つ備えたが、実施の形態4では車両前部に単一の超音波パラメトリックスピーカを具備した点で相違する。すなわち、図7で示す実施の形態4では、駆動制御回路6Cにおいて、ハンドル操作方向検知部6bの検知出力を入力する反射板制御駆動部6pと、超音波を車両進行方向Ldに対して角度θ分逆方向(矢印A方向)に放射するよう配置された単一の超音波パラメトリックスピーカ2eと、超音波パラメトリックスピーカ2eが放射する超音波を車両進行方向Ld周りに反射させるよう反射板制御駆動部6pに回転駆動される反射板6qとを具備する。
【0042】
反射板6qの回転位置がc10では超音波は破線矢印方向c11(車両右折方向)に反射し、反射板6qの回転位置がc20では超音波は一点鎖線矢印方向c21(車両左折方向)に反射し、反射板6qの回転位置がc30では超音波は実線矢印方向c31(車両直進方向でLdに一致)に反射する。もちろん、上記超音波パラメトリックスピーカ2eの配置は上記角度θ=0としてもよい。
【0043】
風雨や降雪時での走行では超音波パラメトリックスピーカ2eに直接、それら風雨等が当たらないように、超音波パラメトリックスピーカ2eの超音波放射方向を車両進行方向Ldとは逆方向に向けると共に、その超音波放射方向前方に反射板6qを配置している。この反射板6qは反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転可能となっている。反射板制御駆動部6pはハンドル操作方向検知部6bの検知出力に応答して反射板6qを回転駆動することができるようになっている。反射板6qの材料は超音波を反射できる材料であれば特に限定しない。
【0044】
なお、図8(a)(b)(c)で示すように超音波パラメトリックスピーカ2eと、反射板6qとは対となって車両前部中央に配置することができる。この実施の形態4では、1つの超音波パラメトリックスピーカ2eで、車両の進行方向とその左右方向に向けて反射板6qを回転させて超音波を放射することができ、構成が簡素になる。この超音波パラメトリックスピーカ2eと反射板6qとで1つの超音波放射セット10を構成する。
【0045】
例えば図8(a)で示すように車両が直進する場合では、超音波放射セット10内で反射板6qはその直進に合わせて反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転される結果、超音波パラメトリックスピーカ2eからの超音波5dは、反射板6qで車両進行方向に反射される。図8(b)で示すように車両が左折する場合は、超音波放射セット10内で反射板6qはその左折に合わせて反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転される結果、超音波パラメトリックスピーカ2eからの超音波5dは、反射板6qで左折方向に反射される。また、図8(c)で示すように車両が右折する場合は、超音波放射セット10内で反射板6qはその右折に合わせて反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転される結果、超音波パラメトリックスピーカ2eの超音波は、反射板6qで右折方向に反射される。その反射した超音波の放射領域は5dで示す。
【0046】
また、実施の形態4では超音波パラメトリックスピーカ2eと反射板6qとで超音波放射セット10を構成するが、この超音波放射セット10を複数セット、例えば図9(a)(b)(c)で示すように2セット10a,10bとし、各セット10a,10bそれぞれをサイドミラー1a,1bあるいはその近傍に設けてもよい。
【0047】
例えば図9(a)で示すように車両が直進する場合では、超音波放射セット10a,10b内の反射板はその直進に合わせて回転される結果、超音波放射セット10a,10b内の超音波パラメトリックスピーカからの超音波は、超音波放射セット10a,10b内の反射板で車両進行方向に反射される。その反射超音波の放射領域を5e1,5e2で示す。
【0048】
図9(b)で示すように車両が左折する場合は、超音波放射セット10a,10b内の反射板はその左折に合わせて回転される結果、超音波放射セット10a,10b内の超音波パラメトリックスピーカからの超音波は、超音波放射セット10a,10b内の反射板で左折方向に反射される。
【0049】
図9(c)で示すように車両が右折する場合は、超音波放射セット10a,10b内の反射板はその右折に合わせて回転される結果、超音波放射セット10a,10b内の超音波パラメトリックスピーカからの超音波は、超音波放射セット10a,10b内の反射板で右折方向に反射される。
【0050】
(実施の形態5)
図10を参照して本発明の実施の形態5を説明する。図10において図7と対応する部分には同一の符号を付している。図10で示す実施の形態5では、駆動制御回路6Dにおいて、車両のシフトレバーの操作を検知するシフトレバー操作位置検知部6rと、車両の後部中央に配置されて車両後方に超音波を放射する超音波パラメトリックスピーカ2fとを具備する。
【0051】
切替部6sは、シフトレバー操作位置検知部6rが車両を前進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6jの出力を超音波パラメトリックスピーカ2d側に出力するよう切り替え、また、シフトレバー操作位置検知部6rが車両を後進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6j出力を超音波パラメトリックスピーカ2fに出力する。これにより、各超音波パラメトリックスピーカ2d,2fは駆動される。
【0052】
以上説明した実施の形態5では、車両が後進する場合も車両後方の歩行者等に超音波パラメトリックスピーカ2fから超音波を放射して車両の後進を知らせることができる。
【0053】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、車両速度検知部とハンドル操作方向検知部6bとのうち車両速度検知部とを備えたが、必ずしも、これら両検知部を備える必要はなく、例えば図11で示すように車両速度検知部6aのみを備え、車両速度に応じた車両接近報知音を放射したり、図12で示すようにハンドル操作方向検知部6bのみを備え、車両速度に応じた車両接近報知音を放射したりするようにしてもよい。なお、図11、図12で図3と対応する部分には同一の符号を付している。
【0054】
また、図13では、距離/方向センサとしてのミリ波レーダ11と、駆動アンプ/反射板の制御部12とを具備し、ミリ波レーダ11により、車両前方の歩行者や他の車両等の対象物13までの距離および方向(方位角度)を検知し、制御部12は、ミリ波レーダ11から出力される対象物13の存在方向と、対象物13までの距離とに関わる信号に応じて、駆動アンプ6jの出力と、反射板6qとを制御して、対象物13に効果的に超音波の放射方向や放射強度を制御することができるようにしている。ミリ波レーダ11は、対象物13に周波数f0の信号を送信し、対象物13からの反射波f0+fdを受信し、受信した信号から所要の信号処理を行うことで上記距離測定の検知を行うと共に、周波数f0の送信信号は車両前方をスキャンできるようにしてそのスキャン位置から対象物13の方向を検知することができる。
【0055】
なお、上記のようにミリ波レーダを用いて対象物13までの距離や方向の検知を行うことに関しては特開2001−242242、同2002−341018等に開示の技術を利用することができるものであり、その詳細は略する。なお、対象物13までの距離や対象物13の存在方向のセンサは、上記ミリ波レーダ11に代えて超音波センサや他のセンサを用いてもよいことは勿論である。
【0056】
なお、対象物13を検知して上記のように対象物13に向けて超音波を放射し、復調した音源の種類としては例えば、音の大小を、例えばソフトから 怒鳴り声に変えたり、音声の種類例えば女性の声から男の声に変えたり、あるいは音の周波数を変えて対象物に最適な音、例えば人間の可聴域を超えて、動物に最適な音にすることができる。この場合、例えば周波数10kHz程度の音源と30kHz程度の音源と、周波数3.3kHz程度の音源を選択可能とし、通常は10kHz程度の周波数の音源としておいて、犬に対して注意を喚起したいときは30kHzの音源とし、音源とし、例えば鹿に対しては3.3kHzの音源で出すといった使用も可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 電動車両
2a,2b,2c 超音波パラメトリックスピーカ
3 基板
4 超音波素子
6 駆動制御回路
6a 車両速度検知部
6b ハンドル操作方向検知部
6c 音源
6d 音源切替部
6e 変調器
6f 出力制御部
6g,6h,6i 駆動アンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを駆動源として走行する電気自動車、エンジン(内燃機関)およびエンジンの停止状態での走行に寄与する電動モータを駆動源とするハイブリッド車、等の電動車両に関するものである。電動車両は、電動モータを駆動源あるいは駆動源の1つとする車両であればよく、さらに、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータ、等を例示することができる。
【背景技術】
【0002】
近年における地球環境の保全策として、バッテリ電力により電動モータを駆動して走行し、有害なガスを排出しない電気自動車、あるいは、エンジンと電動モータとを組み合わせて走行し、有害なガスの排出を低減するハイブリッド車等の電動車両が開発され、実用化されている。
【0003】
かかる電動車両では、電動モータを駆動源として走行するときの車両走行音は、モータ駆動音であり、エンジン駆動音と比較して極めて小さい。そのため、電動モータ駆動で走行中の電動車両の前方を歩行している歩行者にとって、電動車両が後方から接近してくることに気付くタイミングが、通常、遅くなり、また、車両走行音により行う電動車両との離隔距離の推測も誤ってしまうなどして、これらのことが交通事故を発生させる可能性も指摘されるという問題点がある。
【0004】
このような問題点に鑑みて、エンジン音に擬似した音を走行音として発生させるようにしたり、あるいは電動車両の接近を警告する警告音を発生させたりすることで、歩行者等に、電動車両の接近を報知するようにした技術が、これまで、種々、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−27810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電動車両の接近を報知するためのエンジン音擬似走行音や車両接近警告音等(以下、これらの音を車両接近報知音と称する)は、電動車両の進行方向を走行する歩行者の存在領域のみならず、その領域外周囲の領域にも広がる。そのため、進行方向の歩行者に確実に認識させることができるような大きな報知音を出力させると、電動車両の進行方向の歩行者存在領域外の周囲の歩行者にも過大で不快な騒音として聞こえてしまうという課題がある。
【0007】
そこで本発明者らは特願2009−196612で車両進行方向の歩行者等の存在領域に対してのみ車両接近報知音が確実にかつ大きい音量レベルで伝わりその領域外周囲には車両接近報知音の影響を与えないように、車両接近報知音を発生することができる電動車両を提供した。
【0008】
この電動車両では超音波パラメトリックスピーカを具備し、車両接近報知音に対応した信号で超音波の信号を振幅変調し、その振幅変調した信号で超音波パラメトリックスピーカを駆動して、該超音波パラメトリックスピーカから超音波を放射させると共に、この超音波を歩行者の位置で可聴可能な車両接近報知音に自己復調させるようにしたものである。そして、超音波パラメトリックスピーカは超狭指向性であり、進行方向の歩行者に確実に認識させることができるような大きな報知音を出力させることができる一方で、電動車両の進行方向の歩行者存在領域外の周囲の歩行者にはその報知音を聞こえないか小さく抑制するようにしたものである。
【0009】
そして、本発明は、さらに、そうした車両接近報知音の種類を車両速度に応じて変化させたり、あるいはハンドル操作方向に超音波を放射させたりすることができるようにして、より一層、歩行者に対して車両接近報知音を有効確実に確認させることができ、また、車両進行方向に効果的に届かせることができる電動車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる電動車両は、車両前部側の超音波パラメトリックスピーカと、この超音波パラメトリックスピーカを駆動制御する駆動制御回路とを備え、上記駆動制御回路は上記超音波パラメトリックスピーカから車両速度に応じた音源種類に対応して振幅変調された超音波を放射させる制御、および/または、ハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる制御を行うようになっている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の電動車両によると、超音波パラメトリックスピーカからの放射超音波は、歩行者が可聴できる車両接近報知音に自己復調される結果、当該歩行者らにその車両接近報知音により後方から車両が接近することを知らせることができる。そして、本発明では、駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカから車両速度に応じた超音波を放射させる場合では、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音の種類により車両の接近と共にその車両速度を認識できるから、所要の対応を迅速に行うことができるようになり、また、駆動制御回路により超音波がハンドル操作方向に応じた向きに放射させる制御を行う場合では、そのハンドル操作方向の歩行者に早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【0012】
なお、超音波パラメトリックスピーカによる超音波の到達距離を、車速に応じて制御することが好ましい。超音波の到達距離の制御は、例えば、超音波の周波数を、車速に応じて切替選択することによって行うことができる。そして、車速に応じて超音波の到達距離を制御する場合、高速走行時には、超音波に変換された車両接近報知音の到達距離を長くする一方、低速走行時には、超音波に変換された車両接近報知音の到達距離を短くすることができ、車速に応じて必要な領域に車両の接近を報知することができる。
【0013】
好ましい態様は、複数の音源を備え、上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからは車両速度に応じた種類の超音波を放射させる制御を行うときは上記複数の音源から車両速度に対応した音源を選択し、この選択した音源に基づく超音波を放射させる、ことである。
【0014】
別の好ましい態様は、上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる制御を行うときは当該超音波パラメトリックスピーカをハンドル操作方向に向けて回動させるか、または、上記超音波パラメトリックスピーカを複数設け、この複数の超音波パラメトリックスピーカそれぞれを複数のハンドル操作方向それぞれに向けて個別配置し、ハンドル操作方向に対応してこれら超音波パラメトリックスピーカを駆動する、ことである。
【0015】
この場合、複数の超音波パラメトリックスピーカそれぞれを複数のハンドル操作方向それぞれに向けて個別配置した場合では、ハンドル操作方向に向けて各超音波パラメトリックスピーカの駆動比率を制御したり、あるいは個別制御することが好ましい。
【0016】
別の好ましい態様は、上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからは車両進行方向とは逆方向に超音波を放射させる制御を行う一方、その放射した超音波を車両進行方向に向けて反射する反射板を設ける、ことである。
【0017】
別の好ましい態様は、上記超音波パラメトリックスピーカとは別に車両後部側にも別の超音波パラメトリックスピーカを設け、上記駆動制御回路によりこの別の超音波パラメトリックスピーカを車両後方に向けて放射制御する、ことである。この場合、上記別の超音波パラメトリックスピーカを後進レバー操作に応じて超音波を放射させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電動車両によれば、超音波を使用した超指向性の超音波パラメトリックスピーカを具備したから、この超音波パラメトリックスピーカを用いて車両接近報知音により変調した超音波を車両の進行方向の限られた特定領域に向けて放射させることで、歩行者等には車両の接近を確実に認識させることができる。
【0019】
そして、本発明の電動車両の場合、超音波が車両速度に応じた超音波である場合、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音の種類により車両の接近と共にその車両速度を認識できるから、所要の対応を迅速に行うことができるようになり、また、超音波がハンドル操作方向に応じた向きに放射された場合、そのハンドル操作方向の歩行者に早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る電動車両において当該車両前部における超音波パラメトリックスピーカの配置例を示す平面図である。
【図2】図2は超音波パラメトリックスピーカの概略外観構成を示す図である。
【図3】図3は上記超音波パラメトリックスピーカを含んで構成される車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図4】図4は図1の電動車両に搭載された車両接近報知音発生装置の動作説明に供するもので(a)は電動車両が直進しているときの図、(b)は電動車両を左カーブさせるためハンドル操作が開始された状態を示す図、(c)はハンドル操作がより深く左カーブ切替操作された状態を示す図である。
【図5】図5は本発明の他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図6】図6は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図7】図7は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図8】図8は図7の車両接近報知音発生装置の超音波パラメトリックスピーカと反射板との配置例を示す図である。
【図9】図9は図7の車両接近報知音発生装置の超音波パラメトリックスピーカと反射板との他の配置例を示す図である。
【図10】図10は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図11】図11は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図12】図12は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【図13】図13は本発明のさらに他の実施形態に係る電動車両において車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態にかかる電動車両について詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1ないし図4を参照して本発明の実施の形態1に係る電動車両を説明する。図1に、本発明の実施の形態1に係る電動車両と、その電動車両において車両前部側での複数の超音波パラメトリックスピーカの配置例を示し、図2に超音波パラメトリックスピーカの概略の外観構成を示し、図3に超音波パラメトリックスピーカを備えた車両接近報知音発生装置のブロック構成を示す。
【0023】
実施の形態1の電動車両1は、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車等の電動モータを推進力として利用する車両であり、電動モータ、電動モータの動力を走行系へ伝える伝動機構、走行用の車輪、操縦用のハンドル、アクセル、ブレーキ、始動用のキー、等の周知の構成を有している。
【0024】
この実施の形態1の電動車両1は、歩行者等に車両の接近を報知する車両接近報知音を、車両の進行方向の特定の空間領域のみに対して放射することができる超狭指向性の超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cを搭載している。超音波パラメトリックスピーカ2aは車両前部左側、超音波パラメトリックスピーカ2bは車両前部中央側、超音波パラメトリックスピーカ2cは車両前部右側にそれぞれ搭載されている。これら超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cは図2で示すように、平面基板3上に複数の超音波素子(トランスデューサ)4を平面パラメトリックアレイ配置して構成されている。これら超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cにおいて、超音波パラメトリックスピーカ2aは、車両左側前方の超音波放射領域5aへ、超音波パラメトリックスピーカ2bは、車両中央前方の超音波放射領域5bへ、超音波パラメトリックスピーカ2cは、車両右側前方の超音波放射領域5cへ、それぞれ、超音波を放射することができるようにその超音波放射方向が向けられている。中央側の超音波放射領域5bに対して左右の超音波放射領域5a,5cは部分的に重畳するように放射方向を設定することが好ましい。
【0025】
図3でブロック回路で示す車両接近報知音発生装置は、上記した超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cと、これらを駆動制御する駆動制御回路6と、を備える。
【0026】
駆動制御回路6は、車両速度検知部6aと、ハンドル操作方向検知部6bと、音源6cと、音源切替部6dと、変調器6eと、出力制御部6fと、複数の、この例では3つの駆動アンプ6g,6h,6iと、を含む。
【0027】
車両速度検知部6aは、電動車両1の速度を検出し、その検出に対応した車両速度検知信号を出力する。このような車両速度検知は各種あり周知であるからその詳細を略する。ハンドル操作方向検知部6bはハンドル(ステアリング・ホイール)の操作角度(車両の直進操作、左折操作、右折操作等、車両の進行方向を決めるための角度)を検出することができるものであり、その検出に対応したハンドル操作方向検知信号を出力する。このハンドル操作方向検知部6bにも各種あり周知であるからその詳細を略する。
【0028】
音源6cは図面的には1つのブロックで示すが、複数の音源を含む。複数の音源の例として、例えば低音、中音、高音の音源、である。音源の種類は何等限定されない。音源切替部6dは、車両速度検知部6aから車両速度が高速であるとの検知信号を入力すると、音源6cから高音の音源に切り替えて出力し、中速であるとの検知信号を入力すると、音源6cから中音の音源に切り替えて出力し、低速であるとの検知信号を入力すると、複数音源6cから低音の音源に切り替えて出力する。
【0029】
変調器6eは、音源切替部6dから出力される音源対応の電気信号で超音波対応の電気信号を振幅変調して出力する。出力制御部6fは、ハンドル操作方向検知部6bからのハンドル操作方向検出信号に応じて上記超音波対応信号を駆動アンプ6g,6h,6iに比率印加して駆動制御する。各駆動アンプ6g,6h,6iはそれぞれ超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cに個別に接続されている。例えば駆動アンプ6g,6h,6iそれぞれに入力する超音波対応信号のレベルがa:b:cであれば、超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cから出力される超音波のレベル(超音波音圧)La,Lb,LcはそれぞれLa:Lb:Lc=a:b:cとなる。
【0030】
図4を参照して上記比率印加を説明する。まず図4(a)で示すようにハンドル操作方向検知部6bからのハンドル操作方向検出信号が車両1を直進させるハンドル操作方向を示す信号である場合、3つの駆動アンプ6g,6h,6iのうち、超音波パラメトリックスピーカ2bに対応する駆動アンプ6hに印加する超音波対向信号の印加レベルLbを大きくし、他の超音波パラメトリックスピーカ2a,2cに対応する駆動アンプ6g,6iに印加する超音波対応信号の印加レベルLa,Lcを相対的に小さくする。これにより車両前部の左、中央、右それぞれに配置された3つの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波放射領域5a,5b,5cのうち、中央側の超音波パラメトリックスピーカ2bの超音波放射領域5bにはレベルLbが最大の超音波が放射される。
【0031】
そして、図4(b)で示すようにハンドル操作を左折方向に切り、ハンドル操作方向検知部6bから出力制御部6fにハンドル操作方向検出信号が車両1を左折させるハンドル操作方向を示す信号が入力された場合、出力制御部6fにより、3つの駆動アンプ6g,6h,6iのうち、車両左側の超音波パラメトリックスピーカ2aに対応する駆動アンプ6gに印加する超音波対向信号の印加レベルLaを大きくし、他の超音波パラメトリックスピーカ2b,2cに対応する駆動アンプ6h,6iに印加する超音波対応信号の印加レベルLb,Lcを相対的に小さくする出力制御が行われる。この場合、例えば超音波パラメトリックスピーカ2aの放射レベルLa>超音波パラメトリックスピーカ2bの放射レベルLb>超音波パラメトリックスピーカ2cの放射レベルLcの関係となる。
【0032】
これにより車両前部の左、中央、右それぞれに配置された3つの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波放射領域5a,5b,5cのうち、上記関係により、左側の超音波パラメトリックスピーカ2aの超音波放射領域5aにレベルLaが最大の超音波が放射される。さらに、ハンドル操作方向検知部6bからのハンドル操作方向検出信号が車両をより深く左折させるハンドル操作方向を示す信号である場合、左側の超音波パラメトリックスピーカ2aの超音波放射領域5aにはレベルLaがより大きい超音波が放射される。この結果、車両1左折方向の歩行者は車両1が左折されてくることを事前に認識することができるようになる。なお、車両1が右折する場合は左折する場合と同様であるからその説明を略する。
【0033】
以上説明したように本実施の形態1では、超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cをそれぞれ車両前部の左側、中央側、右側に配置し、車両速度に応じてそれぞれの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波の種類、例えば放射レベルを制御するので、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音のレベルから車両の接近と共にその車両速度を認識でき、所要の対応を迅速に行うことができるようになる。また、本実施の形態1では、ハンドル操作方向に応じた比率で放射レベルが相違した超音波を放射するので、そのハンドル操作方向の歩行者に対して早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【0034】
この場合、実施の形態1では、車両の進行方向に合わせて超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波の放射レベルを連続的に比率制御することで、超音波放射レベルを車両進行方向にスムーズに連続的に制御することができるようになる。
【0035】
(実施の形態2)
図5を参照して本発明の実施の形態2を説明する。図5において図1ないし図4と対応する部分には同一の符号を付している。実施の形態1では超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cそれぞれに対して駆動アンプ6g,6h,6iが3つであったが、実施の形態2においては、駆動制御回路6Aにおいて、駆動アンプは符号で6jの駆動アンプが1つであり、この駆動アンプ6jの出力をハンドル操作方向検知部6bが検知した出力に応じて切替部6uが超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cのいずれかに選択的に切替出力するようになっている。例えば、ハンドル操作方向が直進方向である場合は、駆動アンプ6jの出力は切替部6uにより超音波パラメトリックスピーカ2bに対して入力され、また、ハンドル操作方向が左折である場合は、駆動アンプ6jの出力は切替部6uにより超音波パラメトリックスピーカ2aに対して入力され、ハンドル操作方向が右折である場合は、駆動アンプ6jの出力は切替部6uにより超音波パラメトリックスピーカ2cに対して入力される。
【0036】
以上から本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、車両速度に応じてそれぞれの超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cからの超音波の放射レベルLa,Lb,Lcを制御するので、歩行者は、超音波を自己復調した車両接近報知音のレベルから車両の接近と共にその車両速度を認識でき、所要の対応を迅速に行うことができるようになる。そして、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、超音波がハンドル操作方向に応じた向きに放射されるので、そのハンドル操作方向の歩行者に対して早い段階で車両の接近を認識させることができるようになる。
【0037】
特に、実施の形態2では、駆動アンプ6jが1つであり、ハンドル操作方向が直進操作、左折操作、右折操作に応じて、駆動アンプ6jの出力をそれら操作に対応する超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cに印加するので、超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cの切替駆動が容易である。
【0038】
(実施の形態3)
図6を参照して本発明の実施の形態3を説明する。図6において図5と対応する部分には同一の符号を付している。図6で示す実施の形態3では、駆動制御回路6Bにおいて、実施の形態2の構成に加えて、さらに、車両のシフトレバーの操作を検知するシフトレバー操作位置検知部6mと、車両の後部中央に配置されて車両後方に超音波を放射する超音波パラメトリックスピーカ2dとを具備したことを特徴とする。
【0039】
切替部6uは、シフトレバー操作位置検知部6mが車両を前進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6jの出力を超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2c側に出力するよう切り替え、また、シフトレバー操作位置検知部6mが車両を後進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6j出力を超音波パラメトリックスピーカ2dに出力する。これにより、各超音波パラメトリックスピーカ2a−2dは駆動される。また、切替部6uは、シフトレバー操作位置検知部6mが車両を前進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力されたときは、ハンドル操作方向検知部6bの検知信号の入力に対しては実施の形態2と同様に駆動アンプ6j出力を各超音波パラメトリックスピーカ2a,2b,2cに切り替えて入力させるようになっている。
【0040】
以上説明した実施の形態3では、車両が後進する場合も車両後方の歩行者等に超音波パラメトリックスピーカ2dから超音波を放射して車両の後進を知らせることができる。
【0041】
(実施の形態4)
図7を参照して本発明の実施の形態4を説明する。図7において図1ないし図6と対応する部分には同一の符号を付している。実施の形態1ないし3は、いずれも、車両前部に超音波パラメトリックスピーカを複数、例えば3つ備えたが、実施の形態4では車両前部に単一の超音波パラメトリックスピーカを具備した点で相違する。すなわち、図7で示す実施の形態4では、駆動制御回路6Cにおいて、ハンドル操作方向検知部6bの検知出力を入力する反射板制御駆動部6pと、超音波を車両進行方向Ldに対して角度θ分逆方向(矢印A方向)に放射するよう配置された単一の超音波パラメトリックスピーカ2eと、超音波パラメトリックスピーカ2eが放射する超音波を車両進行方向Ld周りに反射させるよう反射板制御駆動部6pに回転駆動される反射板6qとを具備する。
【0042】
反射板6qの回転位置がc10では超音波は破線矢印方向c11(車両右折方向)に反射し、反射板6qの回転位置がc20では超音波は一点鎖線矢印方向c21(車両左折方向)に反射し、反射板6qの回転位置がc30では超音波は実線矢印方向c31(車両直進方向でLdに一致)に反射する。もちろん、上記超音波パラメトリックスピーカ2eの配置は上記角度θ=0としてもよい。
【0043】
風雨や降雪時での走行では超音波パラメトリックスピーカ2eに直接、それら風雨等が当たらないように、超音波パラメトリックスピーカ2eの超音波放射方向を車両進行方向Ldとは逆方向に向けると共に、その超音波放射方向前方に反射板6qを配置している。この反射板6qは反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転可能となっている。反射板制御駆動部6pはハンドル操作方向検知部6bの検知出力に応答して反射板6qを回転駆動することができるようになっている。反射板6qの材料は超音波を反射できる材料であれば特に限定しない。
【0044】
なお、図8(a)(b)(c)で示すように超音波パラメトリックスピーカ2eと、反射板6qとは対となって車両前部中央に配置することができる。この実施の形態4では、1つの超音波パラメトリックスピーカ2eで、車両の進行方向とその左右方向に向けて反射板6qを回転させて超音波を放射することができ、構成が簡素になる。この超音波パラメトリックスピーカ2eと反射板6qとで1つの超音波放射セット10を構成する。
【0045】
例えば図8(a)で示すように車両が直進する場合では、超音波放射セット10内で反射板6qはその直進に合わせて反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転される結果、超音波パラメトリックスピーカ2eからの超音波5dは、反射板6qで車両進行方向に反射される。図8(b)で示すように車両が左折する場合は、超音波放射セット10内で反射板6qはその左折に合わせて反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転される結果、超音波パラメトリックスピーカ2eからの超音波5dは、反射板6qで左折方向に反射される。また、図8(c)で示すように車両が右折する場合は、超音波放射セット10内で反射板6qはその右折に合わせて反射板制御駆動部6pにより回転軸O周りに回転される結果、超音波パラメトリックスピーカ2eの超音波は、反射板6qで右折方向に反射される。その反射した超音波の放射領域は5dで示す。
【0046】
また、実施の形態4では超音波パラメトリックスピーカ2eと反射板6qとで超音波放射セット10を構成するが、この超音波放射セット10を複数セット、例えば図9(a)(b)(c)で示すように2セット10a,10bとし、各セット10a,10bそれぞれをサイドミラー1a,1bあるいはその近傍に設けてもよい。
【0047】
例えば図9(a)で示すように車両が直進する場合では、超音波放射セット10a,10b内の反射板はその直進に合わせて回転される結果、超音波放射セット10a,10b内の超音波パラメトリックスピーカからの超音波は、超音波放射セット10a,10b内の反射板で車両進行方向に反射される。その反射超音波の放射領域を5e1,5e2で示す。
【0048】
図9(b)で示すように車両が左折する場合は、超音波放射セット10a,10b内の反射板はその左折に合わせて回転される結果、超音波放射セット10a,10b内の超音波パラメトリックスピーカからの超音波は、超音波放射セット10a,10b内の反射板で左折方向に反射される。
【0049】
図9(c)で示すように車両が右折する場合は、超音波放射セット10a,10b内の反射板はその右折に合わせて回転される結果、超音波放射セット10a,10b内の超音波パラメトリックスピーカからの超音波は、超音波放射セット10a,10b内の反射板で右折方向に反射される。
【0050】
(実施の形態5)
図10を参照して本発明の実施の形態5を説明する。図10において図7と対応する部分には同一の符号を付している。図10で示す実施の形態5では、駆動制御回路6Dにおいて、車両のシフトレバーの操作を検知するシフトレバー操作位置検知部6rと、車両の後部中央に配置されて車両後方に超音波を放射する超音波パラメトリックスピーカ2fとを具備する。
【0051】
切替部6sは、シフトレバー操作位置検知部6rが車両を前進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6jの出力を超音波パラメトリックスピーカ2d側に出力するよう切り替え、また、シフトレバー操作位置検知部6rが車両を後進させる方向に操作されたことを示す検知信号の入力に応答して駆動アンプ6j出力を超音波パラメトリックスピーカ2fに出力する。これにより、各超音波パラメトリックスピーカ2d,2fは駆動される。
【0052】
以上説明した実施の形態5では、車両が後進する場合も車両後方の歩行者等に超音波パラメトリックスピーカ2fから超音波を放射して車両の後進を知らせることができる。
【0053】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、車両速度検知部とハンドル操作方向検知部6bとのうち車両速度検知部とを備えたが、必ずしも、これら両検知部を備える必要はなく、例えば図11で示すように車両速度検知部6aのみを備え、車両速度に応じた車両接近報知音を放射したり、図12で示すようにハンドル操作方向検知部6bのみを備え、車両速度に応じた車両接近報知音を放射したりするようにしてもよい。なお、図11、図12で図3と対応する部分には同一の符号を付している。
【0054】
また、図13では、距離/方向センサとしてのミリ波レーダ11と、駆動アンプ/反射板の制御部12とを具備し、ミリ波レーダ11により、車両前方の歩行者や他の車両等の対象物13までの距離および方向(方位角度)を検知し、制御部12は、ミリ波レーダ11から出力される対象物13の存在方向と、対象物13までの距離とに関わる信号に応じて、駆動アンプ6jの出力と、反射板6qとを制御して、対象物13に効果的に超音波の放射方向や放射強度を制御することができるようにしている。ミリ波レーダ11は、対象物13に周波数f0の信号を送信し、対象物13からの反射波f0+fdを受信し、受信した信号から所要の信号処理を行うことで上記距離測定の検知を行うと共に、周波数f0の送信信号は車両前方をスキャンできるようにしてそのスキャン位置から対象物13の方向を検知することができる。
【0055】
なお、上記のようにミリ波レーダを用いて対象物13までの距離や方向の検知を行うことに関しては特開2001−242242、同2002−341018等に開示の技術を利用することができるものであり、その詳細は略する。なお、対象物13までの距離や対象物13の存在方向のセンサは、上記ミリ波レーダ11に代えて超音波センサや他のセンサを用いてもよいことは勿論である。
【0056】
なお、対象物13を検知して上記のように対象物13に向けて超音波を放射し、復調した音源の種類としては例えば、音の大小を、例えばソフトから 怒鳴り声に変えたり、音声の種類例えば女性の声から男の声に変えたり、あるいは音の周波数を変えて対象物に最適な音、例えば人間の可聴域を超えて、動物に最適な音にすることができる。この場合、例えば周波数10kHz程度の音源と30kHz程度の音源と、周波数3.3kHz程度の音源を選択可能とし、通常は10kHz程度の周波数の音源としておいて、犬に対して注意を喚起したいときは30kHzの音源とし、音源とし、例えば鹿に対しては3.3kHzの音源で出すといった使用も可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 電動車両
2a,2b,2c 超音波パラメトリックスピーカ
3 基板
4 超音波素子
6 駆動制御回路
6a 車両速度検知部
6b ハンドル操作方向検知部
6c 音源
6d 音源切替部
6e 変調器
6f 出力制御部
6g,6h,6i 駆動アンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部側の超音波パラメトリックスピーカと、
この超音波パラメトリックスピーカを駆動制御する駆動制御回路と、
を備え、
上記駆動制御回路により、上記超音波パラメトリックスピーカから車両速度に応じた 音源種類に対応して振幅変調された超音波を放射させる制御および/またはハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる制御を行うようになっている、
ことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
複数の音源を備え、
上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからは車両速度に応じた種類 の超音波を放射させる制御を行うときは、上記複数の音源から車両速度に対応した音源を選択し、この選択した音源に基づく超音波を放射させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからハンドル操作の方向に向 けて超音波を放射させる制御を行うときは当該超音波パラメトリックスピーカをハンドル操作方向に向けて回動させるか、または、上記超音波パラメトリックスピーカを複数設け、この複数の超音波パラメトリックスピーカそれぞれを複数のハンドル操作方向それぞれに向けて個別配置し、ハンドル操作方向に対応してこれら超音波パラメトリックスピーカを駆動する、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項4】
上記駆動制御回路により上記超音波パラメトリックスピーカを車両進行方向とは逆方 向に超音波を放射させるよう駆動する一方、その放射した超音波を車両進行方向に向けて反射させる反射板を設けた、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動車両。
【請求項5】
上記超音波パラメトリックスピーカとは別に車両後部側にも別の超音波パラメトリッ クスピーカを設け、上記駆動制御回路により、上記別の超音波パラメトリックスピーカを車両後方に向けて放射させる制御を行う、請求項1ないし4のいずれかに記載の電動車両。
【請求項6】
対象物までの距離および該対象物の存在方向を検出するセンサを備え、このセンサ出 力に応じて超音波パラメトリックスピーカからの超音波の放射方向や放射強度を制御する、請求項1ないし5のいずれかに記載の電動車両。
【請求項1】
車両前部側の超音波パラメトリックスピーカと、
この超音波パラメトリックスピーカを駆動制御する駆動制御回路と、
を備え、
上記駆動制御回路により、上記超音波パラメトリックスピーカから車両速度に応じた 音源種類に対応して振幅変調された超音波を放射させる制御および/またはハンドル操作の方向に向けて超音波を放射させる制御を行うようになっている、
ことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
複数の音源を備え、
上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからは車両速度に応じた種類 の超音波を放射させる制御を行うときは、上記複数の音源から車両速度に対応した音源を選択し、この選択した音源に基づく超音波を放射させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
上記駆動制御回路により超音波パラメトリックスピーカからハンドル操作の方向に向 けて超音波を放射させる制御を行うときは当該超音波パラメトリックスピーカをハンドル操作方向に向けて回動させるか、または、上記超音波パラメトリックスピーカを複数設け、この複数の超音波パラメトリックスピーカそれぞれを複数のハンドル操作方向それぞれに向けて個別配置し、ハンドル操作方向に対応してこれら超音波パラメトリックスピーカを駆動する、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項4】
上記駆動制御回路により上記超音波パラメトリックスピーカを車両進行方向とは逆方 向に超音波を放射させるよう駆動する一方、その放射した超音波を車両進行方向に向けて反射させる反射板を設けた、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動車両。
【請求項5】
上記超音波パラメトリックスピーカとは別に車両後部側にも別の超音波パラメトリッ クスピーカを設け、上記駆動制御回路により、上記別の超音波パラメトリックスピーカを車両後方に向けて放射させる制御を行う、請求項1ないし4のいずれかに記載の電動車両。
【請求項6】
対象物までの距離および該対象物の存在方向を検出するセンサを備え、このセンサ出 力に応じて超音波パラメトリックスピーカからの超音波の放射方向や放射強度を制御する、請求項1ないし5のいずれかに記載の電動車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−162073(P2011−162073A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27412(P2010−27412)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
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