説明

電動車椅子用バッテリ構造

【課題】
車椅子の背もたれに設けられたポケット部に挿入される電動車椅子用電源バッテリにおいて、電源バッテリの車椅子への取り付けを容易にする電動車椅子用バッテリ構造を提供すること。
【解決手段】
電源バッテリ50は、薄形直方体からなり、薄形直方体の一端面51を下方に向けて上方に開口部40aを有するポケット部40に装着され、上方に位置する他端面52の一端側52aに電源バッテリ50を持つ際に掴む把手60が配設されと共に他端面52の他端側52bに電源バッテリ50から電力を取り出す給電コネクタ31が結合される電源コネクタ71または電源バッテリ50に充電する充電コネクタ72が設けられる接続コネクタ部70が配設される電動車椅子用電源バッテリ構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子用バッテリ構造に関するものであり、特に電動車椅子へ着脱自在なバッテリ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車椅子の背もたれの背面に設けられたポケット部に着脱自在に電源バッテリが装着される電動式車椅子が開示されている。電源バッテリは、車椅子の駆動輪を駆動する駆動装置から延設された給電コネクタに接続される電池コネクタが一端面に設けられている。電源バッテリは、一端面を下方に向けポケット部に装着される。また、ポケット部の下部に設けられた接続穴に電池コネクタが位置され、接続穴を通して電池コネクタに給電コネクタが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−290369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電動式車椅子においては、電源バッテリは隙間無く収容できるように形成されたポケット部に電源バッテリの平らな一端面がポケット部の開口部から挿入される。このため、一端面の形状に合せた開口部への電源バッテリの挿入が困難となる恐れがある。
【0005】
また、接続穴と電池コネクタの位置が合わず、電池コネクタと給電コネクタとの接続が困難となる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、電源バッテリの車椅子への取り付けを容易にする電動車椅子用バッテリ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために本発明にて講じられた第1の技術的手段は、車椅子の背もたれに設けられたポケット部に挿入される電動車椅子用電源バッテリ構造であって、前記電源バッテリは、薄形直方体からなり、前記薄形直方体の一端面を下方に向けて上方に開口部を有する前記ポケット部に装着され、上方に位置する他端面の一端側に前記電源バッテリを持つ際に掴む把手が配設されと共に他端側に前記電源バッテリから電力を取り出す給電コネクタが結合される電源コネクタまたは前記電源バッテリに充電する充電コネクタが設けられる接続コネクタ部が配設される電動車椅子用電源バッテリ構造としたことである。
【0008】
第2の技術的手段は、請求項1において、前記把手は、前記他端面との間に角度を有して形成されることである。
【0009】
第3の技術的手段は、請求項1または請求項2において、前記一端面の少なくとも一端側に面取またはR形状が形成されることである。
【0010】
第4の技術的手段は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記給電コネクタは前記電源コネクタと勘合する勘合部に対し所定姿勢に復帰可能に付勢され両端に向かって細くなる差込部を有し、前記電源コネクタは前記嵌合部に対する前記差込部の位置から偏心して前記差込部が差し込まれる穴が設けられることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によると、把手を握り電源バッテリを持ち上げたとき、電源バッテリの重心が把手の略真下に位置し、薄形直方体の把手と対角上にある一端面の角部が開口部に対して突状になる。このため、突状の角部を案内として、開口部への電源バッテリの挿入が容易となる。また、ポケット部に装着された電源バッテリの上方に位置する他端面に接続コネクタ部が配設されるため、電源コネクタまたは充電コネクタへの相手コネクタの結合が容易となる。
【0012】
請求項2の発明によると、把手を握り電源バッテリを持ち上げたとき、把手は略水平になり、把手を握り持ち上げるとき人の手首の曲がりが解消でき、手首に発生する負荷が軽減される。
【0013】
請求項3の発明によると、一端面が略水平になりポケット部の挿入されるとき、開口部より一端面の面積が小さくでき、開口部からポケット部への電源バッテリの挿入が容易になる。
【0014】
請求項4の発明によると、給電コネクタと電源コネクタを結合するとき、付勢された差込部の一端側が偏心した穴を通過したあと差込部を差し込む力が低減し、給電コネクタと電源コネクタは節度感を得て結合できる。また、結合解除のときは、差込部の他端側の傾斜により差込部が穴に案内され通過し、給電コネクタと電源コネクタの結合解除が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における電動車椅子の側面図である。
【図2】図1に示す電動車椅子において電源バッテリの搭載状況を示す背面図である。
【図3】接続コネクタの結合前の状況を示す電源バッテリの斜視図である。
【図4】接続コネクタを結合した電源バッテリの斜視図である。
【図5】図3および図4に示す電源バッテリの変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態における接続コネクタ部の要部断面図であり、結合開始の状態を示す。
【図7】本発明の実施形態における接続コネクタ部の要部断面図であり、結合途中の状態を示す。
【図8】本発明の実施形態における接続コネクタ部の要部断面図であり、結合済の状態を示す。
【図9】給電コネクタ部の変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例について、以下に図面を参照して説明する。
【0017】
電動車椅子1は、主に、骨格を構成する車体フレーム10と、車体フレーム10の左右に着脱可能に装着される駆動輪20とで構成されている。
【0018】
図1に示すように、車体フレーム10は、使用者の背中を支える背もたれ部11と、介助者が掴むグリップ12と、運転操作用のコントローラ13と、使用者が着座する着座部14と、使用者の肘を支えるアームレスト15と、使用者が足を置くフットレスト16と、補助輪17とを備えている。
【0019】
駆動輪20には、これらを回転駆動させる電動モータ30が連結されている。電動モータ30は、コントローラ13により制御装置(図略)を介して駆動・制御される。また、電動モータ30は、電源バッテリ50から電力の供給を受ける。
【0020】
図2に示すように、電源バッテリ50は、背もたれ部11に面ファスナー(図略)にて着脱自在に設けられるポケット部40に装着される。本実施例においては、ポケット部40は並列に2つ設けられ、可撓性のあるデニム素材からできている。ポケット部40は電源バッテリ50を挿入できる大きさ、形状であり、装着後電源バッテリ50を覆うカバー41が一体に設けられている。なお、ポケット部40は樹脂材料から形成されていてもよい。
【0021】
図3および図4に示すように、電源バッテリ50は、薄形直方体からなり、一端面51を下方に向けてポケット部40に装着される。また、電源バッテリ50は、上方に位置する他端面52の一端側52aに電源バッテリ50を持つ際に掴む把手60が配設されると共に、他端側52bに電動モータ30および商用電源(図略)に接続される接続コネクタ部70が配設される。把手60は、電源バッテリ50の幅方向に延在する握り部61と、握り部61の両端から屈曲して他端面52に一体的に固定される固定部62から構成される。
【0022】
接続コネクタ部70は、電動モータ30に電力線(図略)により接続された給電コネクタ31が結合され電源バッテリ50から電力を取り出する電源コネクタ71と、商用電源から電源バッテリ50に充電する充電コネクタ72とを有する。電源コネクタ71と充電コネクタ72は、充電コネクタ72が電源バッテリ50の外周側に位置するように互いに隣接して配設されている。なお、電源コネクタ71と充電コネクタ72は、互いに離間して配設されてもよい。
【0023】
ここで、前述の構成の電源バッテリ50をポケット部40に装着する動作について説明する。
【0024】
電源バッテリ50は、把手60を握り持ち上げられたとき、電源バッテリ50の重心が把手60の略真下に位置し、把手60と対角上にある一端面51の角部51aが最下部となり、ポケット部40の略水平な開口部40aに対して突状になる。このときの、角部51aの開口部40aへの投影面積が開口部40aの面積より小さくなる。これにより、突状の角部51aは開口部40aへ挿入され、突状の角部51aを案内として、電源バッテリ50のポケット部40への挿入は容易となる。また、ポケット部40に装着された電源バッテリ50の上方に位置する他端面52に接続コネクタ部70が配設されるため、接続コネクタ部70の視認性が向上すると共に、使用者または介助者は立ち状態で電源コネクタ71または充電コネクタ72と、それぞれの相手コネクタである給電コネクタ31または商用電源との断続を容易に行うことができる。
【0025】
なお、把手60の握り部61は、他端面52との間に角度Aを有して形成されている。これにより、握り部61を握り電源バッテリ50を持ち上げたとき、握り部61を略水平にした状態で、角部51aはポケット部40の開口部40aに対して突状にされるため、把手60を握り持ち上げる使用者または介助者の手首の曲がりによる負荷が軽減される。
【0026】
また、図5に示すように、一端面51における角部51aと反対側(一端側)51bはR形状(または、面取り形状)であっても良い。これにより、角部51aが開口部40aに案内され、一端面51が略水平になりポケット部40の挿入されるとき、一端面51の面積が開口部40aより小さくなり、開口部40aからポケット部40への電源バッテリ50の挿入が容易となる。
【0027】
次に、接続コネクタ部70における給電コネクタ31と電源コネクタ71との結合について図6を参照し説明する。図6は、図3および図4におけるX平面による断面を示す。
【0028】
給電コネクタ31は、電源コネクタ71と勘合する勘合部31aが設けられると共に、勘合部31aに対し垂下姿勢(所定姿勢)に復帰可能にスプリング(付勢部材)32により付勢される差込部33を有する。差込部33は、両端に向かって細くなると共に、一端側に支持部33aが一体的に形成されている。差込部33は、支持部33aと給電コネクタ31に固定される保持部34との間にスプリング32を挟んで付勢されている。
【0029】
電源コネクタ71は、勘合部31aが勘合する勘合部71aが設けられると共に、嵌合部71aに対する差込部33の軸中心(位置)から偏心量E偏心する中心を有する穴71bが設けられる。穴71bは、内周の断面が円弧状に形成され、差込部33が差し込まれる。
【0030】
前述の構造により、給電コネクタ31と電源コネクタ71を結合するとき、結合開始時は図6に示すように、勘合部31aと勘合部71aが勘合し、差込部33はスプリング32に付勢され上下方向に垂下した状態にある。次に、差し込み始めると図7に示すように、付勢された差込部33の他端側(先端側)の傾斜33bが偏心した穴71bの内周に当接しスプリング32は圧縮されると共に傾斜され抵抗力を受ける。更に、差し込み続けると図8に示すように、差込部33は穴71bを通過し、スプリング32に付勢され上下方向に垂下した状態に戻り、抵抗力が無くなる。
【0031】
これにより、図6の状態から図7の状態を経て、図8の状態に移行するにつれ、差し込むときの抵抗力が変化するため、給電コネクタ31と電源コネクタ71とを節度感を得て結合することができる。このため、給電コネクタ31と電源コネクタ71との不完全な結合が防止でき、電動車椅子1の走行中に給電コネクタ31と電源コネクタ71とが離間し、電動走行不能となる事態を防止できる。
【0032】
次に、給電コネクタ31と電源コネクタ71との結合を解除するときは、差込部33の一端側(後端側)の傾斜33cにより差込部33が穴71bに滑らかに案内され穴71bを通過する。このため、給電コネクタ31と電源コネクタ71の結合解除が容易にできる。
【0033】
なお、本実施例では、差込部33は、先端側が球状で後端側に行くにつれ軸径が細くなる形状を呈している。先端側を球状にすることにより、差し込み時の抵抗力がより大きくでき、結合時の節度感を向上することができる。
【0034】
また、給電コネクタ31の外周には連続した下方に凸状の壁部31bが形成され、電源コネクタ71の外周には凹状の段差部71cが形成されている。給電コネクタ31と電源コネクタ71が結合されたとき、壁部31bと段差部71cが係合し、給電コネクタ31と電源コネクタ71との結合部を液密的に外部から遮断し、給電コネクタ31と電源コネクタ71との結合部の防水性を確保する。
【0035】
また、図9に示すように、差込部33を屈曲可能な屈曲部35を介して保持部34に一体的に設けて、節度感が得られるようにしてもよい。これにより、部品点数を低減できると共に、組み付けを容易にできる。なお、この場合、保持部34にスプリング等を配設してもよい。また、屈曲部35は、断面逆U字の両端をそれぞれ支持部33aおよび保持部34に接合した構造や蛇腹構造であってもよい。
【0036】
ところで、給電コネクタ31と電源コネクタ71とが結合されるとき、給電コネクタ31により電源コネクタ71に隣接する充電コネクタ72が覆われるため、充電コネクタ72が商用電源と接続される状態は発生しない。従って、電動車椅子1が充電中に走行することができない。従って、充電コネクタ72と商用電源との接続部位の破損が防止できる。
【符号の説明】
【0037】
31・・・給電コネクタ
31a(71a)・・・勘合部
33・・・差込部
40・・・ポケット部
50・・・電源バッテリ
51・・・一端面
52・・・他端面
52a・・・一端側
52b・・・他端側
60・・・把手
70・・・接続コネクタ部
71・・・電源コネクタ
71b・・・穴
A・・・角度
E・・・偏心量
51b・・・一端側(R形状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の背もたれに設けられたポケット部に挿入される電動車椅子用電源バッテリ構造であって、
前記電源バッテリは、薄形直方体からなり、前記薄形直方体の一端面を下方に向けて上方に開口部を有する前記ポケット部に装着され、上方に位置する他端面の一端側に前記電源バッテリを持つ際に掴む把手が配設されと共に前記他端面の他端側に前記電源バッテリから電力を取り出す給電コネクタが結合される電源コネクタまたは前記電源バッテリに充電する充電コネクタが設けられる接続コネクタ部が配設される電動車椅子用電源バッテリ構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記把手は、前記他端面との間に角度を有して形成される電動車椅子用電源バッテリ構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記一端面の少なくとも一端側に面取またはR形状が形成される電動車椅子用電源バッテリ構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記給電コネクタは前記電源コネクタと勘合する勘合部に対し所定姿勢に復帰可能に付勢され両端に向かって細くなる差込部を有し、前記電源コネクタは前記勘合部に対する前記差込部の位置から偏心して前記差込部が差し込まれる穴が設けられる電動車椅子用電源バッテリ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−181237(P2011−181237A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42180(P2010−42180)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】