説明

電動送風機及びそれを備えた電気掃除機

【課題】大風量の空気を吸入するためには、遠心ファンのブレード間の開口面積を広くすることが必要となるため、遠心ファンの前縁に凸形状を有するブレードでは、ブレード間の開口面積が小さくなってしまい大風量化が困難であった。
【解決手段】回転子及び固定子を有する電動機と、電動機を収納するハウジングと、回転子に設けられた回転軸と、回転軸に取り付けられた遠心ファンと、遠心ファンから吐出された風をハウジング内の風路に導くディフューザと、遠心ファン及びディフューザを外方から覆うように設けられ吸込口を有するファンケーシングとを有した電動送風機において、遠心ファンは、吸込口を有する前面プレートと、回転軸が挿入される穴を有する後面プレートと、複数のブレードとを備え、複数のブレードは、異なる形状のブレードからなり、異なる形状のブレードを前面プレートと後面プレートの間に交互に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動送風機及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機には電動送風機が用いられており、電動送風機の仕事率は、静圧と風量の積によって求められ、近年、風量を大風量化することにより仕事率向上を図っている。
【0003】
従来の電動送風機として、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。この特許文献1には、遠心ファンのブレードの前縁形状を、前面プレート側(シュラウド側)の部分を凸形状、後面プレート側(ハブ側)の部分を凹形状とすることで、送風機の損失の要因となっている2次流れを抑制し、電動送風機の仕事率向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4663259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大風量の空気を吸入するためには、遠心ファンのブレード間の開口面積を広くすることが必要となるため、特許文献1のように遠心ファンの前縁に凸形状を有するブレードでは、ブレード間の開口面積が小さくなってしまい大風量化が困難となる恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、損失の要因となっている2次流れを抑制しつつ、かつ大風量化が可能となる遠心ファンの構造を備えた電動送風機、及びこの電動送風機を備えた電気掃除機を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、回転子及び固定子を有する電動機と、電動機を収納するハウジングと、回転子に設けられた回転軸と、回転軸に取り付けられた遠心ファンと、遠心ファンから吐出された風をハウジング内の風路に導くディフューザと、遠心ファン及びディフューザを外方から覆うように設けられ吸込口を有するファンケーシングとを有した電動送風機において、遠心ファンは、吸込口を有する前面プレートと、回転軸が挿入される穴を有する後面プレートと、複数のブレードとを備え、複数のブレードは、異なる形状のブレードからなり、異なる形状のブレードを前面プレートと後面プレートの間に交互に配置したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、回転子及び固定子を有する電動機と、電動機を収納するハウジングと、回転子に設けられた回転軸と、回転軸に取り付けられた遠心ファンと、遠心ファンから吐出された風をハウジング内の風路に導くディフューザと、遠心ファン及びディフューザを外方から覆うように設けられ吸込口を有するファンケーシングとを有した電動送風機において、遠心ファンは、吸込口を有する前面プレートと、回転軸が挿入される穴を有する後面プレートと、複数のブレードとを備え、複数のブレードは、異なる形状の2種類のブレードからなり、異なる形状の2種類のブレードは、前面プレートと後面プレートの間に交互に配置され、異なる形状の2種類のブレードは、前面プレートおよび後面プレートと接している部分の長さおよび形状が同一であり、かつ前面プレート、及び後面プレートと接していない部分の形状のみが異なることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記接していない部分は前記前面プレートの吸込口側にあることを特徴とする。
【0010】
また、電動送風機を収納する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続されるホースと、一端が前記ホースの他端に接続される手元操作部と、一端が前記手元操作部の他端に接続される延長管と、前記延長管の他端に接続される吸口体とを備えた電機掃除機に置いて、前記電動送風機は上記に記載の電動送風機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
大風量化による仕事率向上が見込め、総合的な仕事率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の遠心ファンの斜視図である。
【図2】本発明、及び従来の遠心ファンの開口部拡大図である。
【図3】ブレードA及びブレードBの展開図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる電動送風機100の断面図である。
【図5】本発明の一実施例にかかる電気掃除機の外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例について、添付の図面を用いて説明する。
図5に本発明の一実施例に係る電気掃除機の外観図を示す。201は塵埃を集塵する集塵部及び集塵するのに必要な吸込気流を発生させる電動送風機100(図4)を収納する掃除機本体、202は一端がホース継手203を介して掃除機本体201に接続されるホース、204は一端がホース202の他端に接続される手元操作部、205は手元操作部204に設けられた電動送風機の入切を行うスイッチ部、206は一端が手元操作部204の他端に接続される延長管、207は延長管206の他端に接続される吸口体である。
【0014】
以上の構成において、手元操作部204のスイッチ部205を操作すると、掃除機本体201に収納された電動送風機が運転し、吸込気流を発生させる。そして、吸口体207から塵埃を吸込み、延長管206,手元操作部204,ホース202を通して掃除機本体201の集塵部に集塵する。
【0015】
次に、図4を用いて掃除機本体201に収納された電動送風機100の構成を説明する。図4は本発明の一実施例に係る電動送風機100の断面図である。図4では、電動送風機100の回転軸106が上下方向となっている。電動送風機100が掃除機本体201に装着される際には、電動送風機100の回転軸106が掃除機本体201の前後方向となるように横置きに装着されてもよいし、電動送風機100の回転軸106が掃除機本体201の上下方向となるように縦置きに装着されてもよい。
【0016】
101は一端側が開口し他端側が閉塞された筒状のハウジングであり、102はハウジング101の開口部側に配置されたファンケーシングであり、ハウジング101とファンケーシング102とで電動送風機100の外郭を構成している。ファンケーシング102とハウジング101は嵌合によって固定される。103はハウジング101の内部に固定された固定子であり、104は固定子の内側で回転する回転子であり、固定子103と回転子104とで電動機105を構成している。106は回転子104に設けられた回転軸であり、回転軸の両端を軸受107(107a,107b)によって回転可能に軸支されている。軸受107のうち、一方の軸受107aは閉塞されたハウジング101の底部に形成された軸受固定部101bにその外周が固定され、他方の軸受107bは開口部側に配置されたエンドブラケット108に形成された軸受固定部108aにその外周が固定されている。エンドブラケット108は、ハウジング101に螺子109により固定されている。
【0017】
110は回転軸106にナット111等で固定された遠心ファンであり、回転子104と共に回転し、吸込気流を発生させる。遠心ファン110は吸込開口114を有する前面プレート110aと、回転軸106が貫通する孔を有する後面プレート110bと、前面プレート110aと後面プレート110bとの間に挟まれるようにして設けられたブレード110c、110dとより構成されている。
【0018】
112は遠心ファン110から吐出された風をハウジング101内の風路に導くディフューザである。ディフューザ112は、仕切板112aと、この仕切板112aの遠心ファン110側(図4の上方側)に配置されたディフューザベーン112bと、仕切板112aの電動機105側(図4の下方側)に配置されたリターンガイドベーン112cより構成されている。遠心ファン110及びディフューザ112はファンケーシングにより外方を覆われている。
【0019】
113はファンケーシング102に形成された吸込口であり、遠心ファン110の吸込開口114と連通している。ファンケーシング102の吸込口113の外周部には、環状の突部102aが形成されており、この環状の突部102aの裏面(ファンケーシング102の裏面)には、ファンケーシング102の吸込口113より外周側にシール部材115が配置されている。このシール部材115は、遠心ファン110の前面プレート110aの先端部が摺動可能に接触し、ファンケーシング102と遠心ファン110との間の気密の漏れを防止している。116はシール部材を押えるシール固定部材であり、ファンケーシング102の裏面に取り付けられている。シール固定部材116の断面は、略L字形状を有する。
【0020】
117は回転軸106に固定され回転子104と電気的に接続された整流子である。118は整流子117と摺接するブラシであり、119はブラシ118と電気的に接続されたリード線であり、120はブラシ118を整流子117に押圧する付勢力を発生させるバネである。121はブラシ118,リード線119,バネ120を収納し、ハウジング101に螺子122によって取り付けられたブラシホルダである。
【0021】
上の構成において、電動機105の回転子104が回転すると、遠心ファン110が回転し、吸込気流が発生する。吸込口113から流入した風は、吸込開口114から遠心ファン110に流入する。遠心ファン110から吐出された風は、ディフューザ112のディフューザベーン112bを通り、ディフューザベーン112bから吐出された風はディフューザ112とファンケーシング102の内面とで形成された空間で流れが反転し、リターンガイドベーン112cへと流入する。リターンガイドベーン112cから吐出された風はハウジング101内の風路を流れ、ハウジング101の外周部に形成された開口(図示せず)から電動送風機100外へ吐出される。
【0022】
次に、図1を用いて本発明の特徴である電動送風機100に取り付けられた遠心ファン110の構成を説明する。前記遠心ファン110は、前面プレート110a、後面プレート110b、ブレードA110c、ブレードB110dを有している。前面プレート110aは、平面部110a1と立ち上がり部110a2とを有している。平面部110a1は略円板状であり、その中心には円形の穴が開いている。立ち上がり部110a2は料亭面が開口部となり両開口部が連通した略円筒形状をしている。立ち上がり部110a2の一方の底面と平面部の円形の穴とが滑らかな曲部を介し接続されている。前面プレート110aは全体として円形状の部材である。後面プレート110bは略円板状をしており、こちらにも円形の穴が開いている。後面プレート110bの穴は立ち上がり部110a2の開口部よりも小さい。後面プレート110bの穴は回転軸106が設けられるための穴である。立ち上がり部110a2の開口部からは空気を吸引する。ブレードAは前縁に凸形状部を有しており、これにより2次流れを抑制している。ブレードB110dは前記ブレードA110cの凸形状部をなくし直線形状としたものである。ブレードA110cとブレードB110dは、前面プレート110aと後面プレート110bの間に設けられており、ブレードA110cとブレードB110dが交互になるよう配置されている。ブレードA110cはブレードB110dに比べて大きいため、翼一枚あたりの負荷を小さくすることができ、負荷損失を低減することができる。また、ブレードB110dは凸形状部がなく直線形状となっているためファンケーシングの入口段差から翼先端が離れることになり、翼端渦の発生を抑制することができる。
【0023】
図2は、本発明の遠心ファンの開口部を拡大した図である。図2(a)が従来のブレードA110cのみで構成した遠心ファンの開口部であり、図2(b)は本発明のブレードA110cとブレードB110dの2種類のブレードを配置した図である。いずれも羽根枚数は8枚である。遠心ファン110の回転軸から、ブレードA110cの前縁と前面プレート110aの交点までの距離をR1、ブレードB110dの前縁と前面プレートの交点までの距離をR1′としたとき、R1=R1′となり、R1とR1′は同一円周上に存在する。
【0024】
同様に、遠心ファン110の回転軸から、ブレードA110cの前縁と後面プレート110bの交点までの距離をR2、ブレードB110dの前縁と後面プレート110bの交点までの距離をR2′としたとき、R2=R2′となり、R2とR2′も同一円周上に存在する。
【0025】
したがって、ブレード前縁の凸部がない分、図2(b)のブレード間の開口部の面積は、図2(a)のブレード間の開口部の面積に比べて大きくなる。これにより、大風量化を可能としている。
【0026】
図3はブレードA110cとブレードB110dの展開図を示している。ブレードB110dはブレードA110cの前縁の凸部をなくしたのみで、その他の形状は同一であるため、ブレードA110cと前面プレート110aが接する箇所の長さと、ブレードB110dと前面プレート110aが接する箇所の長さは、どちらもL1となる。
【0027】
同様に、ブレードA110cと後面プレート110bが接する箇所の長さと、ブレードB110dと後面プレート110bが接する箇所の長さは、どちらもL2となる。
【0028】
そのため、ブレードを製作するための主な金型は同じものを使用し、前縁形状のみ変更した金型を組み替えることによりブレードの製作が可能となり、金型代のコスト低減が可能となる。
【0029】
上記のようにブレードA110cとブレードB110dを交互になるように配置することにより2次流れを抑制しつつ、かつ大風量化が可能となる電動送風機を作成することができる。
【符号の説明】
【0030】
100 電動送風機
101 ハウジング
102 ファンケーシング
110 遠心ファン
110a 前面プレート
110b 後面プレート
110c ブレードA
110d ブレードB
112 ディフューザ
113 吸込口
114 吸込開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子及び固定子を有する電動機と、前記電動機を収納するハウジングと、前記回転子に設けられた回転軸と、前記回転軸に取り付けられた遠心ファンと、前記遠心ファンから吐出された風を前記ハウジング内の風路に導くディフューザと、前記遠心ファン及び前記ディフューザを外方から覆うように設けられ吸込口を有するファンケーシングとを有した電動送風機において、
前記遠心ファンは、
吸込口を有する前面プレートと、前記回転軸が挿入される穴を有する後面プレートと、複数のブレードとを備え、
前記複数のブレードは、異なる形状のブレードからなり、
前記異なる形状のブレードを前記前面プレートと前記後面プレートの間に交互に配置したことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
回転子及び固定子を有する電動機と、前記電動機を収納するハウジングと、前記回転子に設けられた回転軸と、前記回転軸に取り付けられた遠心ファンと、前記遠心ファンから吐出された風を前記ハウジング内の風路に導くディフューザと、前記遠心ファン及び前記ディフューザを外方から覆うように設けられ吸込口を有するファンケーシングとを有した電動送風機において、
前記遠心ファンは、
吸込口を有する前面プレートと、前記回転軸が挿入される穴を有する後面プレートと、複数のブレードとを備え、
前記複数のブレードは、異なる形状の2種類のブレードからなり、
前記異なる形状の2種類のブレードは、前記前面プレートと前記後面プレートの間に交互に配置され、
前記異なる形状の2種類のブレードは、前記前面プレートおよび前記後面プレートと接している部分の長さおよび形状が同一であり、かつ前記前面プレート、及び前記後面プレートと接していない部分の形状のみが異なることを特徴とする電動送風機。
【請求項3】
前記接していない部分は前記前面プレートの吸込口側にあることを特徴とする請求項2に記載の電動送風機。
【請求項4】
電動送風機を収納する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続されるホースと、一端が前記ホースの他端に接続される手元操作部と、一端が前記手元操作部の他端に接続される延長管と、前記延長管の他端に接続される吸口体とを備えた電機掃除機において、
前記電動送風機は請求項1乃至3の何れかに記載の電動送風機であることを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32747(P2013−32747A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169737(P2011−169737)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】