説明

電動送風機

【課題】遠心ファンの吸込口の箇所のシールを合理的に構成し得る電動送風機を提供する。
【解決手段】電動送風機1は、電動機10と、電動機10のシャフト15に固定された遠心ファン22と、遠心ファン22を囲むファンケーシング20を備える。ファンケーシング20の構成要素であるファンカバー21の内面に、遠心ファン22の吸込口26が接触するシール部材40が取り付けられる。シール部材40はエチレン―酢酸ビニル共重合樹脂の発泡材により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機とファンが一つのユニットにまとめられた電動送風機は、家庭用電気機器の分野でも、電子機器の冷却ファンや電気掃除機の真空源などとして広く用いられている。その中でも電気掃除機用の電動送風機は、大風量と高真空を両立させる必要があるところから、ファンケーシング内で遠心ファンを高速回転させる構成が採用されている。
ファンケーシング内で遠心ファンを高速回転させるにあたり、遠心ファンの外周の吐出口から吹き出された空気の一部が再び遠心ファンの中心の吸込口に引き込まれ、送風効率を低下させるという問題が古くから指摘されている。これに対しては、ファンケーシングの内面にシール部材を取り付け、このシール部材に遠心ファンの吸込口を押し付けて、吐出口の方から戻ってくる空気を遮断するという方策が提案されている。これを実施すれば、シール部材が遠心ファンの吸込口で削られることにより、シール部材は遠心ファンにしっくりとなじみ、低摩擦で気密性の高いシール部が構成される。このような電動送風機の例を特許文献1〜4に見ることができる。
特許文献1に記載された電動送風機では、シール部材として、多孔質のポリテトラフロロエチレン樹脂が用いられている。
特許文献2に記載された電動送風機では、シール部材として、弾性率が20〜50kg/cmのポリテトラフロロエチレン樹脂が用いられている。
特許文献3に記載された電動送風機では、シール部材として、耐熱性、低摩擦性、柔軟性を有すると共に、けずれやすい紫外線硬化性樹脂が用いられている。
特許文献4に記載された電動送風機では、シール部材として、ポリエチレンフォーム材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2885042号公報(国際特許分類:F04D29/42)
【特許文献2】特許第2987286号公報(国際特許分類:F04D29/16、F04D29/08、F04D29/44)
【特許文献3】特開平9−236098号公報(国際特許分類:F04D29/44)
【特許文献4】特開2008−57485号公報(国際特許分類:F04D29/16、F04D29/08、F04D29/02、F04D29/44、F04D29/42)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2で提案されたポリテトラフロロエチレン樹脂(PTFE)は、低摩擦材料の代表格であり、高速回転する遠心ファンに接触させるのに好適する。しかしながら、それをシートの形にしてリング状のシール部材を打ち抜くという製造工程で、厚みや寸法の安定性に欠け、寸法管理が難しいという問題があった。また、摩擦係数が低いというメリットの反面、接着性が悪く、接着固定することが難しい。何よりもPTFEは高価であり、リング状に打ち抜いたりすれば余計に材料の歩留まりが悪くなり、コストアップを招いていた。
特許文献3、4で提案されたシール部材の材料はPTFEに比べ安価である。しかしながら、接触抵抗、削りかすの処理、変形によるシール性の悪化など、改善すべき点も多かった。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、遠心ファンの吸込口の箇所のシールを合理的に構成し得る電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態によれば、電動送風機は、電動機と、前記電動機のシャフトに固定された遠心ファンと、前記遠心ファンを囲むファンケーシングを備え、前記ファンケーシングの構成要素であるファンカバーの内面に、前記遠心ファンの吸込口が接触するシール部材が取り付けられるものであって、前記シール部材はエチレン―酢酸ビニル共重合樹脂の発泡材により構成されている。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記シール部材の発泡率は8倍から12倍である。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ファンカバーを金型に入れた上での発泡処理により前記シール部材が形成される。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記シール部材は前記ファンカバーの内面に密着する断面形状に成型され、前記ファンカバーに接着固定される。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記シール部材はシート材料を打ち抜いて形成され、リング状のホルダに取り付けた状態で前記ファンカバーに固定されるものであるとともに、前記ファンカバーの吸込口は前記ファンケーシングの内側に向かって突き出す形状となっており、その突き出した部分の外周面に前記シール部材が密着する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ホルダと前記ファンカバー吸込口がしまりばめ嵌合を形成する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ホルダの外縁部に、前記シール部材を囲むリング状リブが形成されている。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ホルダは、当該電動送風機の軸線方向に突出するリブで前記ファンカバーに接触するものであり、前記ホルダの外周部と前記ファンカバーの間には隙間が生じている。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ホルダの外周部は、前記ファンカバーとの間に隙間が生じ、且つ前記電動機に向かってすぼまるテーパ部を備えた形状である。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ホルダの外周面に段差が形成されている。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記ホルダは、前記ファンカバーに面する第1ホルダ部材と、前記ファンに面する第2ホルダ部材により構成され、前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の間に前記シール部材が挟み込まれる。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記第2ホルダ部材に、前記第1ホルダ部材の外側に被さるリング状リブが形成されている。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の間に、互いの連結を維持する弾性連結部が形成されている。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記弾性連結部は、前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の一方に設けられた凸部と他方に設けられた凹部からなる。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の少なくとも一方に、前記シール部材に食い込む突起を形成した。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動送風機において、前記突起がリング状リブからなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の要であるエチレン―酢酸ビニル共重合樹脂(Ethylene-Vinyl Acetate:以下「EVA」の略称を用いる)は、ポリエチレンよりも柔らかく弾力に富み、軽量且つ安価である。シール部材を構成するのはEVAの発泡材であるから弾性がさらに高まり、遠心ファンから加わる圧力を容易に吸収できる。硬質のETFEのように、加圧で塑性変形してシール性が損なわれるといったこともない。EVAの耐熱性は電動送風機に用いるには十分なものであるが、それでも遠心ファンが接触する部分は摩擦熱で溶融する。溶融が生じれば気泡が塞がれて滑らかになるので、シール性が一層向上する。溶融しない箇所は気泡による微細な凹凸が残っていて接着剤が浸透しやすいので、接着性も良い。発泡材であることから遠心ファンで削られる分の材料が少なく、削りかすの量が少ないことから、それが風路の下流側に付着して問題を引き起こすといったことも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動送風機の側面図で、上半分を断面の形で示したものである。
【図2】第1実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図3】第2実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図4】第3実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図5】第4実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図6】第5実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図7】第6実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図8】第7実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図9】第8実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【図10】第9実施形態に係る電動送風機に用いられるシール部材及びホルダの組立状態の断面図である。
【図11】図10のシール部材とホルダを分解状態で示す断面図である。
【図12】第10実施形態に係る電動送風機に用いられるシール部材及びホルダの組立状態の断面図である。
【図13】図12のシール部材とホルダを分解状態で示す断面図である。
【図14】第11実施形態に係る電動送風機の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施形態に係る電動送風機の構造を図1、2に基づき説明する。
電動送風機1は、電動機10の前部にファンケーシング20が結合された構成となっている。電動機10は整流子電動機であって、板金のプレス成型品からなるモータケーシング11の中に、固定子12と、固定子12の中で回転する電機子13と、電機子13の整流子部分に接触して電機子13に電力を供給するカーボンブラシ14が配置されている。電機子13はシャフト15に固定され、シャフト15はモータケーシング11に保持される軸受16、17により回転自在に支持されている。
モータケーシング11には、固定子12より後方の位置に排気口18が形成され、前部にはフランジ19が形成される。フランジ19と、それに前方から被さるファンカバー21が、ファンケーシング20を構成する。ファンカバー21も板金のプレス成型品である。
シャフト15の前端は電動機10からファンケーシング20の中に突き出し、ここに遠心ファン22が固定される。遠心ファン22は前面シュラウド23と後面シュラウド24を前後に間隔を置いて配置し、その間に複数のブレード25を挟み込んだ構成である。前面シュラウド23、後面シュラウド24、及びブレード25はいずれも板金により構成される。前面シュラウド23の中心には前方に突き出した吸込口26が形成される。前面シュラウド23と後面シュラウド24の間の空間の外周側の端は吐出口27となる。
モータケーシング11の前面には合成樹脂製のディフューザー30がねじ止め固定される。ディフューザー30はファンカバー21に囲い込まれるものであり、ディスク31と、ディスク31の前面に形成された複数のディフューザー翼32と、ディスク31の後面に形成された複数のリターンガイド33を備える。リターンガイド33同士の間の空間は電動機10の内部空間に通じている。
ファンカバー21の中心には遠心ファン22への入口となる吸込口35が形成されて
いる。吸込口35は、一旦前方に突き出した後、ベルマウス部36を形成しつつファンケーシング20の内側に向かって突き出し、筒状部37を形成している。筒状部37の外径は、遠心ファン22の吸込口26の内径より少し小さい。ファンカバー21の外周には、ディフューザー翼32から吐出された空気の一部を外に出すスリット38が形成されている。
電動機10を駆動し、遠心ファン22を回転させると、ファンカバー21の吸込口35と遠心ファン22の吸込口26を通じて遠心ファン22に空気が吸い込まれる。遠心ファン22から吐出された空気はディフューザー翼32で整流され、ディフューザー30の外周に吐出される。吐出された空気の一部はスリット38からファンカバー21の外に出る。残りの空気はリターンガイド33の間を通って電動機10に達し、電動機10の各所の隙間を通り抜ける。これにより電動機10は冷却される。電動機10を通り抜けた空気はモータケーシング11の排気口18から排出される。
遠心ファン22の吐出口27から吐出された空気は全量がディフューザー30に向かうべきものである。そこで、前面シュラウド23の前から吸込口26に戻る空気流が生じないよう、ファンカバー21の内面に、吸込口35の筒状部37を囲む形でリング状のシール部材40を取り付け、これに遠心ファン22の吸込口26を接触させる。シール部材40は吸込口27で削られて遠心ファン22になじみ、低摩擦で気密性の高いシール部が構成される。
シール部材40にはEVAの発泡材を用いる。EVAはポリエチレンよりも柔らかく弾力に富み、軽量且つ安価である上、発泡材であるから弾性がさらに高まり、遠心ファン22から加わる圧力を容易に吸収できる。遠心ファン22が接触する部分は摩擦熱で溶融し、溶融が生じれば気泡が塞がれて滑らかになるので、シール性が一層向上する。溶融しない箇所は気泡による微細な凹凸が残っていて接着剤が浸透しやすいので、接着性も良い。発泡材であることから遠心ファンで削られる分の材料が少なく、削りかすの量が少ないことから、それが風路の下流側に付着して問題を引き起こすといったことも少ない。
EVAの発泡率は8倍から12倍とする。発泡率が高くなると発泡材に腰がなくなり、取り扱いが難しくなるほか、表面が粗くなるのでシール性が落ちる。逆に発泡率が低いと見掛け硬度が高くなり、遠心ファン22がロックする危険度が高まる。発泡率を8倍から12倍としておけば、弾性と硬度をほどよく保つことができる。
第1実施形態のシール部材40は、ファンカバー21の内面に、吸込口35を囲む形でドーナツ形の凹部が生じていることを利用して、図示しない金型の中にファンカバー21を入れ、EVAの発泡処理を行うことにより、ファンカバー21に一体成型される。これにより、ファンカバー21の内面形状そのままの形で、ファンカバー21にぴったりと密着したシール部材40を得ることができる。シール部材40は吸込口35に対し位置ずれを生じることがないので、遠心ファン22に対する位置も不変であり、良好なシール性が維持される。シール部材40を固定するのに接着剤を用いる必要もない。
続いて電動送風機1のその他の実施形態を説明する。いずれの実施形態も他と異なるのはシール箇所の構成だけであり、それ以前の実施形態と共通の構成要素にはそれ以前の実施形態の説明で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
本発明の第2実施形態を図3に示す。第2実施形態は、シール部材40をファンカバー21に一体成型せず、ファンカバー21の内面形状に沿う形状のシール部材40を別途成型し、それを接着剤41でファンカバー21に固定している。接着の工程は増えるが、ファンカバー21を入れて一体成型を行う金型を製作する必要はなくなる。
本発明の第3実施形態を図4に示す。第3実施形態では、シート材料を打ち抜いて形成されたシール部材40を、ファンカバー21の内面形状に沿う断面形状のリング状ホルダ42に取り付け、この状態でファンカバー21に固定される。シール部材40の内周面は筒状部37の外周面に密着する。ホルダ42の材料としては安価な汎用樹脂、例えばABS(acrylonitrile-butadiene-styrene)を用いることができる。ホルダ42に対するシール部材40の固定と、ファンカバー21に対するホルダ42の固定にはいずれも接着剤を用いる。
第3実施形態では、シート材料を打ち抜いたシール部材40がホルダ42で裏打ちされているので、シート材料が材質的に腰の弱い種類のものであっても、シール部材40が不用意に隙間に入り込んだり、めくれ上がったりすることを防止できる。またシール部材40は筒状部37に密着しているから、吸込口26をぎりぎりまで吸込口35に近づけることができる。つまり吸込口26、35間の寸法差を小さくすることができるので、その箇所における乱流損失を低減し、送風効率を高めることができる。
ホルダ42と筒状部37は、両者が若干のしまりばめ嵌合を形成するように寸法を設定しておくとよい。これにより、ホルダ42の位置が安定し、接着剤が固まるまでの間にホルダ42が移動することを防止できる。
本発明の第4実施形態を図5に示す。第4実施形態は第3実施形態のホルダ42に次のような改変を加えたものである。すなわち第4実施形態のホルダ42には、その外縁部に、シール部材40を囲むリング状リブ43が形成されている。リング状リブ43が存在することにより、ホルダ42とシール部材40を位置ずれなく接着固定することができ、ホルダ42を筒状部37に嵌合させれば、シール部材40の内周面を筒状部37の外周面に正しく密着させることができる。これにより、安定した、良好なシール性を得ることができる。
本発明の第5実施形態を図6に示す。第5実施形態は第4実施形態のホルダ42に次のような改変を加えたものである。すなわち第5実施形態のホルダ42は、前面が第4実施形態のホルダ42のようにファンカバー21の内面形状に沿う形ではなく、平面となっており、そこに、電動送風機1の軸線方向に突出するリブ44が形成されている。ホルダ42はリブ44の端面でファンカバー21に接触し、ホルダ42の外周部とファンカバー21の間には隙間が生じている。これにより、電動送風機1の軸線方向におけるホルダ42の位置はリブ44のみによって定まることになり、ホルダ42の外周部が自由にファンカバー21の内面に接触する構成に比べ、ホルダ42の位置が一定化する。これにより、シール部材40と遠心ファン22の位置関係、すなわちシール部材40に対する吸込口26の食い込み深さが一定になり、安定したシール性を得ることができる。リブ44は連続するリング状であってもよく、短いリブがリング状に配置された構成であってもよい。
本発明の第6実施形態を図7に示す。第6実施形態は第5実施形態のホルダ42に次のような改変を加えたものである。すなわち第6実施形態のホルダ42は、外周面の中で、電動機10に近い方の端に、電動機10に向かってすぼまるテーパ部45を備える。テーパ部45が存在することにより、ホルダ42の外周面とファンカバー21の内面の間に末広がりの隙間が生じ、接着剤41の塗布が容易になる。テーパ部45を包むように接着剤41を盛り上げれば、ホルダ42の固定は一層確実になる。
本発明の第7実施形態を図8に示す。第7実施形態は第6実施形態のホルダ42に次のような改変を加えたものである。すなわち第7実施形態のホルダ42は、外周面には段差46が形成されており、前面にはリブ44と同心円をなすリブ47がリブ44の外側と内側に形成されている。図8では段差46の数は2となっているが、その数は任意である。このように段差46と、加えてリブ47が存在することにより、接着剤41が接触する面積が広がり、接着剤41がホルダ42を保持する力が一層強化される。
本発明の第8実施形態を図9に示す。第8実施形態は第7実施形態のホルダ42に次のような改変を加えたものである。すなわち第8実施形態のホルダ42は、段差46の数が1に減らされ、リブ44、47の形状が消えた、簡素な形になっている。
本発明の第9実施形態を図10及び図11に示す。第9実施形態は、シート材料を打ち抜いて形成されたシール部材40を、2個の部材からなるホルダで保持したことを特徴とする。すなわちホルダ50は、ファンカバー21に面するリング状の第1ホルダ部材51と、ファン22に面するリング状の第2ホルダ部材52により構成され、第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52の間にシール部材40を挟み込む。第1ホルダ部材51の外縁部にはシール部材40を囲むリング状のリブ53が形成され、第2ホルダ部材52の外縁部には第1ホルダ部材51の外側に被さるリング状のリブ54が形成されている。
EVAは本来接着が難しい材料であるが、このように第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52でシール部材40を挟み込む構成を採用することにより、接着の難しさを克服することができる。
シール部材40を挟み込んだ状態のホルダ50はファンカバー21に接着剤で固定することができる。第1ホルダ部材51に被さっている第2ホルダ部材52がファンカバー21に接着固定されるので、第2ホルダ52部材に第1ホルダ部材51が固定されなくなったとしても、第1ホルダ部材51とシール部材40がファンカバー21から外れることはない。なお第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52を相互に固定する手段は、接着剤であってもよく、しまりばめ嵌合であってもよい。
第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52の少なくとも一方には、シール部材40に食い込む突起を形成する。ここでは、第1ホルダ部材51は突起55を、第2ホルダ部材52には突起56を、それぞれ形成している。突起55、56はいずれもリング状リブからなる。このように突起55、56をシール部材40に食い込ませることにより、シール部材40の厚さが規定値に満たなかったとしても、シール部材40が遠心ファン22に追随して回転することを防ぐことができる。突起55、56は短いリブをリング状に配置したものであってもよい。
突起55、56は第2ホルダ部材52の内径より外側、すなわちシール部材40が第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52で挟まれている箇所に設けておくのがよい。このようにしておけば、突起の食い込みでシール部材40が変形しようとするのを矯正することができ、シール性が損なわれない。
本発明の第10実施形態を図12及び図13に示す。第10実施形態は第9実施形態のホルダ50に次のような改変を加えたものである。すなわち第10実施形態のホルダ50は、第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52の間に、互いの連結を維持する弾性連結部57が形成されている。弾性連結部57は、第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52の一方に設けられた凸部と他方に設けられた凹部からなる。ここでは、第1ホルダ部材51のリブ53の端面から突出する複数の弾性フック58が凸部となり、弾性フック58を係合させるべく第2ホルダ部材52に形成されたリング状の段部59が凹部となる。
リブ53の中にシール部材40を収めた状態の第1ホルダ部材51を第2ホルダ部材52に押し付けると、弾性フック58が段部59に係合し、第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52は図12に示す連結状態になる。これにより、接着剤を用いることなく、第1ホルダ部材51と第2ホルダ部材52を確実に連結することができる。
なお突起55、56は、ここでは短いリブをリング状に配置したものが採用されている。
本発明の第11実施形態を図14に示す。第11実施形態は第10実施形態のホルダ50に次のような改変を加えたものである。すなわち第11実施形態のホルダ50では、弾性連結部57が、第1ホルダ部材51のリブ53から半径方向に向かって、すなわち外側に向かって、突出するフック60と、フック60を受け入れるべく第2ホルダ部材52のリブ54に形成された切り欠き部61により構成される。フック60と切り欠き部61の組み合わせは所定角度間隔で複数組設けられる。
第10実施形態では、弾性フック58が自身の弾性で内側にたわんで段部59に係合するものであったが、第11実施形態ではリブ54が自身の弾性で外側に開いてフック60に係合する。このため、薄く形成した弾性フック58が折れる心配がない。金型構造も第10実施形態に比べシンプル化できる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は電動送風機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0010】
1 電動送風機
10 電動機
11 モータケーシング
20 ファンケーシング
21 ファンカバー
22 遠心ファン
26 吸込口
35 吸込口
37 筒状部
41 接着剤
42 ホルダ
43 リング状リブ
44 リブ
45 テーパ部
46 段差
50 ホルダ
51 第1ホルダ部材
52 第2ホルダ部材
53、54 リング状リブ
55、56 突起
57 弾性連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機のシャフトに固定された遠心ファンと、前記遠心ファンを囲むファンケーシングを備え、前記ファンケーシングの構成要素であるファンカバーの内面に、前記遠心ファンの吸込口が接触するシール部材が取り付けられる電動送風機において、
前記シール部材をエチレン―酢酸ビニル共重合樹脂の発泡材により構成したことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
前記シール部材の発泡率が8倍から12倍であることを特徴とする請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
前記ファンカバーを金型に入れた上での発泡処理により前記シール部材が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
前記シール部材は前記ファンカバーの内面に密着する断面形状に成型され、前記ファンカバーに接着固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項5】
前記シール部材はシート材料を打ち抜いて形成され、リング状のホルダに取り付けた状態で前記ファンカバーに固定されるものであるとともに、前記ファンカバーの吸込口は前記ファンケーシングの内側に向かって突き出す形状となっており、その突き出した部分の外周面に前記シール部材が密着することを特徴とする請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項6】
前記ホルダと前記ファンカバー吸込口がしまりばめ嵌合を形成することを特徴とする請求項5に記載の電動送風機。
【請求項7】
前記ホルダの外縁部に、前記シール部材を囲むリング状リブが形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の電動送風機。
【請求項8】
前記ホルダは、当該電動送風機の軸線方向に突出するリブで前記ファンカバーに接触するものであり、前記ホルダの外周部と前記ファンカバーの間には隙間が生じていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項9】
前記ホルダの外周部は、前記ファンカバーとの間に隙間が生じ、且つ前記電動機に向かってすぼまるテーパ部を備えた形状であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項10】
前記ホルダの外周面に段差が形成されていることを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項11】
前記ホルダは、前記ファンカバーに面する第1ホルダ部材と、前記ファンに面する第2ホルダ部材により構成され、前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の間に前記シール部材が挟み込まれることを特徴とする請求項5に記載の電動送風機。
【請求項12】
前記第2ホルダ部材に、前記第1ホルダ部材の外側に被さるリング状リブが形成されていることを特徴とする請求項11に記載の電動送風機。
【請求項13】
前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の間に、互いの連結を維持する弾性連結部が形成されていることを特徴とする請求項11または12に記載の電動送風機。
【請求項14】
前記弾性連結部は、前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の一方に設られけた凸部と他方に設けられた凹部からなることを特徴とする請求項13に記載の電動送風機。
【請求項15】
前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材の少なくとも一方に、前記シール部材に食い込む突起を形成したことを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項16】
前記突起がリング状リブからなることを特徴とする請求項15に記載の電動送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−247098(P2011−247098A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118124(P2010−118124)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】