説明

電圧警報器

【課題】必要時以外の警報動作を抑制して、電圧警報器の高感度化を実現する。
【解決手段】検知電極11とアース電極12とを有し作業者の人体に装着して使用されるアンテナ部10と、電気設備の充電部1からの電界により両電極11,12間に発生する誘導電圧信号を検出し、検出した誘導電圧信号に基づいて作業者に注意喚起の警報を発する電圧警報器本体部20とを有する電圧警報器において、電圧警報器本体部20は、アンテナ部10で検出した誘導電圧信号から商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタBPFと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路DL1,DL2とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電圧警報器に係わり、特に、高電圧設備の設置作業や保守点検作業において、充電部への異常接近を作業者に警報して感電事故を未然に防止するための、人体装着型の電圧警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電盤等の電気設備の点検作業においては、作業前に死活線確認のための検電を行ってから作業を開始する。従来の死活線確認作業は、作業者が検電器又は電圧警報器を活線に接触又は近づけて、通電状態か停電状態かを確認している。しかしながら、作業者による検電忘れがあった場合や停電であるとの思い込み等があった場合、あるいは電気設備の予期しない状態変化があった場合には、感電災害を引き起こすおそれがある。
このような、検電忘れを防止するための従来の技術として、例えば、腕時計型の手首装着式充電検出器が提案されている。検出回路と警報回路とを収容した検出器本体と検知電極(検出アンテナ)とからなり、手首に装着可能に構成され、高圧機器の充電部に接近したときに、その充電部と検知電極との間に形成される静電容量、及び人体との間に形成される静電容量により、充電部側から人体へ流れる微小な静電誘導電流を検出回路で検出し、その検出信号に基づいて警報回路で警報を発するようにしたものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220151号公報(第2−3頁、図1及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手首装着式充電検出器は、検出アンテナが作業者の手の平や甲により遮られた場合には検知感度が低下する。また、充電部を検知できる方向に制約かあり、電気設備の遮蔽体の構造によっては、充電部位があったとしても電界強度から得られる空間電位が低くなって、電圧検知が困難となる場合があった。このため、検出器の感度を高く設定すれば、ノイズを検知して不必要な動作を繰り返してしまう場合があるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、電極部と検出部の感度を高感度化し、必要時以外の警報動作を抑制し、また、作業者の近傍に活線が存在する場合には、設定した電圧感知距離で作業者に警告できる電圧警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電圧警報器は、検知電極とアース電極とを有し作業者の人体に装着して使用されるアンテナ部と、電気設備の充電部への接近により充電部と検知電極との間に発生する空間浮遊静電容量、及び人体とアース電極との間に発生する対地静電容量とにより両電極間に発生する誘導電圧信号を検出し、検出した誘導電圧信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する電圧警報器本体部とを有する電圧警報器において、電圧警報器本体部は、アンテナ部で検出した誘導電圧信号から商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の電圧警報器によれば、電圧警報器本体部に、商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路とを備えたので、商用周波数近傍以外の周波数信号を遮断すると共に、静電気などのノイズを除去できるため、必要時以外の警報動作を抑制して、電圧警報器の高感度化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による電圧警報器の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電圧警報器の電圧警報器本体部を示す外観図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電圧警報器の全体を示す外観図である。
【図4】この発明の実施の形態1による電圧警報器の使用状態を示す図である。
【図5】図3の矢印V−Vから見た部分断面図である。
【図6】図5のリングスナップと電極との接合部を説明する説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2による電圧警報器を示す外観図である。
【図8】この発明の実施の形態3による電圧警報器を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1による電圧警報器を図に基づいて説明する。まず、図1により電気的構成から説明する。
電圧警報器は、アンテナ部10と電圧警報器本体部20とで構成されている。電圧警報器本体部20は、商用周波帯増幅部21,動作感度設定部22,パルス雑音除去部23,フリッカ部24,及び警報部25で構成されている。以下、各部を順に説明する。
【0010】
本実施の形態による電圧警報器は、人体に装着して使用するのを前提としている。
アンテナ部10は、電圧検知の対象である、例えば、配電盤などの高電圧設備の充電部1からの電界を検知する部分であり、可撓性を有する導電部材からなる帯状の検知電極11とアース電極12とが、間隙を空けて対向配置されている。各電極11,12は、電圧警報器本体部20との接続部となるリングスナップ10a,10bに接続されている。具体的な構造については後述する。
このアンテナ部10は、図のように円筒状に曲げられて、例えば、手首などに装着される。その状態で、外側が検知電極11、内側がアース電極12となる。検知電極11は、検知対象の充電部1との間で空間浮遊静電容量を形成し、この空間浮遊静電容量と、アース電極12−人体間の静電容量とにより、空間電位が分圧されて入力される。
【0011】
次に、電圧警報器本体部20を説明する。
商用周波帯増幅部21は、リングスナップ20a,20bと、ローパスフィルタLPFと、電圧増幅器AMPと、バンドパスフィルタBPFとを有している。
リングスナップ20a,20bは、アンテナ部10との電気的及び機械的接続部であり、アンテナ部10のリングスナップ10a,10bと着脱可能に接続できるようになっている。
【0012】
ローパスフィルタLPFは、アンテナ部10で受信した誘導電圧信号の中から商用周波数より高い周波数成分を除去し、後段の電圧増幅器AMPが飽和動作するのを防止するものである。
電圧増幅器AMPは、ローパスフィルタLPFを通過した低周波信号を、次段の動作感度設定部22が作動可能な電圧レベルまで増幅する。アンテナ部10の両電極の幅が5cm、電極間隔が3mm程度の場合であれば、増幅率は100倍程度が適当である。
バンドパスフィルタBPFは、商用周波数近傍のみを通過させ、ローパスフィルタLPFで除去できなかったノイズを除去する役目をする。これにより電子機器等が発する雑音による誤動作を防止することができる。日本で使用する場合は、中心周波数を55ヘルツに設定するのがよい。また、各フィルタの次数は2〜6次が適当である。
【0013】
次の動作感度設定部22は、電圧比較器CMP1及び電圧比較器CMP2と、第1の基準電圧設定器REF1と、第2の基準電圧設定器REF2とを有している。
電圧比較器CMP1は、第1の基準電圧設定器REF1で設定した第1の基準電圧値と前段のバンドパスフィルタBPFからの出力電圧の大きさとを比較し、後者が大きい場合は論理値H(ハイ)を出力する。同様に、電圧比較器CMP2は第2の基準電圧設定器REF2で設定した第2の基準電圧値と前段のバンドパスフィルタBPFからの出力電圧の大きさとを比較し、後者が大きい場合は論理値Hを出力する。
両基準電圧設定器REF1,REF2の設定値は、第2の基準電圧設定器REF2の値をより大きな値に設定することで、充電部に近づくにつれ、まず電圧比較器CMP1が論理値Hを出力し、さらに近づくと電圧比較器CMP2も論理値Hを出力する。
【0014】
次のパルス雑音除去部23は、オンディレイタイマを有するオンディレイ回路DL1,DL2およびテストスイッチSで構成されている。
もし、アンテナ部10が衣類の摩擦などにより生じる数千ボルトの静電気を受信した場合、パルス性の高電圧が商用周波帯増幅部21に入力され、静電気による信号が除去されず動作感度設定部22に入力されることになる。この場合、電圧比較器CMP1,CMP2ともに論理値Hをパルス出力してしまう。
【0015】
そこで、オンディレイ回路DL1,DL2により、入力論理値Hが一定時間(設定値T)を継続した場合に論理値Hを出力し、入力論理値がL(ロー)になると直ちに出力論理値がLになるようにしている。すなわち、オンディレイ回路DL1,DL2の設定値Tは、静電気により電圧比較器CMP1,CMP2が出力する論理値Hのパルス幅よりも大きな値に設定して静電気によるパルス出力を除去している。なお、設定値Tが大きすぎると検知速度が遅くなるので、30〜60ミリ秒程度に設定するのが適当である。
【0016】
テストスイッチSは、自己試験用スイッチであり、テストスイッチSを押下することによりオンディレイ回路DL1およびDL2の入力論理値をHに強制設定し、以降の各電子回路が、正常に動作することを確認することができるようになっている。
【0017】
次のフリッカ部24は、発振器OSC1および発振器OSC2と選択器SELにより構成されている。
発振器OSC1は入力論理値がHの場合、例えば、数百ヘルツの矩形波電圧を数百ミリ秒出力し、数百ミリ秒休止するという動作を繰り返す。
発振器OSC2も同様な動作をするが、作動周波数と断続時間を発振器OSC1とは異なる値に設定している。
選択器SELは、比較器CMP2の論理出力がHのとき発振器OSC2の出力を通過させ、それ以外の場合は発振器OSC1の出力を通過させる。
【0018】
最後の警報部25は、LED表示器26とブザー27とを備えている。LED表示器26は発振器OSC1又は発振器OSC2の出力信号により点滅動作する。ブザー27についても同様に出力信号により断続音が発せられる。点滅及び断続動作とすることで、警報部25の動作を作業者に気づきやすくする効果がある。
以上の各電子回路は電圧警報器本体部20に内蔵されているボタン電池28により駆動されるようになっている。
【0019】
上記のように構成された電圧警報器の動作について説明する。
作業者の人体に装着されたアンテナ部10が、電圧検知対象となる充電部1に近づいたときに、アンテナ部10の検知電極11は、商用周波数の充電部1により作られる電界により帯電する。
検知電極11を後段のローパスフィルタLPFから切り離した状態では、検知電極11の表面の平均電界強度をEとすれば、検知電極11−アース電極12間の電位差Vは、Eに両電極11,12間の距離dを乗じた値(V=E・d)となる。距離dを一定の寸法に保つことで、安定した出力を得ることができる。
【0020】
また、検知電極11とアース電極12とを2重円筒構造とすることにより、電気力線がこれらの表面に垂直に集まる性質から、指向性をなくすことができる。すなわち、どの方向から充電部1に接近してもほぼ同じ感度が得られる。
このように、アンテナ部10を、2重円筒構造とし、所定の間隔を空けて広い面積で対向配置させることにより、アンテナゲインを高くして高感度を実現した。
【0021】
アンテナ部10で検出した電圧を電圧警報器本体部20に入力し、商用周波帯増幅部21で商用周波数近傍のみを増幅し、動作感度設定部22で動作感度を設定して充電部1に対して所定の警報動作距離内に近づいたときに動作信号を出力し、パルス回路除去部23で静電気などの高電圧パルスによるノイズを除去し、フリッカ部24で警報信号に変換し、警報部25において警報信号によりLED表示器26を点滅させると共にブザー27で断続音を発生させて、作業者に充電部への接近を知らせるようになっている。
また、動作感度設定部22で複数の基準電圧値と比較することで、複数の感度を設定し、充電部1からの距離により警報部25の点滅光の点滅間隔と断続音の断続間隔を変えて、危険の度合いを段階的に知らせることができるようになっている。
【0022】
次に、電圧警報器の具体的な構造を、図2〜図6に基づいて説明する。先に、電圧警報器本体部20から説明する。図2は、電圧警報器本体部20の外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
(a)に示すように、電圧警報器本体部20は、上記で説明した商用周波帯増幅部21,動作感度設定部22,パルス雑音除去部23,フリッカ部24,警報部25,及びボタン電池28が、樹脂製の容器29に収容されており、上面には、基準電圧設定器REF1,REF2に対応した電圧設定器調整ボリューム30と、テストスイッチSに対応した押しボタン31とLED表示器26とブザー27とが配置されている。
【0023】
また、(c)に示すように、電圧警報器本体部20の下面には、リングスナップ20a,20bとボタン電池28用の電池収納蓋32とが配置されている。リングスナップ20a,20bは、アンテナ部10に設けたリングスナップ10a,10bと組み合わされ、アンテナ部10の検知電極11及びアース電極12と電気的に接続されると共に機械的にもアンテナ部10に固定される。
なお、リングスナップは、一般に知られているものを使用すればよい。凹部と凸部とが嵌合されて組み合わされるので、接続時に、検知電極11側とアース電極12側とを間違わないように、(b)に示すように、一方を凸部側、他方を凹部側としている。
【0024】
図3(a)は、アンテナ部10と電圧警報器本体部20とを組み合わせた状態を示す電圧警報器の外観図であり、図3の例では、アンテナ部10を、例えば、手首に巻いて使用するリストバンド型とした場合を示している。アンテナ部10は、後述するように、導電布製の検知電極11と、同じく導電布製のアース電極12との間に、所定の間隔を設けるために、3mm程度の絶縁スペーサを挟み込んだサンドイッチ構造になっており、表面側には電圧警報器本体部20を収納し保持するためのポケット16を設けている。また、長さ方向の端部側には面ファスナー17を設けている。
(b)は、電圧警報器本体部20を外した状態のアンテナ部10を示す図であり、電圧警報器本体部20側のリングスナップ20a,20bと接続するためのアンテナ部10側のリングスナップ10a,10bがポケット16の内側に設けられている。
【0025】
図4は、図3の電圧警報器を手首に装着した状態の使用例を示す図である。手首に巻き付けて面ファスナー17を接着することで装着できる。装着状態では、アンテナ部10が円筒状になっており、外側の検知電極11と内側のアース電極12とが後述する絶縁スペーサを介して対向配置された形となる。
【0026】
図5は、図3(a)の矢印V−V方向から見た部分断面図である。図に示すように、アンテナ部10は、表面側から、布製の表生地14、導電性を有する帯状の布からなる検知電極11、可撓性を有する帯状の絶縁スペーサ13、導電性を有する帯状の布からなるアース電極12、布製の裏生地15とからなっている。
【0027】
検知電極11とアース電極12に使用する導電性の布は、例えば、繊維に無電解メッキによって金属被膜を密着性良く複合化することにより、金属箔並みの導電性を得られるようにしたものであり、一般に知られている導電性繊維で構成された布でよい。
また、絶縁スペーサ13の材料としては、弾力性に優れ、通気性及び撥水性がよく、ぬれても乾きやすい素材を使用するのが望ましい。このような材料として、例えば、断面が段ボールの断面のように、波形状中芯材と平状表面材とのサンドイッチ構造体で空気層が形成された布状の部材を使用するとよい。多少折り曲げたり押さえつけたりしても、元の厚さに回復し安定してほぼ一定の厚さを維持できるので、両電極11,12間の距離をほぼ所定間隔に保つことができる。
アンテナ出力電圧は、一定電圧下では2重円筒のギャップ間隔に比例する。円筒の間隔を保つために、装着感が悪化しない程度の、上記のような部材を用いることで、警報器の感度を増加させることができる。
【0028】
アンテナ部10が水に濡れた場合、検知電極11−アース電極12間の漏電により感度が低下するのを防止するため、各電極11,12の表面は絶縁樹脂でコーティングを施している。
アンテナ部10のサイズは、リストバンド型とする場合、両電極11,12の幅が5cm、長さが20cm、絶縁スペーサ13の厚さが3mm程度とするのが望ましい。このような大きさにすれば、アンテナ出力を大きく引き出すことができることを実証試験により検証した。
【0029】
図6は、図5において、リングスナップ10a,10bと両電極11,12との接続の状態を説明するための説明図であり、アンテナ部10の各部材を分解して分かりやすく示している。
検知電極11側のリングスナップ10aは、表生地14を貫通して検知電極11と接続されている。アース電極12側のリングスナップ10bは、表生地14,アンテナ電極11,絶縁スペーサ13を貫通しアース電極12と接続されている。但し、検知電極11とは絶縁を保つために、検知電極11に切欠部11aを設けている。また、検知電極11側のリングスナップ10aと対向するアース電極12の面にも、短絡防止のために切欠部12aを設けている。
【0030】
以上のように構成した電圧警報器の使用方法を説明する。
作業者は、電気設備の点検等の作業に当たって、図4に示すように、電圧警報器を手首に巻き付けて、警報部が見えるように装着する。電圧設定器調整ボリューム30は、作業する電気設備の環境に合わせてあらかじめ設定しておく。作業者は、必要に応じ、作業前に押しボタン31を押下することによりテストスイッチSを作動させ、電圧警報器の動作チェックを事前に容易に行うことができる。
【0031】
作業者が電気設備の充電部1に所定の距離以内に近づいた場合は、先ず、フリッカ部の発振器OSC1が作動し、LED表示器26が点滅すると共にブザー27が断続音を発することで、作業者が危険を知ることができる。
更に作業者が充電部に近づいた場合は、発振器OSC2が作動するが、OSC1とは点滅及び断続周期を変えているので、作業者は危険の度合いが大きくなったことを知ることができる。なお、ブザー27は、音量(又は音程)を変えるようにしておいてもよい。
【0032】
本実施の形態のようにアンテナ部10をリストバンド型にしておくことにより、容易に必要時にのみ装着することができる。また、ボタン電池28の交換の際には、アンテナ部10から電圧警報器本体部20を取り外し、下面側の電池収納蓋32を開くことにより交換することができる。
【0033】
なお、上記の説明では、アンテナ部10を、リストバンド型として使用する場合について説明したが、アンテナ部の長さを変えることにより、腕章型にして腕に装着してもよく、また、鉢巻き型にして頭に巻いて使用するようにしてもよい。
また、充電部1からの距離により警報部25の動作を複数段階(本実施の形態では2段階)に変化させる場合について説明したが、REF2,CMP2,DL2,OSC2,及びSELの部分を省略し、OSC1の出力により直接警報部25を作動させるようにしてもよい。
【0034】
以上のように、実施の形態1による電圧警報器によれば、検知電極とアース電極とを有し作業者の人体に装着して使用されるアンテナ部と、電気設備等の充電部からの電界により両電極間に発生する誘導電圧信号を検出し、検出した誘導電圧信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する電圧警報器本体部とを有する電圧警報器において、電圧警報器本体部は、アンテナ部で検出した誘導電圧信号から商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路とを備えたので、商用周波数近傍以外の周波数信号を遮断すると共に、静電気などノイズを除去できるので、高いアンプゲインを実現でき、必要時以外の警報動作を抑制して、電圧警報器の高感度化を実現することができる。
【0035】
また、アンテナ部の検知電極とアース電極とは、導電性を有する帯状の布からなり、可撓性を有する絶縁スペーサを介して対向配置され、円筒状に曲げられて人体に装着可能に構成されており、電圧警報器本体部は、樹脂製の容器に収容され、アンテナ部の表面に取り付けられ、両電極と着脱可能に接続されているので、高いアンテナゲインが得られてアンテナを高感度化でき、また、必要なときに簡単に人体に装着して使用できる電圧検出器を得ることができる。
【0036】
また、電圧警報器本体部は、アンテナ部の表面に設けたポケットに収納されているので、電圧警報器本体部が、作業時に突起物等に引っ掛かる等で脱落するのを防止できる。
【0037】
また、アンテナ部は、作業者の人体の一部に巻き付けて装着可能なバンド形に形成したので、作業時に、手首,腕,頭部等に容易に装着して使用することができる。
【0038】
更にまた、警報は点滅光と断続音とし、充電部とアンテナ部との距離によって点滅周期及び断続周期が変化するように構成したので、充電部への接近による危険の度合いを段階的に作業者に知らせることができる。
【0039】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2による電圧警報器を示す外観図である。本実施の形態では、電圧警報器のアンテナ部を、作業者が着用する手袋の手首部に一体に形成したものであり、電圧警報器自体は実施の形態1と同等なので、同等部分は同一符号で示して説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0040】
図において、アンテナ部10は、手袋本体33の手首部に縫製されて一体に形成されている。電圧警報器本体部20は、実施の形態1と同様に、アンテナ部10の表面に設けたポケット16に収納されている。
電気設備の点検作業においては、作業者は手袋を着用するのが一般的である。特に、充電部が露出しているような高電圧設備の作業従事者は、必ず手袋を着用すると言ってよい。従って、手袋と一体に形成しておけば、作業時に電圧警報器の装着を忘れることがなくなる。電圧警報器の動作は、実施の形態1と同等である。
なお、電圧警報器本体部20を取り外せば、ポケット部は図3(b)に示すような状態になるので、電圧警報器が必要ないときは、取り外して通常の手袋として使用できる。
【0041】
以上のように、実施の形態2の電圧警報器によれば、アンテナ部を、作業者が着用する手袋の手首部に一体に形成したので、高電充電部を有する電気設備に対する作業時に電圧警報器の装着忘れを防止でき、安全性を向上させることができる。
【0042】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3による電圧警報器を示す外観図である。本実施の形態では、電圧警報器のアンテナ部を、作業者が着用する作業服の袖口に一体に形成したものであり、電圧警報器自体は実施の形態1と同等なので、同等部分は同一符号で示して説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0043】
図において、アンテナ部10は、作業服34の袖口に縫製されて一体に形成されている。電圧警報器本体部20は、実施の形態1と同様に、アンテナ部10の表面に設けたポケット16に収納されている。
アンテナ部10の部材は、実施の形態1の図5で説明したように、導電性布からなる両電極11,12と布製の絶縁スペーサ13とが表生地14と裏生地15とで挟まれて構成されているので、これを作業服34の袖口としても、質感(装着感)及び外観共に特に違和感は無い。また、洗濯にも十分に耐えられることを検証した。
なお、電圧警報器本体部20を取り外せば、通常の作業服として使用できる。
【0044】
以上のように、実施の形態3による電圧警報器によれば、アンテナ部は、作業者が着用する作業服の袖口に一体に形成したので、高電充電部を有する電気設備に対する作業時に、特に電圧警報器の装着を意識すること無く、電圧警報器の装着忘れを防止でき、安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 充電部 10 アンテナ部
10a,10b リングスナップ 11 検知電極
11a,12a 切欠部 12 アース電極
13 絶縁スペーサ 14 表生地
15 裏生地 16 ポケット
17 面ファスナー
20 電圧警報器本体部 20a,20b リングスナップ
21 商用周波帯増幅部 22 動作感度設定部
23 パルス雑音除去部 24 フリッカ部
25 警報部 26 LED表示器
27 ブザー 28 ボタン電池
29 容器 30 電圧設定器調整ボリューム
31 押しボタン 32 電池収納蓋
33 手袋本体 34 作業服
LPF ローパスフィルタ AMP 電圧増幅器
BPF バンドパスフィルタ CMP1,CMP2 電圧比較器
REF1 第1の基準電圧設定器 REF2 第2の基準電圧設定器
DL1,DL2 オンディレイ回路 S テストスイッチ
OSC1,OSC2 発振器 SEL 選択器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知電極とアース電極とを有し作業者の人体に装着して使用されるアンテナ部と、
電気設備の充電部への接近により前記充電部と前記検知電極との間に発生する空間浮遊静電容量、及び前記人体と前記アース電極との間に発生する対地静電容量とにより前記両電極間に発生する誘導電圧信号を検出し、検出した前記誘導電圧信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する電圧警報器本体部とを有する電圧警報器において、
前記電圧警報器本体部は、前記アンテナ部で検出した前記誘導電圧信号から商用周波数近傍の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタと、高電圧パルスを除去するオンディレイ回路とを備えたことを特徴とする電圧警報器。
【請求項2】
請求項1記載の電圧警報装器において、
前記アンテナ部の前記検知電極と前記アース電極とは、導電性を有する帯状の布からなり、可撓性を有する絶縁スペーサを介して対向配置され、円筒状に曲げられて前記人体に装着可能に構成されており、
前記電圧警報器本体部は、樹脂製の容器に収容され、前記アンテナ部の表面に取り付けられ、前記両電極と着脱可能に接続されていることを特徴とする電圧警報器。
【請求項3】
請求項2記載の電圧警報装器において、
前記電圧警報器本体部は、前記アンテナ部の表面に設けたポケットに収納されていることを特徴とする電圧警報器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の電圧警報器において、
前記アンテナ部は、前記作業者の前記人体の一部に巻き付けて装着可能なバンド形に形成されていることを特徴とする電圧警報器。
【請求項5】
請求項2又は請求項3記載の電圧警報器において、
前記アンテナ部は、前記作業者が着用する手袋の手首部に一体に形成されていることを特徴とする電圧警報器。
【請求項6】
請求項2又は請求項3記載の電圧警報器において、
前記アンテナ部は、前記作業者が着用する作業服の袖口に一体に形成されていることを特徴とする電圧警報器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電圧警報器において、
前記警報は点滅光と断続音とし、前記充電部と前記アンテナ部との距離によって点滅周期及び断続周期が変化するように構成されていることを特徴とする電圧警報器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−203961(P2010−203961A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50889(P2009−50889)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(507284813)株式会社協立技術工業 (5)
【Fターム(参考)】