説明

電子カセッテの輸送情報取得方法およびシステム

【課題】電子カセッテが輸送中に万一故障したときでも適切な対処を可能とし、故障したときの原因究明や故障の責任の所在の明確化に役立てる。
【解決手段】電子カセッテの輸送情報取得部40は、電子カセッテが梱包箱から取り出されて客先に設置されたことを検知する設置検知回路51、加速度センサ59等のセンサ群52、センサ群52の測定結果である輸送情報63を記憶するEEPROM55を有する。撮影制御装置の判定回路は、輸送情報63を元に輸送中の電子カセッテの故障有無を判定する。故障したと判定された場合、撮影制御装置のディスプレイにその旨を示すメッセージが添えられた判定結果表示ウィンドウを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カセッテの輸送情報を取得する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を直方体形状の筐体に内蔵した電子カセッテ(可搬型のX線画像検出装置)が実用化されている。電子カセッテは、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台や専用の撮影台に取り付けて使用される他、据え置き型では撮影困難な部位を撮影するためにベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0003】
一般に電気部品は周囲環境等の外的要因による故障のリスクが伴う。多くの電気部品が搭載された電子カセッテも例外ではなく、被検体や放射線技師が誤って落とす等して衝撃が与えられたり、高温、多湿な環境下に置かれたりすると故障する場合がある。故障が生じた場合は被検体や放射線技師に感電等の危険が及ぶおそれがある。また、故障が生じているにも関わらず撮影を行ってしまうことを避けるため、電子カセッテに故障が生じていないかを撮影前に一々確認する必要があった。従来、この問題を解決する方法が種々提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1には、電子カセッテの使用中の搬送時の落下を加速度センサで検知し、異常加速状態が検知された場合、各部への電力供給を禁止するとともにその旨を電力供給禁止モード表示部に表示することが記載されている。特許文献2は、FPDに加わる衝撃を検知してFPDの動作可否を自己診断し、自己診断の結果動作不能と判定した場合はX線の照射を禁止する、または動作不能であることを表示している。特許文献3は、電子カセッテに加わる衝撃、および電子カセッテの設置環境温度を検知し、検知結果が閾値を超えていたら警告を表示している。そして、X線を照射せずにFPDから暗画像(濃淡画像)を出力させ、適正な画像と比較することで故障診断をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−003755号公報
【特許文献2】特開2005−177379号公報
【特許文献3】特開2006−297096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子カセッテは、製造工場から客先に届けられるまでの輸送中にも様々な環境変化に遭遇するため、輸送中に故障することも有り得る。輸送中に故障が生じた場合は、故障の責任の所在を明確にするため輸送中に生じた故障であることを証明する情報が必要である。しかしながら、特許文献1〜3では、電子カセッテの使用中に起こる故障への対処は記載されているが、輸送中に起こる故障への対処は一切記載されていない。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、輸送中の電子カセッテに関する情報を得て、万一故障したときの適切な対処を可能とし、故障したときの原因究明や故障の責任の所在の明確化に役立てることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電子カセッテの輸送情報取得システムは、輸送中の電子カセッテの状態を検知する状態検知手段と、前記状態検知手段の検知結果を記憶する記憶手段と、電子カセッテが客先に設置されたことを検知する設置検知手段と、前記設置検知手段で設置が検知される以前の、前記記憶手段に記憶された前記状態検知手段の検知結果を元に電子カセッテの故障有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記状態検知手段は、電子カセッテに輸送時に加わる衝撃による加速度を測定する加速度センサ、輸送時の電子カセッテの周囲の温度を測定する温度センサ、湿度を測定する湿度センサ、気圧を測定する気圧センサ、または輸送時に電子カセッテ表面に掛かる接触圧力を測定する圧力センサのうちの少なくともいずれか一つである。
【0010】
前記設置検知手段は、輸送のための梱包用品が開封されて梱包用品から電子カセッテが取り出されたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知する。あるいは、電子カセッテまたは電子カセッテの動作を制御する外部制御装置の電源が最初に投入されたとき、または電子カセッテと外部制御装置との通信が最初に確立したときに電子カセッテが客先に設置されたと検知する。
【0011】
もしくは、電子カセッテの動作確認と校正作業を開始する指示を入力するためのGUIを前記表示手段に表示し、前記設置検知手段は、GUIを通じて指示がなされたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知してもよい。
【0012】
前記設置検知手段はGPS機能を有し、予め登録された客先の経緯度情報とGPS衛星からの経緯度情報とが一致したときに電子カセッテが客先に設置されたと検知する。
【0013】
電子カセッテと外部制御装置が、使用状態よりも非使用状態のサイズが小さくなるよう収納可能に一体化されていた場合、前記設置検知手段は、最初に非使用状態から使用状態にしたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知する。
【0014】
前記状態検知手段の検知結果に関連付けて時刻情報を前記記憶手段に記憶することが好ましい。また、前記判定手段および前記表示手段は外部制御装置に設けられており、前記記憶手段に記憶された前記状態検知手段の検知結果を外部制御装置に送信する送信手段を備えることが好ましい。
【0015】
電子カセッテまたは外部制御装置の電源とは独立して各部に電力を供給する専用電源を備えることが好ましい。
【0016】
本発明の電子カセッテの輸送情報取得方法は、輸送中の電子カセッテの状態を状態検知手段で検知する状態検知ステップと、状態検知手段の検知結果を記憶手段に記憶する記憶ステップと、電子カセッテが客先に設置されたことを設置検知手段で検知する設置検知ステップと、設置検知手段で設置が検知される以前の、記憶手段に記憶された状態検知手段の検知結果を元に電子カセッテの故障有無を判定手段で判定する判定ステップと、判定手段の判定結果を表示手段に表示する表示ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、輸送中の電子カセッテの状態を検知してこれを記憶し、電子カセッテが客先に設置されたことを検知して、それ以前の輸送中の電子カセッテの状態の検知結果を元に電子カセッテの故障有無を判定してその結果を表示するので、万一故障したときには適切な対処を講じることができ、故障したときの原因究明や故障の責任の所在の明確化に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電子カセッテおよび付属品の梱包態様を示す図である。
【図2】電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図3】電子カセッテおよび撮影制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】輸送情報取得部の構成を示すブロック図である。
【図5】撮影制御装置のCPUに構築される回路構成を示すブロック図である。
【図6】電子カセッテが輸送中に故障したか否かの判定結果の表示例であり、(A)は故障していないと判定された場合、(B)は故障したと判定された場合をそれぞれ示す。
【図7】出荷、輸送、客先設置に至るまでの輸送情報取得部の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】撮影制御装置で電子カセッテが輸送中に故障したか否かを判定してその結果を表示するまでの手順を示すフローチャートである。
【図9】動作確認および校正作業を開始する旨を入力するためのウィンドウを示す図である。
【図10】電子カセッテと撮影制御装置を一体化した撮影ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、電子カセッテ2は、バッテリ10や複合ケーブル11等の付属品とともに梱包トレイ12に収納される。梱包トレイ12はシートモールド成形やパルプモールド成形等により製造され、輸送時の衝撃を吸収する緩衝材として機能する。電子カセッテ2および各種付属品が収納された梱包トレイ12の上部には、段ボール製のパーテーション13を介して製品仕様書や取扱説明書等の冊子14が載置される。梱包トレイ12、パーテーション13、および冊子14は段ボール製の梱包箱15に一体的に収納され、ガムテープ等で密封されて製造工場から客先に出荷される。
【0020】
図2において、電子カセッテ2は略矩形の形状を有し、通常はケーブルレスで使用される。電子カセッテ2はFPD20を内蔵している。FPD20は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)とX線検出素子からなる複数の画素が2次元に配列されたマトリクス基板を有する。FPD20は、TFTがオフのときに入射したX線の量に応じた電荷をX線検出素子で蓄積する。そして、TFTをオンしてX線検出素子に蓄積した電荷を外部に読み出す。読み出した電荷を信号処理部37(図3参照)の積分アンプで電圧信号に変換し、変換した電圧信号を信号処理部37のA/D変換器でA/D変換することで、デジタルな画像データが生成される。
【0021】
電子カセッテ2には、FPD20とともにバッテリ10、およびアンテナ21が内蔵される。バッテリ10は、電子カセッテ2の各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ10は、薄型の電子カセッテ2内に収まるよう比較的小型のものが使用される。バッテリ10は、電子カセッテ2の一側面に設けられた蓋22を開けて外部に取り出すことができ、充電することが可能である。アンテナ21は、無線通信のための電波を撮影制御装置65(図3参照)との間で送受信する。
【0022】
蓋22が設けられた側面に直交する電子カセッテ2の一側面には、電源スイッチ23、およびインジケータ24が配されている。インジケータ24は例えば多色のLEDからなり、電子カセッテ2の電源のオン/オフ、バッテリ10の残量、無線通信状況等を表示する。
【0023】
蓋22が設けられた側面に対向する電子カセッテ2の一側面には、ソケット25が配されている。ソケット25は撮影制御装置65と有線接続するために設けられており、ソケット25には電源受給と信号通信共用の複合ケーブル11のコネクタ26が差し込まれる。複合ケーブル11は、バッテリ10の残量不足等で電子カセッテ2と撮影制御装置65との無線通信が不可能になった場合に使用される。複合ケーブル11を使用した場合、撮影制御装置65との有線通信が可能になるとともに撮影制御装置65から電子カセッテ2に給電することが可能となる。また、複合ケーブル11で給電される電力でバッテリ10を充電しながら撮影を続行することも可能である。梱包箱15に収納されて輸送されているときには、ソケット25には保護カバー27が被せられる。
【0024】
図3において、カセッテ制御部35は、電子カセッテ2の各部の動作を統括的に制御する。カセッテ制御部35は、ドライバ36を介してFPD20の動作を制御し、撮影制御装置65から指定された動作タイミングにてFPD20を動作させる。また、カセッテ制御部35は、積分アンプやA/D変換器を有する信号処理部37から画像データを受け取る。
【0025】
通信制御部38には、上述のアンテナ21およびソケット25が接続されている。通信制御部38は、アンテナ21またはソケット25とカセッテ制御部35間の画像データを含む各種情報、信号の送受信を媒介する。なお、ソケット25を使用して撮影制御装置65と複合ケーブル11で接続した場合を点線の矢印で示す。
【0026】
電力供給部39は、バッテリ10からの電力、またはソケット25を介した撮影制御装置65からの電力を、カセッテ制御部35を介して電子カセッテ2の各部に供給する。
【0027】
輸送情報取得部40は、電子カセッテ2等が梱包箱15に収納されて製造工場から客先に届き、電子カセッテ2を客先に設置するまでの輸送情報を取得する。図4において、輸送情報取得部40は、専用電源50、設置検知回路51、センサ群52、時計回路53、書込/読出制御回路54、およびEEPROM55を有する。輸送情報取得部40は、専用電源50によってバッテリ10等に依存せずに各回路やセンサ等への電力供給が可能である。
【0028】
設置検知回路51は、梱包箱15が客先で開封されて電子カセッテ2が梱包箱15から取り出されたことを検知する。設置検知回路51はソケット25の二つの検知用端子56と接続している。この二端子56には複合ケーブル11のコネクタ26の端子は接続されず、ソケット25に保護カバー27が被せられたときに保護カバー27の二端子57が接続される。保護カバー27の二端子57には銅線58が繋がれており、ソケット25に保護カバー27が被せられたときに設置検知回路51との間で閉回路を構成する。
【0029】
検知用端子56間には専用電源50から電圧が印加される。設置検知回路51は閉回路に流れる電流を測定し、電流がある所定値のときはソケット25に保護カバー27が被せられている、つまり電子カセッテ2が梱包箱15から取り出されていないと判断する。一方、電流が0になったときはソケット25から保護カバー27が取り外された、つまり電子カセッテ2が梱包箱15から取り出され、客先に設置されたと判断し、その旨を示す設置検知信号を書込/読出制御回路54に出力する。
【0030】
センサ群52は、加速度センサ59、温度センサ60、湿度センサ61、および気圧センサ62からなる。加速度センサ59は、電子カセッテ2に輸送時に加わる衝撃による加速度を測定する。温度センサ60、湿度センサ61、および気圧センサ62は、輸送時の電子カセッテ2の周囲の温度、湿度、および気圧を測定する。センサ群52は、時計回路53によりスケジューリングされる一定時間毎(例えば5分毎)に専用電源50からの電力を受けて動作し、加速度、温度、湿度、および気圧の各測定結果を書込/読出制御回路54に出力する。センサ群52は、設置検知回路51から設置検知信号が出力されたら測定を止める。なお、センサ群52を一定時間毎に動作させるのではなく、センサ群52は常に動作させておき、ある一定値以上の測定結果が出力されたら書込/読出制御回路54で時刻情報とともにEEPROM55に書き込んでもよい。
【0031】
時計回路53は年月日を含む現在時刻を計時し、センサ群52の各測定結果の出力、および設置検知信号とともに時刻情報を書込/読出制御回路54に出力する。
【0032】
書込/読出制御回路54は、EEPROM55への輸送情報63の書き込み、およびEEPROM55からの輸送情報63の読み出しを制御する。書込/読出制御回路54には、専用電源50の電力消費量を少なくするために低消費電力型のマイコンを採用するとよい。書込/読出制御回路54は、センサ群52から出力される加速度、温度、湿度、および気圧の各測定結果と時計回路53から出力される測定時刻情報を関連付けて輸送情報63としてEEPROM55に記憶させる。また、書込/読出制御回路54は、設置検知回路51から出力される設置検知信号と時計回路53から出力される検知時刻情報を関連付けて輸送情報63としてEEPROM55に記憶させる。なお、EEPROM55には輸送情報63の他に電子カセッテ2の製品IDや型番といった基本的な情報も出荷時に予め記憶される。
【0033】
EEPROM55に記憶された輸送情報63は、客先への設置後、電子カセッテ2と撮影制御装置65との通信を最初に確立した際に書込/読出制御回路54から読み出され、通信制御部38を介して撮影制御装置65に送信される。
【0034】
図3に戻って、撮影制御装置65は、X線を発生するX線源(図示せず)と電子カセッテ2の撮影動作を制御する。撮影制御装置65は、CPU70、メモリ71、ストレージデバイス72、通信制御部73、ディスプレイ74、およびキーボードやマウス、マイクロホン等の入力デバイス75を備えている。これらはデータバス76を介して相互接続されている。
【0035】
メモリ71は、CPU70が処理を実行するためのワークメモリである。ストレージデバイス72は、例えばハードディスクドライブである。ストレージデバイス72には、OSや各種アプリケーションプログラムが格納される。CPU70は、ストレージデバイス72に格納されたプログラムをメモリ71へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、撮影制御装置65の各部を制御する。また、CPU70は、入力デバイス75からの操作入力信号に応じて、撮影制御装置65の各部を動作させる。
【0036】
撮影制御装置65には電子カセッテ2と同様にアンテナ77および複合ケーブル11が繋げられるソケット78が設けられており、これらは電子カセッテ2の通信制御部38と同様の機能を有する通信制御部73に接続されている。ディスプレイ74は、撮影条件(X線源の管電圧、管電流、曝射時間等)の設定ウィンドウや各種報知ウィンドウを表示する。入力デバイス75は、撮影指示の入力や撮影条件の設定を行う際に操作される。
【0037】
撮影制御装置65は、入力デバイス75から入力された撮影条件や撮影指示に基づいて、X線源および電子カセッテ2にそれぞれの動作タイミングが同期するように動作司令を与える。具体的には、電子カセッテ2に対して撮影条件を送信して、FPD20の信号処理の条件(画素から読み出した電圧信号の増幅率等)を設定させるとともに、FPD20のリセット、蓄積、読み出し動作を間接的に制御し、また、電子カセッテ2からの画像データを受信する。撮影制御装置65は、受信した画像データに対してオフセット補正やゲイン補正等の各種画像処理を施す。画像処理済みのX線画像はディスプレイ74に表示される他、そのデータがストレージデバイス72、あるいは撮影制御装置65にネットワーク接続された画像蓄積サーバ等に格納される。
【0038】
撮影制御装置65は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、放射線技師により手動入力される。放射線技師は、検査オーダの内容をディスプレイで確認し、設定ウィンドウを通じてその内容に応じた撮影条件を入力する。
【0039】
図5に示すように、撮影制御装置65のCPU70は、アプリケーションプログラムを起動すると、比較回路85および判定回路86として機能する。比較回路85は、電子カセッテ2と撮影制御装置65との通信が最初に確立した際に電子カセッテ2から送られる輸送情報63の加速度、温度、湿度、および気圧の各測定結果と、予め設定された閾値Drefとを比較する。閾値Drefは、例えば加速度であればそれ以上の衝撃が加わるとFPD20の画素が破壊される値が設定され、温度であれば下限と上限の二通りの値が設定される。比較回路85は、比較結果を判定回路86に出力する。
【0040】
判定回路86は、比較回路85からの比較結果に基づき、電子カセッテ2が輸送中に故障したか否かを判定する。具体的には、閾値Drefを超える衝撃が規定回数(例えば1〜数回)以上加わっていた場合、閾値Drefを超える温度、湿度、または気圧が規定期間(例えば1時間)以上継続した場合に電子カセッテ2が輸送中に故障したと判定する。それ以外の場合は故障していないと判定する。
【0041】
撮影制御装置65のディスプレイ74は、判定回路86の判定結果を表示する。判定回路86で電子カセッテ2が輸送中に故障していないと判定された場合、ディスプレイ74には図6(A)に示す判定結果表示ウィンドウ90aがポップアップ表示される。判定結果表示ウィンドウ90aには、「輸送状態に異常はありません。」というメッセージが表示される。判定結果表示ウィンドウ90aはOKボタン91をポインタ92で選択することで消去される。
【0042】
一方、判定回路86で電子カセッテ2が輸送中に故障したと判定された場合は、(B)に示す判定結果表示ウィンドウ90bがポップアップ表示される。判定結果表示ウィンドウ90bには、「輸送中に異常が発生した可能性があります。詳細を確認して下さい。」というメッセージとともに、詳細表示ボタン93が表示される。詳細表示ボタン93をポインタ92で選択すると、判定回路86で電子カセッテ2が輸送中に故障したと判定した根拠となる情報が表示される。この情報は、例えば加速度が規定回数以上閾値Drefを超えた場合はそのときの加速度の値と時刻情報、およびFPD20の欠陥画素が規定以上等の予想される故障内容の一覧である。
【0043】
以下、上記構成による作用について図7および図8のフローチャートを参照して説明する。まず、図7のS(ステップ)10において、電子カセッテ2は、製造工場で必要な品質検査が行われた後、付属品や冊子14等とともに梱包箱15に収容され、客先に向けて出荷される。
【0044】
梱包箱15は陸送、空輸等で客先に輸送される(S11)。輸送中は輸送情報取得部40のセンサ群52によって加速度等が一定時間毎に測定される。そして、書込/読出制御回路54によって、加速度等の測定結果がその都度時計回路53からの時刻情報とともにEEPROM55に輸送情報63として記憶される。
【0045】
梱包箱15が客先に届き、客先に出向したメーカーのサービスマンにより梱包箱15が開封されて電子カセッテ2が梱包トレイ12から取り出され、コネクタ26に被せられた保護カバー27が取り外される。保護カバー27が取り外されたことを設置検知回路51で検知し(S12でYES)、設置検知回路51から設置検知信号を出力する。書込/読出制御回路54によりその旨がEEPROM55の輸送情報63に記憶される(S13)。
【0046】
メーカーのサービスマンは、電子カセッテ2の動作確認と校正作業を行うため、電子カセッテ2と撮影制御装置65の電源を投入して、アンテナ21,77による無線、または複合ケーブル11による有線のいずれかでこれらの間の通信を確立させる(S14でYES)。書込/読出制御回路54は、撮影制御装置65との通信が確立されたことを受けて、輸送情報63をEEPROM55から読み出し、これを通信制御部38に出力する。通信制御部38は、書込/読出制御回路54から受けた輸送情報63を撮影制御装置65に送信する(S15)。
【0047】
図8において、撮影制御装置65では、電子カセッテ2からの輸送情報63が通信制御部73を介して受信される(S20)。そして、輸送情報63の加速度等の測定結果と閾値Drefとが比較回路85で比較され、この比較結果に基づき判定回路86で電子カセッテ2が輸送中に故障したか否かが判定される(S21)。輸送中に故障していないと判定された場合(S22でNO)は、その旨を示すメッセージが添えられた判定結果表示ウィンドウ90aがディスプレイ74に表示される(S23)。一方、輸送中に故障したと判定された場合は、その旨を示すメッセージが添えられ詳細表示ボタン93が設けられた判定結果表示ウィンドウ90bが表示される(S24)。
【0048】
判定結果表示ウィンドウ90aが表示された場合、メーカーのサービスマンは、OKボタン91を選択して判定結果表示ウィンドウ90aを消去し、電子カセッテ2の動作確認や校正作業に移行する。一方、判定結果表示ウィンドウ90bが表示された場合は、詳細表示ボタン93を選択して故障の原因と内容を確認する。そして、客先に状況を説明して理解を求めたり、製造工場に連絡を取って大至急新品を出荷するよう依頼したりといった適切な対応をとる。
【0049】
以上説明したように、本発明は、電子カセッテ2の輸送情報63を取得してこれをEEPROM55に記憶し、輸送情報63に基づいて電子カセッテ2の輸送中の故障有無を判定回路86で判定してその結果をディスプレイ74に表示するので、輸送中の電子カセッテ2が故障したか否かを即座に知ることができる。また、輸送情報63を故障に至った原因の究明に役立てることができる。時刻情報も併せて記憶すれば、より原因の究明に役立つ。
【0050】
加速度センサ59、温度センサ60等の複数のセンサで加速度や温度等の各種パラメータを測定するので、電子カセッテ2の故障の原因となる事象(強い衝撃、低温、高温、高湿度、高気圧)を幅広くカバーすることができる。なお、上記実施形態で例示した各センサに加えて、あるいは代えて、梱包トレイ12等との接触により電子カセッテ2表面に掛かる接触圧力を測定する圧力センサを採用してもよい。
【0051】
設置検知回路51で梱包箱15が開封されて電子カセッテ2が取り出されたことを検知するので、設置検知前の故障は輸送業者、設置検知後の故障はメーカーのサービスマンまたは客の責任と区別が可能であり、故障の責任の所在を明確にすることができる。
【0052】
輸送情報63を撮影制御装置65に送信し、撮影制御装置65の判定回路86で電子カセッテ2の故障有無を判定してディスプレイ74に判定結果を表示するので、電子カセッテ2に比較回路85や判定回路86、ディスプレイ74に相当する構成がいらず、シンプルな構成とすることができる。
【0053】
なお、撮影制御装置65ではなく、撮影制御装置65とネットワーク接続されるメーカーのサービスセンタのサーバといった客先から遠隔地にある他の外部制御装置に比較回路85や判定回路86、ディスプレイ74に相当する構成を設けてもよい。サービスセンタのサーバと製造工場の製品受注用端末とをネットワーク接続し、電子カセッテ2が輸送中に故障したと判定された場合、サービスセンタのサーバから自動的に製造工場の受注用端末に新品の発注を行うことも可能である。
【0054】
開封時の保護カバー27の取り外し忘れを防止するため、保護カバー27の近辺に「設置時にこのカバーを取り外して下さい。」といった注意書きをしてもよい。また、保護カバー27と注意書きのサイズが小さく見落とされる懸念があるため、電子カセッテ2のX線の入射面を保護シートで覆い、この保護シートと保護カバー27を一体形成して、さらに上記のような注意書きを保護シートの全面に大きく印刷してもよい。
【0055】
設置検知の仕方は、上記実施形態の銅線58を用いた電気的な検知の他に、機械的、光学的に検知する方法を採用してもよい。機械的に検知する方法としては、梱包箱15の蓋を開いたときに蓋の移動に伴って引っ張られる紐を使用し、紐に加わる張力を測定することで設置を検知する。または電子カセッテ2に押圧スイッチを設け、電子カセッテ2を梱包トレイ12にセットしたときに押圧スイッチが梱包トレイ12の突起で押され、梱包箱15を開封して電子カセッテ2を梱包トレイ12から取り出したときに突起による押圧が解除されるようにし、押圧解除で設置を検知する。光学的に検知する方法としては、電子カセッテ2に光センサを設けて、電子カセッテ2を梱包箱15から取り出したときに光センサに当たる外光で設置を検知する。
【0056】
あるいは、設置検知手段としてGPS装置を利用してもよい。この場合、GPS装置に客先の経緯度情報を予め登録しておき、GPS衛星からの経緯度情報と照合して一致したら客先に設置されたと検知する。
【0057】
電子カセッテ2が客先に設置されたと判断する基準としては、梱包箱15を開封して電子カセッテ2を梱包箱15または梱包トレイ12から取り出したときに限らない。電子カセッテ2に最初に電源を投入する際でもよいし、撮影制御装置65との通信を最初に確立した際でもよい。
【0058】
また、撮影制御装置65との通信を確立して電子カセッテ2の動作確認と校正作業を行う直前を電子カセッテ2が客先に設置されたときと判断してもよい。この場合、例えば図9に示すように、動作確認と校正作業を開始する旨を入力するための作業開始確認ウィンドウ100をディスプレイ74に表示する。そして、「はい」のボタン101が選択されたときに電子カセッテ2が客先に設置された旨を輸送情報63に記憶するとともに、輸送情報63を撮影制御装置65に送信して以降の比較、判定、表示を行う。
【0059】
撮影制御装置としては、市販のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、ノートパソコンやタッチパネルを兼ねた液晶画面を有する携帯型情報端末(PDA)を用いてもよい。撮影制御装置としてPDAを用いる場合は、電子カセッテと同梱包で出荷してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、電子カセッテ2と撮影制御装置65を別体としているが、図10に示すようにこれらを一体としてもよい。図10において、撮影ユニット105は、電子カセッテ106と撮影制御装置107とをヒンジ108で折り畳み可能に構成したものである。撮影制御装置107には、ディスプレイ74に相当する表示部109と入力デバイス75に相当する操作部110が配されている。
【0061】
輸送時または非撮影時(非使用状態)は点線で示すように電子カセッテ106と撮影制御装置107を折り畳み、撮影時(使用状態)は実線で示すように電子カセッテ106と撮影制御装置107を180°見開いて使用する。あるいは電子カセッテの筐体内に撮影制御装置をレール等で引き出し可能に収納する構成であってもよい。
【0062】
この場合、電子カセッテ106と撮影制御装置107を最初に見開いたこと、あるいは電子カセッテの筐体内から撮影制御装置を最初に引き出したことを、前述のように電気的、機械的、あるいは光学的に検知して、電子カセッテが客先に設置されたときと判断してもよい。
【0063】
撮影制御装置としてPDAを用い、電子カセッテと同梱包で出荷する場合、あるいは撮影ユニット105のように電子カセッテと撮影制御装置を一体化した場合は、撮影制御装置側に輸送情報取得部を設けてもよい。また、電子カセッテ、撮影制御装置とは別に輸送情報取得部の機能を有する装置を梱包箱内に収納して輸送してもよい。
【0064】
なお、言うまでもないが、輸送情報取得部を構成する各部は、判定回路で電子カセッテに故障が生じたと判定されるハードな環境下でも問題なく動作する程度の耐久性を有している。
【0065】
判定手段や表示手段等を撮影制御装置側に設けた場合は、輸送情報を電子カセッテと撮影制御装置との間で遣り取りするが、電子カセッテの通信機能が故障していた場合は輸送情報を撮影制御装置に送信できないという事態が生じる。この問題を解決するため、例えば記憶手段にRFIDタグを採用する等、電子カセッテの通信機能とは別の独自の通信機能を記憶手段に設けることが好ましい。
【0066】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
2、106 電子カセッテ
12 梱包トレイ
15 梱包箱
20 FPD
27 保護カバー
40 輸送情報取得部
51 設置検知回路
52 センサ群
53 時計回路
54 書込/読出制御回路
55 EEPROM
59 加速度センサ
60 温度センサ
61 湿度センサ
62 気圧センサ
63 輸送情報
65、107 撮影制御装置
70 CPU
74 ディスプレイ
85 比較回路
86 判定回路
90a、90b 判定結果表示ウィンドウ
100 作業開始確認ウィンドウ
110 撮影ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送中の電子カセッテの状態を検知する状態検知手段と、
前記状態検知手段の検知結果を記憶する記憶手段と、
電子カセッテが客先に設置されたことを検知する設置検知手段と、
前記設置検知手段で設置が検知される以前の、前記記憶手段に記憶された前記状態検知手段の検知結果を元に電子カセッテの故障有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を表示する表示手段とを備えることを特徴とする電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項2】
前記状態検知手段は、電子カセッテに輸送時に加わる衝撃による加速度を測定する加速度センサ、輸送時の電子カセッテの周囲の温度を測定する温度センサ、湿度を測定する湿度センサ、気圧を測定する気圧センサ、または輸送時に電子カセッテ表面に掛かる接触圧力を測定する圧力センサのうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項3】
前記設置検知手段は、輸送のための梱包用品が開封されて梱包用品から電子カセッテが取り出されたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知することを特徴とする請求項1または2に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項4】
前記設置検知手段は、電子カセッテまたは電子カセッテの動作を制御する外部制御装置の電源が最初に投入されたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知することを特徴とする請求項1または2に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項5】
前記設置検知手段は、電子カセッテと外部制御装置との通信が最初に確立したときに電子カセッテが客先に設置されたと検知することを特徴とする請求項1または2に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項6】
電子カセッテの動作確認と校正作業を開始する指示を入力するためのGUIを前記表示手段に表示し、
前記設置検知手段は、GUIを通じて指示がなされたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知することを特徴とする請求項1または2に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項7】
前記設置検知手段はGPS機能を有し、予め登録された客先の経緯度情報とGPS衛星からの経緯度情報とが一致したときに電子カセッテが客先に設置されたと検知することを特徴とする請求項1または2に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項8】
電子カセッテと外部制御装置は、使用状態よりも非使用状態のサイズが小さくなるよう収納可能に一体化されており、
前記設置検知手段は、最初に非使用状態から使用状態にしたときに電子カセッテが客先に設置されたと検知することを特徴とする請求項1または2に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項9】
前記状態検知手段の検知結果に関連付けて時刻情報を前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項10】
前記判定手段および前記表示手段は外部制御装置に設けられており、
前記記憶手段に記憶された前記状態検知手段の検知結果を外部制御装置に送信する送信手段を備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項11】
電子カセッテまたは外部制御装置の電源とは独立して各部に電力を供給する専用電源を備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の電子カセッテの輸送情報取得システム。
【請求項12】
輸送中の電子カセッテの状態を状態検知手段で検知する状態検知ステップと、
状態検知手段の検知結果を記憶手段に記憶する記憶ステップと、
電子カセッテが客先に設置されたことを設置検知手段で検知する設置検知ステップと、
設置検知手段で設置が検知される以前の、記憶手段に記憶された状態検知手段の検知結果を元に電子カセッテの故障有無を判定手段で判定する判定ステップと、
判定手段の判定結果を表示手段に表示する表示ステップとを備えることを特徴とする電子カセッテの輸送情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−205850(P2012−205850A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75672(P2011−75672)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】