説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、セキュリティ性を確保しつつ利便性を向上させることにある。
【解決手段】予備キー40は、正規キー10の車内への進入を通じて車内照合が成立したとき、すなわちユーザが乗車したとき使用許可状態とされる。よって、運転者が同乗者を車両から降ろしたときに同乗者が正規キー10を持って行ってしまった場合であっても、運転者は予備キー40を通じてエンジンの再始動や車両ドアの施解錠を行うことができる。このため利便性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電子キーシステムとして、電子キーを操作することなく、車両ドアの施解錠やエンジン始動が可能となる、いわゆるキー操作フリーシステムが公知である。具体的には、車両はその車内外に電子キーからの応答を要求する要求信号を送信する。電子キーは、要求信号を受信すると、自身の持つIDコードを含む応答信号を車両に返信する。車両は、受信した応答信号のIDコードと、自身に予め記憶されるIDコードとの照合を行い、その照合が成立するとドア施解錠やエンジン始動を許可する。
【0003】
このシステムにおいては、運転者でなく同乗者が電子キーを携帯していても車両ドアの解錠やエンジン始動が可能である。よって、運転者は電子キーを同乗者に預けていることを忘れて、同乗者を降車させた後に走行を継続するおそれがある。この場合、走行は継続できるものの、一度エンジンを停止させた後には、電子キーが運転者の手元にないためエンジンの再始動ができない。
【0004】
このような状況を抑制するべく、エンジン駆動状態において電子キーが車外に出たことが、上記要求信号及び応答信号の授受を通じて認識されると、ブザー等を通じて警告を行う構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、運転者又は同乗者は電子キーを携帯した同乗者が降車した時点で電子キーが車外に持ち出されたことを知ることができる。よって、上記エンジンの再始動ができない状況を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−106579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、運転者及び同乗者が上記警告に気が付かない場合がある。この場合には、上述のようにエンジン再始動が不可となるため不便である。しかしながら、無条件にエンジンの再始動を認めたのではセキュリティ上好ましくない。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティ性を確保しつつ利便性を向上させた電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両との間の無線通信を介して車両の各部を制御する車載機を遠隔制御する正規キーを備えた電子キーシステムにおいて、車両との間の無線通信を介して前記車載機を制御可能となる使用許可状態と、使用が禁止される使用禁止状態との2状態をとる予備キーを備え、同予備キーは、前記正規キーを携帯するユーザが車内に進入する動作が認識されたとき通常の使用禁止状態から使用許可状態とされることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、予備キーは、正規キーを携帯するユーザが車内に進入する動作が認識されたとき使用許可状態とされる。これにより、例えば、誤って同乗者が正規キーを車外に持ち出してしまった場合であっても、運転者は予備キーを通じて車載機を制御することができる。このため利便性が向上する。
【0010】
また、正規キーを携帯するユーザが車内に進入する動作が認識されないときには、予備キーの使用が許可されない。よって、予備キーが不正に使用されることが抑制されるためセキュリティ性が確保される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記予備キーは、使用許可状態にある場合において、前記正規キーを通じて車両ドアが施錠されたとき使用許可状態から使用禁止状態とされることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、車両ドアが施錠されたとき予備キーは使用許可状態から使用禁止状態とされる。よって、車両ドアが施錠された状態において、予備キーを通じて不正に車両ドアの解錠等が実行されることが抑制される。これにより、セキュリティ性が向上する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記予備キーの状態を前記使用許可状態から前記使用禁止状態に切り替える禁止スイッチを備えたことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、禁止スイッチの操作を通じて使用許可状態から使用禁止状態に切り替えることで、予備キーの不正使用が規制される。これにより、予備キーの不正使用が規制されてセキュリティ性が向上する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、前記禁止スイッチの操作を通じて前記使用禁止状態とされたとき車両の走行が規制されることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、禁止スイッチの操作を通じて使用許可状態から使用禁止状態とされたとき車両の走行が規制される。これにより、正規キーを携帯する運転者が走行可能状態にある車両を離れたとき、第三者が不正に車両を持ち去ることが規制される。さらに、このとき予備キーは使用禁止状態にあるため、予備キーを通じた車両の走行も規制される。よって、セキュリティ性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、セキュリティ性を確保しつつ利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電子キーシステムの構成図。
【図2】制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1に示されるように、電子キーシステム1は、ユーザに所持される電子キーである正規キー10と、車両2に搭載される車載機20と、を備えている。正規キー10と車載機20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したとき車両ドアの施解錠及びエンジンの始動が可能となる。また、本例における電子キーシステム1は、一定期間に限って、正規キー10と同様に電子キーとして利用可能となる予備キー40を備える。この一定期間とは、上記車内における通信が成立したときから降車したユーザにより正規キー10を通じて車両ドアが施錠されるまでの期間である。以下、詳細に説明する。
【0020】
<電子キー及び予備キー>
正規キー10は、無線通信機能を有し、車載機20との相互通信を通じて、車両各部の制御を行う。また、正規キー10は、CPU等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部11を備える。この電子キー制御部11には、LF(low frequency)帯の無線信号を受信するLF受信部12と、UHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号を送信するUHF送信部13とが電気的に接続されている。
【0021】
LF受信部12は、受信アンテナ12aを介して車載機20から送信されるLF帯の無線信号である要求信号を受信すると、この要求信号をパルス信号に復調し、この復調された信号を電子キー制御部11へ出力する。
【0022】
電子キー制御部11は、不揮発性のメモリ11aを備え、同メモリ11aには正規キー10に固有の正規IDコードが記憶されている。電子キー制御部11は、LF受信部12から復調された要求信号が入力されると、受信データを読み取るとともに、メモリ11aに登録された正規IDコードを含む応答信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、応答信号を変調するとともに、この変調した応答信号を、送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。
【0023】
予備キー40は、正規キー10と同様に構成される。ただし、予備キー40のメモリ11aには予備キー40に固有の予備IDコードが記憶されている点が異なる。この予備キー40は、車両2のダッシュボードに設けられるグローブボックスに保管される。このグローブボックスは自由に開閉可能であって、グローブボックスが開放されることで予備キー40が取り出し可能となる。なお、本例では予備キー40は、グローブボックスに収納された状態で車載機20との間で無線通信を行うことができる。
【0024】
<車載機>
車載機20は、CPU等からなるコンピュータユニットにて構成される車載制御部21を備える。この車載制御部21には、車外にLF帯の無線信号を送信する車外送信部22と、車内にLF帯の無線信号を送信する車内送信部23と、車内外から送信されるUHF帯の無線信号を受信する車載受信部24とが電気的に接続されている。
【0025】
また、図1に示すように、車載制御部21には、ドアハンドルセンサ32と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35と、ロックスイッチ36と、禁止スイッチ37と、車速センサ38と、シフトポジションセンサ39とが電気的に接続されている。
【0026】
ドアハンドルセンサ32は、アウトサイドドアハンドル(図示略)に設けられてユーザの同ドアハンドルへの接触の有無を検出する。また、ロックスイッチ36は、同じくドアハンドルに設けられて車両ドアの施解錠時に操作される。
【0027】
車速センサ38は車速を検出する。また、シフトポジションセンサ39は、シフトレバーのポジション(パーキング位置、ドライブ位置等)を検出する。ドアハンドルセンサ32、ロックスイッチ36、車速センサ38及びシフトポジションセンサ39はそれぞれ検出結果を車載制御部21に出力する。
【0028】
車外送信部22は、例えば、ドアハンドルの内部に設けられる。車外送信部22は、車載制御部21から要求信号が入力されると、その要求信号をLF帯の無線信号に変調して、この変調された要求信号を一定の周期で車外送信アンテナ22aを介して車両2の周辺に送信する。
【0029】
車内送信部23は車内に設けられるとともに、車載制御部21から要求信号が入力されると、その要求信号をLF帯の無線信号に変調して、この変調された要求信号を一定の周期で車内送信アンテナ23aを介して車内に送信する。
【0030】
車載受信部24は、受信アンテナ24aを介して正規キー10又は予備キー40から送信される応答信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調し、この復調された応答信号を車載制御部21へ出力する。
【0031】
車載制御部21は不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには正規キー10に設定された正規IDコードと同一の正規IDコードと、予備キー40に設定された予備IDコードと同一の予備IDコードと、後述する制御プログラムとが記憶されている。
【0032】
車載制御部21は、車外送信部22及び車内送信部23に対して要求信号を一定の周期でそれぞれ異なるタイミングで出力する。そして、車載制御部21は、要求信号に応答して正規キー10又は予備キー40から送信される応答信号を、車載受信部24を通じて受信する。
【0033】
車載制御部21は、応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶されたIDコードとの照合を行う。車載制御部21は、正規キー10又は予備キー40から送信された応答信号が車外送信部22及び車内送信部23のどちらから送信された要求信号に応答したものであるかに基づいて、車外照合又は車内照合の何れが成立したかを判断する。車外照合とは車外送信部22を介して車外に存在する正規キー10又は予備キー40との間でIDコードの照合を行うことをいう。車内照合とは、車内送信部23を介して車内に存在する正規キー10又は予備キー40との間でIDコードの照合を行うことをいう。
【0034】
また、車載制御部21は、車内照合が成立した場合、エンジン始動許可状態となるとともに、予備キー40の使用を禁止する使用禁止状態から予備キー40の使用を許可する使用許可状態となる。エンジン始動許可状態において、運転席近傍に設置されるエンジンスイッチ33が操作されると、その操作信号が車載制御部21に出力される。車載制御部21は、エンジン始動許可状態において前記操作信号を検知すると、エンジン装置35を通じてエンジンを始動させる。
【0035】
車載制御部21は、車両ドアの施錠状態において車外照合が成立した場合には、車両ドア解錠可能状態となる。この解錠可能状態において、車載制御部21はユーザがドアハンドル(図示略)に触れたことを、ドアハンドルセンサ32を通じて検知したとき、ドアロック装置34を介して車両ドアを解錠する。また、車載制御部21は、車両ドアの解錠状態において車外照合が成立した場合、ドアハンドルに設けられるロックスイッチ36の操作を検知すると、ドアロック装置34を介して車両ドアを施錠する。車載制御部21は、ドアロック装置34を通じて正規キー10による車両ドアの施錠が完了した旨認識すると、予備キー40の使用許可状態から使用禁止状態となる。
【0036】
予備キー40の使用許可状態において、車載制御部21は応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶された正規IDコードとの照合が成立しないとき、応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶された予備IDコードとの照合を行う。車載制御部21は、予備IDコードの照合が成立したとき、上記車内照合又は車外照合が成立したときと同様に動作する。よって、使用許可状態においては、予備キー40を通じた車両ドアの施解錠及びエンジン始動が可能となる。
【0037】
また、予備キー40の使用禁止状態において、車載制御部21は応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶された正規IDコードとの照合が成立しないとき、予備IDコードとの照合を行うことなく、受信した信号に係る処理を終了する。すなわち、使用禁止状態においては、たとえ予備キー40からの応答信号が受信された場合であっても、車内照合又は車外照合が成立すること、ひいては車両ドアの施解錠及びエンジン始動がされることはない。
【0038】
以上の構成によれば、予備キー40は、正規キー10の車内への進入を通じて車内照合が成立したとき、すなわちユーザが乗車したとき使用許可状態とされる。よって、運転者が同乗者を車両から降ろしたときに同乗者が正規キー10を持って行ってしまった場合であっても、運転者は予備キー40を通じてエンジンの再始動や車両ドアの施解錠を行うことができる。このため利便性が向上する。
【0039】
また、車両ドアが施錠されたときは使用許可状態から使用禁止状態とされる。よって、ユーザが施錠した車両から離れているときに、予備キー40が不正に使用されることが抑制される。よって、セキュリティ性を確保することができる。
【0040】
また、禁止スイッチ37は、ユーザによって操作可能に例えば車室内に設けられている。車載制御部21は、正規キー10との間で車内又は車外照合が成立しているという前提条件のもと、予備キー40の使用許可状態において禁止スイッチ37が操作された旨認識すると、使用許可状態から使用禁止状態となるとともに、走行禁止モードがオフ状態からオン状態に切り替わる。また、車載制御部21は、上記前提条件のもと使用禁止状態において禁止スイッチ37が操作された旨認識すると、使用禁止状態から使用許可状態となるとともに、走行禁止モードがオン状態からオフ状態に切り替わる。上記前提条件は、正規キー10を携帯しない第三者により不正に禁止スイッチ37の操作を通じて使用禁止状態から使用許可状態、走行禁止モードがオン状態からオフ状態に切り替えられることを防止するために規定されている。
【0041】
走行禁止モードがオン状態にあるとき、車載制御部21は車速センサ38を通じて車速がゼロでなくなった旨認識したとき、若しくはシフトポジションセンサ39を通じてシフトレバーがパーキング位置でなくなった旨認識したときエンジン装置35を通じてエンジンを停止させる。これにより、車両2の走行が不可となる。
【0042】
ここで、ユーザがエンジンを停止させることなく、正規キー10を携帯した状態で、一時的に車両2から離れる場合がある。このとき車両ドアは解錠状態にある。この場合であっても、車両2から離れる前に禁止スイッチ37を通じて走行禁止モードをオフ状態からオン状態に切り替えておくことで第三者により不正に車両が持ち去られることが防止される。また、走行禁止モードがオンのとき、予備キー40は使用禁止状態とされている。よって、上記のように走行を開始しようとすることによりエンジンが自動で停止された場合、予備キー40を通じてエンジンの再始動を行うこともできない。
【0043】
次に、車載制御部21が実行する予備キー40の使用許可状態及び使用禁止状態、並びに走行禁止モードの切り替えに係る制御プログラムについて図2のフローチャートに従って説明する。なお、以下の説明における当該制御プログラムの開始時においては、予備キー40は使用禁止状態であって、走行禁止モードはオフ状態である。
【0044】
まず、車内照合の成立が待たれる(S101でNO)。車内照合が成立したとき(S101でYES)、予備キー40について使用許可状態とされる。そして、禁止スイッチ37の操作の有無が判断される(S103)。禁止スイッチ37の操作がない旨認識されたとき(S103でNO)、正規キー10を通じて車両ドアが施錠されたか否かが判断される(S104)。正規キー10を通じて車両ドアが施錠された旨判断されたとき(S104でYES)、予備キー40について使用禁止状態とされる(S105)。そして、当該制御プログラムの処理は終了される。また、正規キー10を通じて車両ドアが施錠されていない旨認識されたとき(S104でNO)、走行禁止モードがオン状態であるか否かが判断される(S106)。なお、予備キー40を通じて車両ドアが施錠されたとしてもステップS104でNOと判断され、ステップS106の処理に移行される。これにより、使用許可状態に維持したまま予備キー40を通じて車両ドアを施解錠することができる。ここで、正規IDコードを通じた車外照合が成立したうえで車両ドアが施錠された場合には正規キー10を通じて車両ドアが施錠されたと判断され、予備IDコードを通じた車外照合が成立したうえで車両ドアが施錠された場合には予備キー40を通じて車両ドアが施錠されたと判断される。
【0045】
上記ステップS103において、禁止スイッチ37が操作されていない旨認識されたとき、走行禁止モードはオフ状態に保たれている。この場合(S106でNO)、再び、ステップS103の処理に戻って禁止スイッチ37の操作の有無が判断される。
【0046】
禁止スイッチ37が操作された旨判断されると(S103でYES)、正規キー10との間で車内又は車外照合が成立しているか否かが判断される(S107)。正規キー10との照合が成立していない旨判断された場合には(S107でNO)、正規キー10を携帯するユーザが車両周辺に存在しないとして、禁止スイッチ37の操作は無効とされ、上記ステップS104の処理に移行される。
【0047】
正規キー10との照合が成立している旨判断されたとき(S107でYES)、走行禁止モードがオフ状態からオン状態に切り替えられるとともに、予備キー40の使用許可状態から使用禁止状態に切り替えられる(S108)。そして、上記と同様に、正規キー10を通じて車両ドアが施錠されたか否かが判断され(S104)、正規キー10を通じて車両ドアが施錠されていない旨判断されたとき(S104でNO)、走行禁止モードがオン状態であるか否かが判断される(S106)。正規キー10を通じて車両ドアが施錠された旨認識された場合(S104でYES)、使用禁止状態が維持された状態で当該制御プログラムが終了される。走行禁止モードがオン状態である旨判断されたとき(S106でYES)、車速センサ38を通じて車速がゼロか否かが判断される(S109)。車速がゼロである旨判断されたとき(S109でYES)、シフトポジションセンサ39を通じてシフトレバーがパーキングポジションにあるか否かが判断される(S110)。車速がゼロでない(S109でNO)、若しくはシフトレバーがパーキングポジションにない(S110でNO)旨判断されたとき、車両2が不正に走行を開始するおそれがあるとしてエンジン装置35を通じてエンジンが停止され(S111)、予備キー40が使用禁止状態に維持された状態で(S105)制御プログラムが終了される。
【0048】
車速がゼロであって(S109でYES)、シフトレバーがパーキングポジションにある旨判断されたとき(S110でYES)、再び、ステップS103の処理に戻って禁止スイッチ37の操作の有無が判断される。ここで、再度、禁止スイッチ37が操作された旨判断された場合であって(S103でYES)、正規キー10との照合が成立した旨判断されると(S107でYES)、走行禁止モードがオン状態からオフ状態に切り替えられるとともに、予備キー40が使用禁止状態から使用許可状態に切り替えられる(S108)。
【0049】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)予備キー40は、正規キー10の車内への進入を通じて車内照合が成立したとき、すなわちユーザが乗車したとき使用許可状態とされる。よって、運転者が同乗者を車両から降ろしたときに同乗者が正規キー10を持って行ってしまった場合であっても、運転者は予備キー40を通じてエンジンの再始動や車両ドアの施解錠を行うことができる。このため利便性が向上する。
【0050】
また、ユーザが降車して車両ドアが施錠されたとき予備キー40は使用許可状態から使用禁止状態とされる。よって、ユーザが施錠された車両から離れているときに、予備キー40が不正に使用されることが防止される。よって、セキュリティ性を確保することができる。
【0051】
(2)禁止スイッチ37を通じて予備キー40を使用禁止状態に切り替えることで予備キー40の不正使用が規制される。具体的には、正規キー10を携帯する運転者がエンジン駆動状態において一時的に車両2を離れる場合、禁止スイッチ37の操作を通じて予備キー40を使用禁止状態に切り替える。これにより、予備キー40を通じたエンジンの再始動が規制される。
【0052】
(3)禁止スイッチ37の操作を通じて使用禁止状態とされたとき車両2の走行が規制される。これにより、正規キー10を携帯する運転者がエンジン駆動状態において車両を離れたとき、第三者が不正に車両2を持ち去ることが規制される。よって、いっそうセキュリティ性が向上する。
【0053】
(4)正規キー10との間で車内照合が成立した旨判断されたとき、正規キー10を携帯するユーザが車内に進入する動作があった旨認識される。これにより、正規キー10を携帯するユーザが確実に車内に存在する状態において予備キー40は使用許可状態とされる。よって、セキュリティ性を向上させることができる。
【0054】
(5)予備キー40の使用禁止状態においては、応答信号に含まれるIDコードと、予備IDコードとの照合は省略される。よって、使用禁止状態において車載制御部21による照合に係る処理負担を低減することができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、車両2はエンジンの駆動により走行していたが、電力に基づくモータの駆動により走行する電気自動車やハイブリッドカーであってもよい。この場合、ステップS111におけるエンジンの停止に代えて、モータの駆動が停止される。
【0056】
・上記実施形態においては、車室内に禁止スイッチ37が設けられていたが、禁止スイッチ37が設けられる位置はこれに限定されない。例えば、正規キー10に設けられていてもよい。この場合、禁止スイッチ37が操作されると、正規キー10から車載機20にその旨の無線信号が送信される。車載機20は、当該無線信号を受信すると、図2のステップS103でYESと判断した場合と同様にステップS107の処理に移行する。以降、上記実施形態と同様に走行禁止モードのオンオフ並びに使用許可状態及び使用禁止状態が切り替えられる。
【0057】
・上記実施形態においては、車内照合が成立したとき、ユーザが車内に進入する動作が認識されたとして予備キー40が使用許可状態とされていた。しかし、ユーザが車内に進入する動作が認識できれば車内照合に限らず、例えば、車両ドアが解錠されたときに予備キー40が使用許可状態とされてもよい。また、車両ドアが解錠された後、車両ドアが開放されたとき予備キー40が使用許可状態とされてもよい。さらに、運転席に着座センサを設けて、同センサによりユーザが運転席に座った旨検出されたとき、予備キー40が使用許可状態とされてもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、走行禁止モードのオン状態においては車両2の走行が禁止されていたが、この走行禁止モードを省略してもよい。この場合であっても、禁止スイッチ37の操作を通じて予備キー40が使用禁止状態とされることで、不正なエンジンの再始動を防止することができる。さらに、禁止スイッチ37を省略することもできる。この場合、図2のフローチャートにおいてステップS103,S106〜S111を省略できる。よって、電子キーシステム1の構成及び制御プログラムの処理を簡単にすることができる。
【0059】
・上記実施形態においては、予備キー40の使用禁止状態においては、車載機20に格納された予備IDコードと予備キー40又は正規キー10からの応答信号に含まれる予備又は正規IDコードとの照合を省略することで、予備キー40を通じた車両ドアの施解錠及びエンジン始動を不可としていた。しかし、使用禁止状態において予備キー40の使用が不可とされる構成であれば、その方法は上記に限定されない。例えば、車載機20は、使用許可状態から使用禁止状態となったとき、その旨の無線信号を予備キー40に送信する。
【0060】
予備キー40の電子キー制御部11は、LF受信部12を通じて受信した前記無線信号を認識すると、使用禁止状態となる。この状態においては、予備キー40は、要求信号を受信しても応答信号を送信しない。従って、予備キー40の使用が不可とされる。これにより、予備キー40の応答信号送信に係る消費電力を低減することができる。同様にして、車載機20は、使用禁止状態から使用許可状態となったとき、その旨の無線信号を予備キー40に送信する。予備キー40は、前記無線信号を認識すると、使用許可状態となる。この状態においては、上記実施形態と同様に、予備キー40は、要求信号に応じて応答信号を送信する。本構成によれば、車両2からの無線信号を通じて、車載機20及び予備キー40間で予備キー40に係る状態を同期させることができる。また、予備キー40は、受信した前記無線信号を通じて予備キー40に係る状態の切り替えが完了したとき、その旨を示す完了信号を車載機20に送信してもよい。これにより、車載機20は、予備キー40の状態の切り替えが正常に完了したことを認識できる。
【0061】
・上記実施形態においては、電子キーシステム1として正規キー10及び予備キー40のスイッチ操作を行うことなく、車両ドアの施解錠及びエンジン始動を実行できる、いわゆるキー操作フリーシステムが採用されていた。しかし、電子キーシステムであれば、上記キー操作フリーシステムに限定されない。例えば、正規キー10から車両2への単方向通信を通じて車両ドアを施解錠するワイヤレスキーシステムを採用してもよい。
【0062】
この場合、正規キー(電子キー)にはロックスイッチ及びアンロックスイッチが設けられる。ロックスイッチ又はアンロックスイッチが操作されると車載機20に施錠又は解錠を要求する旨の、IDコードを含む要求信号が送信される。車載機20において、当該要求信号に含まれるIDコードの照合が成立すると、車両ドアの施錠又は解錠が実行される。このワイヤレスキーシステムを上記実施形態に適用すると、例えば以下のようになる。予備キーはメカニカルキーを備えて構成されるとともに、車内の所定位置に収納されている。そして、予備キーが使用禁止状態にあるとき、予備キーは収納位置において取り出し不能にロック状態とされている。この使用禁止状態において、正規キーのアンロックスイッチの操作を通じて車両ドアが解錠、若しくはその後車両ドアが開放されると予備キーのロック状態が解除されてアンロック状態とされる。すなわち、予備キーのアンロック状態が予備キーの使用許可状態である。この状態において、予備キーを取り出したうえで、このキーを例えばドア又は車室内のキーシリンダに挿入して回動することで、車両ドアの施解錠若しくはエンジンの始動が可能となる。予備キーの使用が終了したときには、予備キーを再びもとの収納位置に戻す。そして、車両ドアが施錠されると、再び予備キーはロック状態とされる。
【0063】
なお、このワイヤレスキーシステムにおいては、正規キーとして上記電子キーの他、メカニカルキーを備える。このメカニカルキーは、エンジン駆動中においては、キーシリンダからの抜き出しが規制されるところ、上記のように、エンジン駆動中における同乗者による正規キーの持ち出しは問題とならない。しかしながら、エンジン停止中において、誤って同乗者が正規キーを持ち出してしまった場合には、エンジンの始動及び車両ドアの施解錠を行うことができない。その点、上記予備キーを設けることで、同乗者が正規キーを持ち出してしまった場合であっても、エンジンの始動及び車両ドアの施錠が可能となる。
【0064】
・上記実施形態においては、走行禁止モードがオン状態にある場合において、車速がゼロでなくなった旨認識されたとき、若しくはシフトレバーがパーキング位置でなくなった旨認識されたとき、エンジンが停止されていた。しかし、エンジンが停止される条件は上記2つの条件に限定されず、上記両条件のうち何れか一つであってもよい。この場合、図2のステップS109及びステップS110のうち一方の判断を省略できる。また、例えば、走行禁止モードがオン状態において、運転席側の車両ドアが2回開放されたことを条件としてもよい。ユーザがエンジン駆動状態で一時的に車両から離れる場合、運転者は、車室内で禁止スイッチ37を通じて走行禁止モードをオン状態とすると、降車するべく車両ドアを開放して(1回目のドア開)、それを閉じる。この状態において、次に車両ドアが開放されたとき(2回目のドア開)、エンジンが停止される。よって、エンジン駆動状態において運転者が車両から離れたことを見計らって、不正に車両に乗り込もうとした場合であっても、車両ドアを開いた時点でエンジンが停止されるため、車両が持ち去られることが防止される。また、エンジンが停止された後には、予備キー40は使用禁止状態とされるため、予備キー40を通じたエンジンの再始動もできない。なお、本構成においては、運転者が戻ってきたときにも車両ドアの開放に伴いエンジンが停止されるものの、運転者は正規キー10を携帯しているところエンジンの再始動が可能である。
【0065】
また、上記ワイヤレスキーシステムを採用した構成にあっては、エンジン駆動中において電子キーのロックスイッチが操作されたとき、走行禁止モードがオン状態となるとともに、車両ドアが1回開放されたことを条件としてエンジンが停止されてもよい。通常、正規キー10のロックスイッチは車外から操作されるものであるので、運転者の降車が1回目の車両ドアの開放とカウントされることはない。これにより、ユーザがエンジン駆動中において正規キーのロックスイッチを操作したときにのみ、車両ドアの開放に基づきエンジンが停止される。本構成において、ロックスイッチの操作を通じて走行禁止モードがオン状態となったとき、電子キーのブザーを通じてその旨をユーザに通知してもよい。
【0066】
・上記実施形態においては、予備キー40が保管されるグローブボックスは自由に開閉可能であった。しかし、例えば、グローブボックスの開閉を許可するアンロック状態及び同開閉を規制するロック状態間でグローブボックスの状態を切り替えるロック装置を設けてもよい。この場合、ユーザに暗証番号の入力を求めて、入力された暗証番号の認証が成立したときに、上記ロック装置を介してグローブボックスをロック状態からアンロック状態とする。さらに、グローブボックス内における予備キー40と、車両との通信が不能となるように、グローブボックスを電磁シールド材で形成する。これにより、グローブボックス内にある予備キー40を通じた車内照合、ひいてはエンジンの再始動が規制される。本構成においては、予備キー40を使用する際には、必ずグローブボックスから予備キー40を取り出す必要がある。
【0067】
・上記実施形態において予備キー40が使用禁止状態から使用許可状態に切り替えられたとき、音や表示によりその旨をユーザに通知してもよい。これにより、予備キー40の存在を確実にユーザに知らせることができる。
【0068】
また、使用許可状態において、正規キー10が車外に持ち出されたことが車外照合の成立を通じて認識されたとき、音や表示によりその旨をユーザに通知してもよい。さらに、通知内容は正規キー10が車外に持ち出されたことに限らない。例えば、予備キー40を使用するか否かの確認メッセージをメーター等に表示しても良い。また、規定時間以内にユーザがその意思表示をしない場合(例えば予備キー40をグローブボックスから取り出す操作を行なわない場合)は、ユーザによって予備キー40が認識されていない旨判断される。このとき、予備キー40を使用禁止状態としても良い。これにより、ユーザによって認識されない予備キー40が使用許可状態のまま車内に放置されることが抑制されてセキュリティ性が高められる。さらに、上記意思確認の表示に加えて若しくは代えて、正規キー10が車外に持ち出された状態において、ユーザが離車すると推定される操作(エンジン停止やドア開)時に上記意思確認の表示を行なっても良い。
【0069】
・上記実施形態においては、禁止スイッチ37の操作に基づき予備キー40の使用許可状態及び使用禁止状態、並びに走行禁止モードのオンオフ状態が切り替え可能とされていた。しかし、携帯電話からセンタを通じて上記状態及びモードを切り替え可能としてもよい。この場合、車載機20は、センタを介した携帯電話との通信機能を備える。これにより、例えば、使用許可状態及び走行禁止モードのオフ状態において不正に車両2が持ち出された場合であっても、携帯電話を通じて使用禁止状態及び走行禁止モードのオン状態に切り替えることができる。よって、セキュリティ性がいっそう向上する。また、正規のユーザが遠方から自身の車両2の使用を第三者に許可する場合には、予備キー40を使用許可状態に切り替えることもできる。
【0070】
・上記実施形態においては、予備キー40は、正規キー10と同様に車両ドアの施解錠及びエンジンの始動が可能であったが、予備キー40に機能制限を設けてもよい。例えば、予備キー40を通じてエンジンが始動された場合には、走行距離や車速に制限を設ける。これにより、予備キー40を通じた車両の永続的な使用を困難とすることができる。
【0071】
・上記実施形態においては、禁止スイッチ37の操作があって(S103でYES)、正規キー10との間で照合が成立しない場合(S107でNO)には、走行禁止モードのオンオフ並びに使用許可状態及び使用禁止状態を切り替えることなく、ステップS104の処理に移行していた。しかし、正規キー10との間で照合が成立しない場合(S107でNO)には、図2に一点鎖線で示すように、走行禁止モードをオン及びオフ間で切り替えてもよい(S120)。このとき、予備キー40は使用許可状態で維持される。これにより、予備キー40の使用許可状態において、エンジン駆動状態のままユーザが禁止スイッチ37を操作して離車した場合における第三者による車両の持ち去りを防止することが可能となり、セキュリティ性が向上する。
【0072】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記車両に設けられるとともに、前記正規キーからの無線信号に基づき前記車載機の制御を実行する制御装置を備え、前記制御装置は車内における前記正規キーとの通信が成立した旨認識したとき前記正規キーを携帯するユーザが車内に進入する動作があった旨認識する電子キーシステム。
【0073】
同構成によれば、車内における正規キーとの通信が成立した旨認識されたとき、正規キーを携帯するユーザが車内に進入する動作があった旨認識される。これにより、正規キーを携帯するユーザが確実に車内に存在する状態において予備キーは使用許可状態とされる。よって、セキュリティ性を向上させることができる。
【0074】
(ロ)請求項3又は4に記載の電子キーシステムにおいて、前記正規キーと前記車載機との通信が成立しているときに限り、前記禁止スイッチの操作が有効とされる電子キーシステム。
【0075】
同構成によれば、正規キーと車載機との通信が成立しているときに限って禁止スイッチの操作が有効とされる。よって、正規キーを所有しない第三者によって禁止スイッチが有効に操作されることが防止される。
【符号の説明】
【0076】
1…電子キーシステム、2…車両、10…正規キー、20…車載機、37…禁止スイッチ、40…予備キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両との間の無線通信を介して車両の各部を制御する車載機を遠隔制御する正規キーを備えた電子キーシステムにおいて、
車両との間の無線通信を介して前記車載機を制御可能となる使用許可状態と、使用が禁止される使用禁止状態との2状態をとる予備キーを備え、
同予備キーは、前記正規キーを携帯するユーザが車内に進入する動作が認識されたとき通常の使用禁止状態から使用許可状態とされる電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記予備キーは、使用許可状態にある場合において、前記正規キーを通じて車両ドアが施錠されたとき使用許可状態から使用禁止状態とされる電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記予備キーの状態を前記使用許可状態から前記使用禁止状態に切り替える禁止スイッチを備えた電子キーシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、
前記禁止スイッチの操作を通じて前記使用禁止状態とされたとき車両の走行が規制される電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−57351(P2012−57351A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201178(P2010−201178)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】