説明

電子ソースの性能を正規化するための方法および装置

【課題】1つのフィラメントが切れても質量スペクトルの使用を継続できる電子ソースの性能を正規化するための方法および装置を提供する。
【解決手段】質量スペクトロメータを作動させるための方法は、第1電子放出器を用いて質量スペクトロメータを作動させながら、第1性能特性を決定するステップと、第1性能特性に関連する第1情報を記憶するステップと、第2電子放出器を用いて質量スペクトロメータを作動させながら、第2性能特性を決定するステップと、第2性能特性に関連する第2情報を記憶するステップと、その後、第1電子放出器を使用する作動から、第2電子放出器を使用する作動へ切り換えるステップとを備え、この切り換えるステップは、切り換え前の第1電子放出器の性能に対して切り換え後の第2電子放出器の性能を正規化するよう、第1情報および前記第2情報を使用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、質量スペクトロメータに関し、より詳細には、多数のフィラメントを有するイオンソースを備えた質量スペクトロメータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在存在する質量スペクトロメータは、サンプル材料のイオンを発生するイオンソースを有する。発生したこれらイオンは、質量検出器を含む質量分析器によって処理される。現在存在する一部のイオンソースは、電子イオン化(EI)として知られる技術および化学的イオン化(CI)として知られる技術を使用する別の技術によってイオンを発生するようになっている。EIおよびCIの双方において、電子ソースは電子のストリームをイオン容積部に選択的に提供するように構成されている。電子ソースは、フィラメントを含み、このフィラメントは、附勢されると、電子ストリームのための電子を発生する。第2フィラメントも設けることが有利である。これらフィラメントのうちの1つがバーンアウトしても(燃え尽きても)、オペレータは、別のフィラメントによりサンプルに対する分析作業を継続できる。このように、フィラメントがバーンアウトしても、質量スペクトロメータは、完全に作動不能状態とはならず、最小限の故障で作動を継続できるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、2つのフィラメントは全く同一とは言えない。例えば各フィラメントは、同じ作動条件下で質量スペクトロメータが作動している間、異なるイオン強度を発生し得る。このイオン強度は、2倍程度異なることがある。これらイオン強度の差は、フィラメントの位置、レフレクタの位置、フィラメントとイオン容積部との整合、フィラメントの組成または他の要因の小さいばらつきによって生じる。従って、別のフィラメントを用いてサンプルに対する作業を行うときに、質量スペクトロメータが正確で、かつ一貫したデータを発生し続けることができるようにするため、フィラメントの切り換え時に通常質量スペクトロメータは、再較正される。しかしながら、この再較正を行うには時間がかかり、バーンアウト前に進行していたサンプル分析作業を放棄しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のより広義の形態の1つは、第1電子放出器を用いて質量スペクトロメータを作動させながら、第1性能特性を決定するステップと、第1性能特性に関連する第1情報を記憶するステップと、第2電子放出器を用いて質量スペクトロメータを作動させながら、第2性能特性を決定するステップと、第2性能特性に関連する第2情報を記憶するステップと、その後、第1電子放出器を使用する作動から、第2電子放出器を使用する作動へ切り換えるステップとを備え、この切り換えるステップは、切り換え前の第1電子放出器の性能に対して切り換え後の第2電子放出器の性能を正規化するために、第1情報および第2情報を使用することを含む、質量スペクトロメータを作動させるための方法に関する。
【0005】
本発明のより広義の形態の別の形態は、イオン容積部を構成する構造体と、
前記イオン容積部へ、各々が電子を選択的に供給できる第1電子放出器および第2電子放出器と、コントローラとを含む質量スペクトロメータを備え、前記コントローラは、第1電子放出器を用いて質量スペクトロメータを作動させながら、第1性能特性を決定し、第1性能特性に関連する第1情報を記憶し、第2電子放出器を用いて質量スペクトロメータを作動させながら、第2性能特性を決定し、第2性能特性に関連する第2情報を記憶し、その後、第1電子放出器を使用する作動から、第2電子放出器を使用する作動へ切り換えるようになっており、この切り換えは、切り換え前の第1電子放出器の性能に対して切り換え後の第2電子放出器の性能を正規化するよう、第1情報および第2情報を使用することを含む、装置に関する。
【0006】
添付図面は、次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の様相を具現化した質量スペクトロメータのブロック図である。
【図2】図1の質量スペクトロメータを作動させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の様相を具現化した質量スペクトロメータ(MS)10のブロック図である。この質量スペクトロメータ10は、イオンソース12と、質量分析器14と、ガスクロマトグラフ16と、試薬ガスのソース18と、真空ソース20と、制御システム22とを含む。ここに開示されている質量スペクトロメータ10は、化学的イオン化(CI)用に構成されているが、これとは異なり、電子イオン化(EI)用にも構成できる。
【0009】
質量分析器14は、当技術分野で知られているあるタイプのデバイスであり、実際に市販されている多数のデバイスのうちの任意のものにすることができる。この質量分析器14は、質量対電荷比に基づき、イオンを分析するための図示されていないデバイスを含むことができ、このデバイスの例として、四重極フィルタ、線形イオントラップ、直線状イオントラップ、三次元イオントラップ、円筒形イオントラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共振フィルタ、静電イオントラップ、フーリエ変換静電フィルタ、タイムオブフライトフィルタ、四重極タイムオブフライトフィルタ、ハイブリッド分析器または磁気セクターを挙げることができるが、これらだけに限定されない。更に質量分析器14は、イオンを検出できる検出器24を含む。検出器24は、検出器が検出するイオンの強度(イオンの量)に対応する電気信号を発生し、この電気信号は処理のために制御信号22へ送信される。検出器24は、後述する態様で、制御システム22から送られる利得制御信号に応答して利得が変化する。
【0010】
ガスクロマトグラフ16も公知のタイプのデバイスであり、市販されている多数のデバイスのうちのいずれかとすることができる。ガスクロマトグラフ16は、検体(分析される試料)と称されるサンプル材料の粒子のソースとして働く。特にこのガスクロマトグラフ16は気相状態にあるサンプル材料の電子または分子である検体を出力する。このガスクロマトグラフ16によって送られるサンプル検体は、公知のタイプのガスクロマトグラフ(GC)カラム26を通ってイオンソース12まで移動する。例えばGCカラム26は、当技術分野で周知のタイプの溶融シリカ毛細管とすることができる。これとは異なり、ガスクロマトグラフ16およびGCカラム26の代わりに、液体クロマトグラフ(LC)によりオプションとしてサンプル検体を発生し、LCカラムによって送ってもよい。
【0011】
試薬ガスソース18も、公知のタイプのデバイスであり、メタンのような試薬ガスの流れを発生する。真空ソース20も公知のタイプのシステムであり、イオンソース12および質量分析器14の双方に作動的に結合され、正常な作動中に内部領域内を真空状態に維持するようになっている。
【0012】
制御システム22は、公知のタイプの回路を含み、この制御システムは質量スペクトロメータ10の他の種々のコンポーネントに作動的に結合されている。開示されている実施形態では、制御システム22は、略図に28で示されているデジタル信号プロセッサ(DSP)を含む。DSP28は、質量スペクトロメータ10の他のコンポーネントを制御システム22がどのように制御するかを決定するソフトウェアプログラムを実行する。このソフトウェアプログラムは、サンプル材料の分析作業に関連するデータも処理する。例えばソフトウェアプログラムは、後述する態様で検出器24が検出するイオン強度をスケーリングするスケーリング率を含む。制御システム22は更に、ソフトウェアプログラム、分析データおよび質量スペクトロメータ10の作動および機能に関連する他の情報を記憶するためのメモリ29も含む。DSP28は、上記とは異なり、マイクロコントローラまたは他の形態のデジタルプロセッサでもよい。別の代替例として、DSP28をステートマシンまたはハード配線された回路に置換することもできる。制御システム22は、ガスクロマトグラフ16を制御する出力30および試薬ガスソース18を制御する出力32を含む。制御システム22は、データを送受信するよう、質量分析器14と通信するライン34も含む。更に、制御システム22は、後述する態様で質量スペクトロメータ10の他の種々のコンポーネントを制御する別の出力も含む。コントローラとの間のライン34および別のラインは、有線または無線伝送のいずれか、またはその双方で提供できると理解すべきである。
【0013】
イオンソース12は、イオン容積部38として働くチャンバを備えた導電性ハウジング36をその内部に有する。ハウジング36は、イオン容積部38とハウジングの外部との間を連通させる2つの開口部39および40を有する。開口部39は、本明細書に説明する態様で、電子開口部、すなわち電子入口ポートとして働き、開口部40はイオン開口部、すなわちイオン出口ポートとして働く。試薬ガスソース18からハウジング36まで、ガス供給導管41が延び、この導管を通過するガス流量を制御するように、導管に沿って電気作動式バルブ42が設けられている。このバルブ42は、制御システム22の出力43によって制御される。導管41は、ガス入口ポート44を通ってイオン容積部38内に開口している。ガスクロマトグラフ16から離間したGCカラム26の端部は、ハウジング36内の開口部を通ってイオン容積部38内に短い距離だけ突出する端部部分を有する。
【0014】
イオンソース12は、ハウジング36の近くに電子ソース46を含む。この電子ソース46は、2つのフィラメント48および49を有するフィラメントアセンブリ47を含み、これらフィラメントは、電子放出器として作動し、熱電子放出タイプにすることができる。これとは異なり、フィラメント48および49のような熱電子放出器を使用する代わりに、オプションとして電子放出器を電子放出ニードルのような電界放出器としてもよい。全体がヘアピン構造となっているフィラメント48および49は、電子入口ポート39を通ってイオン容積部38内まで延びる仮想線50に沿って互いに重なった関係に位置決めされている。これらフィラメント48および49は、レニウムから製造できる。これとは異なり、オプションとしてフィラメント48および49は、タングステン、トリウムタングステン、トリウムタングステンレニウム、トリウムイリジウム、イットリアでコーティングされたレニウムまたは他の任意の適当な材料を含むことができる。フィラメント48および49は、互いに横方向に配置でき、一般に仮想線50を中心とする電子放出断面を有することができる。これとは異なり、オプションとして、フィラメント48および49は、リボンフィラメント、コイルフィラメント、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
電子ソース46は、フィラメント電源52を含む。このフィラメント電源52は、フィラメント電流によりフィラメント48および49のいずれか一方を選択的に附勢できる。各フィラメント48および49は、附勢されると、電子のストリームを放出でき、この電子ストリームは電子入口ポート39を通って仮想線50に沿ってターゲットロケーション51まで伝搬する。ターゲットロケーション51を、イオン容積部38内のポイントまたは領域とすることができる。フィラメント電源52は、制御システム22の出力53によって制御される。従って、制御システム22は、フィラメント48および49の各々を選択的にオンオフでき、後述する態様でフィラメント電源52が供給するフィラメント電流を変えることができる。
【0016】
フィラメント48および49は、附勢時に、イオン容積部38に対して負のバイアスがかけられる。フィラメント電源52は、イオン容積部38とフィラメント48および49との間にポテンシャル差が発生し、よって電子がイオン容積部へ移動する際に電子のエネルギーが生じるようにイオン容積部38に結合された出力55を含む。フィラメント電源52は、フィラメント48および49のいずれかがバーンアウトしたときにこれを制御システムに表示する、制御システム22に結合された出力54も含む。
【0017】
電子ソース46は、公知のタイプの電子ゲート56を更に含む。この電子ゲート56は、フィラメント48および49と電子入口ポート39との間に設けられている。この電子ゲート56は、制御システム22の出力57によって制御され、この出力57は、あるデューティサイクルを有する信号を搬送する。このデューティサイクルは、ゲートが開となっている時間のパーセントを決定し、このデューティサイクルは、0%〜100%のレンジにわたって変化し得る。電子ゲート56が開となっているとき、ライン50に沿って流れる電子ストリームは、ゲートを通ってイオン容積部38内に伝わる。他方、電子ゲート56が閉となっているとき、このゲートは、電子のストリームを遮断するので、電子は移動し、イオン容積部38内に進入することが禁止される。デューティサイクルは、周波数を固定し、パルス幅を変えることにより、またはパルス幅を固定し、周波数を変えることにより、または周波数とパルス幅の双方を変えることによって変えることができる。デューティサイクルを変えることにより、時間あたりのイオン容積部に到達する電子量が変化するので、イオン容積部内で発生されるイオンも変化する。このアプローチ方法は線形であり、予測可能である。
【0018】
電子ソース46は、公知のタイプの電子レンズ58を更に含む。例えば電子レンズ58は合焦モードで操作できる1つ以上のレンズを含むことができる。この電子レンズ58は、フィラメントアセンブリ47の一部でよい。この電子レンズ58は、制御システム22の出力59によって制御され、制御システム22は、出力59に電子レンズ電圧を発生する電子レンズバイアス回路を含む。この電子レンズ電圧は、イオン容積部38に対して正のバイアスを電子レンズ58にかける。制御システム22は出力59を介して、電子レンズ電圧を変えることができるので、後述する態様でイオン容積部38内に向かって流れる電子のストリームの合焦状態を変えることができる。本明細書では電子ゲート56と電子レンズ58をセパレート式のコンポーネントとして説明し、図示しているが、これらは説明するのと異なり、これらを双方の機能を奏する単一コンポーネントとなるように組み合わせてもよい。
【0019】
電子ソース46は、フィラメント48および49がフィラメント電流によって附勢されたときに、フィラメント48および49のいずれか放出電流を測定するための電子放出センサ60を更に含む。この測定された放出電流は、処理のため、ライン62上で制御システム22に送信できる。制御システム22は、後述する態様でフィラメント電源52から供給されるフィラメント電流を制御し、設定するために、放出電流情報を使用できる。
【0020】
イオンソース12は、磁界発生器64を含む。この磁界発生器64は、永久磁石のような、固定された磁界を発生する部分と、電磁石のような、可変磁界を発生する部分とを含む。これら固定磁界と可変磁界とは、合成されて電子のストリームをコリメートされた状態に維持するのを助けるよう、仮想線50と並列に整合された磁界を発生する。この磁界発生器64は、制御システム22に出力66によって制御される。従って、制御システム22は、後述する態様で、出力66上で送られる制御信号により、磁界の強度を選択的に変えることができる。これとは異なり、磁界発生器64は、磁界を発生する永久磁石しか含まないようにしてもよく、この場合、磁界発生器を制御するための出力66は設けられない。イオンソース12は、公知のタイプの一組のレンズ要素68を更に含む。このレンズ要素68は、イオン容積部38と質量分析器14との間に配置され、これらレンズ要素68は、制御システム22の1つ以上の出力70によって制御される。
【0021】
本明細書で説明する実施形態では、イオン容積部38は、化学的イオン化(CI)方法用に使用されている。このCI方法の一般的原理は、当技術分野では知られているものであるので、本明細書では詳細には説明せず、簡単にしか説明しない。作動中、試薬ガスの連続流が導管41を通ってイオン容積部38内に流れることができるように、バルブ42は、開状態のままである。図1に略図として示されるように、イオン容積部38は、開口部39および40を含む数個の極めて小さい開口部しか有していない。従って、これら比較的小さい開口部39および30、更にイオン容積部38の内部への試薬ガスの流入に起因し、イオン容積部38は、比較的高い圧力に維持される。ガスクロマトグラフ16は、サンプル材料を含み、サンプル材料の検体、例えばそれらの原子または分子を発生し、これらは気相状態でGCカラム26を通ってイオン容積部38内に供給される。
【0022】
制御システム22は、フィラメント電流によりフィラメント48および49の一方を附勢するようにフィラメント電源52に命令し、附勢されたフィラメントは電子のストリームを放出する。制御システム22は、ゲートが開となっている時間のパーセントを決定するデューティサイクルを有する信号により、電子ゲート56を制御する。電子ゲート56が開であり、電子のストリームがライン50に沿って流れ、イオン容積部38内に進入可能にするときに、電子は主に高圧試薬ガスの分子と衝突し、試薬ガスのイオンを形成する。電子のストリームは、前に説明したように、電子レンズ58の電子レンズ電圧、および磁界発生器64によって発生される磁界により影響される。電子ゲート56が閉となっているとき、電子のストリームはブロックされ、イオン容積部38に電子は進入しない。
【0023】
イオン容積部38内の圧力が比較的高くなっている結果、かかる衝突を促進し、試薬ガスのイオンを発生するような試薬ガスの密度となる。試薬ガスのイオンは、サンプルガスの検体と反応し、個々の検体に特徴的なイオンを形成する。イオン出口ポート40を通ってイオン容積部38から流出するガスは、これらイオンをガスと共に搬送する。
【0024】
制御システム22は、制御ライン71を介してイオン容積部38に電気的ポテンシャルを加え、更にレンズ要素68に少なくとも1つの電気的ポテンシャルを加える。イオン容積部38とレンズ要素68との間のポテンシャルは、容積部38によって発生されたサンプル材料のイオンを抽出し、合焦する。特にイオンは、イオン容積部38からパス72を通り、出口40を通過し、更にレンズ要素68を通過し、質量分析器14まで移動する。このイオン移動パス72は、ライン50に沿って流れる電子のストリームにほぼ垂直である。質量分析器14は、あるレンジの質量対電荷比(「massと称す」)にわたってスキャンし、検出器24により検出するための特定の質量のイオンを選択的にフィルタで除去できる。検出器24は、その特定の質量に対するイオン強度(イオン量)を検出し、検出されたイオン強度に対応する電気信号を発生する。ライン34を通って制御システム22へ、検出されたイオン情報が送られる。制御システム22は、情報を処理し、サンプル材料の質量スペクトルを発生するソフトウェアプログラムを実行する。
【0025】
上記記載は、CI方法により作動する質量スペクトロメータに関する記載であったが、この質量スペクトロメータ10は、このCI方法とは異なり、電子イオン化(EI)方法によっても作動させるように構成できる。EI方法の場合、ソース18からの試薬ガスはイオン容積部38内に供給されず、開口部39および40を、より大きく形成でき、サンプル材料のイオン特性は、サンプル材料と電子との相互作用から直接決定される。イオン容積部38のために導電性ハウジングを使用する代わりに、イオンを発生させるイオン容積部を、別の構造としていてもよく、例えばRFマルチポールトラップまたは他の適当なイオントラップを有してもよい。
【0026】
フィラメント48を使用し、選択された組の作動パラメータのもとで質量スペクトロメータ10を作動させ、フィラメント48からの電子に応答し、イオン容積部38内のサンプル検体から生じるイオン強度を決定する。サンプル検体は、既知の材料を含むので、制御システム22のメモリ29内に既知材料の質量特性のレンジにわたって所定のイオン強度を記憶できる。従って、フィラメント48を使用し、サンプルに対する分析作業を行うときに、質量スペクトロメータが正確で、かつ一貫したデータを発生するように、フィラメント48に対して質量スペクトロメータ10を評価する。次に、制御システム22は作動パラメータの組のもとで、フィラメント48を使用し、作動させることから生じるイオン強度に関する情報をメモリ29に記憶する。
【0027】
制御システム22は、フィラメント電源52へ出力53から制御信号を送ることにより、フィラメント48をオフにし、フィラメント49をオンにする。フィラメント48に対して使用したのと同じ組の作動パラメータのもとでフィラメント49を使用し、質量スペクトロメータ10を作動させ、フィラメント49からの電子に応答してイオン容積部38内の同じサンプル検体から生じるイオン強度を決定する。フィラメントの切り換え時に、後に使用するよう、同じ組の作動パラメータのもとでフィラメント49を使用して作動させることから生じたイオン強度に関係する情報をメモリ29に記憶する。
【0028】
フィラメント48および49の評価の後に、未知の材料のサンプルに対して分析作業をするよう、質量スペクトロメータ10を作動させることができる。制御システム22は、フィラメント48をオンにし、フィラメント48に関連する記憶された組の作動パラメータのもとで作動するように、質量スペクトロメータ10を構成する。質量スペクトロメータ10は、前に説明したように未知の各材料の質量スペクトルを発生する。フィラメント48を用いて問題が検出されるまで、質量スペクトロメータ10はフィラメント48を使用した作動を続ける。
【0029】
サンプル作業中にフィラメント48によりある問題、例えばフィラメントのバーンアウト状態が検出されると、フィラメント電源52は、このことを制御システム22へ表示する。制御システム22は、電流スキャンを停止し、この問題をオペレータに通知する。オペレータは、マニュアルでフィラメント49に切り換えるか、または制御システム22が自動的にフィラメント49に切り換えることにより、電流のスキャンを再び開始し、フィラメント49に関する質量スペクトロメータ10の再較正をすることなく、既に進行中のサンプルに対する作業を続行できる。この制御システム22は、切り換え後のフィラメント49の性能が切り換え前のフィラメント48の性能に対して正規化されるよう、作動パラメータのうちの1つ以上を調節するよう記憶されている情報を使用するソフトウェアプログラムを制御システム22が実行する。すなわち切り換え後のフィラメント49を使用して作動させることから生じたイオン強度は、実質的に切り換え前のフィラメント48を使用して作動させることから生じたイオン強度と同じになる。従って、質量スペクトロメータ10は、再較正することなく、フィラメント48を使用した作動時に発生したデータと一貫性があり、かつ正確なデータを発生できる。
【0030】
前に説明したように、制御システム22は、質量スペクトロメータ10の種々のコンポーネントで制御する種々の出力を含む。調節できるパラメータの1つとして、電子ゲート56を制御する信号のデューティサイクルがある。制御システム22は、デューティサイクルを調節し、イオン容積部38への電子の流量を変え、よってイオン容積部内で生じるイオン強度を変えることができる。デューティサイクルとイオン強度との間の関係は、実質的に線形である。従って、デューティサイクルの所定の変化に対するイオン強度の効果を容易に予測できる。前に説明した記憶されている情報を使用し、切り換え後、フィラメント49を使用して作動させることから生じるイオン強度が、切り換え前のフィラメント48を使用して作動させることから生じるイオン強度と一致するようにデューティサイクルを調節できる。従って、既に進行中のサンプル分析作業を続けるよう、フィラメント49を使って質量スペクトロメータ10を作動させることができる。このアプローチ方法を使ってフィラメントの変更を自動的に行う場合、あるフィラメントを使用する作動から別のフィラメントを使用する作動への切り換えを、2〜3秒程度の短い時間で行うことができる。
【0031】
上記実施形態では、電子ゲート56に対して使用されるデューティサイクルは、質量スペクトロメータ10の適当なチューニングを行うよう(すなわち種々の異なる質量を利用するイオンを適正に検出するよう)、質量のレンジにわたって変化する。より詳細には、質量の全レンジはいくつかの異なる質量レンジに分割されており、各質量レンジに対して使用されるデューティサイクルは、他の質量レンジに対して使用されるデューティサイクルと変わり得る。作動時に、質量分析器14は、検出器24によって検出できるよう、低から高へ、または高から低へ、質量のレンジにわたってイオンをスキャンする。質量分析器は、各質量レンジから次の質量レンジに移る際に、電子ゲート56に対して使用されるデューティサイクルを変更する。デューティサイクルと質量レンジの間の関係を示す波形またはプロフィルを決定し、メモリ29に記憶する。システムがフィラメント48およびフィラメント49を評価するときに、各フィラメントに対してシステムがセーブする情報は、質量レンジの各々に固有の情報を含む。フィラメント48からフィラメント49に切り換わる必要があるとき、システムは、質量レンジの各々に対して別々に正規化を行うことができるので、切り換え直後の各質量レンジ内のイオンの発生は、切り換え直前のその質量レンジ内のイオンの発生と等価的である。
【0032】
これまでの説明では、フィラメント49はフィラメント48の性能と同じ性能を有することができると仮定した。しかしながら、実際問題としてフィラメント48は、フィラメント49の最大性能を超える性能レベルとなることができ、このため、フィラメント49のためのデューティサイクルを最大値(例えば100%)まで調節しても、フィラメント48の性能に対してフィラメント49の性能を正規化するにはこのような調節でも十分でなくなるような状況があり得る。換言すれば、フィラメント49によって生じさせることができる最大イオン強度は、フィラメント48によって生じる最大イオン強度よりも低くなり得る。従って、2つのフィラメントの初期評価が、このタイプの状況を明らかにした場合、フィラメント48がフィラメント49で発生できる強度よりも大きいイオン強度を発生できないよう、フィラメント48に対する制御を設定できる。
【0033】
フィラメントが経年変化するか、および/またはイオンソース12が前のサンプル作業からの堆積物を発生するので、フィラメント48を用いて作動させることから生じるイオン強度は、時間経過と共に変化し得る。作動条件の変化に起因し、フィラメント49を用いて作動させることから生じるイオン強度も変化し得る。従って、フィラメント48と49の相対的性能を周期的に測定し、フィラメントに関連する記憶情報をメモリ29で更新する。この更新情報は、質量スペクトロメータ10の作動条件の時間に対する変化を補償するものである。これら周期的な測定は、質量スペクトロメータ10の周期的な自動チューニング中に実行できる。この方法とは異なり、イオン強度、例えばバックグラウンドイオン強度を見ることにより、クロマトグラフィー作業前に時間毎に測定を実行してもよい。従って、フィラメントを切り換えた後に制御システム22はフィラメント48およびフィラメント49の最近測定された相対的性能を示す記憶情報を利用する。
【0034】
フィラメントの一方または双方の性能を周期的に評価する間にフィラメント48または49のいずれかを用いた場合の潜在的な問題を検出できる。例えばフィラメント48の性能は、時間経過と共に劣化するので、同じレベルの放出電流を発生するのに必要なフィラメント電流の量は変化する。このフィラメントは、バーンアウト条件が間もなく生じることが明らかとなるポイントに到達し得る。例えばフィラメント48の測定された性能が、前に測定された性能と比較して大きな変化を示すことがある。かかる条件の検出に応答し、制御システム22はフィラメント48が故障する前に、この時点でフィラメント48からフィラメント49への切り換えを行うことができる。この方法とは異なり、制御システム22は潜在的な問題があることを質量スペクトロメータ10のオペレータに通知してもよい。するとオペレータは、この時点でフィラメントを切り換えることを選択し、良好なフィラメント49を用いた作動を続け、その後、定期的にスケジュールが決められたメンテナンス中に不良なフィラメント48を修理または交換できる。これとは異なり、オペレータは、早期の最も都合のよい時期に不良なフィラメント48を新しいフィラメントに交換することを選択してもよい。かかる交換の後に、質量スペクトロメータは、新しいフィラメントと良好なフィラメント49との相対的性能を評価し、その後、フィラメント切り換え時の正規化のために後に使用できる情報を記憶する。
【0035】
図2は、図1の質量スペクトロメータ10を作動させるための上記方法を番号200で示すフローチャートである。この方法200は、ブロック202でスタートし、このブロック202では、第1電子放出器(例えばフィラメント48)を用いて質量スペクトロメータ10を作動させながら、第1の性能特性(例えばイオン強度)を決定する。この方法200は、ブロック204に進み、このブロック204では第1性能特性に関連し、第1情報(例えば特定の組の作動パラメータのもとでフィラメント48を用いて作動させることから生じたイオン強度)を記憶する。
【0036】
方法200は、次にブロック206まで進む。このブロック206において、第1電子放出器に対して使用した同じ作動パラメータのもとで第2電子放出器(例えばフィラメント49)を用いて質量スペクトロメータ10を作動させながら、第2性能特性(例えばイオン強度)を決定する。次にこの方法は、ブロック208まで進み、このブロックで、第2性能に関連する第2情報(例えば同じ組の作動パラメータのもとでフィラメント49を用いて作動させたことから生じたイオン強度)を記憶する。次に方法200はブロック210へ進み、このブロックで第1電子放出器を使用した作動から第2電子放出器を使用した作動までの切り換えを行う。この切り換えは、第1電子放出器の性能に対する切り換え後の第2電子放出器の性能を正規化するために、第1情報および第2情報を使用すること(例えばゲート56に対するデューティサイクルを指定する作動パラメータを調節すること)を含む。
【0037】
別の実施形態では、調節される作動パラメータを電子ゲート56に対するデューティサイクルの代わりに、フィラメントの放出電流とすることができる。前に説明したように、制御システム22は、アクティブなフィラメント(ターンオンされているフィラメント)にフィラメント電流を供給するフィラメント電源52を制御する出力53を含む。フィラメントは、フィラメント電流によって附勢されると、あるレートで電子(放出電流と称される)を放出する。この放出電流は、センサ60によって測定され、制御システム22に情報が送られる。制御システム22は放出電流を変え、よってイオン容積部38までの電子の流量を変えるようにフィラメント電流を調節できる。フィラメント電流と放出電流との関係は、非線形であるので、フィラメント電流とイオン強度との関係も非線形である。従って、所望するイオン強度を得るには、フィラメント電流を調節する繰り返しプロセスを実行し、適当な放出電流および、従って適当なレベルのイオンを発生させ、これを維持しなければならない。
【0038】
別の実施形態では、調節する作動パラメータを、電子ゲート56に対するデューティサイクルではなく、電子レンズ58の電子レンズ電圧とする。上記のように、この電子レンズ58は、制御システム22の出力59によって制御される。電子レンズ58は、放出された電子の流れをイオン容積部38に向けて調節自在に合焦するよう、イオン容積部38に対して正のバイアスがかけられている。制御システム22は、電子レンズ電圧を調節し、電子の移動の方向、従ってイオン容積部38に到達する放出された電子の割合を変えることができ、その割合は、次にイオン容積部内で生じるイオン強度を変える。電子レンズの電圧とイオン強度の間の関係は、非線形であるので、所望するイオン強度を得るための電子レンズ電圧を調節する繰り返しプロセスを実行できる。
【0039】
別の実施形態では、調節される作動パラメータを、電子ゲート56に対するデューティサイクルではなく、磁界発生器64によって発生される磁界とする。上記のように、制御システム22は、磁界発生器64を制御する出力66を含む。磁界はイオン容積部38に向かって流れる電子のストリームのコリメート化の程度に影響を与える。制御システム22は、イオン容積部38に達する放出電子の割合を変え、よってイオン容積部内で発生されるイオン強度を変えるように磁界を調節できる。磁界とイオン強度との間の関係は非線形であるので、所望するイオン強度を得るための磁界を調節する繰り返し方法を実行できる。
【0040】
更に別の実施形態では、調節される作動パラメータを、電子ゲート56のためのデューティサイクルではなく、検出器24の利得とする。上記のように検出器24は、制御システム22から送られる利得制御信号に応答して変化する利得を有する。従って、制御システム22は、検出器24の利得を調節でき、よってイオン強度の検出される値を変えることができる。利得制御信号と検出器24の利得との関係は、検出器24に対する所定の利得曲線によって特定される。このように、イオン強度の所望する検出値を得るための利得曲線に従って利得を正確に調節できる。
【0041】
別の実施形態では、調節される作動パラメータを、質量分析器14および検出器24から受信されるデータをスケーリングするために、DSP28によって使用されるスケーリング率とする。上記のように制御システム22は、検出器24からのデータを処理するソフトウェアプログラムを含む。このデータは、検出器24が検出するイオン強度を示す値を含む。制御システム22は、このデータを受信し、処理し、サンプル材料の質量スペクトルを発生する。ソフトウェアプログラムは、検出器24からのデータをスケーリングするのに使用されるスケーリング率を含む。従って、制御システム22は、スケーリング率を調節でき、よって検出されるイオン強度の値を変えることができる。スケーリング率を調節することにより、イオン強度の値に対する線形効果が生じる。
【0042】
上記実施形態の各々は、フィラメントを切り換えるときにイオン強度を正規化するのに、1つの作動パラメータを使用しているが、同様な結果を得るために、上記とは異なり、作動パラメータの種々の組み合わせも使用できると理解できよう。例えば、所望するイオン強度を得るために、電子ゲートに対するデューティサイクルと検出器の利得とを組み合わせて調節することが既に考えられている。更に、種々の作動パラメータの各々は、質量に依存し得る。すなわち換言すれば、種々の作動パラメータの各々は上記のように電子ゲートのデューティサイクルに対し、異なるレンジの質量で異なる値を有する。従って、フィラメントを切り換える時に質量の全レンジにわたって生じるイオン強度を正規化するのに、各質量レンジに対して所定の作動パラメータを独立して調節できる。更にフィラメントの性能を正規化するのに、他の性能特性も使用できる。例えば、イオン容積部までの電子の流量を決定するのフィラメントの電子放出特性を使用できる。従って、双方のフィラメントを用いた作動により生じる電子の流量の結果、同じレベルのイオンが発生し、よってフィラメント切り換え時に再較正しなくても、質量スペクトルメータの作動が正確で一貫したデータを発生するように1つ以上の作動パラメータを調節(コンフィギュア)できる。
【0043】
更に、フィラメントの相対的性能を測定するたびに、正規化率を決定できる。この正規化率は他のフィラメントの性能に対するあるフィラメントの性能を正規化するのに必要な(複数の作動パラメータのうちの1つの)調節率を示す。従って、制御システムはフィラメントの切り換え時にこの正規化率を使用し、作動パラメータのうちの1つ以上を調節できる。
【0044】
以上で数種の実施形態について詳細に図示し、説明したが、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、種々の置換および変更が可能であることが理解できよう。例えばこれまで示し、説明した2フィラメント構造の代わりに、2つ以上のフィラメントを有するイオンソースを用いて、開示した方法を実施できると理解すべきである。すなわちアクティブなフィラメントが燃え尽きても(バーンアウトしても)冗長性を提供するように、3つ、4つ、5つまたは任意の数のフィラメントを互いに隣接した状態に設置でき、各フィラメントに対し、イオン強度が実質的に同じままとなるようにフィラメントの各々を評価し、パラメータを記憶する。更に、フィラメントは互いに異なっていてもよい。例えば、1つのフィラメントをヘアピン構造とし、他方のフィラメントをコイル構造としてもよいし、または1つのフィラメントをレニウム製とし、他方のフィラメントをタングステン製としてもよい。
【0045】
更に、これまで図示し、説明したように、イオン容積部の一方の同じ側に2つのフィラメントが配置されて質量スペクトルメータではなく、イオン容積部の両側にフィラメントが配置されている質量スペクトロメータでも上記方法を実施できる。例えば追加されるフィラメントアセンブリおよび電源、電子ゲート、電子レンズ、電子入口ポートおよびその他のコンポーネントが存在していてもよい。この場合、制御システムは上記のように同じ結果を得るのに、各フィラメントのためにそれぞれのコンポーネントを制御するように構成される。
【符号の説明】
【0046】
10 質量スペクトロメータ
12 イオンソース
14 質量分析器
16 ガスクロマトグラフ
18 試薬ガスソース
20 真空ソース
22 制御システム
24 検出器
26 ガスクロマトグラフカラム
28 デジタル信号プロセッサ
29 メモリ
30,32 出力
34 ライン
36 ハウジング
38 イオン容積部
39,40 開口部
4 ガス供給導管
42 バルブ
43 出力
44 ガス入口ポート
46 電子ソース
47 フィラメントアセンブリ
48,49 フィラメント
50 仮想線
51 ターゲットロケーション
52 フィラメント電源
54,55 出力
56 電子ゲート
57 出力
58 電子レンズ
59 出力
60 電子放出センサ
62 ライン
64 磁界発生器
66 出力
68 レンズ要素
70 出力
71 制御ライン
72 イオン移動パス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電子放出器および第2電子放出器を有する質量スペクトロメータを作動させるための方法であって、
前記第1電子放出器を用いて前記質量スペクトロメータを作動させながら、第1性能特性を決定するステップと、
前記第1性能特性に関連する第1情報を記憶するステップと、
前記第2電子放出器を用いて前記質量スペクトロメータを作動させながら、第2性能特性を決定するステップと、
前記第2性能特性に関連する第2情報を記憶するステップと、
その後、前記第1電子放出器を使用する作動から、前記第2電子放出器を使用する作動へ切り換えるステップと、を備え、この切り換えるステップは、切り換え前の前記第1電子放出器の性能に対して切り換え後の前記第2電子放出器の性能を正規化するよう、前記第1情報および前記第2情報を使用することを含む、質量スペクトロメータを作動させるための方法。
【請求項2】
前記質量スペクトロメータは、イオン容積部を含み、前記第1電子放出器および前記第2電子放出器は、前記イオン容積部へ電子を供給するように配置されており、
前記第1性能特性を決定するステップは、前記質量スペクトロメータが第1作動パラメータで作動中に、前記第1電子放出器からの電子に応答し、前記イオン容積部内の材料から生じる第1イオン強度を決定することを含み、
前記第1情報を記憶するステップは、前記第1イオン強度と前記第1作動パラメータとの関係に関連する情報を記憶することを含み、
前記第2性能特性を決定するステップは、前記質量スペクトロメータが第2作動パラメータで作動中に、前記第2電子放出器からの電子に応答し、前記イオン容積部内の材料から生じる第2イオン強度を決定することを含み、
前記第2情報を記憶するステップは、前記第2イオン強度と前記第2作動パラメータとの関係に関連する情報を記憶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記質量スペクトロメータは、ゲート部分を含み、このゲート部分は、第1信号のデューティサイクルの変化に応答し、前記第1イオン放出器から前記イオン容積部への電子の流れを変えると共に、第2信号のデューティサイクルの変化に応答し、第2電子放出器から前記イオン容積部への電子の流れを変えるようになっており、
前記第1信号のデューティサイクルを指定するよう、前記第1作動パラメータをコンフィギュアするステップと、
前記第2信号のデューティサイクルを指定するよう、前記第2作動パラメータをコンフィギュアするステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1質量対電荷比およびこの第1質量対電荷比と異なる第2質量対電荷比を含む質量対電荷比のレンジにわたってイオンを分析するステップと、
前記質量分析器が前記第1の質量対電荷比を有するイオンを分析しているときに、前記第1信号のデューティサイクルを第1の値に設定すると共に、前記質量分析器が前記第2質量対電荷比を有するイオンを分析しているときに、前記第1信号のデューティサイクルを前記第1の値と異なる第2の値に設定するステップと、
前記質量分析器が前記第1の質量対電荷比を有するイオンを分析しているときに、前記第2信号のデューティサイクルを第3の値に設定すると共に、前記質量分析器が前記第2質量対電荷比を有するイオンを分析しているときに、前記第2信号のデューティサイクルを前記第3の値と異なる第4の値に設定するステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1電子放出器および前記第2電子放出器は、それぞれ第1フィラメントおよび第2フィラメントを含み、
前記質量スペクトロメータは、前記第1フィラメントへ第1フィラメント電流を選択的に供給すると共に、前記第2フィラメントへ第2フィラメント電流を選択的に供給するための電源を含み、
前記第1フィラメント電流を指定するよう、前記第1作動パラメータをコンフィギュアするステップと、
前記第2フィラメント電流を指定するよう、前記第2作動パラメータをコンフィギュアするステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記質量スペクトロメータは、第1信号に応答し、前記第1電子放出器からの電子を前記イオン容積部内に選択的に合焦すると共に、第2信号に応答し、前記第2電子放出器からの電子を前記イオン容積部内に選択的に合焦するための電子レンズ部分を含み、
前記第1信号を指定するよう、前記第1作動パラメータをコンフィギュアするステップと、
前記第2信号を指定するよう、前記第2作動パラメータをコンフィギュアするステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記質量スペクトロメータは、前記第1電子放出器から前記イオン容積部への前記電子の流れに影響する磁界を発生するよう、第1信号に応答自在であり、かつ前記第2電子放出器から前記イオン容積部への前記電子の流れに影響する磁界を発生するよう、第2信号に応答自在な磁界発生器を含み、
前記第1信号を指定するよう、前記第1作動パラメータをコンフィギュアするステップと、
前記第2信号を指定するよう、前記第2作動パラメータをコンフィギュアするステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記質量スペクトロメータは、前記イオン容積部内で生じるイオン強度を検出するための検出器を含み、前記検出器は、利得制御電圧に応答して変化する利得を有し、
前記第1性能特性を決定している間に使用される利得制御電圧を指定するよう、前記第1作動パラメータをコンフィギュアするステップと、
前記第2性能特性を決定している間に使用される利得制御電圧を指定するよう、前記第2作動パラメータをコンフィギュアするステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン容積部からのイオンの強度を検出するステップを含み、
前記質量スペクトロメータは、あるスケーリング率を使用し、前記検出されたイオン強度をスケーリングするデジタルプロセッサを含み、
前記第1性能特性を決定中に使用される前記スケーリング率を指定するよう、前記第1作動パラメータをコンフィギュアするステップと、
前記第2性能特性を決定中に使用される前記スケーリング率を指定するよう、前記第2作動パラメータをコンフィギュアするステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記第1電子放出器を用いて前記質量スペクトロメータを作動させることによって生じる前記第1性能特性の時間に対する変化を決定するステップと、
前記変化を補償する態様で、前記第1情報および前記第2情報のうちの1つを更新するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1情報および前記第2情報の双方に対して更新を実行する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記質量スペクトロメータが標準値の許容可能な限度内で作動しているかどうかを評価するチューニングプロセス中に、前記変化を決定するステップを実行する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記質量スペクトロメータのバックグラウンドイオン強度を分析することにより、クロマトグラフィ作業を実施する前に前記変化を決定するステップを実行する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記切り換えステップ直後の作動中の前記第2電子放出器から、前記イオン容積部内への電子の流れのレートにより生じるイオン発生レベルが、前記切り換えステップ直前の作動中の前記第1電子放出器から前記イオン容積部内への電子の流れのレートによって生じるイオン発生レベルと実質的に同じとなるよう、前記第2電子放出器の性能を正規化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2電子放出器に対し、前記質量スペクトロメータを再較正することなく、前記切り換えを行う、請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1電子放出器を用いた場合の問題を検出するステップを更に備え、
前記問題が検出されたときに、前記切り換えを行う、請求項1〜15のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
イオン容積部を構成する構造体と、
前記イオン容積部へ、各々が電子を選択的に供給できる第1電子放出器および第2電子放出器と、
コントローラとを含む質量スペクトロメータを備え、前記コントローラは、
前記第1電子放出器を用いて前記質量スペクトロメータを作動させながら、第1性能特性を決定し、
前記第1性能特性に関連する第1情報を記憶し、
前記第2電子放出器を用いて前記質量スペクトロメータを作動させながら、第2性能特性を決定し、
前記第2性能特性に関連する第2情報を記憶し、
その後、前記第1電子放出器を使用する作動から、前記第2電子放出器を使用する作動へ切り換えるようになっており、この切り換えは、切り換え前の前記第1電子放出器の性能に対して切り換え後の前記第2電子放出器の性能を正規化するよう、前記第1情報および前記第2情報を使用することを含む、装置。
【請求項18】
前記第1性能特性は、前記質量スペクトロメータが第1作動パラメータで作動中に前記第1電子放出器からの電子に応答し、前記イオン容積部内の材料から生じる第1イオン強度を含み、
前記第1情報は、前記第1イオン強度と前記第1作動パラメータとの関係に関連する情報を含み、
前記第2性能特性は、前記質量スペクトロメータが第2作動パラメータで作動中に前記第2電子放出器からの電子に応答し、前記イオン容積部内の材料から生じる第2イオン強度を含み、
前記第2情報は、前記第2イオン強度と前記第2作動パラメータとの関係に関連する情報を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記質量スペクトロメータは、ゲート部分を含み、このゲート部分は、第1信号のデューティサイクルの変化に応答し、前記第1イオン放出器から前記イオン容積部への電子の流れを変えると共に、第2信号のデューティサイクルの変化に応答し、第2電子放出器から前記イオン容積部への電子の流れを変えるようになっており、
前記第1作動パラメータは、前記第1信号のデューティサイクルを指定し、
前記第2作動パラメータは、前記第2信号のデューティサイクルを指定する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記質量スペクトロメータは、第1質量対電荷比およびこの第1質量対電荷比と異なる第2質量対電荷比を含む質量対電荷比のレンジにわたってイオンを分析するための質量分析器を含み、
前記第1信号のデューティサイクルは、前記質量分析器が前記第1の質量対電荷比を有するイオンを分析しているときの第1の値および前記質量分析器が前記第2質量対電荷比を有するイオンを分析しているときの前記第1の値と異なる第2の値であり、
前記第2信号のデューティサイクルは、前記質量分析器が前記第1の質量対電荷比を有するイオンを分析しているときの第3の値および前記質量分析器が前記第2質量対電荷比を有するイオンを分析しているときの、前記第3の値と異なる第4の値であり、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラは、
前記第1電子放出器を用いて前記質量スペクトロメータを作動させることによって生じる前記第1性能特性の時間に対する変化を決定し、
前記変化を補償する態様で、前記第1情報および前記第2情報のうちの1つを更新するようになっている、請求項17〜20のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記コントローラは、前記第1情報および前記第2情報の双方を更新することを含む態様で、前記更新を実行するようになっている、請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−511428(P2011−511428A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545952(P2010−545952)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/032977
【国際公開番号】WO2009/100073
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】