電子デバイスでの使用に適した電気化学セル
正極、負極および電解質を有する携帯用電子デバイス用の電気化学セルであって、少なくとも正極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする電気化学セルを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池またはスーパーキャパシタもしくはその両方であり得る新規の電気化学セルであって、携帯用電子デバイスおよびその他の電子デバイスでの使用に適した電気化学セルに関する。特に、断面が約10−8〜10−9mの実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス材料で形成された正極を少なくとも有する電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
「電池」という用語は、本明細書中では、その活性成分中に含まれる化学エネルギーをレドックス(酸化−還元)反応によって直接電気エネルギーに変換するデバイスの一般的な意味で使用されることに留意すべきである。電池の基本単位は電気化学セルであり、該セルは、少なくとも、正極、負極および電解質を含み、全てがケーシング内に格納される。当該技術分野でよく知られているように、セパレータなどのその他の構成要素が含有されてもよい。電池は、1つまたは複数のこのようなセルからなることができる。
【0003】
多くの携帯用電子デバイスは、はるかに高いパワードレインのスパイクまたはサージが点在する比較的低レベルの定常流で、パワーが利用可能であることを必要とする。ほとんどの従来の電池はこれらの要件を満たすことができず、従って、デバイスにより必要とされない場合にはパワーを蓄え、必要とされるときにパワーを放出するキャパシタまたはスーパーキャパシタで補完され得る。このタイプのパワー要件を有するデバイスの例としては、ノート型コンピュータ、携帯電話、PDA(携帯情報端末、すなわちマイクロコンピュータ)、除細動器などがある。しかしながら、このような携帯用デバイスでは、携帯性が重視され、携帯性は重量および大きさの両方の関数である。デバイス中のさらに別の装置はどれも必然的にこれらの両方を増大させてデバイスの携帯性を低くし、従ってあまり望ましくない。
【0004】
その結果としてこのような携帯用デバイス中で機能すべき任意の電気化学セルの要件は、高パワー密度および高エネルギー密度の両方を有さなければならないことである。これまでは、妥当なコストでは、これらの密度のうち両方ではなく一方または他方を達成することだけが可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等はここで、例えば、欧州特許第993512号または米国特許第6,203,925号に開示されるメソポーラスフィルムテクノロジーを電気化学セルの一方または両方の電極の製造に適用させることができ、その結果得られる電池、キャパシタあるいはその両方として機能し得る電気化学セルが、高パワー密度および高エネルギー密度の両方を有するように設計可能であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、例えば携帯用電子デバイスに用いられ、正極、負極および電解質を有する電気化学セルであって、少なくとも正極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする電気化学セルを提供する。
【0007】
また、本発明は、このような電気化学セルを含む携帯用電子デバイスを提供する。
【0008】
またさらに、本発明は、本発明の複数の電気化学セルを含む自動車用電池を提供する。
【0009】
本発明の電気化学セルは、電池として、スーパーキャパシタとして、あるいは結合型電池/スーパーキャパシタとして機能するように構成することができる。図1の概略図に示されるように、例えば、メソポーラス正極および負極を有するスーパーキャパシタは、例えばNi(OH)2のメソポーラス正極と、例えばパラジウムの水素吸収メソポーラス負極との間のプロトンの往復移動メカニズムにより動作する。メカニズムは、Ni−MH電池における動作メカニズムと同様であり、この場合、パラジウムはLaNi5などの別の水素吸収材料に置き換えられる。
【0010】
本発明の電気化学セルを含有することができる携帯用電子デバイスの例としては、いわゆるノート型コンピュータ、デスクトップ代替コンピュータ、ウルトラポータブルコンピュータなどを含む携帯用コンピュータ(本発明は、ウルトラポータブルコンピュータなどのより小型バージョンで特に価値がある)と、携帯電話と、コードレス(ランドライン)電話と、PDAと、携帯用ハードディスクドライブと、CDプレイヤー、カセットプレイヤー、ミニディスクプレイヤー、ならびにMP3および同様のソフトウェアに基づく音楽プレイヤーを含むその他のデジタル記録音楽プレイヤーを含む様々な種類の音楽プレイヤーと、携帯用テレビと、携帯用DVDプレイヤーと、携帯用ラジオと、PDA/携帯電話、電話/音楽プレイヤー、ハードディスクストレージ/音楽プレイヤーなどのハイブリッドデバイス(すなわち、以前は別々だった2つ以上の機能を果たすデバイス)と、除細動器などのメディカルデバイスとが挙げられる。
【0011】
本発明の電気化学セルは、自動車用電池においても使用することができる。
【0012】
上記のデバイスは全て、本質的にランダムな間隔ではるかに高いパワーに対する周期的な要求が点在する比較的低レベルのパワーの定常的な供給を必要とする。従って、これらは、本発明の電気化学セルと共に使用するのに特に適している。これらのデバイスの設計および構成の詳細はよく知られており、本発明に従う電気化学セルを組み込むことのほかは本発明の一部を形成しない。
【0013】
本発明の電気化学セルの少なくとも正極、陰極は、メソポーラス材料で形成される。材料は、好ましくは、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、またはこれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせである。このような金属の例としては、ニッケルと、遷移金属との合金、ニッケル/コバルト合金および鉄/ニッケル合金を含むニッケル合金と、コバルトと、白金と、パラジウムと、ルテニウムとが挙げられる。このような酸化物、水酸化物およびオキシ水酸化物の例としては、酸化金、酸化パラジウム、酸化ニッケル(NiO)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、および酸化ルテニウムが挙げられる。これらのうち、ニッケルならびにその酸化物および水酸化物が最も好まれる。
【0014】
当該技術分野ではよく知られているように、これらの材料のうちのいくつかは、使用する前に「コンディショニング」を必要とする。これは、当該技術分野では従来どおりであるように、セルに数回の充電および放電サイクルを受けさせることによって達成され得る。このようなコンディショニングを必要とする典型的な材料はニッケルであり、コンディショニングの結果、酸化物の表面層を得ることができる。
【0015】
本発明の電気化学セルの負極、陽極を製造するために使用される材料の性質に対する制限はなく、製造すべきセルの化学的性質を考慮して任意の材料を使用することができる。適切な材料の例としては、炭素、カドミウム、鉄、パラジウム/ニッケル合金、鉄/チタン合金、パラジウム、または混合金属水素化物、例えばLaNi5Hxがある。これらの材料は、好ましくは多孔質であり、より好ましくはメソポーラスである。これらのうちで好ましい材料は、炭素およびパラジウムである。しかしながら、メソポーラスパラジウムは、そのコストが高いために、低コスト用途では好ましい負極材料ではない。
【0016】
陽極および陰極の好ましい組み合わせは、ニッケル/パラジウム、ニッケル/炭素、ニッケル/鉄およびニッケル/カドミウムであり、このうちニッケル/炭素が最も好ましい。ニッケルに言及する場合、その酸化物および水酸化物も含まれる。
【0017】
特に、正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、酸化または水酸化ニッケルが、上記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも細孔表面上に延在し、負極が、ナノ粒子状の炭素を含むことが好ましい。
【0018】
従って、好ましくは、正極および負極はそれぞれ、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含む。正極および負極(負極もメソポーラスであれば)は定義されたメソポーラス構造(単数または複数)からなるか、または実質的に、定義されたメソポーラス構造(単数または複数)からなる。
【0019】
「メソポーラス構造」、「メソポーラス材料」および「メソポーラスフィルム」とは、本明細書で言及される場合、液晶テンプレートプロセスにより製造され、その結果、モノリシックな性質であり、画定されたトポロジーおよび実質的に均一な細孔径(直径)を有する細孔の長距離にわたる規則的な配列を含有する構造、材料およびフィルムをそれぞれ意味する。従って、メソポーラス構造、材料およびフィルムは、ナノ構造化されているか、またはナノアーキテクチャーを有すると説明することもできる。
【0020】
従って、本発明に従って使用されるメソポーラス材料は、結晶化が低い材料、ならびに別個のナノサイズの固体粒子を有する複合材料、例えば、ナノ粒子の凝集体で構成される従来「ナノ材料」と示されるものとは区別される。
【0021】
ナノ材料と比較して、メソポーラス材料を使用する利点は、メソポーラス材料内の電子の輸送が粒界抵抗に遭遇せず、優れた電子伝導性を与えると共に、この現象に関連するパワー損失を排除することである。さらに、ここで使用されるメソポーラス材料の規則正しい多孔質は、連続的かつ比較的直線的である均一な直径の非蛇行性流路を提供し、高速かつ妨害されない電解質種の移動を促進する。対照的に、従来のナノ粒子系は乱雑な多孔質を有し、この多孔質は、より狭いボイド間の空間により相互接続された様々な断面のボイドを有する。そのようなものでは、細孔構造内を移動する物質はかなり蛇行性の通路に遭遇し、反応速度が遅くなる。
【0022】
メソポーラス材料は、好ましくは、実質的に一定の厚さを有するフィルム形態である。好ましくは、メソポーラスフィルムの厚さは、0.5〜5マイクロメートルの範囲である。
【0023】
好ましくは、メソポーラス材料は、約1〜10ナノメートルの範囲内、より好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内の細孔直径を有する。
【0024】
メソポーラス材料は、1×1010〜1×1014細孔/cm2、好ましくは4×1011〜3×1013細孔/cm2、より好ましくは1×1012〜1×1013細孔/cm2の範囲の細孔数密度を示し得る。
【0025】
メソポーラス材料は、実質的に均一な大きさの細孔を有する。「実質的に均一」とは、少なくとも75%、例えば80%〜95%の細孔が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内の細孔直径を有することを意味する。より好ましくは、少なくとも85%、例えば90%〜95%の細孔が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内の細孔直径を有する。
【0026】
細孔は、好ましくは、断面が円筒型であり、メソポーラス材料の全体にわたって存在または延在するのが好ましい。
【0027】
メソポーラス構造は、画定された認識可能なトポロジーまたはアーキテクチャー(例えば、立方晶、層状、斜交、面心矩形(centred rectangular)、体心斜方晶、体心正方晶、菱面体晶、六方晶)を有する細孔の周期的な配列を有する。好ましくは、メソポーラス構造は六方晶系の周期的な細孔配列を有し、この場合電極は、均一な直径を有すると共に電極の厚さを貫通して連続的であり且つ六方晶系に配向された多数の細孔によって穿孔される。
【0028】
細孔配列が六方晶系である好ましい場合には、細孔の配列は、好ましくは3〜15nmの範囲、より好ましくは5〜9nmの範囲である、細孔の中心から中心までの間隔に相当する規則的な細孔周期性を有する。
【0029】
さらに、この規則的な周期性および実質的に均一な細孔径を有するメソポーラス構造は、平均細孔径の少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約100倍の電極部分上に延在すべきである。好ましくは、電極は定義された構造(単数または複数)からなるか、または実質的に、定義された構造(単数または複数)からなる。
【0030】
これらの細孔トポロジーが理想的な数学的トポロジーに限定されるのではなく、フィルム内の細孔の空間的配列に、認識可能なアーキテクチャーまたはトポロジー秩序が存在するという条件で、これらのトポロジーのひずみまたはその他の変更を含み得ることは認識されるであろう。従って、本明細書で使用される「六方晶」という用語は、実測の制限内で数学的に完全な六方晶の対称性を示す材料だけでなく、ほとんどのチャネルが、実質的に同じ距離で、平均6本の最も近い隣接チャネルで包囲されるという条件で、理想状態からの顕著に観察可能な偏差を有する材料も包含する。同様に、本明細書で使用される「立方晶」という用語は、実測の制限内で立方晶の空間群に属する数学的に完全な対称性を示す材料だけでなく、ほとんどのチャネルが2〜6本の他のチャネルと接続するという条件で、理想状態からの顕著に観察可能な偏差を有する材料も包含する。
【0031】
セル中の電解質は、好ましくは、水系電解質、例えば水酸化カリウム水などの水系アルカリ電解質である。
【0032】
好ましい実施形態では、正極のメソポーラス構造は、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、上記酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルは、上記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも細孔表面上に延在し、負極は、炭素またはパラジウムのメソポーラス構造を有する。電解質が充満されると、正極は、電解質と接触するNi(OH)2活物質で被覆された相互接続されたNi集電体ベースで構成される3相複合体を表す。有利に、メソポーラスNi正極の水和構造は、表面およびバルクプロセスの両方が電極の電荷容量に寄与できるように保持される。電極のナノスケール構造のために、3つ全ての相は互いに緊密に接触するか、あるいは約1〜2nm内にあり、「相境界」の総表面積は極めて大きい。従って、高エネルギー密度を達成することができ、小さいプロトン拡散距離は、セルが非常に高いパワー密度を示すことを可能にする。
【0033】
本発明の電気化学セルの正極として、および任意で負極として使用されるメソポーラス材料は、液晶テンプレート法により調製され、好ましくは、リオトロピック液晶相から電気化学析出によって基板上にフィルムとして析出される。またこれらは、リオトロピック液晶相からの化学的還元などの無電解析出によっても調製することができる。
【0034】
適切な基板には、金、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、ロジウムまたはコバルト、もしくはこれらの金属のいずれかまたはリンを含有する合金が含まれる。基板は、所望されるなら、好ましくは1〜20マイクロメートルの範囲の大きさの細孔を有する微孔性であってもよい。基板は、好ましくは、2〜50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。基板は、好ましくは、蒸着により金層が上に形成された金以外の上記の基板である。
【0035】
電気化学析出および化学的手段によりメソポーラス材料をフィルムとして基板上に析出させるための適切な方法は、当該技術分野において知られている。例えば、適切な電気化学析出法は、欧州特許第993,512号公開公報と、Nelson等著「高パワー用途のためのメソポーラスニッケル/酸化ニッケル電極(Mesoporous Nickel/Nickel Oxide Electrodes for High Power Applications)」 J. New Mat. Electrochem. Systems, 5, 63-65 (2002)と、Nelson等著「メソポーラスニッケル/酸化ニッケル−ナノアーキテクチャー化電極(Mesoporous Nickel/Nickel Oxide/a Nanoarchitectured Electrode)」 Chem. Mater., 2002, 14, 524-529とに開示されている。適切な化学的還元法は、米国特許第6,203,925号公開公報に開示されている。
【0036】
好ましくは、メソポーラス材料は、リオトロピック液晶相から電気化学析出により形成される。一般的方法に従って、テンプレートは、一定の長鎖界面活性剤および水からの自己集合により、六方晶相などの所望の液晶相に形成される。適切な界面活性剤にはオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)が含まれ、これは、親水性オリゴエーテルのヘッド基に付着した長い疎水性炭化水素テールを有する。その他には、多分散系界面活性剤Brij(登録商標)56(C16EOn、ここでnは約10である)、Brij(登録商標)78(C16EOn、ここでnは約20である)、およびPluronic123があり、それぞれAldrichから入手可能である。高い(>30%)水溶液濃度では、使用される濃度および温度に依存して、分離した親水性および疎水性ドメインからなる所望のリオトロピック液晶相、例えば六方晶相中で水溶液を安定化することができ、水溶液は親水性ドメインに拘束される。溶解した無機塩、例えば酢酸ニッケルも親水性ドメインに拘束され、溶液中に浸漬された電極で電気還元されて、例えばニッケル金属の固体の中間相を形成することができる。これは、水系ドメイン相構造のダイレクトキャストである。続いて、適切な溶媒中での洗浄による界面活性剤の除去によって、電気還元された固体中に規則的な周期性の多数の細孔が残され、細孔の配列は、選択されるリオトロピック液晶相により決定される。トポロジー、大きさ、周期性およびその他の細孔特性は、当該技術分野において知られるように、界面活性剤、溶媒、金属塩、疎水性添加剤、濃度、温度および析出条件の適切な選択によって変化させることができる。
【0037】
上記のように、メソポーラス電極を製造するメソポーラス材料は、好ましくは、電着または化学析出によって基板上に形成される。メソポーラス材料は、適切な機械強度が不足しているかもしれないので、好ましくは基板上の電極として使用され、便宜上、これはその作製において使用したものと同じ基板であるのが好ましい。
【0038】
本発明は、図面を参照して、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0039】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
[六方晶系の液晶相からの白金の電着]
2.0グラムの水および2.0グラムの水中のヘキサクロロ白金酸水和物に、3グラムのオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)界面活性剤を添加した。均一な混合物が得られるまで、混合物を加熱し、激しく振とうさせた。2ミリクーロンの還元電荷(reduction charge)が通過するまで、標準カロメル電極に対して+0.6ボルトから、標準カロメル電極に対して−0.1ボルトまで電位をステップさせることによって、0.000314平方センチメートルの研磨した金電極上に、25℃〜85℃の温度で、この混合物からの電着を実行した。蒸留水ですすいで界面活性剤を除去した。金属構造を有するフィルムが得られ、これは、透過型電子顕微鏡法による実験で、幅25Å(±2Å)の金属壁で隔てられた25Å(±1.5Å)の内径を有する細孔の六方晶系の配置を有することが分かった。
【0041】
[実施例2]
[六方晶系の液晶相からの白金の電着]
C16EO8の代わりに、より短い鎖長の界面活性剤C12EO8を用いて実施例1のプロセスを実行した。TEMにより決定された細孔の直径は、17.5Å(±2Å)であることが分かった。
【0042】
[実施例3]
[六方晶系の液晶相からの白金の電着]
モル比2:1のC16EO8およびn−ヘプタンを含有する4成分混合物を用いて、実施例1のプロセスを繰り返した。TEMにより決定されるように、細孔の直径は、35Å(±1.5Å)であることが分かった。
【0043】
[実施例4]
[立方晶系の液晶相からの白金の電着]
27重量%のヘキサクロロ白金酸水溶液(水に対して33重量%)および73重量%のオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)から、通常のトポロジーの立方晶相(Ia3d空間群に指標付け)を有する混合物を調製した。白金網対向電極を用いて35℃〜42℃の温度で、研磨した金電極上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。0.8ミリクーロンの電荷が通過するまで、標準カロメル電極に対して+0.6Vから、標準カロメル電極に対して−0.1Vまでセルの電位差をステップさせた。析出後、フィルムを多量の脱イオン水ですすいで、界面活性剤を除去した。洗浄したナノ構造化析出物は均一であり、外観上は光沢があった。透過型電子顕微鏡法の研究で、内径25Åの円筒形の孔の3次元の周期的なネットワークからなる非常に多孔質の構造が明らかになった。
【0044】
[実施例5]
[六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
50重量%の0.2Mの硫酸ニッケル(II)および0.58Mホウ酸の水溶液、ならびに50重量%のオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)から、通常のトポロジーの六方晶相を有する混合物を調製した。白金網対向電極を用いて25℃で、研磨した金電極上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。平方センチメートルあたり1クーロンの電荷が通過するまで、飽和カロメル電極に対して−1.0Vまでセルの電位差をステップさせた。析出後、フィルムを多量の脱イオン水ですすいで、界面活性剤を除去した。洗浄したナノ構造化析出物は均一であり、外観上は光沢があった。電着したスズの小角X線回析の研究により、58Åの格子の周期性が明らかになり、透過型電子顕微鏡法の研究により、厚さ28Åのニッケル壁で隔てられた内径34Åを有する円筒形の孔からなる非常に多孔質の構造が明らかになった。
【0045】
[実施例6]
2.0gのH2O、3.0gのC16EO8、および2.0gのヘキサクロロ白金酸からなる六方晶系の液晶相から、SCEに対して−0.1V(+0.6Vからステップさせた)の析出電位で、25℃で金板電極上での析出を実行した。走査型電子顕微鏡法を用いて破砕サンプルを検査することによって、厚さデータを得た。結果は以下の表1に示される。
【0046】
【表1】
【0047】
[実施例7]
2.0gのH2O、3.0gのC16EO8、および2.0gのヘキサクロロ白金酸からなる六方晶系の液晶相から、ナノ構造化白金フィルムを析出させた。SCEに対して−0.1Vの析出電位(+0.6Vからステップさせた)で、直径0.2mmの金ディスク電極上での析出を実行した。通過した電荷は6.37Ccm−2であった。SCEに対して−0.2V〜+1.2Vの電位限界で、2M硫酸中でのサイクリックボルタンメトリーからデータを得た。粗度係数は、電気化学的な実験から決定される表面積を電極の幾何表面積で除したものと定義される。結果は、以下の表2に示される。
【0048】
【表2】
【0049】
[実施例8]
2.0gのH2O、3.0gのC16EO8、および2.0gのヘキサクロロ白金酸からなる六方晶系の液晶相から、ナノ構造化白金フィルムを析出させた。示した析出電位(+0.6Vからステップさせた)で、直径0.2mmの金ディスク電極上での析出を実行した。通過した電荷は6.37Ccm−2であった。SCEに対して−0.2V〜+1.2Vの電位限界で、2M硫酸中でのサイクリックボルタンメトリーからデータを得た。結果は、以下の表3に示される。
【0050】
【表3】
【0051】
[実施例1〜8の考察]
実施例1〜3のデータは、界面活性剤の鎖長を変化させることによって、あるいは疎水性炭化水素添加剤をさらに添加することによって、細孔直径がどのように制御され得るかを示す。特に、実施例1と実施例2の比較は、鎖長のより短い界面活性剤を用いることにより細孔径が減少され得ることを実証するのに対して、実施例1と実施例3の比較は、析出混合物に炭化水素添加剤を添加することによって細孔径が増大され得ることを示す。
【0052】
実施例6は、電着の間に通過する電荷を変化させることによって、析出フィルムの厚さがどのように制御され得るかを実証する。
【0053】
実施例7および8は、電着の間の温度および印加電位が、フィルムの表面積および二重層キャパシタンスにどのように影響するかを示す。粗度係数値で示されるように、析出温度を上昇させると、フィルムの表面積および二重層キャパシタンスはいずれも増大する。同時に、析出電位も、析出フィルムの表面積およびキャパシタンスを制御するように選択することができる。
【0054】
[実施例9]
[メソポーラスニッケル電極およびメソポーラスパラジウム電極の作製]
[(i)金基板の調製]
エポキシ絶縁体中に封入された金ディスク(直径200μmまたは1mm)と、クロムコートされた顕微鏡用ガラススライド上に金を蒸着することによって製造した薄膜金電極(約1cm2)とを、メソポーラスニッケル電極およびパラジウム電極を次に析出させるために、以下のように調製した。
【0055】
25μm、1μmおよび0.3μmのアルミナ(Buehlerから入手)が埋め込まれたマイクロクロス上でまず連続的に研磨し、次に2MのH2SO4溶液中、200mVs−1で5分間、飽和硫酸水銀の基準電極(SMSE)に対して−0.6V〜1.4Vで電極をサイクルさせることによって、金ディスク電極を清浄にした。各サイクルでは、単層の酸化金が形成され、続いてこれを電極表面から除去した。
【0056】
蒸着させた金電極は、析出の前にイソプロパノールの超音波浴中で60分間清浄にしてから、脱イオン水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させた。
【0057】
[(ii)六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
35重量%の0.2Mの酢酸ニッケル(II)、0.5Mの酢酸ナトリウムおよび0.2Mのホウ酸の水溶液、ならびに65重量%のBrij(登録商標)56非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製し、Nelson等のChem. Mater., 2002, 14, 524-529に開示される方法に従って、白金網対向電極を用いて25℃で、研磨した金基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。析出後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄し、界面活性剤を除去した。六方晶の細孔配列を有する約1マイクロメートル厚のメソポーラスニッケルフィルムが得られた。
【0058】
[(iii)六方晶系の液晶相からのパラジウムの電着]
35重量%の0.5Mのテトラクロロパラジウム酸アンモニウム(Premion、Alfa Aesarから入手)水溶液、および65重量%のBrij(登録商標)56非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。25℃において、パラジウム析出テンプレート溶液中のHI液晶相の存在を、偏光顕微鏡法を用いて確認した。Bartlett等のPhys. Chem. Chem. Phys., 2002, 4, 3835-3842に開示される電着方法に従って、上記の変性テンプレート溶液を使用して、白金網対向電極を用いて25℃で、研磨した金基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。析出後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄して、界面活性剤を除去した。六方晶の細孔配列を有する約1マイクロメートル厚のメソポーラスパラジウムフィルムが得られた。
【0059】
[(iv)電着したメソポーラスNiおよびPd電極の作動]
スーパーキャパシタの組立ての前に、上記の(ii)および(iii)で作製した析出メソポーラス電極を、サイクリックボルタンメトリーにより個々に作動させた。これは、6MのKOH溶液を含有する三電極セルにおいて実行した。セルは、Grant ZDサーモスタット付水浴に接続されたPyrexウォータージャケット付セル、水銀/酸化水銀(6MのKOH)基準電極(Hg/HgO)、および広い面積のPt網対向電極で構成した。全ての実験は25℃で実行した。基準電極を含む実験における電位はHg/HgO基準に対して引用される。
【0060】
メソポーラスニッケル析出プロセスの効率を、アノードストリッピングボルタンメトリーによって定量化した。これには、1mVs−1において、0.2MのHCl溶液中で、メソポーラスニッケル作用電極の電位を、飽和カロメル基準電極(SCE)に対して−0.45V〜0.9Vで走査することが含まれる。対向電極はPt網であった。陽極のニッケルの溶出ピークに関連する電荷、およびこの電荷と析出電荷との比較により、34%の析出効率が与えられた。
【0061】
National Instrumentsのデータ収集カードおよびLabVIEWソフトウェアとインターフェース接続された特注のポテンシオスタットおよびランプ発生器を用いて、サイクリックボルタンメトリーおよび電位ステップ実験を行った。
【0062】
メソポーラスNiおよびメソポーラスPdの電気化学特性を比較するために、図2において、6MのKOH中のこれらの電極の両方のサイクリックボルタモグラムを重ね合わせた。Hg/HgOに対して0.38VのNiの陽極ピークは、反応(1)によるNi(OH)2のNiOOHへの酸化を示し、それに続くNi(OH)2への還元(reduction back)は、0.4Vで始まる陰極ピークによって表される。後者のピークは、電極のプロトン貯蔵容量、すなわちプロトン貯蔵のための電極の可逆的な容量を表す。図2において、これは295mCcm−2である。
【0063】
6MのKOH中のHIPdの電気化学は、正電位における酸化物形成と、−0.25Vの陰極ピークで続いて起こるこの酸化物のストリッピングとのために、陽極電流ではより多様性である。表面水素化パラジウムの形成による水素吸着原子のPd表面上への吸着は、−0.75V付近の小さい陰極ピークによって示され、これに続いて、−1Vより低い電位において水素発生電流に付加される大電流によって示されるPd格子内へのより大量の水素の吸収が起こる。正方向の電位の反転では、−0.8Vで始まり、−0.36Vでピークに達する大きい陽極ピークで表されるように、水素はPdから脱着し始める。メソポーラスNiおよびメソポーラスPdのボルタンメトリーの比較に基づいて、これらの2つの電極を用いる電荷蓄積デバイスは、約1.2Vの放電電圧を有することが予期され得る。何故ならこれは、ほぼ、PdからのH+脱着の開始(Hg/HgOに対して−0.8V)と、NiOOHへのH+のインターカレーション(Hg/HgOに対して0.4V)との間の電位差だからである。この放電電圧はPdの電荷の状態と共に可変的であり、完全に充電された電極のHg/HgOに対して−0.8Vと、Hg/HgOに対して−0.3V(Pdは20mVs−1で完全に水素が放出される)との間で変わることができる。
【0064】
[(v)スーパーキャパシタの組立ておよび充電/放電特性試験]
スーパーキャパシタ構成におけるメソポーラスニッケルの性能および限界を研究するために、より高い容量およびパワー能力を有する負極が必要とされた。このために、上記の(iii)で作製した液晶テンプレート化メソポーラスパラジウムを使用した。性能限界がニッケル電極における限界によるように、メソポーラスパラジウム電極の大きさをメソポーラスニッケル電極よりもかなり大きくした。
【0065】
従って、6MのKOH溶液中で1cmだけ隔てられた1cm2のメソポーラスパラジウム電極と共に約1μmの厚さの直径200μmのメソポーラスニッケル正極を用いて、セパレータのない二電極スーパーキャパシタを組立てた。上記(ii)で作製したように、この場合のメソポーラスニッケルの合成における析出電荷は、−1.13mCであった。34%の析出効率を考慮に入れると、これは0.117μgの質量に相当する。
【0066】
図3は、0V〜1.3Vの電位範囲でサイクルされる二電極スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。約1.22Vにおいて、デバイスは、Ni(OH)2からのプロトンの除去およびNiOOHの形成に対応して充電される。陰極のピークによって示されるように、Pd格子からのプロトンがNiOOH構造内に移動して、Ni(OH)2を再形成すると、放電が生じる。この20mVs−1サイクルにおける放電電流は67mAcm−2でピークに達し、通過する総電荷は257mCcm−2である。
【0067】
図3のボルタモグラムの形状は、スーパーキャパシタよりも電池の形状と密接に似ている。ここで、図4により明らかに示されるように、放電における電荷の大部分は、1.18Vよりも上で通過する。
【0068】
スーパーキャパシタがどの程度速く充電および放電されるかを決定するために、デバイスの電位を0V(放電状態)〜1.3V(充電状態)でステップさせ、25℃で電流応答を測定した。図5は、単一の充電/放電ステップシーケンスを示す。陽極のスパイクの間、800mCcm−2の電荷が通過する。デバイスの放電は、大きい陰極のスパイクによって表され、プロトンがNiOOH内に移動するときの最大振幅は50Acm−2である。ここで放電ステップの間に276mCcm−2が通過し、そのうちの222mCcm−2(直径200μmにわたって7×10−5C、または166mA.hg−1)は、初めの50ミリ秒で通過する。
【0069】
[(vi)スーパーキャパシタの組立ておよびサイクル寿命試験]
サイクル寿命を試験するために、1cm2の蒸着金基板上に析出させた上記の(ii)および(iii)で作製されるようなメソポーラスニッケル電極およびパラジウム電極からなる構成のスーパーキャパシタを組み立て、メソポーラスNi電極およびメソポーラスPd電極を、6MのKOHが充満された多孔質PTFE膜で隔てた。0V〜1.2Vの電位範囲でデバイスを500mVs−1で連続的にサイクルすることによって、ニッケル−パラジウムスーパーキャパシタのサイクル性(cyclability)を調査した。全ての性能データは、ニッケル電極の質量または幾何面積に関する単位で引用される。
【0070】
図6に示されるように、ボルタモグラムの形状は、図3で与えられる形状とはかなり異なる。ピークはかなり幅広であり、図3ではたった0.07Vであるのに対して、約0.5V隔てられている。これは、セルに課せられるIR限界と、多孔質セパレータの導入およびPdの遅い電気化学応答との組み合わせによるものであり、その容量は、この構成のNi(OH)2電極の容量よりも顕著に大きくはなかった。図6は、最初の4.8秒フルサイクルと15000回目とを比較する。ボルタモグラムの同様の形は、サイクリング中に電極が大きく劣化しなかったことを示す。ピーク電位のより低い値へのシフトは酸素の侵入によるものであり、酸素の侵入はパラジウム電極の平均水素含量を低下させ、従って負極の電位を上昇させると確信される。サイクルあたりの電荷の増大は、サイクリング中に酸化物層が厚くなるためであると確信される。
【0071】
この結果は2つのことを暗示している。まず第1は、メソポーラス電極が、挿入プロセスを用いるその他のスーパーキャパシタおよび電池系における容量の減少に関連するサイクリング時のデクレピテーション(decrepitation)に耐性があると思われることである。従って、図7に示されるような均一なモノリシック構造は、不均一な大きさ分布の焼結粒子の凝集体からなる構造よりも、体積膨張および収縮のひずみによく耐えると思われる。
【0072】
第2の暗示は、メソポーラスNi電極の容量が減少されないだけでなく、実際にはサイクリングと共に増大するという事実を扱う。6MのKOH中、電位サイクリング条件下で、より多くのNi系金属が酸化されるにつれて、Ni電極中のNi(OH)2の量が時間と共に増大できることを理解することによって、この効果は合理化される。事実上、これは、電極中の活物質の量を増大させ、従って容量を増大させる。アルカリ溶液中で適切なサイクリング条件を適用させることで、電着したNi電極の容量が30倍まで増大され得ることは、複数のグループによって既に示されている。ここで、最初のサイクリング中に既に45質量%の電極材料が使用されるので、このように容量の大きな増大は、本発明の構成では予期されない。いずれにしても、Ni系金属から電気的に非伝導性のNi(OH)2への完全な転換に相当する容量の大きな増大は、望ましくないであろう。何故なら、これは、電気伝導性を提供すると共にナノスケールの集電体の役割を果たすメソポーラス電極中のNi金属の連続的な通路を破壊し得るからである(図7を参照)。
【0073】
[実施例10]
[ナノ構造化水酸化ニッケル/炭素スーパーキャパシタの作製]
[(i)ニッケル基板の調製]
ニッケル箔(10μm厚)をJohnson Mattheyから入手し、次にメソポーラスニッケルを析出させるために以下のように調製した。
【0074】
ニッケル箔電極(4cm2)を、析出の前にイソプロパノールの超音波浴中で15分間、清浄にしてから、脱イオン水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させた。
【0075】
[(ii)六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
45重量%の0.2Mの酢酸ニッケル(II)、0.5Mの酢酸ナトリウムおよび0.2Mのホウ酸の水溶液、ならびに55重量%のBrij56(Brijは商標)非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。Nelson等のChem. Mater., 2002, 14, 524-529に開示される方法に従って、白金網対向電極を用いて25℃で、飽和カロメル電極に対して−0.9Vにおいて、ニッケル箔基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。析出後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄し、界面活性剤を除去した。厚さ約1マイクロメートルのメソポーラスニッケルフィルムが得られた。
【0076】
[(iii)高表面積の炭素電極の製造]
90重量%のNorit Ultra炭素(1,200m2g−1)、5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、2.5重量%のアセチレンブラック(100%圧縮)、および2.5重量%のSuperiorグラファイトを乳棒および乳鉢を用いて混合することによって、高表面積の炭素電極を製造した。次に、Durston Mini Millローリングミルを用いて、ペーストを手動でシート状に延ばした(フィルム厚50〜65μm)。次に金層(0.5mgcm−2、約100nm厚)を炭素フィルム上に蒸着させ、フィルムの伝導性を改善した。高表面積の炭素電極は、70〜100Fg−1の容量および0.45mgcm−2の質量を有した。
【0077】
[(iv)Niおよび炭素電極の作動]
Solartron1287電気化学インターフェースおよびCorrwareソフトウェアを用いて、サイクリックボルタンメトリー実験を実行し、National Instrumentsのデータ収集カードおよびLabVIEWソフトウェアとインターフェース接続された特注のポテンシオスタットおよびランプ発生器を用いて、電位ステップ実験を行った。
【0078】
メソポーラスNiおよび高表面積炭素の電気化学特性を比較するために、両方のタイプの電極の6MのKOH中のサイクリックボルタモグラムは、図8および図9にそれぞれ示される。Hg/HgOに対して0.46Vでは、Niの陽極のピークは、反応(1)によるNi(OH)2のNiOOHへの酸化を示し、続いて、0.32Vの陰極ピークで表されるNi(OH)2への還元が生じる。Ni(OH)2の存在は、作製、貯蔵、およびそれに続くサイクリングまたはコンディショニングの間に、下側にあるニッケルが酸化することによると思われる。後者のピークは、電極のプロトン貯蔵容量、すなわちプロトン貯蔵のための電極の可逆的な容量を表す。図9では、これは、Hg/HgOに対して0.6V〜−0.5Vで、20mVs−1において104mCcm−2である。
【0079】
6MのKOH中の高表面積炭素電極の電気化学は、通常、純粋な二重層の挙動を有し、いかなるファラデー電気化学も示さない。6MのKOH中の炭素電極の有用な電位窓は、溶媒の分解によってのみ制限され、負の限界では水素が発生し、正の限界では酸素が発生する。メソポーラスNiおよび高表面積炭素のボルタンメトリーの比較に基づいて、これらの2つの電極を用いる電荷貯蔵デバイスは、約1.4Vの放電電圧を有し得ることが予期され得る。何故なら、これは、ほぼ、炭素電極における水素発生の開始(Hg/HgOに対して−1.0V)と、NiOOHへのH+のインターカレーション(Hg/HgOに対して0.4V)との間の電位差だからである。
【0080】
[(v)スーパーキャパシタの組立ておよび充電/放電特性試験]
スーパーキャパシタ構成におけるメソポーラスニッケルの性能および限界を研究するために、より高い容量およびパワー能力を有する負極が必要とされた。このために、上記(iii)で作製された高表面積炭素フィルムを使用した。性能限界がニッケル電極における限界によるように、高表面積炭素電極の電荷貯蔵能力をメソポーラスニッケル電極よりもかなり大きくした。
【0081】
従って、6MのKOH溶液中で、ニッケル電極のそれぞれの側で、いずれの場合も25μmのCelgardセパレータで隔てられた2つの4cm2の高表面積炭素電極(上記(iii)で作製)と共に、厚さ約12μm(厚さ10μmの箔集電体を含む)の両面4cm2(活性面積8cm2)のメソポーラスニッケル正極(上記(ii)で作製)を用いて、セパレータ(Celgard、ポリプロピレン、25μm、2.75mgcm−2)を有する二電極スーパーキャパシタを組み立てた。上記(ii)で作製されるこの場合のメソポーラスニッケルの合成における析出電荷は、−3.9Ccm−2であった。これは、50%の析出効率を考慮に入れると、箔基板を含むニッケルサンプルでは39.4mgの質量に相当する。2つの炭素電極の総質量は28.5mgであり、セパレータは25.8mgであり、従って乾燥キャパシタの総質量は93.7mgであった。
【0082】
キャパシタのボルタンメトリー応答が安定するまで、新しく作製したスーパーキャパシタの電位を、5mVs−1において0V〜1.5Vで、二電極装置内でサイクルさせ、この時点で、炭素およびニッケル電極の電荷貯蔵容量は平衡状態にあると考えられた。正極および負極を別々に充電する必要はなかった。図10は、安定化した後に0V〜1.5Vの電位範囲でサイクルした二電極スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。約1.35Vにおいて、デバイスは、Ni(OH)2からのプロトンの除去およびNiOOHの形成に対応して充電される。陰極ピークにより示されるように、プロトンがNiOOH構造内に移動してNi(OH)2を再形成すると、放電が生じる。この5mVs−1サイクルにおける放電電流は、1.3mAcm−2でピークに達し、通過する総還元電荷は133mCcm−2である。
【0083】
図10のボルタモグラムの形状は、スーパーキャパシタよりも電池の形状とより密接に似ている。ここで、図11により明らかに示されるように、放電における電荷の大部分は、Hg/HgOに対して0.9Vよりも上で通過する。
【0084】
スーパーキャパシタがどの程度速く充電および放電されるかを決定するために、デバイスの電位を0V(放電状態)〜1.4V(充電状態)でステップさせ、25℃で電流応答を測定した。図12は、単一の充電/放電ステップシーケンスを示す。陽極のスパイクの間、3秒間で105mCcm−2の電荷が通過する。デバイスの放電は、プロトンがNiOOH内に移動するときに、大きい陰極のスパイクによって表される。ここで、放電ステップの間に95mCcm−2が通過し、そのうち51mCcm−2は、初めの100ミリ秒で通過する。
【0085】
[実施例11]
[ナノ構造化ニッケル/鉄スーパーキャパシタの作製]
[(i)ニッケル基板の調製]
メソポーラスニッケルフィルムのために、ニッケル箔(10μm厚、4cm2)をJohnson Mattheyから入手し、次にメソポーラスニッケルを析出させるために、次のように調製した。
【0086】
鉄フィルムでは、次にメソポーラス鉄を析出させるために、ニッケル箔(Goodfellow、10μm、2cm2)を次のように調製した。
【0087】
ニッケル箔基板は、析出の前にイソプロパノールの超音波浴中で15分間清浄にしてから、脱イオン水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させた。
【0088】
[(ii)六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
45重量%の0.2Mの酢酸ニッケル(II)、0.5Mの酢酸ナトリウムおよび0.2Mのホウ酸の水溶液、ならびに55重量%のBrij56(Brijは商標)非イオン性界面活性剤(C16EOn、nは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。Nelson等のChem. Mater. , 2002, 14, 524-529に開示される方法に従って、飽和カロメル電極に対して−0.9Vで、25℃で白金網対向電極を用いて、ニッケル箔基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。総析出電荷は2.0Cであった。析出の後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄し、界面活性剤を除去した。
【0089】
[(iii)六方晶系の液晶相からの鉄の電着]
脱酸素化した40重量%の0.2Mの硫酸鉄(II)の水溶液および60重量%のBrij56非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrich)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。飽和カロメル電極に対して−0.9Vで、白金網対向電極を用いて25℃で、ニッケル箔基板(面積2cm2)上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。0.2mAhの電荷が通過した後、析出電位からフィルムが絶縁される直前にフィルムを亜鉛箔に取り付けることにより、陰極の保護下でフィルムを析出混合物から取り出した。亜鉛箔と共にフィルムを多量の脱酸素化アセトン中で1時間洗浄し、界面活性剤を除去した。
【0090】
[(iv)鉄電極の試験]
洗浄後、鉄電極を6MのKOH水に浸漬し、亜鉛を取り外した。開回路の電位を測定し、充電されたナノ構造化NiOOH電極に対して1.1Vであることが分かった。Solartron1287電気化学インターフェースおよびCorrwareソフトウェアを用いて、サイクリックボルタンメトリー実験を実行した。
【0091】
6MのKOH中の鉄電極のサイクリックボルタモグラムを20mVs−1で実施した。結果は図13に示される。これは、Hg/HgOに対して−1.0Vの陽極ピークと、−1.1Vの陰極ピークとを示す。陽極ピークの−1.0V〜−0.3Vで通過する総電荷は、17mCであった。−0.3Vと、−1.15Vにおける水素発生の妨害との間に通過する陰極電荷は、図14に示されるように、25mCであった。
【0092】
[(v)スーパーキャパシタの組立ておよび充電/放電特性試験]
上記のように作製した鉄およびニッケル電極を6MのKOH溶液中に浸漬させた。開回路の電位を測定し、1.1Vであることが分かった。2つの電極および溶液は、このようにして、サイクリング試験のために本発明者等のキャパシタを構成した。
【0093】
新しく作製したキャパシタの電位を、5mVs−1において、0V〜1.4Vでサイクルした。図15は、二電極スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。負の電流としてプロットされる放電は、ピーク電流が0.15mAの幅広のピークを1.1V付近に示す。図16のボルタモグラムの積分により、貯蔵された総電荷は12mCであることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】Pd格子への、およびPd格子からNiOOH正極プロトンシンク(proton sink)への充電および放電におけるプロトンの流れを示す概略図を表す。
【図2】6MのKOH中20mVs−1における、直径1mmのHIPdディスクのサイクリックボルタンメトリー(−)と、200μmのHINiディスクのサイクリックボルタンメトリー(----)との比較を示す。
【図3】6MのKOH中で1cmだけ分離された20mVs−1におけるサイクリックボルタンメトリーによる、200μmのHINiディスクに基づくスーパーキャパシタの充電/放電挙動を示す。
【図4】図3に示される20mVs−1の放電中の、電位に対するデバイスからの電荷の流れを示す。
【図5】6MのKOH中の1cm2のHIPd電極と共に200μmのHINiディスクで構成される、6MのKOH中のHINi/HIPdスーパーキャパシタの電位ステップ充電/放電を示す。
【図6】500mVs−1において、多孔質PTFEセパレータを組み込んだ1cm2HINi/1cm2HIPdスーパーキャパシタの最初のフルサイクル(−)(細線)と、15,000回目のサイクル(−)(太線)との比較を示す。
【図7】ニッケル集電体のマトリックス中に保持された酸化活物質Ni(OH)2で取り囲まれた細孔を示し、さらに電極のバルク面積の45%を占める活物質を示すHI電極構造の概略図を表す。
【図8】実施例10で作製されるナノ構造化ニッケル/水酸化ニッケル電極のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図9】実施例10で作製される高表面積炭素電極のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図10】実施例10で作製されるニッケル−炭素スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。
【図11】図10のニッケル−炭素スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムの電位−電荷の関係を示す。
【図12】25℃の6MのKOH中における、0V〜1.4Vでパルス化された図10のニッケル−炭素スーパーキャパシタ(8cm2、93.7mg)の電位ステップを示す。
【図13】実施例11で作製されるように、20mVs−1および25℃での6MのKOH中で、Hg/HgOに対して−0.3V〜−1.2Vの液晶テンプレート化鉄電極のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図14】図13に示されるサイクリックボルタモグラムの電位−電荷の関係を示す。
【図15】実施例11で作製されるように、5mVs−1および25℃での6MのKOH中における、0V〜1.4Vの二電極装置における液晶テンプレート化鉄に対するメソポーラスニッケルのサイクリックボルタモグラムを示す。
【図16】図15に示されるサイクリックボルタモグラムの電位−電荷の関係を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池またはスーパーキャパシタもしくはその両方であり得る新規の電気化学セルであって、携帯用電子デバイスおよびその他の電子デバイスでの使用に適した電気化学セルに関する。特に、断面が約10−8〜10−9mの実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス材料で形成された正極を少なくとも有する電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
「電池」という用語は、本明細書中では、その活性成分中に含まれる化学エネルギーをレドックス(酸化−還元)反応によって直接電気エネルギーに変換するデバイスの一般的な意味で使用されることに留意すべきである。電池の基本単位は電気化学セルであり、該セルは、少なくとも、正極、負極および電解質を含み、全てがケーシング内に格納される。当該技術分野でよく知られているように、セパレータなどのその他の構成要素が含有されてもよい。電池は、1つまたは複数のこのようなセルからなることができる。
【0003】
多くの携帯用電子デバイスは、はるかに高いパワードレインのスパイクまたはサージが点在する比較的低レベルの定常流で、パワーが利用可能であることを必要とする。ほとんどの従来の電池はこれらの要件を満たすことができず、従って、デバイスにより必要とされない場合にはパワーを蓄え、必要とされるときにパワーを放出するキャパシタまたはスーパーキャパシタで補完され得る。このタイプのパワー要件を有するデバイスの例としては、ノート型コンピュータ、携帯電話、PDA(携帯情報端末、すなわちマイクロコンピュータ)、除細動器などがある。しかしながら、このような携帯用デバイスでは、携帯性が重視され、携帯性は重量および大きさの両方の関数である。デバイス中のさらに別の装置はどれも必然的にこれらの両方を増大させてデバイスの携帯性を低くし、従ってあまり望ましくない。
【0004】
その結果としてこのような携帯用デバイス中で機能すべき任意の電気化学セルの要件は、高パワー密度および高エネルギー密度の両方を有さなければならないことである。これまでは、妥当なコストでは、これらの密度のうち両方ではなく一方または他方を達成することだけが可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等はここで、例えば、欧州特許第993512号または米国特許第6,203,925号に開示されるメソポーラスフィルムテクノロジーを電気化学セルの一方または両方の電極の製造に適用させることができ、その結果得られる電池、キャパシタあるいはその両方として機能し得る電気化学セルが、高パワー密度および高エネルギー密度の両方を有するように設計可能であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、例えば携帯用電子デバイスに用いられ、正極、負極および電解質を有する電気化学セルであって、少なくとも正極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする電気化学セルを提供する。
【0007】
また、本発明は、このような電気化学セルを含む携帯用電子デバイスを提供する。
【0008】
またさらに、本発明は、本発明の複数の電気化学セルを含む自動車用電池を提供する。
【0009】
本発明の電気化学セルは、電池として、スーパーキャパシタとして、あるいは結合型電池/スーパーキャパシタとして機能するように構成することができる。図1の概略図に示されるように、例えば、メソポーラス正極および負極を有するスーパーキャパシタは、例えばNi(OH)2のメソポーラス正極と、例えばパラジウムの水素吸収メソポーラス負極との間のプロトンの往復移動メカニズムにより動作する。メカニズムは、Ni−MH電池における動作メカニズムと同様であり、この場合、パラジウムはLaNi5などの別の水素吸収材料に置き換えられる。
【0010】
本発明の電気化学セルを含有することができる携帯用電子デバイスの例としては、いわゆるノート型コンピュータ、デスクトップ代替コンピュータ、ウルトラポータブルコンピュータなどを含む携帯用コンピュータ(本発明は、ウルトラポータブルコンピュータなどのより小型バージョンで特に価値がある)と、携帯電話と、コードレス(ランドライン)電話と、PDAと、携帯用ハードディスクドライブと、CDプレイヤー、カセットプレイヤー、ミニディスクプレイヤー、ならびにMP3および同様のソフトウェアに基づく音楽プレイヤーを含むその他のデジタル記録音楽プレイヤーを含む様々な種類の音楽プレイヤーと、携帯用テレビと、携帯用DVDプレイヤーと、携帯用ラジオと、PDA/携帯電話、電話/音楽プレイヤー、ハードディスクストレージ/音楽プレイヤーなどのハイブリッドデバイス(すなわち、以前は別々だった2つ以上の機能を果たすデバイス)と、除細動器などのメディカルデバイスとが挙げられる。
【0011】
本発明の電気化学セルは、自動車用電池においても使用することができる。
【0012】
上記のデバイスは全て、本質的にランダムな間隔ではるかに高いパワーに対する周期的な要求が点在する比較的低レベルのパワーの定常的な供給を必要とする。従って、これらは、本発明の電気化学セルと共に使用するのに特に適している。これらのデバイスの設計および構成の詳細はよく知られており、本発明に従う電気化学セルを組み込むことのほかは本発明の一部を形成しない。
【0013】
本発明の電気化学セルの少なくとも正極、陰極は、メソポーラス材料で形成される。材料は、好ましくは、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、またはこれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせである。このような金属の例としては、ニッケルと、遷移金属との合金、ニッケル/コバルト合金および鉄/ニッケル合金を含むニッケル合金と、コバルトと、白金と、パラジウムと、ルテニウムとが挙げられる。このような酸化物、水酸化物およびオキシ水酸化物の例としては、酸化金、酸化パラジウム、酸化ニッケル(NiO)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、および酸化ルテニウムが挙げられる。これらのうち、ニッケルならびにその酸化物および水酸化物が最も好まれる。
【0014】
当該技術分野ではよく知られているように、これらの材料のうちのいくつかは、使用する前に「コンディショニング」を必要とする。これは、当該技術分野では従来どおりであるように、セルに数回の充電および放電サイクルを受けさせることによって達成され得る。このようなコンディショニングを必要とする典型的な材料はニッケルであり、コンディショニングの結果、酸化物の表面層を得ることができる。
【0015】
本発明の電気化学セルの負極、陽極を製造するために使用される材料の性質に対する制限はなく、製造すべきセルの化学的性質を考慮して任意の材料を使用することができる。適切な材料の例としては、炭素、カドミウム、鉄、パラジウム/ニッケル合金、鉄/チタン合金、パラジウム、または混合金属水素化物、例えばLaNi5Hxがある。これらの材料は、好ましくは多孔質であり、より好ましくはメソポーラスである。これらのうちで好ましい材料は、炭素およびパラジウムである。しかしながら、メソポーラスパラジウムは、そのコストが高いために、低コスト用途では好ましい負極材料ではない。
【0016】
陽極および陰極の好ましい組み合わせは、ニッケル/パラジウム、ニッケル/炭素、ニッケル/鉄およびニッケル/カドミウムであり、このうちニッケル/炭素が最も好ましい。ニッケルに言及する場合、その酸化物および水酸化物も含まれる。
【0017】
特に、正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、酸化または水酸化ニッケルが、上記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも細孔表面上に延在し、負極が、ナノ粒子状の炭素を含むことが好ましい。
【0018】
従って、好ましくは、正極および負極はそれぞれ、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含む。正極および負極(負極もメソポーラスであれば)は定義されたメソポーラス構造(単数または複数)からなるか、または実質的に、定義されたメソポーラス構造(単数または複数)からなる。
【0019】
「メソポーラス構造」、「メソポーラス材料」および「メソポーラスフィルム」とは、本明細書で言及される場合、液晶テンプレートプロセスにより製造され、その結果、モノリシックな性質であり、画定されたトポロジーおよび実質的に均一な細孔径(直径)を有する細孔の長距離にわたる規則的な配列を含有する構造、材料およびフィルムをそれぞれ意味する。従って、メソポーラス構造、材料およびフィルムは、ナノ構造化されているか、またはナノアーキテクチャーを有すると説明することもできる。
【0020】
従って、本発明に従って使用されるメソポーラス材料は、結晶化が低い材料、ならびに別個のナノサイズの固体粒子を有する複合材料、例えば、ナノ粒子の凝集体で構成される従来「ナノ材料」と示されるものとは区別される。
【0021】
ナノ材料と比較して、メソポーラス材料を使用する利点は、メソポーラス材料内の電子の輸送が粒界抵抗に遭遇せず、優れた電子伝導性を与えると共に、この現象に関連するパワー損失を排除することである。さらに、ここで使用されるメソポーラス材料の規則正しい多孔質は、連続的かつ比較的直線的である均一な直径の非蛇行性流路を提供し、高速かつ妨害されない電解質種の移動を促進する。対照的に、従来のナノ粒子系は乱雑な多孔質を有し、この多孔質は、より狭いボイド間の空間により相互接続された様々な断面のボイドを有する。そのようなものでは、細孔構造内を移動する物質はかなり蛇行性の通路に遭遇し、反応速度が遅くなる。
【0022】
メソポーラス材料は、好ましくは、実質的に一定の厚さを有するフィルム形態である。好ましくは、メソポーラスフィルムの厚さは、0.5〜5マイクロメートルの範囲である。
【0023】
好ましくは、メソポーラス材料は、約1〜10ナノメートルの範囲内、より好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内の細孔直径を有する。
【0024】
メソポーラス材料は、1×1010〜1×1014細孔/cm2、好ましくは4×1011〜3×1013細孔/cm2、より好ましくは1×1012〜1×1013細孔/cm2の範囲の細孔数密度を示し得る。
【0025】
メソポーラス材料は、実質的に均一な大きさの細孔を有する。「実質的に均一」とは、少なくとも75%、例えば80%〜95%の細孔が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内の細孔直径を有することを意味する。より好ましくは、少なくとも85%、例えば90%〜95%の細孔が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内の細孔直径を有する。
【0026】
細孔は、好ましくは、断面が円筒型であり、メソポーラス材料の全体にわたって存在または延在するのが好ましい。
【0027】
メソポーラス構造は、画定された認識可能なトポロジーまたはアーキテクチャー(例えば、立方晶、層状、斜交、面心矩形(centred rectangular)、体心斜方晶、体心正方晶、菱面体晶、六方晶)を有する細孔の周期的な配列を有する。好ましくは、メソポーラス構造は六方晶系の周期的な細孔配列を有し、この場合電極は、均一な直径を有すると共に電極の厚さを貫通して連続的であり且つ六方晶系に配向された多数の細孔によって穿孔される。
【0028】
細孔配列が六方晶系である好ましい場合には、細孔の配列は、好ましくは3〜15nmの範囲、より好ましくは5〜9nmの範囲である、細孔の中心から中心までの間隔に相当する規則的な細孔周期性を有する。
【0029】
さらに、この規則的な周期性および実質的に均一な細孔径を有するメソポーラス構造は、平均細孔径の少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約100倍の電極部分上に延在すべきである。好ましくは、電極は定義された構造(単数または複数)からなるか、または実質的に、定義された構造(単数または複数)からなる。
【0030】
これらの細孔トポロジーが理想的な数学的トポロジーに限定されるのではなく、フィルム内の細孔の空間的配列に、認識可能なアーキテクチャーまたはトポロジー秩序が存在するという条件で、これらのトポロジーのひずみまたはその他の変更を含み得ることは認識されるであろう。従って、本明細書で使用される「六方晶」という用語は、実測の制限内で数学的に完全な六方晶の対称性を示す材料だけでなく、ほとんどのチャネルが、実質的に同じ距離で、平均6本の最も近い隣接チャネルで包囲されるという条件で、理想状態からの顕著に観察可能な偏差を有する材料も包含する。同様に、本明細書で使用される「立方晶」という用語は、実測の制限内で立方晶の空間群に属する数学的に完全な対称性を示す材料だけでなく、ほとんどのチャネルが2〜6本の他のチャネルと接続するという条件で、理想状態からの顕著に観察可能な偏差を有する材料も包含する。
【0031】
セル中の電解質は、好ましくは、水系電解質、例えば水酸化カリウム水などの水系アルカリ電解質である。
【0032】
好ましい実施形態では、正極のメソポーラス構造は、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、上記酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルは、上記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも細孔表面上に延在し、負極は、炭素またはパラジウムのメソポーラス構造を有する。電解質が充満されると、正極は、電解質と接触するNi(OH)2活物質で被覆された相互接続されたNi集電体ベースで構成される3相複合体を表す。有利に、メソポーラスNi正極の水和構造は、表面およびバルクプロセスの両方が電極の電荷容量に寄与できるように保持される。電極のナノスケール構造のために、3つ全ての相は互いに緊密に接触するか、あるいは約1〜2nm内にあり、「相境界」の総表面積は極めて大きい。従って、高エネルギー密度を達成することができ、小さいプロトン拡散距離は、セルが非常に高いパワー密度を示すことを可能にする。
【0033】
本発明の電気化学セルの正極として、および任意で負極として使用されるメソポーラス材料は、液晶テンプレート法により調製され、好ましくは、リオトロピック液晶相から電気化学析出によって基板上にフィルムとして析出される。またこれらは、リオトロピック液晶相からの化学的還元などの無電解析出によっても調製することができる。
【0034】
適切な基板には、金、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、ロジウムまたはコバルト、もしくはこれらの金属のいずれかまたはリンを含有する合金が含まれる。基板は、所望されるなら、好ましくは1〜20マイクロメートルの範囲の大きさの細孔を有する微孔性であってもよい。基板は、好ましくは、2〜50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。基板は、好ましくは、蒸着により金層が上に形成された金以外の上記の基板である。
【0035】
電気化学析出および化学的手段によりメソポーラス材料をフィルムとして基板上に析出させるための適切な方法は、当該技術分野において知られている。例えば、適切な電気化学析出法は、欧州特許第993,512号公開公報と、Nelson等著「高パワー用途のためのメソポーラスニッケル/酸化ニッケル電極(Mesoporous Nickel/Nickel Oxide Electrodes for High Power Applications)」 J. New Mat. Electrochem. Systems, 5, 63-65 (2002)と、Nelson等著「メソポーラスニッケル/酸化ニッケル−ナノアーキテクチャー化電極(Mesoporous Nickel/Nickel Oxide/a Nanoarchitectured Electrode)」 Chem. Mater., 2002, 14, 524-529とに開示されている。適切な化学的還元法は、米国特許第6,203,925号公開公報に開示されている。
【0036】
好ましくは、メソポーラス材料は、リオトロピック液晶相から電気化学析出により形成される。一般的方法に従って、テンプレートは、一定の長鎖界面活性剤および水からの自己集合により、六方晶相などの所望の液晶相に形成される。適切な界面活性剤にはオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)が含まれ、これは、親水性オリゴエーテルのヘッド基に付着した長い疎水性炭化水素テールを有する。その他には、多分散系界面活性剤Brij(登録商標)56(C16EOn、ここでnは約10である)、Brij(登録商標)78(C16EOn、ここでnは約20である)、およびPluronic123があり、それぞれAldrichから入手可能である。高い(>30%)水溶液濃度では、使用される濃度および温度に依存して、分離した親水性および疎水性ドメインからなる所望のリオトロピック液晶相、例えば六方晶相中で水溶液を安定化することができ、水溶液は親水性ドメインに拘束される。溶解した無機塩、例えば酢酸ニッケルも親水性ドメインに拘束され、溶液中に浸漬された電極で電気還元されて、例えばニッケル金属の固体の中間相を形成することができる。これは、水系ドメイン相構造のダイレクトキャストである。続いて、適切な溶媒中での洗浄による界面活性剤の除去によって、電気還元された固体中に規則的な周期性の多数の細孔が残され、細孔の配列は、選択されるリオトロピック液晶相により決定される。トポロジー、大きさ、周期性およびその他の細孔特性は、当該技術分野において知られるように、界面活性剤、溶媒、金属塩、疎水性添加剤、濃度、温度および析出条件の適切な選択によって変化させることができる。
【0037】
上記のように、メソポーラス電極を製造するメソポーラス材料は、好ましくは、電着または化学析出によって基板上に形成される。メソポーラス材料は、適切な機械強度が不足しているかもしれないので、好ましくは基板上の電極として使用され、便宜上、これはその作製において使用したものと同じ基板であるのが好ましい。
【0038】
本発明は、図面を参照して、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0039】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
[六方晶系の液晶相からの白金の電着]
2.0グラムの水および2.0グラムの水中のヘキサクロロ白金酸水和物に、3グラムのオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)界面活性剤を添加した。均一な混合物が得られるまで、混合物を加熱し、激しく振とうさせた。2ミリクーロンの還元電荷(reduction charge)が通過するまで、標準カロメル電極に対して+0.6ボルトから、標準カロメル電極に対して−0.1ボルトまで電位をステップさせることによって、0.000314平方センチメートルの研磨した金電極上に、25℃〜85℃の温度で、この混合物からの電着を実行した。蒸留水ですすいで界面活性剤を除去した。金属構造を有するフィルムが得られ、これは、透過型電子顕微鏡法による実験で、幅25Å(±2Å)の金属壁で隔てられた25Å(±1.5Å)の内径を有する細孔の六方晶系の配置を有することが分かった。
【0041】
[実施例2]
[六方晶系の液晶相からの白金の電着]
C16EO8の代わりに、より短い鎖長の界面活性剤C12EO8を用いて実施例1のプロセスを実行した。TEMにより決定された細孔の直径は、17.5Å(±2Å)であることが分かった。
【0042】
[実施例3]
[六方晶系の液晶相からの白金の電着]
モル比2:1のC16EO8およびn−ヘプタンを含有する4成分混合物を用いて、実施例1のプロセスを繰り返した。TEMにより決定されるように、細孔の直径は、35Å(±1.5Å)であることが分かった。
【0043】
[実施例4]
[立方晶系の液晶相からの白金の電着]
27重量%のヘキサクロロ白金酸水溶液(水に対して33重量%)および73重量%のオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)から、通常のトポロジーの立方晶相(Ia3d空間群に指標付け)を有する混合物を調製した。白金網対向電極を用いて35℃〜42℃の温度で、研磨した金電極上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。0.8ミリクーロンの電荷が通過するまで、標準カロメル電極に対して+0.6Vから、標準カロメル電極に対して−0.1Vまでセルの電位差をステップさせた。析出後、フィルムを多量の脱イオン水ですすいで、界面活性剤を除去した。洗浄したナノ構造化析出物は均一であり、外観上は光沢があった。透過型電子顕微鏡法の研究で、内径25Åの円筒形の孔の3次元の周期的なネットワークからなる非常に多孔質の構造が明らかになった。
【0044】
[実施例5]
[六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
50重量%の0.2Mの硫酸ニッケル(II)および0.58Mホウ酸の水溶液、ならびに50重量%のオクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル(C16EO8)から、通常のトポロジーの六方晶相を有する混合物を調製した。白金網対向電極を用いて25℃で、研磨した金電極上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。平方センチメートルあたり1クーロンの電荷が通過するまで、飽和カロメル電極に対して−1.0Vまでセルの電位差をステップさせた。析出後、フィルムを多量の脱イオン水ですすいで、界面活性剤を除去した。洗浄したナノ構造化析出物は均一であり、外観上は光沢があった。電着したスズの小角X線回析の研究により、58Åの格子の周期性が明らかになり、透過型電子顕微鏡法の研究により、厚さ28Åのニッケル壁で隔てられた内径34Åを有する円筒形の孔からなる非常に多孔質の構造が明らかになった。
【0045】
[実施例6]
2.0gのH2O、3.0gのC16EO8、および2.0gのヘキサクロロ白金酸からなる六方晶系の液晶相から、SCEに対して−0.1V(+0.6Vからステップさせた)の析出電位で、25℃で金板電極上での析出を実行した。走査型電子顕微鏡法を用いて破砕サンプルを検査することによって、厚さデータを得た。結果は以下の表1に示される。
【0046】
【表1】
【0047】
[実施例7]
2.0gのH2O、3.0gのC16EO8、および2.0gのヘキサクロロ白金酸からなる六方晶系の液晶相から、ナノ構造化白金フィルムを析出させた。SCEに対して−0.1Vの析出電位(+0.6Vからステップさせた)で、直径0.2mmの金ディスク電極上での析出を実行した。通過した電荷は6.37Ccm−2であった。SCEに対して−0.2V〜+1.2Vの電位限界で、2M硫酸中でのサイクリックボルタンメトリーからデータを得た。粗度係数は、電気化学的な実験から決定される表面積を電極の幾何表面積で除したものと定義される。結果は、以下の表2に示される。
【0048】
【表2】
【0049】
[実施例8]
2.0gのH2O、3.0gのC16EO8、および2.0gのヘキサクロロ白金酸からなる六方晶系の液晶相から、ナノ構造化白金フィルムを析出させた。示した析出電位(+0.6Vからステップさせた)で、直径0.2mmの金ディスク電極上での析出を実行した。通過した電荷は6.37Ccm−2であった。SCEに対して−0.2V〜+1.2Vの電位限界で、2M硫酸中でのサイクリックボルタンメトリーからデータを得た。結果は、以下の表3に示される。
【0050】
【表3】
【0051】
[実施例1〜8の考察]
実施例1〜3のデータは、界面活性剤の鎖長を変化させることによって、あるいは疎水性炭化水素添加剤をさらに添加することによって、細孔直径がどのように制御され得るかを示す。特に、実施例1と実施例2の比較は、鎖長のより短い界面活性剤を用いることにより細孔径が減少され得ることを実証するのに対して、実施例1と実施例3の比較は、析出混合物に炭化水素添加剤を添加することによって細孔径が増大され得ることを示す。
【0052】
実施例6は、電着の間に通過する電荷を変化させることによって、析出フィルムの厚さがどのように制御され得るかを実証する。
【0053】
実施例7および8は、電着の間の温度および印加電位が、フィルムの表面積および二重層キャパシタンスにどのように影響するかを示す。粗度係数値で示されるように、析出温度を上昇させると、フィルムの表面積および二重層キャパシタンスはいずれも増大する。同時に、析出電位も、析出フィルムの表面積およびキャパシタンスを制御するように選択することができる。
【0054】
[実施例9]
[メソポーラスニッケル電極およびメソポーラスパラジウム電極の作製]
[(i)金基板の調製]
エポキシ絶縁体中に封入された金ディスク(直径200μmまたは1mm)と、クロムコートされた顕微鏡用ガラススライド上に金を蒸着することによって製造した薄膜金電極(約1cm2)とを、メソポーラスニッケル電極およびパラジウム電極を次に析出させるために、以下のように調製した。
【0055】
25μm、1μmおよび0.3μmのアルミナ(Buehlerから入手)が埋め込まれたマイクロクロス上でまず連続的に研磨し、次に2MのH2SO4溶液中、200mVs−1で5分間、飽和硫酸水銀の基準電極(SMSE)に対して−0.6V〜1.4Vで電極をサイクルさせることによって、金ディスク電極を清浄にした。各サイクルでは、単層の酸化金が形成され、続いてこれを電極表面から除去した。
【0056】
蒸着させた金電極は、析出の前にイソプロパノールの超音波浴中で60分間清浄にしてから、脱イオン水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させた。
【0057】
[(ii)六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
35重量%の0.2Mの酢酸ニッケル(II)、0.5Mの酢酸ナトリウムおよび0.2Mのホウ酸の水溶液、ならびに65重量%のBrij(登録商標)56非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製し、Nelson等のChem. Mater., 2002, 14, 524-529に開示される方法に従って、白金網対向電極を用いて25℃で、研磨した金基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。析出後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄し、界面活性剤を除去した。六方晶の細孔配列を有する約1マイクロメートル厚のメソポーラスニッケルフィルムが得られた。
【0058】
[(iii)六方晶系の液晶相からのパラジウムの電着]
35重量%の0.5Mのテトラクロロパラジウム酸アンモニウム(Premion、Alfa Aesarから入手)水溶液、および65重量%のBrij(登録商標)56非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。25℃において、パラジウム析出テンプレート溶液中のHI液晶相の存在を、偏光顕微鏡法を用いて確認した。Bartlett等のPhys. Chem. Chem. Phys., 2002, 4, 3835-3842に開示される電着方法に従って、上記の変性テンプレート溶液を使用して、白金網対向電極を用いて25℃で、研磨した金基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。析出後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄して、界面活性剤を除去した。六方晶の細孔配列を有する約1マイクロメートル厚のメソポーラスパラジウムフィルムが得られた。
【0059】
[(iv)電着したメソポーラスNiおよびPd電極の作動]
スーパーキャパシタの組立ての前に、上記の(ii)および(iii)で作製した析出メソポーラス電極を、サイクリックボルタンメトリーにより個々に作動させた。これは、6MのKOH溶液を含有する三電極セルにおいて実行した。セルは、Grant ZDサーモスタット付水浴に接続されたPyrexウォータージャケット付セル、水銀/酸化水銀(6MのKOH)基準電極(Hg/HgO)、および広い面積のPt網対向電極で構成した。全ての実験は25℃で実行した。基準電極を含む実験における電位はHg/HgO基準に対して引用される。
【0060】
メソポーラスニッケル析出プロセスの効率を、アノードストリッピングボルタンメトリーによって定量化した。これには、1mVs−1において、0.2MのHCl溶液中で、メソポーラスニッケル作用電極の電位を、飽和カロメル基準電極(SCE)に対して−0.45V〜0.9Vで走査することが含まれる。対向電極はPt網であった。陽極のニッケルの溶出ピークに関連する電荷、およびこの電荷と析出電荷との比較により、34%の析出効率が与えられた。
【0061】
National Instrumentsのデータ収集カードおよびLabVIEWソフトウェアとインターフェース接続された特注のポテンシオスタットおよびランプ発生器を用いて、サイクリックボルタンメトリーおよび電位ステップ実験を行った。
【0062】
メソポーラスNiおよびメソポーラスPdの電気化学特性を比較するために、図2において、6MのKOH中のこれらの電極の両方のサイクリックボルタモグラムを重ね合わせた。Hg/HgOに対して0.38VのNiの陽極ピークは、反応(1)によるNi(OH)2のNiOOHへの酸化を示し、それに続くNi(OH)2への還元(reduction back)は、0.4Vで始まる陰極ピークによって表される。後者のピークは、電極のプロトン貯蔵容量、すなわちプロトン貯蔵のための電極の可逆的な容量を表す。図2において、これは295mCcm−2である。
【0063】
6MのKOH中のHIPdの電気化学は、正電位における酸化物形成と、−0.25Vの陰極ピークで続いて起こるこの酸化物のストリッピングとのために、陽極電流ではより多様性である。表面水素化パラジウムの形成による水素吸着原子のPd表面上への吸着は、−0.75V付近の小さい陰極ピークによって示され、これに続いて、−1Vより低い電位において水素発生電流に付加される大電流によって示されるPd格子内へのより大量の水素の吸収が起こる。正方向の電位の反転では、−0.8Vで始まり、−0.36Vでピークに達する大きい陽極ピークで表されるように、水素はPdから脱着し始める。メソポーラスNiおよびメソポーラスPdのボルタンメトリーの比較に基づいて、これらの2つの電極を用いる電荷蓄積デバイスは、約1.2Vの放電電圧を有することが予期され得る。何故ならこれは、ほぼ、PdからのH+脱着の開始(Hg/HgOに対して−0.8V)と、NiOOHへのH+のインターカレーション(Hg/HgOに対して0.4V)との間の電位差だからである。この放電電圧はPdの電荷の状態と共に可変的であり、完全に充電された電極のHg/HgOに対して−0.8Vと、Hg/HgOに対して−0.3V(Pdは20mVs−1で完全に水素が放出される)との間で変わることができる。
【0064】
[(v)スーパーキャパシタの組立ておよび充電/放電特性試験]
スーパーキャパシタ構成におけるメソポーラスニッケルの性能および限界を研究するために、より高い容量およびパワー能力を有する負極が必要とされた。このために、上記の(iii)で作製した液晶テンプレート化メソポーラスパラジウムを使用した。性能限界がニッケル電極における限界によるように、メソポーラスパラジウム電極の大きさをメソポーラスニッケル電極よりもかなり大きくした。
【0065】
従って、6MのKOH溶液中で1cmだけ隔てられた1cm2のメソポーラスパラジウム電極と共に約1μmの厚さの直径200μmのメソポーラスニッケル正極を用いて、セパレータのない二電極スーパーキャパシタを組立てた。上記(ii)で作製したように、この場合のメソポーラスニッケルの合成における析出電荷は、−1.13mCであった。34%の析出効率を考慮に入れると、これは0.117μgの質量に相当する。
【0066】
図3は、0V〜1.3Vの電位範囲でサイクルされる二電極スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。約1.22Vにおいて、デバイスは、Ni(OH)2からのプロトンの除去およびNiOOHの形成に対応して充電される。陰極のピークによって示されるように、Pd格子からのプロトンがNiOOH構造内に移動して、Ni(OH)2を再形成すると、放電が生じる。この20mVs−1サイクルにおける放電電流は67mAcm−2でピークに達し、通過する総電荷は257mCcm−2である。
【0067】
図3のボルタモグラムの形状は、スーパーキャパシタよりも電池の形状と密接に似ている。ここで、図4により明らかに示されるように、放電における電荷の大部分は、1.18Vよりも上で通過する。
【0068】
スーパーキャパシタがどの程度速く充電および放電されるかを決定するために、デバイスの電位を0V(放電状態)〜1.3V(充電状態)でステップさせ、25℃で電流応答を測定した。図5は、単一の充電/放電ステップシーケンスを示す。陽極のスパイクの間、800mCcm−2の電荷が通過する。デバイスの放電は、大きい陰極のスパイクによって表され、プロトンがNiOOH内に移動するときの最大振幅は50Acm−2である。ここで放電ステップの間に276mCcm−2が通過し、そのうちの222mCcm−2(直径200μmにわたって7×10−5C、または166mA.hg−1)は、初めの50ミリ秒で通過する。
【0069】
[(vi)スーパーキャパシタの組立ておよびサイクル寿命試験]
サイクル寿命を試験するために、1cm2の蒸着金基板上に析出させた上記の(ii)および(iii)で作製されるようなメソポーラスニッケル電極およびパラジウム電極からなる構成のスーパーキャパシタを組み立て、メソポーラスNi電極およびメソポーラスPd電極を、6MのKOHが充満された多孔質PTFE膜で隔てた。0V〜1.2Vの電位範囲でデバイスを500mVs−1で連続的にサイクルすることによって、ニッケル−パラジウムスーパーキャパシタのサイクル性(cyclability)を調査した。全ての性能データは、ニッケル電極の質量または幾何面積に関する単位で引用される。
【0070】
図6に示されるように、ボルタモグラムの形状は、図3で与えられる形状とはかなり異なる。ピークはかなり幅広であり、図3ではたった0.07Vであるのに対して、約0.5V隔てられている。これは、セルに課せられるIR限界と、多孔質セパレータの導入およびPdの遅い電気化学応答との組み合わせによるものであり、その容量は、この構成のNi(OH)2電極の容量よりも顕著に大きくはなかった。図6は、最初の4.8秒フルサイクルと15000回目とを比較する。ボルタモグラムの同様の形は、サイクリング中に電極が大きく劣化しなかったことを示す。ピーク電位のより低い値へのシフトは酸素の侵入によるものであり、酸素の侵入はパラジウム電極の平均水素含量を低下させ、従って負極の電位を上昇させると確信される。サイクルあたりの電荷の増大は、サイクリング中に酸化物層が厚くなるためであると確信される。
【0071】
この結果は2つのことを暗示している。まず第1は、メソポーラス電極が、挿入プロセスを用いるその他のスーパーキャパシタおよび電池系における容量の減少に関連するサイクリング時のデクレピテーション(decrepitation)に耐性があると思われることである。従って、図7に示されるような均一なモノリシック構造は、不均一な大きさ分布の焼結粒子の凝集体からなる構造よりも、体積膨張および収縮のひずみによく耐えると思われる。
【0072】
第2の暗示は、メソポーラスNi電極の容量が減少されないだけでなく、実際にはサイクリングと共に増大するという事実を扱う。6MのKOH中、電位サイクリング条件下で、より多くのNi系金属が酸化されるにつれて、Ni電極中のNi(OH)2の量が時間と共に増大できることを理解することによって、この効果は合理化される。事実上、これは、電極中の活物質の量を増大させ、従って容量を増大させる。アルカリ溶液中で適切なサイクリング条件を適用させることで、電着したNi電極の容量が30倍まで増大され得ることは、複数のグループによって既に示されている。ここで、最初のサイクリング中に既に45質量%の電極材料が使用されるので、このように容量の大きな増大は、本発明の構成では予期されない。いずれにしても、Ni系金属から電気的に非伝導性のNi(OH)2への完全な転換に相当する容量の大きな増大は、望ましくないであろう。何故なら、これは、電気伝導性を提供すると共にナノスケールの集電体の役割を果たすメソポーラス電極中のNi金属の連続的な通路を破壊し得るからである(図7を参照)。
【0073】
[実施例10]
[ナノ構造化水酸化ニッケル/炭素スーパーキャパシタの作製]
[(i)ニッケル基板の調製]
ニッケル箔(10μm厚)をJohnson Mattheyから入手し、次にメソポーラスニッケルを析出させるために以下のように調製した。
【0074】
ニッケル箔電極(4cm2)を、析出の前にイソプロパノールの超音波浴中で15分間、清浄にしてから、脱イオン水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させた。
【0075】
[(ii)六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
45重量%の0.2Mの酢酸ニッケル(II)、0.5Mの酢酸ナトリウムおよび0.2Mのホウ酸の水溶液、ならびに55重量%のBrij56(Brijは商標)非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。Nelson等のChem. Mater., 2002, 14, 524-529に開示される方法に従って、白金網対向電極を用いて25℃で、飽和カロメル電極に対して−0.9Vにおいて、ニッケル箔基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。析出後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄し、界面活性剤を除去した。厚さ約1マイクロメートルのメソポーラスニッケルフィルムが得られた。
【0076】
[(iii)高表面積の炭素電極の製造]
90重量%のNorit Ultra炭素(1,200m2g−1)、5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、2.5重量%のアセチレンブラック(100%圧縮)、および2.5重量%のSuperiorグラファイトを乳棒および乳鉢を用いて混合することによって、高表面積の炭素電極を製造した。次に、Durston Mini Millローリングミルを用いて、ペーストを手動でシート状に延ばした(フィルム厚50〜65μm)。次に金層(0.5mgcm−2、約100nm厚)を炭素フィルム上に蒸着させ、フィルムの伝導性を改善した。高表面積の炭素電極は、70〜100Fg−1の容量および0.45mgcm−2の質量を有した。
【0077】
[(iv)Niおよび炭素電極の作動]
Solartron1287電気化学インターフェースおよびCorrwareソフトウェアを用いて、サイクリックボルタンメトリー実験を実行し、National Instrumentsのデータ収集カードおよびLabVIEWソフトウェアとインターフェース接続された特注のポテンシオスタットおよびランプ発生器を用いて、電位ステップ実験を行った。
【0078】
メソポーラスNiおよび高表面積炭素の電気化学特性を比較するために、両方のタイプの電極の6MのKOH中のサイクリックボルタモグラムは、図8および図9にそれぞれ示される。Hg/HgOに対して0.46Vでは、Niの陽極のピークは、反応(1)によるNi(OH)2のNiOOHへの酸化を示し、続いて、0.32Vの陰極ピークで表されるNi(OH)2への還元が生じる。Ni(OH)2の存在は、作製、貯蔵、およびそれに続くサイクリングまたはコンディショニングの間に、下側にあるニッケルが酸化することによると思われる。後者のピークは、電極のプロトン貯蔵容量、すなわちプロトン貯蔵のための電極の可逆的な容量を表す。図9では、これは、Hg/HgOに対して0.6V〜−0.5Vで、20mVs−1において104mCcm−2である。
【0079】
6MのKOH中の高表面積炭素電極の電気化学は、通常、純粋な二重層の挙動を有し、いかなるファラデー電気化学も示さない。6MのKOH中の炭素電極の有用な電位窓は、溶媒の分解によってのみ制限され、負の限界では水素が発生し、正の限界では酸素が発生する。メソポーラスNiおよび高表面積炭素のボルタンメトリーの比較に基づいて、これらの2つの電極を用いる電荷貯蔵デバイスは、約1.4Vの放電電圧を有し得ることが予期され得る。何故なら、これは、ほぼ、炭素電極における水素発生の開始(Hg/HgOに対して−1.0V)と、NiOOHへのH+のインターカレーション(Hg/HgOに対して0.4V)との間の電位差だからである。
【0080】
[(v)スーパーキャパシタの組立ておよび充電/放電特性試験]
スーパーキャパシタ構成におけるメソポーラスニッケルの性能および限界を研究するために、より高い容量およびパワー能力を有する負極が必要とされた。このために、上記(iii)で作製された高表面積炭素フィルムを使用した。性能限界がニッケル電極における限界によるように、高表面積炭素電極の電荷貯蔵能力をメソポーラスニッケル電極よりもかなり大きくした。
【0081】
従って、6MのKOH溶液中で、ニッケル電極のそれぞれの側で、いずれの場合も25μmのCelgardセパレータで隔てられた2つの4cm2の高表面積炭素電極(上記(iii)で作製)と共に、厚さ約12μm(厚さ10μmの箔集電体を含む)の両面4cm2(活性面積8cm2)のメソポーラスニッケル正極(上記(ii)で作製)を用いて、セパレータ(Celgard、ポリプロピレン、25μm、2.75mgcm−2)を有する二電極スーパーキャパシタを組み立てた。上記(ii)で作製されるこの場合のメソポーラスニッケルの合成における析出電荷は、−3.9Ccm−2であった。これは、50%の析出効率を考慮に入れると、箔基板を含むニッケルサンプルでは39.4mgの質量に相当する。2つの炭素電極の総質量は28.5mgであり、セパレータは25.8mgであり、従って乾燥キャパシタの総質量は93.7mgであった。
【0082】
キャパシタのボルタンメトリー応答が安定するまで、新しく作製したスーパーキャパシタの電位を、5mVs−1において0V〜1.5Vで、二電極装置内でサイクルさせ、この時点で、炭素およびニッケル電極の電荷貯蔵容量は平衡状態にあると考えられた。正極および負極を別々に充電する必要はなかった。図10は、安定化した後に0V〜1.5Vの電位範囲でサイクルした二電極スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。約1.35Vにおいて、デバイスは、Ni(OH)2からのプロトンの除去およびNiOOHの形成に対応して充電される。陰極ピークにより示されるように、プロトンがNiOOH構造内に移動してNi(OH)2を再形成すると、放電が生じる。この5mVs−1サイクルにおける放電電流は、1.3mAcm−2でピークに達し、通過する総還元電荷は133mCcm−2である。
【0083】
図10のボルタモグラムの形状は、スーパーキャパシタよりも電池の形状とより密接に似ている。ここで、図11により明らかに示されるように、放電における電荷の大部分は、Hg/HgOに対して0.9Vよりも上で通過する。
【0084】
スーパーキャパシタがどの程度速く充電および放電されるかを決定するために、デバイスの電位を0V(放電状態)〜1.4V(充電状態)でステップさせ、25℃で電流応答を測定した。図12は、単一の充電/放電ステップシーケンスを示す。陽極のスパイクの間、3秒間で105mCcm−2の電荷が通過する。デバイスの放電は、プロトンがNiOOH内に移動するときに、大きい陰極のスパイクによって表される。ここで、放電ステップの間に95mCcm−2が通過し、そのうち51mCcm−2は、初めの100ミリ秒で通過する。
【0085】
[実施例11]
[ナノ構造化ニッケル/鉄スーパーキャパシタの作製]
[(i)ニッケル基板の調製]
メソポーラスニッケルフィルムのために、ニッケル箔(10μm厚、4cm2)をJohnson Mattheyから入手し、次にメソポーラスニッケルを析出させるために、次のように調製した。
【0086】
鉄フィルムでは、次にメソポーラス鉄を析出させるために、ニッケル箔(Goodfellow、10μm、2cm2)を次のように調製した。
【0087】
ニッケル箔基板は、析出の前にイソプロパノールの超音波浴中で15分間清浄にしてから、脱イオン水ですすぎ、周囲条件下で乾燥させた。
【0088】
[(ii)六方晶系の液晶相からのニッケルの電着]
45重量%の0.2Mの酢酸ニッケル(II)、0.5Mの酢酸ナトリウムおよび0.2Mのホウ酸の水溶液、ならびに55重量%のBrij56(Brijは商標)非イオン性界面活性剤(C16EOn、nは約10、Aldrichから入手)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。Nelson等のChem. Mater. , 2002, 14, 524-529に開示される方法に従って、飽和カロメル電極に対して−0.9Vで、25℃で白金網対向電極を用いて、ニッケル箔基板上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。総析出電荷は2.0Cであった。析出の後、フィルムを多量のイソプロパノール中で24時間洗浄し、界面活性剤を除去した。
【0089】
[(iii)六方晶系の液晶相からの鉄の電着]
脱酸素化した40重量%の0.2Mの硫酸鉄(II)の水溶液および60重量%のBrij56非イオン性界面活性剤(C16EOn、ここでnは約10、Aldrich)から、通常のトポロジーの六方晶(HI)相を有する混合物を調製した。飽和カロメル電極に対して−0.9Vで、白金網対向電極を用いて25℃で、ニッケル箔基板(面積2cm2)上への電着をポテンシオスタットを用いて実行した。0.2mAhの電荷が通過した後、析出電位からフィルムが絶縁される直前にフィルムを亜鉛箔に取り付けることにより、陰極の保護下でフィルムを析出混合物から取り出した。亜鉛箔と共にフィルムを多量の脱酸素化アセトン中で1時間洗浄し、界面活性剤を除去した。
【0090】
[(iv)鉄電極の試験]
洗浄後、鉄電極を6MのKOH水に浸漬し、亜鉛を取り外した。開回路の電位を測定し、充電されたナノ構造化NiOOH電極に対して1.1Vであることが分かった。Solartron1287電気化学インターフェースおよびCorrwareソフトウェアを用いて、サイクリックボルタンメトリー実験を実行した。
【0091】
6MのKOH中の鉄電極のサイクリックボルタモグラムを20mVs−1で実施した。結果は図13に示される。これは、Hg/HgOに対して−1.0Vの陽極ピークと、−1.1Vの陰極ピークとを示す。陽極ピークの−1.0V〜−0.3Vで通過する総電荷は、17mCであった。−0.3Vと、−1.15Vにおける水素発生の妨害との間に通過する陰極電荷は、図14に示されるように、25mCであった。
【0092】
[(v)スーパーキャパシタの組立ておよび充電/放電特性試験]
上記のように作製した鉄およびニッケル電極を6MのKOH溶液中に浸漬させた。開回路の電位を測定し、1.1Vであることが分かった。2つの電極および溶液は、このようにして、サイクリング試験のために本発明者等のキャパシタを構成した。
【0093】
新しく作製したキャパシタの電位を、5mVs−1において、0V〜1.4Vでサイクルした。図15は、二電極スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。負の電流としてプロットされる放電は、ピーク電流が0.15mAの幅広のピークを1.1V付近に示す。図16のボルタモグラムの積分により、貯蔵された総電荷は12mCであることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】Pd格子への、およびPd格子からNiOOH正極プロトンシンク(proton sink)への充電および放電におけるプロトンの流れを示す概略図を表す。
【図2】6MのKOH中20mVs−1における、直径1mmのHIPdディスクのサイクリックボルタンメトリー(−)と、200μmのHINiディスクのサイクリックボルタンメトリー(----)との比較を示す。
【図3】6MのKOH中で1cmだけ分離された20mVs−1におけるサイクリックボルタンメトリーによる、200μmのHINiディスクに基づくスーパーキャパシタの充電/放電挙動を示す。
【図4】図3に示される20mVs−1の放電中の、電位に対するデバイスからの電荷の流れを示す。
【図5】6MのKOH中の1cm2のHIPd電極と共に200μmのHINiディスクで構成される、6MのKOH中のHINi/HIPdスーパーキャパシタの電位ステップ充電/放電を示す。
【図6】500mVs−1において、多孔質PTFEセパレータを組み込んだ1cm2HINi/1cm2HIPdスーパーキャパシタの最初のフルサイクル(−)(細線)と、15,000回目のサイクル(−)(太線)との比較を示す。
【図7】ニッケル集電体のマトリックス中に保持された酸化活物質Ni(OH)2で取り囲まれた細孔を示し、さらに電極のバルク面積の45%を占める活物質を示すHI電極構造の概略図を表す。
【図8】実施例10で作製されるナノ構造化ニッケル/水酸化ニッケル電極のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図9】実施例10で作製される高表面積炭素電極のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図10】実施例10で作製されるニッケル−炭素スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムを示す。
【図11】図10のニッケル−炭素スーパーキャパシタのサイクリックボルタモグラムの電位−電荷の関係を示す。
【図12】25℃の6MのKOH中における、0V〜1.4Vでパルス化された図10のニッケル−炭素スーパーキャパシタ(8cm2、93.7mg)の電位ステップを示す。
【図13】実施例11で作製されるように、20mVs−1および25℃での6MのKOH中で、Hg/HgOに対して−0.3V〜−1.2Vの液晶テンプレート化鉄電極のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図14】図13に示されるサイクリックボルタモグラムの電位−電荷の関係を示す。
【図15】実施例11で作製されるように、5mVs−1および25℃での6MのKOH中における、0V〜1.4Vの二電極装置における液晶テンプレート化鉄に対するメソポーラスニッケルのサイクリックボルタモグラムを示す。
【図16】図15に示されるサイクリックボルタモグラムの電位−電荷の関係を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および電解質を有する電気化学セルであって、
少なくとも前記正極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記正極のメソポーラス構造が、金属、金属酸化物、金属水酸化物またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される材料で形成される請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記正極のメソポーラス構造が、金属および金属酸化物または水酸化物を含み、前記金属酸化物または水酸化物が、前記金属上に表面層を形成すると共に少なくとも前記細孔表面上に延在する請求項1または2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、遷移金属の合金、ニッケル/コバルト合金および鉄/ニッケル合金を含むニッケル合金と、コバルトと、白金と、パラジウムと、ルテニウムとから選択される金属を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記正極のメソポーラス構造が、酸化金、酸化パラジウム、酸化ニッケル(NiO)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)および酸化ルテニウムから選択される、金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記メソポーラス構造が、1〜10nm、好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内の細孔直径を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記メソポーラス構造が、4×1011〜3×1013細孔/cm2、好ましくは1×1012〜1×1013細孔/cm2の細孔数密度を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記メソポーラス構造の細孔の少なくとも85%が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の細孔直径を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記メソポーラス構造が、電極の厚さを貫通して連続的である細孔の六方晶系配列を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記細孔の六方晶系配列が、5〜9nmの範囲の細孔周期性を有する請求項9に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記負極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記メソポーラス構造が、0.5〜5マイクロメートルの範囲の厚さを有するフィルムである請求項1〜11のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記負極が、炭素、カドミウム、鉄、パラジウム/ニッケル合金、鉄/チタン合金、パラジウムおよび混合金属水素化物LaNi5Hxから選択される材料を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記負極が、炭素およびパラジウムから選択される材料を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも前記細孔表面上に延在し、前記負極が、炭素またはパラジウムのメソポーラス構造を有する請求項1〜14のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも前記細孔表面上に延在し、前記負極が、ナノ粒子状の炭素を含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記セルが、電池、スーパーキャパシタまたは結合型電池/スーパーキャパシタとして機能するように構成される請求項1〜16のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の電気化学セルを含む携帯用電子デバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および電解質を有する電気化学セルを含む携帯用電子デバイスであって、
少なくとも前記正極が、約10-8〜10-9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする携帯用電子デバイス。
【請求項2】
前記正極のメソポーラス構造が、金属、金属酸化物、金属水酸化物またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される材料で形成される請求項1に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項3】
前記正極のメソポーラス構造が、金属および金属酸化物または水酸化物を含み、前記金属酸化物または水酸化物が、前記金属上に表面層を形成すると共に前記細孔表面上に少なくとも延在する請求項1または2に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項4】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、遷移金属の合金、ニッケル/コバルト合金および鉄/ニッケル合金を含むニッケル合金と、コバルトと、白金と、パラジウムと、ルテニウムとから選択される金属を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項5】
前記正極のメソポーラス構造が、酸化金、酸化パラジウム、酸化ニッケル(NiO)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)および酸化ルテニウムから選択される、金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項6】
前記メソポーラス構造が、1〜10nm、好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内の細孔直径を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項7】
前記メソポーラス構造が、4×1011〜3×1013細孔/cm2、好ましくは1×1012〜1×1013細孔/cm2の細孔数密度を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項8】
前記メソポーラス構造の細孔の少なくとも85%が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の細孔直径を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項9】
前記メソポーラス構造が、電極の厚さを貫通して連続的である細孔の六方晶系配列を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項10】
前記細孔の六方晶系配列が、5〜9nmの範囲の細孔周期性を有する請求項9に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項11】
前記負極が、約10-8〜10-9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項12】
前記メソポーラス構造が、0.5〜5マイクロメートルの範囲の厚さを有するフィルムである請求項1〜11のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項13】
前記負極が、炭素、カドミウム、鉄、パラジウム/ニッケル合金、鉄/チタン合金、パラジウムおよび混合金属水素化物LaNi5Hxから選択される材料を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項14】
前記負極が、炭素およびパラジウムから選択される材料を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項15】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に前記細孔表面上に少なくとも延在し、前記負極が、炭素またはパラジウムのメソポーラス構造を有する請求項1〜14のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項16】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に前記細孔表面上に少なくとも延在し、前記負極が、ナノ粒子状の炭素を含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項17】
前記セルが、電池、スーパーキャパシタまたは結合型電池/スーパーキャパシタとして機能するように構成される請求項1〜16のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項1】
正極、負極および電解質を有する電気化学セルであって、
少なくとも前記正極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記正極のメソポーラス構造が、金属、金属酸化物、金属水酸化物またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される材料で形成される請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記正極のメソポーラス構造が、金属および金属酸化物または水酸化物を含み、前記金属酸化物または水酸化物が、前記金属上に表面層を形成すると共に少なくとも前記細孔表面上に延在する請求項1または2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、遷移金属の合金、ニッケル/コバルト合金および鉄/ニッケル合金を含むニッケル合金と、コバルトと、白金と、パラジウムと、ルテニウムとから選択される金属を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記正極のメソポーラス構造が、酸化金、酸化パラジウム、酸化ニッケル(NiO)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)および酸化ルテニウムから選択される、金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記メソポーラス構造が、1〜10nm、好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内の細孔直径を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記メソポーラス構造が、4×1011〜3×1013細孔/cm2、好ましくは1×1012〜1×1013細孔/cm2の細孔数密度を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記メソポーラス構造の細孔の少なくとも85%が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の細孔直径を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記メソポーラス構造が、電極の厚さを貫通して連続的である細孔の六方晶系配列を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記細孔の六方晶系配列が、5〜9nmの範囲の細孔周期性を有する請求項9に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記負極が、約10−8〜10−9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記メソポーラス構造が、0.5〜5マイクロメートルの範囲の厚さを有するフィルムである請求項1〜11のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記負極が、炭素、カドミウム、鉄、パラジウム/ニッケル合金、鉄/チタン合金、パラジウムおよび混合金属水素化物LaNi5Hxから選択される材料を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記負極が、炭素およびパラジウムから選択される材料を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも前記細孔表面上に延在し、前記負極が、炭素またはパラジウムのメソポーラス構造を有する請求項1〜14のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に少なくとも前記細孔表面上に延在し、前記負極が、ナノ粒子状の炭素を含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記セルが、電池、スーパーキャパシタまたは結合型電池/スーパーキャパシタとして機能するように構成される請求項1〜16のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の電気化学セルを含む携帯用電子デバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および電解質を有する電気化学セルを含む携帯用電子デバイスであって、
少なくとも前記正極が、約10-8〜10-9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含むことを特徴とする携帯用電子デバイス。
【請求項2】
前記正極のメソポーラス構造が、金属、金属酸化物、金属水酸化物またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される材料で形成される請求項1に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項3】
前記正極のメソポーラス構造が、金属および金属酸化物または水酸化物を含み、前記金属酸化物または水酸化物が、前記金属上に表面層を形成すると共に前記細孔表面上に少なくとも延在する請求項1または2に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項4】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、遷移金属の合金、ニッケル/コバルト合金および鉄/ニッケル合金を含むニッケル合金と、コバルトと、白金と、パラジウムと、ルテニウムとから選択される金属を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項5】
前記正極のメソポーラス構造が、酸化金、酸化パラジウム、酸化ニッケル(NiO)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)および酸化ルテニウムから選択される、金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項6】
前記メソポーラス構造が、1〜10nm、好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内の細孔直径を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項7】
前記メソポーラス構造が、4×1011〜3×1013細孔/cm2、好ましくは1×1012〜1×1013細孔/cm2の細孔数密度を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項8】
前記メソポーラス構造の細孔の少なくとも85%が、平均細孔直径の30%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の細孔直径を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項9】
前記メソポーラス構造が、電極の厚さを貫通して連続的である細孔の六方晶系配列を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項10】
前記細孔の六方晶系配列が、5〜9nmの範囲の細孔周期性を有する請求項9に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項11】
前記負極が、約10-8〜10-9mの断面の実質的に均一な大きさの細孔の周期的な配列を有するメソポーラス構造を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項12】
前記メソポーラス構造が、0.5〜5マイクロメートルの範囲の厚さを有するフィルムである請求項1〜11のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項13】
前記負極が、炭素、カドミウム、鉄、パラジウム/ニッケル合金、鉄/チタン合金、パラジウムおよび混合金属水素化物LaNi5Hxから選択される材料を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項14】
前記負極が、炭素およびパラジウムから選択される材料を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項15】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に前記細孔表面上に少なくとも延在し、前記負極が、炭素またはパラジウムのメソポーラス構造を有する請求項1〜14のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項16】
前記正極のメソポーラス構造が、ニッケルと、NiO、Ni(OH)2およびNiOOHから選択される酸化、水酸化またはオキシ水酸化ニッケルとを含み、前記酸化または水酸化ニッケルが、前記ニッケル上に表面層を形成すると共に前記細孔表面上に少なくとも延在し、前記負極が、ナノ粒子状の炭素を含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【請求項17】
前記セルが、電池、スーパーキャパシタまたは結合型電池/スーパーキャパシタとして機能するように構成される請求項1〜16のいずれか一項に記載の携帯用電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2006−515457(P2006−515457A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558854(P2004−558854)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005442
【国際公開番号】WO2004/054016
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
PYREX
【出願人】(500282999)ユニヴァーシティ・オブ・サウザンプトン (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
【住所又は居所原語表記】Highfield, Southampton, Hampshire SO17 1BJ, United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005442
【国際公開番号】WO2004/054016
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
PYREX
【出願人】(500282999)ユニヴァーシティ・オブ・サウザンプトン (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
【住所又は居所原語表記】Highfield, Southampton, Hampshire SO17 1BJ, United Kingdom
【Fターム(参考)】
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