説明

電子ペン

【課題】赤外光を吸収する所定のパターンによるドット情報を設けた記録用紙へ筆記を行った際に、その筆跡が記録用紙から反射される赤外光の受光を妨げることなく、また必要に応じて、筆記先端を紙面に当接させても紙面を汚すことがないようにすることができる構造の電子ペンを得ることを目的とする。
【解決手段】操作ノブを縦孔の前方へ前進させることにより押圧体でノック部材をノックして芯の繰り出しを行い、操作ノブを前進させた状態で該操作ノブを横孔の方向へ回動をさせることにより押圧体の係合突部を係合溝に係合させノック部材のノック状態を維持してシャープペンシル体のチャック機構の開放状態を維持する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光を吸収する所定のパターンによるドット情報を設けた記録用紙に筆跡を残すと共に、その筆跡情報を電子的に認識することができる電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外光を吸収する所定のパターンによるドット情報を設けた記録用紙に、筆記ユニットの筆記先端で筆記手段と、記録用紙へ赤外光を照射する発光手段と、記録用紙から反射された赤外光を受光する受光手段と、赤外光の反射状況をもとに筆記体が通過した領域のドット情報を認識して位置データとして算出する処理手段とを備えた電子ペンについては知られており、例えば特開2003−308163号公報等により提案されている。また筆記ユニットの筆記先端を保護するため、使用時のみケース内から筆記先端を出没させることができる筆記体出没機構を備えた電子ペンも既に販売されている。
【0003】
簡単に前記筆記体出没機構を備えた電子ペン構造について図を用いて説明する。先ず、前記電子ペンの使用にあたっては専用の記録用紙が必要である。その専用の記録用紙100は、図1に示すように、赤外光を吸収するインクで、直交する格子101、102の交点から上下左右のいずれかにずれて各ドット103が施されてる。その記録用紙に筆記を行う電子ペン1の概略構造は、例えば図2に示すように、ケース2の先端部に配した先口3の開口部3aより記録用紙100に筆記する筆記ユニット4の筆記先端4aを突出させており、ケース2内に収容した筆記体出没機構5により筆記先端4aを出没可能としている。筆記体出没機構5には筆記先端4aで筆記を行った際に圧力を感知する感圧センサ6を備えている。また、ケース2の先端面には、赤外光を通す赤外光照射/受光用孔104を設けてあり、赤外光照射/受光用孔104の奥には、赤外光を発光する手段であるダイオード105と、該ダイオード105から記録用紙へ照射した赤外光の反射を受光する手段であるカメラ106とを配設してある。また、該カメラ106を通じて、前記筆記先端4aが通過した領域のドット情報を位置データとして算出する処理手段107と、前記位置データを記録するメモリ(記録手段)108と、前記位置データを外部へ送信する送信手段109と、前記ダイオード105、カメラ106、処理手段107等の前記した各手段等への電源を供給する電源部110が配設されている。尚、電源部110にはスイッチ111を設けてあり、また、ダイオード105およびカメラ106への電気供給は前記感圧センサ6が反応した時に行われるようにしてある。
【0004】
従来、こうした電子ペンにおいては、電子的な筆跡の読み取りとは別に、記録用紙に書いた筆跡が見えるように油性インクを筆記ユニットに収容してあるボールペンを装着してある。当然、用紙に書いたボールペンによる筆跡は、砂消しゴムや修正テープ等で見えないようにすることはできるが、この様な消し方は記録用紙のドットを傷つけてしまったりドット情報を判読できないものにしてしまうこととなる。最近、この電子ペンの使用方法は多様化しており、記録用紙に記載した筆跡が容易に消去可能な筆記体を配設したものの要望がある。
【0005】
さらに、この電子ペンの他の使い方として、例えば世界地図を印刷してある紙に前記の記録用紙と同様のドット情報を設けた地図に対して、電子ペンの筆記先端を当接させることで、当接した地図上の国を電子ペンが認識して国名を音声で発するシステムもある。このような使い方では地図は恒久的に使いたいので、電子ペンに装着したボールペンのインクを付着させてしまうことは好ましくない。したがって目的によっては、筆記先端を紙面に当接させても筆跡が残らずスタイラスペンのように使用できるものが求められている。
【特許文献1】特開2003−308163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記事実に鑑み、赤外光を吸収する所定のパターンによるドット情報を設けた記録用紙へ筆記を行った際に、その筆跡が記録用紙から反射される赤外光の受光を妨げることなく、また必要に応じて、筆記先端を紙面に当接させても紙面を汚すことがないようにすることができる構造の電子ペンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず始めに本発明は、後述の従来図に示す既に販売されている製品で、ケースの側面に筆記先端を繰り出すための操作ノブを備えた所謂サイドノック式の筆記体出没機構を備えた電子ペン構造を用いることが肝要である。次に、図を用いて本発明に用いる従来の電子ペンにおける筆記体出没機構について詳述する。図3は従来の電子ペンの前方外観である。図4は図3を側面から見た図でケースの一部を外した状態である。図5は図3の状態における内部機構図で、図6は図5のボールペン体を外した状態の図である。また、図7はボールペン体単体の図で、図7Aは正面図、図7Bは図7Aを横から見た図である。図3、図4に示すように、電子ペン1の外殻を形成するケース2の前方部には、螺子で着脱可能な先口3を配設してあり、ケース2の側面には軸心に沿った方向に開口する縦孔2aと該縦孔2aの前方で直交する横孔2bとからなる操作孔2cを設けてあり、ケース2の内部に配設した押圧体16の操作ノブ16aを前記操作孔2cより突出させている。
【0008】
また、ボールペン体17はケース2に配設した保持部材18の保持部18aに保持されており、図5に示すように筆記先端17aを先口3内に収容し、ボールペン体17の軸筒17bの先端部を先口3の内面に当接して前方への動きを規制し、軸筒17bの後部に配設したノック部材17cを前記操作ノブ16aを設けた押圧体16の前方部に当接させている。また、図示しないがボールペン体17の内部にはスプリングを配設しており、前記ノック部材17cを常時後方へ付勢した状態としている。また、押圧体16の後部16bには円環部材19を装着しており、押圧体16の後端に形成した突起部16cと前記円環部材19との間にコイルスプリング20を装着し、押圧体16を常時後方へ付勢した状態としている。
また、図7に示すようにボールペン体17のノック部材17cの側面にはカム面17dを形成してあり、図5に示すように前記カム面17dを押圧体16の前方部に形成したカム面16dに係合させ、操作ノブ16aの前後動に伴ってノック部材17cが前後動し、且つ操作ノブ16aの回動に伴ってノック部材17cが回動するようになっている。
【0009】
また、ボールペン体17の軸筒17bの側面には、軸心に沿った縦スリット17eと該縦スリット17eの前方で直交する横スリット17fとからなるスライド孔17gを形成してあり、前記ノック部材17cの側面に形成した突起17hをスライド孔17gに挿通してある。尚、ボールペン体17の筆記先端17aが先口3内にある時には、突起17hは前記スライド孔17gの縦スリット17eの後方に位置した状態となり、また、突起17hがこの状態にある時の操作ノブ16aは、図3に示す様に、操作孔2cの縦孔2aの後方に位置する。また、図8は図3の状態にある筆記体出没機構を裏面から見た図である。図8に示す通り、保持部材18の後部には、軸心に沿った縦溝18bと該縦溝18bの前方で横方向に拡幅した係合溝18cとからなる摺動溝18dを形成してあり、また押圧体16の操作ノブ16aの反対側に形成した係合突部16eを該摺動溝18dに挿通してある。尚、操作ノブ16aが図3の位置にある時には、係合突部16eは摺動溝18dの縦溝18bの後部に位置する。
【0010】
図9は操作ノブを操作した状態の図である。図10は図9の状態における内部機構図である。また、図11は図9の状態にある筆記体出没機構を裏面から見た図である。図9に示すように、従来の筆記体出没機構では操作ノブ16aを操作孔2cの縦孔2aの前方に移動させることにより、ボールペン体17の筆記先端17aを先口3の開口部3aより突出させることができ、さらに操作孔2cの横孔2b方向へ回動させることにより、筆記先端17aの突出状態が維持できる構造である。この時ケース2の内部では、図10に示すように、操作ノブ16aの前進により押圧体16がノック部材17cをノックして、ボールペン体17の内部に配設したスプリング(図示せず)を圧縮ながら筆記先端17aを突出させている。また、押圧体16の前進に伴って、ノック部材17cの側面に設けた突起17hがスライド孔17gの前方へ移動し、さらに操作ノブ16aの回動でカム面16dがノック部材17cのカム面17dを回動し、突起17hをスライド孔17gの横スリット17fに係止させる。この時に押圧体16の裏側では、押圧体16の係合突部16eが摺動溝18dの前方へ前進し、操作ノブ16aの回動によって前記係合突部16eが係合溝18cに係合し、操作ノブ16aを反対方向に回動させない限り係合状態を維持して、突出した筆記先端17a筆記により筆記を行うことができる筆記体出没機構5としてある。尚、ボールペン体17は、軸筒17bの側面に設けたスリット17iに保持部材18に形成した突出部18eを係止させており、操作ノブ16aを回動させても軸筒17bが回転しない構造としてあるので、ボールペン体17はノック部材17cの回動だけを行うことができる。また、図10に示すように、ボールペン体17の筆記先端17aを突出させた状態のときには、筆記時の筆圧が軸筒17bにかかり、その軸筒17bがノック部材17cの外周に配設した筒体21を押圧して、筒体21に形成したフランジ21aにより保持部材18に装着した感圧センサ6を圧接して反応させる構造となっている。
【0011】
また、図示しないが、図4に破線で示したCの箇所には赤外光照射/受光用孔を設けて赤外光の照射/受光を可能にしてあり、赤外光を発光する手段であるダイオードと、該ダイオードからの赤外光の照射に基づく記録用紙からの赤外光の反射を受光する手段であるカメラとを配設してある。また、ケース2の後部には筆記先端が通過した領域のドット情報を位置データとして算出する処理手段と、前記位置データを記録するメモリ(記録手段)と、前記位置データを外部へ送信する送信手段と、前記ダイオード、カメラ、処理手段等の前記した各手段等への電源を供給する電源部が配設されている。
【0012】
本発明は、上述した従来の電子ペンの筆記体出没機構にあるボールペン体を取り外し、赤外光を透過し且つ消しゴムで消去可能な芯を収容したシャープペンシル体を前記筆記体出没機構に装着してなる構造とする。具体的には、筆記体繰出機構の筆記ユニットを、軸筒の内部に赤外光を透過し且つ消しゴムで消去可能な芯を収容したシャープペンシル体とし、シャープペンシル体の先端がケースの先口より常時突出するようシャープペンシル体をケースに装着し、シャープペンシル体のノック部材を筆記体出没機構の押圧体に当接させ、ケース側面より突出した操作ノブを前進させることにより押圧体でノック部材をノックして、芯の繰り出しを行い、操作ノブが前進した位置で操作ノブを回動をさせることにより、押圧体に設けた係合突部をケース内に設けた係合溝に係合させ、ノック部材のノック状態を維持してシャープペンシル体のチャック機構の開放状態を維持する構造とする。尚、一般的な芯には炭素が含有されており、この炭素は赤外光を吸収してしまうので、この芯を用いて前記記録用紙に筆記を行うと筆跡で正確なドット情報の判読ができなくなり、電子ペンとして筆跡情報の読み取り機能を果たせない。したがって、本発明に用いる芯は赤外光を吸収しないことが必要条件である。こうした炭素を有さず消しゴムで消去可能な芯としては、窒化硼素と粘土と有機高分子化合物とからなる混練物を、押し出し成形して色芯素材を形成し、さらにこの色芯素材を、高温で焼成する際に、酸化雰囲気を、焼成工程の一部又は全部に用いることにより、前記の有機高分子化合物を該色芯素材より除去して、さらにこの白色多孔質焼結体の色芯素材にインキを含浸させてなる色芯であり、特公昭51−41376号公報より開示されているものが適している。
【0013】
また、シャープペンシル体の軸筒の側面に、軸心に沿った縦スリットと該縦スリットの前方で直交する横スリットとからなるスライド孔を設け、スライド孔にノック部材の側面に設けた突起を摺動可能に挿通し、操作ノブを操作孔の前方へ前進させた際にノック部材の突起がスライド孔の縦スリットを前進し、前記操作体を前記操作孔の横孔方向へ回動させた際に前記ノック部材の突起が前記スライド孔の横スリットに係止して、シャープペンシル体のチャック機構を開放した状態で維持する構造とする。
【0014】
また、シャープペンシル体のチャック機構における芯を挟持するチャック部材を樹脂材で形成する。
【0015】
また、シャープペンシル体の先端を樹脂材で形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述した従来の電子ペン構造を利用することで、容易にシャープペンシル体の芯繰り出しを行うことができる電子ペンが得られる。その芯には、赤外光を透過し且つ消しゴムで消去可能な芯を使用するので、手書きした筆跡は視認可能であると共にその筆跡を消しゴムで容易に消去することができるものとなり、筆記および消去を行っても記録用紙のドット情報を損なうことなく電子ペンとして筆跡情報を読み取ることができる。また、シャープペンシル体のチャックを開放状態で維持することで、その状態で芯を引っ込めてしまえば、紙を汚すことなくスタイラスペン的な使用ができ、さらに折れやすい特性がある色芯を使用してもチャックが開放していれば、落下や持ち運びによる衝撃を受けてもチャックが開放しているので芯に負担が掛かりにくく、芯折れの発生を防ぐ効果がある。
【0017】
請求項2に係る発明では、操作ノブの操作に伴って、シャープペンシル単体でもチャック機構の開放状態を維持できるので、電子ペンのケースから筆記ユニットであるシャープペンシル体を外して保管する場合においても、シャープペンシル体のチャックを開放した状態にしておけば、シャープペンシル体に収容してある芯の芯折れが生じにくくなる。
【0018】
請求項3に係る発明では、シャープペンシル体のチャック機構における芯を挟持するチャック部材を樹脂材で形成するので、折れやすい特性がある色芯を当該チャック部材で挟持する場合においても、芯に掛かる負担を軽減することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、シャープペンシル体の先端部を樹脂材で形成するので、電子ペンをスタイラスペンのようにして使用する場合においても、当接させた面をシャープペンシル体の先端で傷つけ難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に図面を参照しながら、本発明の電子ペンの実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また図中の同じ部材、同じ部品については、同じ符号としてある。また、本実施例においては、筆記先端がある側を前方として表現する。
【実施例】
【0021】
図12は本実施例の電子ペンの前方外観である。図13は図12の状態における内部機構図である。図14はシャープペンシル体単体の図で、図14Aは正面図、図14Bは図14Aを横から見た図である。図13に示す電子ペン1Aは、前述の図6の状態におけるボールペン体を外した従来の電子ペン1の先口3を取り外して、図14に示すシャープペンシル体を装着したものである。したがって、前述した従来の電子ペンと同様の部材、部品、構造については説明を省略する。図13に示すように、電子ペン1Aは、シャープペンシル体27を保持部材18の保持部18aに、樹脂材からなる先端部27aを先口3の開口部3aから突出させて装着してある。尚、シャープペンシル体27は、先口3の内面にその前方部を当接して前方への動きを規制し、軸筒27bの後部に配設したノック部材27cを前記操作ノブ16aを設けた押圧体16の前方部に当接させている。
【0022】
図示はしないが、シャープペンシル体27の内部には樹脂製のチャック部材とそのチャック部材を弾発して芯28を挟持する為のスプリングを配したチャック機構を備えており、このスプリングにより前記ノック部材27cを常時後方へ付勢した状態としている。本実施例では、芯として、シリカ45重量部を約50〜100重量部の水に分散させた後、酸化硼素45重量部と約50重量部の水に溶解させたポリビニールアルコール10重量部を加えて水を蒸発させながら混練して細線状に押し出し成形して色芯素材を形成し、この色芯素材を105℃で乾燥した後に酸化雰囲気中で600℃まで昇温して酸化焼成し、次にアルゴンガス中で1100℃まで昇温して焼成して得られた焼結体を青色インキ中に浸漬けして、焼結体の気孔中に青色のインキを含浸させて製造された青色の色芯を用いて、シャープペンシル体27の軸筒27bの内部に収容してある。
【0023】
図14に示すようにシャープペンシル体27のノック部材27cの側面にはカム面27dを形成してあり、図13に示すように前記カム面27dを押圧体16の前方部に形成したカム面16dに係合させてあり、操作ノブ16aの前後動に伴ってノック部材27cが前後動し、且つ操作ノブ26aの回動に伴ってノック部材27cが回動するようになっている。尚、シャープペンシル体27は、軸筒27bの側面に設けたスリット27iに保持部材18に形成した突出部18eを係止させており、操作ノブ16aを回動させても軸筒27bが回転しない構造としてあるので、シャープペンシル体27はノック部材27cの回動だけを行うことができる。また、シャープペンシル体27の軸筒27bの側面には、軸心に沿った縦スリット27eと該縦スリット27eの前方で直交する横スリット27fとからなるスライド孔27gを形成してあり、前記ノック部材27cの側面に形成した突起27hをスライド孔27gに挿通してある。本実施例の電子ペン1Aは、図12に示す操作ノブ16aを操作孔2cの縦孔2aの前方に移動させることにより、押圧体16でノック部材27cをノックして芯28の繰り出しを行うことができる筆記出没機構5Aとしてある。また、シャープペンシル体27から芯28を繰り出した状態で筆記を行うと、筆記時の筆圧がシャープペンシル体27の軸筒27bにかかり、その軸筒27bがノック部材17cの外周に配設した筒体21を押圧して、筒体21に形成したフランジ21aにより保持部材18に装着した感圧センサ6を圧接して反応させる構造となっている。
【0024】
図15は操作ノブを回動した状態における内部機構の図である。また、図16は図15の状態にある筆記体出没機構を裏面から見た図である。本実施例の電子ペン1Aは、操作ノブ16aを前進させ操作孔2cの横孔2b方向へ回動させることにより、図16に示すように押圧体16の裏面では、係合突部16eが摺動溝18dの前方へ前進し、操作ノブ16aの回動により係合溝18cに係合する。また、図15に示すようにシャープペンシル体27は、ノック部材27cの突起27hが軸筒27bのスライド孔27gの横スリット27fに係止して、シャープペンシル体27のチャック機構の開放状態を維持する。尚、シャープペンシル体27は軸筒27bの側面に設けたスリット27iに保持部材18に形成した18eを係止させており、操作ノブ16aを回動させても軸筒27bが回転しない構造としてあるので、シャープペンシル体27はノック部材27cの回動だけを行うことができる。この状態で芯28をシャープペンシル体27の先端27a内に押し込めば、芯が突出してくることはなく、電子ペン1Aをスタイラスペンとして使用することができる。尚、芯28をシャープペンシル体27に引き込んだ状態で使用した場合でも、筆圧はシャープペンシル体27の軸筒27bにかかり、その軸筒27bがノック部材17cの外周に配設した筒体21を押圧して、筒体21に形成したフランジ21aにより保持部材18に装着した感圧センサ6を圧接して反応させる構造となっている。また操作ノブ16aを反対方向に回動させると、押圧体16の係合突部16eが係合溝18cから外れると共に、ノック部材27cの突起27hが横スリット27fから外れ、操作ノブ16aがシャープペンシル体27のスプリング(図示せず)および押圧体16に配設されたコイルスプリング20の弾発力により操作ノブ16aを操作孔2cの後方へ移動するので、ノック部材2cの突起27hを横スリット27fに係止させたまま、ケース2の先端に装着した先口3を取り外すことにより、シャープペンシル体27のチャック機構を開放状態を維持したままシャープペンシル体を取り外すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願発明の電子ペンは、専用の用紙に記載された筆跡を容易に消しゴムで消去することができるので、例えば、幼児や子供達に対する用途として、問題に対する回答欄として記録用紙を採用した場合に、回答欄に何度でも回答を書き換えることができると共に、最終的な回答は記録用紙に記録として残せる、電子データも記録できる等、使用用途が拡がる。また、シャープペンシルはボールペンとは異なり、落下等の衝撃を受けても電子ペン内にインキが逆流してしまう心配がなく、またボールペンのように筆記時に空気交替を要することもないので、逆さまに筆記を行っても書き味が悪くなる心配はなく、ボールペンインキのように熱による悪影響をシャープペンシルの芯は受けないので、過酷な条件下における使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】記録用紙概念図
【図2】従来の筆記体出没機構を備えた電子ペン構造。
【図3】従来の電子ペンの前方外観である。
【図4】図3を側面から見た図でケースの一部を外した状態である。
【図5】図3の状態における内部機構図である。
【図6】図5のボールペン体を外した状態の図である。
【図7】ボールペン体単体の図で、図7Aは正面図、図7Bは図7Aを横から見た図である。
【図8】図3の状態にある筆記体出没機構を裏面から見た図である。
【図9】操作ノブを操作した状態の図である。
【図10】図9の状態における内部機構図である。
【図11】図9の状態にある筆記体出没機構を裏面から見た図である。
【図12】本実施例の電子ペンの前方外観である。
【図13】図12の状態における内部機構図である。
【図14】シャープペンシル体単体の図で、図14Aは正面図、図14Bは図14Aを横から見た図である。
【図15】は操作ノブを回動した状態における内部機構の図である。
【図16】図15の状態にある筆記体出没機構を裏面から見た図である。
【符号の説明】
【0027】
100…記録用紙、101,102…格子、103…ドット、
1,1A…電子ペン、
2…ケース、2a…縦孔、2b…横孔、2c…操作孔、
3…先口、4…筆記ユニット、4a…筆記先端、
5,5A…筆記体出没機構、
6…感圧センサ、104…赤外光照射/受光用孔、105…ダイオード、
106…カメラ、107…処理手段107、108…メモリ(記録手段)、
109…送信手段、110…電源部、111…スイッチ、
16…押圧体、16a…操作ノブ、16b…後部、16c…突起部、
16d…カム面、16e…係合突部、
17…ボールペン体、17a…筆記先端、17b…軸筒、17c…ノック部材、
17d…カム面、17e…縦スリット、17f…横スリット、
17g…スライド孔、17h…突起、17i…スリット、
18…保持部材、18a…保持部、18b…縦溝、18c…係合溝、
18d…摺動溝、18e…突出部、19…円環部材、
20…コイルスプリング、21…筒体、21a…フランジ、
27…シャープペンシル体、27a…先端部、27b…軸筒、
27c…ノック部材、27d…カム面、27e…縦スリット、
27f…横スリット、27g…スライド孔、27h…突起、27i…スリット、
28…芯。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心に沿った縦孔と該縦孔の前方で直交する横孔とからなる操作孔を外部に有し、軸心に沿った縦溝と該縦溝の前方で拡幅した係合溝とからなる摺動溝を内部に有するケース内に、前記操作孔内で摺動する操作ノブと係合溝内で摺動する係合突部とを有する押圧体をコイルバネにより後方へ弾発して配設し、操作ノブを操作孔の前方へ前進させることにより、前記ケース内に着脱可能に装着した筆記ユニットの筆記先端を該ケースの先端に螺合した先口から突出させ、操作ノブを前進させた位置で操作孔の横孔方向へ回動させることにより、前記押圧体の係合突部をケース内の係合溝に係合させ筆記ユニットの筆記先端の突出状態を維持する構造の筆記体出没機構と、赤外光を吸収する所定のパターンによるドット情報を設けた記録用紙に前記筆記ユニットの筆記先端で筆記を行う際に、記録用紙へ赤外光を照射する発光手段と、該記録用紙から反射された赤外光を受光する受光手段と、赤外光の反射状況をもとに筆記先端が通過した領域のドット情報を認識して位置データとして算出する処理手段とを備えた電子ペンにおいて、前記筆記ユニットを、軸筒の内部に赤外光を透過し且つ消しゴムで消去可能な芯を収容したシャープペンシル体とし、該シャープペンシル体を前記ケースに先端が前記先口より常時突出するよう装着し、該シャープペンシル体のノック部材を押圧体の前方に当接させ、操作ノブを前記縦孔の前方へ前進させることにより押圧体でノック部材をノックして芯の繰り出しを行い、操作ノブを前進させた状態で該操作ノブを前記横孔の方向へ回動をさせることにより押圧体の係合突部を係合溝に係合させノック部材のノック状態を維持してシャープペンシル体のチャック機構の開放状態を維持する構造としたことを特徴する電子ペン。
【請求項2】
前記シャープペンシル体が、軸筒の側面に軸心に沿った縦スリットと該縦スリットの前方で直交する横スリットとからなるスライド孔を設け、該スライド孔に前記ノック部材の側面に設けた突起を摺動可能に挿通し、前記操作ノブを前記操作孔の前方へ前進させた際に前記ノック部材の突起がスライド孔の縦スリットを前進し、前記操作体を操作孔の横孔の方向へ回動させた際に前記ノック部材の突起が前記スライド孔の横スリットに係止して、シャープペンシル体のチャック機構を開放した状態で維持する構造としたことを特徴する請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
シャープペンシル体のチャック機構における芯を挟持するチャック部材を樹脂材で形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子ペン。
【請求項4】
シャープペンシル体の先端部を樹脂材で形成したことを特徴する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子ペン。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−219723(P2007−219723A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38095(P2006−38095)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】