説明

電子レンジ用箱入り包装袋

【課題】できるだけ手間をかけずに電子レンジにて加熱することのできる電子レンジ用箱入り包装袋を提供することである。
【解決手段】相互に対向する前面11及び裏面12と、前面11及び裏面12の縁に連なる側面13a、13b、13c、13dとを有する箱体10に、蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された電子レンジ用の包装袋20が納められた構造となる電子レンジ用箱入り包装袋であって、箱体10の前面11には、電子レンジによる加熱時における包装袋20の内圧上昇に伴う膨張によって開放可能な開封部15が設けられ、包装袋15は、蒸気抜き部21a、21b、21cが開封部15に対向するように箱体10に納められた構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用箱入り包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジでの加熱が可能となる食品用のパウチ(包装袋)が化粧箱(箱体)に納められた構造となる電子レンジ用箱入りパウチが提案されている(特許文献1参照)。この電子レンジ用箱入りパウチは、電子レンジ加熱パウチの納められた化粧箱の上面の剥離片を剥離して当該化粧箱を開封し、上面の前記剥離した部分に対向した下面側の部分を支点にして先端部を回動させることにより、化粧箱に収納されたパウチの端部が露出するようになっている。そして、回動した先端部分が支持台のようになって傾斜した化粧箱にその端部が露出した状態で納められたパウチが電子レンジ内で加熱される。
【0003】
このような電子レンジ用箱入りパウチによれば、化粧箱からわざわざパウチを取り出すことなく、化粧箱を開封してその先端部分を回動させるだけで、パウチを電子レンジにて加熱することができるようになる。
【特許文献1】特開2003−170930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した電子レンジ用箱入りパウチ(包装袋)は、電子レンジにて加熱する前に、化粧箱(箱体)の開封作業及び開封された化粧箱の先端部分の回動作業を行わなければならず、電子レンジにセットするまでに手間がかかってしまう。
【0005】

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、できるだけ手間をかけずに電子レンジにて加熱することのできる電子レンジ用箱入り包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋は、相互に対向する前面及び裏面と、前記前面及び裏面の縁に連なる側面とを有する箱体に、蒸気抜き部の形成された電子レンジ用の包装袋が納められた構造となる電子レンジ用箱入り包装袋であって、前記箱体の前面には、電子レンジによる加熱時における前記包装袋の内圧上昇に伴う膨張によって開放可能な開封部が設けられ、前記包装袋は、前記蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に納められた構成となる。
【0007】
このような構成により、箱体に前面に、電子レンジによる加熱時における包装袋の内圧の上昇に伴う膨張によって開放可能な開封部が設けられているので、包装袋の納められた箱体がその前面を上方に向けた状態で電子レンジにセットされ、電子レンジが加熱動作を行うと、加熱される包装袋の膨張によって箱体の前面の開封部が自然に開放されるようになる。これにより、膨張する包装袋が箱体の前面の開放された部分から部分的に露出し、その露出した部分に形成された蒸気抜き部から蒸気が噴出するようになる。
【0008】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記包装袋は、前記箱体に納められた状態で、前記開封部に対応した部位が内圧上昇によって裏面側に突出するようになっている構成とすることができる。
【0009】
このような構成により、電子レンジの加熱によって包装袋の内圧が上昇すると、包装袋が膨張するとともに箱体の開封部に対応した部位が裏面側に突出して包装袋が箱体前面の開封部をより強く押すようになるので、該開封部がより開放され易くなる。
【0010】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記包装袋は、前記箱体に納められた状態で、蒸気抜き部の形成された部位が内圧上昇によって前記開封部に向かって突出するようになっている構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、電子レンジの加熱によって包装袋の内圧が上昇すると、包装袋が膨張するとともに蒸気抜き部の形成された部位が箱体の開封部に向かって突出し、包装袋の当該部位が箱体前面の開封部をより強く押すようになるので、該開封部がより開放され易くなる。
【0012】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記開封部は、切込み線が連なって、切裂きを誘導する切裂き誘導部によって形成された構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、電子レンジによる加熱時における包装袋の膨張によって箱体の前面に2次元的な張力が作用すると、前記前面は、切込み線が順次つながるように切裂かれるとともに各切込み線を横切る方向にも切裂かれていく。その結果、箱体の前面は引裂き誘導部に沿って切裂かれ、開封部が自然に開放されるようになる。
【0014】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記切裂き誘導部は、所定長の切込み線が連なって構成される第1の切込み線列と、所定長の切込み線が連なって構成される第2の切込み線列とを有し、前記第1の切込み線列と前記第2の切込み線列とが所定の間隔にて配置された構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、電子レンジによる加熱時における包装袋の膨張によって箱体の前面に2次元的な張力が作用すると、所定の間隔にて配列される第1の切込み線列の各切込み線と第2の切込み線列の各切込み線とがつながるように、それら第1の切込み線列と第2の切込み線列とを横切る方向に切裂かれ得る。これにより、箱体の前面が結果として切裂き誘導部に沿って切り裂かれて、開封部が自然に開放され得るようになる。
【0016】
更に、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記第1の切込み線列における隣接する2つの切込み線の隙間は、前記第2の切込み線列のいずれかの切込み線に対向し、前記第2の切込み線列における隣接する2つの切込み線の隙間は、前記第1の切込み線のいずれかの切込み線に対向している構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、第1の切込み線列の隣接する切込み線の隙間が第2の切込み線のいずれかの切込み線に対向するとともに、第2の切込み線列の隣接する切込み線の隙間が第1の切込み線列のいずれかの切込み線に対向するようになるので、包装袋の膨張によって箱体の前面に2次元的な張力が作用した際に、一方の切込み線列(第1の切込み線列、第2の切込み線列)の各切込み線の端から他方の切込み線列の切込み線に向けて引裂かれ易くなる。
【0018】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記第1の切込み線列及び前記第2の切込み線列の少なくとも一方の各切込み線は、少なくともその一端が他方の切込み線列の切込み線に向くように形成された構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、少なくとも一方の切込み線列の各切込み線の少なくとも一端が他方の切込み線列の切込み線に向くように形成されているので、包装袋の膨張によって箱体の前面に2次元的な張力が作用した際に、一方の切込み線列の各切込み線の一端から他方の切込み線列の切込み線に向けて切裂かれ易くなる。
【0020】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記開封部は、前記前面の前記側面との境界となるヒンジ部分を残して切り開かれる構造とすることができる。
【0021】
このような構成により、包装袋の膨張によって箱体前面の開封部が開放された際に、開封部はその前面と側面との境界がヒンジ部分となって箱体から切離されないので、余分なごみの発生を防止することができる。
【0022】
更に、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記開封部は、前記前面に形成された開口を覆うように蓋体が当該前面に接着されてなる構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、電子レンジの加熱時における包装袋の内圧の上昇に伴う当該包装袋の膨張によって、接着された蓋体が前面から剥がれて、その蓋体に覆われていた前面の開口から内部の包装袋が露出するようになる。
【0024】
また、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋において、前記蓋体は、前記側面の前記前面側の縁部分から延びる構造とすることができる。
【0025】
このような構成により、包装袋の膨張によって箱体前面に接着された蓋体が剥がされた際に、蓋体は側面につながっていて箱体から切離されないので、余分なごみの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋によれば、包装袋が納められた箱体をそのまま電子レンジにセットして加熱動作を行わせるだけで、加熱される包装袋の膨張によって箱体の前面の開封部が自然に開放されるようになるので、ほとんど手間をかけずに電子レンジにて加熱することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
本発明の第1の実施の形態に係る電子レンジ用箱入り包装袋の箱体は図1及び図2に示すように構成される。なお、図1は箱体の斜視図であり、図2は箱体の展開図である。
【0029】
図1において、この電子レンジ用箱入り包装袋(パウチ)に用いられる箱体10(化粧箱)は、紙製であって、相互に対向する前面11及び裏面12と、前面11及び裏面12の縁に連なる側面(上側面13a、横側面13b、下側面13c、横側面13d)とを有する扁平直方体形状となっている。図1には表れていないが、プラスチック製シートの周縁部分をヒートシールしてなり、食品等の内容物を収容した所謂平袋タイプの電子レンジ用のパウチ20(包装袋)が箱体10に納められている(後述する図5及び図6参照)。
【0030】
この箱体10は、図2に示すような展開紙から組み立てられる。具体的には、長方形状の前面11、裏面12、短冊状の上側面13a、一方の横側面13b、下側面13c、他方の横側面13d、及び貼代14aa、14ab、14ac、14b、14ca、14cb、14ccからなる展開紙を折り曲げ接着することで、図1に示すような箱体10が形成される。
【0031】
図1と共に図2を参考するに、箱体10の前面11には、上側面13aとの境界線15a上の一方端部から下側面13cに向けて斜めに延び、続いてその境界線15aに平行に延び、更に、続いて前記境界線15a上の他方端部に斜めに至るように、略台形形状に延びる切裂き誘導部16が形成されている。この略台形形状に形成された切裂き誘導部16及び切裂き誘導部16の両端間の上側面13aとの境界線15aで囲まれた部分が開放可能となる開封部15となる。
【0032】
切裂き誘導部16は、紙製の箱体10の前面11の切裂きを誘導するものであって、それに沿って前面11が容易に切裂かれるようになっている。この切裂き誘導部16は、例えば、図3(a)に示すように、所定長の切込み線Scut1(i)、Scut1(i+1)、Scut1(i+2)、・・・が所定の隙間をもって一直線状に連なった第1の切込み線列161aと、所定長の切込み線Scut2(i)、Scut2(i+1)、・・・が所定の隙間をもって一直線状に連なった第2の切込み線列162aとからなっている。第1の切込み線列161aと第2の切込み線列162aとは、所定の間隔(例えば、0.5mm〜5mm程度がよく、望ましくは1mm〜1.5mm程度)をもって平行配置されている。また、第1切込み線列161aの隣接する2つの切込み線Scut1(i)とScut1(i+1)との隙間は、第2の切込み線列162aのいずれかの切込み線Scut2(i)に対向し、第2の切込み線列162aの隣接する2つの切込み線Scut2(i)とScut2(i+1)との隙間は、第1の切込み線列161aのいずれかの切込み線Scut1(i+1)に対向している。
なお、切裂き誘導部16の構成は、図3(a)に示すものに限定されることはなく、図3(b)、(c)及び図4(a)、(b)、(c)に示されるいずれの構成であってもよい。切裂き誘導部16の他の構成例(図3(b)、(c)、図4(a)、(b)、(c))については、後述する。
【0033】
箱体10に納められる平袋タイプのパウチ20は、図5(a)、(b)及び図6に示すように、縁部に蒸気抜き部21a、21b、21cが形成されている。各蒸気抜き部21a、21b、21cは、例えば、特開2002−249176号公報に開示されるように、孔(弱化部)の周りがシールされた構造となって、パウチ20の内圧が限界を越えると、その蒸気抜き部21a、21b、21c(孔)から蒸気が噴出するようになっている。なお、蒸気抜き部の構成としては、上述したものに限らず、縁辺シール部の所定部位を、狭幅とする、内側に突出させる、易剥離性フィルムを挟んでシールするなどして、パウチ10の内圧が上昇した際に前記所定部位のシールが優先的に剥離するようにしたもの、マイクロ波の照射で発熱する発熱体をフィルム材(シート)に貼り付け、フィルム材が溶融、若しくはシール強度が低下して蒸気が抜けるようにしたものなど、公知のものを適用することができる。パウチ20は、蒸気抜き部21a、21b、21cが前面11に形成された開封部15に対向するように箱体10に納められている。また、このパウチ20は、開封部15に対応した部位に内圧上昇によって裏面12側に突出する折返し部22が形成されている。この折返し部22は、パウチ20が膨張した際に突出するようになっており、その詳細な構造は、特開2006−62672号公報に開示される。
【0034】
このような箱体10に納められたパウチ20を加熱する場合、パウチ20の納められた箱体10をそのまま前面11を上方に向けて電子レンジにセットし、電子レンジを起動させる。電子レンジが加熱動作を行うと、加熱されるパウチ20の内容物からの水蒸気の発生によってパウチ20の内圧が上昇し、それに伴ってパウチ20が膨張する(図5(a)、(b)参照)。パウチ20の膨張によって箱体10の開封部15の形成された前面11が外方に押され、特に、膨張するパウチ20の開封部15に対応した部位(折返し部22)が裏面12側に突出して開封部15がパウチ20によってより強く外方に押される。
【0035】
このようにパウチ20の膨張によって箱体10の前面11が外方に押されると、その前面11が切裂き誘導部16に沿って切裂かれ、パウチ20の更なる膨張(押し上げ)によって、図6に示すように、開封部15が、前面11と上側面13aとの境界線15aをヒンジ部分として残して切り開かれる。すると、箱体10の開封部15が開放してできた開口部18からパウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分が露出し、パウチ20の内圧が限界を越えると、蒸気抜き部21a、21b、21cから蒸気が噴出する。これにより、パウチ20の内圧が過度に上昇することが防止されつつ、電子レンジによる加熱がなされる。
【0036】
前述したパウチ20の膨張による切裂き誘導部16に沿った切裂きについて、更に、詳細に説明する。
【0037】
パウチ20の膨張によって箱体10の前面11が押し上げられると、前面11に2次元的な張力が発生する。切裂き誘導部16を構成する第1の切込み線列161aと第2の切込み線列162aとの間隔(例えば、1mm〜1.5mm程度)が狭いので、前記2次元的な張力によって、第1の切込み線列161aの各切り込み線Scut1(i)の端部から第2の切込み線列162aの切込み線Scut2(i)に向けて切裂かれるとともに、第2の切裂き線列162aの各切込み線Scut2(i)の端部から第1の切込み線列161aの切込み線Scut1(i)、Scut1(i+1)に向けて切裂かれる。このように、切裂き誘導部16が第1の切込み線列161aと第2の切込み線列162aとの間でジグザグ状の破断形状となって切裂かれていく(なお、第1の切込み線列161a及び第2の切込み線列162aのそれぞれで、隣接する切込み線がつながるような切裂きも部分的に発生し得る)。それによって、箱体10の前面11が切裂き誘導部16(第1の切込み線列161a、第2の切込み線列162a)に沿って切裂かれるようになり、開封部15が自然に開放される。
【0038】
前述したような本発明の第1の実施の形態に係る電子レンジ用箱入りパウチによれば、パウチ20が納められた箱体10をそのまま電子レンジにセットして加熱動作を行わせるだけで、加熱されるパウチ20の膨張によって箱体10の前の開封部15が自然に開放されるようになるので、ほとんど手間をかけずに電子レンジにて加熱することができるようになる。
【0039】
なお、切裂き誘導部16は、図3(b)に示すような第1の切込み線列161b及び第2の切込み線列162bによって構成することもできる。この例では、第1の切込み線列161bの各切込み線Scut1(i)の一端が第2の切込み線列162bのいずれかの切込み線Scut2(i)に向けて斜めに延び、第2の切込み線列162bの各切込み線Scut2(i)の一端が第1の切込み線列161bのいずれかの切込み線Scut1(i+1)に向けて斜めに延びるようになっている。この場合も、第1の切込み線列161bにおける各切込み線の斜めになった部分の先端と、第2の切込み線列162bの対向する切込み線との間隔は、例えば、0.5mm〜5mm程度がよく、望ましくは、1mm〜1.5mm程度に設定される。
【0040】
このような構成により、パウチ20の膨張によって箱体10の前面11に2次元的な張力が作用した際に、一方の切込み線列の各切込み線の一端から他方の切込み線列の切込み線に向けてより切裂かれ易くなる。即ち、より開封部15の開放が容易になる。
【0041】
また、切裂き誘導部16は、図3(c)に示すような第1の切込み線列161c及び第2の切込み線列162cにて構成することもできる。この例では、第1の切込み線列161cの各切込み線Scut1(i)の両端それぞれが第2の切込み線列162cのいずれかの切込み線Scut2(i)、Scut(i-1)に向けて斜めに延び、第2の切込み線列162cの各切込み線Scut2(i)の両端それぞれが第1の切込み線列161cのいずれかの切込み線Scut1(i)、Scut1(i+1)に向けて斜めに延びるようになっている。この場合も、一方切込み線列における各切込み線の斜めになた部分の先端と、他方の切込み線列の対向する切込み線との間隔は、例えば、0.5mm〜5mm程度がよく、望ましくは、1mm〜1.5mm程度に設定される。
【0042】
このような構成により、パウチ20の膨張によって箱体10の前面11に2次元的な張力が作用した際に、一方の切込み線列の各切込み線の両端から他方の切込み線列の切込み線に向けてより切裂かれ易くなる。即ち、より開封部15の開放が更に容易になる。
【0043】
また、切裂き誘導部16は、図4(a)に示すような第1の切込み線列161d及び第2の切込み線列162dにて構成することもできる。この例では、図3(c)に示す例と同様に、第1の切込み線列161d及び第2の切込み線列162dそれぞれの各切込み線の両端が他方の切込み線列の切込み線に向けて延びるようになっている。ただし、その両端が斜めに延びるのではなく、各切込み線に直行するように延びている。この場合も、図3(c)に示す例と同様に、パウチ20の膨張によって箱体10の前面11に2次元的な張力が作用した際に、一方の切込み線列の各切込み線の両端から他方の切込み線列の切込み線に向けてより切裂かれ易くなる。この場合も、一方の切込み線列における各切り込み線の端部先端と、他方切込み線列の対向する切込み線との間隔は、例えば、0.5mm〜5mm程度がよく、望ましくは、1mm〜1.5mm程度に設定される。
【0044】
更に、切裂き誘導部16は、図4(b)に示すような第1の切込み線列161e及び第2の切込み線列162eにて構成することもできる。この例では、第1の切込み線列161eの各切込み線Scut1(i)が一方方向に湾曲した形状となっており、第2の切込み線列162eの各切込み線Scut2(i)が他方の湾曲した形状となっている。その結果、第1の切込み線列161eの各切込み線Scut(i)の両端それぞれが第2の切込み線列162eのいずれかの切込み線Scut2(i)、Scut(i-1)に向けて延び、第2の切込み線列162eの各切込み線Scut2(i)の両端それぞれが第1の切込み線列161cのいずれかの切込み線Scut1(i)、Scut1(i+1)に向けて延びるようになる。この場合も、双方の切込み線列161e、162eの対向する切込み線の間隔は、例えば、0.5mm〜5mm程度がよく、望ましくは、1mm〜1.5mm程度に設定される。
【0045】
このような構成となる場合も、パウチ20の膨張によって箱体10の前面11に2次元的な張力が作用した際に、一方の切込み線列の各切込み線の両端から他方の切込み線列の切込み線に向けてより切裂かれ易くなる。即ち、より開封部15の開放が更に容易になる。
【0046】
切裂き誘導部16の構成は、前述したような(図3(a)〜(c)、図4(a)、(b))に限定されず、切込み線列を構成する各切込み線の長さ、間隔等の形状は任意で、それら長さ、間隔等の形状は、場所に応じて不均等であってもよい。例えば、図4(c)に示すように、第1の切込み線列161fを構成する複数の直線状切込み線Scut1(i)、Scut1(i+1)、Scut1(i+2)、・・・の長さ及び第2の切込み線列162fを構成する複数の直線状岐路込み線Scut2(i)、Scut2(i+1)、・・・の長さは不均一なものであってもよい。また、第1の切込み線列あるいは第2の切込み線列を構成する各切込み線の形状が異なるものであっても、第1の切込み線列を構成する各切込み線の形状(例えば、直線状)と第2の切込み線列を構成する各切込み線の形状(例えば、円弧状)とが異なるものであってもよい。
【0047】
切裂き誘導部16の構成が異なる4種類の箱体について、実際に電子レンジにより内部のパウチ(包装袋)を加熱してその開封実験を行った。
【0048】
図4(a)に示すように各切込み線が略コ字状(形状1)となる2つの切込み線列161d、162dからなる切裂き誘導部16の形成された第1の箱体、図4(b)に示すように各切込み線が湾曲形状(形状2)となる2つの切込み線列161e、162eからなる切裂き誘導部16の形成された第2の箱体、図3(a)に示すように直線状(形状3)となる2つの切込み線列161a、162aからなる切裂き誘導部16の形成された第3の箱体、一列の破線形状(形状4)となる切裂き誘導部16の形成された第4の箱体について実験を行った。各箱体は、縦175mm、横130mm、高さ20の薄型の直方体となる紙製の箱体であって、その切裂き誘導部16は、図1及び図2に示すような台形形状とした。
【0049】
また、第1の箱体、第2の箱体及び第3の箱体については、切裂き誘導部16を構成する2つの切込み線列の間隔を最も狭い部分で1.5mmとし、各切込み線列における隣接した切込み線の間隔を5mmとした。第4の箱体については、破線形状の各切込み線の長さを5mmとし、隣接する切込み線の間隔を1mmとした。
【0050】
各箱体に収容するパウチ(包装袋)は、図5に示した、内圧上昇によって裏面に突出する部分を有する構成となり(幅130mm、長さ175mm)、そのパウチに市販のレトルトカレー210gをリパックした。
【0051】
前記パウチを納めた各箱体(第1の箱体〜第4の箱体)をそれぞれ、出力500Wの電子レンジで2分間加熱し、各箱体の開封状態を目視で観察した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0052】
第1の箱体(形状1の切込み線・2列:図4(a)参照)、第2の箱体(形状2の切込み線・2列:図4(b)参照)、及び第3の箱体(形状3の切込み線・2列:図3(a)参照)は、全てパウチの膨張とともに切裂き誘導部16に沿ってスムーズ開封された。特に、第1の箱体がスムーズに開封された。第4の箱体(一列の破線形状の切込み線)は、完全に開封がなされるまでに時間がかかり、一部では切裂き誘導部16から逸れて破れたり、箱体本体が変形したりするものがあった。
【0053】
前述した第1の実施の形態においては、切裂き誘導部16が略台形形状に形成されるものであったが(図1及び図2参照)、これに限られない。例えば、図7に示すように、箱体10の前面11に略放物線形状の切裂き誘導部17を形成することができる。また、図8に示すような形状の切裂き誘導部18を箱体10の前面11に形成することもできる。この場合、切裂き誘導部18は、前面11の両角部から中央部に向かって延びる2つの傾斜線部18a、18bと、それら傾斜線部18a、18bの交わる頂点から下方に延びる直線部18cとから構成される。更に、図9に示すような形状の切裂き誘導部19を箱体10の前面11に形成することもできる。この場合、切裂き誘導部19は、前面11の両角部から斜め内方に延びる内方傾斜線部19a、19bと、それら内方傾斜線部19a、19bを連結する水平線部19cと、内方傾斜線部19aと水平線部19cとの連結点から斜め外方に延びる外方傾斜線部19dと、内方傾斜線部19bと水平線部19cとの連結点から斜め外方に延びる外方傾斜線部19eとから構成されている。2つの内方傾斜線部19a、19bと水平線部19cとが台形形状に連結されている。
【0054】
図8や図9に示す例では、開封部の輪郭を構成する切裂き誘導部から、開封部の外側へ放射状に短く延びる補助的な切裂き誘導部(直線部18cあるいは外方傾斜線部19d、19e)を設けることで、開封部の切裂きがスムーズに誘導されるとともに、箱体10本体の変形を防止することができる。
【0055】
なお、図7乃至図9に示す各切裂き誘導部17、18、19は、前述した切裂き誘導部16と同様に、所定の間隔を持って配列される2つの切込み線列(図3、図4参照)によって構成することができる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電子レンジ用箱入り包装袋(パウチ)について説明する。この第2の実施の形態に係る電子レンジ用箱入りパウチは、パウチが納められる箱体に、切裂き誘導部16にて形成された開封部15(図1及び図2参照)に代えて、開口を覆う蓋部が設けられたことを特徴としている。
【0057】
この第2の実施の形態に係る電子レンジ用箱入りパウチで用いられる箱体30は、図10及び図11に示すように構成される。なお、図10は箱体の斜視図であり、図11は箱体の展開図である
【0058】
図10及び図11において、この電子レンジ用箱入りパウチに用いられる箱体30(化粧箱)は、前述した第1の実施の形態の場合と同様に、相互に対向する前面31及び裏面32と、前面31及び裏面32の縁に連なる側面(上側面33a、横側面33b、下側面33c、横側面33d)とを有する扁平直方体形状となっている。この箱体30は、展開紙(図7参照)から組み立てられる。具体的には、長方形状の前面31、裏面32、短冊状の上側面33a、一方の横側面33b、下側面33c、他方の横側面33d、及び貼代34aa、34ab、34ac、34b、34ca、34cb、34cc、更に、上側面33aに連なった略台形形状の蓋部35からなる展開紙を折り曲げ接着することで、図6に示すような箱体30が形成される。
【0059】
上側面33aの境界線35aを境にして折り曲げられた蓋部35が対向する前面31の部位に開口38が形成されている。そして、図11に示す展開紙が図10に示すような箱体30に組み上げられる際に、蓋部35が前面31に形成された開口38を覆うようになり、蓋部35の周縁部分と開口38の周縁部分とがホットメルト接着剤等によって接着される。
【0060】
なお、パウチ20は、第1の実施の形態で用いられたものと同様であり(図5、図6参照)、蒸気抜き部21a、21b、21cが前面11に形成された開口38(蓋部35)に対向するように箱体30に納められている。また、このパウチ20は、開口38(蓋部35)に対応した部位に内圧上昇によって裏面32側に突出する折返し部が形成されている。
【0061】
このような箱体30に納められたパウチ20が電子レンジによって加熱されて、パウチ20が膨張し、特に、その膨張するパウチ20の開口38に対応した部位(折返し部)が裏面32側に突出すると、開口38を介して蓋部35がパウチ20によって強く外方に押される。また、蓋部35の周縁部分と開口38の周縁部分との接着部分に加熱されたパウチ20からの熱が加えられる。このように加熱されつつ外方に強く押される蓋部35の接着部分は、開口38の周縁部分から剥離されて、上側面33aとの境界線35aをヒンジ部分として蓋部35が開放される。すると、箱体30の開口38からパウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分が露出し、パウチ20の内圧が限界を越えると、蒸気抜き部21a、21b、21cから蒸気が噴出する。これにより、パウチ20の内圧が過度に上昇することが防止されつつ、電子レンジによる加熱がなされる。
【0062】
本発明の第2の実施の形態に係る電子レンジ用箱入りパウチによれば、第1の実施の形態のものと同様に、パウチ20が納められた箱体30をそのまま電子レンジにセットして加熱動作を行わせるだけで、加熱されるパウチ20の膨張によって箱体30の蓋部35が自然に開放されるようになるので、ほとんど手間をかけずに電子レンジにて加熱することができるようになる。
【0063】
前述した第2の実施の形態では、蓋部35は、箱体30の上側面33aとの境界線35aをヒンジとして折り曲げられるような構造となっていたが、蓋体35が完全に分離される構造であってもよい。この場合、蓋体35の全周にわたる周縁部分が開口38の周縁部分とホットメルト接着剤によって接着される。このように蓋部35が分離された構造の箱体30を用いる場合、箱体30を形成するための展開紙に蓋部35に相当する突出部分をとる必要がないので、箱体30を製造する際の紙の利用効率を良くすることが可能となる。
【0064】
また、蓋体35が完全に分離される構造の場合、蓋体35の材料としてプラスチックフィルムやシート等、箱体30と異なる材料を用いることもできる。
【0065】
また、前述した各実施の形態において、パウチ20は、折返し部22を有し(図5(a)、(b)参照)、箱体10に納められた状態で、内圧上昇によって折返し部22が裏面12側に突出するようになっていたが、パウチ20の構造は、これに限られない。内圧上昇によって突出する部位のない通常の平袋タイプのパウチであっても、その膨張によって箱体10の前面11に形成された引裂き誘導部16を引裂いて開封部15を開放させるようにすることもできる。また、平袋タイプに限られず、スタンディングタイプのパウチであっても、更に、底シール部に蒸気抜き部を有するもの(特開平10−230979号公報参照)であっても適用することができる。
【0066】
また、具体的に、箱体10に収納すべきパウチ20として、図12(a)、(b)に示すような、所謂、分岐タイプ(例えば、特開2003−81360号公報参照)のパウチを用いることもできる。この分岐タイプのパウチ20は、先端部分に蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された分岐部23を有し、その分岐部23が前面11に対向するように箱体10に納められている。このような分岐タイプのパウチ20を用いた場合、電子レンジの加熱によってパウチ20の内圧が上昇すると、パウチ20が膨張するとともに蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された分岐部23が箱体10の前面11に形成された開封部15に向かって突出し、その開封部15がパウチ20全体の膨張に加えて分岐部23によってより強く押されるようになる。その結果、箱体10の前面11が引裂き誘導部16に沿って比較的容易に引裂かれるようになり、開封部15がより開放され易くなる。
【0067】
電子レンジ用のパウチ20を収容する箱体10を構成する好ましい材料としては、紙、合成紙、紙とプラスチックからなる複合材料などがあげられる。なお、前述した各実施の形態において、透明フィルムや透明シートを用いて箱体10の所定部位(前面11の所定部位)から箱体10内を見えるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上、説明したように、本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋は、できるだけ手間をかけずに電子レンジにて加熱することのできるという効果を有し、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用箱入り包装袋として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子レンジ用箱入り包装袋(パウチ)における箱体を示す斜視図である。
【図2】図1に示す箱体の展開図である。
【図3】図1に示す箱体前面に形成された切裂き誘導部を構成する切込み線列の例を示す図である。
【図4】図1に示す箱体前面に形成された切裂き誘導部を構成する切込み線列の例を示す図である。
【図5】箱体内に納められたパウチの膨張しつつある状態を示す断面図(a)と、該パウチの膨張した状態を示す斜視図(b)である。
【図6】電子レンジにて加熱した際に、箱体前面の開封部が開放されてパウチが露出した状態を示す斜視図である。
【図7】箱体の前面に形成される切裂き誘導部の第1の変形例を示す図である。
【図8】箱体の前面に形成される切裂き誘導部の第2の変形例を示す図である。
【図9】箱体の前面に形成される切裂き誘導部の第3の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る電子レンジ用箱入り包装袋(パウチ)における箱体を示す斜視図である。
【図11】図10に示す箱体の展開図である。
【図12】箱体に納められるパウチの変形例を示し、そのパウチの膨張しつつある状態を示す断面図(a)と、該パウチの膨張した状態を示す斜視図(b)である。
【符号の説明】
【0070】
10、30 箱体
11、31 前面
12、32 裏面
13a、33a 上側面
13b、33b 横側面
13c、33c 下側面
13d、33d 横側面
15 開封部
15a 境界線
16、17、18、19 引裂き誘導部
18 開口部
14aa、14ab、14ac、34aa、34ab、34ac 貼代
14b、34b 貼代
14ca、14cb、14cc、34ca、34cb、34cc 貼代
161a、161b、161c、161d、161e、161f 第1の切込み線列
162a、162b、162c、162d、162e、163f 第2の切込み線列
20 パウチ(包装袋)
21a、21b、21c 蒸気抜き部
22 折返し部
23 分岐部
35 蓋部
35a 境界線
38 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する前面及び裏面と、前記前面及び裏面の縁に連なる側面とを有する箱体に、蒸気抜き部の形成された電子レンジ用の包装袋が納められた構造となる電子レンジ用箱入り包装袋であって、
前記箱体の前面には、電子レンジによる加熱時における前記包装袋の内圧上昇に伴う膨張によって開放可能な開封部が設けられ、
前記包装袋は、前記蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に納められたことを特徴とする電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項2】
前記包装袋は、前記箱体に納められた状態で、前記開封部に対応した部位が内圧上昇によって裏面側に突出するようになっていることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項3】
前記包装袋は、前記箱体に納められた状態で、蒸気抜き部の形成された部位が内圧上昇によって前記開封部に向かって突出するようになっていることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項4】
前記開封部は、切込み線が連なって、切裂きを誘導する切裂き誘導部によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項5】
前記切裂き誘導部は、所定長の切込み線が連なって構成される第1の切込み線列と、所定長の切込み線が連なって構成される第2の切込み線列とを有し、前記第1の切込み線列と前記第2の切込み線列とが所定の間隔にて配置された構成となることを特徴とする請求項4記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項6】
前記第1の切込み線列における隣接する2つの切込み線の隙間は、前記第2の切込み線列のいずれかの切込み線に対向し、前記第2の切込み線列における隣接する2つの切込み線の隙間は、前記第1の切込み線のいずれかの切込み線に対向していることを特徴とする請求項5記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項7】
前記第1の切込み線列及び前記第2の切込み線列の少なくとも一方の各切込み線は、少なくともその一端が他方の切込み線列の切込み線に向くように形成されていることを特徴とする請求項6記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項8】
前記開封部は、前記前面の前記側面との境界となるヒンジ部分を残して切り開かれる構造となることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項9】
前記開封部は、前記前面に形成された開口を覆うように蓋体が当該前面に接着されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子レンジ用箱入り包装袋。
【請求項10】
前記蓋体は、前記側面の前記前面側の縁部分から延びる構造となることを特徴とする請求項9記載の電子レンジ用箱入り包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−51562(P2009−51562A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222244(P2007−222244)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】