説明

電子レンジ調理用の即席麺容器

【課題】落とし蓋部材付きの即席麺容器において、必要以上に重量を増すことなく、かつ、落とし蓋部材の浮き上がりを防止し、即席麺全体を水に浸からせ、即席麺のゆでむらを防止することができる電子レンジ調理用の即席麺容器を提供する。
【解決手段】底板4と、底板4の周縁から立ち上がり上端部が開口部になっている周壁5とを有する容器本体2と、前記容器本体2の周壁5の中に入る落とし蓋部材3とを有し、落とし蓋部材3は、上方から見て容器本体の周壁5の内側開口部より小さな面積を有する板部材6を有し、板部材6は、複数の開口7を有し、板部材6の周縁部は板部材6の下面6aから上方に延在する傾斜面または湾曲面6bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで調理するための即席麺の容器に関する。
【0002】
特に本発明は、落とし蓋部材の浮き上がりを防止し、即席麺のゆでむらを防止することができる電子レンジ調理用の即席麺の容器に関する。
【背景技術】
【0003】
電子レンジで食材を調理することが広く行われている。最近は、電子レンジで調理するための樹脂製の容器が種々提供されている。
【0004】
即席麺の場合、樹脂製の容器に麺を収納した状態で販売し、利用者が該容器に水を注ぎそのまま電子レンジで加熱することが行われている。
【特許文献1】特開2005−271965号公報
【特許文献2】特開特開2000−237060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、即席麺は油で揚げているものが多い。
【0006】
油で揚げた麺は、比重が低く、水を注ぐこと、水に浮く性質を有している。
【0007】
油で揚げた即席麺は、ほぐす前は一塊になっており、水を注ぐと、麺の一部が水から浮きだし、水に浸らない状態になってしまう。
【0008】
電子レンジで調理する場合、鍋で調理する場合と違って、加熱中に麺をほぐすことができない。
【0009】
このため、電子レンジで即席麺を加熱すると、即席麺の一部が水に浸らないまま加熱することになるので、ゆでむらが生じる問題がある。
【0010】
ところで、電子レンジで調理する従来技術ではないが、「落とし蓋」は一般に知られている。
【0011】
落とし蓋は、食材を煮込む等のときに、食材を水に浸らせるために鍋の中に置かれるものである。
【0012】
電子レンジで調理する即席麺に対して、「落とし蓋」を応用することが考えられる。
【0013】
しかし、従来の落とし蓋をそのまま電子レンジで調理する即席麺の容器に応用すると、落とし蓋と沸騰した水との間に水泡が充満し、麺が水泡の中に浸かり、また、水泡によって落とし蓋が押し上げられ、ゆでむらを生じるという問題がある。
【0014】
図5は、電子レンジで即席麺を調理する容器に、落とし蓋を応用した場合を示している。
【0015】
落とし蓋12は樹脂製の場合は比重が低く、レンジで加熱すると、落とし蓋12と沸騰した水との間に水泡13が充満し、水泡13によって落とし蓋12が押し上げられる現象が生じる。
【0016】
また、水泡13が逃げ場が無いために、図5に示すように、即席麺の上部の間に入り込み、即席麺の上部は水泡13に浸かった状態になる。
【0017】
通常の食材と違って、即席麺14は加熱するということの他に、水に戻すということが重要である。
【0018】
図5に示すように、水泡の13の逃げ場が無い場合、沸騰した水と落とし蓋の間に水泡13が充満し、即席麺の一部が水泡13に浸かった状態になり、また、落とし蓋12が水泡13によって押し上げられる。
【0019】
水泡13が充満している領域にある即席麺14の部分(即席麺14の上部)は、十分に水に戻されることなく、水に浸った部分に比べて堅くなり、ゆでむらが生じる。
【0020】
一方、落とし蓋の重量を増すようにすると、落とし蓋付きの即席麺容器としては、重くなる問題があった。
【0021】
また、落とし蓋の重さによって即席麺を水に浸らせることができるが、即席麺の間に水泡が充満し、程度の差があるが同様にゆでむらが生じる。
【0022】
単に落とし蓋に開口を設けた場合も、同様に十分に水泡を逃がすことができない。
【0023】
電子レンジで加熱する場合、水泡は容器の周縁部で特に多く発生する。
【0024】
このため、落とし蓋に開口を設けただけでは、容器の周縁部で十分に水泡を逃がすことができず、即席麺の間に水泡が充満し、即席麺にゆでむらを生じることがある。
【0025】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、落とし蓋部材付きの即席麺容器において、必要以上に重量を増すことなく、かつ、落とし蓋部材の浮き上がりを防止し、即席麺全体を水に浸からせ、即席麺のゆでむらを防止することができる電子レンジ調理用の即席麺容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る電子レンジ調理用の即席麺容器は、
底板と、前記底板の周縁から立ち上がり上端部が開口部になっている周壁とを有する容器本体と、前記容器本体の周壁の中に入る落とし蓋部材とを有する電子レンジ調理用の即席麺容器であって、
前記落とし蓋部材は、上方から見て前記容器本体の周壁の内側開口部より小さな面積を有する板部材を有し、前記板部材は取っ手部を有し、前記板部材の周縁部は該板部材の下面から上方に延在する傾斜面または湾曲面を有していることを特徴とする。
【0027】
前記落とし蓋部材は、複数の開口部を有するようにすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明による調理用即席麺容器は、落とし蓋部材が、上方から見て前記容器本体の周壁の内側開口部より小さな面積を有する板部材を有し、前記板部材が、取っ手部を有し、かつ、その周縁部が板部材下面から上方に延在する傾斜面または湾曲面を有している。
【0029】
落とし蓋部材の板部材は、上方から見て前記容器本体の周壁の内側開口部より小さな面積を有していることにより、板部材が容器本体の周壁の内側開口部を密閉することなく、落とし蓋としての機能を果たすことができる。
【0030】
また、本発明の落とし蓋部材の板部材は、周縁部が板部材下面から上方に延在する傾斜面または湾曲面を有している。
【0031】
水泡は、周壁に近い容器の周縁部で多く発生するが、これらの水泡は、落とし蓋部材の板部材の傾斜面または湾曲面によって排出される。水泡は、落とし蓋部材の板部材の傾斜面または湾曲面沿って上昇し、水面から一定の高さで破裂する。
【0032】
以上の板部材の開口と傾斜面または湾曲面の機能により、本発明によれば、沸騰した水の気泡が水面に浮き出すと、傾斜面または湾曲面に沿って上昇し、傾斜面または湾曲面と周壁によって囲まれた空間内で上昇の途中で破裂する。
【0033】
本発明の落とし蓋部材の板部材は、複数の開口を有している。
【0034】
これらの開口は、水泡を排出する機能を有している。
【0035】
すなわち、沸騰した水の気泡は、水面に浮き出し、落とし蓋部材の重みによって開口から板部材の上面に排出される。水泡が排出されることにより、即席麺を水に浸からせることができる。
【0036】
このように、本発明の落とし蓋部材によれば、気泡が板部材の下面から排出され、水面と落とし蓋部材の間に気泡が充満されることがなく、これによって、即席麺の全体が水の中に浸かり、即席麺の一部水泡に浸ってゆでむらを生じることがない。
【0037】
また、本発明の落とし蓋部材によれば、必要以上に重くすることなく、即席麺を水中に浸らせることができ、軽い材料、たとえば樹脂によって落とし蓋部材を形成し、全体として軽い落とし蓋部材付きの即席麺容器を提供することができる。
【0038】
本発明の落とし蓋部材は取っ手部を有し、該取っ手部は重し部材を形成する。しかし、重し部材はあくまでも板部材の下面から気泡を排出する程度にとどめることができ、全体として軽い落とし蓋部材付きの即席麺容器を提供することができるとともに、落とし蓋部材が取っ手部を有していることにより、取り扱いが便利な電子レンジ調理用の即席麺容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態による電子レンジ調理用の即席麺の容器を示している。
【0041】
図1において、電子レンジ調理用の即席麺容器1は、容器本体2と、落とし蓋部材3とを有している。
【0042】
容器本体2は、底板4と、底板4の周縁から立ち上がり上端部が開口部になっている周壁5とを有している。
【0043】
落とし蓋部材3は、容器本体2の周壁5の中に入る大きさを有している。
【0044】
落とし蓋部材3は、上方から見て容器本体2の周壁5の内側開口部より小さな面積を有している。
【0045】
すなわち、使用状態では、落とし蓋部材3は、その周縁と周壁5との間に隙間を有している。
【0046】
これにより、落とし蓋部材3は周壁5の内側開口部を閉鎖することなく、落とし蓋としての機能を果たすことができる。
【0047】
すなわち、落とし蓋部材3は板部材6を有し、板部材6は上方から見て容器本体の周壁5の内側開口部より小さな面積を有している。
【0048】
また、板部材6は、複数の開口7を有している。
【0049】
板部材6の周縁部は、板部材の下面6aから上方に延在する傾斜面または湾曲面6bを有している。
【0050】
本実施形態の落とし蓋部材3は、取っ手部8を有している。該取っ手部8は重し部材を形成している。
【0051】
重し部材は、任意の形状を有するようにすることができる。
【0052】
また、重し部材は、即席麺を水に浸からせることができれば、可能な限り軽いのが好ましい。
【0053】
図2は、使用状態の電子レンジ調理用の即席麺容器1を示している。
【0054】
図3は、図2の落とし蓋部材3の周縁部を拡大して示している。
【0055】
図2,3に示すように、使用状態では、容器本体2の内部に、即席麺9が容れられ、水10が注がれ、落とし蓋部材3が置かれた状態で、電子レンジ(図示せず)で加熱される。
【0056】
水10が沸騰すると、水中に水蒸気の泡(水泡11)が発生し、水の表面に水泡11が浮き出る。
【0057】
本実施形態によれば、図3に分かりやすく示すように、水泡11は、板部材6の下面6aに達すると、あるいは開口7から板部材6の上面に排出され、あるいは傾斜面または湾曲面6bと周壁5で囲まれた空間に排出される。
【0058】
傾斜面または湾曲面6bと周壁5で囲まれた空間に排出された水泡11は、傾斜面または湾曲面6bに沿って上昇し、水面から一定の高さで破裂する。
【0059】
水泡11は、周壁5に近い容器の周縁部で多く発生するが、傾斜面または湾曲面6bがあるために、水泡11の逃げ場が大きく、傾斜面または湾曲面6bと周壁5で囲まれた空間に排出され、上昇の途中で破裂する。そのため、板部材6の上面に大量に水泡11が流出することがない。
【0060】
このように、本実施形態によれば、水泡11は水面に達すると、素早く板部材6の下面6aから排出されるため、落とし蓋部材3が水泡11によって押し上げられることがない。
【0061】
このため、水面と落とし蓋部材3の間に水泡11が充満する領域が存在せず、即席麺9が全部水10に浸り、ゆでむらを生じることがない。
【0062】
本実施形態によれば、落とし蓋部材3自体は軽量であるが、即席麺9全体を水10に浸らせることができ、即席麺9全体を水に戻し、均一にゆでることができる。
【0063】
落とし蓋の重量によって強制的に即席麺9を水10に浸らせる場合に比しても、麺の間に水泡11が充満することがないために、より均一に麺をゆでることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、落とし蓋部材3が軽量であるゆえに、全体として軽い落とし蓋部材付きの電子レンジ調理用の即席麺容器を提供することができる。
【0065】
本実施形態では、取っ手部8が重し部材を兼ねているが、その重し部材はあくまでも板部材の下面から気泡を排出させる程度にとどめることができるため、全体として軽い落とし蓋部材付きの即席麺容器を提供することができる。
【0066】
むろん、取っ手部8有していることにより、取り扱いが便利であることはいうまでもない。
【0067】
板部材6の傾斜面または湾曲面6bは、図2,3においては、湾曲面になっているが、縦断面で見て直線的な傾斜面であってもよい。
【0068】
重し部材は、取っ手部8のように特定の形状を有している必要がなく、板部材6の厚みを増加するようにしてもよい。
【0069】
たとえば、板部材6を十分な厚みにして、必要な重量を確保し、周縁部の下側を面取り等して、傾斜面または湾曲面を形成するようにしてもよい。
【0070】
図4に板部材の開口を省略した実施形態を示す。
【0071】
図4において、図3と同一部分については同一の符号を付す。
【0072】
図4に示す実施形態は、落とし蓋部材20は、板部材21と取っ手部22とを有している。
【0073】
板部材21は、開口を有していない。
【0074】
板部材21の下面は、中心部の水平面21aと、前記水平面21aの外縁に接続し外方に向かうにしたがって上がる傾斜面21bと、前記傾斜面21bの外縁に接続し外方に向かうにしたがって傾斜の度合いが増す湾曲面21cとを有している。
【0075】
図4に示すように、容器本体2の内部に、即席麺9が容れられ、水10が注がれ、落とし蓋部材20が置かれた状態で、電子レンジで加熱されると、水10が沸騰して水泡11が発生し、水の表面に浮き出る。
【0076】
本実施形態によれば、即席麺9は板部材21の水平面21aによって水中に押し込まれているが、板部材21の水平面21aの外方部分は、外方にいくにしたがって上がる傾斜面21bまたは湾曲面21cになっているため、水泡11は傾斜面21bまたは湾曲面21cに沿って上昇し、板部材21の下面から排出される。
【0077】
これにより、即席麺9の一部が水泡の領域に浸かっている状態が防止され、即席麺9の全体が均一に水に戻され、均一にゆでられる。
【0078】
また、電子レンジで加熱する場合、容器の周辺部で特に水泡が発生しやすいが、本実施形態は、容器の周辺部ほど水面から上がっており、水泡を一時的に許容し、外方に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態による電子レンジ調理用の即席麺容器の斜視図。
【図2】本発明の電子レンジ調理用の即席麺容器の使用状態を説明する縦断面図。
【図3】本発明の電子レンジ調理用の即席麺容器の使用状態を説明する図3の一部拡大図。
【図4】本発明の一実施形態による電子レンジ調理用の即席麺容器の縦断面図。
【図5】落とし蓋を電子レンジ調理用の即席麺容器に応用した場合の状態を説明する縦断面図。
【符号の説明】
【0080】
1 電子レンジ調理用の即席麺容器
2 容器本体
3 落とし蓋部材
4 底板
5 周壁
6 板部材
6a 下面
6b 傾斜面または湾曲面
7 開口
8 取っ手部
9 即席麺
10 水
11 水泡
20 落とし蓋部材
21 板部材
22 取っ手部
21a 水平面
21b 傾斜面
21c 湾曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、前記底板の周縁から立ち上がり上端部が開口部になっている周壁とを有する容器本体と、前記容器本体の周壁の中に入る落とし蓋部材とを有する電子レンジ調理用の即席麺容器であって、
前記落とし蓋部材は、上方から見て前記容器本体の周壁の内側開口部より小さな面積を有する板部材を有し、前記板部材は取っ手部を有し、前記板部材の周縁部は該板部材の下面から上方に延在する傾斜面または湾曲面を有していることを特徴とする電子レンジ調理用の即席麺容器。
【請求項2】
前記落とし蓋部材は、複数の開口部を有していることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ調理用の即席麺容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−209541(P2007−209541A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32771(P2006−32771)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(592199869)エビス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】