説明

電子レンジ調理用包装容器

【課題】流通販売時には、1つの包装容器として、複数の食品部材を分けて収納でき、調理時には、包装された複数の食品部材を、その包装容器の中で合わせて、電子レンジで加熱することにより、ひとつの食品として加熱されるとともに、その表面に、焦げ色を付けたり、クリスピー感を与えることのできる電子レンジ調理用包装容器を提供する。
【解決手段】下容器と、下容器より底が浅く、下容器の上に重ね合わされる上容器と、蓋とからなる電子レンジ調理用包装容器であって、下容器は、下容器底部、下容器側壁部、下容器フランジからなり、上容器は、上容器底部、上容器側壁部、上容器フランジからなり、上容器底部の下面にマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シートが設けられ、下容器フランジの上に、上容器フランジが重ね合わされ、蓋が、重ねあわされた下容器フランジと上容器フランジとを、覆って設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シートを用いた電子レンジ調理用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジ発熱シートは、さまざまに用いられている。例えば、カップ形状の包装容器内にポップコーン原料を入れて販売し、消費者が家庭の電子レンジを使用してコーンを膨化させてポップコーンを作ることに用いられている(特許文献1)。
【0003】
また、半調理の焼きおにぎり、お好み焼き、ピザなどの食品を電子レンジで再加熱するときに、表面に焼き目をつけ、クリスピーな食感を得るのに用いられている(特許文献2)。
【0004】
電子レンジ発熱シートは、いろいろな構造からなるものがあるが、そのひとつに、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウムを薄く蒸着し、その蒸着面に接着剤を介し、紙と貼り合わせた電子レンジ発熱シートが知られている。また、この電子レンジ発熱シートを用いた、底面と側壁を備えた容器が知られており、これに蓋をすることも知られている(特許文献3)。
【0005】
このように、電子レンジ発熱シートを用いた電子レンジ用調理包装容器は種種用いられ、簡単に加熱調理できて食べられるので利便性が良いが、マカロニグラタンやライスグラタンのようなものは、最初から茹でたマカロニと、具材の入ったホワイトソースを混ぜて包装しておいては、マカロニがふやけたりしてしまい、電子レンジ調理しても、好ましい食感が得られず、また、チーズも別にして包装しておいて、調理時に上に振りかけて調理することが望ましい。
【0006】
このような食品のように、複数の食品部材を別々に収納して包装し、流通販売する包装容器で、調理時に複数の食品部材合わせて調理する電子レンジ用調理包装容器は見当たらなかった。
【0007】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平7−44733号公報
【特許文献2】特開2008−289692号公報
【特許文献3】特公昭60−15548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、流通販売時には、1つの包装容器として、複数の食品部材を分けて収納でき、調理時には、包装された複数の食品部材を、その包装容器の中で合わせて、電子レンジで加熱することにより、ひとつの食品として加熱されるとともに、その表面に、焦げ色を付けたり、クリスピー感を与えることのできる電子レンジ調理用包装容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、下容器と、該下容器より底が浅く、該下容器の上に重ね合わされる上容器と、蓋とからなる電子レンジ調理用包装容器であって、前記下容器は、下容器底部、下容器側壁部、下容器フランジからなり、前記上容器は、上容器底部、上容器側壁部、上容器フランジからなり、前記上容器底部の下面にマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シートが設けられ、前記下容器フランジの上に、前記上容器フランジが重ね合わされ、前記蓋が、重ねあわされた前記下容器フランジと前記上容器フランジとを、覆って設けられていることを特徴とする電子レンジ調理用包装容器ある。
【0011】
本発明の電子レンジ調理用包装容器は、以上のような構成であって、流通販売時には、下容器と上容器に別々の食品部材を収納して包装することができ、調理するときは、上容器に収納されていた食品部材を下容器に入っている食品部材に合わせ、上容器を下容器に重ねて、電子レンジで加熱することにより、ひとつの食品として加熱されるとともに、上容器底部の下面に設けられたマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シートによって、その食品の上面に焦げ色を付けたり、クリスピー感を与えることができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、前記下容器は、紙容器の内面に内面フィルムが、外面に外面フィルムが、それぞれ積層され、前記紙容器の外縁の外側で、前記内層フィルムと前記外面フィルムが接着していることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用包装容器である。
【0013】
本発明の電子レンジ調理用包装容器は、更に、下容器が上記のような構成を有するので耐水性や、密閉性に優れ、流通販売時の食品部材や、電子レンジ調理時の食品から液体が出ても、染み出したり、漏れ出したりすることが無い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子レンジ調理用包装容器は、流通販売時には、1つの包装容器として、複数の食品部材を分けて収納でき、調理時には、包装された複数の食品部材を、その包装容器の中で合わせて、電子レンジで加熱することにより、ひとつの食品として加熱されるとともに、その表面に、焦げ色を付けたり、クリスピー感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の各部材を模式的に斜視で示した説明図である。
【図2】(A)本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例を模式的に平面で示した説明図である。(B)本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例を模式的に底面で示した説明図である。
【図3】本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の下容器を模式的に平面で示した説明図である。
【図4】図3のX−Xの断面図である。
【図5】本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の下容器に用いる紙容器のブランクを模式的に平面で示した説明図である。
【図6】本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の下容器に用いる紙容器を模式的に平面で示した説明図である。
【図7】(A)本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の上容器を模式的に平面で示した説明図である。(B)本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の上容器を模式的に底面で示した説明図である。
【図8】本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の電子レンジ発熱シートを模式的に断面で示した説明図である。
【図9】本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の蓋を模式的に断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の各部材を模式的に斜視で示した説明図である。図2(A)は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例を模式的に平面で示した説明図である。図2(B)は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例を模式的に底面で示した説明図である。
【0017】
本例の電子レンジ調理用包装容器100は、図1のように、下容器3と、下容器3より底が浅い上容器2と、蓋1とからなっている。下容器3は、下容器底部33、下容器側壁部32、下容器フランジ31とからなっている。
【0018】
また、上容器2は、上容器底部23、上容器側壁部22、上容器フランジ21からなり、上容器底部23には、複数の貫通孔24が設けられ、上容器底部23の下面にマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シート25が部分的に貼着されて設けられている。
【0019】
電子レンジ発熱シート25が部分的に貼着されていることにより、電子レンジで加熱され発生した食品の蒸気が、貼着されていない部分で電子レンジ発熱シート25と上容器底部23の間を通り、貫通孔24より、逃げることができるようになっている。
【0020】
そして、図2(A)の平面で示した説明図、図2(B)の底面で示した説明図のように、下容器フランジ31の上に、上容器フランジ21が重ね合わされ、蓋1が、重ねあわされた下容器フランジ31と上容器フランジ21を、覆って設けられている。
【0021】
本例では、上容器フランジ21は下容器フランジ31より、小さく形成されていて、蓋1が直接下容器フランジ31に剥離可能に接着している。尚、本例では、蓋1は下容器フランジ31より大きく形成されていて、下容器2から蓋1を剥がすときに、剥がしやすくなっているが、下容器2と蓋1を略同じ大きさにして、蓋1にタブを設けて剥がすきっかけとしてもよい。
【0022】
図3は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の下容器を模式的に平面で示した説明図である。図4は、図3のX−Xの断面図である。
【0023】
下容器3は、図3の平面図、図4の断面図のように、紙容器35の内面に内面フィルム34が、外面に外面フィルム36が積層されていて、内面フィルム34、外面フィルム36は紙容器35の外縁より外側に張り出していて、外縁の外側で互いに接着している。
【0024】
このような構成にしたので、紙容器35に水分によって濡れることがなく、耐水性や、密閉性に優れ、流通販売時の食品部材や、電子レンジ調理時の食品から液体が出ても、染み出したり、漏れ出したりすることが無い。
【0025】
図5は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の下容器に用いる紙容器のブランクを模式的に平面で示した説明図である。図6は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の下容器に用いる紙容器を模式的に平面で示した説明図である。
【0026】
下容器3を作成するには、まず、紙容器35を、図5に示すようなブランク350から組み立てる。ブランク350は、底面351と、側面352と、側面352に接続して設けられたフランジ353と、隅部側面354と、隅部側面に接続したフラップ355とからなっている。
【0027】
このブランク350を一点鎖線で表した折り曲げ線に沿って折り込み組み立てる。まず、それぞれの隅部側面354をフラップ355とともに内方に折り、次に、側面352を内方に折り、フラップ355が側面352に重なるようにする。そして、フランジ353を底面351と平行になるように折る。これにより、図6に示すように、紙容器が組み立てられる。
【0028】
本例では、隣り合ったフランジ353どうしは、重ならず突き合わせになっている。隣り合ったフランジ353どうしを、重なるようにすると強度が強くなるが、蓋1や、上容器2とシールするときに、下容器3のフランジ31に段差が生じ、シール不良となる恐れがあり、突き合わせにして、段差を生じないようにするほうがよい。
【0029】
また、重なったフラップ355と側面352を、接着剤を用いて接着しても良いが、接着せず単に折り曲げて、組み立ているだけで良い。また、本例では、フラップ355を下容器3の内側になるように組み立てたが、側面352を先に折り、隅部側面354をフラップ355とともに後で折って、フラップ355を下容器3の外側になるように組み立ててもよい。
【0030】
次に、紙容器35の内面及び外面に内面フィルム34及び外面フィルム36を各々積層する。このとき、内面フィルム34及び外面フィルム36は、同時に紙容器35に積層することも可能であるが、以下に示すように、内面フィルム34、外面フィルム36の順に積層してもよく、この順番が逆であってもよい。
【0031】
紙容器35に内面フィルム34から積層する際、深絞り成形法、特に、真空成形法又は/及び圧空成形法により積層されることが好ましい。
【0032】
深絞り成形法や、真空成形法又は/及び圧空成形法の成形型に組み立てた紙容器35を設置し、紙容器35の上に内面フィルム34を載置する。そして、紙容器35のフランジ353と内面フィルム34をヒートシール等の方法で接着させる。必要に応じて、内面フィルム34、あるいは、紙容器にヒートシール材を塗布しておいてもよい。
【0033】
次に、熱風で内面フィルム34を加熱軟化させる。熱風温度等は、使用する内面フィルム34の材質、厚さ等によって適宜変更される。そして、成形型内の空気を吸引すると、成形型内の空気は吸引され、真空状態になるので、加熱軟化された内面フィルム34は圧力により湾曲して紙容器35の内面に密着成形され、紙容器35と一体的に形成される。
【0034】
なお、紙容器35と内面フィルム34の密着成形は、深絞り成形法、特に、上記した真空成形法、又は圧空成形法、あるいは真空成形法と圧空成形法を併用した成形法により行われることが好ましい。これにより、内面フィルム34は、紙容器35の形状に追随するように精度良く積層することが可能である。
【0035】
次に、内面フィルム34を積層した紙容器35の外面に外面フィルム36を積層する。外面フィルム36の積層方法は特に限定されるものではないが、真空成形法又は/及び圧空成形法などの積層方法を用いることが可能である。
【0036】
また、内面フィルム34と外面フィルム36は紙容器35のフランジ353を覆うように接着することが好ましい。このとき、紙容器35の内面に積層された内面フィルム34は、紙容器35の内面より一回り大きく、紙容器35の外面に積層された外面フィルム36は、紙容器35の外面より一回り大きいものである。
【0037】
内面フィルム34と外面フィルム36が紙容器35のフランジ353を覆うように接着
する方法としては、以下に挙げる方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
内面フィルム34と外面フィルム36の少なくとも一方の内側に接着層を形成することで、内面フィルム34と外面フィルム36を紙容器35に積層した際に、紙容器35のフランジ353からはみ出した内面フィルム34と外面フィルム36が、互いに接着層を挟んで重なり合い、紙容器35のフランジ353を覆うように接着することができる。
【0039】
また、内面フィルム34と外面フィルム36のいずれにも接着層が形成されていない場合であっても、内面フィルム34と外面フィルム36を紙容器35に積層した後、紙容器35のフランジ353からはみ出し、重なり合った内面フィルム34と外面フィルム36をヒートシールすることにより、紙容器35のフランジ353を覆うように接着することができる。
【0040】
紙容器35の形状としては、本例では、隅部側面354を設けた四角いトレー状としたが、本発明においては隅部側面354を設けない四角い容器としても良いし、多角形や楕円形の容器であってもよく、また、紙カップ構造であってもよい。
【0041】
また、本例では、真空成形法又は/及び圧空成形法などの積層方法を用い、内面フィルム34や、外面フィルム36の成形と、紙容器35への積層を同時に行ったが、あらかじめ、内面フィルム34や、外面フィルム36を成形しておいて、成形した内面フィルム34や、外面フィルム36を成形された紙容器35に重ね合わせて、積層してもよい。
【0042】
紙容器35としては、ボール紙や板紙、それらと樹脂フィルム層や金属層などを貼合せ製函してなる容器や、箱型に成形されたパルプモールドなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、紙容器の外側面には、必要に応じて印刷層を設けることができる。
【0043】
紙容器35を製函する際に、接着剤などの接着部材を用いて接着する場合は、接着部材としては、酢酸ビニル系水性接着剤、ホットメルトや、エチレンと酢酸ビニルの共重合樹脂(EVA)、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸の共重合樹脂(EAA)、変性オレフィン系のヒートシールニスなどを用いることができる。
【0044】
内面フィルム34、および、外面フィルム36には、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン共重合体、ブロックポリプロピレン共重合体などのポリプロピレン(PP)や、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレンとアクリル酸の共重合樹脂(EAA)、ナイロン(NY)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などの熱可塑性樹脂を用いることができ、これらを単層で用いてもよく、これらを組み合わせた多層で用いることもできる。
【0045】
特に内面フィルム34は、バリア性を付与するために、中間層にエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)や、メタキシレンジアミンナイロン(MXDナイロン)などのバリア層を設けた共押し出しフィルムを用いるのが好ましい。
【0046】
内面フィルム34、および、外面フィルム36の紙容器35との接着のためにヒートシール剤などを、内面フィルム34や外面フィルム36の紙容器35に接する面に設けてもよい。
【0047】
内面フィルム34、および、外面フィルム36の膜厚としては、100μm以上、500μm以下であることが好ましい。膜厚が500μmよりと厚いと、積層時にフィルム膜
厚が不均一になることがあり、好ましくない。また、100μm未満ではピンホールが発生する恐れがある。
【0048】
図7(A)は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の上容器を模式的に平面で示した説明図、(B)は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の上容器を模式的に底面で示した説明図である。
【0049】
上容器2は、前にも述べたが、図7(A)の平面図、(B)の底面図のように、
上容器底部23、上容器側壁部22、上容器フランジ21からなり、上容器底部23には、複数の貫通孔24が設けられ、上容器底部23の下面にマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シート25が部分的に設けられた貼着部(図には記載せず)により貼着されて設けられている。
【0050】
上容器2の上容器底部23、上容器側壁部22、上容器フランジ21は、紙やパルプモールドの成形品や、紙を製函したトレー容器でもよいが、プラスチックの成形品が好ましく用いられる。
【0051】
ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン共重合体、ブロックポリプロピレン共重合体などのポリプロピレン(PP)や、ナイロン(NY)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの熱可塑性樹脂からなるシートを、真空成形法又は/及び圧空成形法で成形して、貫通孔24を打ち抜いて、作ることができる。
【0052】
また、中間層にエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)や、メタキシレンジアミンナイロン(MXDナイロン)などのバリア層を設けた共押し出しフィルムを用いてもよい。
【0053】
図8は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の電子レンジ発熱シートを模式的に断面で示した説明図である。
【0054】
上容器2の上容器底部23に設けられるマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シート25は、マイクロ波により発熱するシートであれば、特に限定されないが、本例に用いる電子レンジ発熱シート25は、図8のように、樹脂フィルム251と、導電層252と、接着層253と、紙層254とからなる。
【0055】
樹脂フィルム251としては、耐熱性の高い樹脂フィルムが使用される。耐熱性の高い樹脂としては、熱硬化性の樹脂があり、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、などが使用できる。
【0056】
また、熱可塑性樹脂としては、耐熱性のおおむね250℃以上の融点を有する樹脂が好ましい。ポリエステル系としては、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂があり、ポリアミド系としては、ナイロン66がある。また、ポリカーボネート、ポリサルフォンなどが使用可能で、これらの2軸延伸フィルムが好ましく使用できる。
【0057】
この中では、ポリエチレンテレフタレートが、汎用性があり、安価で入手が容易である。2軸延伸のポリエチレンテレフタレートを用いれば、比較的熱による寸法安定性もよく、表面が平滑であり、特に適している。
【0058】
厚みとしては、入手が容易な6μmから50μmの樹脂フィルム251が使用しやすい
。蒸着工程や貼り合わせ工程での取り扱いやすさ、また、紙層254と積層して電子レンジ発熱シート25にした後の、容器への成形性や成形後の戻りを考慮し、紙層254との兼ね合いで選択することができる。
【0059】
導電層252としては、金属の薄膜が用いられる。薄膜の製造方法は、樹脂フィルム251に真空蒸着法によって積層させるのがよい。金属としては、アルミニウムのほかにステンレスが使用できるが、アルミニウムが使い勝手がよい。
【0060】
より具体的には、金属アルミニウムを蒸着源として、真空中で、加熱、蒸発させ、2軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルム面に凝集させて薄膜を形成させる。厚みは5から15nmが好ましい。厚みによって電子レンジ加熱したとき、特定の温度に達するまでの時間に影響される。蒸着薄膜の厚みの制御は、この程度の厚みでは、アルミニウム層は半透明であるので、光線透過量を測定することによって厚さを制御することができる。
【0061】
このようにして、導電層252の金属薄膜と樹脂フィルム251を積層した積層体の金属薄膜面を、接着層253を介して紙層254に積層して、電子レンジ発熱シート25が得られる。
【0062】
紙層254としては、坪量が10から300g/mの紙が使用できる。紙の種類としては、ボール紙、マニラボール、カップ原紙、カード紙が使用できる。また、接着層253としては、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いる。この積層はドライラミネート法にて行うことができる。
【0063】
このようにして得られた、電子レンジ発熱シート25は、マイクロ波を照射したときに、マイクロ波の一部が透過し、一部が金属薄膜層で渦電流に変わる。渦電流が流れると、金属薄膜層の電気抵抗によって、ジュール熱が発生し金属薄膜層からなる導電層252が発熱する。
【0064】
この電子レンジ発熱シート25の紙層254の面が、接着剤などで、上容器底部23の下面に部分的に貼着されている。電子レンジ発熱シート25が部分的に貼着されていることにより、電子レンジで加熱され発生した食品の蒸気が、貼着されていない部分で電子レンジ発熱シート25と上容器底部23の間を通り、貫通孔24より、逃げることができるようになっている。
【0065】
蓋1は、下容器3の下容器フランジ31とシールし、電子レンジ調理用包装容器100全体を密封するものである。上容器2は、下容器3より小さくなっていて、下容器フランジ31の上に、上容器フランジ21が重ね合わされ、上容器フランジ21の回りに出ている下容器フランジ31と蓋1をシールする。またさらに、蓋1と上容器フランジ21をシールし、上容器フランジ21と下容器フランジ31をシールするようになっていても構わない。
【0066】
本例の電子レンジ調理用包装容器100では、下容器フランジ31と蓋1、蓋1と上容器フランジ21、上容器フランジ21と下容器フランジ31をシールするようになっている。
【0067】
図9は、本発明の電子レンジ調理用包装容器の一例の蓋を模式的に断面で示した説明図である。
【0068】
本例の電子レンジ調理用包装容器100の蓋1は、図9のように、紙を基材101として、紙の裏面に、接着層102を介し、バリア層103とシーラント層104が設けられ
ている。そして、必要に応じて、表面に印刷層105を設けている。
【0069】
基材101に用いる紙としては、坪量100g/m〜500g/mの紙が好ましく用いられる。また、基材101の表面に印刷層105を設ける場合には、少なくとも表面が白色で多色印刷適正を有するものが好ましく、印刷用下地コート層が積層された、両アート紙、片アート紙、あるいは、両コート紙、片コート紙などを好適に使用することができる。また、場合によっては、純白ロールなどを用いることも出来る。
【0070】
バリア層103は、金属箔や、金属蒸着膜でもよいが、間違えて電子レンジにかけてしまっても困らないように、バリア性のある樹脂や、無機蒸着膜を用いるのが好ましい。バリア性のある樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)や、メタキシレンジアミンナイロン(MXDナイロン)が使用できる。
【0071】
また、無機蒸着膜としては、シリカやアルミナの蒸着膜、あるいは、これらの共蒸着膜が挙げられる。無機蒸着膜は、2軸延伸樹脂フィルムにこれらの無機物を蒸着させた蒸着フィルムとして、用いることができる。
【0072】
シーラント層104は、下容器フランジ31と剥離可能にシールできるイージーピールシーラント層であることが好ましい。また、上容器フランジ21とも剥離可能にシールできれば更に好ましい。
【0073】
下容器フランジ31と剥離可能にシールできるためには、下容器フランジ31のシール面の樹脂と同じポリオレフィン樹脂を主体として、そこに、その樹脂と相溶性の無い、あるいは相溶性の低い他のポリオレフィン樹脂をブレンドした混合樹脂とするのが好ましい。
【0074】
また、酸変性させたポリオレフィン樹脂を用いることもできる。イージーピールシーラント層は市販のフィルムを用いても良いし、また、積層面に直接溶融樹脂を押し出して、成膜してもよい。
【0075】
接着層102は、必要に応じて、設けるもので、バリア層103と基材101とを積層するためのものであり、サンドイッチラミネーションで積層する場合は、熱可塑性樹脂を用いるし、ドライラミネーションや、ウェットラミネーションで積層する場合は、それぞれに用いる接着剤を、接着層102として用いる。
【0076】
また、本例では、バリア層103を設けたが、設けなくともよい。この場合、基材101とシーラント層104を、接着層102を介して設けても良いし、また、接着層102も設けず、直接、基材101にシーラント層104を押し出して積層することも可能である。
【0077】
本発明の電子レンジ調理用包装容器100は、以上のような構成であるので、下容器3と、上容器2に別々の食品部材を分けて収納し、または、それぞれに、下容器3と、上容器2に1種または複数の食品部材を収納し、下容器フランジ31の上に、上容器フランジ21を重ね合わせ、蓋1を下容器フランジ31にシールし、また、蓋1と上容器フランジ21をシールし、上容器フランジ21と下容器フランジ31をシールして、1つの包装容器として、流通・販売することができる。
【0078】
そして、消費者が購入して調理するときは、上容器2に収納されていた食品部材を、下容器3の食品部材と合わせ、上容器2を下容器3に被せて、電子レンジ調理することができ、合わされた食品部材がひとつの食品として、加熱されるとともに、上容器2の下面に
マイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シート25が設けられているので、その食品の表面に、焦げ色を付けたり、クリスピー感を与えることができる。
【実施例】
【0079】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0080】
<蓋1の作成>
坪量270g/mの片アート紙を基材101として用意し、表面のコート面に、グラビア印刷によって印刷層105を設け、刷本を得た。
【0081】
エチレンビニルアルコール共重合体15μmとポリプロピレン用イージーピールシーラント層からなる層厚70μmの複合フィルムを、低密度ポリエチレン20μmを押し出して、サンドイッチラミネーションにより、基材101の裏面に積層し、所定の形状に打ち抜いて、図1のような形状の蓋材1を得た。
【0082】
<上容器2の作成>
まず、電子レンジ発熱シート25を作成する。樹脂フィルム251として12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その片面に導電層252としてアルミニウムを真空蒸着によって6nmの厚さになるように設け、その導電層252の面に、接着層253の接着剤を介し、ドライラミネーションにより、紙層254の坪量50g/mの中性紙を積層し、所定の形状に断裁し、電子レンジ発熱シート25を準備する。
ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン系イージーピール樹脂からなる複合シート(総厚300μm、エチレンビニルアルコール共重合体の層厚は全体の5%)を、真空・圧空成型法により成形し、貫通孔24を打ち抜くと同時に、所定の形状に打ち抜いて、上容器フランジ21、上容器側壁部22、上容器底部23からなる成形品を得た。
【0083】
この成形品の上容器底部23の下面に、先に準備した電子レンジ発熱シート25の紙層254の面を、接着剤を介して部分的に貼着して、図1および図7のような形状の上容器2を作成した。
【0084】
<下容器3の作成>
坪量270g/mの片面コート紙を用意し、コート面にオフセット印刷により、印刷層を設け、図5のように、打ち抜きと同時に、一点鎖線で表した折り曲げ線を押罫で設け、ブランク350を得た。
【0085】
ブランク350を、まず、それぞれの隅部側面354をフラップ355とともに内方に折り、次に、側面352を内方に折り、フラップ355が側面352に重なるようにする。そして、フランジ353を底面351と平行になるように折る。これにより、図6に示すように、紙容器35が組み立てられる。
【0086】
外面フィルム36として、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレンからなる複合フィルム(総厚180μm、エチレンビニルアルコール共重合体の厚さは、総厚の5%)を準備し、その片面に、ヒートシール材を塗布し、外面フィルム36を用意した。
【0087】
先に組み立てた紙容器35を底面351が上になるようにして真空成形の型に被せ、その上に外面フィルム36をヒートシール剤が紙容器35側になるようにセットして、加熱吸引して、外面フィルム36を成形すると同時に、紙容器35の外面に積層した。
【0088】
次に、外面フィルム36が積層された紙容器35をフランジ353が上になるようにして真空成形の型に被せ、その上に内面フィルム34をヒートシール剤が紙容器35側になるようにセットして、加熱吸引して、内面フィルム34を成形すると同時に、紙容器35の内面に積層し、また、紙容器35のフランジ353の外縁の外側にはみ出した内面フィルム34と外面フィルム36を接着させた。この接着した内面フィルム34と外面フィルム36の周縁部で打ち抜いて、図1、図3、図4のような、下容器3を作成した。
【0089】
<充填シール>
下容器3に茹でたマカロニを入れ、上容器2を被せた。上容器2に、具入りのホワイトソースを包装した袋を入れ、更に、チーズの入った袋を入れて、蓋1を被せて、下容器3と蓋1、下容器3と上容器2、上容器2と蓋1をシールし、食品部材を包装した電子レンジ調理用包装容器100を作成した。
【0090】
<調理>
食品部材を包装した電子レンジ調理用包装容器100をチルドで保存後、取り出して、蓋1を剥がし、ホワイトソースの袋とチーズ入りの袋を取り出した。次に、上容器2を下容器3から剥がした。
【0091】
下容器3に入っていたマカロニに、袋からホワイトソースをかけて、マカロニにホワイトソースをからめる。その上に、チーズをかけて、上容器2を被せる。これを、電子レンジで調理した。
【0092】
<観察と試食>
調理後取り出したところ、マカロニグラタンは、表面は、融けたチーズに焦げ色が付いて、食したところ、マカロニもホワイトソースも温かく調理されていた。
【符号の説明】
【0093】
100・・・電子レンジ調理用包装容器
1・・・蓋
101・・・基材
102・・・接着層
103・・・バリア層
104・・・シーラント層
105・・・印刷層
2・・・上容器
21・・・上容器フランジ
22・・・上容器側壁部
23・・・上容器底部
24・・・貫通孔
25・・・電子レンジ発熱シート
251・・・樹脂フィルム
252・・・導電層
253・・・接着層
254・・・紙層
3・・・下容器
31・・・下容器フランジ
32・・・下容器側壁部
33・・・下容器底部
34・・・内面フィルム
35・・・紙容器
36・・・外面フィルム
350・・・ブランク
351・・・底面
352・・・側面
353・・・フランジ
354・・・隅部側面
355・・・フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下容器と、該下容器より底が浅く、該下容器の上に重ね合わされる上容器と、蓋とからなる電子レンジ調理用包装容器であって、前記下容器は、下容器底部、下容器側壁部、下容器フランジからなり、前記上容器は、上容器底部、上容器側壁部、上容器フランジからなり、前記上容器底部の下面にマイクロ波により発熱する電子レンジ発熱シートが設けられ、前記下容器フランジの上に、前記上容器フランジが重ね合わされ、前記蓋が、重ねあわされた前記下容器フランジと前記上容器フランジとを、覆って設けられていることを特徴とする電子レンジ調理用包装容器。
【請求項2】
前記下容器は、紙容器の内面に内面フィルムが、外面に外面フィルムが、それぞれ積層され、前記紙容器の外縁の外側で、前記内層フィルムと前記外面フィルムが接着していることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192964(P2012−192964A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59250(P2011−59250)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】