説明

電子内視鏡システム

【課題】挿入部の細径化に寄与することができ、分光推定処理の精度を向上させることができる電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】電子内視鏡システム2は、通常照明光と、通常照明光とは分光特性が異なる特殊照明光とを発する発光機構24が設けられた照明装置11と、通常照明光、および特殊照明光で被観察部位を照射して得られた撮像信号から、任意の波長帯域を有する分光画像を生成する分光画像生成部36が設けられたプロセッサ装置12とを備える。発光機構24は、通常照明光を発する光源25、および、通常照明光を透過するガラス27と、通常照明光から特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタ28とが円周上に等間隔で交互に設けられた円板29を所定の回転数で回転するオプティカルチョッパー26からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の波長帯域を有する分光画像を得ることが可能な電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、電子内視鏡を利用した医療診断が盛んに行われている。電子内視鏡の被検体内に挿入される挿入部先端には、CCDなどの固体撮像素子が内蔵されている。固体撮像素子により取得した撮像信号に対して、プロセッサ装置で信号処理を施すことで、モニタで被検体内の被観察部位の画像を観察することができる。
【0003】
電子内視鏡を用いた医療診断の分野では、病変の発見を容易にするために、狭い波長帯域の光を被観察部位に照射し、これによる反射光を画像化(以下、このようにして得られた画像を、通常の画像と区別して分光画像と呼ぶ。)して観察するNarrow Band Imaging(以下、NBIと略す。)と呼ばれる手法が脚光を浴びている。NBIによれば、被観察部位に色素を散布したり、インドシアニングリーン(ICG;Indocyanine green)などの造影剤を注入したりすることなく、粘膜下層部の血管を強調した画像や、胃壁、腸の表層組織などの臓器の構造物を強調した画像を容易に得ることができる。
【0004】
また、最近、狭い波長帯域の光ではなく、通常の白色光を被観察部位に照射して得られた通常の画像に対して、主成分分析を用いた次元圧縮による線形近似や、ウィナー推定などに代表される分光推定処理を施すことで、分光画像を得る技術が実用化されている。
【0005】
分光推定処理の精度を向上させるためには、固体撮像素子の分光感度特性の赤(R)、緑(G)、青(B)の三バンドからバンド数を増やすこと、つまり、分光感度特性のマルチバンド化が有効である。マルチバンド化の方法としては、電子内視鏡の分野に限らず、従来から様々な方法が提案されている。例えば、写真フイルムに被写体像を結像するレンズの前面に二枚のバンドパスフィルタを選択可能に設け、二枚のフィルタを通して同一被写体を撮影して画像を取得し、この画像から分光画像を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、色分解プリズムで入射光を複数の異なる波長帯域を有する光に分解し、色分解プリズムの各出射面に配された複数の固体撮像素子で、分解された光をそれぞれ撮像して得られた画像から、分光画像を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
さらに、被写体像を結像する結像光学系と単板カラー撮像素子との間に、被写体像の光束を複数に分岐し、分岐したそれぞれの光束をそれぞれの分割結像面に再び結像させる分岐光学系を設けた撮影装置が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−296114号公報
【特許文献2】特開2005−223700号公報
【特許文献3】特開2005−260480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に記載の発明では、いずれもレンズや結像光学系と被写体像の結像面との間に色分解プリズムやフィルタ、分岐光学系を配している。このため、特許文献1〜3に記載の発明を電子内視鏡に採用した場合、固体撮像素子が配される挿入部先端に色分解プリズムやフィルタ、分岐光学系を設けなければならない。しかしながら、挿入部先端に部品を設けると、その分挿入部が太くなってしまい、患者への負担が増すという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、挿入部の細径化に寄与することができ、分光推定処理の精度を向上させることができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体内の被観察部位の像光を撮像して撮像信号を出力する固体撮像素子、および前記被観察部位に照明光を照射するための照明窓を有する電子内視鏡と、前記照明光を発する照明装置と、前記撮像信号から画像を生成して、これをモニタに表示するプロセッサ装置とからなる電子内視鏡システムにおいて、前記照明装置は、通常照明光と、通常照明光とは分光特性が異なる特殊照明光とを発する発光機構を有し、前記プロセッサ装置は、前記通常照明光、および前記特殊照明光で前記被観察部位を照射して得られた撮像信号から、任意の波長帯域を有する分光画像を生成する分光画像推定部を有することを特徴とする。
【0011】
前記発光機構は、前記通常照明光を発する光源と、前記通常照明光を透過する透過部材と、前記通常照明光から前記特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタとからなり、前記透過部材と前記フィルタとが一定周期で切り替わることが好ましい。
【0012】
前記発光機構は、前記通常照明光を発する光源、および、前記通常照明光を透過する透過部材と、前記通常照明光から前記特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタとが円周上に等間隔で交互に設けられた円板を所定の回転数で回転するオプティカルチョッパーからなることが好ましい。
【0013】
前記発光機構は、前記通常照明光を発する少なくとも二つの光源、少なくとも一つの光源の前面に配され、前記通常照明光から前記特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタ、および、前記フィルタが前面に配された光源を所定の間隔でオン/オフ駆動させるスイッチからなることが好ましい。
【0014】
前記フィルタの分光透過特性は、前記特殊照明光を照射したときに、前記固体撮像素子の分光感度特性が、仮想的に変化するものであることが好ましく、波長軸に対して長波長側に上向き、または下向きに傾いた直線状で、前記固体撮像素子の分光感度特性を波長軸に対してシフトさせることが好ましい。
【0015】
前記発光機構は、前記通常照明光、および前記特殊照明光を所定の間隔で交互に発し、前記プロセッサ装置は、前記通常照明光で前記被観察部位を照射して得られた前回の撮像信号を一時的に記憶するバッファメモリと、前記通常照明光で前記被観察部位を照射して得られた今回の撮像信号、および前記バッファメモリから読み出した前回の撮像信号を元に、これらの撮像信号の間で得られる、前記特殊照明光で前記被観察部位を照射して得られた撮像信号の分を補間する補間処理部とを有することが好ましい。
【0016】
前記プロセッサ装置は、前記通常照明光で前記被観察部位を照射して得られた撮像信号から生成された画像、および前記分光画像を切り替えて、または同時に前記モニタに表示させる表示制御部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子内視鏡システムによれば、通常照明光と、通常照明光とは分光特性が異なる特殊照明光とを発する発光機構を照明装置に設け、通常照明光、および特殊照明光で被観察部位を照射して得られた撮像信号から、任意の波長帯域を有する分光画像を生成する分光画像推定部をプロセッサ装置に設けるので、挿入部先端に部品を設ける必要がなく、固体撮像素子の分光感度特性のマルチバンド化を容易に実現することができる。したがって、挿入部の細径化に寄与することができ、分光推定処理の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、電子内視鏡システム2は、電子内視鏡10、照明装置11、およびプロセッサ装置12から構成される。電子内視鏡10は、被検体内に挿入される挿入部13と、挿入部13の基端部分に連設された操作部14とを備えている。
【0019】
挿入部13の先端に連設された先端部13aには、被検体内の被観察部位の像光を取り込むための対物光学系20と像光を撮像するCCD21(ともに図2参照)、被観察部位に照明装置11からの照明光を照射するための照明窓22(図2参照)が内蔵されている。また、先端部13aには、鉗子口15と連通した鉗子出口、送気・送水ボタン14aを操作することによって、対物光学系20を保護する観察窓の汚れを落とすための洗浄水やエアーが噴射されるノズルなどが設けられている。CCD21により取得された被検体内の画像は、コード16で接続されたプロセッサ装置12のモニタ17に表示される。
【0020】
先端部13aの後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部13bが設けられている。湾曲部13bは、操作部14に設けられたアングルノブ14bが操作されて、挿入部13内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部13aが被検体内の所望の方向に向けられる。
【0021】
湾曲部13bの後方には、可撓性を有する軟性部13cが設けられている。軟性部13cは、先端部13aが被観察部位に到達可能なように、且つ術者が操作部14を把持して操作する際に支障を来さない程度に患者との距離を保つために、数mの長さを有する。
【0022】
図2において、照明窓22には、ライトガイド23の一端が取り付けられている。ライトガイド23は、挿入部13、操作部14、およびコード16に亘って設けられており、その他端は、照明装置11に設けられた発光機構24に接続されている。
【0023】
発光機構24は、光源25、およびオプティカルチョッパー(以下、OCと略す。)26からなる。光源25は、例えば、ハロゲンランプからなり、白色光(以下、通常照明光という。)を発する。OC26は、通常照明光を透過するガラス27、およびフィルタ28(ハッチングで示す。)が円周上に等間隔で交互に設けられた円板29が、所定の回転数で回転するものである。このOC26により、ライトガイド23に入射される光が、光源25で発せられてガラス27を透過した通常照明光と、フィルタ28を透過した照明光(以下、特殊照明光という。)とに、所定の間隔、例えば、CCD21の撮像間隔で交互に切り替えられる。
【0024】
図3(A)に実線で示すように、フィルタ28は、波長400nmで30%、700nmで100%の透過率を有する、波長軸に対して長波長側に上向きに傾いた直線状の分光透過特性をもつ。ここで、電子内視鏡10で被検体内を観察する際には、被検体内は暗所であるため、照明窓22から照射される光のみで撮影が行われるので、他の光源要素の影響を勘案する必要がない。このため、特殊照明光を照射したときのCCD21の仮想的な分光感度特性は、(A)に示す通常照明光を照射したときのCCD21本来の分光感度特性と、フィルタ28の分光透過特性との積であると考えることができる。
【0025】
すなわち、特殊照明光を照射したときのCCD21の仮想的な分光感度特性は、(B)に示すように、フィルタ28が波長軸に対して長波長側に上向きに傾いた直線状の分光透過特性をもつことから、短波長側の青(B、破線で示す。)の強度が最も抑制され、中、長波長側の緑(G、一点鎖線で示す。)、赤(R、二点鎖線で示す。)となるにつれて抑制の度合いが弱くなり、また、各色の強度のピークが長波長側に若干シフトしたものとなる。
【0026】
CCD21は、通常照明光、および特殊照明光による撮影によって、(A)に示す本来の分光感度特性で得られる画像(以下、通常画像という。)、および(B)に示す仮想的な分光感度特性で得られる画像(以下、特殊画像という。)の二種類の画像を表す撮像信号(以下、通常画像信号、および特殊画像信号という。)を出力する。すなわち、CCD21は、本来の分光感度特性のRGBの三バンド、および仮想的な分光感度特性のRGBの三バンドの計六バンドを有するものであるといえる。通常画像信号、および特殊画像信号は、OC26で通常照明光と特殊照明光とがCCD21の撮像間隔で交互に切り替えられることから、一フレーム毎に交互に出力される。
【0027】
図2に戻って、CCD21から出力された通常画像信号、および特殊画像信号は、プロセッサ装置12の通常画像用メモリ30、および特殊画像用メモリ31にそれぞれ入力され、記憶される。通常画像用メモリ30には、バッファメモリ32が接続されている。通常画像用メモリ30は、新たな通常画像信号がCCD21から入力される際に、それまで記憶していた通常画像信号をバッファメモリ32に出力する。つまり、バッファメモリ32には、二フレーム前の通常画像信号(一フレーム前の信号は特殊画像信号)が記憶される。
【0028】
通常画像用メモリ30、およびバッファメモリ32には、通常画像生成部33が接続されている。通常画像生成部33は、通常画像用メモリ30から読み出した通常画像信号に対して、相関二重サンプリング、増幅、A/D変換などのアナログ信号処理を施した後、階調補正、輪郭強調、γ補正などのデジタル信号処理を施し、通常画像を生成する。
【0029】
また、通常画像生成部33は、バッファメモリ32から二フレーム前の通常画像信号を読み出し、これと通常画像用メモリ30から読み出した現フレームの通常画像信号とを元に、現フレームおよび二フレーム前の通常画像の動きベクトルを検出する。そして、この検出結果に基づいて、一フレーム前、つまり、これらの間で得られる特殊画像の分の通常画像を生成する動き補間処理を実行する。通常画像生成部33は、生成した通常画像を表示制御部34に出力する。
【0030】
通常画像用メモリ30、および特殊画像用メモリ31には、分光推定処理部35が接続されている。分光推定処理部35は、これらのメモリ30、31から、通常画像信号、および特殊画像信号をそれぞれ読み出す。そして、読み出した通常画像信号、および特殊画像信号を用いて、主成分分析を用いた次元圧縮による線形近似や、ウィナー推定などによる分光推定処理を施す。
【0031】
分光推定処理は、具体的には、通常照明光を照射したときのCCD21本来の分光感度特性のRGBの三バンドを反映した通常画像信号と、特殊照明光を照射したときのCCD21の仮想的な分光感度特性のRGBの三バンドを反映した特殊画像信号とから、可視光の波長帯域(波長400nm〜700nm)における被観察部位の分光反射率を推定する。
【0032】
分光画像生成部36は、分光推定処理部35における分光推定処理の結果に基づいて、通常画像信号、および特殊画像信号から、任意の波長帯域を有する分光画像(例えば、波長500nm、450nm、400nmのスペクトル画像をそれぞれRGBの三バンドに割り当てた合成画像も含む。)を生成する。分光画像生成部36は、生成した分光画像を表示制御部34に出力する。
【0033】
図4に示すように、表示制御部34は、検査日や患者の情報50とともに、通常画像生成部33から出力された通常画像51、および分光画像生成部36から出力された分光画像52を、モニタ17に並べて表示させる。また、操作卓38(図2参照)で選択することにより、通常画像51、または分光画像52をそれぞれ個別にモニタ17に表示させることも可能となっている。
【0034】
再び図2に戻って、CPU37は、プロセッサ装置12の全体の動作を統括的に制御する。CPU37には、各種設定や操作を行うための操作卓38、およびタイミングジェネレータ(以下、TGと略す。)39が接続されている。TG39は、OC26、通常画像用メモリ30、および特殊画像用メモリ31に接続されており、通常画像用メモリ30には、NOT回路40を介して接続されている。
【0035】
TG39は、CPU37の制御の下に、OC26、通常画像用メモリ30、および特殊画像用メモリ31の各部を所定の間隔で動作させるための同期信号を生成し、生成した同期信号を各部に出力する。OC26の円板29は、TG39からの同期信号に応じて、所定の回転数で回転する。特殊画像用メモリ31は、同期信号で規定されるタイミングでCCD21からの特殊画像信号を取り込み、通常画像用メモリ30は、NOT回路40により極性が反転した同期信号で規定されるタイミング、つまり、同期信号とは逆のタイミングでCCD21からの通常画像信号を取り込む。
【0036】
上記のように構成された電子内視鏡システム2で被検体内を観察する際には、電子内視鏡10、照明装置11、およびプロセッサ装置12の電源を投入して、挿入部13を被検体内に挿入し、照明窓22から照射される光で被検体内を照明しながら、CCD21により得られる画像をモニタ17で観察する。
【0037】
照明装置11では、OC26の円板29が、TG39からの同期信号に応じた所定の回転数で回転される。これにより、通常照明光と特殊照明光とが、CCD21の撮像間隔で交互に、ライトガイド23を伝って照明窓22から被観察部位に照射される。
【0038】
対物光学系20から取り込まれた被観察部位の像光は、CCD21の撮像面に結像され、これによりCCD21から撮像信号が出力される。このとき、被観察部位には、通常照明光と特殊照明光とがCCD21の撮像間隔で交互に照射されているので、CCD21からは、通常画像信号、および特殊画像信号が一フレーム毎に交互に出力される。
【0039】
CCD21から出力された通常画像信号は、NOT回路40により極性が反転した同期信号で規定されるタイミングで、通常画像用メモリ30に取り込まれる。通常画像用メモリ30に取り込まれた通常画像信号は、通常画像生成部33、および分光推定処理部35に順次読み出される。また、新たな通常画像信号がCCD21から入力された際には、それまで通常画像用メモリ30に記憶されていた通常画像信号が、バッファメモリ32に出力される。
【0040】
通常画像生成部33では、通常画像用メモリ30から読み出した通常画像信号に対して各種信号処理が施され、これにより通常画像が生成される。また、通常画像生成部33では、通常画像用メモリ30から読み出した現フレームの通常画像信号、およびバッファメモリ32から読み出した二フレーム前の通常画像信号から、一フレーム前の通常画像を生成する動き補間処理が実行される。通常画像生成部33で生成された通常画像は、表示制御部34に出力される。
【0041】
一方、CCD21から出力された特殊画像信号は、TG39からの同期信号で規定されるタイミングで、特殊画像用メモリ31に取り込まれる。特殊画像用メモリ31に取り込まれた特殊画像信号は、分光推定処理部35に順次読み出される。
【0042】
分光推定処理部35では、通常画像用メモリ30から読み出した通常画像信号、および特殊画像用メモリ31から読み出した特殊画像信号を用いて、分光推定処理が実行される。分光画像生成部36では、分光推定処理部35における分光推定処理の結果に基づいて、通常画像信号、および特殊画像信号から分光画像が生成される。分光画像生成部36で生成された分光画像は、表示制御部34に出力される。
【0043】
表示制御部34に出力された通常画像、および分光画像は、モニタ17に並べて、あるいはそれぞれ個別に表示される。
【0044】
以上説明したように、電子内視鏡システム2は、通常照明光と特殊照明光とを交互に照射するための発光機構24を照明装置11に設け、通常照明光、および特殊照明光での撮影で得られた通常画像、および特殊画像を用いて分光推定処理を行うので、先端部13aに部品を設置しなくて済み、また、CCD21の分光感度特性を仮想的にマルチバンド化することができる。
【0045】
従来の電子内視鏡システムでは、照明装置11にOCが既に装備されているものがあるため、この場合には、円板を取り替えてプロセッサ装置の構成を変更するだけで、容易に電子内視鏡システム2と同様の構成にすることができる。
【0046】
また、二フレーム前の通常画像信号をバッファメモリ32に記憶させておき、この二フレーム前の通常画像信号、および現フレームの通常画像信号から、一フレーム前の通常画像を生成する動き補間処理を通常画像生成部33で実行するようにしたので、通常画像のフレームレートを維持することができる。
【0047】
さらに、通常画像、および分光画像をモニタ17に並べて、あるいはそれぞれ個別に表示させるようにしたので、迅速且つ的確な医療診断に供することができる。
【0048】
ここで、分光推定処理のシミュレーション結果を示す図5において、従前の如く通常画像のみを用いて分光推定処理を行った場合は、(A)に示すように、分光推定処理の対象となった元データ(点線で示す。)に対して、全体的にシミュレーション結果(実線で示す。)の追随性が悪い。これに対して、上記実施形態のように、通常画像、および特殊画像を用いて分光推定処理を行った場合は、(B)に示すように、中間波長帯域におけるシミュレーション結果は、元データを略再現している。このことから、通常画像、および特殊画像を用いて分光推定処理を行うことで、分光推定処理の精度が向上することが確認された。
【0049】
上記実施形態では、OC26を用いた発光機構24を有する照明装置11を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、OC26を用いることなく、別の機構を設けて、ガラス27とフィルタ28とを一定周期で切り替えてもよい。
【0050】
また、例えば、図6に示す照明装置60を用いてもよい。照明装置60は、通常照明光を発する二つの光源61a、61bと、光源61bの前面に配され、フィルタ28と同様の分光透過特性をもつフィルタ62と、光源61bに接続され、TG39からの同期信号に応じて光源61bをオン/オフ駆動させるスイッチ63とからなる発光機構64を有する。
【0051】
照明装置60では、スイッチ63による光源61bのオン/オフ駆動によって、ライトガイド23に入射される光が、光源61aで発せられる通常照明光と、光源61bで発せられてフィルタ62を透過した特殊照明光が光源61aの通常照明光に合成された照明光とに、TG39からの同期信号で規定される所定の間隔で交互に切り替えられる。なお、光源61bおよびフィルタ62の代わりに、特殊照明光そのものの分光特性をもつ光を発する光源を用いてもよい。
【0052】
上記実施形態では、波長軸に対して長波長側に上向きに傾いた直線状の分光透過特性をもつフィルタ28、62を例示して説明したが、特殊照明光を照射したときのCCD21の分光感度特性が仮想的に変化するものであればよく、例えば、波長軸に対して長波長側に下向きに傾いた直線状の分光透過特性をもつものや、鋸型の分光透過特性をもつフィルタを用いてもよい。また、上記実施形態では、一種類の特殊照明光を用いた例を挙げて説明したが、二種類以上の特殊照明光を発するように照明装置を構成してもよい。
【0053】
なお、照明装置は、電子内視鏡と別体にする必要はなく、操作部14に内蔵させてもよい。また、上記実施形態では、電子内視鏡10を例示して説明したが、被観察部位に超音波を照射して、被観察部位からのエコー信号を受信する超音波トランスデューサが、CCDとともに先端部に一体的に配された超音波内視鏡についても、本発明は適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】電子内視鏡システムの構成を示す概略図である。
【図2】電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】CCDの分光感度特性を示すグラフであり、(A)は、CCD本来の分光感度特性、およびフィルタの分光透過特性、(B)は、特殊照明光を照射したときのCCDの仮想的な分光感度特性をそれぞれ示す。
【図4】モニタの表示状態を示す説明図である。
【図5】分光推定処理のシミュレーション結果を示すグラフであり、(A)は、通常画像のみを用いて分光推定処理を行った場合、(B)は、通常画像、および特殊画像を用いて分光推定処理を行った場合をそれぞれ示す。
【図6】照明装置の別の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
2 電子内視鏡システム
10 電子内視鏡
11、60 照明装置
12 プロセッサ装置
17 モニタ
21 CCD
22 照明窓
24、64 発光機構
25、61a、61b 光源
26 オプティカルチョッパー(OC)
27 ガラス
28、62 フィルタ
29 円板
32 バッファメモリ
33 通常画像生成部
34 表示制御部
35 分光推定処理部
36 分光画像生成部
37 CPU
51 通常画像
52 分光画像
63 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の被観察部位の像光を撮像して撮像信号を出力する固体撮像素子、および前記被観察部位に照明光を照射するための照明窓を有する電子内視鏡と、前記照明光を発する照明装置と、前記撮像信号から画像を生成して、これをモニタに表示するプロセッサ装置とからなる電子内視鏡システムにおいて、
前記照明装置は、通常照明光と、通常照明光とは分光特性が異なる特殊照明光とを発する発光機構を有し、
前記プロセッサ装置は、前記通常照明光、および前記特殊照明光で前記被観察部位を照射して得られた撮像信号から、任意の波長帯域を有する分光画像を生成する分光画像推定部を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記発光機構は、前記通常照明光を発する光源と、
前記通常照明光を透過する透過部材と、
前記通常照明光から前記特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタとからなり、
前記透過部材と前記フィルタとが一定周期で切り替わることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記発光機構は、前記通常照明光を発する光源、
および、前記通常照明光を透過する透過部材と、前記通常照明光から前記特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタとが円周上に等間隔で交互に設けられた円板を所定の回転数で回転するオプティカルチョッパーからなることを特徴とする請求項1または2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記発光機構は、前記通常照明光を発する少なくとも二つの光源、
少なくとも一つの光源の前面に配され、前記通常照明光から前記特殊照明光を得るための分光透過特性をもつフィルタ、
および、前記フィルタが前面に配された光源を所定の間隔でオン/オフ駆動させるスイッチからなることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記フィルタの分光透過特性は、前記特殊照明光を照射したときに、前記固体撮像素子の分光感度特性が、仮想的に変化するものであることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記フィルタの分光透過特性は、波長軸に対して長波長側に上向き、または下向きに傾いた直線状で、前記固体撮像素子の分光感度特性を波長軸に対してシフトさせることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記発光機構は、前記通常照明光、および前記特殊照明光を所定の間隔で交互に発し、
前記プロセッサ装置は、前記通常照明光で前記被観察部位を照射して得られた前回の撮像信号を一時的に記憶するバッファメモリと、
前記通常照明光で前記被観察部位を照射して得られた今回の撮像信号、および前記バッファメモリから読み出した前回の撮像信号を元に、これらの撮像信号の間で得られる、前記特殊照明光で前記被観察部位を照射して得られた撮像信号の分を補間する補間処理部とを有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記プロセッサ装置は、前記通常照明光で前記被観察部位を照射して得られた撮像信号から生成された画像、および前記分光画像を切り替えて、または同時に前記モニタに表示させる表示制御部を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−23101(P2008−23101A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199508(P2006−199508)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】