説明

電子内視鏡装置

【課題】所望の波長帯域の帯域制限光による分光画像を確実に得ることのできる電子内視鏡装置を提供する。
【解決手段】電子内視鏡装置が、互いに対向する面部に反射膜が形成された一対の透過基板と、一方の透過基板を移動させて両者の間隔を変更することによって該一対の透過基板を通過する光の波長帯域を変更可能な駆動手段とを備え、且つ該透過基板の少なくとも一部に光源装置内に設けられたランプによって生成された白色光が入射するようになっている波長フィルタユニットと、白色光を前記波長フィルタユニットに通過させることによって得られる帯域制限光の波長スペクトルを検出するスペクトル検出手段と、帯域制限光をスペクトル検出手段に導く分光特性取得用ライトガイドと、スペクトル検出手段によって検出された帯域制限光の波長スペクトルに基づいて、所望の透過波長帯域が得られるよう、駆動手段を制御するコントローラとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡と光源装置を備えた電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病変部の診断をより効果的に行うため、分光画像を撮像可能な電子内視鏡装置が提案されている。分光画像とは、狭波長帯域での内視鏡画像である。例えば、ヘモグロビンが反射するような波長帯域での分光画像から、生体組織の血管の状態を診断することができる。
【0003】
一般に、診断に有用な分光画像の波長帯域は、診断対象となる部位及び病変部に応じて異なる。また、部位や病変部の種類によっては、異なる波長帯域で撮像された複数の分光画像を必要とするものもある。そのため、任意の波長帯域にて分光画像を撮像可能な内視鏡装置が望まれる。このような内視鏡装置としては、特許文献1に示されるような、ファブリペロー型の干渉フィルタを波長フィルタとして用いたものがある。ファブリペロー型の干渉フィルタは、一面に反射膜が形成された一対の透過基板を反射膜同士が向かい合わせとなるように平行に並べたものであり、透過基板に入射した光が反射膜間で繰り返し反射及び干渉させて特定の複数の波長帯域にピークを持つような光(帯域制限光)のみが出射されるようにしたフィルタである。ファブリペロー型の干渉フィルタから出射される帯域制限光のピーク波長は、反射膜同士の間隔、すなわち透過基板同士の間隔によって決まる。そのため、一方の透過基板を他方に対して離接可能とし、圧電アクチュエータによって一方の透過基板を駆動させることによって、帯域制限光のピーク波長を変更可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−308688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電子内視鏡装置においては、所望の波長帯域の分光画像を得るために、透過基板を駆動する圧電アクチュエータに加える電圧の大きさと、その時の帯域制限光のピーク波長との関係をあらかじめ把握する必要がある。
【0006】
特許文献1の構成においては、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを併用して、特定の狭波長帯域のみを含む光を生成し、この光を干渉フィルタに入射させると共に圧電アクチュエータに与える電圧を変化させ、その時に干渉フィルタを透過する光の光量を検出することによって、特定の波長帯域(基準波長帯域)の帯域制限光を生成する為に圧電アクチュエータに加える電圧の大きさを求めていた。
【0007】
しかしながら、上記構成は、圧電アクチュエータの変位と電圧との関係が正確に判明している場合にのみ、所望の波長帯域の帯域制限光を生成する為に圧電アクチュエータに加える電圧を正確に求めることが可能である。しかしながら、実際は、圧電アクチュエータの電圧−変位特性は温度等に影響を受けるものであるため、特許文献1の構成では、所望の波長帯域の分光画像を確実に得ることができていたとはいえない。特に、基準波長帯域から大きく離れた帯域では、所望の波長帯域と実際に得られる帯域制限光の波長帯域との誤差は大きなものとなっていた。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は所望の波長帯域の帯域制限光による分光画像を確実に得ることのできる電子内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の電子内視鏡装置は、互いに対向する面部に反射膜が形成された一対の透過基板と、一方の透過基板を移動させて両者の間隔を変更することによって該一対の透過基板を通過する光の波長帯域を変更可能な駆動手段とを備え、且つ該透過基板の少なくとも一部に光源装置内に設けられたランプによって生成された白色光が入射するようになっている波長フィルタユニットと、白色光を前記波長フィルタユニットに通過させることによって得られる帯域制限光の波長スペクトルを検出するスペクトル検出手段と、帯域制限光をスペクトル検出手段に導く分光特性取得用ライトガイドと、スペクトル検出手段によって検出された帯域制限光の波長スペクトルに基づいて、所望の透過波長帯域が得られるよう、駆動手段を制御するコントローラとを有する。
【0010】
本発明によれば、白色光を波長フィルタユニットに透過させて得られる帯域制限光のスペクトルを得ることができるため、任意の波長帯域の帯域制限光を得るために駆動手段に入力させる信号の値(駆動手段が圧電アクチュエータを有するものであるならば圧電アクチュエータに入力させる電圧の大きさ)を、確実に求めることができる。そして、例えば、波長帯域の異なる複数の帯域制限光の夫々を得るために駆動手段に入力する信号の値をあらかじめ求めておけば、本発明によれば、分光画像撮像時に、所望の波長帯域の帯域制限光のみが確実に波長フィルタユニットから出力されるようにすることが可能となり、所望の波長帯域の帯域制限光による分光画像を確実に得ることが可能となる。
【0011】
また、光源装置が、前記ランプによって生成された光を集光して電子内視鏡の照明光用ライトガイドに入射させる集光手段を有し、波長フィルタユニットが、ランプと前記集光手段との間に配置され、帯域制限光が照明光用ライトガイドに入射する構成としてもよい。
【0012】
また、上記構成において、波長フィルタユニット、スペクトル検出手段及びコントローラが前記光源装置に内蔵されている構成としてもよい。
【0013】
或いは、光源装置は、ランプによって生成された白色光を照明光として電子内視鏡の照明光用ライトガイドに入射させるものであり、波長フィルタユニットが、電子内視鏡の対物光学系と撮像素子との間に配置されており、照明光用ライトガイドの一部が、波長フィルタユニットに導かれる白色光供給用ライトガイドとなっている構成としてもよい。
【0014】
また、上記構成において、白色光供給用ライトガイドの出射端及び分光特性取得用ライトガイドの入射端が同じ透過基板上に近接して配置されており、白色光供給用ライトガイドの出射端及び分光特性取得用ライトガイドの入射端が設けられた透過基板とは異なる透過基板には、帯域制限光を反射させて該分光特性取得用の入射端に入射させる反射ミラーが設けられている構成としてもよい。
【0015】
ここで、白色光供給用ライトガイドの出射端及び分光特性取得用ライトガイドの入射端が設けられた透過基板は、電子内視鏡の撮像素子側に配置された透過基板である構成とすることが好ましい。
【0016】
白色光供給用ライトガイドの出射端及び分光特性取得用ライトガイドの入射端が設けられた透過基板が電子内視鏡の対物光学系側の透過基板であるような構成であれば、白色光供給用ライトガイド及び分光特性取得用ライトガイドが波長フィルタの側面を回り込むように両ライトガイドを電子内視鏡の挿入管内に配置させるために、挿入管を太くする必要がある。しかしながら、上記構成においては、白色光供給用ライトガイド及び分光特性取得用ライトガイドが波長フィルタユニットを回り込むことがないため、挿入管を細くすることができる。
【0017】
また、駆動手段が、波長フィルタユニットのフレームと前記一方の透過基板との間に配置された圧電アクチュエータを有する構成としてもよい。
【0018】
また、分光特性取得用ライトガイド及びスペクトル検出手段を少なくとも3系統有することにより、前記透過基板の面上の少なくとも3カ所で帯域制限光の波長スペクトルを検出し、圧電アクチュエータは、該アクチュエータが取り付けられる透過基板の面上に少なくとも3つ設けられている構成とすることが好ましい。
【0019】
波長フィルタユニットの一対の透過基板が平行に保持されていない状態では、透過基板同士の間隔が一定とはならないため、帯域制限光の波長帯域は、透過基板のどの位置に光が入射するかによって異なることになる。しかしながら、上記構成によれば、圧電アクチュエータを3つ設けたことにより、このような構成とすると、一対の透過基板が平行になるよう、透過基板を傾けることが可能となる。また、3カ所で帯域制限光の波長スペクトルを検出できるようになっているため、一対の透過基板が平行に保持されているかどうかを検出可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、本発明は所望の波長帯域の帯域制限光による分光画像を確実に得ることのできる電子内視鏡装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態の電子内視鏡装置のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態の波長フィルタユニットの側面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線図である。
【図4】図4は、本発明の第1及び第2の実施の形態に使用される分光計の一例を示したものである。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態の電子内視鏡装置のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態の波長フィルタユニットの側面図である。
【図7】図7は、図6のB−B線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の電子内視鏡装置のブロック図である。本実施形態の電子内視鏡装置1は、電子内視鏡10と、プロセッサ20と、モニタ30を有するものであり、電子内視鏡10の挿入管11の先端部11aの周囲の映像がモニタ30に表示されるようになっている。なお、プロセッサ20は、電子内視鏡10によって撮像された映像を処理してモニタ30に表示可能なビデオ信号を生成するビデオプロセッサとしての機能と、電子内視鏡10の挿入管先端部11aの周囲に照明光を供給する光源装置としての機能を有するものである。
【0023】
プロセッサ20のビデオプロセッサとしての機能について以下に説明する。
【0024】
電子内視鏡10は、挿入管先端部11aに配置された対物光学系12と、挿入管11の内部の、挿入管先端部11aの近傍に配置された撮像素子13を有する。撮像素子13は、対物光学系12による挿入管先端部11a周囲の像が撮像素子13の受光面に結像するような位置に配置されている。
【0025】
プロセッサ20には、コントローラ21と、画像処理回路26が内蔵されている。電子内視鏡1の撮像素子13と、プロセッサ20の画像処理回路26とは、電子内視鏡10の挿入管11に挿通されている信号線14を介して接続されており、撮像素子13によって撮像された画像の映像信号は、画像処理回路26によって処理されて、NTSC等の所定の形式のビデオ信号に変換される。画像処理回路26によって生成されたビデオ信号は、モニタ30に入力される。この結果、撮像素子13によって撮像された挿入管先端部11a周囲の画像がモニタ30に表示される。なお、撮像素子13は一定の間隔おき(例えば1/30秒ごと)に画像を撮像しており、画像処理回路26は、一定の間隔おきに撮像素子13から送信される映像信号を処理して同じ間隔でビデオ信号をモニタ30に送信している。この結果、モニタ30には、撮像素子13が撮像した挿入管先端部11a周囲の画像が動画として表示されることになる。
【0026】
なお、撮像素子13は、その受光面にRGB三色のカラーフィルタが市松状に設けられたカラー画像撮像用の撮像素子である。
【0027】
次に、プロセッサ20の光源装置としての機能について説明する。ランプ22と、波長フィルタユニット40と、分光計24と、集光レンズ25とを有する。ランプ22は、例えばキセノンランプなどの、幅広い周波数帯域の光を含む白色光LWを生成するランプである。ランプ22によって生成された白色光は、波長フィルタユニット40に入射する。
【0028】
波長フィルタユニット40は、数カ所の狭帯域の波長帯以外の成分を白色光から取り除くフィルタを内蔵しており、上記数カ所の狭帯域の波長帯を主成分とする光(帯域制限光)LLを出射する。波長フィルタユニット40から出射された帯域制限光LLは、集光レンズ25に入射する。
【0029】
図1に示されるように、電子内視鏡10の挿入管11には、光ファイババンドル等の照明光用ライトガイド15が挿通されている。照明光用ライトガイド15の一端は、プロセッサ20の内部に挿入された入射端15aとなっている。集光レンズ25は、入射した帯域制限光LLを集光して入射端15aに入射させる。照明光用ライトガイド15の他端は、挿入管先端部11aに形成された出射端15bとなっており、入射端15aに入射した帯域制限口LLは、照明光用ライトガイド15を通って出射端15bから出射され、図示されない配光レンズによって挿入管先端部11aの周囲を照明する。
【0030】
波長フィルタユニット40は、コントローラ21によって制御されることによって、帯域制限光LLに含まれる複数のピーク波長を変更可能となっている。波長フィルタユニット40の構成について以下に説明する。
【0031】
図2は、波長フィルタユニット40の側面図である。また、図3は、図2のA−A線図である。波長フィルタユニット40は、ファブリペロー型の干渉フィルタである。具体的には、波長フィルタユニット40は、向かい合わせに配置された一対の透過基板41及び42を有する。なお、図2に示されるように、透過基板41はランプ22側に位置しており、透過基板42は集光レンズ25側に位置している。透過基板41及び42の、互いに向かい合わせとなる面には、夫々光学薄膜41a及び42aが設けられている。なお、透過基板41は、その面部が集光レンズ25の光軸に垂直となるよう位置決めされている。
【0032】
光学薄膜41a及び42aは、共にDBR(Distributed Bragg Reflector)反射層である。DBR反射層は、屈折率の異なる2種類の薄膜を互い違いに3層ずつ、計6層重ね合わせたものであり、可視光の波長帯域において、極めて高い(90%以上)反射率を有している。
【0033】
このような構成の干渉フィルタにおいては、入射した光が向かい合わせの光学薄膜41a及び42aの間で繰り返し反射され、その過程で、特定の複数の波長域を除く成分が干渉によって打ち消され、上記複数の波長域を主成分とする帯域制限光LLが生成される。生成された帯域制限光LLは、透過基板42を介して集光レンズ25に向かって出射される。
【0034】
ファブリペロー型の干渉フィルタにおいて透過する(すなわち、打ち消されない)波長域は、光学薄膜41aと42aの間隔dによって決まる。具体的には、透過基板41及び42の屈折率をn、干渉フィルタを透過する波長をλ(k=1、2、…)とすると、λは下記の数1によって求められる。
【0035】
【数1】

【0036】
数1に示されるように、干渉フィルタを透過する波長λは、光学薄膜41aと42aとの間隔dに比例した大きさとなる。本実施形態の波長フィルタユニット40は、一方の透過基板42を、他方の透過基板41に対して離接させるよう駆動することによって、間隔dを変動させることが可能となっている。前述のように、電子内視鏡10の撮像素子13は、RGBカラーフィルタが設けられた撮像素子であり、各カラーフィルタが透過させる波長帯域の中に含まれる波長λが一つ以下となるよう、間隔dを制御することによって、特定の波長λのみを成分とする内視鏡画像の映像信号が撮像素子13から出力されるようになる。そして、波長λを少しずつ変化させるように透過基板42を移動させながら、撮像素子13から出力される画像を得ることによって、様々な狭波長帯域の内視鏡画像(分光画像)を得ることができる。
【0037】
透過基板42を駆動する機構について以下に説明する。図2及び図3に示されるように、透過基板42は、3つの圧電アクチュエータ44a、44b、44cを介してリング状のフレーム43に取り付けられている。圧電アクチュエータ44a、44b、44cは、夫々集光レンズ25の光軸axを中心とする円周C(図3)上に、120°おきに並べて透過基板42に配置されている。そして、圧電アクチュエータ44a、44b、44cの夫々に電圧を印加することによって、圧電アクチュエータ44a、44b、44cは、透過基板42を透過基板41に向かって移動させる方向に変形させる。
【0038】
フレーム43の熱膨張等によっても、間隔d及び透過基板41に対する透過基板42の傾きが変化する。透過基板41に対する透過基板42が平行ではない状態においては、透過基板42上の位置に応じて間隔dが変わることになり、透過する帯域制限光LLの波長λが透過基板42上の位置によって変わることになり、正確な分光画像を得ることができない。そのため、本実施形態においては、3つの圧電アクチュエータ44a、44b及び44cに印加される電圧の大きさを微調整することによって、透過基板42が透過基板41に対して平行な状態を保ちつつ、間隔dを調整可能としている。換言すれば、本実施形態においては、圧電アクチュエータ44a、44b及び44cの夫々に与える電圧の大きさVa、Vb、Vcと、透過基板42を透過する帯域制限光LLの波長λの対応関係を、あらかじめ得る必要がある。
【0039】
電圧Va、Vb、Vcと波長λとの対応関係を得るためのキャリブレーションの手順について以下に説明する。キャリブレーションには、フレーム43に取り付けられた分光特性取得用ライトガイド45a、45b及び45c並びに、分光計24(図1)が使用される。分光特性取得用ライトガイド45a、45b及び45cは、その一端(入射端)が円周C上に120°おきに位置するよう並べて配置されている。なお、分光特性取得用ライトガイド45aの入射端は圧電アクチュエータ44aと44bの間に配置され、分光特性取得用ライトガイド45bの入射端は圧電アクチュエータ44bと44cの間に配置され、分光特性取得用ライトガイド45cの入射端は圧電アクチュエータ44cと44aの間に配置されている。分光特性取得用ライトガイド45a、45b及び45cには、透過基板42を通過した帯域制限光LLの一部が入射するようになっている。
【0040】
分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45cの他端(出射端)は、分光計24に接続されている。分光計24の構成を図4に示す。
【0041】
分光計24は、分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45cを通過した帯域制限光LLの夫々をスペクトル分解する為のプリズム24aと、プリズム24aによってスペクトル分解された光LDを受光するためのライン形撮像素子24bを有する。コントローラ21(図1)は、ライン形撮像素子24bを構成する複数画素セルPの出力を検出可能であり、画素セルPの夫々に入射した光LDの光量を検出可能である。ここで、分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45cの出射端、プリズム24a及びライン形撮像素子24bの位置は厳密に位置決めされており、スペクトル分解された光LDのうち、どの周波数帯域の光が複数の画素セルPのどれに入射するかは既知である。そのため、コントローラ21は、画素セルPの夫々からの出力から、分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45cの夫々を通過した帯域制限光LLのピーク波長λを判別可能である。なお、図4にはプリズム24a及びライン型撮像素子24bは一組ずつしか示されていないが、実際は、分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45c毎にプリズム24a及びライン形撮像素子24bが用意されており、コントローラ21は、各分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45cを通過した帯域制限光LLのピーク波長λを別個に検出可能である。
【0042】
コントローラ21は、分光計24のライン形撮像素子24bの出力に基づいて検出した帯域制限光LLのピーク波長λに基づいて、各分光特性取得用ライトガイド45a、45b、45cを通過した帯域制限光LLのピーク波長λが所望の値となるように、圧電アクチュエータ44a、44b、44cに与える電圧Va、Vb及びVcを調整し、ピーク波長λと電圧Va、Vb及びVcの対応を示すルックアップテーブルを作成し、これをコントローラ21のメモリに記憶させる。
【0043】
以上説明したキャリブレーションを定期的(例えばプロセッサ20の電源投入時)に行い、ピーク波長λと電圧Va、Vb及びVcの対応を示すルックアップテーブルを更新する。そして、電子内視鏡装置1による分光画像を作成時には、コントローラ21は、キャリブレーションの結果得られたルックアップテーブルを参照して、圧電アクチュエータ44a、44b、44cに与える電圧Va、Vb及びVcを決定する。
【0044】
以上説明した本発明の第1の実施形態においては、帯域制限光LLを生成する波長フィルタユニット40がプロセッサ20(光源装置)に内蔵されており、電子内視鏡10に供給される照明光を帯域制限光としている。しかしながら、本発明は上記構成に限定されるものではなく、電子内視鏡に供給される照明光は白色光とし、波長フィルタユニットを電子内視鏡の対物光学系と撮像素子との間に配置する構成もまた、本発明に含まれる。このような構成の電子内視鏡装置である本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。なお、第2の実施形態の電子内視鏡装置において第1の実施形態の電子内視鏡装置と同様の機能を有する要素については、類似の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図5は、本実施形態の電子内視鏡装置101のブロック図である。本実施形態においては、図5に示されるように、プロセッサ120に内蔵されたランプ122によって生成される白色光LWは、波長フィルタユニットを通ることなく、集光レンズ125を介して直接電子内視鏡110の照明光用ライトガイド115の入射端115aに入射されるようになっている。すなわち、本実施形態においては、電子内視鏡110の挿入管先端部111aに配置された照明光用ライトガイド115の出射端115bからは、白色光LWが放射される(挿入管先端部111aの周囲が白色光LWによって照明される)。
【0046】
本実施形態においては、波長フィルタユニット140が、電子内視鏡110の挿入管111に内蔵されている。具体的には、波長フィルタユニット140は、対物光学系112と撮像素子113の間に配置されている。このため、照明光である白色光が被検体の表面で反射した反射光は、対物光学系112を介して波長フィルタユニット140に入射される。反射光は波長フィルタユニット140によって、特定の波長帯域のみが残された帯域制限光となり、そして、この帯域制限光による被検体の像が撮像素子113の受光面で結像する。この像は、上記特定の波長帯域のみを含む分光画像である。撮像素子113から出力される分光画像の映像信号は、挿入管111内に挿通されている信号ケーブル114を介して、プロセッサ120に内蔵されている画像処理回路126に送られ、画像処理回路126によって生成される分光画像のビデオ信号が、モニタ130に表示される。
【0047】
波長フィルタユニット140は、挿入管111内に挿通されている信号ケーブル116を介して、プロセッサ120のコントローラ121と接続されており、コントローラ121は波長フィルタユニット140で透過させる波長帯域を調整可能となっている。従って、本実施形態の電子内視鏡装置においても、様々な波長帯域の分光画像を得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態の構成は、被検体で反射した反射光を波長フィルタユニット140に通す構成であるため、波長フィルタユニットで得られた帯域制限光を照明光とする第1の実施形態の構成と比べ、より正確な分光画像を得ることが可能である。すなわち、第1の実施形態においては、帯域制限光と、この帯域制限光を励起光とする蛍光を撮像素子が受光する可能性があったが、本実施形態においては、帯域制限光のみが撮像素子113に入射するものであるため、蛍光などの帯域制限光以外の成分を含まない、より正確な分光画像を得ることが可能である。
【0049】
本実施形態の波長フィルタユニット140の構成について以下に説明する。図6は、波長フィルタユニット140の側面図である。また、図7は、図6のB−B線図である。波長フィルタユニット140は、第1の実施形態の波長フィルタユニット40と同様、向かい合わせに配置された一対の透過基板141及び142を有し、透過基板141及び142の互いに向かい合わせとなる面に夫々光学薄膜141a及び142aが設けられた、ファブリペロー型の干渉フィルタである。なお、図6に示されるように、透過基板141は対物光学系112側に位置しており、透過基板142は撮像素子113側に位置している。また、透過基板141は、その面部が対物光学系112の光軸に垂直となるよう位置決めされている。
【0050】
第1の実施の形態と同様、本実施形態においても、透過基板142を透過基板141に対して離接させる方向に駆動することによって、波長フィルタユニット140を透過させる波長帯域を調整している。透過基板142を駆動する機構について以下に説明する。図6及び図7に示されるように、透過基板142は、3つの圧電アクチュエータ144a、144b、144cを介してリング状のフレーム143に取り付けられている。圧電アクチュエータ144a、144b、144cは、夫々対物光学系112の光軸axを中心とする円周C(図7)上に、120°おきに並べて透過基板142に配置されている。そして、圧電アクチュエータ144a、144b、144cの夫々に電圧を印加することによって、圧電アクチュエータ144a、144b、144cは、透過基板142を透過基板141に向かって移動させる方向に変形する。
【0051】
本実施形態においても、コントローラ121が信号ケーブル116を介して3つの圧電アクチュエータ144a、144b及び144cに印加される電圧の大きさを微調整することによって、透過基板142が透過基板141に対して平行な状態を保ちつつ、光学薄膜141aと142aの間隔dを調整可能としている。そのため、本実施形態においても、圧電アクチュエータ144a、144b及び144cの夫々に与える電圧の大きさVa、Vb、Vcと、透過基板42を透過する帯域制限光の波長λの対応関係を、あらかじめ得る必要がある。
【0052】
電圧の大きさVa、Vb、Vcと波長λの対応関係を得るためには、波長フィルタユニット140に白色光を供給する必要がある。しかしながら、対物光学系112を介して入射する光は白色光であるとは限らない。そのため、本実施形態においては、照明光用ライトガイド115から分岐して出射端が透過基板142に配置された白色光供給用ライトガイド117a、117b及び117cを備えている。白色光供給用ライトガイド117a、117b及び117cの出射端は、円周C上に120°おきに位置するよう並べて配置されている。なお、白色光供給用ライトガイド117aの出射端は圧電アクチュエータ144aと144bの間に配置され、白色光供給用ライトガイド117bの出射端は圧電アクチュエータ144bと144cの間に配置され、白色光供給用ライトガイド117cの出射端は圧電アクチュエータ144cと414aの間に配置されている。
【0053】
また、透過基板141の対物光学系112側の面の外周部の、少なくとも白色光供給用ライトガイド117a、117b及び117cの出射端と対向する箇所には、反射ミラー146が配置されている。そのため、白色光供給用ライトガイド117a、117b及び117cから照射された白色光は、光学薄膜141a及び142aの間で複数回反射して(図6中二点鎖線矢印α)特定の波長帯域を主成分とする帯域制限光となり、次いで透過基板141の中を通って反射ミラー146に入射し(図6中二点鎖線矢印β)、さらに、反射ミラー146表面で反射して白色光供給用ライトガイド117a、117b及び117cの出射端側に戻る(図6中二点鎖線矢印γ)。ここで、図7に示されるように、白色光供給用ライトガイド117a、117b及び117cの出射端は、分光特性取得用ライトガイド145a、145b及び145cの入射端の周りに配置されており、反射ミラー146で反射した帯域制限光は、分光特性取得用ライトガイド145a、145b及び145cの入射端に入射する。
【0054】
図5に示されるように、分光特性取得用ライトガイド145a、145b及び145cは、電子内視鏡110の挿入管111の内部を通って、入射端と反対側の端部である出射端は、電子内視鏡用プロセッサ120に内蔵された分光計124に接続されている。本実施形態においても、第1の実施形態と同様、分光特性取得用ライトガイド145a、145b及び145cを通過した帯域制限光の分光特性を分光計124によって取得し、コントローラ121は、圧電アクチュエータ144a、144b及び144cに与える電圧Va、Vb及びVcを変化させながら分光特性を記録し、この分光特性に基づいて、ピーク波長λと電圧Va、Vb及びVcの対応を示すルックアップテーブルを作成し、これをコントローラ121のメモリに記憶させる。
【0055】
以上説明した本発明の第1及び第2の実施形態の電子内視鏡装置は、波長フィルタユニットが透過させるピーク波長λと、圧電アクチュエータに与える電圧Va、Vb及びVcの対応を示すルックアップテーブルをあらかじめ作成しておき、分光画像を得るときは、ルックアップテーブルの内容を参照して圧電アクチュエータに与える電圧Va、Vb及びVcを調整するものである。しかしながら、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、分光画像を得る際に随時分光計からピーク波長λを取得して、フィードバック制御により、所望のピーク波長λが得られるようコントローラが圧電アクチュエータに与える電圧Va、Vb及びVcの大きさを調整する構成としてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、圧電アクチュエータ及び分光特性取得用ライトガイドは、夫々3組ずつ設けられている。しかしながら、一方の透過基板の他方に対する傾きに基づく分光特性の偏向の度合いを検出する為、及び、両透過基板を平行に保つ為には、圧電アクチュエータ及び分光特性取得用ライトガイドが3組以上あればよく、圧電アクチュエータ及び分光特性取得用ライトガイドを4組以上設けた構成もまた、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1、101 電子内視鏡装置
10、110 電子内視鏡
20、120 プロセッサ
21、121 コントローラ
24、124 分光計
40、140 波長フィルタユニット
41、42、141、142 透過基板
44a〜c、144a〜c 圧電アクチュエータ
45a〜c、145a〜c 分光特性取得用ライトガイド
117a〜c 白色光供給用ライトガイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡と、
前記電子内視鏡に照明光を供給する光源装置と、
互いに対向する面部に反射膜が形成された一対の透過基板と、一方の透過基板を移動させて両者の間隔を変更することによって該一対の透過基板を通過する光の波長帯域を変更可能な駆動手段とを備え、且つ該透過基板の少なくとも一部に前記光源装置内に設けられたランプによって生成された白色光が入射するようになっている波長フィルタユニットと、
前記白色光を前記波長フィルタユニットに通過させることによって得られる帯域制限光の波長スペクトルを検出するスペクトル検出手段と、
前記帯域制限光を前記スペクトル検出手段に導く分光特性取得用ライトガイドと、
前記スペクトル検出手段によって検出された帯域制限光の波長スペクトルに基づいて、所望の透過波長帯域が得られるよう、前記駆動手段を制御するコントローラと
を有することを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
前記光源装置が、前記ランプによって生成された光を集光して前記電子内視鏡の照明光用ライトガイドに入射させる集光手段を有し、
前記波長フィルタユニットが、前記ランプと前記集光手段との間に配置され、帯域制限光が前記照明光用ライトガイドに入射するようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記波長フィルタユニット、前記スペクトル検出手段及び前記コントローラが前記光源装置に内蔵されていることを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記光源装置は、前記ランプによって生成された白色光を照明光として前記電子内視鏡の照明光用ライトガイドに入射させるものであり、
前記波長フィルタユニットが、前記電子内視鏡の対物光学系と撮像素子との間に配置されており、
前記照明光用ライトガイドの一部が、前記波長フィルタユニットに導かれる白色光供給用ライトガイドとなっている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
前記白色光供給用ライトガイドの出射端及び前記分光特性取得用ライトガイドの入射端が同じ透過基板上に近接して配置されており、
前記白色光供給用ライトガイドの出射端及び前記分光特性取得用ライトガイドの入射端が設けられた透過基板とは異なる透過基板には、前記帯域制限光を反射させて該分光特性取得用の入射端に入射させる反射ミラーが設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子内視鏡装置。
【請求項6】
前記白色光供給用ライトガイドの出射端及び前記分光特性取得用ライトガイドの入射端が設けられた透過基板は、前記電子内視鏡の撮像素子側に配置された透過基板であることを特徴とする請求項5に記載の電子内視鏡装置。
【請求項7】
前記駆動手段が、前記波長フィルタユニットのフレームと前記一方の透過基板との間に配置された圧電アクチュエータを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項8】
前記分光特性取得用ライトガイド及び前記スペクトル検出手段を少なくとも3系統有することにより、前記透過基板の面上の少なくとも3カ所で帯域制限光の波長スペクトルを検出し、
前記圧電アクチュエータは、該圧電アクチュエータが取り付けられる透過基板の面上に少なくとも3つ設けられていることを特徴とする請求項7に記載の電子内視鏡装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−200417(P2011−200417A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70356(P2010−70356)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】