説明

電子写真印刷装置

【課題】被印刷物の第2面に印刷を行う際の印刷品質を向上させることのできる電子写真印刷装置を提供する。
【解決手段】液体トナーを静電潜像の形成された感光体上に転写して現像を行う現像ユニット31〜34と、現像ユニットにより現像された液体トナーを転写する中間転写体35と、中間転写体35と接することによりニップ部N1を形成するとともに液体トナーを吸引するためのバイアス電圧が印可されたバックアップローラ(加圧体)36と、印刷シートS(被印刷物)に転写された液体トナーを加熱することにより液体トナーを定着させる閃光照射装置(トナー定着手段)38と、を有し、印刷シートSの第1面を印刷した後に第1面の反対側の面である第2面の印刷を行う電子写真印刷装置10において、第1面が印刷された印刷シートSの第2面に水分を付与する水分付与手段60A(60B)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のキャリアに分散されたトナーを用いて印刷を行う液体現像電子写真方式で被印刷物の両面に印刷を行う電子写真印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂及び顔料等により構成されたトナーがキャリア内に分散された液体トナーを用いて感光体に形成された静電潜像を現像し、液体トナーを被印刷物の表面に転写し、転写された液体トナー中のトナーを被印刷物に定着させることにより印刷を行う電子写真印刷装置が提案されている。
【0003】
このような電子写真印刷装置として、例えば特許文献1に示されるような両面印刷装置が知られている。この両面印刷装置は、枚葉紙である被印刷物を1枚ずつ印刷部へと給紙する給紙部と、給紙部から給紙された被印刷物の両面に印刷を行う印刷部と、印刷部により両面印刷された被印刷物が排紙される排紙部とを備えている。
【0004】
印刷部は、帯電した粒子状のトナーを液体のキャリア中に分散させた液体トナーを静電潜像の形成された感光体上に転写して現像を行う現像ユニットと、この現像ユニットにより現像された液体トナーを転写するローラ状の中間転写体と、この中間転写体と接することによりニップ部を形成するとともに液体トナーを吸引するためのバイアス電圧が印加されたバックアップローラとを備えている。給紙部から給紙された被印刷物は、上記ニップ部において、まず片方の面(第1面)に上記中間転写体上の液体トナーが転写される。第1面に液体トナーが転写された被印刷物はトナー定着手段に搬送され、このトナー定着手段により被印刷物が加熱されることにより、第1面に転写された液体トナー中のトナーが溶融され、液体トナーが第1面に定着される。第1面に液体トナーが定着された被印刷物は、シート反転機構へと導かれて反転させられた後、再び上記ニップ部まで搬送され、上記ニップ部において、第1面の反対側の面である第2面に上記中間転写体上の液体トナーが転写される。第1面に液体トナーが転写された被印刷物は、再び上記トナー定着手段に搬送され、トナー定着手段により被印刷物が加熱されることにより、第2面に転写された液体トナーが第2面に定着される。上記の手順により印刷部で両面印刷された被印刷物は排紙部に排紙され、これにより両面印刷が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−163064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の両面印刷装置では、被印刷物の片方の面である第1面に液体トナーを転写した後、トナー定着手段で被印刷物を加熱して第1面に液体トナーを定着させると、被印刷物中の水分が蒸発し含水率が低下してしまう。このため、ニップ部において第2面に液体トナーを転写する際に第2面への液体トナーの転写効率が低下し、印刷品質が低下するという問題がある。これは、被印刷物中の含水率が低下するのに伴い被印刷物の表面抵抗率が高くなるため、バックアップローラのバイアス電圧による液体トナーの静電転写が阻害されるためである。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、被印刷物の第2面に印刷を行う際の印刷品質を向上させることのできる電子写真印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の電子写真印刷装置は、液体トナーを静電潜像の形成された感光体上に転写して現像を行う現像ユニットと、前記現像ユニットにより現像された前記液体トナーを転写する中間転写体と、前記中間転写体と接することによりニップ部を形成するとともに前記液体トナーを吸引するためのバイアス電圧が印加された加圧体と、被印刷物に転写された液体トナーを加熱することにより前記液体トナーを定着させるトナー定着手段と、を有し、被印刷物の第1面を印刷した後に前記第1面の反対側の面である第2面の印刷を行う電子写真印刷装置において、前記第1面が印刷された被印刷物の第2面に水分を付与する水分付与手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1面が印刷された被印刷物の第2面に水分を付与する水分付与手段を設けたので、トナー定着手段で第1面にトナーを定着させた後、被印刷物中の水分量(含水率)を適正範囲に戻した状態で第2面の印刷を行うことができる。その結果、従来に比して第2面への液体トナーの転写効率を向上させることができ、印刷品質を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記トナー定着手段の後流側の搬送経路に設けられ、前記第1面に液体トナーが定着された前記被印刷物の表裏を反転させる反転手段と、前記反転手段により反転された前記被印刷物を前記ニップ部まで搬送する反転経路とを備え、前記水分付与手段は、前記トナー定着手段の出口から前記反転手段に至る搬送経路又は前記反転経路の途中に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記トナー定着手段の後流側の搬送経路に設けられ、前記第1面に液体トナーが定着された前記被印刷物の表裏を反転させる反転手段と、前記反転手段により反転された前記被印刷物を前記ニップ部まで搬送する反転経路とを備え、前記トナー定着手段の出口から前記反転手段に至る搬送経路又は前記反転経路の途中に前記水分付与手段を設けた構成としたので、第1面と第2面の印刷を同じ中間転写体、バックアップローラ、トナー定着手段を用いて行うタイプの電子印刷写真装置において、第2面への液体トナーの転写効率を向上させることができ、印刷品質を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記水分付与手段がミスト発生装置を備え、前記ミスト発生装置から前記被印刷物の第2面に対してミストを噴霧することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、水分付与手段としてミスト発生装置を適用したので、電子写真印刷装置内に容易に設置できるとともに、ミストの供給量の制御を容易に行うことができ、効率よく被印刷物に対して水分を付与することができる。
【0014】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記水分付与手段が、前記被印刷物の第2面側に配置される放電電極と、前記被印刷物の第1面に接触して配置される収集電極とを備え、前記放電電極にミストを噴霧し、前記収集電極と前記放電電極との間に電圧を印加することにより前記放電電極上のミストを帯電させ、静電気力によりミストを前記放電電極から前記被印刷物の第2面に移動させることにより、前記第2面にミストを付着させることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ミストを帯電させ、静電気力によりミストを被印刷物の第2面に付着させるように構成したので、被印刷物へのミストの付着性をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記水分付与手段が、前記ミスト発生装置の後流側に前記搬送経路を挟んで対向して配置される一対のローラを備え、前記ミスト発生装置から前記被印刷物の第2面に対してミストを噴霧した後、前記一対のローラによって被印刷物を加圧することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ミスト発生装置から被印刷物の第2面に対してミストを噴霧した後、一対のローラによって被印刷物を加圧するように構成したので、被印刷物へのミストの付着性をさらに向上することができる。
【0018】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記ミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御手段と、前記トナー定着手段と前記水分付与手段との間に設置され、前記被印刷物中の水分量を検出する水分検出センサとを備え、前記ミスト発生量制御手段は、前記水分検出センサで検出した前記被印刷物中の水分量に基づいて前記ミスト発生量を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、水分検出センサで検出した被印刷物中の水分量に基づいてミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するようにしたので、被印刷物中の水分量を高精度に調整することができる。
【0020】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記ミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御手段を備え、前記ミスト発生量制御手段は、前記被印刷物の第1面における絵柄面積率に基づいて前記ミスト発生量を制御することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、被印刷物の第1面における絵柄面積率に基づいてミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するようにしたので、被印刷物中の水分量を高精度に調整することができる。
【0022】
また、本発明の電子写真印刷装置は、前記ミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御手段を備え、前記ミスト発生量制御手段は、予め設定された被印刷物の種類に基づいて前記ミスト発生量を制御することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、予め設定された被印刷物の種類又は適正水分量に基づいてミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するようにしたので、被印刷物中の水分量を高精度に調整することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電子写真印刷装置によれば、第1面が印刷された被印刷物の第2面に水分を付与する水分付与手段を設けたので、トナー定着手段で第1面にトナーを定着させた後、被印刷物中の水分量を適正範囲に戻した状態で第2面の印刷を行うことができる。その結果、従来に比して第2面への液体トナーの転写効率を向上させることができ、印刷品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例1に係る電子写真印刷装置の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1で適用する水分付与手段の概念図である。
【図3】図3は、実施例2で適用する水分付与手段の概念図である。
【図4】図4は、水分付与手段のミスト発生装置の制御例を示す概念図である。
【図5】図5は、水分付与手段のミスト発生装置の制御例を示す概念図である。
【図6】図6は、水分付与手段のミスト発生装置の制御例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電子写真印刷装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1は、実施例1に係る電子写真印刷装置10の概略構成図である。図1に例示される電子写真印刷装置10は、液体現像電子写真方式の両面印刷機であって、給紙部11、印刷部12、排紙部13から構成されている。給紙部11は、枚葉紙である印刷シート(被印刷物)Sを1枚ずつ給紙トレイ21から印刷部12へと供給することができる。印刷部12は、供給された印刷シートSの片方の面(以下では「第1面」とよぶ)に対して印刷を行った後、印刷シートSの表裏を反転させて第1面の反対側の面(以下では「第2面」とよぶ)に対して印刷を行うことで、この印刷シートSの両面(第1面、第2面)に対して印刷を行うように構成されている。排紙部13は、印刷部12により両面印刷された印刷シートSを排紙トレイ22に排紙することができる。
【0028】
なお、図示は省略するが、電子写真印刷装置10は、演算部、表示部並びに入力部を備えた主制御装置と接続されており、電子写真印刷装置10の各部は主制御装置からの制御信号により制御されるように構成されている。
【0029】
電子写真印刷装置10は、プロセスカラー印刷を行うことが可能に構成されており、印刷部12には、K(墨)、C(藍)、M(紅)、Y(黄)のプロセスカラー各色に対応する4つの現像ユニット31,32,33,34が設けられている。印刷部12は、各現像ユニット31〜34、中間転写体35、バックアップローラ(加圧体)36、チェーングリッパ37、閃光照射装置(トナー定着手段)38、スイッチ機構39、往復ガイドローラ(反転手段)40、スイッチバックローラ(反転手段)41、シート収納部(反転手段)42、反転経路43、一対の加熱ローラ44、及び、水分付与装置(水分付与手段)60Aとを有して構成されたものである。
【0030】
印刷シートS中の適正水分量(印刷に最適な水分含有量:以下では「適正含水率」とよぶ)は一般的に5%程度であるが、印刷シートSの第1面に転写された液体トナーを閃光照射装置(トナー定着手段)38により定着させると、印刷シートS中の水分が閃光照射装置38の熱により蒸発するため、水分量(以下では「含水率」とよぶ)は3%程度に減少する。印刷シートSの含水率が適正含水率を下回った状態で第2面に液体トナーを転写すると、第2面への液体トナーの転写効率が低下し、印刷品質が低下してしまう。本実施例の電子写真印刷装置10は、印刷シートSの第1面に転写された液体トナーを閃光照射装置38で定着させた後、水分付与手段60Aによって印刷シートSに水分を供給することを特徴としており、これにより、印刷シートS中の含水率を適正範囲まで戻し、第2面の印刷品質を従来に比して向上させている。以下、図1を参照しながら、印刷部12の各部について説明する。
【0031】
各現像ユニット31〜34は、中間転写体35の周囲にその回転方向に沿って並設されており、それぞれ主制御装置から送信された画像データに基づいて、感光ドラム(感光体)51上に静電潜像を形成し、この静電潜像に対応する位置に液体トナー(図示を省略)を感光ドラム51から中間転写体35に転写して中間転写体35の周面に転写されるように構成されている。液体トナーは、熱可塑性素材と色素(顔料あるいは染料)とにより形成される粒子状のトナーが液体状のキャリア中に分散されて配合されたものであり、本実施例では、キャリアとして、石油系の溶剤(例えば、非極性、パラフィン系溶剤として、ミネラルオイルなど)に、平均粒径1〜2μm程度の粒子状のトナーが重量比で10〜40パーセント程度含有されたものを液体トナーとして用いている。
【0032】
現像ユニット31〜34は、それぞれ感光ドラム(感光体)51と、この感光ドラム51の周囲に配置されるクリーニングユニット52、除電器53、感光体帯電装置54、露光装置55、現像装置56とを有して構成されている。
【0033】
感光ドラム51は、周面にアモルファスシリコン(a−Si)や感光性ポリマー等の感光剤を含んで形成された感光層を備え、ニップ部N3において中間転写体35と対接し、感光ドラム51上の液体トナーを中間転写体35側に転写可能に構成されている。クリーニングユニット52は、感光ドラム51の周面に残存している液体トナーを除去して図示しないトナー回収路に排出するものである。除電器53は、感光ドラム51の感光層に残留する電荷を消去する機能を有したものである。感光体帯電装置54は、コロトロン型あるいはスコロトロン型等の非接触型放電方式の帯電器が、感光ドラム51の周方向に沿って複数配設されて構成されており、感光ドラム51の感光層を一様に、例えば、500V程度に帯電させる機能を有している。露光装置55は、感光ドラム51の軸方向に沿って発光体(本実施例ではLED)を棒状に配列した発光装置(LEDアレイ)により構成されており、主制御装置から送られてくる画像データに基づいて、各LEDを発光させる。即ち、感光体帯電装置54により一様に帯電されている感光ドラム51の感光層の表面に露光装置55からの光が照射されることにより、光の照射部分では感光層の帯電が解除され、感光層に画像データに基づいた静電潜像を形成可能となっている。現像装置56は、アニロックスローラ、均しローラ、現像ローラ、トナー帯電器、ブレード、トナー供給口、液体トナー貯留部とを有して構成され、感光ドラム51の静電潜像が形成された部分に液体トナーを転写するものである。
【0034】
ローラ状の中間転写体35とバックアップローラ36は、互いに対接しており、この対接部分にニップ部(転写位置)N1が形成されている。中間転写体35の周面は、例えばウレタン系導電性ゴムや導電性樹脂等で構成されており、中間転写体35には、感光ドラムとバイアス電圧差を持たせている。
【0035】
一方、バックアップローラ36は、中間転写体35に対して所定の圧力、例えば、1〜13kg/cm程度で圧力を加えるように配設されており、上述したニップ部N1を形成している。そのため、印刷シートSは、中間転写体35とバックアップローラ36との間を搬送されることで、所定のニップ圧が付与される。また、バックアップローラ36には、例えば、−800V程度の転写バイアスが印加されている。そのため、中間転写体35とバックアップローラ36のバイアス電圧差により、現像ユニット31〜34の液体トナーをバックアップローラ36側へ吸引する力を与え、中間転写体35から印刷シートSへの液体トナーの静電転写を促進するようになっている。
【0036】
このニップ部N1において、中間転写体35から印刷シートSに液体トナーによる画像が転写されるようになっている。なお、バックアップローラ36の周面には、ニップ部N1を通過した印刷シートSを把持するグリッパ(図示せず)が設けられている。
【0037】
チェーングリッパ37は、無端状をなす2本のチェーンが2本平行に並列して構成されており、各チェーンには、複数のグリッパ(図示せず)が等間隔に取付けられている。このグリッパ間の間隔は、印刷シートSのシート搬送方向長さよりも短く設定されている。グリッパは、印刷シートSの側端部を把持するように構成されており、掴み離し機構により所定の搬送位置で印刷シートSを把持し、別の所定の位置で印刷シートSの把持を解除するようになっている。
【0038】
閃光照射装置(トナー定着手段)38は、キセノンフラッシュランプ、メタルハライドランプ、クリプトンランプ、キセノン−水銀ランプ等によって構成され、主制御装置からの信号に応じて閃光による加熱を行うものである。閃光照射装置38は、チェーングリッパ37による印刷シートSの搬送経路の上方に配設されており、印刷シートSがチェーングリッパ37により閃光照射装置38の下部を通過するタイミングに合わせて、印刷シートSの印刷面に瞬間的に閃光を照射することで、印刷シートSに接触することなく印刷シートSを加熱し、印刷シートSに転写された液体トナーを印刷シートSに定着させる。
【0039】
主制御装置は、給紙部11から給紙された印刷シートSが1回目に閃光照射装置38の下部を通過する際には、液体トナーの加熱量が第1加熱量Q1となるように印刷シートSの第1面に閃光照射装置38の出力を調整する。なお、第1加熱量Q1は、加熱による印刷シートSの乾燥により、印刷シートSの反対面(第2面)の表面抵抗率R[Ω/m2]が過度に大きくならないように、閃光照射装置38による加熱による定着後に想定される印刷シートSの想定乾燥度に基づいて予め実験等により定められた所定の実験等によって求めた値である。より具体的には、印刷シートSの第2面の表面抵抗率が約107〜108[Ω/m2]の範囲内となるように、第1加熱量Q1が設定されている。
【0040】
また、主制御装置は、印刷シートSが2回目に閃光照射装置38の下部を通過する際には、液体トナーの加熱量が、第1加熱量Q1よりも大きい加熱量である第2加熱量Q2(Q1<Q2)となるように印刷シートSの第2面に閃光照射装置38の出力を調整する。第2加熱量Q2は、印刷シートSの第2面上の液体トナーを十分に溶融させ、印刷シートSの第2面に定着させるとともに、印刷シートSの第1面の液体トナーの定着までも促進するように予め実験等により求めた値である。
【0041】
スイッチ機構39は、印刷シートSの搬送方向を案内するためのガイド部39aを有し、回動軸39bを中心に回動可能に支持されており、主制御装置によりガイド部39aの位置を切り換え可能となっている。往復ガイドローラ40は、3つのローラを有しており、スイッチ機構39から往復ガイドローラ40側へ搬送された印刷シートSは、上側の2つのローラの回転駆動により、スイッチバックローラ41側へ搬送される。一方、スイッチ機構39から往復ガイドローラ40側へ搬送された印刷シートSは、下側の2つのローラの回転駆動により、反転経路43側へ搬送される。
【0042】
スイッチバックローラ41は、一対の駆動ローラによって印刷シートSを把持し、搬送可能に構成されており、往復ガイドローラ40側から搬入された印刷シートSを保持しながら、印刷シートSの予め設定された必要長さ分だけシート収納部42に一時収納する。その後、印刷シートSを保持した状態でスイッチバックローラ41は反対方向に回転駆動し、保持する印刷シートSをシート収納部42から反対方向に搬送して往復ガイドローラ40側へ搬送するようになっている。
【0043】
スイッチバックローラ41から往復ガイドローラ40に搬送された印刷シートSは、反転経路43側へと導かれ、複数の搬送ローラによってニップ部N1まで搬送されるようになっている。
【0044】
このとき、印刷シートSは、既に1回目のニップ部N1通過時と表裏が反転されているため、ニップ部N1において、中間転写体35は、印刷シートSの第1面とは反対側の面である第2面が接触する。つまり、印刷シートSの第1面に現像ユニット31〜34の液体トナーを転写する中間転写体35及びバックアップローラ36と、印刷シートSの第2面に現像ユニット31〜34の液体トナーを転写する中間転写体35及びバックアップローラ36とが、共用されるように構成されている。また、印刷シートSの第1面に閃光を照射する閃光照射装置38と、印刷シートSの第2面に閃光を照射する閃光照射装置38とが共用されるように構成されている。
【0045】
一対の加熱ローラ44は、スイッチ機構39よりも排紙部13側に配置されており、互いに表面温度が適温に設定されており、印刷シートSが通過するときに、この一対の加熱ローラ44により印刷シートSを加圧するニップ部N2が形成されている。
【0046】
水分付与装置60Aは、閃光照射装置38で加熱された印刷シートSに対して水分を付与するものである。上述したように、閃光照射装置38で第1面の液体トナーを定着させる際には、印刷シートSの乾燥により第2面の表面抵抗率が過度に大きくならないように加熱量が調整される。しかしながら、第1面に液体トナーを確実に定着させる必要があることから、閃光照射装置38の加熱量を必要以上に下げることはできない。このため、閃光照射装置38での定着工程が行われると、印刷シートS中の含水率は適正含水率である5%から3%程度まで減少する。そこで、印刷シートSの第1面に転写された液体トナーを閃光照射装置38で定着させた後、水分付与手段60Aにより第2面に対して水分を付与し、印刷シートS中の含水率を適正含水率まで回復させた後、印刷シートSを再びニップ部N1に送り第2面への印刷を行う。
【0047】
水分付与装置60Aは、図1に示すように、閃光照射装置38の出口からスイッチ機構39、往復ガイドローラ40、スイッチバックローラ41、反転経路43を経由してニップ部N1に至るまでの搬送経路の途中に設けられる。図1に示す設置例では、水分付与装置60Aは閃光照射装置38とスイッチ機構39との間の搬送経路Pの途中に配設されている。しかしながら、水分付与装置60Aの設置位置はこれに限定されるものではなく、要は、閃光照射装置38で第1面のトナー定着を行った後、ニップ部N1において第2面の転写が行われる前までに印刷シートSに水分を付与すればよい。例えば、水分付与装置60Aを反転経路43の途中に設置してもよい。
【0048】
主制御装置は、印刷シートSが1回目(すなわち閃光照射装置38で第1面の液体トナーを定着させた後)に水分付与装置60Aを通過するときに水分付与装置60Aを駆動させる一方、印刷シートSが2回目(すなわち閃光照射装置38で第2面の液体トナーを定着させた後)に水分付与装置60Aを通過するときには水分付与装置60Aを駆動させないように水分付与装置60Aの駆動制御を行う。
【0049】
図2は、図1に示した水分付与装置60Aの概念図である。以下、図2を用いて、本実施例で適用する水分付与装置60Aの具体的な構成について詳細に説明する。水分付与装置60Aは、ミスト発生装置61と、放電電極62と、収集電極63とを備えている。
【0050】
ミスト発生装置61は、液体を霧状にしてミスト64を発生させる装置であり、水等の液体を貯留するタンクと、ミスト64を外部に放出するミスト供給口(いずれも図示を省略)とを有している。ミスト発生装置61としては、例えば、ナノミストを発生させる透湿膜気化式や滴下浸透気化式など、常温の水を蒸発させることによりミストを発生させる気化式タイプ、ヒータにより水を加熱して水蒸気を発生させる蒸気式タイプ、超音波式や高圧スプレー式などのような水噴霧式タイプのものを適宜選択して用いることができる。
【0051】
ミスト発生装置61は、図2に示すように搬送経路Pの下方に配置され、搬送経路Pを搬送される印刷シートSの印刷がなされていない面、すなわち、第2面に向けてミスト64を供給する。これは、印刷シートSの第1面には液体トナーが転写されているため、第1面側からミスト64を供給したとしてもシート内部に水分が吸収されにくいからである。特に、液体トナーが油性である場合には、液体トナーによって水分がはじかれるため、シート内部に水分が吸収されにくい。印刷シート1枚当たりに付与するミストの量(ミスと発生装置61からのミスト発生量)は、印刷シートSの含水率や厚みによって異なる。
【0052】
放電電極62は、鋼やアルミニウム合金等の金属から構成される平板状の部材であり、図2に示すように、ミスト発生装置61と搬送経路Pとの間に配置される。放電電極62と印刷シートSとの間の距離は、5mm〜50mm程度である。放電電極62の幅寸法(搬送経路Pの搬送方向に直交する方向の長さ寸法)は、印刷シートSの幅寸法(搬送経路Pの搬送方向に直交する方向の長さ寸法)とほぼ同じ長さとなっている。また、放電電極62のシート搬送方向の長さ寸法は、印刷シートSの搬送速度やミスト64の吹き付け速度等に応じて決められる。
【0053】
収集電極63は、鋼やアルミニウム合金等の金属から構成されるローラ状の部材であり、図2に示すように、搬送経路Pの上方、且つ、印刷シートSの第1面に接触する態様で配置される。収集電極63の幅寸法(搬送経路Pの搬送方向に直交する方向の長さ寸法)は、印刷シートSの幅寸法(搬送経路Pの搬送方向に直交する方向の長さ寸法)とほぼ同じ長さを有している。また、収集電極63の直径は、印刷シートSの搬送速度やミスト64の吹き付け速度等に応じて決められる。なお、図2に示す例では収集電極63の形状をローラ状としたが、放電電極62と同様の平板状としてもよい。
【0054】
上記のように構成される水分付与装置60Aは、印刷シートSが放電電極62と収集電極63との間を通過するタイミングに合わせて印刷シートSの第2面にミスト64を供給するように主制御装置によって制御される。より詳細に説明すると、印刷シートSが放電電極62と収集電極63との間を通過するタイミングに合わせて、ミスト発生装置61から放電電極62に向けてミスト64を供給するとともに、放電電極62と収集電極63との間に電圧を印加することにより、放電電極62上のミスト64を帯電させ、静電気力によりミスト64を放電電極62から印刷シートSの第2面に移動させ、シート内部に吸収させる。ここで、印加する電圧は5〜15kV程度である。なお、図2では、プラスに帯電したミスト64がマイナスに帯電した収集電極に吸引される状態が示されているが、ミスト64をマイナスに帯電させ、収集電極をプラスに帯電させてもよい。上記のように構成することで、ミスト発生装置61から直接印刷シートSの第2面に向けてミストを供給する場合と比べて、効率よくミスト64を第2面に付着させることができ、印刷シートS中の含水率を適正含水率まで上昇させることができる。
【0055】
なお、第1面の印刷を行う前に、予め印刷シートSに適正含水率を上回るように水分(たとえば7%)を付与しておくことも考えられるが、その場合、印刷シートSの水分量が過多の状態で第1面の印刷を行うことになるため、第1面に液体トナーが過剰に転写されるといった事態を生じる可能性がある。そのため、第1面に液体トナーを定着させた後、第2面に液体トナーを転写する前に印刷シートSに水分を付与することで、第1面及び第2面の両面の印刷品質を所望の状態に確保することが可能となる。
【0056】
次に、上記のように構成された実施例1の電子写真印刷装置10の作用について説明する。図1に示すように、印刷シートSが1枚だけ給紙トレイ21から印刷部12へと給紙されると、この印刷部12において、各現像ユニット31〜34により、印刷シートSの第1面に転写されるべき静電画像が形成された感光ドラム51の周面に、対応するK(墨)、C(藍)、M(紅)、Y(黄)の各色の液体トナーが転写され、感光ドラム51上に画像が現像される。そして、感光ドラム51の周面に転写された液体トナーが中間転写体35に転写され、ニップ部N1において、中間転写体35の周面から印刷シートSの中間転写体35と接する側の面(第1面)に対して液体トナーが転写される。この時点では、印刷シートSの温度は25℃程度であり、印刷シートSは適正含水率(例えば5%程度)を維持している。
【0057】
第1面に液体トナーが転写された印刷シートSは、チェーングリッパ37により両端部が把持された状態で搬送され、閃光照射装置38から閃光が照射されることにより印刷シートSの第1面が加熱される。これにより、印刷シートSの第1面に転写された液体トナー中のトナーが溶融すると共に、キャリアが蒸発することにより液体トナーが印刷シートSの第1面に定着される。ここで、閃光照射装置38で加熱された印刷シートSの温度は100℃以上となるとともに、含水率は例えば3%程度に減少する。
【0058】
第1面に液体トナーが定着された印刷シートSは、搬送経路P上を所定の搬送速度で搬送されて水分付与装置60Aに案内される。このとき、ミスト発生装置61から放電電極62に向けてミスト64が噴霧されるとともに、放電電極62と収集電極63との間に電圧が印加されることにより、放電電極62上のミスト64が帯電し、静電気力によりミスト64が印刷シートSの第2面に付着する。第2面に付着したミスト64は、収集電極63に吸引されて印刷シートSの内部に浸透する。これにより、印刷シートS中の含水率を3%から5%程度まで回復させることができる。
【0059】
水分付与装置60Aにより水分が付与された印刷シートSは、スイッチ機構39に案内され、スイッチバックローラ41により保持された状態で一時シート収納部42に収納される。スイッチバックローラ41により印刷シートSがシート収納部42に収納された後、この印刷シートSは、再び往復ガイドローラ40側へ搬送され、この往復ガイドローラ40により反転経路43へ案内される。
【0060】
反転経路43を搬送された印刷シートSは、再び印刷部12に送られる。各現像ユニット31〜34により、印刷シートSの第2面に転写されるべき静電画像が形成された感光ドラム51の周面に対応するK(墨)、C(藍)、M(紅)、Y(黄)の各色の液体トナーが転写され、感光ドラム51上に画像が現像される。
【0061】
そして、感光ドラム51の周面に転写された液体トナーが中間転写体35に転写され、ニップ部N1において、中間転写体35の周面から印刷シートSの中間転写体35と接する側の面(第2面)に対して液体トナーが転写される。このとき、印刷シートSの水分量は適正範囲にあるため、印刷品質が低下することはなく、第1面と同じ品質が維持されることになる。この後、印刷シートSは閃光照射装置38において閃光が照射され、印刷シートSの第2面が加熱される。これにより、印刷シートSの第2面上の液体トナーのトナーが十分に溶融されると共に、キャリアが蒸発することにより印刷シートSの第2面上の液体トナーが印刷シートSの第2面に定着される。
【0062】
第2面に液体トナーが定着された印刷シートSは水分付与装置60Aを通過するが、水分付与装置60Aは駆動しないため印刷シートSには水分が付与されない。この後、印刷シートSはスイッチ機構39を経て一対の加熱ローラ44のニップ部N2に搬送され、印刷シートSの両面が加圧される。その後、第1面と第2面との両面が加熱された印刷シートSは、排紙部13を搬送される間に冷却されて排紙トレイ22に排出され、印刷を終了する。
【0063】
なお、本実施例では、放電電極62上でミスト64を帯電させ、静電気力によって印刷シートSの第2面にミスト64を付着させたが、ミスト発生装置61からミスト64を直接印刷シートSの第2面に噴霧することで印刷シートSの含水率を適正含水率まで十分に回復させることが可能であれば、放電電極62と収集電極63を省略し、ミスト発生装置61のみで水分付与を行ってもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施例の電子写真印刷装置10によれば、トナー定着手段(閃光照射装置38)から反転手段(往復ガイドローラ40、スイッチバックローラ41、シート収納部42)を経由してニップ部N1に至るまでの搬送経路に水分付与装置60Aを設け、第2面の印刷を行う前に印刷シートSの第2面側から印刷シートSに水分を付与するように構成したので、トナー定着手段で第1面にトナーを定着させた後、印刷シートSに含まれる水分量を適正範囲まで戻した状態で第2面の印刷を行うことができる。その結果、従来に比して第2面への液体トナーの転写効率を向上させることができ、印刷品質を向上させることができる。
【0065】
また、本実施例の電子写真印刷装置10では、水分付与装置60Aとしてミスト発生装置61を適用したので、電子写真印刷装置10内に容易に設置できるとともに、ミスト64の供給量(吹付速度)の制御を容易に行うことができ、効率よく印刷シートSに水分を付与することができる。
【0066】
さらに、本実施例の電子写真印刷装置10では、水分付与装置60Aを、ミスト発生装置61と、印刷シートSの第2面側に配置される放電電極62と、印刷シートSの第1面に接触して配置される収集電極63とで構成し、放電電極62にミスト64を噴霧し、収集電極63と放電電極62との間に電圧を印加することにより放電電極62上のミスト64を帯電させ、静電気力によりミスト64を放電電極62から印刷シートSの第2面に移動させることにより、第2面にミスト64を付着させるようにしたので、印刷シートSへのミスト64の付着性をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0067】
次に、本発明の実施例2に係る電子写真印刷装置について説明する。なお、上記実施例1で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。また、後述する実施例2〜5の電子写真印刷装置の構成は、水分付与装置の構成以外は実施例1の電子写真印刷装置10と同じ構成を有している。そのため、後述する実施例2〜5では、図1を兼用して説明する。
【0068】
図3は、実施例2の電子写真印刷装置10に適用する水分付与装置60Bの概念図である。図3に例示される水分付与装置60Bは、ミスト発生装置61と、ミスト発生装置61の後流側(ミスト発生装置61とスイッチ機構39との間)に搬送経路Pを挟んで対向して配置される一対のローラ65a,65bを備えている。この水分付与装置60Bは、上記実施例1の水分付与装置60Aと同様に、閃光照射装置38の出口からスイッチ機構39、往復ガイドローラ40、スイッチバックローラ41、反転経路43を経由してニップ部N1に至るまでの搬送経路の途中に設けられる。図3に示す例では、水分付与装置60Bは閃光照射装置38とスイッチ機構39との間の搬送経路Pの途中に配設されているが、スイッチバックローラ41で印刷シートSを反転させてからニップ部N1に至るまでの反転経路43の途中に設置してもよい。
【0069】
ミスト発生装置61は、上記実施例1で用いたものと同一の構成を有するものであり、図3に示すように搬送経路Pの下方に配置されている。
【0070】
一対のローラ65a,65bは、ゴム等の材質から構成されるものであり、図3に示すように、ミスト発生装置61よりも後流側且つミスト64の供給領域に隣接する態様で配置されている。一対のローラ65a,65bは、搬送経路Pにおいて互いに接することによりニップ部N4を形成し、印刷シートSをニップ部N4で加圧しながら後流側に搬送するように回転駆動する。一対のローラ65a,65bの幅寸法(搬送経路Pの搬送方向に直交する方向の長さ寸法)は、印刷シートSの幅寸法(搬送経路Pの搬送方向に直交する方向の長さ寸法)とほぼ同じ長さを有している。
【0071】
上記のように構成される水分付与装置60Bは、印刷シートSがミスト発生装置61上を通過するタイミングに合わせて、ミスト発生装置61から印刷シートSの第2面に向けてミスト64を噴霧するとともに、一対のローラ65a,65bを駆動するように主制御装置によって制御される。このように、ミスト発生装置61から印刷シートSの第2面に向けてミスト64を付与した後、一対のローラ65a,65bのニップ部N4で印刷シートSを加圧することで、印刷シートSの第2面に付着したミスト64を印刷シートSの内部に効率よく吸収させることができる。その結果、印刷シートS中の水分量を適正範囲まで確実に回復させることができる。
【0072】
以上説明したように、実施例2の電子写真印刷装置10によれば、上記実施例1と同様に、トナー定着手段(閃光照射装置38)から反転手段(往復ガイドローラ40、スイッチバックローラ41、シート収納部42)を経由してニップ部N1に至るまでの搬送経路に水分付与装置60Bを設け、第2面の印刷を行う前に印刷シートSの第2面側から印刷シートSに水分を付与するように構成したので、トナー定着手段で第1面にトナーを定着させた後、印刷シートSに含まれる水分量を適正範囲まで戻した状態で第2面の印刷を行うことができる。その結果、従来に比して第2面への液体トナーの転写効率を向上させることができ、印刷品質を向上させることができる。
【0073】
また、実施例2の電子写真印刷装置10においても、水分付与装置60Bとしてミスト発生装置61を適用したので、電子写真印刷装置10内に容易に設置できるとともに、ミスト64の供給量(吹付速度)の制御を容易に行うことができ、効率よく印刷シートSに水分を付与することができる。
【0074】
さらに、実施例2の電子写真印刷装置10では、水分付与装置60Bを、ミスト発生装置61と、ミスト発生装置61の後流側に搬送経路Pを挟んで対向して配置される一対のローラ65a,65bとで構成し、ミスト発生装置61から印刷シートSの第2面に向けてミスト64を噴霧した後、一対のローラ65a,65bによって印刷シートSを加圧するようにしたので、印刷シートSへのミスト64の付着性をさらに向上させることができる。
【実施例3】
【0075】
次に、本発明の実施例3に係る電子写真印刷装置について説明する。なお、上記実施例1,2で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0076】
図4は、実施例2で説明した水分付与装置60Bにおけるミスト発生装置61の第1制御例を示す概念図である。図4に示される水分付与装置60Bは、実施例2の構成に加えて、印刷シートSに含まれる水分量を検出する水分検出センサ66と、水分検出センサ66で検出した水分量に基づいてミスト発生装置61から発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御装置70Aとをさらに備えた構成としている。なお、ミスト発生量制御装置70は、上述した主制御装置の内部に組み込まれている。
【0077】
水分検出センサ66は、測定対象物(印刷シートS)に含まれる水分量(含水率)を検出するセンサである。水分検出センサ66は、図4に示すように、閃光照射装置38の後流側、且つ、ミスト64の供給領域よりも前流側の所定位置に配置され、閃光照射装置38で第1面に液体トナーが定着された後の水分量(含水率)を検出するように構成されている。水分検出センサ66としては、印刷シートSに対して非接触で水分量を検出する非接触型の水分検出センサ、又は、印刷シートSに接触して水分量を検出する接触型の水分検出センサのいずれも適用することができる。本実施例では、非接触の水分検出センサ66を用い、図4に示すように、これを印刷シートSと所定の距離をあけて配置している。非接触の水分検出センサ66としては、例えば、水分が吸収する波長と吸収しない波長の反射率の比から測定対象物中の水分量を判定する赤外線反射形2波長方式等のセンサを用いることができる。
【0078】
ミスト発生量制御装置70Aは、演算部71とミスト発生量データベース72Aとを有している。演算部71は、水分検出センサ66で検出した含水率を受信すると、最適含水率との差を算出する。例えば、最適含水率が5%であり、水分検出センサ66で検出した含水率が3%であった場合、演算部71は両者の差2%を算出する。ミスト発生量データベース72Aには、上記の差に対応したミスト発生量(印刷シート1枚当たりに供給するミスト量)のデータが蓄積されている。たとえば、最適含水率との差が1%である場合には印刷シート1枚当たり0.1gのミストを供給し、最適含水率との差が2%である場合には印刷シート1枚当たり0.2gのミストを供給する、といったデータが蓄積されている。上記の最適含水率との差とミスト発生量との関係は、予め実験等によって求めたものである。なお、上記のミスト発生量はA3サイズ相当の印刷シートに換算した値である。
【0079】
演算部71は、最適含水率(5%)と検出値(3%)との差(2%)を算出すると、ミスト発生量データベース72Aから、上記の差(2%)に対応したミスト発生量(0.2g)のデータを受け取り、この値をミスト発生装置61に送信する。ミスト発生装置61は、演算部71から受信したミスト発生量(0.2g)のミスト64を発生させ、印刷シートSに付与する。
【0080】
なお、本実施例では実施例2の水分付与装置60Bにおけるミスト発生装置61を制御する場合について説明したが、実施例1の水分付与装置60Aにおけるミスト発生装置61を制御する場合も同様にして行われるため、説明を省略する。
【0081】
以上説明したように、実施例3の電子印刷写真装置10では、ミスト発生装置61からのミスト発生量を制御するミスト発生量制御装置70Aと、閃光照射装置(トナー定着手段)38と水分付与装置60Bとの間に設置され、印刷シートS中の水分量を検出する水分検出センサ66とを備え、ミスト発生量制御装置70Aは、水分検出センサ66で検出した印刷シートS中の水分量に基づいてミスト発生量を制御するように構成されている。上記構成としたことで、実施例1、2の効果に加えて、印刷シートS中の水分量を精度よく適正範囲に戻すことが可能となる。
【実施例4】
【0082】
次に、本発明の実施例4に係る電子写真印刷装置について説明する。なお、上記実施例1〜3で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0083】
図5は、実施例2で説明した水分付与装置60Bにおけるミスト発生装置61の第2制御例を示す概念図である。上述した実施例3では、水分検出センサ66で検出した印刷シートS中の水分量に基づいてミスト発生量を制御する構成としたが、実施例4では、印刷シートSの第1面における絵柄面積率に基づいてミスト発生量を制御する構成とした点が実施例3と異なる。図5に示される水分付与装置60Bは、実施例2の構成に加えて、印刷シートSの第1面における絵柄面積率に基づいてミスト発生装置61からのミスト発生量を制御するミスト発生量制御装置70Bをさらに備えた構成としている。
【0084】
ここで、絵柄面積率とは、印刷シートSの紙面において液体トナーの転写部分が占める面積の割合を意味する。閃光照射装置38での定着工程により印刷シートSから蒸発する水分量は、絵柄面積率によって異なる。第1面の絵柄面積率が比較的大きい場合、すなわち、第1面における液体トナー転写部分の比率が比較的大きい場合、液体トナーによって印刷シートS内部の水分が外部に発散するのが妨げられるため、蒸発量は比較的少ない。逆に、第1面の絵柄面積率が比較的小さい場合、すなわち、第1面における液体トナー転写部分の比率が比較的小さい場合には、印刷シートS内部の水分が第1面から蒸発しやすくなるため、蒸発量は多くなる。したがって、印刷シートSの第1面の絵柄面積率が小さいほど、印刷シートSへのミスト供給量を増やす必要がある。そのため、第1面の絵柄面積率に基づいてミスト発生装置61からのミスト発生量(印刷シート1枚当たりに供給するミスト量)を調整することで、印刷シートS中の水分量を高精度に調整することができる。
【0085】
印刷シートSにおける第1面の絵柄面積率は、ニップ部N1において第1面に液体トナーが転写される際に、主制御装置の絵柄面積率演算部73において算出されるようになっている。
【0086】
ミスト発生量制御装置70Bは、演算部71とミスト発生量データベース72Bとを有している。ミスト発生量データベース72Bには、第1面の絵柄面積率に対応したミスト発生量(印刷シート1枚当たりに供給するミスト量)のデータが蓄積されている。たとえば、第1面の絵柄面積率が10%である場合には印刷シート1枚当たり0.1gのミストを供給し、第1面の絵柄面積率が20%である場合には印刷シート1枚当たり0.2gのミストを供給する、といったデータが蓄積されている。上記の第1面の絵柄面積率とミスト発生量との関係は、予め実験等によって求めたものである。
【0087】
演算部71は、絵柄面積率演算部73から第1面の絵柄面積率を受信すると、ミスト発生量データベース72Bから、当該絵柄面積率に対応したミスト発生量のデータを受け取り、この値をミスト発生装置61に送信する。ミスト発生装置61は、演算部71から受信したミスト発生量のミスト64を発生させ、印刷シートSに付与する。
【0088】
なお、上記では実施例2の水分付与装置60Bにおけるミスト発生装置61を制御する場合について説明したが、実施例1の水分付与装置60Aにおけるミスト発生装置61を制御する場合も同様にして行われるため、説明を省略する。
【0089】
以上説明したように、実施例4の電子印刷写真装置10では、ミスト発生装置61からのミスト発生量を制御するミスト発生量制御装置70Bを備え、ミスト発生量制御装置70Bは、印刷シートSにおける第1面の絵柄面積率に基づいてミスト発生量を制御するように構成されている。上記構成としたことで、実施例1、2の効果に加えて、印刷シートS中の水分量を精度よく適正範囲に戻すことが可能となる。
【実施例5】
【0090】
次に、本発明の実施例5に係る電子写真印刷装置について説明する。なお、上記実施例1〜4で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0091】
図6は、実施例2で説明した水分付与装置60Bにおけるミスト発生装置61の第3制御例を示す概念図である。上述した実施例4では、印刷シートSの第1面の絵柄面積率に基づいてミスト発生量を制御する構成としたが、実施例5では、印刷シートSの紙種に基づいてミスト発生量を制御する構成とした点が実施例4と異なる。図6に示される水分付与装置60Bは、実施例2の構成に加えて、印刷シートSの紙種又は適正含水率に基づいてミスト発生装置61からのミスト発生量を制御するミスト発生量制御装置70Cをさらに備えた構成としている。
【0092】
印刷シートSは、シートの紙種(シートの厚み、コーティング等)によってシート中の適正含水率の範囲が異なる。例えば、紙種Aの適正含水率の範囲は4〜5%、紙種Bの適正含水率の範囲は7〜8%、紙種Cの適正含水率の範囲は3〜4%である。そこで、印刷シートSの紙種に基づいてミスト発生装置61からのミスト発生量を調整することで、印刷シートS中の水分量を高精度に調整することができる。
【0093】
ミスト発生量制御装置70Cは、演算部71とミスト発生量データベース72Cとを有している。ミスト発生量データベース72Cには、通常使用される複数種類の印刷シートSの各紙種に対応したミスト発生量(印刷シート1枚当たりに供給するミスト量)のデータが蓄積されている。たとえば、紙種Aの場合には印刷シート1枚当たり0.1gのミストを供給し、紙種Bの場合には印刷シート1枚当たり0.2gのミストを供給する、といったデータが蓄積されている。上記の紙種とミスト発生量との関係は、予め実験等によって求めたものである。
【0094】
印刷シートSの紙種は、印刷を行う際に紙種入力部74から使用者によって入力される。紙種入力部74は、ミスト発生量データベース72Cに格納されている印刷シートSの紙種を入力することができるように構成されている。例えば、入力画面に複数の紙種に対応する紙種選択ボタン(図示せず)を設けておく。
【0095】
使用者によって紙種入力部74から印刷シートSの紙種が入力されると、演算部71は、入力部74から紙種を受信し、ミスト発生量データベース72Cから当該紙種に対応したミスト発生量のデータを受け取り、この値をミスト発生装置61に送信する。ミスト発生装置61は、演算部71から受信したミスト発生量のミスト64を発生させ、印刷シートSに付与する。
【0096】
なお、紙種入力部74の紙種選択ボタンに表示されている紙種以外の紙種(すなわちミスト発生量データベース72Cに格納されていない紙種)を使用する場合であって、当該紙種に対応するミスト発生量が予め分かっている場合には、使用者が、使用する紙種と当該紙種に対応するミスト発生量の数値を紙種入力部74から入力することができるようにしておく。使用者によって紙種入力部74から印刷シートSの紙種とそれに対応するミスト発生量の数値が入力されると、演算部71は、当該ミスト発生量の値をミスト発生装置61に送信する。ミスト発生装置66は、演算部71から受信したミスト発生量のミストを発生させ、印刷シートSに付与する。同時に、演算部71は、使用者によって入力された紙種とミスト発生量を対応付けたデータをミスト発生量データベース72Cに格納する。
【0097】
なお、上記では実施例2の水分付与装置60Bにおけるミスト発生装置61を制御する場合について説明したが、実施例1の水分付与装置60Aにおけるミスト発生装置61を制御する場合も同様にして行われるため、説明を省略する。
【0098】
以上説明したように、実施例5の電子印刷写真装置10では、ミスト発生装置61からのミスト発生量を制御するミスト発生量制御装置70Cを備え、ミスト発生量制御装置70Cは、印刷シートSの紙種に基づいてミスト発生量を制御するように構成されている。上記構成としたことで、実施例1、2の効果に加えて、印刷シートS中の水分量を精度よく適正範囲に戻すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る電子印刷写真装置は、液体トナーを用いて印刷を行う液体現像電子写真方式で被印刷物の両面に印刷を行う電子写真印刷装置に特に有用に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
10 電子写真印刷装置
11 給紙部
12 印刷部
13 排紙部
31,32,33,34 現像ユニット
35 中間転写体(電子写真印刷用中間転写体)
36 バックアップローラ(加圧体)
38 閃光照射装置(トナー定着手段)
39 スイッチ機構
40 往復ガイドローラ(反転手段)
41 スイッチバックローラ(反転手段)
42 シート収納部(反転手段)
43 反転経路
60A,60B 水分付与装置(水分付与手段)
61 ミスト発生装置
62 放電電極
63 収集電極
64 ミスト
65a,65b ローラ
70A,70B,70C ミスト発生量制御装置(ミスト発生量制御手段)
71 演算部
72A,72B,72C ミスト発生量データベース
73 絵柄面積率演算部
74 紙種入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体トナーを静電潜像の形成された感光体上に転写して現像を行う現像ユニットと、
前記現像ユニットにより現像された前記液体トナーを転写する中間転写体と、
前記中間転写体と接することによりニップ部を形成するとともに前記液体トナーを吸引するためのバイアス電圧が印加された加圧体と、
被印刷物に転写された液体トナーを加熱することにより前記液体トナーを定着させるトナー定着手段と、を有し、
被印刷物の第1面を印刷した後に前記第1面の反対側の面である第2面の印刷を行う電子写真印刷装置において、
前記第1面が印刷された被印刷物の第2面に水分を付与する水分付与手段を設けたことを特徴とする電子写真印刷装置。
【請求項2】
前記トナー定着手段の後流側の搬送経路に設けられ、前記第1面に液体トナーが定着された前記被印刷物の表裏を反転させる反転手段と、
前記反転手段により反転された前記被印刷物を前記ニップ部まで搬送する反転経路とを備え、
前記水分付与手段は、
前記トナー定着手段の出口から前記反転手段に至る搬送経路又は前記反転経路の途中に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子写真印刷装置。
【請求項3】
前記水分付与手段はミスト発生装置を備え、
前記ミスト発生装置から前記被印刷物の第2面に対してミストを噴霧することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真印刷装置。
【請求項4】
前記水分付与手段は、
前記被印刷物の第2面側に配置される放電電極と、前記被印刷物の第1面に接触して配置される収集電極とを備え、
前記放電電極にミストを噴霧し、前記収集電極と前記放電電極との間に電圧を印加することにより前記放電電極上のミストを帯電させ、静電気力によりミストを前記放電電極から前記被印刷物の第2面に移動させることにより、前記第2面にミストを付着させることを特徴とする請求項3に記載の電子写真印刷装置。
【請求項5】
前記水分付与手段は、
前記ミスト発生装置の後流側に前記搬送経路を挟んで対向して配置される一対のローラを備え、前記ミスト発生装置から前記被印刷物の第2面に対してミストを噴霧した後、前記一対のローラによって被印刷物を加圧することを特徴とする請求項3に記載の電子写真印刷装置。
【請求項6】
前記ミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御手段と、
前記トナー定着手段と前記水分付与手段との間に設置され、前記被印刷物中の水分量を検出する水分検出センサとを備え、
前記ミスト発生量制御手段は、
前記水分検出センサで検出した前記被印刷物中の水分量に基づいて前記ミスト発生量を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の電子写真印刷装置。
【請求項7】
前記ミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御手段を備え、前記ミスト発生量制御手段は、前記被印刷物の第1面における絵柄面積率に基づいて前記ミスト発生量を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の電子写真印刷装置。
【請求項8】
前記ミスト発生装置で発生させるミスト発生量を制御するミスト発生量制御手段を備え、前記ミスト発生量制御手段は、予め設定された被印刷物の種類に基づいて前記ミスト発生量を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の電子写真印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−175209(P2011−175209A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41007(P2010−41007)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】