説明

電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】本発明の目的は、短波長レーザー等で露光して電子写真感光体上に高密度の静電潜像を形成した電子写真画像で、光劣化に伴う繰り返し使用による電位安定性の低下を防止するとともに、高い転写性能が求められるプロセスにおいてもメモリー耐性に優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】電荷発生層がCuKα線の特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型のチタニルフタロシアニン顔料を含有する電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる電子写真感光体(以下、単に感光体とも云う)、画像形成方法、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いられる電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンターが使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。このような要求に対し、露光光源として短波長のレーザー光を用い、高精細のデジタル画像を形成することが提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、該短波長レーザー光を用い、露光のドット径を絞り、電子写真感光体上に細密の静電潜像を形成しても、最終的に得られる電子写真画像は、十分な高画質を達成し得ていないのが現状である。
【0003】
その原因は、短波長の像露光で得られる画像に新たに発生してくる課題を十分に対応できていないことによる。
【0004】
第一の課題は、従来の長波長レーザー用に開発された感光体では、短波長レーザー光の波長での光透過性を確保できず、感度特性を損なうといった問題がある。これは電荷輸送材料の吸収領域が400nm以上の領域まで存在することに起因する。その結果、膜厚のばらつきなどの影響で均一な画像が得られない。一方、400nm以上に実質的な吸収を持たない電荷輸送材料を用いた場合は、光安定性に劣るため、画像安定性に問題があった。この問題に対しては、我々は、先に、特開2007−108314号公報(特許文献3)で、特定の電荷輸送材料を用いることで、この問題を解決できることを見出した。
【0005】
第二の課題は、短波長レーザーの高画質化施策としてのトナーの小径化に伴う転写電流の増大である。感光体は転写電流の大きなプロセスでは転写メモリーが発生し易い。特に、フタロシアニン系顔料を電荷発生物質に用いた感光体では、この転写メモリーが発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−250239号公報
【特許文献2】特開2000−105479号公報
【特許文献3】特開2007−108314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記第一の課題及び第二の課題を解決するためになされた。本発明の目的は、波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して電子写真感光体上に高密度の静電潜像を形成した電子写真画像で、光劣化に伴う繰り返し使用による電位安定性の低下を防止するとともに、高い転写性能が求められるプロセスにおいてもメモリー耐性に優れた電子写真感光体を提供することであり、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題について、鋭意検討を重ねた結果、第一の課題及び第二の課題を同時に解決し、短波長レーザー光の光透過性を改善し、光劣化に伴う繰り返し使用による電位安定性の低下を防止すると同時に、転写メモリー耐性も改善するには、特定の結晶型を有し、且つ適正な粒径の電荷発生材料を用い、同時に短波長透過性が良好な特定の電荷輸送物質を同時に用いることにより、短波長レーザー光に対する感度の改善と転写メモリー耐性を大幅に改善できることを見出した。
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0010】
1.導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層の積層構造の感光層を有する電子写真感光体において、該電荷発生層がCuKα線の特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型のチタニルフタロシアニン顔料を含有し、電荷輸送層が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、RおよびRは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表わす。RおよびRは、置換、未置換の炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表す。nは0〜2の整数を表し、oは0〜3の整数を表す。lおよびmは、0〜5の整数を表す。A、B、CおよびDは、水素原子、置換、未置換の、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。但し、A、B、CおよびDが同時に水素原子であることはない。]
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、R、R、R、およびRは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表わす。pは、0〜5の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、rは、0〜2の整数を表し、sは、0〜3の整数を表す。RおよびR10は、アルキル基又はアリール基表し、RとR10が結合して環構造を形成しても良い。A、B、CおよびDは前記一般式(1)におけるA、B、C、Dと同義である。但し、A、B、CおよびDが同時に水素原子であることはない。]
2.前記電子写真感光体が導電性支持体と電荷発生層の間に、少なくともN型半導性粒子を含有する中間層を有することを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体。
【0015】
3.電子写真感光体上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、該帯電電位が付与された電子写真感光体上に波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して静電潜像を形成する露光工程、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程、該トナー像を転写媒体に転写する工程を有する画像形成方法において、前記電子写真感光体に前記1又は2に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
【0016】
4.前記3に記載の画像形成方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【0017】
5.前記4に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも前記1又は2に記載の電子写真感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、波長が350〜500nmの範囲の短波長レーザー光で露光し、高密度の静電潜像を形成した時、光劣化に伴う繰り返し使用による電位安定性の低下を防止すると同時に、転写メモリー耐性も改善することができ、高密度のドット画像を形成できる電子写真感光体を提供することができる。又、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の電子写真感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【図4】顔料1(チタニルフタロシアニン粉末)のX線回折スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0021】
以下、本発明の電子写真感光体について、詳細に説明する。
【0022】
本願発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層の積層構造の感光層を有する電子写真感光体であり、該電荷発生層がCuKα線の特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型のチタニルフタロシアニン顔料を含有し、電荷輸送層が前記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0023】
本願発明の電子写真感光体は、上記構成を有することにより、波長が350〜500nmの範囲の短波長レーザー光で露光し、高密度の静電潜像を形成した時、光劣化に伴う繰り返し使用による電位安定性の低下を防止すると同時に、転写メモリー耐性も改善することができ、高密度のドット画像を形成できる。
【0024】
本願発明に係わるチタニルフタロシアニン顔料とは、下記化学構造を有する化合物の顔料である。
【0025】
【化3】

【0026】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは0〜2の数を示す)。前記Xが塩素原子の場合nは0〜0.5が好ましく、0〜0.1がより好ましい。
【0027】
本願発明に係わるチタニルフタロシアニン顔料は、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、前記した結晶型を有する。そして、該結晶型のチタニルフタロシアニン顔料は、特開2006−276829号公報等で電子写真感光体に適用した技術が公開されている。
【0028】
しかしながら、該結晶型のチタニルフタロシアニン顔料を用いた感光体を、短波長レーザー光(発振波長が350nm〜500nm)の像露光を用いた画像形成方法で用いると、繰り返し使用に伴う感度の低下や転写メモリーの発生と云った問題が発現する。本発明者等は、この現象について、種々の検討を加えた結果、該結晶型のチタニルフタロシアニン顔料を用いた電荷発生層の上に、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有した電荷輸送層を積層することにより、これらの課題を解決することができた。
【0029】
本願発明に係わるチタニルフタロシアニン顔料は、その結晶型の調整方法の記載は特開2006−276829号公報等で記載されている。
【0030】
以下に、本発明に係わるチタニルフタロシアニン顔料の結晶型の調整方法及び前記一般式(1)又は(2)で表される化合物等について、記載する。
【0031】
本発明に係わるチタニルフタロシアニン顔料の結晶型の調整方法
ここでまず、本発明で用いられる特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成方法について述べる。
【0032】
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。フタロシアニン類の合成方法は古くから知られている。
【0033】
例えば、第1の方法として、無水フタル酸類、金属あるいはハロゲン化金属及び尿素の混合物を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒が併用される。第2の方法としては、フタロニトリル類とハロゲン化金属を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この方法は、第1の方法で製造できないフタロシアニン類、例えば、アルミニウムフタロシアニン類、インジウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、オキソチタニウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類等に用いられる。第3の方法は、無水フタル酸あるいはフタロニトリル類とアンモニアを先ず反応させて、例えば1,3−ジイミノイソインドリン類等の中間体を製造し、次いでハロゲン化金属と高沸点溶媒中で反応させる方法である。第4の方法は、尿素等存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシドを反応させる方法である。特に、第4の方法はベンゼン環への塩素化(ハロゲン化)が起こらず、電子写真用材料の合成法としては、極めて有用な方法であり、本発明においては極めて有効に使用される。
【0034】
次に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の合成法について述べる。この方法は、フタロシアニン類を硫酸に溶解した後、水で希釈し、再析出させる方法であり、アシッド・ペースト法あるいはアシッド・スラリー法と呼ばれるものが使用できる。
【0035】
具体的な方法としては、上記の合成粗品を10〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを硫酸の10〜50倍量の充分に冷却した水もしくは氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄・濾過を行い、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、綺麗なイオン交換水で洗浄した後、濾過を行い、固形分濃度で5〜15質量%程度の水ペーストを得る。
【0036】
この際、イオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り濃硫酸を残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が以下のような物性値を示すことが好ましい。即ち、硫酸の残存量を定量的に表せば、洗浄後のイオン交換水のpHや比伝導度で表すことが出来る。pHで表す場合には、pHが6〜8の範囲であることが望ましい。この範囲であることにより、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断出来る。このpH値は市販のpHメーターで簡便的に測定することが出来る。また比伝導度で表せば、8μS/cm以下であることが望ましい(好ましくは5μS/cm以下、更に好ましくは3μS/cm以下である)。この範囲であれば、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断出来る。この比伝導度は市販の電気伝導率計で測定することが可能である。比伝導度の下限値は、洗浄に使用するイオン交換水の比伝導度ということになる。いずれの測定においても、上記範囲を逸脱する範囲では、硫酸の残存量が多く、感光体の帯電性が低下したり、光感度が悪化したりするので望ましくない。
【0037】
このように作製したものが不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)である。この際、この不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも7.0〜7.5°に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。特に、その回折ピークの半値巾が1°以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下であることが好ましい。
【0038】
次に、結晶変換方法について述べる。
【0039】
結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4°のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さない結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶に変換する工程である。
【0040】
具体的な方法としては、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を乾燥せずに、水の存在下で有機溶媒と共に混合・撹拌することにより、前記結晶型を得るものである。
【0041】
この際、使用される有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば、いかなる有機溶媒も使用できるが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンの中から選ばれる1種を選択すると、良好な結果が得られる。これら有機溶媒は単独で用いることが好ましいが、これらの有機溶媒を2種以上混合する、あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の質量の10倍以上、好ましくは30倍以上の質量であることが望ましい。これは、結晶変換を素早く十分に起こさせると共に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)に含まれる不純物を十分に取り除く効果が発現されるからである。尚、ここで使用する不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)は、アシッド・ペースト法により作製するものであるが、上述のように硫酸を十分に洗浄したものを使用することが望ましい。硫酸が残存するような条件で結晶変換を行うと、結晶粒子中に硫酸イオンが残存し、出来上がった結晶を水洗処理のような操作をしても完全には取り除くことが出来ない。硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入し結晶変換を行う方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることが出来るが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いものであるため、本発明のチタニルフタロシアニンの製造方法としては良好なものではない。
【0042】
次に、電荷輸送層に用いる前記一般式(1)又は(2)の化合物について、説明する。
【0043】
前記一般式(1)において、RおよびRは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表す。RおよびRは、置換、未置換の炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表す。nは0〜2の整数を表し、oは0〜3の整数を表す。lおよびmは、0〜5の整数を表すA、B、CおよびDは、水素原子、置換、未置換の、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。但し、A、B、CおよびDが同時に水素原子であることはない。
【0044】
、Rにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。R〜Rにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などが挙げられる。
【0045】
、Rにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。R〜Rにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などが挙げられる。またR、Rの置換アルキル基としては、フェニル置換アルキルなどが挙げられる。
【0046】
A〜Dにおけるアルキル基、アルコキシ基またはアリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
【0047】
また、A〜Dにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基、ベンジル基、フェネチル基等の置換アルキル基挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基が挙げられる。
【0048】
以下に前記一般式(1)の化合物の具体例を下記に挙げる。
【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
一般式(1)で表される化合物を合成するには、ジフェニルアミンとハロゲン化アリールを銅とアルカリを触媒としてウルマン反応にて反応させる方法や、パラジウム触媒を用いて鈴木カップリング法によって合成することができる。
【0053】
一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0054】
前記一般式(2)において、R、R、RおよびRは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表す。pは、0〜5の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、rは、0〜2の整数を表し、sは、0〜3の整数を表す。A、B、CおよびDは前記一般式(1)におけるA、B、C、Dと同義である。但し、A、B、CおよびDが同時に水素原子であることはない。
【0055】
、R、R、Rにおける、アルキル基、アルコキシ基としては、R、Rにおけるアルキル基、アルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
【0056】
、R10に於けるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、R、R10が結合してなる環構造としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが挙げられる。またアリール基としては、フェニル基が挙げられる。
【0057】
一般式(2)で表される化合物の具体例を下記に挙げる。
【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
【化13】

【0065】
一般式(2)で表される化合物を合成するには、ビフェニル基を有するトリフェニルアミンを種々のケトン化合物と酸触媒にて反応することにより、合成する事ができる。また、下記一般式(3)で表されるジアミノ体とハロゲン化アリールを用いて、種々の合成法によって合成することもできる。
【0066】
【化14】

【0067】
一般式(3)中、Arは、置換基を有しても良いフェニル基又は、一般式(1)に於ける置換基を有するビフェニル基を表し、R11、R12は、一般式(2)のRおよびR10と同意義である。
【0068】
これら上記の化合物以外に、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることができ、また、併用してもよいが、主たる電荷発生物質としては、前記の一般式(1)又は(2)の化合物を用いることが好ましい。
【0069】
本発明の電子写真感光体の構成としては、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成;
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成;
3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成した構成;
4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層および電荷発生層を順次積層した構成;
5)上記1)〜4)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
【0070】
本発明の電子写真感光体は、上記いずれの構成を有する場合であってもよい。
【0071】
本発明では上記2)の構成が最も好ましく用いられる。即ち、感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する前記構成1〜4が好ましい態様である。
【0072】
尚、本発明の電子写真感光体は上記いずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上に感光層を形成するに先だって、下引層(中間層)を形成する。
【0073】
次に、電子写真感光体の層構成を上記2)の構成を中心にして記載する。
【0074】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0075】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。
【0076】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙やプラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗10Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0077】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0078】
本発明に用いられる中間層には金属酸化物粒子を含有することが好ましい。特に、N型特性を有するN型半導性粒子が好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0079】
N型半導性粒子の金属酸化物粒子としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0080】
金属酸化物粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満の金属酸化物粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きい金属酸化物粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
【0081】
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、本発明のN型半導性粒子として最も好ましい。
【0082】
金属酸化物粒子はメチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。該メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、金属酸化物粒子の整流性を高め、この金属酸化物粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果がある。
【0083】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH)O)−の構造単位とこれ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
【0084】
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
【0085】
本発明に用いられる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は前記表面処理酸化チタン等の金属酸化物粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
【0086】
金属酸化物粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で金属酸化物粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な電子写真感光体を形成することができる。又、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、金属酸化物粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
【0087】
一方、本発明の金属酸化物粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、金属酸化物粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂、アルキド樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が好ましい。この内、ポリアミド樹脂としては、アルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。電子写真感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これ以外にも下記のようなポリアミドも好ましく用いることができる。
【0088】
【化15】

【0089】
上記ポリアミドN−1からN−5中の成分比はモル%で表示している。
【0090】
又、ポリアミド樹脂の分子量は数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下だと中間層の膜厚の均一性が劣化し、本発明の効果が十分に発揮されにくい。一方、80,000より大きいと、樹脂の溶媒溶解性が低下しやすく、中間層中に凝集樹脂が発生しやすく、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こしやすい。
【0091】
上記ポリアミド樹脂はその一部が既に市販されており、例えばダイセル−デグサ(株)製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
【0092】
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0093】
本発明の中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチ等が発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
【0094】
又、上記中間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×10Ω・cm以上である。本発明の中間層及び保護層の体積抵抗は1×10〜1015Ω・cmが好ましく、1×10〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×10〜1×1013Ω・cmである。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0095】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
【0096】
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
体積抵抗が1×10Ω・cm未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、電子写真感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0097】
(感光層)
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。
【0098】
機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
【0099】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0100】
(電荷発生層)
本願発明に係わる電荷発生層には、電荷発生物質(CGM)として、前記したX線回折スペクトル特性を有するチタニルフタロシアニン顔料を用いるが、これ以外にも電荷発生物質として、アゾ顔料、ペリレン顔料などのペリレン系化合物、多環キノン顔料等を併用してもよい。
【0101】
電荷発生層は、CGMの分散媒としてバインダーを用いることが好ましい。バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0102】
バインダーと電荷発生物質との割合は、バインダー100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0103】
(電荷輸送層)
本発明において電荷輸送層は、単層であっても複数の電荷輸送層から構成されてもよい。複数の電荷輸送層から構成される場合、最上層の電荷輸送層は無機微粒子を含有する構成が好ましい。
【0104】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)およびCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機微粒子、酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0105】
電荷輸送物質(CTM)としては、本発明に係る前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が用いられる。
【0106】
これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0107】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0108】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0109】
電荷輸送層の合計膜厚は、ドット再現性の劣化防止の面から、10〜25μmが好ましい。また、表面層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmであることが好ましい。
【0110】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0111】
次に、感光体を製造するための塗布加工方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。また表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いるのが最も好ましい。
【0112】
上記塗布液供給型の塗布装置の中でもスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布加工方法は、前記した低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体の場合は特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置等を用いて塗布することが好ましい。
【0113】
円形スライドホッパー型塗布装置を用いる塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm〜2mm)を持って配置されているため基材を傷つける事なく、また性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。更に性質が異なり同一溶媒に溶解する層を多層形成させる際にも、浸漬塗布方法と比べて溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へ殆ど溶出せず、塗布槽にも溶出することなく塗布できるので、本発明の無機微粒子の分散性を劣化させずに塗布することができる。
【0114】
又、本発明の感光体の表面層には、画像ボケ防止の面から、酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することができる。
【0115】
酸化防止剤とは、その代表的なものは電子写真感光体中ないしは電子写真感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
【0116】
次に、本発明に係わる電子写真感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0117】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0118】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0119】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプおよび第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラーおよび第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0120】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルター処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリーに記憶される。
【0121】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26および光除電手段(光除電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明の電子写真感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0122】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリーから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0123】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを像露光光源として用いる露光手段を有する。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、電子写真感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像を得ることができる。
【0124】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0125】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系およびLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布およびローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0126】
本発明の画像形成装置においては、静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する。感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。
【0127】
本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる電子写真感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0128】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46および進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24および分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0129】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0130】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0131】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0132】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0133】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0134】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、およびクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0135】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0136】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21および定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0137】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0138】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、および、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0139】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0140】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0141】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0142】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0143】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、およびクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0144】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0145】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0146】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0147】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0148】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0149】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0150】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0151】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、およびクリーニング手段6bとから成る。
【0152】
次に図3は本発明の電子写真感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも電子写真感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段および中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0153】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0154】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0155】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0156】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0157】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0158】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0159】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0160】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0161】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0162】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5bおよび中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0163】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0164】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンターおよび液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版およびファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0165】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」の表示は、「質量部」を表す。
【0166】
[チタニルフタロシアニンの合成]
本願発明に係わるX線回折スペクトル特性を有するチタニルフタロシアニン顔料は特開2006−276829号公報に記載の合成法により合成することができる。
【0167】
(合成例1)
1,3−ジイミノイソインドリン29.2部とスルホラン200部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)による水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40部をテトラヒドロフラン200部に投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た(顔料1とする)。
【0168】
上記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する質量比は33倍である。尚、合成例1の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
【0169】
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3±0.2°のピークと9.4±0.2°のピークの間にピークを有さず、更に26.3±0.2°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。顔料1のX線回折スペクトルを図4に示す。
【0170】
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧 :50kV
電流 :30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数 :2秒
(合成例2)
合成例1の方法に従って、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを合成し、次のように結晶変換を行い顔料2を得た。
【0171】
合成例1で得られた結晶変換前の水ペースト60部にテトラヒドロフラン400部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(665Pa)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た(顔料9とする)。合成例1の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。上記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する質量比は44倍である。
【0172】
(合成例3)
合成例2と同じ条件で、攪拌時間を30分に変更した以外は、合成例1と同様に結晶変換を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(顔料3とする)。
【0173】
(合成例4)
合成例2と同じ条件で、攪拌時間を40分に変更した以外は、合成例1と同様に結晶変換を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(顔料4とする)。
【0174】
(合成例5):比較合成例
先の比較合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1部をポリエチレングリコール50部に加え、100部のガラスビーズと共に、サンドミルを行った。結晶転移後、希硫酸、水酸化アンモニウム水溶液で順次洗浄し、乾燥して顔料を得た(顔料5とする)。
【0175】
(合成例6):比較合成例
先の合成例1で作製したウェットケーキを乾燥し、乾燥物1部をイオン交換水10部とモノクロルベンゼン1部の混合溶媒中で1時間撹拌(50℃)した後、メタノールとイオン交換水で洗浄し、乾燥して顔料を得た(顔料6とする)。
【0176】
(合成例7):比較合成例
特開昭64−1728号公報、合成例1に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、α型チタニルフタロシアニン5部を食塩10部およびアセトフェノン5部と共にサンドグラインダーにて100℃にて10時間結晶変換処理を行った。これをイオン交換水及びメタノールで洗浄し、希硫酸水溶液で精製し、イオン交換水で酸分がなくなるまで洗浄した後、乾燥して顔料を得た(顔料7とする)。合成例7の原材料には、ハロゲン化物を使用している。
【0177】
(合成例8):比較合成例
特開平3−255456号公報、合成例2に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、先の合成例1で作製したウェットケーキ10部を塩化ナトリウム15部とジエチレングリコール7部に混合し、80℃の加熱下で自動乳鉢により60時間ミリング処理を行った。次に、この処理品に含まれる塩化ナトリウムとジエチレングリコールを完全に除去するために充分な水洗を行った。これを減圧乾燥した後にシクロヘキサノン200部と直径1mmのガラスビーズを加えて、30分間サンドミルにより処理を行い、顔料を得た(顔料8とする)。合成例8の原材料には、ハロゲン化物を使用していない。
【0178】
以上の合成例2〜8で作製した顔料2〜8は、先程と同様の方法でX線回折スペクトルを測定し、その結果を表1に示した。
【0179】
【表1】

【0180】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0181】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、十点平均表面粗さRzjis=0.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0182】
〈中間層〉
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0183】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部(1.0体積部)
N型半導性粒子:ルチル形酸化チタンA1(一次粒径35nm;メチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンの共重合体(モル比1:1)を用い、酸化チタン全質量の5質量%の量で表面処理したもの) 3.5部(1.0体積部)
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0184】
前記導電性支持体上に、上記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚3.0μmの中間層を形成した。
【0185】
〈電荷発生層:CGL〉
電荷発生物質:合成例1のチタニルフタロシアニン顔料 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0186】
〈電荷輸送層(CTL)〉
電荷輸送物質(CTM):CTM−45 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(下記AO−1の化合物) 6部
THF/トルエン混合液(体積比3/1混合) 2000部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚20.0μmの電荷輸送層1を形成し、感光体1を作製した。
【0187】
【化16】

【0188】
感光体2〜22の作製
感光体1において、電荷発生層の電荷発生物質、電荷輸送層の電荷輸送物質を表2のように変更した以外は同様にして感光体2〜22を作製した。
【0189】
表2中、CTM101、CTM102は下記構造の電荷輸送物質を示す。
【0190】
【化17】

【0191】
(評価1)
以上のようにして得た感光体を基本的に、図2の構成を有する市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)の書き込みドット径可変改造機に搭載し、像露光光源として405nmの短波長レーザー光源を用い、書き込み光源の主査方向の露光径を30μmで、1200dpi(dpiとは、1inch(=2.54cm)当たりのドット数を表す。)とし、該露光径のスポット露光が感光体面上で0.5mWになるように設定した。尚、上記フルカラー複合機は画像形成ユニットを4組有しているので、それぞれの画像形成ユニットの感光体を同一種類の感光体(例えば、感光体1の場合は、4本の感光体1を用意して)で統一して、評価を行った。各評価は、30℃80%RHの条件で、画素率7%の画像をA4紙に5万枚の画出し耐刷試験後に、20℃60%RHの環境下で評価した。
【0192】
<評価項目と評価基準>
繰り返し電位安定性
上記フルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)改造機の画像形成ユニットBkに、更に、表面電位計にて感光体表面の電位を測定可能なように改造して、初期暗部電位(Vo)および初期明部電位(Vi)をそれぞれ−700V、−200V付近に設定し、帯電、露光を500000回繰り返し、Vo、Viの変動量(ΔVo、ΔVi)を測定し、繰り返し電位安定性の指標とした。なお、マイナスは電位の低下を表し、プラスは電位の上昇を表す。
【0193】
転写メモリー耐性
前記フルカラー複合機bizhub PRO C6500の転写電流値を50mAと100mAの2水準に設定し、低温低湿環境(LL:15RH%、10℃)にて画像の先端部に黒帯を設置したオリジナル画像を用いて転写メモリーの発生有無を評価した。
【0194】
◎:50mA、100mA共に転写メモリー発生なし(良好)
○:50mAで転写メモリー発生なし。100mAのみ軽微な転写メモリー発生(実用上問題なし)
×:50mAで転写メモリーが発生(実用上問題あり)
画像評価
評価機としてフルカラー複合機bizhub PRO C6500改造機(像露光光源に405nmの半導体レーザーを使用、ビーム径30μmで、1200dpiの露光を行い)を用い、該複写機に感光体1〜22を搭載し評価した。評価項目と評価基準を下記に示す。
【0195】
1ドットラインの評価
白地のA4紙に1ドットラインと黒べた画像を作製し、下記の基準で評価した。
【0196】
◎:1ドットラインが連続して再現されており、黒べたの画像濃度が1.2以上(良好)
○:1ドットラインは連続して再現されているが、黒べたの画像濃度が1.2未満〜1.0以上(実用性に問題なし)
×:1ドットラインが切断されて再現されているか、又は1ドットラインが連続して再現されていても、黒べたの画像濃度が1.0未満(実用性に問題有り)
2ドットラインの評価
黒べたの画像の中に、2ドットラインの白線を作製し、下記の基準で評価した。
【0197】
◎:2ドットラインの白線が連続して再現されており、黒べたの画像濃度が1.2以上(良好)
○:2ドットラインの白線は連続して再現されているが、黒べたの画像濃度が1.2未満〜1.0以上(実用性に問題なし)
×:2ドットラインの白線が切断されて再現されているか、又は2ドットラインの白線は連続して再現されていても、黒べたの画像濃度が1.0未満(実用性に問題有り)
上記のべた画像濃度は、マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。結果は表2に示した。
【0198】
【表2】

【0199】
表2より明らかなように、本発明の感光体1〜16は、短波長レーザー光等の350〜500nmの照射光に対して、繰り返し電位安定性、転写メモリー耐性に優れており、その結果、画像評価のドット再現性についても良好な結果を示している。
【0200】
一方、電荷発生層の顔料が本願発明外の感光体17〜20は、転写メモリー耐性が不十分であり、電荷輸送層が本願発明外のCTM101、CTM102を含有している感光体21及び22は転写メモリー耐性に加えて、ドット再現性、電位安定性に問題がある結果となっている。
【符号の説明】
【0201】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層の積層構造の感光層を有する電子写真感光体において、該電荷発生層がCuKα線の特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さない結晶型のチタニルフタロシアニン顔料を含有し、電荷輸送層が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

[式中、RおよびRは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表わす。RおよびRは、置換、未置換の炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表す。nは0〜2の整数を表し、oは0〜3の整数を表す。lおよびmは、0〜5の整数を表す。A、B、CおよびDは、水素原子、置換、未置換の、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。但し、A、B、CおよびDが同時に水素原子であることはない。]
【化2】

[式中、R、R、R、およびRは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を表わす。pは、0〜5の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、rは、0〜2の整数を表し、sは、0〜3の整数を表す。RおよびR10は、アルキル基又はアリール基表し、RとR10が結合して環構造を形成しても良い。A、B、CおよびDは前記一般式(1)におけるA、B、C、Dと同義である。但し、A、B、CおよびDが同時に水素原子であることはない。]
【請求項2】
前記電子写真感光体が導電性支持体と電荷発生層の間に、少なくともN型半導性粒子を含有する中間層を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
電子写真感光体上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、該帯電電位が付与された電子写真感光体上に波長が350〜500nmの範囲内の波長の光で露光して静電潜像を形成する露光工程、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程、該トナー像を転写媒体に転写する工程を有する画像形成方法において、前記電子写真感光体に請求項1又は2に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも請求項1又は2に記載の電子写真感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7925(P2011−7925A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149694(P2009−149694)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】