電子写真感光体梱包方法及びこれを用いて梱包された電子写真感光体
【課題】粘着テープを用いずに、光導電性材料を含有する感光層を備えた電子写真感光体を、梱包する電子写真感光体梱包方法を提供する。
【解決手段】 円筒状基体の表面に光導電性材料で形成された感光層を備える電子写真感光体８に、黒色遮光紙１を巻付けて梱包する電子写真感光体梱包方法であって、黒色遮光紙１にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付ける。
【解決手段】 円筒状基体の表面に光導電性材料で形成された感光層を備える電子写真感光体８に、黒色遮光紙１を巻付けて梱包する電子写真感光体梱包方法であって、黒色遮光紙１にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、円筒形状の電子写真感光体を保護するための黒色遮光紙を用いた電子写真感光体梱包方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
カールソンプロセス方式等を採用した電子写真装置に用いられる電子写真感光体は、円筒状基体の表面に、光導電性材料を含有する感光層を形成して構成されている。この感光層は、電子写真プロセスにおいて光学像を静電潜像に変換する等、重要な役割を有することから、機械的な損傷や外光による劣化等から感光層を保護する必要があり、このため、この感光層を備えた電子写真感光体に対して、黒色遮光紙を巻付けて梱包する方法が一般に採用されている。
【０００３】
一方、上記のカールソンプロセス方式等を採用した電子写真装置には、通常、帯電器、現像器、クリーナー等が備えられている。このクリーナーとしては、板状のゴム材を使用したクリーニングブレードが、簡便な構成で、且つ、クリーニング効率が高いため、広く採用されている。
【０００４】
上記の電子写真装置において、このクリーニングブレードは、その端辺部が電子写真感光体の表面に当接されて使用され、その当接部分を電子写真感光体の回転方向と逆方向へ向くように設置されている。そのため、電子写真装置における最初の動作時に、クリーニングブレードが反転しやすいという弱点がある。
【０００５】
そこで、このブレード反転を防止ためには、このブレードと電子写真感光体との接触部に潤滑性粉体を介在させるようにするのが効果的であり、そのため、電子写真感光体表面上に潤滑性粉体を塗布する、或いは、電子写真感光体の保護シートである黒色遮光紙に、潤滑性粉体を塗布することが行われている。
【０００６】
従って、上記のカールソンプロセス方式等を採用した電子写真装置では、感光層を備えた電子写真感光体に対して、この感光層そのものを械的な損傷や外光による劣化等から保護すると共に、電子写真感光体が最初に動作する時に、クリーニングブレードが反転するのを防止する観点から、潤滑性粉体を塗布した黒色遮光紙を、電子写真感光体に巻付けて梱包する、或いは、電子写真感光体表面上に潤滑性粉体を塗布した電子写真感光体に、黒色遮光紙を巻付けて梱包する方法が、多く採用されている。
【０００７】
これらの、潤滑性粉体を塗布した黒色遮光紙を電子写真感光体に巻付けて梱包する方法、或いは、電子写真感光体表面上に潤滑性粉体を塗布した電子写真感光体に黒色遮光紙を巻付けて梱包する方法のいずれにおいても、上記の黒色遮光紙としては、黒色の上質紙が多く使用されている。また、巻付けた黒色遮光紙の固定には、シール或いはテープ等の粘着性物質を有する部材が、一般的に用いられている（例えば、特許文献１参照）。
【特許文献１】特開２００５−１９５８５３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、特許文献１に記載されているような電子写真感光体梱包方法における、巻付けた黒色遮光紙を、シール、或いは、テープ等の粘着性物質を有する部材で固定する梱包方法では、梱包された状態の電子写真感光体から、黒色遮光紙を取外す際に、或いは、高温高湿にて長時間保管した際に、黒色遮光紙を固定するための粘着テープの粘着剤が、電子写真感光体表面に対して付着しやすいという問題がある。
【０００９】
即ち、電子写真感光体に対して、黒色遮光紙を巻付けて固定して保管するのに、通常、粘着テープが使用される。そして、そのような粘着テープをはがして、黒色遮光紙を取外した場合に、粘着テープにおける粘着剤(主剤や粘着付与剤)、或いは、粘着剤に含まれる低分子量物等が、電子写真感光体表面に付着して、画像不良の原因となるという問題である。
【００１０】
また、高温高湿にて長時間保管した場合に、粘着テープにおける粘着剤（主剤や粘着付与剤）、或いは、粘着剤に含まれる低分子量物等が、黒色遮光紙を浸透して、電子写真感光体表面に付着し、画像不良の原因となるという問題もある。そのため、黒色遮光紙の固定に粘着テープを用いずに、黒色遮光紙で電子写真感光体を梱包することが要望されていた。
【００１１】
そこで、この発明は、上記の要望に対処するためになされたものであって、粘着テープを用いずに、光導電性材料を含有する感光層を備えた電子写真感光体を梱包する電子写真感光体梱包方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明の電子写真感光体梱包方法は、円筒状基体の表面に光導電性材料で形成された感光層を備える電子写真感光体に、黒色遮光紙を巻付けて梱包する電子写真感光体梱包方法である。この電子写真感光体梱包方法は、黒色遮光紙にあらかじめカール（湾曲）を形成した後、該黒色遮光紙を電子写真感光体に巻付けることを特徴としている。
【００１３】
この電子写真感光体梱包方法によれば、黒色遮光紙に、あらかじめ、後述するような感光体の外径以下のカールを形成しておくことで、粘着テープを用いずに電子写真感光体を梱包することができる。
【００１４】
また、梱包を外すのに、粘着テープを剥がすというような作業を行うことがないので、粘着テープの粘着剤が電子写真感光体に対して付着することにより生じる不具合を、防止することができる。
【００１５】
従って、上記の電子写真感光体梱包方法によって電子写真感光体を梱包することにより、該電子写真感光体が装着される画像形成装置における画像特性を、向上させることができるのみならず、該電子写真感光体の梱包、及び、交換における作業効率を、著しく向上することができる。
【００１６】
上記の電子写真感光体梱包方法において、黒色遮光紙を円筒形の加熱ローラーに接触させることによって黒色遮光紙を加熱して、該黒色遮光紙にカールを形成するようにするのが好適である。
【００１７】
このようにすることにより、黒色遮光紙にカールを確実に形成することができ、粘着テープ等の粘着部材を用いずに、黒色遮光紙を電子写真感光体に巻きつけることが可能なカールを、形成することができる。また、その状態で保管した際に、巻戻りもなく、長期間にわたって巻付けた状態を保持可能な電子写真感光体の梱包をすることができる。また、短時間で、簡単に黒色遮光紙にカールを形成することができる。
【００１８】
また、上記の加熱ローラーを用いた電子写真感光体梱包方法において、加熱ローラーによる黒色遮光紙の加熱温度を、１２０℃以上２３０℃以下とするのが好適である。
【００１９】
その理由は、１２０℃未満で加熱した場合には、黒色遮光紙のカールが十分でなく、電子写真感光体を梱包するのが困難となるからである。また、２３０℃を超えた温度で加熱した場合には、黒色遮光紙１が焦げ付く可能性があるからである。
【００２０】
また、上記の加熱ローラーを用いた電子写真感光体梱包方法において、電子写真感光体の直径をR、加熱ローラーの直径をｒとすると、該加熱ローラーの直径ｒが、Ｒ／６≦ｒ≦Ｒ／２を満足するようにするのが好適である。
【００２１】
その理由は、加熱ローラーの直径ｒが、ｒ＞Ｒ／２である加熱ローラーを用いて黒色遮光紙をカールさせた場合、黒色遮光紙のカールが十分でなく、電子写真感光体を梱包するのが困難となるからである。また、加熱ローラーの直径ｒが、ｒ＜Ｒ／６である加熱ローラーを用いて黒色遮光紙をカールさせた場合、黒色遮光紙のカールが非常に強く、自ら丸まってしまうため、電子写真感光体を梱包する作業性が極めて悪くなるからである。
【００２２】
また、上記の加熱ローラーを用いた電子写真感光体梱包方法において、ロール状の黒色遮光紙を用いる場合、該黒色遮光紙の巻癖のカールの向きと、加熱ローラーの接触により形成されるカールの向きとが、同じとなるように、該黒色遮光紙を加熱ローラーに接触させるのが好適である。
【００２３】
その理由は、この向きを逆にすると、巻癖のカールと加熱ローラーとの接触により形成されるカールとが相殺されてしまい、加熱ローラーにより形成されるカール力のみでは、電子写真感光体に巻付けることが困難となるからである。
【００２４】
また、上記の各電子写真感光体梱包方法において、黒色遮光紙にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙を電子写真感光体に巻付ける前に、潤滑性粉体の付着したローラーを該黒色遮光紙に接触させることによって、該黒色遮光紙に潤滑性粉体を塗布するようにするのが好ましい。
【００２５】
このようにすることにより、黒色遮光紙上に固体潤滑剤を塗布することで、上記の電子写真感光体が装着される画像形成装置に備えられているクリーニングブレードの反転を防ぐことができる。また、電子写真感光体に、あらかじめ固体潤滑剤を塗布する手間を省くことができるため、作業効率を向上することができる。
【００２６】
また、上述したいずれか１つの電子写真感光体梱包方法を用いて、電子写真感光体を梱包して、この電子写真感光体を、梱包された電子写真感光体とすることができる。
【発明の効果】
【００２７】
本発明によれば、黒色遮光紙に、あらかじめカールを形成しておくことで、粘着テープ等の粘着部材を用いずに電子写真感光体を梱包することができる。
【００２８】
また、梱包を外すのに、粘着テープを剥がすというような作業を行うことがないので、粘着テープの粘着剤が電子写真感光体に対して付着することにより生じる不具合を、防止することができる。
【００２９】
従って、上記の電子写真感光体梱包方法によって電子写真感光体を梱包することにより、該電子写真感光体が装着される画像形成装置における画像特性を、向上させることができるのみならず、電子写真感光体の梱包、及び、交換における作業効率を、著しく向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３０】
次に、本発明の実施の形態における電子写真感光体梱包方法について、図面に基づき詳細に説明する。図１は、本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の梱包過程を示した斜視図であり、（ａ）は、梱包直前の状態を示し、（ｂ）は、梱包直後の状態を示している。
【００３１】
本実施の形態における電子写真感光体梱包方法は、図１に示すように、電子写真感光体８の周囲に、あらかじめカールさせた黒色遮光紙１を巻付ける梱包方法である。この本実施の形態における電子写真感光体梱包方法は、後述するように、黒色遮光紙１の固定に、粘着テープ等の粘着部材を用いないことを特徴としている。
【００３２】
図２は、上記の電子写真感光体梱包方法を具体的に実現する方法を説明した説明図である。本実施の形態における電子写真感光体梱包方法では、図２に示すような、電子写真感光体梱包装置１０を用いる。尚、図３は、電子写真感光体梱包装置１０に備えられている後述する感光体保持部材６の斜視図である。また、図４は、同じく、電子写真感光体梱包装置１０に備えられている後述する潤滑性粉体塗布工程５の動作の状態を示した斜視図である。
【００３３】
図２において、電子写真感光体梱包装置１０は、黒紙遮光紙ドラム９、２つの紙送ローラー２ａ、加熱ローラー３、１対の紙送ローラー２ｂ、紙送りガイド４、潤滑性粉体付着部５、感光体保持部材６、及び、カッター７で構成されている。尚、図２では、向かって左方向が前方、右方向が後方である。
【００３４】
上記の電子写真感光体梱包装置１０は、次のように、構成されている。即ち、円筒形状の電子写真感光体８を、該電子写真感光体８の円筒形の中心軸が水平になるようにして保持している感光体保持部材６と、中心軸が水平な加熱ローラー３とが、水平に離間して対向していると共に、感光体保持部材６が前方に、加熱ローラー３が後方に位置してそれぞれ配置されている。
【００３５】
この内、感光体保持部材６が保持する電子写真感光体８の中心軸には、モータの軸が結合され、このモータにより、電子写真感光体８は、図２において、反時計方向に回転する。
【００３６】
また、感光体保持部材６と、加熱ローラー３との間には、加熱ローラー３の上端と、感光体保持部材６に保持されている電子写真感光体８の上端とを結ぶ搬送路が、形成されている。この搬送路は、黒紙遮光紙１を搬送するのに用いられる。
【００３７】
この搬送路の途中における加熱ローラー３側には、１対の紙送ローラー２ｂが、上記の搬送路を挟んで上下に配置され、また、上記の搬送路の途中における感光体保持部材６側には、上下に配置された１対のローラーを備えた潤滑性粉体塗布工程５が、設けられている。
【００３８】
また、加熱ローラー３、１対の紙送ローラー２ｂ、潤滑性粉体塗布工程５、及び、感光体保持部材６の各間には、黒紙遮光紙１の搬送路に沿って、該搬送路を挟んで上下に１対の紙送りガイド４が、それぞれ配置されている。
【００３９】
また、加熱ローラー３の下には、該加熱ローラー３の下端と上端を接する紙送ローラー２ａが配置され、この紙送ローラー２ａの前方に、もう１つの紙送ローラー２ａが配置されている。そして、このもう１つの紙送ローラー２ａの下方に離間して、黒紙遮光紙ドラム９が配置されている。この黒紙遮光紙ドラム９には、黒紙遮光紙１が、該黒紙遮光紙１の内側面を黒紙遮光紙ドラム９の中心軸に向けて、巻付けられている。
【００４０】
上記の電子写真感光体梱包装置１０では、黒紙遮光紙ドラム９から引き出された黒紙遮光紙１は、該黒紙遮光紙１の外側面を、上記のもう１つの紙送ローラー２ａの斜め上端から上端にかけて接面させて通過すると共に、加熱ローラー３へ向かって進む。
【００４１】
そして、黒紙遮光紙１は、この加熱ローラー３と紙送ローラー２ａとが接している接点を経て、該加熱ローラー３の半周にわたって、黒紙遮光紙１の内側面を加熱ローラー３に接面して巻きつけられて通過する。この際に、黒紙遮光紙１が過熱されて、該黒紙遮光紙１にカールが形成される。
【００４２】
加熱ローラー３に接面して巻きつけられた黒紙遮光紙１は、紙送りガイド４、１対の紙送ローラー２ｂ、紙送りガイド４、潤滑性粉体塗布工程５を経て、黒紙遮光紙１の内面に潤滑性粉体が塗布され、紙送りガイド４を経て、感光体保持部材６に保持されている電子写真感光体８に巻付けられた後、切断され、この切断により、電子写真感光体８に対する梱包が完了する。
【００４３】
即ち、上記の電子写真感光体梱包装置１０は、主として、黒紙遮光紙ドラム９（ロール状黒紙遮光紙保持手段）と、該黒紙遮光紙ドラム９から引き出された黒紙遮光紙１を接触させて過熱してカールを形成する加熱ローラー３（ローラー状加熱手段）と、電子写真感光体８を保持して回転させると共に、カールが形成された黒紙遮光紙１を、該電子写真感光体８へ、該電子写真感光体８の表面を少なくとも一周して巻付けする感光体保持部材６（感光体保持手段）と、該巻付けが完了した黒紙遮光紙１を切断するカッター７（黒紙遮光紙切断手段）と、を備えて構成されている。
【００４４】
次に、図２に示す上記の電子写真感光体梱包装置１０を用いた本実施の形態における電子写真感光体梱包方法について、具体的に説明する。上記の電子写真感光体梱包装置１０において、まず、電子写真感光体８の円筒長と同じ幅を有する黒色遮光紙１の黒紙遮光紙ドラム９を用意し、紙送ローラー２ａにのせて搬送する。
【００４５】
次に、黒色遮光紙１を円筒形の加熱ローラー３に接触させることによって加熱し、黒色遮光紙１にカールを形成させる。そして、次に、紙送りガイド４、１対の紙送ローラー２ｂを用いて黒色遮光紙１を潤滑性粉体塗布工程５へ搬送し、黒色遮光紙１に潤滑性粉体を塗布する。
【００４６】
さらに、黒色遮光紙１を感光体保持部材６に固定された電子写真感光体８の外表面に誘導すると、カールされた黒色遮光紙１のカール力のみで、電子写真感光体８を巻き始める。
【００４７】
そして、最後に黒色遮光紙１の巻始め部が巻き終り部と重なり合うような長さまで黒色遮光紙１を巻付けたところで、カッター７で黒色遮光紙１を切断して、黒色遮光紙１の電子写真感光体８への巻付けを完了する。
【００４８】
次に、上記の電子写真感光体梱包装置１０における各構成要素について説明すると共に、上記の電子写真感光体梱包方法について、さらに具体的に説明する。
【００４９】
＜黒色遮光紙１＞
上記の電子写真感光体梱包方法において使用される黒色遮光紙１は、電子写真感光体８の円筒と同じ横幅を有している。また、黒色遮光紙１の厚さは電子写真感光体８の機械的保護性や、外光に対する遮光性を考慮して定められると共に、カッターで容易に切断でき、加熱ローラーでカールをつけることができるように考慮して定められる。
【００５０】
この観点から、黒色遮光紙１の厚さは、０.０５〜０.５ｍｍの範囲内の厚さにすることが好ましい。また、黒色遮光紙１の厚さが０.０５ｍｍ未満になると、電子写真感光体８に対する機械的保護性や遮光性を充分に発揮することが困難になる可能性がある。また、黒色遮光紙１の厚さが０.５ｍｍを超えると、遮光保護部材であるこの黒色遮光紙１の切断がやや困難になると共に、黒色遮光紙１のカール、及び、電子写真感光体８の梱包をスムーズに行うことができなくなる等、作業性が低下する。そこで、このような点を考慮すると、黒色遮光紙の厚さは、さらに、０.０８〜０.３ｍｍの範囲とすることが、なお、いっそう好ましい。
【００５１】
また、黒色遮光紙１の形状は、黒色遮光紙１に対するカール形成と、電子写真感光体８の梱包を連続して行うために、上述した黒紙遮光紙ドラム９のように、ロール状等の連続した形状のものを用いるのが好ましい。
【００５２】
但し、ロール状の黒色遮光紙１を用いる場合、ロール状で存在していた黒色遮光紙１の巻癖のカールの向き（図２の黒紙遮光紙のカール方向１１）と、電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３との接触により形成されるカールの向き（図２の加熱ローラーにおけるカール方向１２）とが、逆にならないように、ロール状の黒色遮光紙１の搬送向きに注意する必要がある。
【００５３】
この向きを逆にすると、ロール状の黒色遮光紙１の巻癖のカールと、電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３との接触により形成されるカールとが相殺されてしまい、加熱ローラー３により形成されるカール力のみでは、電子写真感光体８に巻付けることが困難となるからである。
【００５４】
また、一般に、ロール状の黒色遮光紙１の芯付近（中心部）は、巻癖のカールが強く、この芯から離れると巻癖のカールが弱くなる。しかし、上記の電子写真感光体梱包方法においては、元来存在する巻癖のカールの大小は、考慮する必要はない。
【００５５】
その理由は、上記の電子写真感光体梱包方法を用いることにより、平面状で巻癖のカールのついていない黒色遮光紙１に対しても、電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３との接触により、電子写真感光体８を梱包するのに十分なカール力を得ることができるため、ロール状の黒色遮光紙１の芯から離れた巻癖のカールが弱い部分でも、電子写真感光体８を梱包するのに、十分なカール力を得ることができるからである。
【００５６】
また、ロール状の黒色遮光紙１の芯付近（中心部）における巻癖のカールが強い部分では、巻癖のカールと上記の電子写真感光体梱包方法における加熱ローラー３との接触により形成するカールとが相乗効果となって、電子写真感光体８を梱包することができる十分なカール力を得ることができる。
【００５７】
＜紙送ローラー２ａ，２ｂ＞
紙送ローラー２ａは、黒色遮光紙１を、加熱ローラー３へ搬送する機能を有しており、一対の紙送ローラー２ｂは、黒色遮光紙１を、電子写真感光体８を保持している感光体保持部材６へ搬送する機能を有している。
【００５８】
＜加熱ローラー３＞
加熱ローラー３は、黒色遮光紙１を、この加熱ローラー３に接触させることで、黒色遮光紙１にカールを形成させる機能を有している。この機能により、黒色遮光紙１にカールを確実に形成することができ、粘着テープ等の粘着部材を用いずに、黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付けることが可能なカールを形成することができる。また、簡単な装置で、かつ、短時間で、黒色遮光紙１にカールを形成させることができる。
【００５９】
黒色遮光紙１にカールを形成させるための、加熱ローラー３による黒色遮光紙１の加熱は、１２０℃以上２３０℃以下で行うのが好ましい。その理由は、１２０℃未満で加熱した場合には、黒色遮光紙１のカールが十分でなく、電子写真感光体８を梱包するのが困難となるからである。また、２３０℃を超えた温度で加熱した場合には、黒色遮光紙１が焦げ付く可能性があるからである。
【００６０】
また、加熱ローラー３の直径としては、梱包する円筒形状の電子写真感光体８の直径をR、加熱ローラー３の直径をｒとすると、この加熱ローラー３の直径ｒは、Ｒ／６≦ｒ≦Ｒ／２を満足するようにするのが好ましい。
【００６１】
その理由は、加熱ローラー３の直径ｒが、ｒ＞Ｒ／２である加熱ローラー３を用いて黒色遮光紙１をカールさせた場合、黒色遮光紙１のカールが十分でなく、電子写真感光体８を梱包するのが困難となるからである。また、加熱ローラー３の直径ｒが、ｒ＜Ｒ／６である加熱ローラー３を用いて黒色遮光紙１をカールさせた場合、黒色遮光紙１のカールが非常に強く、自ら丸まってしまうため、電子写真感光体８を梱包する作業性が極めて悪くなるからである。
【００６２】
また、加熱ローラー３による黒色遮光紙１の加熱時間としては、０.５秒以上とするのが好ましい。０.５秒未満の加熱の場合には、黒色遮光紙１のカールが十分でなく、電子写真感光体８を梱包するのが困難となるからである。
【００６３】
加熱ローラー３に関しては、上述した条件を満足すれば、加熱ローラー３の材質、形状等は、どのようなものであってもよい。
【００６４】
＜紙送りガイド４＞
紙送りガイド４は、加熱ローラー３に接触してカールした黒色遮光紙１を、電子写真感光体８を梱包する場所に搬送する際に、カールした向きに自ら丸まろうとする黒色遮光紙１を、目的場所である感光体保持部材６に保持されている電子写真感光体８へ誘導するガイドである。
【００６５】
＜潤滑性粉体塗布工程５＞
潤滑性粉体塗布工程５は、潤滑性粉体の付着したローラーを、黒色遮光紙１に接触させることで、黒色遮光紙１に潤滑性粉体を塗布する工程である（図４参照）。この潤滑性粉体塗布工程５で用いられているローラーの材質や形状は、黒色遮光紙１に、適量の潤滑性粉体を塗布することができるものであれば、どのようなものであってもよい。潤滑性粉体としては、周知の材料である、例えば、ポリフッ化ビニリデン等が用いられる。
【００６６】
この潤滑性粉体塗布工程５により、黒色遮光紙１上に固体潤滑剤を塗布することで、上記の電子写真感光体８が装着される画像形成装置に備えられているクリーニングブレードの反転を防ぐことができる。また、電子写真感光体８に、あらかじめ固体潤滑剤を塗布する手間を省くことができるため、作業効率を向上することができる。
【００６７】
＜感光体保持部材６＞
感光体保持部材６は、電子写真感光体梱包装置１０において、電子写真感光体８を保持して回転させる機能を有している。この電子写真感光体梱包装置１０では、カールさせた黒色遮光紙１を電子写真感光体８の外表面全周に巻付けるのに、この電子写真感光体８を保持して回転させる必要があるためである。
【００６８】
＜カッター７＞
カッター７は、カールさせた黒色遮光紙１を搬送して、電子写真感光体８の外表面全周に一周巻付けた後、巻始め部分と巻終り部分とが重なり合うような長さで、黒色遮光紙１を切断する機能を有している。黒色遮光紙１の巻付け方向の長さは、電子写真感光体８に対して、少なくとも一周巻付けて、電子写真感光体８の感光層を覆う程度の長さであればよい。具体的には、直径３０ｍｍの電子写真感光体８においては、１００ｍｍ〜１５０ｍｍの範囲内の値にすることが好ましい。
【００６９】
＜電子写真感光体８＞
上記の電子写真感光体梱包方法で梱包される電子写真感光体８は、円筒形状である。また、上記の電子写真感光体梱包方法で梱包される電子写真感光体８の種類は問われない。この電子写真感光体８としては、電子写真感光体８の中心に位置する支持体の上に、電荷発生層、電荷輸送層を積層させて形成された積層型電子写真感光体、或いは、電荷発生材料と電荷輸送材料とが混在する単層型電子写真感光体の何れに対しても、上記の電子写真感光体梱包方法を用いることができる。
【００７０】
上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の説明では、電子写真感光体８として、フランジを備えていない標準的な電子写真感光体８を用いているが、図５に示すような、フランジ８ａを備えた電子写真感光体８に対しても、上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法が、そのまま適用できる。尚、図５は、フランジ８ａを備えた電子写真感光体８に対する梱包過程を示した斜視図であり、（ａ）は、梱包直前の状態を示し、（ｂ）は、梱包直後の状態を示している。
【００７１】
次に、上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の効果を判断するために、上述した電子写真感光体梱包方法により梱包した電子写真感光体８を用いた保存実験を行った。以下に、この保存実験の結果について、説明する。尚、上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法は、この保存実験の設定条件により限定されるものではない。
【００７２】
＜実験１＞
実験１では、電子写真感光体８として、円筒長３５７ｍｍ、外径３０ｍｍのアルミニウム円筒形状支持体の上に、周知の電荷発生層と電荷輸送層を積層した有機電子写真感光体を用いた。また、黒色遮光紙１として、３５７ｍｍの幅を有する平面状の黒色遮光紙（コニーラップ、色：ブラック、リンテック（株）製）を用いたが、その他、色上質紙（色：ブラック、紀州製紙（株）製）も使用可能である。
【００７３】
実験１では、図２に示す電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３の直径を１０ｍｍに、温度を１８０℃に設定し、２０ｍｍ／ｓの速度で黒色遮光紙１を搬送し、この黒色遮光紙にカールを形成した。
【００７４】
その後、潤滑性粉体としてポリフッ化ビニリデンを塗布した黒色遮光紙１を、電子写真感光体８に一周巻付けて梱包した後、巻始め部分と巻終り部分とが重なり合う長さである１００ｍｍで、黒色遮光紙１を切断した。
【００７５】
この黒色遮光紙１で梱包された電子写真感光体８を、この電子写真感光体８の上からエアパッキン（登録商標）を巻いた後、高温高湿（３５℃、８５％ＲＨ）条件下で１ヶ月間放置した。
【００７６】
その結果、黒色遮光紙１の巻戻りもなく、初期におけるのと同様の梱包形態を保持することができた（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００７７】
また、１ヶ月間放置後の電子写真感光体８を画像形成装置に組み込んで、画像評価を行ったところ、画像異常は見られなかった（画像評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００７８】
＜実験２＞
実験２では、黒色遮光紙１のカール向きがロールの巻き癖と逆になるように、ロール状の黒色遮光紙１を設置した。この条件以外は、上記の実験１と同じ条件である。この実験２においても、実験１と同様、高温多湿条件下で１ヶ月放置した。
【００７９】
その結果、黒色遮光紙１が巻戻る力が強く、初期と同様の梱包形態を保持することがやや困難であった（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、梱包不良気味２本、異常無し９８本）。
【００８０】
しかしながら、電子写真感光体８の上からエアパッキン（登録商標）を巻いていたことで、画像形成装置に組み込んで、画像評価を行った結果では、全く異常が見られなかった（画像評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００８１】
＜実験３＞
実験２では、潤滑性粉体であるポリフッ化ビニリデンを黒色遮光紙に塗布しないこと以外、上記の実験１と同じ条件である。この実験３においても、実験１と同様、高温多湿条件下で１ヶ月放置した。
【００８２】
その結果、黒色遮光紙１の巻戻りもなく、初期と同様の梱包形態を保持することができた（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００８３】
しかし、画像形成装置に組み込んで、画像評価を行った結果、クリーニングブレードの反転が起こった（クリーニングブレードの反転評価として、実験本数１００本に対し、ブレード反転有り５本、異常無し９５本）。
【００８４】
そこで、電子写真感光体表面に潤滑性粉体を塗布した後に、画像形成装置に組み込んで、画像評価を行った。その結果、クリーニングブレードの反転は起こらなかった。従って、実験３においても、実使用上は問題とならない結果を得ることができた。
【００８５】
次に、上記の実験と、従来例における電子写真感光体の梱包方法による結果とを比較するために、以下の比較実験を行った。
【００８６】
＜比較実験１＞
比較実験１では、黒色遮光紙１をカールさせることなく、この黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付け、粘着テープ（フィクスロンテープNo８１６、積水化学（株）製）を使用して黒色遮光紙１を固定した後、電子写真感光体８を梱包した。
【００８７】
そして、上記の実験１と同様、高温多湿条件下で１ヶ月間放置した。その結果、黒色遮光紙１の巻戻りもなく、初期と同様の梱包形態を保持することができた（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００８８】
しかし、１ヶ月間放置後の電子写真感光体８から、黒色遮光紙１を取外し、画像形成装置に組込んで画像評価を行ったところ、粘着テープの粘着剤が、電子写真感光体８に付着したことによる画像異常が見られた（画像評価として、実験本数１００本に対し、異常有り８８本、異常無し１２本）。
【００８９】
＜比較実験２＞
比較実験２では、実験１で使用した黒色遮光紙１を、カールしない状態で、電子写真感光体８に対する梱包を試みた。しかし、黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付けただけでは、黒色遮光紙１を固定することが出来ず、後工程のエアパッキン（登録商標）による梱包も、行うことが出来なかった。
【００９０】
以上より、本実施の形態における電子写真感光体梱包方法によれば、黒色遮光紙１に、あらかじめカールを形成しておくことで、粘着テープを用いずに電子写真感光体８を梱包することができる。
【００９１】
また、梱包を外すのに、粘着テープを剥がすというような作業を行うことがないので、粘着テープの粘着剤が電子写真感光体８に対して付着することにより生じる不具合を、防止することができる。
【００９２】
従って、本実施の形態における電子写真感光体梱包方法によって電子写真感光体８を梱包することにより、該電子写真感光体８が装着される画像形成装置における画像特性を、向上させることができるのみならず、電子写真感光体８の梱包、及び、交換における作業効率を、著しく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【００９３】
【図１】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の（ａ）は、梱包直前の状態、（ｂ）は、梱包直後の状態を示した斜視図である。
【図２】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の説明図である。
【図３】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の説明図である。
【図４】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法で使用される電子写真感光体梱包装置の潤滑性粉体塗布工程の動作状態を示した斜視図である。
【図５】フランジを備えた電子写真感光体に対する本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の（ａ）は、梱包直前の状態、（ｂ）は、梱包直後の状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【００９４】
１ 黒紙遮光紙
２ａ 紙送ローラー
２ｂ １対の紙送ローラー
３ 加熱ローラー
４ 紙送りガイド
５ 潤滑性粉体塗布工程
６ 感光体保持部材
７ カッター
８ 電子写真感光体
８ａ フランジ
９ 黒紙遮光紙ドラム
１０ 電子写真感光体梱包装置
１１ 黒紙遮光紙のカール方向
１２ 加熱ローラーにおけるカール方向
【技術分野】
【０００１】
本発明は、円筒形状の電子写真感光体を保護するための黒色遮光紙を用いた電子写真感光体梱包方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
カールソンプロセス方式等を採用した電子写真装置に用いられる電子写真感光体は、円筒状基体の表面に、光導電性材料を含有する感光層を形成して構成されている。この感光層は、電子写真プロセスにおいて光学像を静電潜像に変換する等、重要な役割を有することから、機械的な損傷や外光による劣化等から感光層を保護する必要があり、このため、この感光層を備えた電子写真感光体に対して、黒色遮光紙を巻付けて梱包する方法が一般に採用されている。
【０００３】
一方、上記のカールソンプロセス方式等を採用した電子写真装置には、通常、帯電器、現像器、クリーナー等が備えられている。このクリーナーとしては、板状のゴム材を使用したクリーニングブレードが、簡便な構成で、且つ、クリーニング効率が高いため、広く採用されている。
【０００４】
上記の電子写真装置において、このクリーニングブレードは、その端辺部が電子写真感光体の表面に当接されて使用され、その当接部分を電子写真感光体の回転方向と逆方向へ向くように設置されている。そのため、電子写真装置における最初の動作時に、クリーニングブレードが反転しやすいという弱点がある。
【０００５】
そこで、このブレード反転を防止ためには、このブレードと電子写真感光体との接触部に潤滑性粉体を介在させるようにするのが効果的であり、そのため、電子写真感光体表面上に潤滑性粉体を塗布する、或いは、電子写真感光体の保護シートである黒色遮光紙に、潤滑性粉体を塗布することが行われている。
【０００６】
従って、上記のカールソンプロセス方式等を採用した電子写真装置では、感光層を備えた電子写真感光体に対して、この感光層そのものを械的な損傷や外光による劣化等から保護すると共に、電子写真感光体が最初に動作する時に、クリーニングブレードが反転するのを防止する観点から、潤滑性粉体を塗布した黒色遮光紙を、電子写真感光体に巻付けて梱包する、或いは、電子写真感光体表面上に潤滑性粉体を塗布した電子写真感光体に、黒色遮光紙を巻付けて梱包する方法が、多く採用されている。
【０００７】
これらの、潤滑性粉体を塗布した黒色遮光紙を電子写真感光体に巻付けて梱包する方法、或いは、電子写真感光体表面上に潤滑性粉体を塗布した電子写真感光体に黒色遮光紙を巻付けて梱包する方法のいずれにおいても、上記の黒色遮光紙としては、黒色の上質紙が多く使用されている。また、巻付けた黒色遮光紙の固定には、シール或いはテープ等の粘着性物質を有する部材が、一般的に用いられている（例えば、特許文献１参照）。
【特許文献１】特開２００５−１９５８５３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、特許文献１に記載されているような電子写真感光体梱包方法における、巻付けた黒色遮光紙を、シール、或いは、テープ等の粘着性物質を有する部材で固定する梱包方法では、梱包された状態の電子写真感光体から、黒色遮光紙を取外す際に、或いは、高温高湿にて長時間保管した際に、黒色遮光紙を固定するための粘着テープの粘着剤が、電子写真感光体表面に対して付着しやすいという問題がある。
【０００９】
即ち、電子写真感光体に対して、黒色遮光紙を巻付けて固定して保管するのに、通常、粘着テープが使用される。そして、そのような粘着テープをはがして、黒色遮光紙を取外した場合に、粘着テープにおける粘着剤(主剤や粘着付与剤)、或いは、粘着剤に含まれる低分子量物等が、電子写真感光体表面に付着して、画像不良の原因となるという問題である。
【００１０】
また、高温高湿にて長時間保管した場合に、粘着テープにおける粘着剤（主剤や粘着付与剤）、或いは、粘着剤に含まれる低分子量物等が、黒色遮光紙を浸透して、電子写真感光体表面に付着し、画像不良の原因となるという問題もある。そのため、黒色遮光紙の固定に粘着テープを用いずに、黒色遮光紙で電子写真感光体を梱包することが要望されていた。
【００１１】
そこで、この発明は、上記の要望に対処するためになされたものであって、粘着テープを用いずに、光導電性材料を含有する感光層を備えた電子写真感光体を梱包する電子写真感光体梱包方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明の電子写真感光体梱包方法は、円筒状基体の表面に光導電性材料で形成された感光層を備える電子写真感光体に、黒色遮光紙を巻付けて梱包する電子写真感光体梱包方法である。この電子写真感光体梱包方法は、黒色遮光紙にあらかじめカール（湾曲）を形成した後、該黒色遮光紙を電子写真感光体に巻付けることを特徴としている。
【００１３】
この電子写真感光体梱包方法によれば、黒色遮光紙に、あらかじめ、後述するような感光体の外径以下のカールを形成しておくことで、粘着テープを用いずに電子写真感光体を梱包することができる。
【００１４】
また、梱包を外すのに、粘着テープを剥がすというような作業を行うことがないので、粘着テープの粘着剤が電子写真感光体に対して付着することにより生じる不具合を、防止することができる。
【００１５】
従って、上記の電子写真感光体梱包方法によって電子写真感光体を梱包することにより、該電子写真感光体が装着される画像形成装置における画像特性を、向上させることができるのみならず、該電子写真感光体の梱包、及び、交換における作業効率を、著しく向上することができる。
【００１６】
上記の電子写真感光体梱包方法において、黒色遮光紙を円筒形の加熱ローラーに接触させることによって黒色遮光紙を加熱して、該黒色遮光紙にカールを形成するようにするのが好適である。
【００１７】
このようにすることにより、黒色遮光紙にカールを確実に形成することができ、粘着テープ等の粘着部材を用いずに、黒色遮光紙を電子写真感光体に巻きつけることが可能なカールを、形成することができる。また、その状態で保管した際に、巻戻りもなく、長期間にわたって巻付けた状態を保持可能な電子写真感光体の梱包をすることができる。また、短時間で、簡単に黒色遮光紙にカールを形成することができる。
【００１８】
また、上記の加熱ローラーを用いた電子写真感光体梱包方法において、加熱ローラーによる黒色遮光紙の加熱温度を、１２０℃以上２３０℃以下とするのが好適である。
【００１９】
その理由は、１２０℃未満で加熱した場合には、黒色遮光紙のカールが十分でなく、電子写真感光体を梱包するのが困難となるからである。また、２３０℃を超えた温度で加熱した場合には、黒色遮光紙１が焦げ付く可能性があるからである。
【００２０】
また、上記の加熱ローラーを用いた電子写真感光体梱包方法において、電子写真感光体の直径をR、加熱ローラーの直径をｒとすると、該加熱ローラーの直径ｒが、Ｒ／６≦ｒ≦Ｒ／２を満足するようにするのが好適である。
【００２１】
その理由は、加熱ローラーの直径ｒが、ｒ＞Ｒ／２である加熱ローラーを用いて黒色遮光紙をカールさせた場合、黒色遮光紙のカールが十分でなく、電子写真感光体を梱包するのが困難となるからである。また、加熱ローラーの直径ｒが、ｒ＜Ｒ／６である加熱ローラーを用いて黒色遮光紙をカールさせた場合、黒色遮光紙のカールが非常に強く、自ら丸まってしまうため、電子写真感光体を梱包する作業性が極めて悪くなるからである。
【００２２】
また、上記の加熱ローラーを用いた電子写真感光体梱包方法において、ロール状の黒色遮光紙を用いる場合、該黒色遮光紙の巻癖のカールの向きと、加熱ローラーの接触により形成されるカールの向きとが、同じとなるように、該黒色遮光紙を加熱ローラーに接触させるのが好適である。
【００２３】
その理由は、この向きを逆にすると、巻癖のカールと加熱ローラーとの接触により形成されるカールとが相殺されてしまい、加熱ローラーにより形成されるカール力のみでは、電子写真感光体に巻付けることが困難となるからである。
【００２４】
また、上記の各電子写真感光体梱包方法において、黒色遮光紙にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙を電子写真感光体に巻付ける前に、潤滑性粉体の付着したローラーを該黒色遮光紙に接触させることによって、該黒色遮光紙に潤滑性粉体を塗布するようにするのが好ましい。
【００２５】
このようにすることにより、黒色遮光紙上に固体潤滑剤を塗布することで、上記の電子写真感光体が装着される画像形成装置に備えられているクリーニングブレードの反転を防ぐことができる。また、電子写真感光体に、あらかじめ固体潤滑剤を塗布する手間を省くことができるため、作業効率を向上することができる。
【００２６】
また、上述したいずれか１つの電子写真感光体梱包方法を用いて、電子写真感光体を梱包して、この電子写真感光体を、梱包された電子写真感光体とすることができる。
【発明の効果】
【００２７】
本発明によれば、黒色遮光紙に、あらかじめカールを形成しておくことで、粘着テープ等の粘着部材を用いずに電子写真感光体を梱包することができる。
【００２８】
また、梱包を外すのに、粘着テープを剥がすというような作業を行うことがないので、粘着テープの粘着剤が電子写真感光体に対して付着することにより生じる不具合を、防止することができる。
【００２９】
従って、上記の電子写真感光体梱包方法によって電子写真感光体を梱包することにより、該電子写真感光体が装着される画像形成装置における画像特性を、向上させることができるのみならず、電子写真感光体の梱包、及び、交換における作業効率を、著しく向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３０】
次に、本発明の実施の形態における電子写真感光体梱包方法について、図面に基づき詳細に説明する。図１は、本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の梱包過程を示した斜視図であり、（ａ）は、梱包直前の状態を示し、（ｂ）は、梱包直後の状態を示している。
【００３１】
本実施の形態における電子写真感光体梱包方法は、図１に示すように、電子写真感光体８の周囲に、あらかじめカールさせた黒色遮光紙１を巻付ける梱包方法である。この本実施の形態における電子写真感光体梱包方法は、後述するように、黒色遮光紙１の固定に、粘着テープ等の粘着部材を用いないことを特徴としている。
【００３２】
図２は、上記の電子写真感光体梱包方法を具体的に実現する方法を説明した説明図である。本実施の形態における電子写真感光体梱包方法では、図２に示すような、電子写真感光体梱包装置１０を用いる。尚、図３は、電子写真感光体梱包装置１０に備えられている後述する感光体保持部材６の斜視図である。また、図４は、同じく、電子写真感光体梱包装置１０に備えられている後述する潤滑性粉体塗布工程５の動作の状態を示した斜視図である。
【００３３】
図２において、電子写真感光体梱包装置１０は、黒紙遮光紙ドラム９、２つの紙送ローラー２ａ、加熱ローラー３、１対の紙送ローラー２ｂ、紙送りガイド４、潤滑性粉体付着部５、感光体保持部材６、及び、カッター７で構成されている。尚、図２では、向かって左方向が前方、右方向が後方である。
【００３４】
上記の電子写真感光体梱包装置１０は、次のように、構成されている。即ち、円筒形状の電子写真感光体８を、該電子写真感光体８の円筒形の中心軸が水平になるようにして保持している感光体保持部材６と、中心軸が水平な加熱ローラー３とが、水平に離間して対向していると共に、感光体保持部材６が前方に、加熱ローラー３が後方に位置してそれぞれ配置されている。
【００３５】
この内、感光体保持部材６が保持する電子写真感光体８の中心軸には、モータの軸が結合され、このモータにより、電子写真感光体８は、図２において、反時計方向に回転する。
【００３６】
また、感光体保持部材６と、加熱ローラー３との間には、加熱ローラー３の上端と、感光体保持部材６に保持されている電子写真感光体８の上端とを結ぶ搬送路が、形成されている。この搬送路は、黒紙遮光紙１を搬送するのに用いられる。
【００３７】
この搬送路の途中における加熱ローラー３側には、１対の紙送ローラー２ｂが、上記の搬送路を挟んで上下に配置され、また、上記の搬送路の途中における感光体保持部材６側には、上下に配置された１対のローラーを備えた潤滑性粉体塗布工程５が、設けられている。
【００３８】
また、加熱ローラー３、１対の紙送ローラー２ｂ、潤滑性粉体塗布工程５、及び、感光体保持部材６の各間には、黒紙遮光紙１の搬送路に沿って、該搬送路を挟んで上下に１対の紙送りガイド４が、それぞれ配置されている。
【００３９】
また、加熱ローラー３の下には、該加熱ローラー３の下端と上端を接する紙送ローラー２ａが配置され、この紙送ローラー２ａの前方に、もう１つの紙送ローラー２ａが配置されている。そして、このもう１つの紙送ローラー２ａの下方に離間して、黒紙遮光紙ドラム９が配置されている。この黒紙遮光紙ドラム９には、黒紙遮光紙１が、該黒紙遮光紙１の内側面を黒紙遮光紙ドラム９の中心軸に向けて、巻付けられている。
【００４０】
上記の電子写真感光体梱包装置１０では、黒紙遮光紙ドラム９から引き出された黒紙遮光紙１は、該黒紙遮光紙１の外側面を、上記のもう１つの紙送ローラー２ａの斜め上端から上端にかけて接面させて通過すると共に、加熱ローラー３へ向かって進む。
【００４１】
そして、黒紙遮光紙１は、この加熱ローラー３と紙送ローラー２ａとが接している接点を経て、該加熱ローラー３の半周にわたって、黒紙遮光紙１の内側面を加熱ローラー３に接面して巻きつけられて通過する。この際に、黒紙遮光紙１が過熱されて、該黒紙遮光紙１にカールが形成される。
【００４２】
加熱ローラー３に接面して巻きつけられた黒紙遮光紙１は、紙送りガイド４、１対の紙送ローラー２ｂ、紙送りガイド４、潤滑性粉体塗布工程５を経て、黒紙遮光紙１の内面に潤滑性粉体が塗布され、紙送りガイド４を経て、感光体保持部材６に保持されている電子写真感光体８に巻付けられた後、切断され、この切断により、電子写真感光体８に対する梱包が完了する。
【００４３】
即ち、上記の電子写真感光体梱包装置１０は、主として、黒紙遮光紙ドラム９（ロール状黒紙遮光紙保持手段）と、該黒紙遮光紙ドラム９から引き出された黒紙遮光紙１を接触させて過熱してカールを形成する加熱ローラー３（ローラー状加熱手段）と、電子写真感光体８を保持して回転させると共に、カールが形成された黒紙遮光紙１を、該電子写真感光体８へ、該電子写真感光体８の表面を少なくとも一周して巻付けする感光体保持部材６（感光体保持手段）と、該巻付けが完了した黒紙遮光紙１を切断するカッター７（黒紙遮光紙切断手段）と、を備えて構成されている。
【００４４】
次に、図２に示す上記の電子写真感光体梱包装置１０を用いた本実施の形態における電子写真感光体梱包方法について、具体的に説明する。上記の電子写真感光体梱包装置１０において、まず、電子写真感光体８の円筒長と同じ幅を有する黒色遮光紙１の黒紙遮光紙ドラム９を用意し、紙送ローラー２ａにのせて搬送する。
【００４５】
次に、黒色遮光紙１を円筒形の加熱ローラー３に接触させることによって加熱し、黒色遮光紙１にカールを形成させる。そして、次に、紙送りガイド４、１対の紙送ローラー２ｂを用いて黒色遮光紙１を潤滑性粉体塗布工程５へ搬送し、黒色遮光紙１に潤滑性粉体を塗布する。
【００４６】
さらに、黒色遮光紙１を感光体保持部材６に固定された電子写真感光体８の外表面に誘導すると、カールされた黒色遮光紙１のカール力のみで、電子写真感光体８を巻き始める。
【００４７】
そして、最後に黒色遮光紙１の巻始め部が巻き終り部と重なり合うような長さまで黒色遮光紙１を巻付けたところで、カッター７で黒色遮光紙１を切断して、黒色遮光紙１の電子写真感光体８への巻付けを完了する。
【００４８】
次に、上記の電子写真感光体梱包装置１０における各構成要素について説明すると共に、上記の電子写真感光体梱包方法について、さらに具体的に説明する。
【００４９】
＜黒色遮光紙１＞
上記の電子写真感光体梱包方法において使用される黒色遮光紙１は、電子写真感光体８の円筒と同じ横幅を有している。また、黒色遮光紙１の厚さは電子写真感光体８の機械的保護性や、外光に対する遮光性を考慮して定められると共に、カッターで容易に切断でき、加熱ローラーでカールをつけることができるように考慮して定められる。
【００５０】
この観点から、黒色遮光紙１の厚さは、０.０５〜０.５ｍｍの範囲内の厚さにすることが好ましい。また、黒色遮光紙１の厚さが０.０５ｍｍ未満になると、電子写真感光体８に対する機械的保護性や遮光性を充分に発揮することが困難になる可能性がある。また、黒色遮光紙１の厚さが０.５ｍｍを超えると、遮光保護部材であるこの黒色遮光紙１の切断がやや困難になると共に、黒色遮光紙１のカール、及び、電子写真感光体８の梱包をスムーズに行うことができなくなる等、作業性が低下する。そこで、このような点を考慮すると、黒色遮光紙の厚さは、さらに、０.０８〜０.３ｍｍの範囲とすることが、なお、いっそう好ましい。
【００５１】
また、黒色遮光紙１の形状は、黒色遮光紙１に対するカール形成と、電子写真感光体８の梱包を連続して行うために、上述した黒紙遮光紙ドラム９のように、ロール状等の連続した形状のものを用いるのが好ましい。
【００５２】
但し、ロール状の黒色遮光紙１を用いる場合、ロール状で存在していた黒色遮光紙１の巻癖のカールの向き（図２の黒紙遮光紙のカール方向１１）と、電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３との接触により形成されるカールの向き（図２の加熱ローラーにおけるカール方向１２）とが、逆にならないように、ロール状の黒色遮光紙１の搬送向きに注意する必要がある。
【００５３】
この向きを逆にすると、ロール状の黒色遮光紙１の巻癖のカールと、電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３との接触により形成されるカールとが相殺されてしまい、加熱ローラー３により形成されるカール力のみでは、電子写真感光体８に巻付けることが困難となるからである。
【００５４】
また、一般に、ロール状の黒色遮光紙１の芯付近（中心部）は、巻癖のカールが強く、この芯から離れると巻癖のカールが弱くなる。しかし、上記の電子写真感光体梱包方法においては、元来存在する巻癖のカールの大小は、考慮する必要はない。
【００５５】
その理由は、上記の電子写真感光体梱包方法を用いることにより、平面状で巻癖のカールのついていない黒色遮光紙１に対しても、電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３との接触により、電子写真感光体８を梱包するのに十分なカール力を得ることができるため、ロール状の黒色遮光紙１の芯から離れた巻癖のカールが弱い部分でも、電子写真感光体８を梱包するのに、十分なカール力を得ることができるからである。
【００５６】
また、ロール状の黒色遮光紙１の芯付近（中心部）における巻癖のカールが強い部分では、巻癖のカールと上記の電子写真感光体梱包方法における加熱ローラー３との接触により形成するカールとが相乗効果となって、電子写真感光体８を梱包することができる十分なカール力を得ることができる。
【００５７】
＜紙送ローラー２ａ，２ｂ＞
紙送ローラー２ａは、黒色遮光紙１を、加熱ローラー３へ搬送する機能を有しており、一対の紙送ローラー２ｂは、黒色遮光紙１を、電子写真感光体８を保持している感光体保持部材６へ搬送する機能を有している。
【００５８】
＜加熱ローラー３＞
加熱ローラー３は、黒色遮光紙１を、この加熱ローラー３に接触させることで、黒色遮光紙１にカールを形成させる機能を有している。この機能により、黒色遮光紙１にカールを確実に形成することができ、粘着テープ等の粘着部材を用いずに、黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付けることが可能なカールを形成することができる。また、簡単な装置で、かつ、短時間で、黒色遮光紙１にカールを形成させることができる。
【００５９】
黒色遮光紙１にカールを形成させるための、加熱ローラー３による黒色遮光紙１の加熱は、１２０℃以上２３０℃以下で行うのが好ましい。その理由は、１２０℃未満で加熱した場合には、黒色遮光紙１のカールが十分でなく、電子写真感光体８を梱包するのが困難となるからである。また、２３０℃を超えた温度で加熱した場合には、黒色遮光紙１が焦げ付く可能性があるからである。
【００６０】
また、加熱ローラー３の直径としては、梱包する円筒形状の電子写真感光体８の直径をR、加熱ローラー３の直径をｒとすると、この加熱ローラー３の直径ｒは、Ｒ／６≦ｒ≦Ｒ／２を満足するようにするのが好ましい。
【００６１】
その理由は、加熱ローラー３の直径ｒが、ｒ＞Ｒ／２である加熱ローラー３を用いて黒色遮光紙１をカールさせた場合、黒色遮光紙１のカールが十分でなく、電子写真感光体８を梱包するのが困難となるからである。また、加熱ローラー３の直径ｒが、ｒ＜Ｒ／６である加熱ローラー３を用いて黒色遮光紙１をカールさせた場合、黒色遮光紙１のカールが非常に強く、自ら丸まってしまうため、電子写真感光体８を梱包する作業性が極めて悪くなるからである。
【００６２】
また、加熱ローラー３による黒色遮光紙１の加熱時間としては、０.５秒以上とするのが好ましい。０.５秒未満の加熱の場合には、黒色遮光紙１のカールが十分でなく、電子写真感光体８を梱包するのが困難となるからである。
【００６３】
加熱ローラー３に関しては、上述した条件を満足すれば、加熱ローラー３の材質、形状等は、どのようなものであってもよい。
【００６４】
＜紙送りガイド４＞
紙送りガイド４は、加熱ローラー３に接触してカールした黒色遮光紙１を、電子写真感光体８を梱包する場所に搬送する際に、カールした向きに自ら丸まろうとする黒色遮光紙１を、目的場所である感光体保持部材６に保持されている電子写真感光体８へ誘導するガイドである。
【００６５】
＜潤滑性粉体塗布工程５＞
潤滑性粉体塗布工程５は、潤滑性粉体の付着したローラーを、黒色遮光紙１に接触させることで、黒色遮光紙１に潤滑性粉体を塗布する工程である（図４参照）。この潤滑性粉体塗布工程５で用いられているローラーの材質や形状は、黒色遮光紙１に、適量の潤滑性粉体を塗布することができるものであれば、どのようなものであってもよい。潤滑性粉体としては、周知の材料である、例えば、ポリフッ化ビニリデン等が用いられる。
【００６６】
この潤滑性粉体塗布工程５により、黒色遮光紙１上に固体潤滑剤を塗布することで、上記の電子写真感光体８が装着される画像形成装置に備えられているクリーニングブレードの反転を防ぐことができる。また、電子写真感光体８に、あらかじめ固体潤滑剤を塗布する手間を省くことができるため、作業効率を向上することができる。
【００６７】
＜感光体保持部材６＞
感光体保持部材６は、電子写真感光体梱包装置１０において、電子写真感光体８を保持して回転させる機能を有している。この電子写真感光体梱包装置１０では、カールさせた黒色遮光紙１を電子写真感光体８の外表面全周に巻付けるのに、この電子写真感光体８を保持して回転させる必要があるためである。
【００６８】
＜カッター７＞
カッター７は、カールさせた黒色遮光紙１を搬送して、電子写真感光体８の外表面全周に一周巻付けた後、巻始め部分と巻終り部分とが重なり合うような長さで、黒色遮光紙１を切断する機能を有している。黒色遮光紙１の巻付け方向の長さは、電子写真感光体８に対して、少なくとも一周巻付けて、電子写真感光体８の感光層を覆う程度の長さであればよい。具体的には、直径３０ｍｍの電子写真感光体８においては、１００ｍｍ〜１５０ｍｍの範囲内の値にすることが好ましい。
【００６９】
＜電子写真感光体８＞
上記の電子写真感光体梱包方法で梱包される電子写真感光体８は、円筒形状である。また、上記の電子写真感光体梱包方法で梱包される電子写真感光体８の種類は問われない。この電子写真感光体８としては、電子写真感光体８の中心に位置する支持体の上に、電荷発生層、電荷輸送層を積層させて形成された積層型電子写真感光体、或いは、電荷発生材料と電荷輸送材料とが混在する単層型電子写真感光体の何れに対しても、上記の電子写真感光体梱包方法を用いることができる。
【００７０】
上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の説明では、電子写真感光体８として、フランジを備えていない標準的な電子写真感光体８を用いているが、図５に示すような、フランジ８ａを備えた電子写真感光体８に対しても、上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法が、そのまま適用できる。尚、図５は、フランジ８ａを備えた電子写真感光体８に対する梱包過程を示した斜視図であり、（ａ）は、梱包直前の状態を示し、（ｂ）は、梱包直後の状態を示している。
【００７１】
次に、上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の効果を判断するために、上述した電子写真感光体梱包方法により梱包した電子写真感光体８を用いた保存実験を行った。以下に、この保存実験の結果について、説明する。尚、上述した本実施の形態における電子写真感光体梱包方法は、この保存実験の設定条件により限定されるものではない。
【００７２】
＜実験１＞
実験１では、電子写真感光体８として、円筒長３５７ｍｍ、外径３０ｍｍのアルミニウム円筒形状支持体の上に、周知の電荷発生層と電荷輸送層を積層した有機電子写真感光体を用いた。また、黒色遮光紙１として、３５７ｍｍの幅を有する平面状の黒色遮光紙（コニーラップ、色：ブラック、リンテック（株）製）を用いたが、その他、色上質紙（色：ブラック、紀州製紙（株）製）も使用可能である。
【００７３】
実験１では、図２に示す電子写真感光体梱包装置１０における加熱ローラー３の直径を１０ｍｍに、温度を１８０℃に設定し、２０ｍｍ／ｓの速度で黒色遮光紙１を搬送し、この黒色遮光紙にカールを形成した。
【００７４】
その後、潤滑性粉体としてポリフッ化ビニリデンを塗布した黒色遮光紙１を、電子写真感光体８に一周巻付けて梱包した後、巻始め部分と巻終り部分とが重なり合う長さである１００ｍｍで、黒色遮光紙１を切断した。
【００７５】
この黒色遮光紙１で梱包された電子写真感光体８を、この電子写真感光体８の上からエアパッキン（登録商標）を巻いた後、高温高湿（３５℃、８５％ＲＨ）条件下で１ヶ月間放置した。
【００７６】
その結果、黒色遮光紙１の巻戻りもなく、初期におけるのと同様の梱包形態を保持することができた（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００７７】
また、１ヶ月間放置後の電子写真感光体８を画像形成装置に組み込んで、画像評価を行ったところ、画像異常は見られなかった（画像評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００７８】
＜実験２＞
実験２では、黒色遮光紙１のカール向きがロールの巻き癖と逆になるように、ロール状の黒色遮光紙１を設置した。この条件以外は、上記の実験１と同じ条件である。この実験２においても、実験１と同様、高温多湿条件下で１ヶ月放置した。
【００７９】
その結果、黒色遮光紙１が巻戻る力が強く、初期と同様の梱包形態を保持することがやや困難であった（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、梱包不良気味２本、異常無し９８本）。
【００８０】
しかしながら、電子写真感光体８の上からエアパッキン（登録商標）を巻いていたことで、画像形成装置に組み込んで、画像評価を行った結果では、全く異常が見られなかった（画像評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００８１】
＜実験３＞
実験２では、潤滑性粉体であるポリフッ化ビニリデンを黒色遮光紙に塗布しないこと以外、上記の実験１と同じ条件である。この実験３においても、実験１と同様、高温多湿条件下で１ヶ月放置した。
【００８２】
その結果、黒色遮光紙１の巻戻りもなく、初期と同様の梱包形態を保持することができた（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００８３】
しかし、画像形成装置に組み込んで、画像評価を行った結果、クリーニングブレードの反転が起こった（クリーニングブレードの反転評価として、実験本数１００本に対し、ブレード反転有り５本、異常無し９５本）。
【００８４】
そこで、電子写真感光体表面に潤滑性粉体を塗布した後に、画像形成装置に組み込んで、画像評価を行った。その結果、クリーニングブレードの反転は起こらなかった。従って、実験３においても、実使用上は問題とならない結果を得ることができた。
【００８５】
次に、上記の実験と、従来例における電子写真感光体の梱包方法による結果とを比較するために、以下の比較実験を行った。
【００８６】
＜比較実験１＞
比較実験１では、黒色遮光紙１をカールさせることなく、この黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付け、粘着テープ（フィクスロンテープNo８１６、積水化学（株）製）を使用して黒色遮光紙１を固定した後、電子写真感光体８を梱包した。
【００８７】
そして、上記の実験１と同様、高温多湿条件下で１ヶ月間放置した。その結果、黒色遮光紙１の巻戻りもなく、初期と同様の梱包形態を保持することができた（梱包状態評価として、実験本数１００本に対し、異常無し１００本）。
【００８８】
しかし、１ヶ月間放置後の電子写真感光体８から、黒色遮光紙１を取外し、画像形成装置に組込んで画像評価を行ったところ、粘着テープの粘着剤が、電子写真感光体８に付着したことによる画像異常が見られた（画像評価として、実験本数１００本に対し、異常有り８８本、異常無し１２本）。
【００８９】
＜比較実験２＞
比較実験２では、実験１で使用した黒色遮光紙１を、カールしない状態で、電子写真感光体８に対する梱包を試みた。しかし、黒色遮光紙１を電子写真感光体８に巻付けただけでは、黒色遮光紙１を固定することが出来ず、後工程のエアパッキン（登録商標）による梱包も、行うことが出来なかった。
【００９０】
以上より、本実施の形態における電子写真感光体梱包方法によれば、黒色遮光紙１に、あらかじめカールを形成しておくことで、粘着テープを用いずに電子写真感光体８を梱包することができる。
【００９１】
また、梱包を外すのに、粘着テープを剥がすというような作業を行うことがないので、粘着テープの粘着剤が電子写真感光体８に対して付着することにより生じる不具合を、防止することができる。
【００９２】
従って、本実施の形態における電子写真感光体梱包方法によって電子写真感光体８を梱包することにより、該電子写真感光体８が装着される画像形成装置における画像特性を、向上させることができるのみならず、電子写真感光体８の梱包、及び、交換における作業効率を、著しく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【００９３】
【図１】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の（ａ）は、梱包直前の状態、（ｂ）は、梱包直後の状態を示した斜視図である。
【図２】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の説明図である。
【図３】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の説明図である。
【図４】本実施の形態における電子写真感光体梱包方法で使用される電子写真感光体梱包装置の潤滑性粉体塗布工程の動作状態を示した斜視図である。
【図５】フランジを備えた電子写真感光体に対する本実施の形態における電子写真感光体梱包方法の（ａ）は、梱包直前の状態、（ｂ）は、梱包直後の状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【００９４】
１ 黒紙遮光紙
２ａ 紙送ローラー
２ｂ １対の紙送ローラー
３ 加熱ローラー
４ 紙送りガイド
５ 潤滑性粉体塗布工程
６ 感光体保持部材
７ カッター
８ 電子写真感光体
８ａ フランジ
９ 黒紙遮光紙ドラム
１０ 電子写真感光体梱包装置
１１ 黒紙遮光紙のカール方向
１２ 加熱ローラーにおけるカール方向
【特許請求の範囲】
【請求項１】
円筒状基体の表面に光導電性材料で形成された感光層を備える電子写真感光体に、黒色遮光紙を巻付けて梱包する電子写真感光体梱包方法であって、
前記黒色遮光紙にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙を前記電子写真感光体に巻付けることを特徴とする電子写真感光体梱包方法。
【請求項２】
請求項１記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記黒色遮光紙を円筒形の加熱ローラーに接触させることによって加熱して、該黒色遮光紙に前記カールを形成する電子写真感光体梱包方法。
【請求項３】
請求項２記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記加熱ローラーによる前記黒色遮光紙の加熱温度は、１２０℃以上２３０℃以下とした電子写真感光体梱包方法。
【請求項４】
請求項２または３記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記電子写真感光体の直径をR、前記加熱ローラーの直径をｒとすると、該加熱ローラー３の直径ｒは、Ｒ／６≦ｒ≦Ｒ／２を満足する電子写真感光体梱包方法。
【請求項５】
請求項２〜４のいずれか１項に記載の電子写真感光体梱包方法において、
ロール状の前記黒色遮光紙を用いる場合、該黒色遮光紙の巻癖のカールの向きと、前記加熱ローラーの接触により形成されるカールの向きとが、同じとなるように、該黒色遮光紙を前記加熱ローラーに接触させる電子写真感光体梱包方法。
【請求項６】
請求項１〜５のいずれか１項に記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記黒色遮光紙にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙を前記電子写真感光体に巻付ける前に、潤滑性粉体の付着したローラーを該黒色遮光紙に接触させることによって、該黒色遮光紙に前記潤滑性粉体を塗布する電子写真感光体梱包方法。
【請求項７】
請求項１〜６のいずれか１項に記載の電子写真感光体梱包方法を用いて梱包された電子写真感光体。
【請求項１】
円筒状基体の表面に光導電性材料で形成された感光層を備える電子写真感光体に、黒色遮光紙を巻付けて梱包する電子写真感光体梱包方法であって、
前記黒色遮光紙にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙を前記電子写真感光体に巻付けることを特徴とする電子写真感光体梱包方法。
【請求項２】
請求項１記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記黒色遮光紙を円筒形の加熱ローラーに接触させることによって加熱して、該黒色遮光紙に前記カールを形成する電子写真感光体梱包方法。
【請求項３】
請求項２記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記加熱ローラーによる前記黒色遮光紙の加熱温度は、１２０℃以上２３０℃以下とした電子写真感光体梱包方法。
【請求項４】
請求項２または３記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記電子写真感光体の直径をR、前記加熱ローラーの直径をｒとすると、該加熱ローラー３の直径ｒは、Ｒ／６≦ｒ≦Ｒ／２を満足する電子写真感光体梱包方法。
【請求項５】
請求項２〜４のいずれか１項に記載の電子写真感光体梱包方法において、
ロール状の前記黒色遮光紙を用いる場合、該黒色遮光紙の巻癖のカールの向きと、前記加熱ローラーの接触により形成されるカールの向きとが、同じとなるように、該黒色遮光紙を前記加熱ローラーに接触させる電子写真感光体梱包方法。
【請求項６】
請求項１〜５のいずれか１項に記載の電子写真感光体梱包方法において、
前記黒色遮光紙にあらかじめカールを形成した後、該黒色遮光紙を前記電子写真感光体に巻付ける前に、潤滑性粉体の付着したローラーを該黒色遮光紙に接触させることによって、該黒色遮光紙に前記潤滑性粉体を塗布する電子写真感光体梱包方法。
【請求項７】
請求項１〜６のいずれか１項に記載の電子写真感光体梱包方法を用いて梱包された電子写真感光体。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１０−１０５６８２（Ｐ２０１０−１０５６８２Ａ）
【公開日】平成２２年５月１３日（２０１０．５．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２７８４３１（Ｐ２００８−２７８４３１）
【出願日】平成２０年１０月２９日（２００８．１０．２９）
【出願人】（０００００５０４９）シャープ株式会社 (33,933)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年５月１３日（２０１０．５．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１０月２９日（２００８．１０．２９）
【出願人】（０００００５０４９）シャープ株式会社 (33,933)
【Ｆターム（参考）】
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