説明

電子写真装置用のローラの表面検査方法及び表面検査装置

【課題】電子写真装置用のローラの表面における、緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラ、微妙なコントラストを効率的に検出する。
【解決手段】電子写真装置用のローラ1の表面を照明し、ローラ1を軸周りに回転させた状態で、ローラ1の軸方向に沿って複数の画素4が配列されたラインセンサー11によって前記表面を撮像する第1ステップと、ラインセンサー11の1つの画素4が出力する像情報信号に、この1つの画素4と連続する複数の画素4からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して1つの画素4における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する第2ステップと、画像処理された結果に基づいてローラ1の表面状態を判定する第3ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられるローラの表面検査方法及び表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置用のローラの外観検査では、検査対象であるローラの表面をイメージセンサーによって撮像し、得られた画像データに対してノイズの低減、輪郭強調等の任意の画像処理を施している。これによって、画像データにおける欠陥部分を抽出するという手法が広く行われてきた。このときに用いられるカメラとしては、例えば図6に示すように構成されており、カメラ102に装着されたレンズ103を介して、複数の画素104がライン状に配列されたラインセンサーによって、ローラ101の表面状態を像情報として検知する。そして、画素104の数に対応した像情報信号S1を出力し、この複数の像情報信号S1が画像処理手段5に送られ、画像処理部105で処理された後に、検査対象であるローラ101の表面状態を表示し、判定していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述の従来方法では、ラインセンサーを構成する複数の画素104の1つ1つに対応する、個々の像情報信号S1に基づいて画像処理部105が処理を行う。このため、例えば、1つの画素104が256階調の明度を検知することができる場合、このラインセンサー自体の明度階調の検出能力では、画素104の1つ1つの明度階調の256階調を超えた、更に微妙なコントラストを検知することはできない。したがって、画像処理部105が如何なる画像処理を行った場合であっても、基本的な検査能力は各画素104の256階調の範囲内に制限されて検知が行われることになる。
【0004】
目視検査の代わりに外観検査機を用いることを考えた場合、目視による明度階調は点状の検査対象に対しては150階調程度と言われているので、通常の検査対象を検査するためには256階調であれば充分ということになる。しかしながら、広がりを持った低コントラストな検査対象等の認識し難い検査対象に対する目視検査では、肉眼において画素に相当する錐体が複数の細胞間で視覚情報を積算させ、結果として最大で1600階調をもって識別することができるとされている。したがって、外観検査機において検査対象となるローラの表面における微妙な明度階調については目視と同様に形状を捉えていたとしても、コントラストの不足のために外観的な不良を明瞭に区別することが難しい場合がある。したがって、ローラの表面における傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラ等の欠陥を検出することができないという問題点があった。
【特許文献1】特開平7−239304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、以上の状況に鑑みて、ラインセンサーの各画素の明度階調を拡張することを可能にする。これにより、本発明は、電子写真装置用のローラの表面における、傾斜が比較的緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラ、微妙なコントラストを効率的に検出することができる電子写真装置用のローラの表面検査方法及び表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明に係る、電子写真装置用のローラの表面検査方法は、電子写真装置用のローラの表面を照明し、ローラを軸周りに回転させた状態で、ローラの軸方向に沿って複数の画素が配列されたラインセンサーによって前記表面を撮像する第1ステップと、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する第2ステップと、画像処理された結果に基づいてローラの表面状態を判定する第3ステップと、を有する。
【0007】
また、本発明に係る、電子写真装置用のローラを軸周りに回転させる回転手段と、ローラの表面を照明する照明手段と、ローラの軸方向に沿って複数の画素が配列されたラインセンサーを有して回転手段によってローラを回転させた状態で前記表面を撮像する撮像手段と、を備える。また、本発明は、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して前記1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行う画像処理手段と、画像処理手段による結果に基づいてローラの表面状態を判定する判定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ローラの表面におけるコントラストを際立たせた画像が得られ、ローラの表面における傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本発明に係る、電子写真装置用のローラの表面検査方法は、電子写真装置用のローラの表面を照明し、ローラを軸周りに回転させた状態で、ローラの軸方向に沿って複数の画素が配列されたラインセンサーによって前記表面を撮像する第1ステップを有する。また、この方法は、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する第2ステップを有する。この第2ステップでは、1つの画素からの像情報信号に、所定領域における各画素からの各像情報信号を加算して1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する。また、この方法は、画像処理された結果に基づいてローラの表面状態を判定する第3ステップを有する。
【0011】
なお、本発明では、例えばラインセンサーの1つの画素の明度階調が256の場合、1つの画素が出力する像情報信号が256のいずれかの値として扱われる。そして、この1つの画素を含みこの1つの画素に連続する5つの画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を、1つの画素が出力する像情報信号に加算する。この加算処理によって、1つの画素が出力する像情報信号が、256×5=1280のいずれかの値として扱われる。つまり、1つの画素の明度階調を5倍に増えたものとして取り扱うことが可能になる。そして、このような加算処理を所定領域の5つの各画素について行うことで画像データ処理されたものを所定領域における1つのデータユニットとして、この所定領域に隣接する他の所定領域において画像データ処理された他のデータユニットとを比較する。これによって、ローラの表面における微細な状態を判定する。
【0012】
また、上述した方法を採用した表面検査装置は、電子写真装置用のローラを軸周りに回転させる回転手段としての回転機構、ローラの表面を照明する照明手段としての照明部と、を備える。また、この装置は、ローラの軸方向に沿って複数の画素が配列されたラインセンサーを有して回転機構によってローラを回転させた状態で前記表面を撮像する撮像手段としての撮像部を備える。また、この装置は、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する画像処理手段としての画像処理部を備える。この画像処理部は、1つの画素からの像情報信号に、所定領域における各画素からの各像情報信号を加算して1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行う。また、この装置は、画像処理部による結果に基づいてローラの表面状態を判定する判定手段としての判定部を備える。
【0013】
撮像部としてはラインセンサーを有するカメラを使用する。ラインセンサーは、エリアセンサーと比較して、撮像対象を一定速度で動かしながら撮像しなければ面としての画像が得られない反面、画素数が比較的多いので解像度を上げるのに有利である。また、ラインセンサーは、画素と画素との間に電荷転送部が存在しないので、開口率が高く、微妙なコントラストを捉えるのに好適であるといった利点を有する。また、回転されたローラ1を矢印A方向に撮像するときに、ラインセンサーで一度に取得できる各データB1,B2,B3に関して、図5(a)に矢印aで示すように、複数の画素の配列方向に直交する方向について、データの比較を行う。このように比較することにより、同一の画素によって得られたデータを比較することになるので、画素のバラツキが存在しないことも、図5(b)に示すエリアセンサー12と比べた優位点である。画素のバラツキは通常3%程度存在するので、画素のバラツキを考慮すると、3%以内のコントラスト差は有意な差異として取り扱うことができない。つまり、個々の画素で検出可能な明度階調が256階調である場合には、画素のバラツキは7階調にも達する。
【0014】
後述するように、ラインセンサーの出力については複数の画素の像情報信号を積算するので、画素の大きさに比較してかなり小さな構造であっても存在自体は捉えることができる。したがって、解像度にこだわらないか、複数のカメラを配置するのであれば、ラインセンサーが有する画素数は3000画素以上であれば良い。複数のカメラを配置する方向は、図2(a)、(b)に示すように、ローラ1の軸方向に直交する方向とカメラ2のレンズの光軸とを一致させると良い。このとき、カメラ2に取付けるレンズの焦点距離は、ローラ1をいくつのカメラを用いて検査するかによって決まってくるが、ローラ1の全体がレンズの視野に収まるように設定することで、表面検査装置の構成が簡素になるので好ましい。
【0015】
ラインセンサーとしてはモノクロームセンサーであっても良いが、カラーセンサーを配置して3色の信号を別々に処理しても良い。ただし、カラーラインセンサーの中には、3つのラインセンサーを単純に平行に並べて配置したものがあり、この場合には、個々のラインセンサー間で被写体(ローラ)からの光路差が生じてしまう。このため、この場合には、どれかの色のイメージセンサーで焦点のずれが生じていないかを注意する必要がある。
【0016】
回転機構によるローラの回転数は、ラインセンサーによって取得した画像が、ローラの周方向に対して充分な解像度を有するように設定する必要がある。電子写真装置用のローラとしては、例えば直径が6mmから30mm程度のものが用いられている。ローラの直径が例えば12mmである場合には、回転数が50rpm以上、300rpm以下程度であるのが望ましい。像情報信号の取り込み周波数が2000Hzであれば、回転数が300rpmの場合でもローラの周方向に対して1データ当たり94μmの細かさで表される。回転数が100rpm以下であれば更に望ましく、回転数が100rpmのときの周方向の1データ当たりの細かさは31μmである。
【0017】
照明部としては、ローラの軸方向に対して均一な光量が得られるような光源であれば良く、例えば、ローラの軸方向に略平行に配置されたライン光源10や、ドーム照明等が用いられる。
【0018】
ローラの表面状態の判定を行うのに効果的な画像を得るために、ラインセンサーは、例えば図3に示すように、ローラの表面からの距離と、ローラの表面を見下ろす俯角とを自由に調整可能な支持機構に支持される構成が望ましい。支持機構は、カメラ2を回転可能に支持する回転ステージ16を有して構成されている。また、この支持機構は、回転ステージ16をローラ1の軸方向に直交する鉛直方向にスライド可能に支持する鉛直ガイド15と、この鉛直ガイド15をローラ1の軸方向に直交する水平方向にスライド可能に支持する水平ガイド14とを有している。
【0019】
また、ローラの表面に接する接平面に対して、ラインセンサーを有するカメラ2のレンズの光軸がなす俯角θ1を、照明部による照明光の光軸がなす照射角θ2よりも大きく設定するのが好ましい。言い換えれば、ラインセンサーの俯角θ1は、例えばローラからの全反射光からローラの外側である暗視野にかけた領域を見るように設定することで、ローラの表面における微妙な反射光の差異が見易くなることが多い。ラインセンサーによってローラの回転時に1周分以上のデータが連続的に取込まれ、画像処理部に送られる。
【0020】
画像処理部は、1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する。この画像処理部は、1つの画素からの像情報信号に、所定領域における各画素からの各像情報信号を加算して1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する。このように画像処理された結果が所定領域における1データユニットとして表面状態の判定に用いられる。
【0021】
加算処理の方法としては、例えば以下に示すような3つの方法が考えられる。
(i)ラインセンサーの画素配列方向のみに加算処理する。
(ii)ラインセンサーの画素配列方向に直交する方向のみに加算処理する。なお、ローラの回転に伴って見かけ上ラインセンサーの画素配列方向に直交する方向に画素が並んでおり、これらの画素による各像情報信号、実際には同一の画素による各像情報信号を加算することを指している。
(iii)ラインセンサーの画素配列方向に直交する方向のみに一旦加算処理した後に、それら加算像情報データに対して画素配列方向に加算処理を加える。
【0022】
このような加算処理が行われれば、1画素として記録されるデータの中に、1つの画素毎が元々持つ階調×加算処理する画素数だけの階調を持たせることが可能になる。例えば、10画素を加算した場合には、1つの画素を256×10=2560階調で扱うことが可能になり、50画素を加算した場合には、1つの画素を256(階調)×50(画素)=12800階調で扱うことが可能になる。一般的なカメラの出力における256階調の積算画素数倍の階調性が得られるのに加えて、一般的なカメラにおける画素のバラツキは、積算データ上では中心極限定理によって軽減され、1/√(加算画素数)となる。具体的には、加算処理を行わないときに3%であるものが、50画素の積算データ上では0.4%となる。このときの像情報信号の流れの状態を図1に模式的に示す。図1では、3画素分の積算を行っている。256階調のS1信号が積算されることで、より一層多階調のS2信号を出力して判定が行われる。
【0023】
データの加算方法については、一般的に階調性を高めるためには(i)の加算処理を用いるのが好ましい。ただし、ローラの表面に、画素配列方向に直交する方向に沿って細長い欠陥が存在する場合、この欠陥に対して(i)の加算処理では画素配列方向にならされて、かえって欠陥が判り難くなってしまうことがある。欠陥を特に強調するためには、(iii)の加算処理を用いるのが効果的である。一旦、細長い欠陥の長手方向に対してデータの加算演算処理を行うので、欠陥が無い部分と有る部分との積算光量差が極めて大きくなる。その後で画素配列方向に対してさらに加算演算処理を施すことによって、元々の画像データに比べて欠陥部分のコントラストが著しく増大することになる。
【0024】
また、上述した画素間の加算演算処理によって消えてしまい易い微小な欠陥に対しては、(ii)の加算処理を用いるのが好ましい。(ii)の加算処理を用いることで、微小な欠陥であっても、加算演算処理によって周辺部とのコントラストが増すとともに、隣接する画素間のデータを加算処理することまでは行わないので、微小な欠陥であっても埋もれさせない効果がある。
【0025】
以上のようにして得られる所定領域R1のデータと、この所定領域R1に隣接する、同様の加算演算処理を行った所定領域R2のデータとの間の差分が、全画像領域について計算され、元々の加算演算済みデータと共に判定部に送られる。
【0026】
判定部では、全画像領域について計算された差分のデータが系統的な傾斜を持っていれば、必要に応じて水平化処理が行われ、急激な変化及び高低差が大きな変化のみが残される。続いて、このような補正を施した画像において、予め定められた上限値と下限値に対して超過している個々の所定領域全てを抽出し、抽出された個々の領域の面積のうちで任意に定めた量を超えるものが有るか無いかを判定する。任意に定めた量を超えるものが1つ以上存在したとき、その領域がローラの表面における欠陥部分であると判定する。このように、取得された画像データは加算演算処理及び水平化処理が施され、意図した種類の欠陥のみが効果的に強調された上で、ローラの表面における微細な状態の判定に使用される。
【0027】
上述したように、実施形態の表面検査方法では、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する。そして、1つの画素からの像情報信号に、所定領域における各画素からの各像情報信号を加算して1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する。このような表面検査方法を実現する表面検査装置を用いることで、コントラストが微妙な、傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラのいずれかを欠陥部分として含むローラの表面における微細な欠陥を、他の欠陥も含めて効率的に検出することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を示して発明の効果をより明らかにするが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0029】
傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸、ムラを少なくとも含む、複数の欠陥部分を有する電子写真装置用のローラを測定サンプルとして用意する。傾斜が緩やかな凹凸はいずれも、従来の自動外観検査方法では判別できなかったものである。測定サンプルとしては弾性ローラを用いて、円筒状の弾性体の直径は12mm、長さは235mmであって、弾性体の中央を軸方向に貫いて設けられた金属製シャフトは直径6mm、全長265mmである。
【0030】
なお、ここでは電子写真装置用の弾性ローラを挙げて本発明を説明しているが、ローラの直径、長さ、材料の多様性に合わせて本発明の構成要素を適宜調整することで、他のローラにおいても同様の測定が可能となることは言うまでも無い。
【0031】
今回の測定サンプルに含まれる、検出が困難な、傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラとしては、具体的には凹凸の他に、「白点」、「ブツ」、「塗工スジ」、「塗工ムラ」が含まれる。それぞれの欠陥の詳細は以下に示すとおりである。
「白点」・・・・・ローラの表面に付着した白い点。液体の付着跡等。小さいものは検出し難い。
「ブツ」・・・・・ローラの表面から突き出ている小さい突起物。極小さいものは検出が難しい。
「塗工スジ」・・・ローラの表面にディップ塗工を行う際に生じることがある縦スジ。極めてなだらかであるため、目視では容易に判るものの検査機では検知するのが難しい。
「塗工ムラ」・・・塗料が不均一にローラの表面に付着したことで生じる微妙な形状の乱れ。目視でも観察し難く、特定の光照射条件下でのみ判別が可能になる。
【0032】
凹凸に関しては、特に変位量である傾斜が緩やかなものが判別し難い。本発明における「緩やかな凹み」、「緩やかな凸」については、以下のように定義する。
【0033】
図4(a)から図4(d)に示すように、欠陥部分D1,D2の長手方向における一端から他端までわたるA−B断面、C−D断面における長さbの最大値をbmax(幅)、長手方向に直交する深さ方向の高低差tにおける最大値をtmaxとしたとき、
tmax/bmax≦0.05
を満たす凹凸を指している。
【0034】
上述した照明部と、撮像部と、画像処理部及び判定部とを有する表面検査装置として、株式会社テクノス製のスーパー5000Kを使用した。ローラは回転機構に保持されて、150rpmの回転数で回転させられた状態で表面が撮像され、ローラ1周分のデータが取得される。カメラは、5120画素のラインセンサーを有しており、ローラの表面から400mmの距離に配置され、カメラに装着するレンズとしては、ペンタックス社製のFA50mm、F1.4のものを用いた。このとき、レンズの視野はローラの長手方向に対して280mm程度あり、ローラの弾性体の部分をほぼ4300画素で捉えることになる。したがって、ローラの長手方向に関して1つの画素で表現される長さは54μmである。カメラのデータ取得周波数は2kHzであり、ライン光源としては高周波電源によって駆動される蛍光灯が用いられる。蛍光灯の周波数は20kHz、リップルは0.4%である。取得した画像データには次に示す加算処理が施されて、画像判定が行われた。
(加算処理1) (i)の加算処理を用いて、加算画素数10とする。
(加算処理2) (ii)の加算処理を用いて、加算画素数100とする。
(加算処理3) (iii)の加算処理を用いて、画素配列方向に直交する方向における加算画素数10、画素配列方向における加算画素数20とする。
(加算処理4) (iii)の加算処理を用いて、画素配列方向に直交する方向における加算画素数10、画素配列方向における加算画素数80とする。
【0035】
結果を表1に示す。加算処理を施していない原画像、あるいは加算処理1〜4のうちで、検出ができた項目を「〇」で示している。検出ができない場合には「×」で示した。原画像が比較例であって、加算処理1〜4をそれぞれ施したものが実施例である。原画像では少なくとも光量レベルで表面状態の判定ができないものが、4種類の加算処理のうちで適切な加算処理を施すことで、欠陥部分を判定することが可能となった。
【0036】
本発明が検査対象とする傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラといった微細な欠陥部分は、目視による判定が困難であるものが多い。本発明に係る検査方法によれば、このような微細な欠陥部分であっても判定可能になり、表1に挙げた測定サンプルに含まれる、目視による判定が比較的容易な筋状の傷、模様、擦れ、水跡等の欠陥を困難なく判定可能であるのはいうまでもない。
【0037】
【表1】

【0038】
以上の実施例からわかるように、表面検査方法及び表面検査装置を用いることで、ローラの表面における、コントラストが微妙な、傾斜が緩やかな凹凸や、極微小な凹凸及びムラのいずれかを含む微細な欠陥を、他の欠陥も含めて効率的に検出することができた。
【0039】
なお、本実施形態では、電子写真装置用のローラとして弾性ローラを一例に挙げて説明したが、本発明は他のローラに用いられて好適であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】各画素からの像情報信号を積算させる表面検査方法におけるカメラを示す概略図である。
【図2】ローラを回転させて撮像するためのカメラ配置を示す概略図である。
【図3】ローラに対するカメラの距離及び光軸の角度を調整可能な支持機構を示す模式図である。
【図4】傾斜が緩やかな凹凸の定義を説明するための模式図である。
【図5】ラインセンサーによる画像と、エリアセンサーによる画像との違いを説明するための模式図である。
【図6】従来の表面検査方法で用いるカメラを説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ローラ
2 カメラ
4 画素
5 画像処理部
10 ライン光源
11 ラインセンサー
θ1 俯角
θ2 照射角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置用のローラの表面を照明し、前記ローラを軸周りに回転させた状態で、前記ローラの軸方向に沿って複数の画素が配列されたラインセンサーによって前記表面を撮像する第1ステップと、
前記ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、該1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して前記1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する第2ステップと、
前記画像処理された結果に基づいて、前記ローラの表面状態を判定する第3ステップと、
を有する、電子写真装置用のローラの表面検査方法。
【請求項2】
前記第2ステップでは、前記画素の配列方向の前記所定領域において前記加算処理を行う、請求項1に記載の電子写真装置用のローラの表面検査方法。
【請求項3】
前記第2ステップでは、前記ローラの回転に伴って見かけ上前記画素が並んでいる、前記画素の配列方向に直交する方向の前記所定領域において前記加算処理を行う、請求項1に記載の電子写真装置用のローラの表面検査方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、前記ローラの回転に伴って見かけ上前記画素が並んでいる、前記画素の配列方向に直交する方向の前記所定領域において前記加算処理を行った後、前記画素の配列方向の他の前記所定領域において前記加算処理を行う、請求項1に記載の電子写真装置用のローラの表面検査方法。
【請求項5】
前記第1ステップでは、前記ローラの前記表面に接する接平面に対して、前記ラインセンサーを有する撮像手段の光軸がなす俯角を、照明手段による照明光の光軸がなす照射角よりも大きくする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子写真装置用のローラの表面検査方法。
【請求項6】
前記第1ステップでは、前記ローラを50rpm以上、300rpm以下の回転数で回転する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電子写真装置用のローラの表面検査方法。
【請求項7】
電子写真装置用のローラを軸周りに回転させる回転手段と、
前記ローラの表面を照明する照明手段と、
前記ローラの軸方向に沿って複数の画素が配列されたラインセンサーを有し、前記回転手段によって前記ローラを回転させた状態で前記表面を撮像する撮像手段と、
前記ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、該1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して前記1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行う画像処理手段と、
画像処理手段による結果に基づいて、前記ローラの表面状態を判定する判定手段と、
を備える、電子写真装置用のローラの表面検査装置。
【請求項8】
前記回転手段は、前記ローラを50rpm以上、300rpm以下の回転数で回転する、請求項7に記載の電子写真装置用のローラの表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−48601(P2010−48601A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211601(P2008−211601)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】